説明

動植物埋込用の非接触ICタグ

【課題】 動植物の種々の動きに追随する若干の変形が可能で、容易に破損を生じない動植物埋込用の非接触ICを提供すること。
【解決手段】 ICチップ1a及びアンテナコイル1bで構成した扁平状のタグ本体1と、タグ本体1をその両面側から挟持状態に被覆する二枚の柔軟性の絶縁シート2、2とで構成する。ICチップ1aは、個体識別情報等を保持する記憶部、マイクロプロセッサ及び外部のリーダと通信する通信部の内、アンテナコイル1bを除く要素を備えたものである。アンテナコイル1bは、ICチップ1a中の一部と組み合わさって通信部を構成する要素であり、渦巻き状に巻いた導体で扁平状に構成してある。絶縁シート2は、柔軟性を有する熱可塑性ポリウレタンのシートであり、二枚のそれの間にタグ本体1を配置し、上下方向から加熱加圧して密着状態に接合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の動物や植物の個体識別情報その他の情報の記憶手段及びこれと外部の処理手段の備える通信手段との間で非接触によって通信可能な通信手段を備えた動植物埋込用の非接触ICタグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、マウスその他の実験動物個体識別及び履歴情報を管理する手段として動植物埋込用の非接触ICタグが注目されつつある。動物や植物の健康に害を与えない部位の皮下等に埋め込んでおき、個体を識別し、実験の趣旨その他に沿って、各々に何らかの処理を施す等の際に、その処理情報を書き込んでおき、個体を識別して必要な際に読み出して利用することが可能となる。これは、例えば、耳等に結合しておく動物取付用個体識別タグ(特許文献1、2)等と異なり、紛失してしまう虞が無く、また記録できる情報量を十分に確保可能である等の利点がある。勿論、コンピュータで直接処理可能な情報のやり取りができる利点があるのは云うまでもない。
【0003】
このような利点から、このような動植物埋込用のICタグは酪農に於ける肉牛や乳牛の個体識別及び生育履歴情報の管理への使用が開始されつつある。植物の生育を行う分野でも検討されつつある。
また家庭で飼育される愛玩動物の個体識別等でも同様に利用が検討されつつある。
【0004】
家庭で飼育するという意味では、一種の愛玩動物かも知れないが、爬虫類のような危険動物の飼育も家庭その他で行われることがあり、このような危険動物の飼育には、現在、都道府県知事の許可が必要になっている。その許可の条件として対象の危険動物に個体識別措置を施すことが義務づけられている。そしてこのような個体識別措置として、個体識別情報を保持したマイクロチップ(動植物埋込用の非接触ICタグ)を対象の危険動物に埋め込むことになっている。
【0005】
現在このような場合に埋め込むマイクロチップとして提供されているのは、生体適合ガラス製の容器中にコイル、コンデンサ及びICチップからなる非接触ICタグ本体が納められているものであり、これが専用のインジェクタを利用して対象の危険動物の安全な部位を選択して皮下に埋め込まれている。特に危険動物でなくても同様のマイクロチップが飼育者の希望により犬や猫等の一般の愛玩動物の首等の皮下に埋め込まれることもある。
【0006】
このようなマイクロチップは、それがこれらの動物の体内で正常な状態を保持できていれば、対象動物の個体識別や履歴情報の保存、更にこれらを通じた動物の管理が目的通りに行える可能性があるのは確かである。しかしながら、前記のように、前記マイクロチップは、非接触ICタグ本体をガラスの容器に収納した物であり、埋め込まれた対象動物が身体を種々に動かし、或いは埋込位置を外部の種々の物品、物体、構造物、或いは他の動物にぶつけたりすることが頻繁にあるため、これによって該ガラスの容器が破損する事故がしばしば発生するという問題がある。このようなガラスの容器の破損は、多くの場合、これを埋め込まれた動物自体には特別の健康上の被害が生じることはないようであるが、前記のような個体識別や履歴管理などの目的は達成できないことになってしまう。
【0007】
以上のマイクロチップの他に、これに類似のトランスポンダの提案(特許文献3)があり、このトランスポンダは、ガラスの小瓶に急速硬化液体を充填し、その中にIC回路ハイブリッド及びアンテナを装入して、キャップで閉じ、該急速硬化液体を硬化させた物である。
【0008】
このトランスポンダは、ガラスの小瓶の内部に、硬化体に埋め込まれた状態のIC回路ハイブリッド及びアンテナが充填された状態になっているので、容易に曲がることが無くなり、また全体として補強された結果となっている。従ってこれを動物のいずれかの部位の皮下に埋め込んだ場合に、その動物が前記のように活動したとしても、そのガラスの小瓶は容易に破損しない可能性がある。しかし、このトランスポンダは、これを埋め込んだ動物の身体の動作に応じてその全体又は一部が曲がるような柔軟性を備える物ではないため、動物の体内での適合性が不十分であり、更には、構成上、若干大型にならざるを得ないという問題もある。
【0009】
【特許文献1】特開平04−84838号公報
【特許文献2】特開2007−000004号公報
【特許文献3】特開平09−117230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の観点から、個体識別情報その他の情報の記憶手段及びこれと外部の処理手段の備える通信手段との間で非接触によって通信可能な通信手段を備えた動植物埋込用の非接触ICタグであって、容易に破損を生ぜず、かつ埋込対象の動植物の種々の活動又は動きに適合して変形が可能であるように構成した動植物埋込用の非接触ICを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1は、タグ本体を個体識別情報その他の情報の記憶部、マイクロプロセッサ及び外部の通信手段との間で非接触で通信可能な通信部で構成し、該タグ本体を柔軟性を有する絶縁性素材で被覆して構成した動植物埋込用の非接触ICタグである。
【0012】
本発明の2は、本発明の1の動植物埋込用の非接触ICタグに於いて、前記タグ本体が扁平であり、前記柔軟性を有する絶縁素材がシート状であり、該扁平のタグ本体を該シート状の二枚の絶縁性素材で挟持状態に保持するように構成したものである。
【0013】
本発明の3は、本発明の2の動植物埋込用の非接触ICタグに於いて、前記シート状の絶縁性素材をプラスチックシートで構成したものである。
【0014】
本発明の4は、本発明の3の動植物埋込用の非接触ICタグに於いて、前記プラスチックシートとして、柔軟性の熱可塑性ポリウレタンのシートを採用したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の動植物埋込用の非接触ICタグによれば、前記記憶部、前記マイクロプロセッサ及び前記通信部を含むタグ本体を柔軟性を有する絶縁性素材で被覆して構成したため、これを対象動物の所定部位の皮下に埋め込んだ場合に、該対象動物が活発に活動し、身体を捻ったり、外部の種々の物品や構造物等にぶつかったりしても、埋め込まれた非接触ICタグは、それに応じて若干の変形をすることが可能であり、割れて壊れるようなことはない。また対象植物の所定部位に埋め込んだ場合も、取扱者との接触その他により該植物が動いた場合も同様である。
【0016】
またそのように変形可能であるため、埋め込まれた動植物にとっても負担の小さい物となる。なお、このような変形は、極端に大きく生じることはなく、通常、前記記憶部、前記マイクロプロセッサ及び前記通信部の大部分を構成するICチップについては、それ自体が極めて小さい物であるため、その影響を殆ど受けることはない。また通信部の一部を構成するコイルについても、これを構成する導体は可撓性であり、このような変形に追随することも可能であり、容易に破損することはない。通信性能に関しても殆ど影響を受けない。
【0017】
本発明の2の動植物埋込用の非接触ICタグによれば、扁平状のタグ本体をシート状の二枚の絶縁性素材で挟持状態に保持した物であり、非常に簡単に製造可能である。前記のように、絶縁性素材は柔軟性を有するものであり、その存在する面を折る方向へは容易に折曲可能であり、前記のような埋込対象動物の活動の際に、そのような方向に変形して該動植物の活動又は動きに自在に対応することができる。扁平状のタグ本体は、通信部の一部をなすコイルを渦巻き状に構成することで一般に構成される物であり、これが前記シート状の二枚の絶縁性素材で挟持された場合、云うまでもなく、前記の変形に容易に対応でき、通信性能にも支障を生じない。
【0018】
本発明の3の動植物埋込用の非接触ICタグによれば、前記シート状の絶縁性素材をプラスチックシートで構成することとしたため、容易にかつ安価に柔軟性を保持したタグを構成し得、通信性能にも悪影響を与えない。
【0019】
本発明の4の動植物埋込用の非接触ICタグによれば、前記プラスチックシートとして、柔軟性の熱可塑性ポリウレタンのシートを採用したため、一層、容易にかつ安価に柔軟性を保持したタグを構成し得、かつ通信性能にも悪影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の動植物埋込用の非接触ICタグは、基本的に、タグ本体を個体識別情報その他の情報の記憶部、マイクロプロセッサ及び外部の通信手段との間で非接触で通信可能な通信部で構成し、該タグ本体を柔軟性を有する絶縁性素材で被覆して構成したものである。
【0021】
前記タグ本体は、多くの場合、前記記憶部、前記マイクロプロセッサ及び前記通信部の内、アンテナコイルを除く殆どを備えたICチップと、アンテナコイルとからなり、通常、アンテナコイルを含む通信部で、外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うようになっている。該タグ本体は、上記ICチップとアンテナコイルの他に、それら相互の位置関係及びコイル形状を保持する必要上から、該ICチップ及びアンテナコイルをを支持するシート状等の基材を含むこともある。
【0022】
前記通信部の主要構成要素であるアンテナコイルは特定の形状のそれに限定されない。例えば、円筒型、或いは渦巻き型等種々の形状のそれが採用可能である。もっとも、柔軟性を有する絶縁性素材で被覆し、若干の変形を受けても性能を維持し得るとの観点からは扁平状のそれが適当であり、その観点からは渦巻き状のそれが適当である。また対象動植物に埋め込む際の動植物の負担を考慮すると、該動植物に長径方向に差込挿入する場合、短径が同一であれば、円形のアンテナコイルも楕円形乃至長方形のそれも差は殆どないので、高い性能を得やすい楕円形乃至長方形のコイルとするのが好ましい。
【0023】
このような扁平渦巻き状のアンテナコイルは、これを作成する方法も特定のそれに限定されないが、巻線方式とするのが高性能のアンテナコイルを得やすい点で好ましい。もっとも、エッチング方式、メッキ方式、スクリーン印刷方式、その他の作成法のそれを否定する趣旨ではない。
【0024】
また以上のようにアンテナコイルを扁平状の渦巻きコイルに構成した場合は、前記記憶部、マイクロプロセッサ及びアンテナコイルを除く通信部を構成するICチップは、そのコイルの内側に配置することが可能となり、タグ本体を扁平状に構成することができる。この場合は、前記絶縁性素材をシート状に構成し、該扁平状のタグ本体を該シート状の二枚の絶縁性素材で挟持状態に保持するように構成することができる。
【0025】
前記シート状の絶縁性素材は、絶縁性で、前記のように、柔軟性であれば、種々の素材を自由に採用可能であるが、安価で品質の良いそれを容易に入手できる点でプラスチックシートが適当である。また、このようなプラスチックシートとしては、熱可塑性ポリウレタンのシートが適当である。当然、柔軟性のそれを採用すべきである。二枚のこのシートの間にタグ本体を配した上で、上下方向から加熱加圧すれば、容易に該タグ本体に密着状態で接合し、該タグ本体の周囲にはみ出した部分は、シート相互が密着状態で接合固定することになる。
【0026】
従って本発明の動植物埋込用の非接触ICタグは、これを、例えば、生体への挿入装置を利用して対象の動植物の所望の部位の皮下に埋め込むことができる。
【0027】
この挿入装置としては、種々の装置を自由に用いることができるが、例えば、基本的構成要素として、先端が先鋭に構成された扁平状の突刺案内部と、その側部に開口されたタグ供給口から装入された動植物埋込用の非接触ICタグを先端から吐出させるべく該突刺案内部に後端側からスライド自在に挿入した帯状押出片とを備えた挿入装置を使用することができる。該突刺案内部は、その外周の大径のグリップ部と、その後端の指掛け部とを備え、該帯状押出片は、その後端に押し込み用のパッド部を備えていれば好都合である。
【0028】
この挿入装置を用いた場合は、前記帯状押出片を後方に引いて置いた上で、前記突刺案内部の側部に開口したタグ供給口からその内部に本発明の動植物埋込用の非接触ICタグを装入し、その後、該突刺案内部の先端を、対象の動植物の種類に応じた適切な部位、例えば、牛の場合は、肩の付近、犬の場合は、首の付近等の適切な部位を選択して、皮下まで突き刺し、次いで、前記帯状押出片を該突刺案内部に押し込み、その先端で前記非接触ICタグを押し出し、該突刺案内部の先端から吐出させ、該突刺案内部を動植物の該部位から引き抜く。こうして、本発明の動植物埋込用の非接触ICタグを対象動植物の適切な部位の皮下に埋め込むことができる。
【0029】
このように埋め込まれた本発明の動植物埋込用の非接触ICタグは、そのタグ本体を柔軟性を有する絶縁素材で被覆してあるため、埋め込まれた対象動物が活発に活動し、身体を捻ったり、外部の種々の物品や構造物等にぶつけたりしても、埋め込まれた非接触ICタグは、それに応じて若干の変形をすることが可能であり、割れて壊れるような問題が生じることはない。対象植物に埋め込まれた場合も、該植物が管理者その他に接触する等により動いても、同様に、容易に埋め込まれた動植物埋込用の非接触ICタグの破損が生じるようなことはない。
【0030】
例えば、上記の変形は、動物の動作又は植物の変形によって生じるものであり、その埋込部位との関係から極端に大きなものにはならない。更に、前記記憶部、前記マイクロプロセッサ及び前記通信部の大部分を構成しているICチップについては、それ自体が極めて小さい物であるため、その変形の影響を受けることは殆どない。また通信部の一部を構成するアンテナコイルについても、これを構成する導体は可撓性であり、このような変形に追随することが可能であり、容易に破損することはない。またその変形が小さいため通信性能に関しても殆ど影響を受けない。これらを被覆する絶縁素材も柔軟性を有し、容易に破損する物でないため、タグ本体が、動植物の体液等によって損傷を生じる虞もない。
【0031】
また本発明の動植物埋込用の非接触ICタグが、このように変形可能であり、容易に破損を生じる物でないため、これを埋め込まれた動物にとっても負担の小さい物となる。
【0032】
また、前記のように、タグ本体を扁平状に構成し、該タグ本体をシート状の二枚の絶縁性素材で挟持状態に保持することとした場合は、非常に簡単に製造可能となる。またこのように構成した場合は、前記のように、絶縁性素材は柔軟性を有するものであり、その存在する平面を折る方向へは容易に折曲可能であり、前記のような埋込対象動植物の活動又は動きの際に、そのような方向に変形して該動植物の活動又は動きに自在に対応することができる。
【0033】
扁平状のタグ本体は、通信部の一部をなすアンテナコイルを渦巻き状に構成することで構成されるが、これが前記シート状の二枚の絶縁性素材で挟持された場合は、云うまでもなく、前記のような変形に容易に対応でき、そのアンテナ性能にも殆ど支障を生じない。
【0034】
前記シート状の絶縁性素材をプラスチックシートで構成する場合は、容易にかつ安価に柔軟性を保持したタグを構成し得、通信性能にも悪影響を与えない。また該プラスチックシートとして、柔軟性の熱可塑性ポリウレタンのシートを採用する場合は、一層、容易にかつ安価に柔軟性を保持したタグを構成し得、かつ通信性能にも悪影響を与えない。
【実施例】
【0035】
この実施例の動植物埋込用の非接触ICタグは、図1(a)、(b)に示すように、基本的に、ICチップ1a及びアンテナコイル1bで構成した扁平状のタグ本体1と、該タグ本体1をその両面側から挟持状態に被覆する二枚の柔軟性の絶縁シート2、2とで構成したものである。
【0036】
前記ICチップ1aは、対象の動植物の個体識別情報その他の情報及びプログラム等を保持する記憶部、マイクロプロセッサ及び外部のリーダの通信手段と通信するための通信部の内、アンテナコイル1bを除く殆どを備えた構成要素であり、一般的に使用されるそれである。
【0037】
前記アンテナコイル1bは、前記ICチップ1a中の一部の要素と組み合わさって通信部を構成する構成要素であり、この実施例では、導体を渦巻き状に巻回して扁平状に構成したものである。即ち、このアンテナコイル1bは、巻線方式によって作成した高性能のものである。前記ICチップ1aは、図1(a)に示すように、このアンテナコイル1bの内側でその位置する平面内に配置し、該アンテナコイル1bの両端をそのコイル接続用の端子部に接続してあるものである。
【0038】
なお、以上のアンテナコイル1bを含む通信部では、前記のように、外部のリーダとの間で情報の交換を行う他、電力の授受を行うようになっている。
【0039】
前記柔軟性の絶縁シート2としては、この実施例では、柔軟性を有する熱可塑性ポリウレタンのシートを採用した。二枚のこの絶縁シート2、2の間にタグ本体1を配置した上で、上下方向から加熱加圧して該タグ本体1に密着状態に接合させたものである。こうして二枚の柔軟性を有する絶縁シート2、2で該タグ本体1を被覆した動植物埋込用の非接触ICタグTを構成することができるものである。
【0040】
なお、タグ本体1の両面に二枚の絶縁シート2、2を加熱接合して動植物埋込用の非接触ICタグTを完成する工程の一例を以下に示す。
これは、図2(a)、(b)に示すように、中央に凹部3acを構成した下型3aと、中央に突部3btを構成した上型3bとからなる加熱加圧装置3を用いて行う。下型3a及び上型3bには、それぞれ温度制御手段の付設されたヒータ3ah、3bhが内装され、前記凹部3ac及び突部3btが150℃〜200℃に加熱されるようになっている。上型3bは昇降可能になっている。加圧は、上下の絶縁シート2、2を、これらで挟んだタグ本体1の位置する部位ではそれぞれこれに密着し、これのない周囲の部位では、該絶縁シート2、2相互の内面が密着する程度に行うようになっている。
【0041】
この加熱加圧装置3を用いて、図2(a)に示すように、絶縁シート2、タグ本体1、絶縁シート2の順序で下型3aの凹部3acに積層状態に配する。次いで、図2(b)に示すように、上型3bを下降させ、積層状態の絶縁シート2、タグ本体1、絶縁シート2を加熱加圧する。
【0042】
こうして二枚の柔軟性を有する絶縁シート(熱可塑性ポリウレタンのシート)2、2で該タグ本体1を被覆してなる動植物埋込用の非接触ICタグTが完成する。
【0043】
このようにして構成した動植物埋込用の非接触ICタグTは、当然、対象の動植物の適切な部位に埋め込んで使用するものであり、これは、種々の挿入装置を用いて行うことが可能である。この実施例では、図3に示すように、先端が先鋭に構成された扁平状の突刺案内部4と、その側部に開口されたタグ供給口5から装入された動植物埋込用の非接触ICタグTを該突刺案内部4の先端から吐出させるべくその後端側からスライド自在に挿入した帯状押出片6とを備えた挿入装置7を用いるものとした。該突刺案内部4は、その後部外周に大径のグリップ部4aと、その後端の指掛け鍔部4bとを備え、該帯状押出片6は、その後端に押し込み用のパッド部6aを備えている。
【0044】
対象の動植物の皮下に、この実施例の動植物埋込用の非接触ICタグTを埋め込む場合は、前記挿入装置7の帯状押出片6を後方に引いた上で、前記突刺案内部4の側部に開口したタグ供給口5からその内部に該動植物埋込用の非接触ICタグTを装入し、その後、該突刺案内部4の先端を、対象の動植物の種類に応じた適切な部位、例えば、牛の場合は、肩の付近、犬の場合は、首の付近等の適切な部位を選択して、皮下まで突き刺す。次いで、前記帯状押出片6を該突刺案内部4に深く押し込み、その先端で前記非接触ICタグTを進出させ、該突刺案内部4の先端から対象動植物の皮下に吐出させ、その後、該突刺案内部4を該動植物の該部位から引き抜く。こうして、この実施例の動植物埋込用の非接触ICタグTを対象動植物の適切な部位の皮下に容易に埋め込むことができる。
【0045】
このように埋め込まれたこの実施例の動植物埋込用の非接触ICタグTは、そのタグ本体1を柔軟性を有する絶縁シート2、2で挟持状態に被覆してあるため、埋め込まれた対象動物が活発に活動し、または身体を捻ったり、外部の種々の物品や構造物等にぶつけたりしても、埋め込まれた非接触ICタグTは、それに応じて若干の変形をすることが可能であり、割れて壊れるような問題が生じることはない。また対象植物が管理者に接触したり、移動の際に何らかの物品又は構造物にぶつかったり、或いは風を受けたりして動いても、上記対象動物の場合と全く同様に、埋め込まれた非接触ICタグTが破損を生じるような不都合は殆ど生じない。
【0046】
ICチップ1aについては、それ自体が極めて小さい物であるため、動植物の動作による変形の影響は殆ど受けない。また通信部の一部を構成するアンテナコイル1bについても、これを構成する導体は可撓性であり、このような変形に追随することが可能であり、容易に破損することはない。またその変形が小さいため通信性能に関しても殆ど影響を受けない。これらを被覆する絶縁シート2、2も柔軟性を有し、容易に破損する物でないため、タグ本体1が、動植物の体液等によって損傷を生じる虞もない。
【0047】
またこの実施例の動植物埋込用の非接触ICタグTが、このように変形可能であり、容易に破損を生じるものでないため、これを埋め込まれた動植物にとっても負担の小さいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は実施例の動植物埋込用の非接触ICタグの平面図、(b)は(a)のA−A線拡大概略断面図。
【図2】(a)は加圧加熱装置を用いてタグ本体の両面に絶縁シートを接合固着する直前の状態を示した説明図、(b)は加圧加熱装置を用いてタグ本体の両面に絶縁シートを接合固着している状態を示した説明図。
【図3】実施例の動植物埋込用の非接触ICタグを対象動物に埋め込むための挿入装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1 タグ本体
1a ICチップ
1b アンテナコイル
2 絶縁シート
3 加熱加圧装置
3a 下型
3ac 凹部
3ah ヒータ
3b 上型
3bt 突部
3bh ヒータ
4 突刺案内部
4a グリップ部
4b 指掛け鍔部
5 タグ供給口
6 帯状押出片
6a パッド部
7 挿入装置
T 動植物埋込用の非接触ICタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ本体を個体識別情報その他の情報の記憶部、マイクロプロセッサ及び外部の通信手段との間で非接触で通信可能な通信部で構成し、該タグ本体を柔軟性を有する絶縁性素材で被覆して構成した動植物埋込用の非接触ICタグ。
【請求項2】
前記タグ本体が扁平であり、前記柔軟性を有する絶縁素材がシート状であり、該扁平のタグ本体を該シート状の二枚の絶縁性素材で挟持状態に保持するように構成した請求項1の動植物埋込用の非接触ICタグ。
【請求項3】
前記シート状の絶縁性素材をプラスチックシートで構成した請求項2の動植物埋込用の非接触ICタグ。
【請求項4】
前記プラスチックシートとして、柔軟性の熱可塑性ポリウレタンのシートを採用した請求項3の動植物埋込用の非接触ICタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−197761(P2008−197761A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30060(P2007−30060)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】