動脈瘤治療用ワイヤフレームによる部分的血液流妨害装置
【課題】ステントまたはステント状装置をできるだけ最低プロフィールで変形させる。
【解決手段】ステント1は、ワイヤから形成され、ワイヤの太さから特徴付けられた多数のフープ5がほぼ直線形態に伸長されるように変形され、ストラット7と変形されたフープ5は、大体直線状に沿い、少なくともほぼ前記ワイヤの太さの2倍に等しい直径を有するルーメンを有する挿入カテーテルのルーメン内に挿入されるステントおよびステントデリバリーシステム。
【解決手段】ステント1は、ワイヤから形成され、ワイヤの太さから特徴付けられた多数のフープ5がほぼ直線形態に伸長されるように変形され、ストラット7と変形されたフープ5は、大体直線状に沿い、少なくともほぼ前記ワイヤの太さの2倍に等しい直径を有するルーメンを有する挿入カテーテルのルーメン内に挿入されるステントおよびステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Jay Lenker,Ph.D.とK.David Crockett,Esq.らは、以下の明細書に示す新規かつ有用な発明をした。
【0002】
本発明は、動脈瘤治療用の装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤は、広範な症状を引き起こす血管構造における一般的障害である。脳内において動脈瘤が発生すると、脳内破裂もしくは死を引き起こし、一般的に知られた視覚障害や聴覚障害、平衡感覚障害などのようないくつかの末梢神経障害を引き起こす。脳内動脈瘤治療は、最近では多くの治療方法により可能となっている。開頭外科手術技術は、頭蓋骨を切り開き、動脈瘤に到達できるように脳を持ち上げ脳を動脈瘤から分離し、脳を挟みつけるかもしくは縫合した後、動脈瘤を切り離すことが要求される。これらの技術は、非常に危険度が高く、外科手術による死亡率と末梢神経障害発生率が高いため、確実に必要とされるまで行なわれない。
【0004】
ハイリスクと(特に脳内においての)動脈瘤における開頭外科手術の一般的に満足できない結果により、研究者は血管内から動脈瘤を治療する技術を開発した。装置の血管内挿入もしくは経皮的な挿入は、脳に関する開頭外科手術の危険を避けることができるが、技術的に困難である。移植やステント、ステントと移植の複合は、大動脈やその周辺の動脈のような太い血管において使用することに対して提案されている。これらの装置の目的は、破裂を防止すると共に動脈瘤の塊りの吸収を促進するために血液循環系から動脈瘤を締め出すことにある。これらの装置は、大きく一般的に脳のような狭い場所に対しては適さない傾向がある。本出願人による同時系属中である1996年9月18日出願の米国特許出願番号第08/707、996号と1996年10月9日出願の米国特許出願番号第08/762110号は、特に脳内における使用に適したいくつかのステントとステントのデリバリーシステムの考案を開示している。
【0005】
脳内における治療に適する他の動脈瘤治療方法は、異物を動脈瘤に詰め込み、動脈瘤内の血栓を促進し、破裂の危険性の除去と動脈瘤嚢の吸収を促進することである。1975年初頭、メタルコイルが腎臓動脈の閉塞によく使用されていた。それは、Gianturcoらの動脈閉塞用機械装置、124 Am.J.Roent.428(1975年)である。そのコイルの目的は、コイルの周囲に血栓(血液塊(blood clot))を早急に形成することを促進することである。そのコイルは、最近では広範な範囲において使用され、閉塞的コイルや塞栓コイル、ジアンターココイル(Gianturco coil)と呼ばれている。動脈瘤内において配置されることに適する大きさの塞栓コイルは、Target Therapeutics,Inc. and Cook, Inc.から商業的に利用できる。デリバリーカテーテルから脱着するための電気的機構を有する塞栓コイルは、GDC`sもしくはガグリルミ脱着コイル(Guglielmi Detachable Coils)と呼ばれている。GDC`sの使用方法は、例えば、Kleinらによる、Extracranial Aneurysms and Arteriovenous Fistula: ガグリルミ脱着コイルによる閉塞、201 Radiology 489(1996年)において説明されている。脳内においてのGDCコイルの使用方法は、例えば、Casasco らによるSelective Endovascular Treatment Of 71 Intracranial Aneurysms With Platinum Coils、79 J. Neurosurgery 3 (1993年)において説明されている。
【0006】
ジアンターココイルとガグリルミコイルは、しばしば体内の治療箇所において動脈瘤を閉塞することに使用されるが、それらを注入されるべき箇所に維持することが重要である。しかしながら、配置後のコイルの移動がよく起こり、これらのコイルによる危険な問題が発生する。WatanabeによるRetrieval Of A Migrated Detachable Coil、35 Neuro. Med. Clin. 247(1995年)に、頭蓋骨底動脈瘤内のコイルの上小脳動脈内におけるある場所からの移動が報告されている。HalbachらによるTransarterial Platinum Coil Embolization Of Carotid Cavernous Fistulas、12 AJNR 429(1991年)に、内勁動脈からのコイルの移動が報告されている。コイルの移動は、特に広い口径の動脈瘤内に配置されたコイルによく起こる。コイルの移動可能性は、危険であり、全ての処置において考慮に入れるべきである。また、コイルの移動が起こると生命を危険にさらす合併症となり得るので、望ましくない箇所における塞栓は、致命的な血液流を閉塞する。コイルの移動は、また必要な治療の処置における失敗を意味する。
【0007】
本出願人による同時系属中の1997年3月7日出願の米国特許出願番号第08/813、614号は、塞栓症にかかった血管を開いた状態に保持するフープステントを開示している。一本のワイヤから形成されるステントとステントデリバリー機構は、ステントを径方向に圧縮するのではなく、長手方向軸に沿って伸長することによって低プロフィールで(with a low profile)配置されることを可能にしている。血管系に使用する多岐に渡るステントの形状が提案されている。典型的には、ステントは、血管内で何らかの腫瘍により閉じられたもしくは閉塞されたある長さの血管を広げたまま保持することに使用される。バルーン拡張ステントと自己拡張ステントは、商業的に入手可能であり、数々の管障害の治療に使用され貢献している。ダス(Das)の米国特許第5、554、181号(1996年9月10日)のステントは、一本のワイヤにより作られた、多数のフープの全てが半径方向に配置されたスパインに接続しているワイヤステントを開示している。ヒルステッド(Hillstead)の米国特許第4、856、516号(1989年8月15日)の血管内ステント(Endovascular Stent)装置とその方法も同様である。このステントは、カテーテルプレッシャーにより折りたたまれ、体内に放す前に、カテーテルシースの内側に保持される。これらのステントは、カテーテルシースの内側に合うように半径方向に圧縮され、弾性的に拡張されるかもしくはバルーンにより被弾性的に拡張されてもよい。それらは、直径を減少させるために長手方向の軸に沿って引伸ばされたり、伸長され得るものではない。
【特許文献1】米国特許出願番号第08/707,996号
【特許文献2】米国特許出願番号第08/762,110号
【特許文献3】米国特許出願番号第08/813,614号
【特許文献4】米国特許第5,554,181号
【特許文献5】米国特許第4,856,516号
【非特許文献1】Kleinらによる、Extracranial Aneurysms and Arteriovenous Fistula: ガグリルミ脱着コイルによる閉塞、201 Radiology 489(1996年)
【非特許文献2】Casasco らによるSelective Endovascular Treatment Of 71 Intracranial Aneurysms With Platinum Coils、79 J. Neurosurgery 3 (1993年)
【非特許文献3】WatanabeによるRetrieval Of A Migrated Detachable Coil、35 Neuro. Med. Clin. 247(1995年)
【非特許文献4】HalbachらによるTransarterial Platinum Coil Embolization Of Carotid Cavernous Fistulas、12 AJNR 429(1991年)
【発明の開示】
【0008】
以下に記載の考案は、ステントまたはステント状装置をできるだけ最低プロフィールで変形させることができる。ステントは、一本のワイヤから形成される。他のステントのように、一本のワイヤからなるステントは、血管内への経皮的な挿入を可能にする小径形態を有し、また血管内への挿入後にとられる大径形態とを有する。ステントは、ステントの両端の間に設けられる血液流妨害領域を有する。血液流妨害領域は、動脈瘤内において血液の流れを変え動脈瘤を血栓状態にし、萎縮させ最終的には臨床的に解決されるようにする。他のステントとは異なり、以下に記載の一本のワイヤステントデリバリーシステムは、ステントが径方向に圧縮されることは要求されないが、代わりにステントが長手方向に伸長されるかもしくは最大伸長状態にまで変形されることを要求される。それにより、2本のワイヤの太さと同様の直径を有する小径形態となり、維持もしくはステントを配置される血管内に留めること、またはステントが配置される血管の開通性の維持を可能にするのに必要な大きさである大径形態となる。ステントデリバリーシステムは、ステント用に選択されたワイヤの大きさにより与えられる外径において可能な限り小さく形成されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、拡張状態のステントを示す。ステント1は、1本のワイヤ2からなり、中点3のような、ワイヤに沿った1点で折り曲げ、2本のワイヤセグメントからなるある長さのダブルワイヤを形成する。ダブルワイヤには複数のひねられた部分4が、ダブルワイヤをフープの形になるように引き離すことにより形成された複数のフープ(hoop)5とともに、散在されている。また、ワイヤは、フープの場所においてコイルを形成することもできる。そして、ダブルワイヤは、ひねられた部分4とフープ5の間の各接合点(junction)6のところで、それぞれのフープ5とひねられた部分4との間で約90度の角度をなすように曲げられる。ひねられた部分4は、連続するフープ5の間において、半径方向に交互に対向するストラット(strut)、橋(bridges)もしくはスパイン(spine)7を創設している。ワイヤ2の自由端8は、図示するようにひねられてフリースパインとすることが好ましい、もしくはお互いに接合されてもよい。この配置におけるフープは、ステントの長手方向軸を規定する共通軸9に沿って整列させられ、それらのフープは、お互いに対してほぼ平行に向けられている。ステントは、フープ径10によって決定される拘束されない直径(unconstrained diameter)を持つ。フープは、全て同じ直径であるか、もしくは異なる直径である。そして、先細血管に形状が従うように、フープの大きさがステントの一端から他端まで増加するようなフープを形成することは、特に有効である。ストラットは、全て等しい長さであるか、異なる長さであってもよい。2つのワイヤセグメントを相互により合わせることによって形成されるように図示されているが、ストラットは、そのセグメントをお互いに溶接することによるか、またはワイヤの強度が許す限り平行に並ぶようにセグメントを成形することによって形成されてもよい。ここにおいて、ステントは、2本の分離したワイヤから形成されてもよいが、この場合、末端のフープ5dの自由端ストラット、またはステントのどこかに設けられる接合点が必要であることに留意する必要がある。
【0010】
図2は、部分的に引き伸ばされた状態にあるステントを示す。この部分的に引き伸ばされた状態において、フープ5は、ステント1の長手方向軸9からある角度に向けられて傾いている楕円11の形に伸張されている。その角度は、ステントの長手方向軸とステントの半径12とがなす角の中間である。このようにして、ステントの全体的な直径は、長手方向軸に沿って引き伸ばされることにより十分減少する。ストラットが半径方向に整列していないことが、垂直方向の引き伸ばしまたはステントにおける全てのフープの変形を可能にしている。図示してあるように、それぞれのストラットは、他の側のストラットと半径方向に対向している。これは、前のストラットもしくは後のストラットに対してそのステントの反対側に位置することを意味する。隣接するストラットが180度離れていると、フープの最大伸長は、単にステントの両端を引っ張ることにより達成される。直接向かい合わせ、すなわち正確に180度の向かい合わせは、この構造の利点を享受することには要求されない、またストラットが半径方向に整列していないことで十分である。
【0011】
図3は、最大伸長にまで伸長されているフープステントを示す、そしてその状態でデリバリーカテーテルの上に取り付けられる。その完全伸長状態において、フープ5は、ステント1の長手方向軸9に対してある角度で傾いているのではなく、長手方向軸と一線に整列している楕円13もしくはほぼ楕円形状の楕円13まで伸長される。その角度は、ステントの長手方向軸に対して近くステントの半径12に垂直である。長手方向に完全に伸長されたとき、ステントは、2本のワイヤのみの太さを全てに渡って有する。これにより、ステントの最も細い挿入直径を提供できる。ステントは、デリバリーカテーテルの末端に取り付けられ、配備場所まで経皮的に運ばれる。ステントは、デリバリーカテーテルの末端から押し出されるか、もしくはデリバリーカテーテルが回収される間その場所に留まらせてもよい。ノンスライディングシース(non−sliding sheaths)、ジップコードシース(zip cord sheaths)などのようなさまざまな他の配備用機構が使用されてもよい。ステントが、超弾性合金(体温において超弾性を有する)から形成された場合、カテーテルから放出されると図1に示す開かれたフープ構造に復元することができる。ステントが体温からわずかに高い遷移温度を備えた形状記憶合金から形成された場合、図1に示す記憶された形状への復元は、カテーテルを介しステントの上に暖かい液体を注入することにより起こる。復元は、オーステナイト開始温度Asとオーステナイト終了温度Afの間で起こる。特にこの実施例においては、Afは、約30℃±5度に設定され、完全な拡張は、通常の室内温度より高く体温より低い温度において起こる。Afがある程度もしくは非常に体温より高ければ、履歴現象(hysteresis)により、材質が体温に冷却されたとき超弾性性質の確実な維持を保証することができる。
【0012】
ステントワイヤ2は、ニチノール(または他の形状記憶材料)のような形状記憶合金、ニチノールのような擬似弾性もしくは超弾性合金(もしくは他の擬似弾性もしくは超弾性材料)、ステンレス鋼のようなばね金属、および他の適する材料により形成されるのが好ましい。形状記憶ニチノールもしくは超弾性ニチノールから形成されると、ステントは、図1に示す形状にトレーニングされ(trained)、選択された遷移温度での形状記憶性質によりもしくは体温での超弾性性質により、復元する。材料の組成とトレーニングの統制は、これらの性質を持つことに重要である。ステンレス鋼のような弾性材料もまた使用してもよく、図1の形が材料の弛緩状態であり、図3において示すような形状に引き伸ばされた後、弾性的に復元するように作られることが好ましい。従来のステントのように、ステントは、ステント内に位置するバルーンを膨張させることにより配備させられてもよい。
【0013】
図1に示すフープステントの構造は、1本もしくは2本のワイヤの太さに等しい非常に低いプロフィール形態(low profile configuration)で配備された1本のワイヤから形成された構造の1つにしかすぎない。他の図は、追加の形態を示す。これらの形態は、動脈瘤の最終的な縮小と血栓形状を促進する部分的閉塞もしくは動脈瘤の血液の流れの妨害を提供するように設計される。支持構造は、前述したフープステントに類似している一方、これらのステントは、動脈瘤の首部の周囲もしくは内部において血液流妨害構造を維持するための骨組機構としてステント構造を利用する。
【0014】
図4において、概略的な実施形態を示す。血液流妨害装置15は、末端側フープと基端側フープとの間において伸長するストラット7を有し、1本のワイヤ2から形成されるステント本体部からなる。全ての直線形状をストラットに利用せず、ストラットは、ストラットライン(strut line)に沿って設けられる2つの小部分17,18に分割される。これら2つのストラットは、図示するように、同じワイヤ上に一体に形成される血液流妨害構造19を支持する。図4に示す血液流妨害構造19は、フープ20lとフープ20rにより規定される仮想シリンダからその軸に対して外側に形成されるラクダのコブ形状である。その形状は、動脈瘤嚢の中に突出するが血管のルーメンの中への突出は避ける不規則形状であるのが好ましい。
【0015】
血液流妨害構造が、動脈瘤嚢の中に突出される必要はないとき、図5に示す血液流妨害装置が、動脈瘤嚢の内部に突出が禁忌されているところにおいて使用されることが好ましい。血液流妨害装置21は、一本のワイヤ2から形成され、末端側フープと基端側フープとの間において伸長するストラット7を有するステント本体部14からなる。図4に示すように、ストラットは、スラットラインに沿って設けられる小部分22、23に分割される。これら2つのストラットは、図示するように、同じワイヤ上に一体に形成される血液流妨害構造を支持する。図4に示す血液流妨害部分とは異なり、血液流妨害部分24は、フープ20lとフープ20rにより規定される仮想シリンダからその軸に対して外側に形成されない。代わりに、血液流妨害部分は、フープ20lとフープ20rにより規定される想像上のシリンダに沿い、装置が配置される血管のルーメン内部において所望の湾曲をほぼ形成する曲線部分24からなる。血液流妨害部分が動脈瘤の開口部に橋を渡すように血管内部において配置されたとき、血液流の妨害は、血栓症と動脈瘤塊の減少を引き起こす。
【0016】
血液流妨害構造に適する異なる形状は、図6に示すようなコイル構造である。コイルタワー26は、ストラット27、28から径方向外側に突出し、一本のワイヤ29から一体に形成される。フープ20lとフープ20rは、図1において説明した方法により形成される。図7において示す等角図は、それぞれの部材が図5に示したものと同様である血液流妨害装置の異なる方向から見た図を表わす。コイルタワー26は、動脈瘤嚢の内部において適するサイズと寸法を有するようにされ、一方フープ20lとフープ20rは、通常のシリンダもしくはそれに近い形のシリンダの断面部における周囲の血管に確実に接触するように拡張するサイズと寸法を有するようにされる。ストラットは、動脈瘤嚢から付近に位置する通常のシリンダもしくはそれに近い形のシリンダの断面部におけるルーメンまで拡張することに適する長さである。図8は、血液流妨害構造が動脈瘤の空間内部に突出しないような向きを向いたフラットコイル30からなる、血液流妨害装置の変形例を示す。フラットコイルは、血管の壁となるようなシリンダ形状を形成するかもしくは形成しなくともよい。
【0017】
図9は、巻き型血液流妨害構造を形成するための心棒を示す。心棒は、血液流妨害部分を形成する柱部とストラットとフープを形成する一対の伸長部とを有するT字型心棒である。ワイヤは、C点において折り曲げられ、2本のワイヤは、心棒31の周りに巻かれ凹形状の溝32内に固定される。ピン33は、ワイヤをタワーに固定する。次に、2本のワイヤは、1本のワイヤが右側心棒34の方へ進路を取り、フープ形成溝35内において心棒の周囲を取り囲む一方、もう1つのワイヤが左側心棒36の方へ進路を取り、フープ形成溝37内において心棒の周囲を取り囲むように分けられる。心棒の周囲を完全に包み終えたあと、一本のワイヤのそれぞれの末端は、フープ形成溝の終点38付近において止めることが好ましい、もしくはタワー付近においてストラットに対して付加的な強度を提供するように、それぞれの末端を装置の中心側に返してもよい。心棒は、ステントが心棒に載せられ成形された後、ティー(tee)の連結点において取り外し可能なようにされてもよい。
【0018】
異なる配置方法と挿入構造が可能な2種類の動脈瘤は、嚢状側壁動脈瘤(saccular side wall aneurysm)と分岐動脈瘤(bifurcation aneurysm)である。頭蓋臨床経験(intracranial clinical experience)によると、分岐動脈瘤は、卓越して現れ、頭蓋底の先端動脈瘤(basilar tip aneurysm)は、臨床医学において非常に関心ある事である。毛細血管と勁動脈において、嚢状動脈瘤は、より一般的である。
【0019】
挿入構造の第1実施形態は、分岐動脈瘤に適用される(専門用語における一般的な用語である分岐動脈瘤を参照するが、末期動脈瘤(endapproachable aneurysm)の治療に対しても有効であることは明らかである)。体内への挿入に関して、装置は、長手方向に伸長され、ある長さのダブルワイヤを形成し、挿入カテーテル39内に図10に示すように収容される。分岐動脈瘤の治療に関しては、装置は、配置構造の末端に配置されたワイヤ屈曲部3と配置構造の基端に配置されたワイヤ終端8とを有し挿入カテーテル内に配置される。挿入カテーテルは、一般的な技術に従って体内の中に配置されるべき場所まで挿入される。図10は、頭蓋底の先端動脈瘤40に接近する挿入カテーテル39の末端側の先端を示す。動脈瘤は、頭蓋底動脈瘤41の後部大脳動脈瘤42lと42rへつながる分岐点に発生する。(この解剖学構造は、脳内に位置し、分かりやすいように図示されたウィリスサークル(Circle of Willis)43の一部である。その他のウィリスサークルの動脈は、後部につながる動脈44、前側につながる動脈45、左右の中間大脳動脈46および左右の前部大脳動脈47からなる。内勁動脈48もまたウィリスサークルを供給する。)ワイヤ屈曲部3は、配置構造の末端に配置され、装置の末端は動脈空間の中に挿入され、装置は押し出されるかもしくは配置カテーテルから放出されてもよい。
【0020】
カテーテルから放出された後、装置の末端49は、巻き形状に復元する。図11において、装置は、一部が配置され、巻き型閉塞構造は、カテーテルにより拘束されないので巻き形状に復元する。ワイヤ終端8dと8pのさらなる解放により、ワイヤのこれらの部分のフープ20l、20rとストラット27、28への復元を可能にしている。コイル、フープもしくはストラットの位置調整は、これらの部分を適正な場所に付いたり押したりすることに挿入カテーテルを使用することにより可能である。フープは、図12に示すように、血管の内壁に接する。配置後、ストラットとコイルとの間の角度50は、現れる。この角度50は、挿入以前に、ワイヤがストラットとコイル26による閉塞構造との間における鋭角的な角度を有する形状を備えるようにアニール(annealing)もしくはトレーニング(training)をすることにより、装置に覚え込ませてもよい。一方、図6において示す90°の角度を起因とする伸長は、90°の角度より少ない内在された角度を必要とする環境に配置されたとき、閉塞構造26を動脈瘤空間の内部に確実に保持する伸長となる。
【0021】
側壁動脈瘤もしくは側面から接近されるべきいかなる動脈瘤に関しても、閉塞装置は、一本のワイヤ構造の完全伸長状態で挿入されることが好ましい。図13に示すように、図4の閉塞装置15は、装置の基端と末端においてワイヤの自由端8d、8pと装置の長手方向中心の中点3とを有する一本の長いワイヤ2に伸長され、挿入カテーテル39の末端内に収容される。装置の配置のため、挿入カテーテル39は、体内に挿入され血管52内の動脈瘤51の場所にまで導かれる。図13に示すように、装置の末端(末端側自由端8dに一致する)は、動脈瘤51に対してちょうど末端に位置するようにされる。装置が適正に配置された後、挿入カテーテルは、取り除かれ(基端側に引かれることにより、または剥ぐことにより等)、装置は初期の形状に復元する。末端側自由端8dは、記憶されたフープ形状に復元し、ストラットと閉塞部は、記憶された閉塞形状に復元する。最後に、基端側自由端8pは、記憶されたフープ形状に復元する。図14は、末端側自由端8dが末端側フープ5dに復元し中点付近のワイヤが血液流妨害構造19に復元している部分的に配置された装置を示す。基端側自由端8pは、挿入カテーテルの末端内部に未だある状態を示し、放出後、基端側フープ5pの形状に復元する。
【0022】
それぞれの閉塞装置とステントの実施形態は、ニチノールにより作られた装置とステントに適するさまざまな方法を使用することにより制御されてもよい。ニチノールは、生体適合性が十分に立証されているので好ましく、制御が容易な遷移温度を有する多くの構成において利点がある。(他の形状記憶材料、擬似弾性材料、一般的な弾性ステンレススティール、エリジロイ(Elgiloy)もしくはプラスチックが使用されてもよい)。装置に使用されるニチノールは、形状記憶規定において使用され、体温に比べわずかに高い遷移温度を有し、装置は、(わずかに体温より高い温度を有する)暖水の噴射により記憶されている形状に復元する。代わって、装置に使用されるニチノールは、擬似弾性規定において使用され、体温において超弾性(擬似弾性ともいう)を有し、装置は、体内に挿入されたとき自動的に記憶された形状に復元する。超弾性装置は、挿入カテーテルの内部において適応するように超弾性的に変形することができ、体内へ挿入され、血液流内にカテーテルから放出されたとき記憶された形状に超弾性的に復元する。
【0023】
動脈瘤閉塞装置の実施形態において共通することは、閉塞構造が動脈瘤内の血栓形態を強調することを必要としていることである。この作用を強調するためには、閉塞構造は、プラチナのような既知の血栓材料によりコートされることが好ましい。動脈瘤嚢の外側でかつ血液流内にあるフープとストラットは、そのような血栓コーティングはされずに、ヘパリンやスズなどのコーティングのような非血栓コーティングを施すことが好ましい。このように、閉塞装置は、それぞれの部材の所望の性質を期待できる、さまざまな血栓作用を有するコーティング部材を有する。装置は、蛍光透視用装置の可視性を強調するために、タンタルや金、プラチナなどの材料によりコートされてもよい。装置は、血管内超音波を使用することにより明瞭に見ることができ、配置と適切な位置決めを助けるために有効である。装置は、動脈瘤の初期治療に対して使用される一方、塞栓材料とGDC`sとの組み合わせにより、これらの外部材料を動脈瘤内に保持し動脈瘤から血液流内に移動しないようにすることに使用されてもよい。
【0024】
以上、装置および方法の好ましい実施例をそれらが発揮される環境を参照して記載したが、それらは本発明の原理の実証例にすぎない。他の実施例や形態は本発明の精神と請求の範囲から逸脱することなく想到することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】拡張状態にあるステントを示す斜視図。
【図2】部分的に伸長されたステントを示す。
【図3】デリバリーカテーテル上に取り付けられる状態にある最長の長さに伸長されたフープステントを示す。
【図4】軸上に突出している血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図5】円柱形状に沿う血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図6】軸上に突出している血液流妨害コイル部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図7】軸上に突出している血液流妨害コイル部を有する血液流妨害装置の側面図を示す。
【図8】動脈瘤内に軸上に突出していない血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図9】巻き型血液流妨害構造を形成用の心棒の正面図を示す。
【図10】伸長され挿入カテーテル内に挿入された図7の装置の側面図を示す。
【図11】分岐先端動脈瘤内における図7の装置の配置方法を例示した図を示す。
【図12】分岐先端動脈瘤内における図7の装置の配置された図を示す。
【図13】側壁動脈瘤内における図4のの装置の配置方法を例示した図を示す。
【図14】側壁動脈瘤内における図4のの装置の配置方法を例示した図を示す。
【技術分野】
【0001】
Jay Lenker,Ph.D.とK.David Crockett,Esq.らは、以下の明細書に示す新規かつ有用な発明をした。
【0002】
本発明は、動脈瘤治療用の装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
動脈瘤は、広範な症状を引き起こす血管構造における一般的障害である。脳内において動脈瘤が発生すると、脳内破裂もしくは死を引き起こし、一般的に知られた視覚障害や聴覚障害、平衡感覚障害などのようないくつかの末梢神経障害を引き起こす。脳内動脈瘤治療は、最近では多くの治療方法により可能となっている。開頭外科手術技術は、頭蓋骨を切り開き、動脈瘤に到達できるように脳を持ち上げ脳を動脈瘤から分離し、脳を挟みつけるかもしくは縫合した後、動脈瘤を切り離すことが要求される。これらの技術は、非常に危険度が高く、外科手術による死亡率と末梢神経障害発生率が高いため、確実に必要とされるまで行なわれない。
【0004】
ハイリスクと(特に脳内においての)動脈瘤における開頭外科手術の一般的に満足できない結果により、研究者は血管内から動脈瘤を治療する技術を開発した。装置の血管内挿入もしくは経皮的な挿入は、脳に関する開頭外科手術の危険を避けることができるが、技術的に困難である。移植やステント、ステントと移植の複合は、大動脈やその周辺の動脈のような太い血管において使用することに対して提案されている。これらの装置の目的は、破裂を防止すると共に動脈瘤の塊りの吸収を促進するために血液循環系から動脈瘤を締め出すことにある。これらの装置は、大きく一般的に脳のような狭い場所に対しては適さない傾向がある。本出願人による同時系属中である1996年9月18日出願の米国特許出願番号第08/707、996号と1996年10月9日出願の米国特許出願番号第08/762110号は、特に脳内における使用に適したいくつかのステントとステントのデリバリーシステムの考案を開示している。
【0005】
脳内における治療に適する他の動脈瘤治療方法は、異物を動脈瘤に詰め込み、動脈瘤内の血栓を促進し、破裂の危険性の除去と動脈瘤嚢の吸収を促進することである。1975年初頭、メタルコイルが腎臓動脈の閉塞によく使用されていた。それは、Gianturcoらの動脈閉塞用機械装置、124 Am.J.Roent.428(1975年)である。そのコイルの目的は、コイルの周囲に血栓(血液塊(blood clot))を早急に形成することを促進することである。そのコイルは、最近では広範な範囲において使用され、閉塞的コイルや塞栓コイル、ジアンターココイル(Gianturco coil)と呼ばれている。動脈瘤内において配置されることに適する大きさの塞栓コイルは、Target Therapeutics,Inc. and Cook, Inc.から商業的に利用できる。デリバリーカテーテルから脱着するための電気的機構を有する塞栓コイルは、GDC`sもしくはガグリルミ脱着コイル(Guglielmi Detachable Coils)と呼ばれている。GDC`sの使用方法は、例えば、Kleinらによる、Extracranial Aneurysms and Arteriovenous Fistula: ガグリルミ脱着コイルによる閉塞、201 Radiology 489(1996年)において説明されている。脳内においてのGDCコイルの使用方法は、例えば、Casasco らによるSelective Endovascular Treatment Of 71 Intracranial Aneurysms With Platinum Coils、79 J. Neurosurgery 3 (1993年)において説明されている。
【0006】
ジアンターココイルとガグリルミコイルは、しばしば体内の治療箇所において動脈瘤を閉塞することに使用されるが、それらを注入されるべき箇所に維持することが重要である。しかしながら、配置後のコイルの移動がよく起こり、これらのコイルによる危険な問題が発生する。WatanabeによるRetrieval Of A Migrated Detachable Coil、35 Neuro. Med. Clin. 247(1995年)に、頭蓋骨底動脈瘤内のコイルの上小脳動脈内におけるある場所からの移動が報告されている。HalbachらによるTransarterial Platinum Coil Embolization Of Carotid Cavernous Fistulas、12 AJNR 429(1991年)に、内勁動脈からのコイルの移動が報告されている。コイルの移動は、特に広い口径の動脈瘤内に配置されたコイルによく起こる。コイルの移動可能性は、危険であり、全ての処置において考慮に入れるべきである。また、コイルの移動が起こると生命を危険にさらす合併症となり得るので、望ましくない箇所における塞栓は、致命的な血液流を閉塞する。コイルの移動は、また必要な治療の処置における失敗を意味する。
【0007】
本出願人による同時系属中の1997年3月7日出願の米国特許出願番号第08/813、614号は、塞栓症にかかった血管を開いた状態に保持するフープステントを開示している。一本のワイヤから形成されるステントとステントデリバリー機構は、ステントを径方向に圧縮するのではなく、長手方向軸に沿って伸長することによって低プロフィールで(with a low profile)配置されることを可能にしている。血管系に使用する多岐に渡るステントの形状が提案されている。典型的には、ステントは、血管内で何らかの腫瘍により閉じられたもしくは閉塞されたある長さの血管を広げたまま保持することに使用される。バルーン拡張ステントと自己拡張ステントは、商業的に入手可能であり、数々の管障害の治療に使用され貢献している。ダス(Das)の米国特許第5、554、181号(1996年9月10日)のステントは、一本のワイヤにより作られた、多数のフープの全てが半径方向に配置されたスパインに接続しているワイヤステントを開示している。ヒルステッド(Hillstead)の米国特許第4、856、516号(1989年8月15日)の血管内ステント(Endovascular Stent)装置とその方法も同様である。このステントは、カテーテルプレッシャーにより折りたたまれ、体内に放す前に、カテーテルシースの内側に保持される。これらのステントは、カテーテルシースの内側に合うように半径方向に圧縮され、弾性的に拡張されるかもしくはバルーンにより被弾性的に拡張されてもよい。それらは、直径を減少させるために長手方向の軸に沿って引伸ばされたり、伸長され得るものではない。
【特許文献1】米国特許出願番号第08/707,996号
【特許文献2】米国特許出願番号第08/762,110号
【特許文献3】米国特許出願番号第08/813,614号
【特許文献4】米国特許第5,554,181号
【特許文献5】米国特許第4,856,516号
【非特許文献1】Kleinらによる、Extracranial Aneurysms and Arteriovenous Fistula: ガグリルミ脱着コイルによる閉塞、201 Radiology 489(1996年)
【非特許文献2】Casasco らによるSelective Endovascular Treatment Of 71 Intracranial Aneurysms With Platinum Coils、79 J. Neurosurgery 3 (1993年)
【非特許文献3】WatanabeによるRetrieval Of A Migrated Detachable Coil、35 Neuro. Med. Clin. 247(1995年)
【非特許文献4】HalbachらによるTransarterial Platinum Coil Embolization Of Carotid Cavernous Fistulas、12 AJNR 429(1991年)
【発明の開示】
【0008】
以下に記載の考案は、ステントまたはステント状装置をできるだけ最低プロフィールで変形させることができる。ステントは、一本のワイヤから形成される。他のステントのように、一本のワイヤからなるステントは、血管内への経皮的な挿入を可能にする小径形態を有し、また血管内への挿入後にとられる大径形態とを有する。ステントは、ステントの両端の間に設けられる血液流妨害領域を有する。血液流妨害領域は、動脈瘤内において血液の流れを変え動脈瘤を血栓状態にし、萎縮させ最終的には臨床的に解決されるようにする。他のステントとは異なり、以下に記載の一本のワイヤステントデリバリーシステムは、ステントが径方向に圧縮されることは要求されないが、代わりにステントが長手方向に伸長されるかもしくは最大伸長状態にまで変形されることを要求される。それにより、2本のワイヤの太さと同様の直径を有する小径形態となり、維持もしくはステントを配置される血管内に留めること、またはステントが配置される血管の開通性の維持を可能にするのに必要な大きさである大径形態となる。ステントデリバリーシステムは、ステント用に選択されたワイヤの大きさにより与えられる外径において可能な限り小さく形成されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、拡張状態のステントを示す。ステント1は、1本のワイヤ2からなり、中点3のような、ワイヤに沿った1点で折り曲げ、2本のワイヤセグメントからなるある長さのダブルワイヤを形成する。ダブルワイヤには複数のひねられた部分4が、ダブルワイヤをフープの形になるように引き離すことにより形成された複数のフープ(hoop)5とともに、散在されている。また、ワイヤは、フープの場所においてコイルを形成することもできる。そして、ダブルワイヤは、ひねられた部分4とフープ5の間の各接合点(junction)6のところで、それぞれのフープ5とひねられた部分4との間で約90度の角度をなすように曲げられる。ひねられた部分4は、連続するフープ5の間において、半径方向に交互に対向するストラット(strut)、橋(bridges)もしくはスパイン(spine)7を創設している。ワイヤ2の自由端8は、図示するようにひねられてフリースパインとすることが好ましい、もしくはお互いに接合されてもよい。この配置におけるフープは、ステントの長手方向軸を規定する共通軸9に沿って整列させられ、それらのフープは、お互いに対してほぼ平行に向けられている。ステントは、フープ径10によって決定される拘束されない直径(unconstrained diameter)を持つ。フープは、全て同じ直径であるか、もしくは異なる直径である。そして、先細血管に形状が従うように、フープの大きさがステントの一端から他端まで増加するようなフープを形成することは、特に有効である。ストラットは、全て等しい長さであるか、異なる長さであってもよい。2つのワイヤセグメントを相互により合わせることによって形成されるように図示されているが、ストラットは、そのセグメントをお互いに溶接することによるか、またはワイヤの強度が許す限り平行に並ぶようにセグメントを成形することによって形成されてもよい。ここにおいて、ステントは、2本の分離したワイヤから形成されてもよいが、この場合、末端のフープ5dの自由端ストラット、またはステントのどこかに設けられる接合点が必要であることに留意する必要がある。
【0010】
図2は、部分的に引き伸ばされた状態にあるステントを示す。この部分的に引き伸ばされた状態において、フープ5は、ステント1の長手方向軸9からある角度に向けられて傾いている楕円11の形に伸張されている。その角度は、ステントの長手方向軸とステントの半径12とがなす角の中間である。このようにして、ステントの全体的な直径は、長手方向軸に沿って引き伸ばされることにより十分減少する。ストラットが半径方向に整列していないことが、垂直方向の引き伸ばしまたはステントにおける全てのフープの変形を可能にしている。図示してあるように、それぞれのストラットは、他の側のストラットと半径方向に対向している。これは、前のストラットもしくは後のストラットに対してそのステントの反対側に位置することを意味する。隣接するストラットが180度離れていると、フープの最大伸長は、単にステントの両端を引っ張ることにより達成される。直接向かい合わせ、すなわち正確に180度の向かい合わせは、この構造の利点を享受することには要求されない、またストラットが半径方向に整列していないことで十分である。
【0011】
図3は、最大伸長にまで伸長されているフープステントを示す、そしてその状態でデリバリーカテーテルの上に取り付けられる。その完全伸長状態において、フープ5は、ステント1の長手方向軸9に対してある角度で傾いているのではなく、長手方向軸と一線に整列している楕円13もしくはほぼ楕円形状の楕円13まで伸長される。その角度は、ステントの長手方向軸に対して近くステントの半径12に垂直である。長手方向に完全に伸長されたとき、ステントは、2本のワイヤのみの太さを全てに渡って有する。これにより、ステントの最も細い挿入直径を提供できる。ステントは、デリバリーカテーテルの末端に取り付けられ、配備場所まで経皮的に運ばれる。ステントは、デリバリーカテーテルの末端から押し出されるか、もしくはデリバリーカテーテルが回収される間その場所に留まらせてもよい。ノンスライディングシース(non−sliding sheaths)、ジップコードシース(zip cord sheaths)などのようなさまざまな他の配備用機構が使用されてもよい。ステントが、超弾性合金(体温において超弾性を有する)から形成された場合、カテーテルから放出されると図1に示す開かれたフープ構造に復元することができる。ステントが体温からわずかに高い遷移温度を備えた形状記憶合金から形成された場合、図1に示す記憶された形状への復元は、カテーテルを介しステントの上に暖かい液体を注入することにより起こる。復元は、オーステナイト開始温度Asとオーステナイト終了温度Afの間で起こる。特にこの実施例においては、Afは、約30℃±5度に設定され、完全な拡張は、通常の室内温度より高く体温より低い温度において起こる。Afがある程度もしくは非常に体温より高ければ、履歴現象(hysteresis)により、材質が体温に冷却されたとき超弾性性質の確実な維持を保証することができる。
【0012】
ステントワイヤ2は、ニチノール(または他の形状記憶材料)のような形状記憶合金、ニチノールのような擬似弾性もしくは超弾性合金(もしくは他の擬似弾性もしくは超弾性材料)、ステンレス鋼のようなばね金属、および他の適する材料により形成されるのが好ましい。形状記憶ニチノールもしくは超弾性ニチノールから形成されると、ステントは、図1に示す形状にトレーニングされ(trained)、選択された遷移温度での形状記憶性質によりもしくは体温での超弾性性質により、復元する。材料の組成とトレーニングの統制は、これらの性質を持つことに重要である。ステンレス鋼のような弾性材料もまた使用してもよく、図1の形が材料の弛緩状態であり、図3において示すような形状に引き伸ばされた後、弾性的に復元するように作られることが好ましい。従来のステントのように、ステントは、ステント内に位置するバルーンを膨張させることにより配備させられてもよい。
【0013】
図1に示すフープステントの構造は、1本もしくは2本のワイヤの太さに等しい非常に低いプロフィール形態(low profile configuration)で配備された1本のワイヤから形成された構造の1つにしかすぎない。他の図は、追加の形態を示す。これらの形態は、動脈瘤の最終的な縮小と血栓形状を促進する部分的閉塞もしくは動脈瘤の血液の流れの妨害を提供するように設計される。支持構造は、前述したフープステントに類似している一方、これらのステントは、動脈瘤の首部の周囲もしくは内部において血液流妨害構造を維持するための骨組機構としてステント構造を利用する。
【0014】
図4において、概略的な実施形態を示す。血液流妨害装置15は、末端側フープと基端側フープとの間において伸長するストラット7を有し、1本のワイヤ2から形成されるステント本体部からなる。全ての直線形状をストラットに利用せず、ストラットは、ストラットライン(strut line)に沿って設けられる2つの小部分17,18に分割される。これら2つのストラットは、図示するように、同じワイヤ上に一体に形成される血液流妨害構造19を支持する。図4に示す血液流妨害構造19は、フープ20lとフープ20rにより規定される仮想シリンダからその軸に対して外側に形成されるラクダのコブ形状である。その形状は、動脈瘤嚢の中に突出するが血管のルーメンの中への突出は避ける不規則形状であるのが好ましい。
【0015】
血液流妨害構造が、動脈瘤嚢の中に突出される必要はないとき、図5に示す血液流妨害装置が、動脈瘤嚢の内部に突出が禁忌されているところにおいて使用されることが好ましい。血液流妨害装置21は、一本のワイヤ2から形成され、末端側フープと基端側フープとの間において伸長するストラット7を有するステント本体部14からなる。図4に示すように、ストラットは、スラットラインに沿って設けられる小部分22、23に分割される。これら2つのストラットは、図示するように、同じワイヤ上に一体に形成される血液流妨害構造を支持する。図4に示す血液流妨害部分とは異なり、血液流妨害部分24は、フープ20lとフープ20rにより規定される仮想シリンダからその軸に対して外側に形成されない。代わりに、血液流妨害部分は、フープ20lとフープ20rにより規定される想像上のシリンダに沿い、装置が配置される血管のルーメン内部において所望の湾曲をほぼ形成する曲線部分24からなる。血液流妨害部分が動脈瘤の開口部に橋を渡すように血管内部において配置されたとき、血液流の妨害は、血栓症と動脈瘤塊の減少を引き起こす。
【0016】
血液流妨害構造に適する異なる形状は、図6に示すようなコイル構造である。コイルタワー26は、ストラット27、28から径方向外側に突出し、一本のワイヤ29から一体に形成される。フープ20lとフープ20rは、図1において説明した方法により形成される。図7において示す等角図は、それぞれの部材が図5に示したものと同様である血液流妨害装置の異なる方向から見た図を表わす。コイルタワー26は、動脈瘤嚢の内部において適するサイズと寸法を有するようにされ、一方フープ20lとフープ20rは、通常のシリンダもしくはそれに近い形のシリンダの断面部における周囲の血管に確実に接触するように拡張するサイズと寸法を有するようにされる。ストラットは、動脈瘤嚢から付近に位置する通常のシリンダもしくはそれに近い形のシリンダの断面部におけるルーメンまで拡張することに適する長さである。図8は、血液流妨害構造が動脈瘤の空間内部に突出しないような向きを向いたフラットコイル30からなる、血液流妨害装置の変形例を示す。フラットコイルは、血管の壁となるようなシリンダ形状を形成するかもしくは形成しなくともよい。
【0017】
図9は、巻き型血液流妨害構造を形成するための心棒を示す。心棒は、血液流妨害部分を形成する柱部とストラットとフープを形成する一対の伸長部とを有するT字型心棒である。ワイヤは、C点において折り曲げられ、2本のワイヤは、心棒31の周りに巻かれ凹形状の溝32内に固定される。ピン33は、ワイヤをタワーに固定する。次に、2本のワイヤは、1本のワイヤが右側心棒34の方へ進路を取り、フープ形成溝35内において心棒の周囲を取り囲む一方、もう1つのワイヤが左側心棒36の方へ進路を取り、フープ形成溝37内において心棒の周囲を取り囲むように分けられる。心棒の周囲を完全に包み終えたあと、一本のワイヤのそれぞれの末端は、フープ形成溝の終点38付近において止めることが好ましい、もしくはタワー付近においてストラットに対して付加的な強度を提供するように、それぞれの末端を装置の中心側に返してもよい。心棒は、ステントが心棒に載せられ成形された後、ティー(tee)の連結点において取り外し可能なようにされてもよい。
【0018】
異なる配置方法と挿入構造が可能な2種類の動脈瘤は、嚢状側壁動脈瘤(saccular side wall aneurysm)と分岐動脈瘤(bifurcation aneurysm)である。頭蓋臨床経験(intracranial clinical experience)によると、分岐動脈瘤は、卓越して現れ、頭蓋底の先端動脈瘤(basilar tip aneurysm)は、臨床医学において非常に関心ある事である。毛細血管と勁動脈において、嚢状動脈瘤は、より一般的である。
【0019】
挿入構造の第1実施形態は、分岐動脈瘤に適用される(専門用語における一般的な用語である分岐動脈瘤を参照するが、末期動脈瘤(endapproachable aneurysm)の治療に対しても有効であることは明らかである)。体内への挿入に関して、装置は、長手方向に伸長され、ある長さのダブルワイヤを形成し、挿入カテーテル39内に図10に示すように収容される。分岐動脈瘤の治療に関しては、装置は、配置構造の末端に配置されたワイヤ屈曲部3と配置構造の基端に配置されたワイヤ終端8とを有し挿入カテーテル内に配置される。挿入カテーテルは、一般的な技術に従って体内の中に配置されるべき場所まで挿入される。図10は、頭蓋底の先端動脈瘤40に接近する挿入カテーテル39の末端側の先端を示す。動脈瘤は、頭蓋底動脈瘤41の後部大脳動脈瘤42lと42rへつながる分岐点に発生する。(この解剖学構造は、脳内に位置し、分かりやすいように図示されたウィリスサークル(Circle of Willis)43の一部である。その他のウィリスサークルの動脈は、後部につながる動脈44、前側につながる動脈45、左右の中間大脳動脈46および左右の前部大脳動脈47からなる。内勁動脈48もまたウィリスサークルを供給する。)ワイヤ屈曲部3は、配置構造の末端に配置され、装置の末端は動脈空間の中に挿入され、装置は押し出されるかもしくは配置カテーテルから放出されてもよい。
【0020】
カテーテルから放出された後、装置の末端49は、巻き形状に復元する。図11において、装置は、一部が配置され、巻き型閉塞構造は、カテーテルにより拘束されないので巻き形状に復元する。ワイヤ終端8dと8pのさらなる解放により、ワイヤのこれらの部分のフープ20l、20rとストラット27、28への復元を可能にしている。コイル、フープもしくはストラットの位置調整は、これらの部分を適正な場所に付いたり押したりすることに挿入カテーテルを使用することにより可能である。フープは、図12に示すように、血管の内壁に接する。配置後、ストラットとコイルとの間の角度50は、現れる。この角度50は、挿入以前に、ワイヤがストラットとコイル26による閉塞構造との間における鋭角的な角度を有する形状を備えるようにアニール(annealing)もしくはトレーニング(training)をすることにより、装置に覚え込ませてもよい。一方、図6において示す90°の角度を起因とする伸長は、90°の角度より少ない内在された角度を必要とする環境に配置されたとき、閉塞構造26を動脈瘤空間の内部に確実に保持する伸長となる。
【0021】
側壁動脈瘤もしくは側面から接近されるべきいかなる動脈瘤に関しても、閉塞装置は、一本のワイヤ構造の完全伸長状態で挿入されることが好ましい。図13に示すように、図4の閉塞装置15は、装置の基端と末端においてワイヤの自由端8d、8pと装置の長手方向中心の中点3とを有する一本の長いワイヤ2に伸長され、挿入カテーテル39の末端内に収容される。装置の配置のため、挿入カテーテル39は、体内に挿入され血管52内の動脈瘤51の場所にまで導かれる。図13に示すように、装置の末端(末端側自由端8dに一致する)は、動脈瘤51に対してちょうど末端に位置するようにされる。装置が適正に配置された後、挿入カテーテルは、取り除かれ(基端側に引かれることにより、または剥ぐことにより等)、装置は初期の形状に復元する。末端側自由端8dは、記憶されたフープ形状に復元し、ストラットと閉塞部は、記憶された閉塞形状に復元する。最後に、基端側自由端8pは、記憶されたフープ形状に復元する。図14は、末端側自由端8dが末端側フープ5dに復元し中点付近のワイヤが血液流妨害構造19に復元している部分的に配置された装置を示す。基端側自由端8pは、挿入カテーテルの末端内部に未だある状態を示し、放出後、基端側フープ5pの形状に復元する。
【0022】
それぞれの閉塞装置とステントの実施形態は、ニチノールにより作られた装置とステントに適するさまざまな方法を使用することにより制御されてもよい。ニチノールは、生体適合性が十分に立証されているので好ましく、制御が容易な遷移温度を有する多くの構成において利点がある。(他の形状記憶材料、擬似弾性材料、一般的な弾性ステンレススティール、エリジロイ(Elgiloy)もしくはプラスチックが使用されてもよい)。装置に使用されるニチノールは、形状記憶規定において使用され、体温に比べわずかに高い遷移温度を有し、装置は、(わずかに体温より高い温度を有する)暖水の噴射により記憶されている形状に復元する。代わって、装置に使用されるニチノールは、擬似弾性規定において使用され、体温において超弾性(擬似弾性ともいう)を有し、装置は、体内に挿入されたとき自動的に記憶された形状に復元する。超弾性装置は、挿入カテーテルの内部において適応するように超弾性的に変形することができ、体内へ挿入され、血液流内にカテーテルから放出されたとき記憶された形状に超弾性的に復元する。
【0023】
動脈瘤閉塞装置の実施形態において共通することは、閉塞構造が動脈瘤内の血栓形態を強調することを必要としていることである。この作用を強調するためには、閉塞構造は、プラチナのような既知の血栓材料によりコートされることが好ましい。動脈瘤嚢の外側でかつ血液流内にあるフープとストラットは、そのような血栓コーティングはされずに、ヘパリンやスズなどのコーティングのような非血栓コーティングを施すことが好ましい。このように、閉塞装置は、それぞれの部材の所望の性質を期待できる、さまざまな血栓作用を有するコーティング部材を有する。装置は、蛍光透視用装置の可視性を強調するために、タンタルや金、プラチナなどの材料によりコートされてもよい。装置は、血管内超音波を使用することにより明瞭に見ることができ、配置と適切な位置決めを助けるために有効である。装置は、動脈瘤の初期治療に対して使用される一方、塞栓材料とGDC`sとの組み合わせにより、これらの外部材料を動脈瘤内に保持し動脈瘤から血液流内に移動しないようにすることに使用されてもよい。
【0024】
以上、装置および方法の好ましい実施例をそれらが発揮される環境を参照して記載したが、それらは本発明の原理の実証例にすぎない。他の実施例や形態は本発明の精神と請求の範囲から逸脱することなく想到することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】拡張状態にあるステントを示す斜視図。
【図2】部分的に伸長されたステントを示す。
【図3】デリバリーカテーテル上に取り付けられる状態にある最長の長さに伸長されたフープステントを示す。
【図4】軸上に突出している血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図5】円柱形状に沿う血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図6】軸上に突出している血液流妨害コイル部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図7】軸上に突出している血液流妨害コイル部を有する血液流妨害装置の側面図を示す。
【図8】動脈瘤内に軸上に突出していない血液流妨害部を有する血液流妨害装置の等角図を示す。
【図9】巻き型血液流妨害構造を形成用の心棒の正面図を示す。
【図10】伸長され挿入カテーテル内に挿入された図7の装置の側面図を示す。
【図11】分岐先端動脈瘤内における図7の装置の配置方法を例示した図を示す。
【図12】分岐先端動脈瘤内における図7の装置の配置された図を示す。
【図13】側壁動脈瘤内における図4のの装置の配置方法を例示した図を示す。
【図14】側壁動脈瘤内における図4のの装置の配置方法を例示した図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤから形成されワイヤの太さにより特徴付けられストラットにより結合された多数のフープからなるステントと、少なくともほぼ前記フープのワイヤの太さの2倍に等しい直径を有するルーメンとを有し、前記ステントは、
前記フープがほぼ直線形態に伸長されるように変形され、
前記ストラットと変形された前記フープは大体直線状に沿い、
前記ルーメン内に挿入される、ステントおよびステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記挿入カテーテルは、ほぼ直線形態にある前記ステントに適応するのに十分であり、前記フープのワイヤの太さの2倍にほぼ等しい直径を有するルーメンを有することを特徴とする請求項1に記載のステントおよびステントデリバリーシステム。
【請求項1】
ワイヤから形成されワイヤの太さにより特徴付けられストラットにより結合された多数のフープからなるステントと、少なくともほぼ前記フープのワイヤの太さの2倍に等しい直径を有するルーメンとを有し、前記ステントは、
前記フープがほぼ直線形態に伸長されるように変形され、
前記ストラットと変形された前記フープは大体直線状に沿い、
前記ルーメン内に挿入される、ステントおよびステントデリバリーシステム。
【請求項2】
前記挿入カテーテルは、ほぼ直線形態にある前記ステントに適応するのに十分であり、前記フープのワイヤの太さの2倍にほぼ等しい直径を有するルーメンを有することを特徴とする請求項1に記載のステントおよびステントデリバリーシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−237924(P2008−237924A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129895(P2008−129895)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【分割の表示】特願平10−548261の分割
【原出願日】平成10年5月1日(1998.5.1)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【分割の表示】特願平10−548261の分割
【原出願日】平成10年5月1日(1998.5.1)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
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