説明

勾配密度深層ろ過システム

【課題】
【解決手段】流体114を益々精密に勾配密度深層ろ過効果を提供する装置、システム及び方法である。該装置は、アセタール又は他の実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂から製造されたメルトブロー成形したマイクロフィラメント204、206、208の変化する密度を有するメルトブローろ過組立体112を含む。このように、装置は、色々な燃料、冷却剤、及びその他の液体の形態と適合可能な勾配密度深層ろ過システム112を提供することにより、効率的なろ過を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ろ過システム、より具体的には、色々な燃料、冷却剤、及びその他の液体並びに気体状流体と適合可能な勾配密度深層ろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンの価格が継続的に上昇する結果、世界中にて代替燃料の使用及び利用可能性が増すに到っている。実際に、ガソリンに対する経済的で環境的に安全な代替物として、メタノール、エタノール、天然ガス、プロパン、バイオディーゼル、電気、水素及びPシリーズ燃料のような代替燃料の使用が増している。かかる非石油燃料は、全体として、生物学的材料、太陽エネルギ及び石炭のような国内で生産され、再生可能な資源から得られる。天然ガスは、また代替燃料の基本的なエネルギ源として多量に使用されている。再生可能ではないが、米国及び北アメリカの近隣諸国の双方にて多量の天然ガスの供給量がある。このように、代替燃料は、外国からの制限された原油供給者及び有限な精製能力に依存する、ガソリンの変動するコスト及び利用可能性による影響を実質的に受けない、比較的安全な形態のエネルギを提供する。
【0003】
使用時、代替燃料は、ガソリンと比較して実質的にクリーンに燃焼し、有害な汚染物質及び排気ガスを減少させることにより環境上の利点をもたらす。更に、代替燃料車両は、全体として、その標準的な同等の車両と比較して燃料の消費量が少ない。このこともまた、車両の排ガス量及び関係した環境上の劣化を減少させることに寄与する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
代替燃料の環境上及び経済的健全性による利益を享受し得るよう代替燃料車両は、開発されているが、このような車両は、全体として、燃料と燃料が圧送されるときに通るフィルタとの基本的な化学的不適合性のため、かかる燃料の完全な利点を実現することはできない。実際上、タンク内燃料フィルタの商業的に利用可能なものの殆どは、ガソリン又はディーゼル燃料をろ過するために設計されており、このため、かかる材料と代替燃料との適合性に配慮することなくかかる目的に適した材料から成っている。典型的な燃料フィルタは、1つ又はより多くの層を有する内部ろ過媒体を封入する外層を含む。深層媒体型フィルタとして既知のかかる燃料フィルタは、全体として、フィルタ内に汚染物質を効果的に封じ込めつつ、高効率及び容量を示す。小さい粒子の効果的なろ過を更に最適化するため、深層媒体フィルタの内部ろ過媒体は、メルトブロー成形した不織熱可塑性フィラメントから成るものとすることができる。
【0005】
メルトブーロ成形したフィラメントのウェブは、従来の織地の織り技術によっては全体として実現し得ない程度の精密ろ過を実現する。メルトブロー成形法は、熱可塑性フィラメントストランドを高速度の気体に曝し、この気体は、フィラメントを細くし(attenuate)且つフィラメントを微細ファイバに分解する。ファイバが捕集網に向けて動くと、周囲空気がファイバを冷却し且つ凝固させて自然接合した不織ウェブにし、この不織ウェブは、小さい粒子のろ過に極めて効果的である。
【0006】
メルトブロー成形法は、全体として、高ファイバ強度を提供し且つ過剰なファイバの接合又は破断を防止するのに十分粘性である一方、細かい微細ファイバを製造するのに十分流体的である熱可塑性ポリマーを必要とする。同様に、ポリマーは、過剰な融合による凝結を防止しつつ、凝固したとき、その他のファイバと十分に接合するポリマーであることが重要である。実際上、不適当な凝結は、ファイバがその繊維状の独自の特徴を失い、このため、フィルタとして機能しなくなる領域を生じさせる。かかる理由のため、結晶化が迅速であればある程、また、ポリマーの融点が高ければ高い程、より優れた結果が得られる。ポリマーは、全体として、この条件の厳しい過程にとって最も適していると考えられ、今日、燃料フィルタ業界にて優勢的に利用されているものは、ナイロンである。
【0007】
ナイロンのメルトブロー成形したフィラメントは、従来のガソリン燃料フィルタシステムにて良好に機能するが、代替燃料、特にエタノール及びメタノールのようなアルコールを含む燃料は、かかるフィラメントを膨潤させ、これにより燃料ポンプに対する流れの制限程度を増し且つ、エンジンへの燃料の流れを減少させる傾向となる。更に、かかるフィラメントは、代替燃料の色々な化学的成分への露出による損傷及び劣化を受け易い。その結果、代替燃料車両における燃料効率及び信頼性が損なわれる可能性がある。
【0008】
従って、代替燃料と適合可能な勾配密度深層媒体型ろ過システムが必要とされている。望ましくは、かかる勾配密度深層ろ過システムは、小さい粒子のろ過に対して効果的であり、化学的に誘発された膨潤及びその他の化学的に誘発された損傷及び効果に抵抗し、また、代替燃料車両における燃料効率及び信頼性を最適化するものとする。かかる勾配密度深層ろ過システムが本明細書にて開示され且つ特許請求の範囲に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、現在の最新の技術に対応して、特に、現在利用可能な勾配密度深層媒体ろ過システムにより完全には解消されていない当該技術における問題点及び必要性に対応して開発されたものである。従って、本発明は、当該技術における上述した短所の多く又は全てを解決する勾配密度深層媒体ろ過システムを提供すべく開発されたものである。
【0010】
本発明の特定の実施の形態に従った、流体をろ過する装置は、冷却剤又は燃料のような流体を益々精密にろ過するメルトブロー成形したろ過組立体を含む。メルトブロー成形したろ過組立体は、実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントの変化する密度を含むことができる。1つの実施の形態において、メルトブロー成形したマイクロフィラメントの直径は、約2ないし5μmの範囲にある。一部の実施の形態において、メルトブロー成形したマイクロフィラメントは、化学的に誘発された効果に抵抗することができる実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂にて形成することができる。実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂の例は、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロン又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
特定の実施の形態において、メルトブロー成形したろ過組立体は、単一層又は多数のメルトブロー成形した層を含み、メルトブロー成形した層の各々は、メルトブロー成形したマイクロフィラメントの独特で且つ実質的に一定の多孔率を有する。メルトブロー成形した層は、メルトブロー成形した層の各々に相応する多孔率は、メルトブロー成形した層と標的装置との間の距離が減少するに伴い、低下するように配置することができる。
【0012】
該装置は、粗ろ過を行い得るようにメルトブロー成形したろ過組立体に連結された一般的なろ過エレメントを更に含み、この場合、一般的なろ過エレメントは、例えば、スパンボンドしたろ過媒体である。特定の実施の形態において、装置は、一般的なろ過及びメルトブロー成形したろ過組立体を機械的応力から保護し得るよう一般的なろ過エレメントに実質的に隣接する外側ろ過エレメントを含むことができる。
【0013】
本発明のシステムは、流体の勾配密度深層ろ過を行い得るようにも提供される。該システムは、流体を貯蔵し得るようにされたタンクと、流体を標的装置まで圧送するポンプと、標的装置に到達する前に流体をろ過するフィルタとによって具体化することができる。フィルタは、流体を益々精密にろ過するメルトブロー成形したろ過組立体を含むことができ、この場合、メルトブロー成形したろ過組立体は、実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントの異なる多孔率を含む。装置におけるように、メルトブロー成形したマイクロフィラメントは、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロン又はそれらの組み合わせのような実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂を含むことができる。勾配ろ過組立体は、多孔率毎にメルトブロー成形した層を配置することを含み、層の各々は、その層に独特のメルトブロー成形したマイクロフィラメントの実質的に一定の多孔率を有し、その多孔率は、層と標的装置との間の距離が減少するに伴い低下する。最後に、フィルタは、粗ろ過用の一般的なろ過エレメントと、保護目的のための外側ろ過エレメントとを更に含むことができる。
【0014】
流体の勾配密度深層ろ過効果を提供すべく本発明の方法が提供される。1つの実施の形態において、この方法は、実質的に寸法的に安定的な熱可塑性剤をメルトブロー成形して実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントを形成するステップと、メルトブロー成形したマイクロフィラメントを独創的で且つ実質的に一定の多孔率を有するメルトブロー成形した層に形成するステップと、メルトブロー成形した複数の層をそれらの相対的な多孔率に従って配置し、メルトブロー成形したろ過組立体を形成するステップと、流体をメルトブロー成形したろ過組立体を通してろ過し、流体を益々精密にろ過するステップとを含む。一部の実施の形態において、この方法は、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロン、及び実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂の少なくとも1つを含むように実質的に寸法安定的な熱可塑性剤を選ぶステップを更に含むことができる。更に、流体をろ過するステップは冷却剤及び燃料から成る群から選ばれた流体をろ過するステップを含むことができる。
【0015】
本明細書の全体に亙って特徴、有利な効果又は同様の文言に言及することは、本発明の任意の1つの実施の形態にて本発明により実現することができる全ての特徴及び有利な効果を意味するものではない。特徴及び有利な効果に言及する文言は、1つの実施の形態に関して説明した特定の特徴、有利な効果又は性質は本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味することが理解される。このように、本明細書の全体に亙って特徴及び有利な効果の説明並びに同様の文言は、同一の実施の形態を説明することができるが、必ずしもそうとは限らない。
【0016】
更に、本発明の説明した特徴、有利な効果及び性質は、任意の適宜な態様にて1つ又はより多くの実施の形態に組み合わせることができる。当該技術の当業者は、本発明は、1つの特定の実施の形態の1つ又はより多くの特定の特徴又は有利な効果を伴わずに実施可能であることが理解されよう。その他の場合、特定の実施の形態にて、本発明の全ての実施の形態に存在しない追加的な特徴及び有利な効果が認識可能である。
【0017】
本発明のこれらの特徴及び有利な効果は、以下の説明及び特許請求の範囲から一層完全に明らかであり又は以下に記載したように本発明の実施により認識することができよう。
【0018】
本発明の有利な効果を容易に理解することができるようにするため、添付図面に示した特定の実施の形態を参照することにより、簡単に説明した本発明のより具体的な説明が理解されよう。これらの図面は、本発明の典型的な実施の形態のみを示すものであり、従ってその範囲を限定するものと見なすべきではないとの理解の下、添付図面を使用して本発明について更に具体的に且つ詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書の全体に亙って「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」との言及又は同様の文言は、この実施の形態と関係して説明した特定の特徴、構造又は性質が本発明の少なくとも1つの実施の形態に含まれることを意味する。このように、本明細書の全体に亙って「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」との言及及び同様の文言は、全て同一の実施の形態を意味することができるが、必ずしもそうであるとは限らない。
【0020】
更に、本発明の上述した特徴、構造又は性質は、1つ以上の実施の形態にて任意の適宜な態様にて組み合わせることができる。以下の説明において、本発明の実施の形態を完全に理解するため、多数の特定的な詳細が開示されている。しかし、当該技術の当業者は、本発明は1つ又はより多くの特定の詳細無しにて又はその他の方法、構成要素、材料等と共に実施することが可能であることが認識されよう。その他の場合、本発明の特徴を不明確にするのを避けるため、周知の構造、材料又は作用は、図示せず又は詳細には説明しない。
【0021】
本明細書にて使用するように、「深層媒体」又は「深層フィルタ」という語は、フィルタの表面積の増大させる効果を有する線維状材料の段状又は累進的配置を意味する。「密度勾配」という語は、特定の深層媒体の固体含有率を意味する。「勾配密度深層ろ過」という語は、粒子をろ過し且つ捕えるため増大する密度勾配(又は減少する多孔率勾配)を提供すべく深層媒体を使用するろ過過程を意味する。
【0022】
本発明に従った勾配密度深層ろ過システムは、燃料、冷却剤、水及び(又は)当該技術の当業者に既知の任意のその他の流体をろ過するため具体化することができる。図1には、本発明の勾配密度深層ろ過システムを具体化することができる従来の燃料システムが示されている。燃料システムは、入口102を有する燃料タンク100と、燃料供給装置108と、供給管110とを含むことができる。燃料タンク100は、金属、プラスチック又はガソリン、ディーゼル燃料、メタノール及びエタノールのような代替燃料及び(又は)当該技術の当業者に既知の任意のその他の燃料のような燃料の化学的作用を保持し且つその化学的作用に抵抗することができる、当該技術の当業者に既知のその他の実質的に剛性な材料から成るものとすることができる。
【0023】
入口102は、燃料を気体ポンプのような外部の燃料供給源から燃料タンク100まで導くよう形成することができる。燃料タンク100から、燃料は、燃料ポンプ106により電気的に形成された負圧により又は当該技術の当業者に既知の任意のその他の手段により、個別に又は燃料供給装置108内に収納された燃料ポンプ106に導くことができる。燃料供給装置108は、敏感な燃料ポンプ106の構成要素を保護すべく燃料タンク100内に取り付け且つ密封すると共に、燃料を燃料噴射装置(図示せず)又は当該技術の当業者に既知のその他の標的装置まで輸送し得るようにされた供給管110と連通するようにすることができる。これと代替的に、燃料ポンプ106は、供給管110が気化器(図示せず)又はその他の標的装置と連通する箇所である、燃料タンク100の外部に位置する機械作動式燃料ポンプ106を備えることができる。何れの場合でも、本発明に従った勾配密度深層ろ過システムは、燃料タンク100から燃料ポンプ106までの燃料の移動方向114を捕捉して、以下に図2及び図3に関してより詳細に説明するように、使用する前、燃料から微粒子物質を効果的にろ過することができる。
【0024】
同様に、従来の冷却システム(図示せず)は、本発明の勾配密度深層ろ過システムを具体化して自動車エンジンのような標的装置から熱を放散するため使用される液体媒体から微粒子物質を効果的にろ過することができる。典型的な自動車の冷却システムは、エンジン、ポンプ、ラジエータ、一連のベルト、締結具及びこれらを互いに接続するホースを含む。作動時、ポンプは、液体媒体をエンジンに近接するホースを通して駆動して、これによって発生された熱を集める。液体媒体は、例えば、水、エチレングリコールのような冷却剤、それらの組み合わせ又は当該技術の当業者に既知の任意のその他の液体媒体とすることができる。次に、接続ホースは、液体媒体をラジエータに導き、ラジエータにてエンジンから集められた熱を雰囲気中に放散させることができる。本発明に従った勾配密度深層ろ過システムは、ポンプと第一のホースとの間に具体化してエンジン上に散布する前に液体媒体をろ過し、これにより液体媒体の冷却能力を最適化することができる。
【0025】
次に、図2を参照すると、本発明に従った勾配密度深層ろ過システムは、全体として、色々な多孔率の多数のメルトブロー成形した層204、206、208を有するメルトブロー成形したろ過組立体202を備えることができる。実際上、多孔率の変化は、割れ目又は孔寸法に相応する変化を生じさせ、これにより層のろ過能力を変化させる。層のろ過能力を変化させるべく多孔率又は密度勾配の変化を利用するこの方法は、アセタール及び(又は)別の実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂で出来た効果的な深層媒体型式のフィルタが以下に図4ないし図7に関して詳細に説明するように、色々な燃料、冷却剤及びその他の流体と適合することを容易にする。
【0026】
一部の実施の形態において、例えば、メルトブロー成形したろ過組立体202の第一の層204は、当初の小さい粒子のろ過作用を提供し得るよう約90ないし98%の範囲の多孔率を有することができる。第一の層204は、小さい微粒子の減少した程度のろ過作用を提供し得るようにされた第二の層206に連結することができる。第二の層206に相応する多孔率は、例えば、約85ないし97%の範囲とすることができる。最後に、メルトブロー成形したろ過組立体202の第二の層206は、細かい微粒子のろ過作用を提供し得るようにされた第三の層208に連結することができる。第三の層208に相応する多孔率は、例えば約80ないし96%の範囲とすることができる。このようにして、本発明のメルトブロー成形したろ過組立体202は、第一の層204から第三の層208への移動方向114を有する流体の益々精密なろ過効果を提供する。勿論、当該技術の当業者は、上記に開示したメルトブロー成形したろ過組立体202の第一の層204、第二の層206及び第三の層208は、単に説明の目的のためであり、本発明に従ったメルトブロー成形したろ過組立体202は、益々精密なろ過効果を提供するよう配置された任意の数の層を含むことができることが認識されよう。更に、一部の実施の形態において、メルトブロー成形したろ過組立体202は単一体として一体化されたメルトブロー成形したマイクロフィラメントの累進状配置を含み、メルトブロー成形したろ過組立体202は個別に独特の特徴を有する層を実質的に欠如する。
【0027】
一部の実施の形態において、メルトブロー成形したろ過組立体202は、相対的粗ろ過を行い得るようにされた少なくとも1つの全体的なろ過エレメント200に連結し、累進的なろ過効果を更に寄与することができる。特定の実施の形態において、メルトブロー成形したろ過組立体202は、2つの全体的なろ過エレメント200a、200bの間にて挟持してメルトブロー成形したろ過組立体202のより繊細なメルトブロー成形した層を実質的に封入し、これによりメルトブロー成形したろ過組立体202を保護し且つ全体的なろ過に寄与することができる。
【0028】
全体的なろ過エレメント200は、不織材と称されるスパンボンドしたろ過媒体を含むことができ、この場合、新たに形成されたフィラメントは直ちに冷風に曝され、それらを細くする工程(attenuation)を停止させる。全体的なろ過エレメント200は、メルトブロー成形したろ過組立体202の第一の層204に相応する多孔率よりも大きい多孔率を有し、全体的なろ過エレメント200は、流体から比較的大きい微粒子物質の予備的なろ過作用を提供する。全体的なろ過エレメント200は、例えば、スパンボンドしたナイロン、ポリエステル、アセタール、テフロン(登録商標)(Teflon)又は当該技術の当業者に既知のその他のスパンボンドしたろ過媒体から成るものとすることができる。かかる媒体の平均フィラメント直径は、例えば、約100μmとすることができる。
【0029】
次に、図3を参照すると、特定の実施の形態において、勾配密度深層ろ過システムは、全体的なろ過エレメント200に連結された外側ろ過エレメント300及び(又は)メルトブロー成形したろ過組立体202とを更に含み、タンク100又はその他のシステム構成要素との接触に起因する機械的応力及び(又は)流体に曝されることにより誘発された化学的応力のような環境的に付与された応力に対して更に保護することができる。外側ろ過エレメント300は、ナイロン、ポリエステル、アセタール、テフロン(登録商標)又は当該技術の当業者に既知のその他の材料のような粗押出し成形した材料を含むことができる。材料は、実質的に構造的に安定的なメッシュを製造するよう織ることができる。実際上、外側ろ過エレメント300の主目的は、該エレメントと連結されたより敏感な構成要素を保護することであるから、外側ろ過エレメント300に相応する多孔率は、全体的なろ過エレメント200さえよりも実質的に大きくすることができる。例えば、一部の実施の形態において、割れ目のメッシュ幅は、約100ないし1,000μmの範囲とすることができる。しかし、外側ろ過エレメント300の割れ目寸法は、外側ろ過エレメント300の構造的完全性及び耐久性に干渉しない限り臨界的ではない。
【0030】
更なる実施の形態において、勾配密度深層ろ過システムは、2つ又はより多くのパネル306を含むことができ、パネル306の各々は、2つの全体的なろ過エレメント200の間にて実質的に挟持されたメルトブロー成形したろ過組立体202を備えている。外側ろ過エレメント300は、最外側の全体的なろ過エレメント200と結合し、外側ろ過エレメント300は、勾配密度深層ろ過システムのその他の構成要素の各々を実質的に封入するようにすることができる。一部の実施の形態において、パネル306の各々は、増大した構造的安定性を実証する明確なろ過領域306を提供するよう超音波にて点接合することができる。これと代替的に、点接合点308は、その幅の全体に亙って勾配密度深層ろ過システムを補強するようにしてもよい。
【0031】
次に、図4を参照すると、メルトブロー成形したろ過組立体202のメルトブロー成形したマイクロフィラメントは、次の過程に従って製造することができる。ポリマーは、メルトブロー成形装置400による加工が容易であるようにペレットに形成することもできる。メルトブロー成形装置400は、ペレットをダイヘッド408に連結された押出し成形機406に導く供給装置404を含むことができる。細くする力をダイヘッド408に付与して溶融したポリマーをダイヘッド408のオリフィス414を通して引き抜くこともできる。ポリマーがダイヘッド408を通して押出し成形されると直ちに、高速度の気体が気体マニホルド416を通って流れてポリマーを細くしてマイクロフィラメントにすることができる。マイクロフィラメントを保持する気体流が捕集器網412に向けて進行すると、周囲空気がマイクロフィラメントを冷却し且つ凝固することができ、該マイクロフィラメントは、その後、無作為に捕集器網412上に集まり、自然結合した不織ウェブ418を形成する。場合によっては、捕集器網412の表面に対するマイクロフィラメントの施工状態を向上させるべく真空圧を捕集器網412の内面に付与してもよい。
【0032】
メルトブロー成形過程は、一般に、高ファイバ強度を提供し且つ、過剰なファイバの接合を防止するのに十分粘性である一方、細かい微細ファイバを製造するのに十分流体的であるポリマーを要求する。同様に、ポリマーは、過剰な融合による凝結を回避しつつ、凝固したときその他のファイバと十分接合することが重要である。このように、結晶化が迅速であればある程、また、ポリマーの融点が高ければ高い程、一層優れた結果が得られる。ナイロンは、一般に、この条件が課される過程にとって最も良く適していると考えられるが、ナイロンは、水を吸収する独特の傾向があり、このためナイロンは、水及び(又は)水を保持し又は水を形成する液体媒体をろ過するために使用される用途に対して不適合となる。従って、小さい粒子の効率的なろ過は、全体として、メルトブロー成形したマイクロフィラメントを必要とするため、メルトブロー成形した材料を製造するための代替的なポリマーが必要とされる。
【0033】
特に、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロン、又は当該技術の当業者に既知のその他の実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂のような実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂を使用して本発明の勾配密度深層ろ過システムにて使用するのに適したメルトブロー成形したマイクロフィラメントを形成することができる。一部の実施の形態において、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、中性油、油脂、石油系燃料、アルコール及びエステル、ケトン、脂肪族及び芳香族炭化水素を含むその他の有機系溶媒のような化学的試薬に起因して化学的に誘発された効果に更に抵抗することができる。
【0034】
しかし、かかる実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、メルトブロー成形過程にとって好ましい品質を性質上、実証することができないから、工程上のメルトブロー成形パラメータは、その過程を選んだ熱可塑性ポリマーに特に適するよう調節されよう。例えば、1つの実施の形態において、アセタール樹脂は、メルトブロー成形装置400によって加工するためペレットに形成することができる。アセタールは、ナイロンと異なり、極めて高ロフト及び高粘度を実証するため、加工速度及び温度は、アセタールペレットを適正に加工してメルトブロー成形したマイクロフィラメントの不織ウェブを形成することが可能であるよう調節することになる。
【0035】
実際上、ナイロンがメルトブロー過程を受ける熱可塑性ポリマーである場合、メルトブロー成形装置400の全体の温度は、通常、約215゜ないし340゜Cの範囲にある一方、気体マニホルド416により発生された細くする気体の温度は典型的に約300゜Cに達する。他方、本発明は、メルトブロー成形装置400の温度を230゜C以下、約160゜ないし230゜Cの範囲に維持することを考える。かかる降下した温度は、メルトブロー成形過程を受けるアセタール又は同様の熱可塑性樹脂を適正に加工することを許容する。同様に、特定の実施の形態において、細くする気体の温度は、約190゜ないし290゜Cの範囲に維持することができる。かかる温度の調節は、アセタール及びその他のかかる熱可塑性ポリマーを従来のメルトブロー成形法に従ってメルトブロー成形することを許容するが、ろ過に適した不織ウェブ418となるようにするためには、捕集器網412の速度、細くする気体の速度、及びポリマーの処理能力を調節することも必要であろう。例えば、1つの実施の形態において、捕集器網412の速度は、約2ないし13m/分の範囲に維持することができる一方、細くする気体の流量は、約64ないし250m/秒の範囲とし、ポリマーの処理能力は、約0.07ないし0.75g/孔/分の範囲とすることができる。
【0036】
メルトブロー成形したアセタールの十分な不織接合を可能にするためのこうした調節の効果にも拘らず、アセタールの相対粘度は、その特徴的な高ロフトにも拘らず、実現可能なマイクロフィラメントの寸法範囲を制限する可能性がある。その結果、本発明の勾配ろ過組立体202は、異なるろ過能力を発生させるためマイクロフィラメントの相違する寸法に依存するのではなくて、主としてメルトブロー成形したマイクロフィラメントの変化する密度を利用して、上述した勾配フィルタの効果を生じさせる。
【0037】
次に、図5ないし図7を参照すると、アセタールのような実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、メルトブロー成形して実質的に一定の直径寸法500を有するマイクロフィラメント410を製造することができる。一部の実施の形態において、例えば、マイクロフィラメントの各々の直径500は、約2.5ないし30μmの範囲とすることができる。図5により示したように、本発明のメルトブロー成形したろ過組立体202の第一の層204は、約96%の多孔率部502を備えて流体の粗大多孔率ろ過効果を提供することができる。図6に示したような第二の層206は、図5に示したものと実質的に等しい直径500のマイクロフィラメント410を含むことができる。しかし、マイクロフィラメント410の第二の層206は、流体の中間的多孔率ろ過効果を提供し得るよう約94%の多孔率部602を備えるようにしてもよい。最後に、図7にて示した第三の層208は、図5及び図6に示した第一の層204及び第二の層206に対して直径500の点にて同等であるマイクロフィラメント410を備えることができるが、第三の層208は、精密多孔率深層ろ過効果を提供し得るよう約92の多孔率部702であることを実証することができる。
【0038】
本発明は、その精神又は必須の特徴から逸脱せずに、その他の特定の形態にて具体化することができる。説明した実施の形態は、全ての点にて単に一例であり、限定的なものではないと見なすべきである。このため、本発明の範囲は、上記の説明ではなくて特許請求の範囲により示されるものとする。特許請求の範囲の意義及び等価物の範囲に属する全ての変更は、それらの範囲に包含されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の特定の実施の形態に従った勾配密度深層ろ過システムを含む燃料タンクの断面図である。
【図2】本発明に従った勾配密度深層システムの1つの実施の形態を示す断面図である。
【図3】本発明に従った勾配密度深層システムの代替的な実施の形態を示す断面図である。
【図4】本発明の特定の実施の形態に従った勾配密度深層ろ過システムのメルトブロー成形した層を製造するため使用することができるメルトブロー成形装置の斜視図である。
【図5】本発明の特定の実施の形態に従ったメルトブロー成形したろ過組立体の第一の層を形成するメルトブロー成形したアセタールマイクロフィラメントの拡大頂面図である。
【図6】本発明の特定の実施の形態に従ったメルトブロー成形したろ過組立体の第二の層を形成するメルトブロー成形したアセタールマイクロフィラメントの拡大頂面図である。
【図7】本発明の特定の実施の形態に従ったメルトブロー成形したろ過組立体の第三の層を形成するメルトブロー成形したアセタールマイクロフィラメントの拡大頂面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体をろ過する装置において、
流体を益々精密にろ過するメルトブロー成形したろ過組立体であって、実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントの変化する多孔率を含む前記メルトブロー成形したろ過組立体を備える、流体をろ過する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、メルトブロー成形したマイクロフィラメントは、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂から成る、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、化学的に誘発された効果に抵抗する、装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置において、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロンの少なくとも1つである、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、メルトブロー成形したろ過組立体は、複数のメルトブロー成形した層を更に備え、前記複数のメルトブロー成形した層の各々は、メルトブロー成形したマイクロフィラメントの独特で且つ実質的に一定の多孔率を含む、装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、複数のメルトブロー成形した層の各々に相応する多孔率は、メルトブロー成形した層と標的装置との間の距離が減少するに伴い、低下する、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、粗ろ過を行い得るようにメルトブロー成形したろ過組立体に連結された一般的なろ過エレメントであって、スパンボンドしたろ過媒体である前記一般的なろ過エレメントを更に備える、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、一般的なろ過エレメント及びメルトブロー成形したろ過組立体を機械的応力から保護し得るよう一般的なろ過エレメントに実質的に隣接する外側ろ過エレメントを更に備える、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、メルトブロー成形したマイクロフィラメントの実質的に一定の直径は、約2ないし5μmの範囲にある、装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置において、流体は、冷却剤及び燃料から成る群から選ばれる、装置。
【請求項11】
流体をろ過するシステムにおいて、
流体を貯蔵し得るようにされたタンクと、
流体を標的装置まで圧送するようタンクに連結されたポンプと、
標的装置に到達する前に流体をろ過し得るようポンプに実質的に隣接するフィルタとを備え、前記フィルタは、
流体を益々精密にろ過するメルトブロー成形したろ過組立体であって、実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントの異なる多孔率を含む前記メルトブロー成形したろ過組立体を備える、流体をろ過するシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、メルトブロー成形したマイクロフィラメントは、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂から成る、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムにおいて、実質的に寸法安定的な熱可塑性樹脂は、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロンの少なくとも1つである、システム。
【請求項14】
請求項11に記載のシステムにおいて、メルトブロー成形したろ過組立体は、複数のメルトブロー成形した層を更に備え、前記複数のメルトブロー成形した層の各々は、メルトブロー成形したマイクロフィラメントの独特で且つ実質的に一定の多孔率を含む、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、複数のメルトブロー成形した層の各々に相応する多孔率は、メルトブロー成形した層と標的装置との間の距離が減少するに伴い、低下する、システム。
【請求項16】
請求項11に記載のシステムにおいて、フィルタは、メルトブロー成形したろ過組立体に連結された一般的なろ過エレメントであって、スパンボンドしたろ過媒体である前記一般的なろ過エレメントを備える、システム。
【請求項17】
請求項16に記載の装置において、フィルタは、一般的なろ過エレメント及びメルトブロー成形したろ過組立体を機械的応力から保護し得るよう一般的なろ過エレメントに実質的に隣接する外側ろ過エレメントを更に備える、装置。
【請求項18】
流体をろ過する方法において、
実質的に寸法的に安定的な熱可塑性剤をメルトブロー成形して実質的に一定の直径を有するメルトブロー成形したマイクロフィラメントを形成するステップと、
メルトブロー成形したマイクロフィラメントを独創的で且つ実質的に一定の多孔率を有するメルトブロー成形した層に形成するステップと、
メルトブロー成形した複数の層をそれらの相対的密度に従って配置し、メルトブロー成形したろ過組立体を形成するステップと、
流体をメルトブロー成形したろ過組立体を通してろ過し、流体を益々精密にろ過するステップとを含む、流体をろ過する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、アセタール、ポリエチレン、ポリフェニリンサルファイド、高温度ナイロンの少なくとも1つを含むように実質的に寸法安定的な熱可塑性剤を選ぶステップを更に備える、方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、流体をろ過するステップは、冷却剤及び燃料から成る群から選ばれた流体をろ過するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−545532(P2008−545532A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514731(P2008−514731)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/020662
【国際公開番号】WO2006/130526
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(508216644)カミンズ・フィルトレーション・アイピー,インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】