動力伝達装置
【課題】小型化を実現することができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】遊星ローラ機構12においては、サンローラ21とリングローラ22との間にピニオンローラ23がこれらと接触して挟持され、ピニオンローラ23がキャリア24に回転自在に支持されている。変速用歯車機構14においては、ピニオンギア33とリングギア32とが噛み合わされ、ピニオンギア33がキャリア34に回転自在に支持されている。キャリア24,34の回転は固定されており、ピニオンローラ23及びピニオンギア33は、キャリア24,34に回転自在に支持された共通のピニオン回転部材43に備えられていることで一体化されている。
【解決手段】遊星ローラ機構12においては、サンローラ21とリングローラ22との間にピニオンローラ23がこれらと接触して挟持され、ピニオンローラ23がキャリア24に回転自在に支持されている。変速用歯車機構14においては、ピニオンギア33とリングギア32とが噛み合わされ、ピニオンギア33がキャリア34に回転自在に支持されている。キャリア24,34の回転は固定されており、ピニオンローラ23及びピニオンギア33は、キャリア24,34に回転自在に支持された共通のピニオン回転部材43に備えられていることで一体化されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、動力を変速して伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機やエンジン等の動力源からの動力を変速して伝達するために、歯車伝動機構が用いられている。歯車伝動機構は、歯車同士の歯の噛み合いによりトルク伝達を行うため、トルク伝達容量を大きくすることが容易である反面、高速回転時にはその摩擦トルクが増大し、さらに歯の噛み合いによる振動・騒音も増大する。
【0003】
また、ローラ同士の油膜を介した接触部に生じる油膜のせん断力(トラクション力)によってトルク伝達を行うトラクションドライブ機構も、動力を変速して伝達するために用いられている。トラクションドライブ機構は、その摩擦トルクが歯車伝動機構より小さく、高速回転時の振動・騒音も歯車伝動機構より小さい。しかし、トラクションドライブ機構は、そのトルク伝達容量を歯車伝動機構より大きくすることが困難となる。
【0004】
さらに、歯車伝動機構及びトラクションドライブ機構の両方を用いた動力伝達装置も提案されており、その一例を図20を用いて説明する。図20に示す構成例では、遊星ローラ機構(トラクションドライブ機構)112及び遊星歯車機構(歯車伝動機構)114が入力軸116と出力軸118との間で直列に接続されている。
【0005】
遊星ローラ機構112は、入力軸116に連結されたサンローラ121と、サンローラ121の外周を取り囲むリングローラ122と、サンローラ121とリングローラ122との間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(遊星ローラ)123と、各ピニオンローラ123を回転自在に支持するキャリア124と、を有する。遊星歯車機構114は、連結部材125を介してリングローラ122に連結されたサンギア131と、出力軸118に連結されたリングギア132と、サンギア131及びリングギア132と噛み合う複数のピニオンギア(遊星ギア)133と、各ピニオンギア133を回転自在に支持するキャリア134と、を有する。キャリア124,134は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。
【0006】
入力軸116(サンローラ121)に入力された動力は、各ピニオンローラ123を介してリングローラ122(サンギア131)へ減速されて伝達される。サンギア131へ伝達された動力は、各ピニオンギア133を介してリングギア132(出力軸118)へ減速されて伝達される。このように、入力軸116に入力された動力を遊星ローラ機構112で減速し、遊星歯車機構114でさらに減速することで、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させている。さらに、遊星ローラ機構112を入力軸116側、遊星歯車機構114を出力軸118側に配置することで、遊星ローラ機構112で伝達されるトルクを減少させるとともに、遊星歯車機構114の各ギアの回転速度を減少させている。これによって、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を図っている。なお、歯車伝動機構及びトラクションドライブ機構の両方を用いた動力伝達装置は、下記特許文献1及び非特許文献1にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−213762号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】石橋彰、園田計二、服部信祐、「歯車とローラを用いたハイブリッド形減速機の設計・製作と性能(第1報、新減速機の試作とその動力伝達効率について)」、日本機械学会論文集(C編)、昭和61年12月、第52巻、第484号、p.3271−3276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図20に示す構成例では、遊星ローラ機構112の最も外径側に位置するリングローラ122と遊星歯車機構114の最も内径側に位置するサンギア131とを連結部材125を介して連結している。この連結部材125を設ける必要がある分、動力伝達装置の軸線方向(図の左右方向)の長さが増大し、動力伝達装置の大型化を招くことになる。また、図20に示す構成例では、入力軸116と出力軸118との間で動力伝達を行うためにキャリア124,134の回転を固定する必要があるが、リングローラ122及びサンギア131とともに回転する連結部材125が動力伝達装置の軸線方向においてキャリア124,134間に配置されているため、キャリア124,134の回転を別々の箇所で固定する必要がある。その結果、動力伝達装置の軸線方向の長さが増大し、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0010】
本発明は、小型化を実現することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る動力伝達装置は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0012】
本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、ピニオンギアと伝達用ギアとが噛み合うことで、ピニオンギアと伝達用ギアとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用歯車機構と、を有し、ピニオンローラ及びピニオンギアが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、ピニオンギアの外径がピニオンローラの外径と異なり、キャリア、リングローラ、及び伝達用ギアのいずれか1つの回転が固定されることを要旨とする。
【0013】
本発明においては、ピニオンローラ及びピニオンギアがキャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられていることで、遊星ローラ機構のローラと伝達用歯車機構のギアとを連結部材を介さずに直接結合して一体化することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0014】
本発明の一態様では、伝達用歯車機構は、ピニオンギアと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能な機構であり、キャリアまたはリングローラの回転が固定されることで、サンローラと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、伝達用ギアの回転が固定されることで、サンローラとキャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることが好適である。この態様では、伝達用ギアは、その外周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うサンギアであることが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、伝達用ギアは、その内周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うリングギアであることが好適である。この態様では、伝達用歯車機構は、ピニオンギア及びリングギアの他に、ピニオンギアと噛み合うサンギアをさらに含む遊星歯車機構であることが好適である。
【0017】
また、本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持され、ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された遊星ローラ機構と、サンギア及びリングギアと噛み合うピニオンギアが第2キャリアに回転自在に支持された遊星歯車機構と、を有し、サンギアが第1キャリアと連結されており、リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることを要旨とする。
【0018】
本発明においては、リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達するために必要な遊星ローラ機構及び変速用歯車機構の回転部材の固定を1箇所で行うことができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラとリングギアとの間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0019】
本発明の一態様では、前記リング部材には、リングローラの径方向への変形によるリングギアの径方向への変形を緩和するための緩衝部が設けられていることが好適である。この態様では、前記緩衝部の径方向の厚さが、リングローラ及びリングギアの径方向の厚さよりも薄く設定されていることが好適である。
【0020】
本発明の一態様では、リングローラを内径側へ押圧することで、サンローラとピニオンローラとの接触部、及びピニオンローラとリングローラとの接触部に押圧力を作用させる押圧機構を有することが好適である。この態様では、リングローラの外周部には、その軸線方向の一方側から他方側にかけて外径が徐々に減少するテーパ面が形成され、押圧機構は、テーパ面を押圧する押圧部材を含み、押圧部材はリングローラの外径側への変位が拘束され、リングローラはその軸線方向の一方側への変位が拘束され、押圧部材をリングローラの軸線方向の一方側へ押圧することで、リングローラを内径側へ押圧することが好適である。また、この態様では、押圧機構は、リングローラの外周部を締め付けることで、リングローラを内径側へ押圧する機構であることが好適である。また、この態様では、押圧機構は、リングローラに作用するトルクに応じた押圧力でリングローラを内径側へ押圧する機構であることが好適である。
【0021】
また、本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、第2ピニオンローラと伝達用ローラとが接触することで、第2ピニオンローラと伝達用ローラとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用ローラ機構と、を有し、第1ピニオンローラ及び第2ピニオンローラが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、第2ピニオンローラの外径が第1ピニオンローラの外径と異なり、キャリア、リングローラ、及び伝達用ローラのいずれか1つの回転が固定されることを要旨とする。
【0022】
本発明においては、第1ピニオンローラ及び第2ピニオンギアがキャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられていることで、遊星ローラ機構のローラと伝達用ローラ機構のローラとを連結部材を介さずに直接結合して一体化することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る動力伝達装置は、第1サンローラと第1リングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第1ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された第1遊星ローラ機構と、第2サンローラと第2リングローラとの間に第2ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第2ピニオンローラが第2キャリアに回転自在に支持された第2遊星ローラ機構と、を有し、第2サンローラが第1キャリアと連結されており、第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることを要旨とする。
【0024】
本発明においては、第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達するために必要な第1遊星ローラ機構及び第2遊星ローラ機構の回転部材の固定を1箇所で行うことができるとともに、動力伝達装置の軸線方向における第1リングローラと第2リングローラとの間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図10】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の概略構成を示す図である。
【図11】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図12】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図13】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図14】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図15】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【図16】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図17】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図19】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図20】関連技術に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0027】
「実施形態1」
図1は、本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の概略構成を示す図であり、その軸線方向と直交する方向から見た図を示す。本実施形態に係る動力伝達装置においては、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14が入力軸16と出力軸18との間で直列に接続されており、電動機やエンジン等の動力源から入力軸16に入力された動力が遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14でそれぞれ変速(減速)されてから出力軸18に伝達される。出力軸18に伝達された動力は、出力軸18と連結された負荷の駆動に用いられる。
【0028】
遊星ローラ機構12は、入力軸16に連結されたサンローラ21と、サンローラ21の外周を取り囲むリングローラ22と、サンローラ21とリングローラ22との間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(遊星ローラ)23と、各ピニオンローラ23を回転自在に支持するキャリア24と、を有する。図1は、遊星ローラ機構12がシングルピニオン遊星ローラ機構である例を示している。各ピニオンローラ23の外径(ピッチ円直径)は、サンローラ21の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されている。ここでの遊星ローラ機構12は、回転するローラ同士の油膜を介した接触部に押圧力(法線方向の力)を作用させることで生じる油膜のせん断力(接線方向のトラクション力)によって動力伝達を行うトラクションドライブ機構である。例えば遊星ローラ機構12を焼き嵌め方式で組み立てることにより、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部(接触面)27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部(接触面)28に押圧力(法線力)を作用させることが可能となる。また、本実施形態では、リングローラ22にその内径側(サンローラ21側)への押圧力を付加することで、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部28に押圧力(法線力)を作用させる押圧機構を設けることもできる。ここでの押圧機構の構成例については後述する。このように、接触部27,28に法線力を作用させることで、接触部27,28に接線方向のトラクション力を発生させることができる。
【0029】
変速用歯車機構14は、複数のピニオンギア33と、出力軸18に連結され且つ各ピニオンギア33と噛み合わされたリングギア(内歯車)32と、各ピニオンギア33を回転自在に支持するキャリア34と、有し、各ピニオンギア33とリングギア32との間でトルク伝達を行うことが可能である。リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、各ピニオンギア33の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されており、リングギア32は、その内周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合っている。そして、リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、リングローラ22の内径(ピッチ円直径)よりも小さく設定されており、各ピニオンギア33の外径は、各ピニオンローラ23の外径と異なり、各ピニオンローラ23の外径よりも小さく設定されている。
【0030】
本実施形態では、キャリア24,34同士が連結されており、ピニオンローラ23及びピニオンギア33がキャリア24,34に回転自在に支持された共通のピニオン回転部材43に備えられている。つまり、ピニオンローラ23及びピニオンギア33が一体化されている。キャリア24,34は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。そのため、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)については、キャリア24,34の中心軸まわりの回転である公転がロックされており、自軸まわりの回転である自転のみが許容されている。なお、キャリア24,34の一方を省略し、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)をキャリア24,34の他方に回転自在に支持することもできる。
【0031】
入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27に生じる接線方向のトラクション力によって、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達されることで減速される。各ピニオン回転部材43に伝達された動力は、各ピニオンギア33とリングギア32との噛み合いによって、各ピニオンギア33からリングギア32に伝達されることで減速される。そして、リングギア32に伝達された動力が出力軸18から出力される。このように、本実施形態に係る動力伝達装置は減速装置として機能し、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。なお、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)への動力伝達においては、各ピニオン回転部材43の公転は行われずに、各ピニオン回転部材43の自転のみが行われる。
【0032】
変速用歯車機構14は、歯の噛み合いによってトルク伝達を行うため、トラクション力によってトルク伝達を行う遊星ローラ機構12よりも、そのトルク伝達容量を大きくすることが容易である。しかし、変速用歯車機構14は、高速回転時にはその摩擦トルクが増大し、さらに歯の噛み合いによる振動・騒音も増大する。一方、遊星ローラ機構12は、その摩擦トルクが変速用歯車機構14より小さく、高速回転時の振動・騒音も変速用歯車機構14より小さい。そこで、入力軸16に入力された動力を減速して出力軸18へ伝達する場合は、遊星ローラ機構12を入力軸16側、変速用歯車機構14を出力軸18側に配置することで、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギア(ピニオンギア33及びリングギア32)の回転速度を減少させることができる。したがって、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を実現することができる。
【0033】
ただし、前述の図20に示す構成例のように、遊星ローラ機構112のリングローラ122と遊星歯車機構114のサンギア131とを連結する場合は、遊星ローラ機構112の最も外径側に位置するリングローラ122と遊星歯車機構114の最も内径側に位置するサンギア131との間に連結部材125を設ける必要がある分、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)が増大する。その結果、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0034】
これに対して本実施形態では、ピニオンローラ23及びピニオンギア33を共通のピニオン回転部材43に設けて、ピニオンローラ23及びピニオンギア33を一体化することで、遊星ローラ機構12のローラと変速用歯車機構14のギアとを連結部材を介さずに直接結合することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向(図1の左右方向)の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。そして、キャリア24,34の一方を省略することで、動力伝達装置の軸線方向の全長をさらに短縮することができる。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、キャリア24の回転をロックする代わりに、リングローラ22をケーシングに固定してリングローラ22の回転をロックすることもできる。この場合は、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)については、公転及び自転の両方が許容される。なお、図2は、キャリア34が省略され、各ピニオン回転部材43がキャリア24に回転自在に支持された例を示している。
【0036】
図2に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)及びキャリア24に伝達される。ここでは、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われる。各ピニオン回転部材43(ピニオンギア33)及びキャリア24に伝達された動力は、リングギア32に伝達される。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)へ動力が減速されて伝達される。この図2に示す構成例によれば、動力伝達装置の変速比(減速比)をさらに増大させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、図3に示すように、キャリア24の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B1と、リングローラ22の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B2と、を設けることもできる。図3に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB1,B2間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をキャリア24とリングローラ22との間で切り換えることで、動力伝達装置の変速比(減速比)を切り換えることができる。
【0038】
また、本実施形態では、図4〜6に示すように、外周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を変速用歯車機構14に設けることもできる。図4〜6は、それぞれ図1〜3に示す構成例に対してサンギア31を追加した例を示している。この場合の変速用歯車機構14は、サンギア31及びリングギア32と噛み合うピニオンギア(遊星ギア)33がキャリア34に回転自在に支持された遊星歯車機構により構成される。トルク伝達時には、各ピニオンギア33は、リングギア32からの反力によってラジアル方向の力を受け、各ピニオンギア33を回転支持するピニオンシャフトにもラジアル方向の力が作用する。図4〜6に示す構成例では、各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を設けることで、各ピニオンギア33に作用するラジアル方向の力をサンギア31によって受けることができ、サンギア31に作用するラジアル方向の力は全体で釣り合う。その結果、ピニオンシャフトに作用するラジアル方向の力を低減することができる。
【0039】
また、図1〜6に示す構成例では、動力源をリングギア32に連結し、動力源の動力をリングギア32から各ピニオン回転部材43を介してサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、リングギア32に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。この場合も、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の各ギアの回転速度を減少させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、図7に示すように、伝達用歯車機構14のリングギア32をケーシングに固定してリングギア32の回転をロックするとともに、出力軸18をキャリア24,34に連結することもできる。図7に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達される。ピニオンギア33と噛み合うリングギア32の回転は固定されているため、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われ、各ピニオン回転部材43の公転と連動してキャリア24,34(出力軸18)が回転する。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(キャリア24,34)へ動力が減速されて伝達される。この図7に示す構成例でも、ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定する(ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径と異ならせる)ことで、動力伝達装置の変速比(減速比)を遊星ローラ機構12単体の変速比(減速比)よりも増大させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、図8に示すように、外周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を伝達用歯車機構14に設け、サンギア31をケーシングに固定してサンギア31の回転をロックするとともに、出力軸18をキャリア24,34に連結することもできる。図8に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達される。ピニオンギア33と噛み合うサンギア31の回転は固定されているため、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われ、各ピニオン回転部材43の公転と連動してキャリア24,34(出力軸18)が回転する。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(キャリア24,34)へ動力が減速されて伝達される。この図8に示す構成例でも、ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定する(ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径と異ならせる)ことで、動力伝達装置の変速比(減速比)を遊星ローラ機構12単体の変速比(減速比)よりも増大させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、図9に示すように、リングギア32の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B3と、サンギア31の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B4と、を設けることもできる。図9に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB3,B4間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をリングギア32とサンギア31との間で切り換えることで、動力伝達装置の変速比(減速比)を切り換えることができる。
【0043】
また、図7〜9に示す構成例では、動力源をキャリア24,34に連結し、動力源の動力をキャリア24,34から各ピニオン回転部材43を介してサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、キャリア24,34に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。
【0044】
ここで、本実施形態に係る動力伝達装置(図1,2,7,8に示す構成例)において、変速比(減速比)、出力軸18の回転数(出力回転数)、及びピニオン回転部材43の回転数(ピニオン回転数)をそれぞれ計算した例を下表に示す。ただし、下表の計算結果においては、図1,2,7,8に示す構成例の最大外径(リングローラ22の外径)がいずれも等しい条件で計算しており、出力回転数及びピニオン回転数は、入力軸16の回転数が50000rpmのときの値である。キャリア24(34)、リングローラ22、リングギア32、及びサンギア31のいずれか1つの回転を固定する際にどれを固定するかで減速比が異なるが、一般的には、遊星ローラ機構12単体での変速比(減速比)は3〜5程度であるため、本実施形態によれば、動力伝達装置の小型化を実現しながら、動力伝達装置の変速比(減速比)を増大できることがわかる。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、本実施形態において、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部28に押圧力(法線力)を作用させる押圧機構の構成例について説明する。ただし、以下に説明する構成例以外に、既知の押圧機構を用いることも可能である。
【0047】
図10に示す構成例では、リングローラ22の外周面に、その軸線方向の一方側(図の左側)から他方側(図の右側)にかけて外径が徐々に減少するテーパ面(円錐面)22aが形成されている。そして、リングローラ22のテーパ面22aを押圧する押圧リング(押圧部材)25が設けられている。押圧リング25の内周面には、リングローラ22の軸線方向の一方側から他方側にかけて内径が徐々に減少するテーパ面(円錐面)25aが形成されており、このテーパ面25aがリングローラ22のテーパ面22aと接触している。押圧リング25は、リングローラ22の外径側(図10の上側)への変位が拘束されており、リングローラ22は、その軸線方向の一方側への変位が拘束されている。
【0048】
図10に示す構成例では、押圧リング25にリングローラ22の軸線方向の一方側への押圧力を作用させることで、押圧リング25のテーパ面25aがリングローラ22のテーパ面22aを押圧し、くさび効果によってリングローラ22がその内径側(サンローラ21側)へ押圧される。これによって、接触部27,28に押圧力(法線力)を作用させることができ、接触部27,28にトラクション力を安定して発生させることができる。そして、押圧リング25に作用させるリングローラ22の軸線方向の一方側への押圧力を調整することで、接触部27,28に作用させる法線力を調整することが可能である。
【0049】
また、図11に示す構成例では、リングローラ22の外周面にベルト26が巻き付けられている。このベルト26によってリングローラ22の外周面を締め付けることで、リングローラ22をその内径側へ押圧することができ、接触部27,28に法線力を作用させることができる。そして、ベルト26の締め付け力を調整することで、接触部27,28に作用させる法線力を調整することが可能である。
【0050】
また、図12に示す構成例では、リングローラ22の外周を取り囲むアウターリング29が設けられている。リングローラ22の外周面及びアウターリング29の内周面にはそれぞれカム面22b,29bが対向して形成されており、これらのカム面22b,29bの間に挟まれて転動球30が配設されている。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた押圧力でリングローラ22をその内径側へ押圧するトルクカムが構成される。より具体的には、リングローラ22に作用するトルクによってリングローラ22とアウターリング29との間に位相差が発生すると、転動球30がカム面22b,29bに沿って転動することで、この位相差に応じた押圧力でリングローラ22がその内径側へ押圧される。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた法線力を接触部27,28に作用させることができ、接触部27,28に作用させる法線力をより適切に調整することができる。
【0051】
また、図13,14に示す構成例では、リングローラ22の外周面とアウターリング29の内周面との間に油圧室35が形成されている。アウターリング29には、この油圧室35に連通するシリンダ室37が形成されており、このシリンダ室37内には、リングローラ22に連結された油圧ピストン36が設けられている。油圧室35内及びシリンダ室37内は作動油で満たされている。なお、図13は入力軸16側から見た図を示し、図14は出力軸18側から見た図を示す。
【0052】
図13,14に示す構成例では、リングローラ22に作用するトルクによってリングローラ22とアウターリング29との間に位相差が発生すると、油圧ピストン36がシリンダ室37の周壁に沿って摺動することで、この位相差に応じた油圧力が油圧室35内に発生する。この油圧力によってリングローラ22がその内径側へ押圧されることで、接触部27,28に法線力が作用する。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた押圧力でリングローラ22をその内径側へ押圧することができる。つまり、リングローラ22に作用するトルクに応じた法線力を接触部27,28に作用させることができる。
【0053】
「実施形態2」
図15は、本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態2の説明では、実施形態1と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
本実施形態では実施形態1と比較して、変速用歯車機構14は、ピニオンギア33とリングギア32とキャリア34の他に、各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31をさらに有している。つまり、変速用歯車機構14は、サンギア31及びリングギア32と噛み合うピニオンギア(遊星ギア)33がキャリア34に回転自在に支持された遊星歯車機構により構成されている。図15は、変速用歯車機構14がシングルピニオン遊星歯車機構である例を示している。そして、遊星ローラ機構12のキャリア24が変速用歯車機構(遊星歯車機構)14のサンギア31に連結されており、変速用歯車機構14のキャリア34が出力軸18に連結されている。さらに、リングローラ22及びリングギア32が共通のリング部材42に備えられていることで、リングローラ22及びリングギア32が一体化されている。リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。他の構成については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0055】
入力軸16に入力された動力源からの動力は、接触部27,28に生じるトラクション力によって各ピニオンローラ23の公転(キャリア24の中心軸まわりの回転)及び自転(自軸まわりの回転)が行われることで、サンローラ21からキャリア24に減速されて伝達される。キャリア24に伝達された動力は、各ピニオンギア33とサンギア31及びリングギア32との噛み合いによって各ピニオンギア33の公転(キャリア34の中心軸まわりの回転)及び自転(自軸まわりの回転)が行われることで、サンギア31からキャリア34に減速されて伝達される。そして、キャリア34に伝達された動力が出力軸18から出力される。このように、本実施形態に係る動力伝達装置は減速装置として機能し、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。さらに、遊星ローラ機構12を入力軸16側、変速用歯車機構14を出力軸18側に配置することで、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギアの回転速度を減少させることができるので、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を実現することができる。
【0056】
遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構(遊星歯車機構)14は、ともに2自由度の回転自由度を有する機構であるので、入力軸16と出力軸18との間で動力伝達を行うためには、遊星ローラ機構12を構成する回転部材のいずれか1つ、及び変速用歯車機構14を構成する回転部材のいずれか1つを固定する必要がある。ただし、前述の図20に示す構成例のように、遊星ローラ機構112のリングローラ122と遊星歯車機構114のサンギア131とを連結し、キャリア124,134の回転を固定する場合は、リングローラ122及びサンギア131とともに回転する連結部材125が動力伝達装置の軸線方向においてキャリア124,134間に配置される。その場合は、キャリア124,134の回転を別々の箇所で固定する必要があるため、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)が増大する。その結果、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0057】
これに対して本実施形態では、リングローラ22及びリングギア32を共通のリング部材42に設けて、リングローラ22及びリングギア32を一体化する。これによって、遊星ローラ機構12のリングローラ22及び変速用歯車機構14のリングギア32の回転を1箇所で固定することができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラ22とリングギア32との間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0058】
本実施形態では、図16に示すように、リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)の回転をロックする代わりに、キャリア24及びサンギア31をケーシングに固定してキャリア24及びサンギア31の回転をロックすることもできる。この場合、ピニオンローラ23については、公転がロックされており、自転のみが許容されている。
【0059】
図16に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、各ピニオンローラ23の自転によって、サンローラ21からリング部材42(リングローラ22)に減速されて伝達される。リング部材42に伝達された動力は、各ピニオンギア33の公転及び自転によって、リングギア32からキャリア34に変速されて伝達される。このように、図16に示す構成例でも、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。そして、図16に示す構成例では、遊星ローラ機構12のキャリア24及び変速用歯車機構14のサンギア31の回転を1箇所で固定することができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラ22とリングギア32との間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態では、図17に示すように、リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B3と、キャリア24及びサンギア31の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B4と、を設けることもできる。図17に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB3,B4間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をリング部材42とキャリア24との間で切り換えることで、出力軸18の回転方向を切り換えることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、リングギア32がリングローラ22と結合されているので、接触部27,28に法線力を作用させるためにリングローラ22をその内径側へ押圧すると、リングローラ22の内径側への弾性変形に伴ってリングギア32もその内径側に弾性変形しやすくなる。リングギア32の内径側への弾性変形が増大すると、変速用歯車機構14の摩擦トルクの増大を招くことになる。そこで、本実施形態では、リングローラ22の内径側への変形に伴うリングギア32の内径側への変形を緩和できることが好ましい。
【0062】
図18に示す構成例では、リング部材42におけるリングローラ22とリングギア32との間に、リングローラ22の径方向への変形によるリングギア32の径方向への変形を緩和するための緩衝部46が設けられている。ここでの緩衝部46の径方向の厚さは、緩衝部46が径方向に弾性変形しやすいように、リングローラ22及びリングギア32の径方向の厚さよりも薄く設定されている。この緩衝部46を設けることで、リングローラ22の内径側への弾性変形による影響を緩衝部46の弾性変形によって吸収することができる。したがって、リングローラ22の内径側への弾性変形に伴うリングギア32の内径側への弾性変形を抑制することができ、変速用歯車機構14の摩擦トルクの増大を抑制することができる。なお、図19に示すように、緩衝部46の径方向の厚さを徐々に減少させることもできる。
【0063】
また、図15〜19に示す構成例でも、動力源をキャリア34に連結し、動力源の動力をキャリア34からサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、キャリア34に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。この場合も、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギアの回転速度を減少させることができる。
【0064】
また、以上の実施形態1,2では、歯車伝動機構である変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の代わりに、トラクションドライブ機構である変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設けることもできる。
【0065】
実施形態1で変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設ける場合は、複数のピニオンローラ(第2ピニオンローラ)をピニオンギア33の代わりに設け、これら複数のピニオンローラと接触するリングローラ(第2リングローラ)をリングギア32の代わりに設ける。そして、遊星ローラ機構12のピニオンローラ(第1ピニオンローラ)23と変速用ローラ機構の第2ピニオンローラとを共通のピニオン回転部材43に設け、これらのピニオンローラを一体化する。さらに、第2ピニオンローラの外径をピニオンローラ23の外径と異ならせ(例えば第2ピニオンローラの外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定し)、キャリア24(34)、リングローラ(第1リングローラ)22、及び第2リングローラのいずれか1つの回転を固定する。伝達用ローラ機構は、第2ピニオンローラと第2リングローラとの間でトルク伝達を行うことが可能であり、第2リングローラの回転が固定されていない場合は、第2ピニオンローラと第2リングローラとの間で動力を変速して伝達することが可能である。また、サンギア31の代わりに、第2ピニオンローラと接触するサンローラ(第2サンローラ)を伝達用ローラ機構に設けることもできる。さらに、第2サンローラの回転を固定することもできる。
【0066】
実施形態2で変速用ローラ機構を設ける場合は、キャリア24に連結されたサンローラ(第2サンローラ)をサンギア31の代わりに設け、第2サンローラの外周を取り囲むリングローラ(第2リングローラ)をリングギア32の代わりに設け、第2サンローラと第2リングローラとの間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(第2ピニオンローラ)をピニオンギア33の代わりに設ける。つまり、変速用ローラ機構が遊星ローラ機構(第2遊星ローラ機構)により構成される。そして、遊星ローラ機構(第1遊星ローラ機構)12のリングローラ(第1リングローラ)22と変速用ローラ機構(第2遊星ローラ機構)の第2リングローラとを共通のリング部材42に設け、これらのリングローラを一体化する。
【0067】
なお、実施形態1,2で変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の代わりに変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設ける場合の動作については、上記の説明において、サンギア31を第2サンローラに置き換え、リングギア32を第2リングローラに置き換え、ピニオンギア33を第2ピニオンローラに置き換えた場合を考えればよい。変速用ローラ機構を設ける場合も、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
12 遊星ローラ機構、14 変速用歯車機構(伝達用歯車機構)、16 入力軸、18 出力軸、21 サンローラ、22 リングローラ、23 ピニオンローラ、24,34 キャリア、31 サンギア、32 リングギア、33 ピニオンギア、42 リング部材、43 ピニオン回転部材、46 緩衝部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、動力を変速して伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機やエンジン等の動力源からの動力を変速して伝達するために、歯車伝動機構が用いられている。歯車伝動機構は、歯車同士の歯の噛み合いによりトルク伝達を行うため、トルク伝達容量を大きくすることが容易である反面、高速回転時にはその摩擦トルクが増大し、さらに歯の噛み合いによる振動・騒音も増大する。
【0003】
また、ローラ同士の油膜を介した接触部に生じる油膜のせん断力(トラクション力)によってトルク伝達を行うトラクションドライブ機構も、動力を変速して伝達するために用いられている。トラクションドライブ機構は、その摩擦トルクが歯車伝動機構より小さく、高速回転時の振動・騒音も歯車伝動機構より小さい。しかし、トラクションドライブ機構は、そのトルク伝達容量を歯車伝動機構より大きくすることが困難となる。
【0004】
さらに、歯車伝動機構及びトラクションドライブ機構の両方を用いた動力伝達装置も提案されており、その一例を図20を用いて説明する。図20に示す構成例では、遊星ローラ機構(トラクションドライブ機構)112及び遊星歯車機構(歯車伝動機構)114が入力軸116と出力軸118との間で直列に接続されている。
【0005】
遊星ローラ機構112は、入力軸116に連結されたサンローラ121と、サンローラ121の外周を取り囲むリングローラ122と、サンローラ121とリングローラ122との間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(遊星ローラ)123と、各ピニオンローラ123を回転自在に支持するキャリア124と、を有する。遊星歯車機構114は、連結部材125を介してリングローラ122に連結されたサンギア131と、出力軸118に連結されたリングギア132と、サンギア131及びリングギア132と噛み合う複数のピニオンギア(遊星ギア)133と、各ピニオンギア133を回転自在に支持するキャリア134と、を有する。キャリア124,134は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。
【0006】
入力軸116(サンローラ121)に入力された動力は、各ピニオンローラ123を介してリングローラ122(サンギア131)へ減速されて伝達される。サンギア131へ伝達された動力は、各ピニオンギア133を介してリングギア132(出力軸118)へ減速されて伝達される。このように、入力軸116に入力された動力を遊星ローラ機構112で減速し、遊星歯車機構114でさらに減速することで、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させている。さらに、遊星ローラ機構112を入力軸116側、遊星歯車機構114を出力軸118側に配置することで、遊星ローラ機構112で伝達されるトルクを減少させるとともに、遊星歯車機構114の各ギアの回転速度を減少させている。これによって、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を図っている。なお、歯車伝動機構及びトラクションドライブ機構の両方を用いた動力伝達装置は、下記特許文献1及び非特許文献1にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−213762号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】石橋彰、園田計二、服部信祐、「歯車とローラを用いたハイブリッド形減速機の設計・製作と性能(第1報、新減速機の試作とその動力伝達効率について)」、日本機械学会論文集(C編)、昭和61年12月、第52巻、第484号、p.3271−3276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図20に示す構成例では、遊星ローラ機構112の最も外径側に位置するリングローラ122と遊星歯車機構114の最も内径側に位置するサンギア131とを連結部材125を介して連結している。この連結部材125を設ける必要がある分、動力伝達装置の軸線方向(図の左右方向)の長さが増大し、動力伝達装置の大型化を招くことになる。また、図20に示す構成例では、入力軸116と出力軸118との間で動力伝達を行うためにキャリア124,134の回転を固定する必要があるが、リングローラ122及びサンギア131とともに回転する連結部材125が動力伝達装置の軸線方向においてキャリア124,134間に配置されているため、キャリア124,134の回転を別々の箇所で固定する必要がある。その結果、動力伝達装置の軸線方向の長さが増大し、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0010】
本発明は、小型化を実現することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る動力伝達装置は、上述した目的を達成するために以下の手段を採った。
【0012】
本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、ピニオンギアと伝達用ギアとが噛み合うことで、ピニオンギアと伝達用ギアとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用歯車機構と、を有し、ピニオンローラ及びピニオンギアが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、ピニオンギアの外径がピニオンローラの外径と異なり、キャリア、リングローラ、及び伝達用ギアのいずれか1つの回転が固定されることを要旨とする。
【0013】
本発明においては、ピニオンローラ及びピニオンギアがキャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられていることで、遊星ローラ機構のローラと伝達用歯車機構のギアとを連結部材を介さずに直接結合して一体化することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0014】
本発明の一態様では、伝達用歯車機構は、ピニオンギアと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能な機構であり、キャリアまたはリングローラの回転が固定されることで、サンローラと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることが好適である。
【0015】
本発明の一態様では、伝達用ギアの回転が固定されることで、サンローラとキャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることが好適である。この態様では、伝達用ギアは、その外周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うサンギアであることが好適である。
【0016】
本発明の一態様では、伝達用ギアは、その内周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うリングギアであることが好適である。この態様では、伝達用歯車機構は、ピニオンギア及びリングギアの他に、ピニオンギアと噛み合うサンギアをさらに含む遊星歯車機構であることが好適である。
【0017】
また、本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持され、ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された遊星ローラ機構と、サンギア及びリングギアと噛み合うピニオンギアが第2キャリアに回転自在に支持された遊星歯車機構と、を有し、サンギアが第1キャリアと連結されており、リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることを要旨とする。
【0018】
本発明においては、リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達するために必要な遊星ローラ機構及び変速用歯車機構の回転部材の固定を1箇所で行うことができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラとリングギアとの間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0019】
本発明の一態様では、前記リング部材には、リングローラの径方向への変形によるリングギアの径方向への変形を緩和するための緩衝部が設けられていることが好適である。この態様では、前記緩衝部の径方向の厚さが、リングローラ及びリングギアの径方向の厚さよりも薄く設定されていることが好適である。
【0020】
本発明の一態様では、リングローラを内径側へ押圧することで、サンローラとピニオンローラとの接触部、及びピニオンローラとリングローラとの接触部に押圧力を作用させる押圧機構を有することが好適である。この態様では、リングローラの外周部には、その軸線方向の一方側から他方側にかけて外径が徐々に減少するテーパ面が形成され、押圧機構は、テーパ面を押圧する押圧部材を含み、押圧部材はリングローラの外径側への変位が拘束され、リングローラはその軸線方向の一方側への変位が拘束され、押圧部材をリングローラの軸線方向の一方側へ押圧することで、リングローラを内径側へ押圧することが好適である。また、この態様では、押圧機構は、リングローラの外周部を締め付けることで、リングローラを内径側へ押圧する機構であることが好適である。また、この態様では、押圧機構は、リングローラに作用するトルクに応じた押圧力でリングローラを内径側へ押圧する機構であることが好適である。
【0021】
また、本発明に係る動力伝達装置は、サンローラとリングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、第2ピニオンローラと伝達用ローラとが接触することで、第2ピニオンローラと伝達用ローラとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用ローラ機構と、を有し、第1ピニオンローラ及び第2ピニオンローラが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、第2ピニオンローラの外径が第1ピニオンローラの外径と異なり、キャリア、リングローラ、及び伝達用ローラのいずれか1つの回転が固定されることを要旨とする。
【0022】
本発明においては、第1ピニオンローラ及び第2ピニオンギアがキャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられていることで、遊星ローラ機構のローラと伝達用ローラ機構のローラとを連結部材を介さずに直接結合して一体化することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0023】
また、本発明に係る動力伝達装置は、第1サンローラと第1リングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第1ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された第1遊星ローラ機構と、第2サンローラと第2リングローラとの間に第2ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第2ピニオンローラが第2キャリアに回転自在に支持された第2遊星ローラ機構と、を有し、第2サンローラが第1キャリアと連結されており、第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能であることを要旨とする。
【0024】
本発明においては、第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達するために必要な第1遊星ローラ機構及び第2遊星ローラ機構の回転部材の固定を1箇所で行うことができるとともに、動力伝達装置の軸線方向における第1リングローラと第2リングローラとの間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さを短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図10】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の概略構成を示す図である。
【図11】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図12】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図13】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図14】リングローラを内径側へ押圧する押圧機構の他の概略構成を示す図である。
【図15】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【図16】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図17】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図18】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図19】本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の他の概略構成を示す図である。
【図20】関連技術に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
【0027】
「実施形態1」
図1は、本発明の実施形態1に係る動力伝達装置の概略構成を示す図であり、その軸線方向と直交する方向から見た図を示す。本実施形態に係る動力伝達装置においては、遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14が入力軸16と出力軸18との間で直列に接続されており、電動機やエンジン等の動力源から入力軸16に入力された動力が遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構14でそれぞれ変速(減速)されてから出力軸18に伝達される。出力軸18に伝達された動力は、出力軸18と連結された負荷の駆動に用いられる。
【0028】
遊星ローラ機構12は、入力軸16に連結されたサンローラ21と、サンローラ21の外周を取り囲むリングローラ22と、サンローラ21とリングローラ22との間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(遊星ローラ)23と、各ピニオンローラ23を回転自在に支持するキャリア24と、を有する。図1は、遊星ローラ機構12がシングルピニオン遊星ローラ機構である例を示している。各ピニオンローラ23の外径(ピッチ円直径)は、サンローラ21の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されている。ここでの遊星ローラ機構12は、回転するローラ同士の油膜を介した接触部に押圧力(法線方向の力)を作用させることで生じる油膜のせん断力(接線方向のトラクション力)によって動力伝達を行うトラクションドライブ機構である。例えば遊星ローラ機構12を焼き嵌め方式で組み立てることにより、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部(接触面)27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部(接触面)28に押圧力(法線力)を作用させることが可能となる。また、本実施形態では、リングローラ22にその内径側(サンローラ21側)への押圧力を付加することで、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部28に押圧力(法線力)を作用させる押圧機構を設けることもできる。ここでの押圧機構の構成例については後述する。このように、接触部27,28に法線力を作用させることで、接触部27,28に接線方向のトラクション力を発生させることができる。
【0029】
変速用歯車機構14は、複数のピニオンギア33と、出力軸18に連結され且つ各ピニオンギア33と噛み合わされたリングギア(内歯車)32と、各ピニオンギア33を回転自在に支持するキャリア34と、有し、各ピニオンギア33とリングギア32との間でトルク伝達を行うことが可能である。リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、各ピニオンギア33の外径(ピッチ円直径)よりも大きく設定されており、リングギア32は、その内周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合っている。そして、リングギア32の内径(ピッチ円直径)は、リングローラ22の内径(ピッチ円直径)よりも小さく設定されており、各ピニオンギア33の外径は、各ピニオンローラ23の外径と異なり、各ピニオンローラ23の外径よりも小さく設定されている。
【0030】
本実施形態では、キャリア24,34同士が連結されており、ピニオンローラ23及びピニオンギア33がキャリア24,34に回転自在に支持された共通のピニオン回転部材43に備えられている。つまり、ピニオンローラ23及びピニオンギア33が一体化されている。キャリア24,34は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。そのため、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)については、キャリア24,34の中心軸まわりの回転である公転がロックされており、自軸まわりの回転である自転のみが許容されている。なお、キャリア24,34の一方を省略し、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)をキャリア24,34の他方に回転自在に支持することもできる。
【0031】
入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27に生じる接線方向のトラクション力によって、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達されることで減速される。各ピニオン回転部材43に伝達された動力は、各ピニオンギア33とリングギア32との噛み合いによって、各ピニオンギア33からリングギア32に伝達されることで減速される。そして、リングギア32に伝達された動力が出力軸18から出力される。このように、本実施形態に係る動力伝達装置は減速装置として機能し、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。なお、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)への動力伝達においては、各ピニオン回転部材43の公転は行われずに、各ピニオン回転部材43の自転のみが行われる。
【0032】
変速用歯車機構14は、歯の噛み合いによってトルク伝達を行うため、トラクション力によってトルク伝達を行う遊星ローラ機構12よりも、そのトルク伝達容量を大きくすることが容易である。しかし、変速用歯車機構14は、高速回転時にはその摩擦トルクが増大し、さらに歯の噛み合いによる振動・騒音も増大する。一方、遊星ローラ機構12は、その摩擦トルクが変速用歯車機構14より小さく、高速回転時の振動・騒音も変速用歯車機構14より小さい。そこで、入力軸16に入力された動力を減速して出力軸18へ伝達する場合は、遊星ローラ機構12を入力軸16側、変速用歯車機構14を出力軸18側に配置することで、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギア(ピニオンギア33及びリングギア32)の回転速度を減少させることができる。したがって、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を実現することができる。
【0033】
ただし、前述の図20に示す構成例のように、遊星ローラ機構112のリングローラ122と遊星歯車機構114のサンギア131とを連結する場合は、遊星ローラ機構112の最も外径側に位置するリングローラ122と遊星歯車機構114の最も内径側に位置するサンギア131との間に連結部材125を設ける必要がある分、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)が増大する。その結果、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0034】
これに対して本実施形態では、ピニオンローラ23及びピニオンギア33を共通のピニオン回転部材43に設けて、ピニオンローラ23及びピニオンギア33を一体化することで、遊星ローラ機構12のローラと変速用歯車機構14のギアとを連結部材を介さずに直接結合することが可能となる。したがって、動力伝達装置の軸線方向(図1の左右方向)の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。そして、キャリア24,34の一方を省略することで、動力伝達装置の軸線方向の全長をさらに短縮することができる。
【0035】
本実施形態では、図2に示すように、キャリア24の回転をロックする代わりに、リングローラ22をケーシングに固定してリングローラ22の回転をロックすることもできる。この場合は、各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23及びピニオンギア33)については、公転及び自転の両方が許容される。なお、図2は、キャリア34が省略され、各ピニオン回転部材43がキャリア24に回転自在に支持された例を示している。
【0036】
図2に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)及びキャリア24に伝達される。ここでは、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われる。各ピニオン回転部材43(ピニオンギア33)及びキャリア24に伝達された動力は、リングギア32に伝達される。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(リングギア32)へ動力が減速されて伝達される。この図2に示す構成例によれば、動力伝達装置の変速比(減速比)をさらに増大させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、図3に示すように、キャリア24の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B1と、リングローラ22の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B2と、を設けることもできる。図3に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB1,B2間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をキャリア24とリングローラ22との間で切り換えることで、動力伝達装置の変速比(減速比)を切り換えることができる。
【0038】
また、本実施形態では、図4〜6に示すように、外周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を変速用歯車機構14に設けることもできる。図4〜6は、それぞれ図1〜3に示す構成例に対してサンギア31を追加した例を示している。この場合の変速用歯車機構14は、サンギア31及びリングギア32と噛み合うピニオンギア(遊星ギア)33がキャリア34に回転自在に支持された遊星歯車機構により構成される。トルク伝達時には、各ピニオンギア33は、リングギア32からの反力によってラジアル方向の力を受け、各ピニオンギア33を回転支持するピニオンシャフトにもラジアル方向の力が作用する。図4〜6に示す構成例では、各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を設けることで、各ピニオンギア33に作用するラジアル方向の力をサンギア31によって受けることができ、サンギア31に作用するラジアル方向の力は全体で釣り合う。その結果、ピニオンシャフトに作用するラジアル方向の力を低減することができる。
【0039】
また、図1〜6に示す構成例では、動力源をリングギア32に連結し、動力源の動力をリングギア32から各ピニオン回転部材43を介してサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、リングギア32に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。この場合も、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の各ギアの回転速度を減少させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、図7に示すように、伝達用歯車機構14のリングギア32をケーシングに固定してリングギア32の回転をロックするとともに、出力軸18をキャリア24,34に連結することもできる。図7に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達される。ピニオンギア33と噛み合うリングギア32の回転は固定されているため、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われ、各ピニオン回転部材43の公転と連動してキャリア24,34(出力軸18)が回転する。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(キャリア24,34)へ動力が減速されて伝達される。この図7に示す構成例でも、ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定する(ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径と異ならせる)ことで、動力伝達装置の変速比(減速比)を遊星ローラ機構12単体の変速比(減速比)よりも増大させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、図8に示すように、外周に設けられた歯により各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31を伝達用歯車機構14に設け、サンギア31をケーシングに固定してサンギア31の回転をロックするとともに、出力軸18をキャリア24,34に連結することもできる。図8に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、サンローラ21から各ピニオン回転部材43(ピニオンローラ23)に伝達される。ピニオンギア33と噛み合うサンギア31の回転は固定されているため、各ピニオン回転部材43の公転及び自転の両方が行われ、各ピニオン回転部材43の公転と連動してキャリア24,34(出力軸18)が回転する。これによって、入力軸16(サンローラ21)から出力軸18(キャリア24,34)へ動力が減速されて伝達される。この図8に示す構成例でも、ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定する(ピニオンギア33の外径をピニオンローラ23の外径と異ならせる)ことで、動力伝達装置の変速比(減速比)を遊星ローラ機構12単体の変速比(減速比)よりも増大させることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、図9に示すように、リングギア32の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B3と、サンギア31の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B4と、を設けることもできる。図9に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB3,B4間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をリングギア32とサンギア31との間で切り換えることで、動力伝達装置の変速比(減速比)を切り換えることができる。
【0043】
また、図7〜9に示す構成例では、動力源をキャリア24,34に連結し、動力源の動力をキャリア24,34から各ピニオン回転部材43を介してサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、キャリア24,34に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。
【0044】
ここで、本実施形態に係る動力伝達装置(図1,2,7,8に示す構成例)において、変速比(減速比)、出力軸18の回転数(出力回転数)、及びピニオン回転部材43の回転数(ピニオン回転数)をそれぞれ計算した例を下表に示す。ただし、下表の計算結果においては、図1,2,7,8に示す構成例の最大外径(リングローラ22の外径)がいずれも等しい条件で計算しており、出力回転数及びピニオン回転数は、入力軸16の回転数が50000rpmのときの値である。キャリア24(34)、リングローラ22、リングギア32、及びサンギア31のいずれか1つの回転を固定する際にどれを固定するかで減速比が異なるが、一般的には、遊星ローラ機構12単体での変速比(減速比)は3〜5程度であるため、本実施形態によれば、動力伝達装置の小型化を実現しながら、動力伝達装置の変速比(減速比)を増大できることがわかる。
【0045】
【表1】
【0046】
次に、本実施形態において、サンローラ21と各ピニオンローラ23との接触部27、及び各ピニオンローラ23とリングローラ22との接触部28に押圧力(法線力)を作用させる押圧機構の構成例について説明する。ただし、以下に説明する構成例以外に、既知の押圧機構を用いることも可能である。
【0047】
図10に示す構成例では、リングローラ22の外周面に、その軸線方向の一方側(図の左側)から他方側(図の右側)にかけて外径が徐々に減少するテーパ面(円錐面)22aが形成されている。そして、リングローラ22のテーパ面22aを押圧する押圧リング(押圧部材)25が設けられている。押圧リング25の内周面には、リングローラ22の軸線方向の一方側から他方側にかけて内径が徐々に減少するテーパ面(円錐面)25aが形成されており、このテーパ面25aがリングローラ22のテーパ面22aと接触している。押圧リング25は、リングローラ22の外径側(図10の上側)への変位が拘束されており、リングローラ22は、その軸線方向の一方側への変位が拘束されている。
【0048】
図10に示す構成例では、押圧リング25にリングローラ22の軸線方向の一方側への押圧力を作用させることで、押圧リング25のテーパ面25aがリングローラ22のテーパ面22aを押圧し、くさび効果によってリングローラ22がその内径側(サンローラ21側)へ押圧される。これによって、接触部27,28に押圧力(法線力)を作用させることができ、接触部27,28にトラクション力を安定して発生させることができる。そして、押圧リング25に作用させるリングローラ22の軸線方向の一方側への押圧力を調整することで、接触部27,28に作用させる法線力を調整することが可能である。
【0049】
また、図11に示す構成例では、リングローラ22の外周面にベルト26が巻き付けられている。このベルト26によってリングローラ22の外周面を締め付けることで、リングローラ22をその内径側へ押圧することができ、接触部27,28に法線力を作用させることができる。そして、ベルト26の締め付け力を調整することで、接触部27,28に作用させる法線力を調整することが可能である。
【0050】
また、図12に示す構成例では、リングローラ22の外周を取り囲むアウターリング29が設けられている。リングローラ22の外周面及びアウターリング29の内周面にはそれぞれカム面22b,29bが対向して形成されており、これらのカム面22b,29bの間に挟まれて転動球30が配設されている。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた押圧力でリングローラ22をその内径側へ押圧するトルクカムが構成される。より具体的には、リングローラ22に作用するトルクによってリングローラ22とアウターリング29との間に位相差が発生すると、転動球30がカム面22b,29bに沿って転動することで、この位相差に応じた押圧力でリングローラ22がその内径側へ押圧される。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた法線力を接触部27,28に作用させることができ、接触部27,28に作用させる法線力をより適切に調整することができる。
【0051】
また、図13,14に示す構成例では、リングローラ22の外周面とアウターリング29の内周面との間に油圧室35が形成されている。アウターリング29には、この油圧室35に連通するシリンダ室37が形成されており、このシリンダ室37内には、リングローラ22に連結された油圧ピストン36が設けられている。油圧室35内及びシリンダ室37内は作動油で満たされている。なお、図13は入力軸16側から見た図を示し、図14は出力軸18側から見た図を示す。
【0052】
図13,14に示す構成例では、リングローラ22に作用するトルクによってリングローラ22とアウターリング29との間に位相差が発生すると、油圧ピストン36がシリンダ室37の周壁に沿って摺動することで、この位相差に応じた油圧力が油圧室35内に発生する。この油圧力によってリングローラ22がその内径側へ押圧されることで、接触部27,28に法線力が作用する。これによって、リングローラ22に作用するトルクに応じた押圧力でリングローラ22をその内径側へ押圧することができる。つまり、リングローラ22に作用するトルクに応じた法線力を接触部27,28に作用させることができる。
【0053】
「実施形態2」
図15は、本発明の実施形態2に係る動力伝達装置の概略構成を示す図である。以下の実施形態2の説明では、実施形態1と同様の構成または対応する構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
本実施形態では実施形態1と比較して、変速用歯車機構14は、ピニオンギア33とリングギア32とキャリア34の他に、各ピニオンギア33と噛み合うサンギア31をさらに有している。つまり、変速用歯車機構14は、サンギア31及びリングギア32と噛み合うピニオンギア(遊星ギア)33がキャリア34に回転自在に支持された遊星歯車機構により構成されている。図15は、変速用歯車機構14がシングルピニオン遊星歯車機構である例を示している。そして、遊星ローラ機構12のキャリア24が変速用歯車機構(遊星歯車機構)14のサンギア31に連結されており、変速用歯車機構14のキャリア34が出力軸18に連結されている。さらに、リングローラ22及びリングギア32が共通のリング部材42に備えられていることで、リングローラ22及びリングギア32が一体化されている。リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)は、ケーシングに固定されていることで、その回転がロックされている。他の構成については、実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0055】
入力軸16に入力された動力源からの動力は、接触部27,28に生じるトラクション力によって各ピニオンローラ23の公転(キャリア24の中心軸まわりの回転)及び自転(自軸まわりの回転)が行われることで、サンローラ21からキャリア24に減速されて伝達される。キャリア24に伝達された動力は、各ピニオンギア33とサンギア31及びリングギア32との噛み合いによって各ピニオンギア33の公転(キャリア34の中心軸まわりの回転)及び自転(自軸まわりの回転)が行われることで、サンギア31からキャリア34に減速されて伝達される。そして、キャリア34に伝達された動力が出力軸18から出力される。このように、本実施形態に係る動力伝達装置は減速装置として機能し、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。さらに、遊星ローラ機構12を入力軸16側、変速用歯車機構14を出力軸18側に配置することで、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギアの回転速度を減少させることができるので、動力伝達装置(減速装置)の高速化、高効率化、及び低騒音化を実現することができる。
【0056】
遊星ローラ機構12及び変速用歯車機構(遊星歯車機構)14は、ともに2自由度の回転自由度を有する機構であるので、入力軸16と出力軸18との間で動力伝達を行うためには、遊星ローラ機構12を構成する回転部材のいずれか1つ、及び変速用歯車機構14を構成する回転部材のいずれか1つを固定する必要がある。ただし、前述の図20に示す構成例のように、遊星ローラ機構112のリングローラ122と遊星歯車機構114のサンギア131とを連結し、キャリア124,134の回転を固定する場合は、リングローラ122及びサンギア131とともに回転する連結部材125が動力伝達装置の軸線方向においてキャリア124,134間に配置される。その場合は、キャリア124,134の回転を別々の箇所で固定する必要があるため、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)が増大する。その結果、動力伝達装置の大型化を招くことになる。
【0057】
これに対して本実施形態では、リングローラ22及びリングギア32を共通のリング部材42に設けて、リングローラ22及びリングギア32を一体化する。これによって、遊星ローラ機構12のリングローラ22及び変速用歯車機構14のリングギア32の回転を1箇所で固定することができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラ22とリングギア32との間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0058】
本実施形態では、図16に示すように、リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)の回転をロックする代わりに、キャリア24及びサンギア31をケーシングに固定してキャリア24及びサンギア31の回転をロックすることもできる。この場合、ピニオンローラ23については、公転がロックされており、自転のみが許容されている。
【0059】
図16に示す構成例では、入力軸16に入力された動力源からの動力は、各ピニオンローラ23の自転によって、サンローラ21からリング部材42(リングローラ22)に減速されて伝達される。リング部材42に伝達された動力は、各ピニオンギア33の公転及び自転によって、リングギア32からキャリア34に変速されて伝達される。このように、図16に示す構成例でも、入力軸16に入力された動力源からの動力は、遊星ローラ機構12で減速され、変速用歯車機構14でさらに減速される。したがって、動力伝達装置全体での変速比(減速比)を増大させることができる。そして、図16に示す構成例では、遊星ローラ機構12のキャリア24及び変速用歯車機構14のサンギア31の回転を1箇所で固定することができるとともに、動力伝達装置の軸線方向におけるリングローラ22とリングギア32との間隔を狭めることができる。したがって、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0060】
また、本実施形態では、図17に示すように、リング部材42(リングローラ22及びリングギア32)の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B3と、キャリア24及びサンギア31の回転を固定することが可能なブレーキ(固定機構)B4と、を設けることもできる。図17に示す構成例では、係合するブレーキをブレーキB3,B4間で切り換える、つまり回転をロックする回転部材をリング部材42とキャリア24との間で切り換えることで、出力軸18の回転方向を切り換えることが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、リングギア32がリングローラ22と結合されているので、接触部27,28に法線力を作用させるためにリングローラ22をその内径側へ押圧すると、リングローラ22の内径側への弾性変形に伴ってリングギア32もその内径側に弾性変形しやすくなる。リングギア32の内径側への弾性変形が増大すると、変速用歯車機構14の摩擦トルクの増大を招くことになる。そこで、本実施形態では、リングローラ22の内径側への変形に伴うリングギア32の内径側への変形を緩和できることが好ましい。
【0062】
図18に示す構成例では、リング部材42におけるリングローラ22とリングギア32との間に、リングローラ22の径方向への変形によるリングギア32の径方向への変形を緩和するための緩衝部46が設けられている。ここでの緩衝部46の径方向の厚さは、緩衝部46が径方向に弾性変形しやすいように、リングローラ22及びリングギア32の径方向の厚さよりも薄く設定されている。この緩衝部46を設けることで、リングローラ22の内径側への弾性変形による影響を緩衝部46の弾性変形によって吸収することができる。したがって、リングローラ22の内径側への弾性変形に伴うリングギア32の内径側への弾性変形を抑制することができ、変速用歯車機構14の摩擦トルクの増大を抑制することができる。なお、図19に示すように、緩衝部46の径方向の厚さを徐々に減少させることもできる。
【0063】
また、図15〜19に示す構成例でも、動力源をキャリア34に連結し、動力源の動力をキャリア34からサンローラ21へ変速して伝達することもできる。この場合の動力伝達装置は、キャリア34に入力された動力を増速してサンローラ21へ伝達する増速装置として機能する。この場合も、遊星ローラ機構12で伝達されるトルクを減少させることができるとともに、変速用歯車機構14の各ギアの回転速度を減少させることができる。
【0064】
また、以上の実施形態1,2では、歯車伝動機構である変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の代わりに、トラクションドライブ機構である変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設けることもできる。
【0065】
実施形態1で変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設ける場合は、複数のピニオンローラ(第2ピニオンローラ)をピニオンギア33の代わりに設け、これら複数のピニオンローラと接触するリングローラ(第2リングローラ)をリングギア32の代わりに設ける。そして、遊星ローラ機構12のピニオンローラ(第1ピニオンローラ)23と変速用ローラ機構の第2ピニオンローラとを共通のピニオン回転部材43に設け、これらのピニオンローラを一体化する。さらに、第2ピニオンローラの外径をピニオンローラ23の外径と異ならせ(例えば第2ピニオンローラの外径をピニオンローラ23の外径よりも小さく設定し)、キャリア24(34)、リングローラ(第1リングローラ)22、及び第2リングローラのいずれか1つの回転を固定する。伝達用ローラ機構は、第2ピニオンローラと第2リングローラとの間でトルク伝達を行うことが可能であり、第2リングローラの回転が固定されていない場合は、第2ピニオンローラと第2リングローラとの間で動力を変速して伝達することが可能である。また、サンギア31の代わりに、第2ピニオンローラと接触するサンローラ(第2サンローラ)を伝達用ローラ機構に設けることもできる。さらに、第2サンローラの回転を固定することもできる。
【0066】
実施形態2で変速用ローラ機構を設ける場合は、キャリア24に連結されたサンローラ(第2サンローラ)をサンギア31の代わりに設け、第2サンローラの外周を取り囲むリングローラ(第2リングローラ)をリングギア32の代わりに設け、第2サンローラと第2リングローラとの間にこれらと接触して挟持(挟圧保持)された複数のピニオンローラ(第2ピニオンローラ)をピニオンギア33の代わりに設ける。つまり、変速用ローラ機構が遊星ローラ機構(第2遊星ローラ機構)により構成される。そして、遊星ローラ機構(第1遊星ローラ機構)12のリングローラ(第1リングローラ)22と変速用ローラ機構(第2遊星ローラ機構)の第2リングローラとを共通のリング部材42に設け、これらのリングローラを一体化する。
【0067】
なお、実施形態1,2で変速用歯車機構(伝達用歯車機構)14の代わりに変速用ローラ機構(伝達用ローラ機構)を設ける場合の動作については、上記の説明において、サンギア31を第2サンローラに置き換え、リングギア32を第2リングローラに置き換え、ピニオンギア33を第2ピニオンローラに置き換えた場合を考えればよい。変速用ローラ機構を設ける場合も、動力伝達装置の軸線方向の長さ(全長)を短縮することができ、動力伝達装置の小型化を実現することができる。
【0068】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
12 遊星ローラ機構、14 変速用歯車機構(伝達用歯車機構)、16 入力軸、18 出力軸、21 サンローラ、22 リングローラ、23 ピニオンローラ、24,34 キャリア、31 サンギア、32 リングギア、33 ピニオンギア、42 リング部材、43 ピニオン回転部材、46 緩衝部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、
ピニオンギアと伝達用ギアとが噛み合うことで、ピニオンギアと伝達用ギアとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用歯車機構と、
を有し、
ピニオンローラ及びピニオンギアが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、
ピニオンギアの外径がピニオンローラの外径と異なり、
キャリア、リングローラ、及び伝達用ギアのいずれか1つの回転が固定される、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用歯車機構は、ピニオンギアと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能な機構であり、
キャリアまたはリングローラの回転が固定されることで、サンローラと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアの回転が固定されることで、サンローラとキャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアは、その内周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うリングギアである、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
伝達用歯車機構は、ピニオンギア及びリングギアの他に、ピニオンギアと噛み合うサンギアをさらに含む遊星歯車機構である、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項3に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアは、その外周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うサンギアである、動力伝達装置。
【請求項7】
サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持され、ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された遊星ローラ機構と、
サンギア及びリングギアと噛み合うピニオンギアが第2キャリアに回転自在に支持された遊星歯車機構と、
を有し、
サンギアが第1キャリアと連結されており、
リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、
第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7に記載の動力伝達装置であって、
前記リング部材には、リングローラの径方向への変形によるリングギアの径方向への変形を緩和するための緩衝部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8に記載の動力伝達装置であって、
前記緩衝部の径方向の厚さが、リングローラ及びリングギアの径方向の厚さよりも薄く設定されている、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
リングローラを内径側へ押圧することで、サンローラとピニオンローラとの接触部、及びピニオンローラとリングローラとの接触部に押圧力を作用させる押圧機構を有する、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
リングローラの外周部には、その軸線方向の一方側から他方側にかけて外径が徐々に減少するテーパ面が形成され、
押圧機構は、テーパ面を押圧する押圧部材を含み、
押圧部材はリングローラの外径側への変位が拘束され、リングローラはその軸線方向の一方側への変位が拘束され、
押圧部材をリングローラの軸線方向の一方側へ押圧することで、リングローラを内径側へ押圧する、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
押圧機構は、リングローラの外周部を締め付けることで、リングローラを内径側へ押圧する機構である、動力伝達装置。
【請求項13】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
押圧機構は、リングローラに作用するトルクに応じた押圧力でリングローラを内径側へ押圧する機構である、動力伝達装置。
【請求項14】
サンローラとリングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、
第2ピニオンローラと伝達用ローラとが接触することで、第2ピニオンローラと伝達用ローラとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用ローラ機構と、
を有し、
第1ピニオンローラ及び第2ピニオンローラが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、
第2ピニオンローラの外径が第1ピニオンローラの外径と異なり、
キャリア、リングローラ、及び伝達用ローラのいずれか1つの回転が固定される、動力伝達装置。
【請求項15】
第1サンローラと第1リングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第1ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された第1遊星ローラ機構と、
第2サンローラと第2リングローラとの間に第2ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第2ピニオンローラが第2キャリアに回転自在に支持された第2遊星ローラ機構と、
を有し、
第2サンローラが第1キャリアと連結されており、
第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、
第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項1】
サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、
ピニオンギアと伝達用ギアとが噛み合うことで、ピニオンギアと伝達用ギアとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用歯車機構と、
を有し、
ピニオンローラ及びピニオンギアが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、
ピニオンギアの外径がピニオンローラの外径と異なり、
キャリア、リングローラ、及び伝達用ギアのいずれか1つの回転が固定される、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用歯車機構は、ピニオンギアと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能な機構であり、
キャリアまたはリングローラの回転が固定されることで、サンローラと伝達用ギアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアの回転が固定されることで、サンローラとキャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアは、その内周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うリングギアである、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
伝達用歯車機構は、ピニオンギア及びリングギアの他に、ピニオンギアと噛み合うサンギアをさらに含む遊星歯車機構である、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項3に記載の動力伝達装置であって、
伝達用ギアは、その外周に設けられた歯によりピニオンギアと噛み合うサンギアである、動力伝達装置。
【請求項7】
サンローラとリングローラとの間にピニオンローラがこれらと接触して挟持され、ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された遊星ローラ機構と、
サンギア及びリングギアと噛み合うピニオンギアが第2キャリアに回転自在に支持された遊星歯車機構と、
を有し、
サンギアが第1キャリアと連結されており、
リングローラ及びリングギアが共通のリング部材に備えられており、
第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項7に記載の動力伝達装置であって、
前記リング部材には、リングローラの径方向への変形によるリングギアの径方向への変形を緩和するための緩衝部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8に記載の動力伝達装置であって、
前記緩衝部の径方向の厚さが、リングローラ及びリングギアの径方向の厚さよりも薄く設定されている、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1に記載の動力伝達装置であって、
リングローラを内径側へ押圧することで、サンローラとピニオンローラとの接触部、及びピニオンローラとリングローラとの接触部に押圧力を作用させる押圧機構を有する、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
リングローラの外周部には、その軸線方向の一方側から他方側にかけて外径が徐々に減少するテーパ面が形成され、
押圧機構は、テーパ面を押圧する押圧部材を含み、
押圧部材はリングローラの外径側への変位が拘束され、リングローラはその軸線方向の一方側への変位が拘束され、
押圧部材をリングローラの軸線方向の一方側へ押圧することで、リングローラを内径側へ押圧する、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
押圧機構は、リングローラの外周部を締め付けることで、リングローラを内径側へ押圧する機構である、動力伝達装置。
【請求項13】
請求項10に記載の動力伝達装置であって、
押圧機構は、リングローラに作用するトルクに応じた押圧力でリングローラを内径側へ押圧する機構である、動力伝達装置。
【請求項14】
サンローラとリングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持された遊星ローラ機構と、
第2ピニオンローラと伝達用ローラとが接触することで、第2ピニオンローラと伝達用ローラとの間でトルク伝達を行うことが可能な伝達用ローラ機構と、
を有し、
第1ピニオンローラ及び第2ピニオンローラが、キャリアに回転自在に支持された共通のピニオン回転部材に備えられており、
第2ピニオンローラの外径が第1ピニオンローラの外径と異なり、
キャリア、リングローラ、及び伝達用ローラのいずれか1つの回転が固定される、動力伝達装置。
【請求項15】
第1サンローラと第1リングローラとの間に第1ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第1ピニオンローラが第1キャリアに回転自在に支持された第1遊星ローラ機構と、
第2サンローラと第2リングローラとの間に第2ピニオンローラがこれらと接触して挟持され、第2ピニオンローラが第2キャリアに回転自在に支持された第2遊星ローラ機構と、
を有し、
第2サンローラが第1キャリアと連結されており、
第1リングローラ及び第2リングローラが共通のリング部材に備えられており、
第1キャリアまたはリング部材の回転が固定されることで、第1サンローラと第2キャリアとの間で動力を変速して伝達することが可能である、動力伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−252603(P2011−252603A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204851(P2011−204851)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2006−234376(P2006−234376)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2006−234376(P2006−234376)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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