説明

包含型コードシンボル及びその読み出し方法、並びに閉領域包含型コードシンボル及びその読み出し方法、並びに、包含型コードシンボルが付された物品及び閉領域包含型コードシンボルが付された物品。

【課題】物品の検出等に用いられ、容易に作成可能な検出コードシンボルを実現する。特に、一般ユーザにおいても簡単に、例えば手書きなどによってマーキング可能なコードシンボル(検出シンボル)を提供することを目的とする。
【解決手段】包含型コードシンボルは、最外周にシンボルエリア表示層を備えている。シンボルエリア表示層は複数個存在しても良いし、最外周以外の層においては2個存在しても良い。シンボルエリア表示層の内側には、データセル群が配置されている。すなわち、シンボルエリア表示層は、データセルを包含する。このデータセルの包含関係とデータセルの色彩とから、その包含型コードシンボルのデータが表される。このような包含型コードシンボルは利用者が既存のマーク等を利用して容易に作成することができ、種々の物品に容易に自動認識コードシンボルを付することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
色彩の順番でデータを返す自動認識コードが知られている。本発明は、この自動認識コードの各シンボルの、色彩順とデータとの関連に関する発明である。
【0002】
本願発明者は、寸法形状に依存せず、色彩の配列・組み合わせ・並び・順番によってデータを表現するコードシステム(いわゆる「色彩配列コード」)について、種々の研究開発を行っている。例えば、このようなコードの一種である1Dカラービットコード(特願2006−196705他)を本願発明者はこれまでに出願している。他に、特願2006−196548号等も出願している。
【0003】
本発明はこのような色彩配列を用いた光学的な自動認識コードに関し、この自動認識コードの色彩「配列」の技術的な改良、及び改良された色彩配列を用いた自動認識コードの新しい応用等に関する。
【背景技術】
【0004】
本願発明者は、上述した色彩配列による自動認識コードを種々開発している。それらは商品名としては「1Dカラービットコード」「1.5Dカラービットコード」等と呼ぶ者であり、これらに関して、すでにいくつかの出願を行っている。
【0005】
これらはいずれも、形状の認識によらないことを特徴としており、従ってシンボルマークの自由度を大幅に向上させ、マーキング手段の自由度、マーキング対象物の自由度、読み取り手段の自由度を拡張させるものである。
【0006】
従って、この技術の応用は従来のバーコードを含む、いわゆるトレーサビリティを目的とした自動認識技術の応用範囲全般に及ぶものである。
【0007】
さて、本願発明者は、これら「カラービットコード」に代表されるような色彩配列を用いた自動認識コードの特徴を鋭意追求してきた。その結果、この色彩配列による自動認識コードは、さらに、個体検出、特に形状の刻々変わる移動する個体の検出・追跡に応用可能であることを独自に見いだした。
【0008】
本特許は、このような色彩配列による自動認識コードの特徴に鑑みて、光学式自動認識コードの新しい構成とその応用(追跡に用いる)について提案するものである。
【0009】
(※「1Dカラービットコード」、「カラービットコード」は、本願出願人の自動認識コードの商品名・固有名称である。)
以下、本件で提案する対象物の追跡に適した光学式自動認識コードのそれぞれのコードシンボルを、「検出用シンボル」と呼ぶ。なお、本件では、単にコードと呼ぶ場合は、読み取り規則まで含めたコードの「体系」を表す。また、各コードで用いる1個1個の個別具体的な色彩配列の一塊りを、「コードシンボル」又は、単に「シンボル」と呼ぶ。
【0010】
従来の追跡用コードシンボル(トレーサビリティ用シンボル)と、本件発明で提案する検出用シンボルとの比較
ここで従来のトレーサビリティ用シンボルと、検出用シンボルの要求仕様について、その比較を行う。ここで、検出用シンボルは例えば、運動会などで子供の衣服に特有のマーク(すなわち、検出用シンボル)を付し、これをビデオカメラなどで撮影しながら、そのマーク(検出用シンボル)を発見し、さらにはそのマーク(検出用シンボル)を追跡する如き用途の例を考えている。なお、以下の記載において、従来のトレーサビリティ用シンボルを、単に「トレーサビリティ」と称し、本件発明の検出用シンボルを「検出」と称している。
【0011】
(1)対象物との位置関係について
・トレーサビリティ:シンボルと対象物との位置関係が与えられている。そして、これに視野を合わせ、視野内で上述した位置関係から対象物の位置を追跡する。
【0012】
・検出:シンボルと対象物との位置関係は特段の決まりは無く、適度に近傍であれば良い。帽子にシンボルを付しても良いし、衣服に付しても良い。
【0013】
(2)シンボルのデータ(シンボルが表すデータ)について
・トレーサビリティ:シンボルは対象物に応じて別のデータを表す必要があるので、膨大なシンボルパターンを表現できる必要がある。また、追跡側もこれらの膨大なシンボルパターンを全て認識できる必要がある
・検出:目標のシンボルの認識さえすれば良く、膨大なシンボルデータを表す必要は無い。同様に膨大なシンボルデータを識別する必要も無い。
【0014】
(3)シンボルの形状
・トレーサビリティ:クワイアットゾーンの存在、形状の変形等、読み取るための最低条件を使用条件的に予めクリアしている必要がある。
【0015】
ここで、クワイアットゾーンとは、色彩配列を利用した自動認識コードにおいて、コードシンボルを構成しない色彩が付された領域を言う。
【0016】
・検出:移動等の影響により、クワイアットゾーンの存在を前提とはしていないコード体系を採用している。また、歪みや、部分的な見え隠れ等も前提としたコード体系である。
【0017】
(4)マーキング
・トレーサビリティ:専用のタグやマーキング機器によりマークされる。
【0018】
・検出:一般ユーザが簡単にマーキングすることができる。
【0019】
(5)誤読
・トレーサビリティ:誤読は許容されない。誤読があった場合の追跡は不可能である。
【0020】
・検出:ある程度の誤読があっても追跡は続行可能である。むしろ、そのコードシンボルを「見つけ出す」ことの方が重要である。
【0021】
以上述べたような作用・構成・効果上の相違点がある。
【0022】
さて、本願発明者が従前に開発した「カラービットコード」では、当然ながら上記従来の「トレーサビリティ」としての要件は満たしている。
【0023】
しかしながら、本特許で提案する上記「検出シンボル」と比較すると、特にクワイアットゾーンが必要である等、使い勝手が悪く、追跡用の自動認識コードとして使用するには最適・好適なコードとは言い難い面があった。
【0024】
さらに、その他、従来から知られている古典的な白黒バーコード等も検討してみよう。この白黒バーコードは、良く知られているように形状に自由度が無く、「検出シンボル」として用いるのは無理があると言わざるを得ない。つまり、追跡用の自動認識コードとして用いるのは困難である。
【0025】
また、追跡・追尾の技術としては、いわゆる顔認識のような技術も近年では広く開発が行われ、その簡単なアルゴリズムはデジタルカメラ等にも搭載されている場合もある。しかし、この顔認識技術では、特徴検出仕様が精緻すぎて、遠方の場合など顔が認識できず、追尾できないケースが多く見られる。さらに、所定の物体を追尾する場合には、良く似た形状の場合結局は個別に自動認識コードを付す必要、すなわちマーキングの必要があると考えられる。
【0026】
また、単純に色彩によって、追跡・追尾を行う技術も知られている。しかし、単なる色彩検出では同様の色彩が多数存在する場合などでは現実的には使い物にならないことも良く知られている。
【0027】
用語の説明
色彩配列による自動認識コードは、いわゆる光学式認識コードの一種である。光学式認識コードに関する用語を若干説明する。
【0028】
コードシンボル:
所定のデータを表す、具体的な1個1個の光学式認識コードその物、一塊りの図形・図形群を、特に「コードシンボル」と呼ぶ。又は単に「シンボル」と呼ぶ場合もある。また、自動認識コードの1単位であるので、「単位コードマーク」と呼ぶ場合もある。
【0029】
さらに、便宜上、この「コードシンボル」その物を「タグ」と呼ぶ場合もたまにある。但し、タグは、基本的には、物品(被印物)に付す媒体を言う。例えば、値段のタグ、商品タグ、等である。
本発明は、自動認識コードとして色彩配列を用いるが、この1個1個のそれぞれの色彩配列が、自動認識コードとしての「コードシンボル」に相当する。
【0030】
光学式認識コード(光学式自動認識コード):
「光学式認識コード」と言う場合は、一般に個別の具体的なコードシンボルではなく、そのようなコード「体系」を意味する言葉として用いる場合が多い。例えば「QRコード(登録商標)という名称の光学式認識コード。」のように表現し、一般には「コード体系」を表す語である。
また、光学式認識コードは、一般に機械によって自動的に認識されるので、光学式自動認識コードと呼ばれることも多い。
【0031】
被印物:
光学式認識コードのコードシンボルを付与する物品・対象物を「被印物」と呼ぶ。後述する本実施の形態では、主として「物品」を用いている。
【0032】
マーキング:
被印物に光学式認識コードの各コードシンボルを付与する作業を「マーキング」と呼ぶ。マーキングは、コードシンボルを被印物に直接「印刷」する処理の他、コードシンボルを付した「粘着シール」を貼付する動作や、コードシンボルを付したタグを「掛ける」動作、等が「マーキング」の好適な例に相当する。特に、被印物が販売の対象となる商材・商品である場合、コードシンボルを付したタグとしては、「値札」や「商品ブランドタグ」等が該当する。このような「値札」にコードシンボルを付して「商品」に取り付けることが広く行われている。この取り付けには、近年プラスチックのワイヤーが用いられることが多い。これらのような「取り付け」も、上記「マーキング」の好適な例である。
【0033】
また、被印物の容器にコードシンボルを付す行為も、実質的な面を考慮してマーキングと呼ばれることが多い。
【0034】
マーキング色:
コードシンボルに用いられる1又は2色以上の色彩を「マーキング色」と呼ぶ。マーキング色は「信号色」とも呼ばれる。マーキング色としては、典型的には3色程度が識別精度等も考慮すると妥当である。例えば、RGBの3色や、CMYの3色等が好適である。
【0035】
読み取りの際は、一定の色彩空間をマーキング色であると見なして読み取りを行う。その色彩空間の中心となる色彩を基準色と呼ぶ。基準色は、実質的にはほとんどマーキング色と同じものである。
【0036】
本発明においては、色彩配列を構成するセルに用いられる色彩がここで言うマーキング色であるが、後述する実施の形態では、主にR(赤)G(緑)B(青)を例として説明している。
【0037】
媒体:
被印物にマーキングを施す際に用いる手段・材料を「媒体」と呼ぶ。具体的には、マーキングに用いるインクや、被印物に掛ける値札、商品タグ、等が相当する。例えば、直接印刷する場合の「インク」は上記媒体の一例である。また、コードシンボルを付した商品タグを「掛ける」場合の「商品タグ」「値札」も媒体の一例である。また、上述した粘着シールもこの「媒体」の好適な一例に相当する。
【0038】
クワイアットゾーン:
マーキング色以外の色彩による領域で、コードシンボルの境界、コードシンボル以外の領域を「クワイアットゾーン」と呼ぶ。
【0039】
なお、マーキング色以外の色彩を特に、「周囲色」と呼ぶ。
【0040】
従来の先行特許技術
ここで、従来の先行特許技術を、数種説明する。
【0041】
例えば、下記特許文献1には、パリティビットが逆順に付与されたCRCコードのエラー検出装置が開示されている。
また、下記特許文献2には、時間的遷移を逆転した逆CRC回路を用いて誤り検出を行う際の処理遅延を抑制する発明が開示されている。
また、下記特許文献3には、右ブロックの逆読みによる誤差を生じることなく短時間で復調を完了させることが可能なバーコード復調装置が開示されている。
また、下記特許文献4には、巡回コードから生成したスクランブル信号を用いることによって、データの相関性を打ち消し、磁気ディスク記録装置の安定したトラッキング制御を実現する技術が開示されている。
また、下記特許文献5には、ハミング距離に基づいたトレリスコーディングが使用される光ディスクの内周にバーコードを設けて、生産日やシリアルナンバー等を記録する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−171171号公報
【特許文献2】特開2000−269826号公報
【特許文献3】特開平11−053464号公報
【特許文献4】特開2003−036598号公報
【特許文献5】特開2006−318467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、上で述べたような「検出シンボル」実現することを目的とする。さらに、上記のような「検出」に最適、且つ、一般ユーザにおいても簡単に、例えば手書きなどによってマーキング可能なコードシンボル(検出シンボル)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、所定の色彩が付されたセルを複数個配置して成る色彩配列コードシンボルにおいて、前記複数個のセルには、他のセルを全て包含する1個の全体セルが含まれ、前記全体セル以外の前記セルは、常に、いずれか1個の他のセルに包含され、前記全体セル以外の前記セルは、0個又は1個以上の他のセルを含むことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0044】
(2)また、本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)記載の包含型コードシンボルにおいて、所定の前記セルの色彩は、そのセルを含む他のセルの色彩と異なることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0045】
(3)また、本発明は、上記(1)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記セルに用いられる色彩には、白と黒が含まれることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0046】
(4)また、本発明は、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、前記包含型コードシンボルが表すデータは、前記包含型コードシンボルを構成するセルの個数、セル間の包含関係の組み合わせ、のいずれか又は両者によって表されることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0047】
(5)また、本発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、
その包含型コードシンボルが表すデータは、その包含型コードシンボルを構成するセルの色彩の組み合わせと、セル間の包含関係の組み合わせと、のいずれか又は両者によって表されることを特徴とする包含型コードシンボル。
【0048】
(6)また、本発明は、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、その包含型コードシンボルが表すデータは、その包含型コードシンボルを構成するセルの色彩の組み合わせと、セル間の包含関係の組み合わせと、の両者によって表され、さらに、前記データは、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分と、の2種の互いに独立したデータ部分から構成されることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0049】
(7)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データのチェックデータを表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0050】
(8)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様を表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0051】
(9)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が商品種別を表し、いずれか他方が前記商品の生産管理データを表し、前記商品の内容を表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0052】
(10)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が学生の学校を表し、いずれか他方が前記学生の学籍番号を表し、前記学生の属性を表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0053】
(11)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの補間データを表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0054】
(12)また、本発明は、上記(6)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様の補正データを表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0055】
(13)また、本発明は、上記(1)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記全体セルと、所定の一部の他のセルと、の包含関係が固定されていることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0056】
(14)また、本発明は、上記(13)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記包含関係が固定されている前記全体セル及び前記所定の一部の他のセルとは、付されている色彩も固定されていることを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0057】
(15)本発明は、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを読み取る方法において、前記包含関係の深さを表す層数には、最大値が規定されており、前記最大値を越えた深い層のセルが存在する場合は、その深い層のセルを除いたセルに基づき、その包含型コードシンボルが表すデータを求めることを特徴とする包含型コードシンボル読み取り方法である。
【0058】
(16)また、本発明は、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを読み取る方法において、前記包含型コードシンボルを撮像して画像データを得るステップと、前記画像データ中の色彩の分布に基づき、前記包含型コードシンボルを構成するセルに用いられる色彩の範囲を決定するステップと、前記決定された色彩範囲に基づき、セルとなる色彩エリアを前記画像データ中の色彩エリアから、前記セルとなる色彩エリアを決定していくステップと、を含むことを特徴とする包含型コードシンボル読み取り方法である。
【0059】
(17)また、本発明は、上記課題を解決するために、所定の色彩が付された線によって形成された閉領域を複数個配置して成る色彩配列コードシンボルにおいて、前記複数個の閉領域には、他の閉領域を全て包含する1個の全体閉領域が含まれ、記全体閉領域以外の前記閉領域は、常に、いずれか1個の他の閉領域に包含され、前記全体閉領域以外の前記閉領域は、0個又は1個以上の他の閉領域を含むことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0060】
(18)また、本発明は、上記(17)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、本閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の数と、前記閉領域の包含関係と、のいずれか一方又は両者によってデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0061】
(19)また、本発明は、上記(17)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、包含関係をなす前記閉領域に付された色彩と、前記閉領域を形成する線の色彩と、の組み合わせによって、データを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0062】
(20)また、本発明は、上記(17)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、包含関係をなす前記閉領域に付された色彩と、前記閉領域を形成する線の色彩と、の組み合わせと、本閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の数と、前記閉領域の包含関係と、のいずれか一方又は両者と、によってデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0063】
(21)また、本発明は、上記(17)〜(20)のいずれか1項に記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、その閉領域包含型コードシンボルが表すデータは、その閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の色彩の組み合わせと、閉領域間の包含関係の組み合わせと、の両者によって表され、さらに、前記データは、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分と、の2種の互いに独立したデータ部分から構成されることを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0064】
(22)また、本発明は、上記(21)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データのチェックデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0065】
(23)また、本発明は、上記(21)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0066】
(24)また、本発明は、上記(21)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が商品種別を表し、いずれか他方が前記商品の生産管理データを表し、前記商品の内容を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0067】
(25)また、本発明は、上記(21)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が学生の学校を表し、いずれか他方が前記学生の学籍番号を表し、前記学生の属性を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0068】
(26)また、本発明は、上記(21)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの補間データを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0069】
(27)また、本発明は、上記(21)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様の補正データを表すことを特徴とする包含型コードシンボルである。
【0070】
(28)また、本発明は、上記(17)記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、前記全体閉領域と、所定の一部の他の閉領域と、の包含関係が固定されていることを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0071】
(29)また、本発明は、上記(28)記載の包含型コードシンボルにおいて、前記包含関係が固定されている前記全体閉領域及び前記所定の一部の他の閉領域は、付されている色彩も固定されていることを特徴とする閉領域包含型コードシンボルである。
【0072】
(30)また、本発明は、上記課題を解決するために、上記(17)〜(29)のいずれか1項に記載の閉領域包含型コードシンボルを読み取る方法において、前記包含関係の深さを表す層数には、最大値が規定されており、前記最大値を越えた深い層の閉領域が存在する場合は、その深い層の閉領域を除いた閉領域に基づき、その閉領域包含型コードシンボルが表すデータを求めることを特徴とする閉領域包含型コードシンボル読み取り方法である。
【0073】
(31)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルが付された物品である。
【0074】
(32)本発明は、上記課題を解決するために、上記(17)〜(29)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルが付された物品である。
【0075】
(33)本発明は、上記課題を解決するために、上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを、読み取り装置に登録する方法において、登録対象である前記包含型コードシンボルを撮像して画像データを得るステップと、前記画像データ中の包含型コードシンボルの色彩として利用者が指示する部位の色彩を取得するステップと、前記指示された色彩に基づき、前記登録対象である包含型コードシンボルを切り出して、登録するステップと、前記登録された包含型コードシンボルが用いる前記色彩と、その色彩と判断する色彩空間とを前記包含型コードシンボルと関連づけて登録するステップと、を含むことを特徴とする包含型コードシンボル登録方法である。
【発明の効果】
【0076】
以上述べたように、本発明によれば、包含関係に基づきデータを表現することができるのでコードシンボルを実現することができる。また、既存のマークをその包含関係に基づいてコードシンボルとして利用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0078】
A.実施の形態1
第1 序論
本願発明者らが以前に発明した「カラービットコード」は、小数種の色彩を用いて、しかも、形状に依存しない自動認識コードを実現する優れたコードであった。このカラービットコードは、従来の白黒バーコード等に比べて、形状に依存せずに色彩の変動(退色、変色等)にも強い耐性を有するという優れた性質を有していた。
【0079】
しかしながら、先に述べたように、色彩を一定の順番で並べるという手法では、使用する色彩セルの数が多くなりがちであり、マーキング作業が複雑になる。例えば、子供服等に取り付ける場合は、結局粘着シール等を用いるしか無く、かわいらしい子供服に付するには違和感が生じやすいと考えられる。
【0080】
また、各対象物毎に異なるデータを詳細に表現させようとすれば、多数の色彩エリアを用いる必要がありマークが複雑になりがちである。このようなマークを用いるた時に、対象物が遠方に存在すれば画像が小さくなり読み込みが困難になることが予想される。また、撮像手段のレンズの都合上ボケが大きく出てしまった場合にも同様に読み込みが困難になってしまう恐れが強い。
【0081】
そこで、本実施の形態では、以下のようなコードシンボルのマーキング仕様を提案する。
【0082】
第2 提案するコードシンボルのマーキング仕様
第2−1 仕様1 色彩エリアに包含関係を持たせた構造
本仕様1の概念図が図1に示されている。図1に示すように、このマークは、
・包含関係にある3層の色彩エリアから構成されており、外縁から第1層、第2層、第3層、・・・と呼ぶ。
【0083】
・第1層、第2層は、必ず1個の色彩エリアから構成されている。
・第3層、第4層、・・・は、単数又は複数の色彩エリアから構成されている。
このような規則で、複数の色彩エリアを包含関係にあるようには位置させたことを特徴とする。
【0084】
従来、色彩エリアを配置した自動認識コードは、原則として色彩エリアの中に更に他の色彩エリアを配置することを許していないものがほとんどである。すなわち、色彩の並びでデータを表すという発想から、色彩エリアを1次元的に配置することや、2次元的に配置することなどが前提とされていたからである。また、本実施の形態で提案するような包含関係を有するような構造を採用してもデータ密度が向上するわけでもないと考えられたためである。
【0085】
本実施の形態では、色彩エリアにこのような包含関係を備えさせた結果、ある色彩エリアを発見すれば、その内側に辿ることによって、全ての色彩エリアを迅速に発見できるという特徴を有する。すなわち、本実施の形態は、コードシンボルの発見のしやすさの向上を意図したものであり、追跡・発見等の用途に適した自動認識コードである。
【0086】
これに対して従来の色彩を用いた自動認識コードは、より複雑なデータを表現するために、数多くの色彩エリアを配置することに念頭をおいたものであり、コードシンボルの読み取りは必ずしも効率的とは言い難かったのである。例えば1次元的・2次元的に色彩を連ねた場合は、1次元方向・2次元方向に各色彩エリアを逐次読み取っていく必要があるが、この場合、対象物はあまり動かないことが前提となっており、対象物がはげしく動く場合には、追従が困難になる場合もあった。
【0087】
そこで、本実施の形態では、追跡や発見に適した自動認識コードを実現するために、従来は包含関係を有しない色彩エリアが並べられていたのに対して、色彩エリア間に包含関係を導入し、より迅速にコードシンボルの発見を行えるようにしたものである。
【0088】
本実施の形態で説明するコードシンボルを「色彩包含型シンボル」と呼ぶ。
【0089】
この色彩包含型シンボルは、n層の色彩エリアが互いに包含関係にあるように配置された構造をなしており、第3層以下の各層は、2個以上の色彩エリアを有していても良いという構成を採用している。
【0090】
第1層、第2層は、常に1個の色彩エリアから成るように構成することによって、その色彩包含型シンボルを発見しやすくさせる効果を持たせている。この第1層と第2層の色彩の包含を検出することによって、色彩包含型シンボルの位置や大きさを速やかに把握することが可能である。
【0091】
以下、種々の構成例を説明する。
【0092】
例1
図1には、この3層構造の1例が示されており、
・第1層は、Rである。
・第2層は、Gである。
・第3層は、色彩エリア数が1であり、その色彩はBである。
なお、ここで、Rは赤を表し、Bは青を表し、Gは緑を表す。もちろん他の色でもかまわない。例えば、CMY等を用いても良いし、白や黒を組み合わせても好適である。
【0093】
このような構造において、各層の色彩(の組み合わせ)によってデータを表す。なお、第3層については、
(a)第3層に含まれる色彩エリアの色彩の配列順でデータを表す。
【0094】
(b)第3層に含まれる色彩エリアの色彩の種別の個数のみでデータを与える。
【0095】
のいずれかの方法で、データを表すようにする。
【0096】
いずれにしても、{第1層の色彩、第2層の色彩、第3層の色彩の配列・個数}からデータが表される。
【0097】
例2
図2には、3層構造のコードシンボルの別の例が示されている。この図2の例は、第3層に色彩エリアが3個含まれている例である。
【0098】
・第1層は、Rである。
・第2層は、Gである。
・第3層は、色彩エリア数が3であり、その色彩はBが2個、Rが1個である。
これらの各層の色彩、各色彩エリアの色の配列・組み合わせからデータが表される。第3層に、2個の色彩エリアが含まれる点を除けば、上述した例1と同様である。
【0099】
例3
図3には、3層構造のコードシンボルの別の他の例が示されている。この図3の例は、第3層に色彩エリアが4個含まれている例である。
【0100】
・第1層は、Rである。
・第2層は、Kである。
・第3層は、色彩エリア数が4であり、その色彩はRが4個である。
これらの各層の色彩、各色彩エリアの色の配列・組み合わせからデータが表される。この例3は、第3層に、4個の色彩エリアが含まれている。
【0101】
例4
図4には、4層構造のコードシンボルの他の例が示されている。この図4の例は、第3層に色彩エリアが1個含まれており、第4層に、色彩エリアが2個含まれている。
【0102】
・第1層は、Rである。
・第2層は、Kである。
・第3層は、色彩エリア数が1であり、その色彩はRである。
・第4層は、色彩エリア数が2であり、その色彩はKである。
これらの各層の色彩、各色彩エリアの色の配列・組み合わせからデータが表される。
第2−2 野球帽へ応用した例
以下、これまで述べたコードシンボルを実際の服飾品、例えば帽子にどのように応用されるかその応用例を説明する。
【0103】
例5
図5には、上記図3で示した3層構造のコードシンボルを運動会の赤帽に応用した例が示されている。良く知られているように、運動会等では、赤い色の帽子と白い色の帽子などで、赤組、白組を識別することが広く行われており、赤帽は、運動会において広く利用されている帽子である。
【0104】
図5に示すように、赤帽10に、黒色マーカーで田の字を描いている。このようにすれば、赤帽10の地の色(R)が第1層に相当し、描いた田の字の黒色マーカーで描いた部分(K)が第2層に相当する(図5参照)。
【0105】
さらに、田の字の中の部分(4個のR)部分が第3層を構成する。
【0106】
この結果、図3に示すように、
・第1層は、Rである。
・第2層は、Kである。
・第3層は、色彩エリア数が4であり、その色彩はRが4個である。
の如きコードシンボルを赤帽10にマーキングすることが可能である。このように、黒いマーカーを1個用意するだけで、容易に複数層の検出用シンボルを服飾品にマーキングすることができるので、本包含型シンボルは極めて使いやすく有効なシンボルである。
【0107】
例6
図6には、図5と同様に、黒色のマーカーでマーキング可能な検出用シンボルの例が示されている。図6では、運動会の赤帽上に黒色マーカーで星形を描いている。このような単純な作業でも本実施の形態の検出用シンボルをマーキングすることが可能である。
【0108】
この場合は、赤帽10の地の色(R)が第1層に相当し、描いた黒色マーカーの星形の部分(K)が第2層に相当する(図6参照)。
【0109】
さらに、星形の中の部分(6個のR)部分が第3層を構成する。このような構成の検出用シンボルを赤帽10にマーキングすることができる。
【0110】
例7
図7には、赤帽10に本実施の形態の検出用シンボルをマーキングするために所定のワッペンを付した様子が示されている。このワッペン12は、地色が緑(G)であり、内部に、「123」の数字があしらわれている。この内、「1」と「3」は青(B)で描かれており、「2」は赤(R)で描かれている。
【0111】
この場合は、赤帽10の地の色(R)が第1層に相当し、ワッペン12の地の色(G)が第2層に相当する(図7参照)。
【0112】
さらに、ワッペン12内部の各文字の色彩(Bが2個、Rが1個)が第3層に相当する。
【0113】
例8
図8には、赤帽10に本実施の形態の検出用シンボルをマーキングするために黒色マーカーを用いて描いた他の例が示されている。図8に示すように、赤帽12の側面に黒色マーカーで大きな円と、その円の内側に同心円状に小さな円を描き、この小円の内部に十字を描いたものである。
【0114】
この結果、赤帽10の地の色(R)が第1層に相当し、描いた外側の大きな円の黒色マーカー部分(K)が第2層に相当する。大きな円と小さな円の間の領域(R)が第3層に相当する。内側の小円の部分(K)が第4層に相当する。そして、内側の十字型で区切られた各領域(Rが4個)が第5層に相当する。
【0115】
このように、黒色のマーカーだけで、第5層まであるやや複雑な検出用シンボルを容易にマーキングすることが可能である。
【0116】
例9
図9には、赤帽10に本実施の形態の検出用シンボルをマーキングするために黒色マーカーを用いて描いた他の例が示されている。図9に示すように、赤帽12の側面に黒色マーカーで円と、その円の内側に「123」という文字があしらわれている。
【0117】
この結果、赤帽10の地の色(R)が第1層に相当し、描いた外側の大きな円の黒色マーカー部分(K)が第2層に相当する。外側の大きな円の内側の領域(R)が第3層に相当する。円の内側に描かれた文字(K)×3個(3文字分)が第4層に相当する。
【0118】
このように、黒色のマーカーだけで、第4層まであるやや複雑な検出用シンボルを容易にマーキングすることが可能である。
【0119】
以上、例1〜例9で述べたように、検出用シンボルは、追跡作業を行おうとするその現場で比較的容易にマーキングすることが可能である。
【0120】
なお、この検出用シンボルは「包含型コードシンボル」と呼ぶ。さらに、「色彩包含型シンボル」、「包含型シンボル」、等とも呼ぶ。これに併せて、そのコード体系も、色彩包含型コード、包含型コードと呼ぶ。
【0121】
第2−3 読み込みの際の留意点
これまで説明してきたように、本実施の形態で提案する検出用シンボルは、マーキングが容易である。特に、追跡用に用いる場合は、それが他と識別・区別できれば十分であり、それが表す具体的な数値はあまり問題とならない。そのため、利用者が使用したい現場で単なる思いつきで丸や四角、十字、等を描くことによって、容易に追跡用の検出用シンボルをマーキングすることが可能であり、極めて利便性に富む。
【0122】
一方、この検出用シンボルを読み取る際には、以下の点を留意すべきである。
【0123】
(1)切り出し
なお、「色彩包含型シンボル」を読み取る際に、その切り出しは、第2層の色彩領域を検出することで行うことが好適である。
【0124】
例えば、図5の赤帽10の例を考えると、背景に偶然に赤が存在するケースが考えられる。極端な場合、背景が全て赤の場合、第1層の切り出しは意味をなさないことは明らかであろう。このような場合でも第2層の切り出しは有用である。すなわち、背景が何色であろうと、(撮像が良好に行われている限り)第2層の切り出しは同様に行うことが可能である。
【0125】
さて、このような第2層の切り出しは、「赤に囲まれた黒の領域の判別」を行うことに他ならない。他の仕様の場合も含めれば、「X色に囲まれたY色の領域の判別」と一般化されよう。
【0126】
この切り出しに引き続き、黒領域(第2層)の中に4個の赤領域(第3層)が内包されているか否かを調べて絞り込むことによって、目的のマークを切り出すことが可能である。
【0127】
(2)色彩領域
また、これまで述べた例から明らかなように、本実施の形態で提案する検出用シンボルは、先に出願した本願発明者が開発した「カラービットコード」と同様に、小数の色彩でコードシンボルを構成することができる。例えば、赤と黒だけでも構成することが可能である。
【0128】
従って、上記「カラービットコード」と同様に、色彩の領域判定に用いる色彩は色彩空間において広い領域を占めさせることもできる。つまり、「赤」と認定される色彩空間を広くとることができ、多少の色彩のバラツキがあっても、コードシンボルを読み取ることが可能である。ここで、色彩のバラツキは、照明、退色、汚れ、マーキングする際の色彩の精度等に起因すると考えられる。
【0129】
例えば図5では、RとKのみ使用しているが、3色以上の色彩を用いることも好適である。明らかに、多色の方がバリエーションが増えるので、任意に手書き等で適当な色彩を用いてマーキングした場合に、よりユニークなマーキングとなる可能性が高くなる。すなわち、他のマーク(他人が描いたマーク)と偶然一致してしまう可能性は低くなる。
【0130】
その一方、トポロジー的にあまりにもありきたりな構成の場合は、非マークにも相応する形状が表れてきてしまう可能性が高くなる。例えば、○に川の字を描けば、○の第1層と、○と川の間の領域の第2層と、川の文字を構成する第3層の3個の領域と、から成るマークを構成できるが、このような例では、他人も同様の構成を採用する可能性が高いので、偶然色彩も含めて他のマークと一致してしまう可能性が高くなってしまう。
【0131】
結局、その用途にも依存するのであるが、あまりにもトポロジー的に単純な構成のシンボルの仕様は避けるべきであろう。
【0132】
第3 符号化その1
上記第2では、包含型シンボルを、検出用シンボルとして用いることができることを説明した。
【0133】
この追跡という用途に用いる場合は、それぞれの検出用シンボルを識別さえできれば良い。例えば、
・第1層は、Rである。
・第2層は、Kである。
・第3層は、色彩エリア数が1であり、その色彩はRである。
・第4層は、色彩エリア数が2であり、その色彩はKである。
と言う構成の検出用シンボルを見つけた・・・というアルゴリズムでもかまわないが、各検出用シンボル毎に上記のような表し方をしたのでは操作が煩雑となる場合も想定される。
【0134】
しかし、データ処理の観点からは、各検出用シンボル(包含型コードシンボル)を表すために、検出用シンボルを一定の数字に置き換えることが望ましい。特に、複数の検出用シンボルを扱う場合はそれぞれの検出用シンボルを数値で識別できることがデータ処理上好ましい。本節では、このような観点から符号化について検討する。
【0135】
まず、図10のような包含型コードシンボルについて説明する。
【0136】
この図10のような包含型コードシンボルの包含関係をツリーで表せば、図11のようになる。より簡単な表記法で包含関係を表すために、R(G+G+B)のような表記法を用いる。
【0137】
これは、()内の色彩領域が、()の左隣に隣接する色彩領域に含まれることを意味する。そして、R、G、B等は、それぞれの色彩の領域を表す。
【0138】
つまり、
R(G+G+B) → 「G、G、B」がRに含まれる。
【0139】
を意味する。
【0140】
さらに、含まれる色彩領域が1個のみの場合は、()を省略できるようにする。
【0141】
つまり、
RG → GがRに含まれる。
【0142】
を意味するように表記法を決める。
【0143】
この表記法を用いて図11の包含関係を表せば、
RG(B(R+R(G+G))+RBGR+B(G+G+R+R+R))=P(11)
・・・(式a)
となる。ここで、P(11)は、図11のパターンを表すという意味である。
【0144】
次に、下層に対して、
R→G→B→R→の方向の色彩変化を「p」で表し、
R→B→G→R→の方向の色彩変化を「q」で表すと、
上記(式a)は、
P(11)=Rp(p(p+p(p+p))+qqqq+p(q+q+p+p+p))
を記される。
【0145】
ここで、上記p+pを(2p、0q)と表し、q+q+p+p+pを(2p、2q)と表し、それぞれ、K1、K2と表す。これらを図12の表に従ってって求めると、
K1 = 3
K2 = 17
となる。従って、上記式a(P(11)式)は、
P(11)=Rp(p(p+p(3))+qqqq+p(17))
となる。ここで、数字(量子)と記号の識別を(+で行うと、上記式は、
P(11)=Rp(p(p+p(+3))+qqqq+p(+17))
となる。
【0146】
ここで、記号の種類を減らすため、「(+」及び「+」を、便宜上()に置き換えると、上記式は、
P(11)=Rp(p(p()p()3))()qqqq()p()17))
となる。
【0147】
さらに、各記号を、以下のように数字に置き換える。
【0148】
R:1(先頭文字のみ)
G:2(先頭文字のみ)
B:3(先頭文字のみ)
):0
(:1
p:2
q:3
また、量子数字を、4進数に変形するために、
(3=3 17=101(17(十進数)の4進数標記)
とおくと、
P(11)
=121212102103001033331021010100(4進数)
=1844545934802960000(10進数)
のように、数字で表すことができる。
【0149】
第4 符号化その2(色彩エリアが連続している場合)
次に、図13に示すように、色彩エリアの一部が接触している(連続していると称する)場合、連続している色彩エリアを、R=B=Rのように表すと、そのツリー図は、図14に示すようになる。
【0150】
これを、上記第3と同様に、式で表現することを考える。上記第3と同様に包含関係を()で表現すれば、
G(R(G(R)=B(R=B=B=BG)=G(B=RB)B(G=RR)))
と表される。誤解を避けるために、「=」を「*」で記すと、この式は、
G(R(G(R)*B(R*B*B*BG)*G(B*RB)B(G*RR)))
・・・(b式)
となる。又は、
GR(GR*B(R*B*B*B+G)*G(B*RB)+B(G*R+R)
さらには、
GR(GR*B(R*3B+G)*G(B*RB)+B(G*R+R)
とも記すことが可能である。
【0151】
ここで、上述したa式、b式に着目すると、これらで使用している文字種は、それぞれ以下の通りとなる。
【0152】
a式は、「R」、「G」、「B」、「(」、「)」の5種類である。
【0153】
b式は、「R」、「G」、「B」、「(」、「)」、「*」の6種類である。
【0154】
そこで、両式で共通して
「)」=0
「(」=1
「R」=2
「G」=3
「B」=4
「*」=5
とおくと、上記a式は、
213141221330021413120004133222000
と言う5進数の数字に変換することができる。
【0155】
また、同様に上記b式は、
3121312054125454543053145240413522000
と言う6進数の数字に置き換えることができる。
【0156】
これらの数をデシマル(十進数)で表現し直すことももちろん好適である。
【0157】
例えば、用いることが可能な色彩が(R、G、B)の3色である場合を考えると、マークの状況は、
第1層:R、G、B
第2層:R、G、B
第3層:R(n1)、G(n2)、B(n3)、RkxGkx(n4)、GkxBkx(n5)、BkxRkx(n6)
第4層:R(n)、G(n)、B(n)、RxGy(n)、GxBy(n)、BxRy(n)
・・・
のように連ねることが可能である。
【0158】
特に、第1層をRであると仮定すると、上記の組み合わせは、
第1層:R
第2層:G、B
第3層:R(n)、G(n)、RxGy(n)・(第2層がBであると仮定した場合)
第4層:R(n)、G(n)、B(n)、RxGy(n)、GxBy(n)、BxRy(n)
・・・
のように記すことが可能である。
【0159】

B.実施の形態2
上述した実施の形態1に改良を加えて、本実施の形態2では、以下のような包含型コードシンボルのマーキング仕様を提案する。
【0160】
第1 提案する包含型コードシンボルのマーキング仕様
本発明は、2色以上の色彩(白黒の場合も含む)による包含関係を検知して読み取ることについて実現可能な技術を提供するものである。
【0161】
本発明の特徴の主なものは、以下の通りである。
【0162】
1.シンボル全体を覆う最大包含域「シンボルエリア」が定義されている。
2.上記「シンボルエリア」内にデータを表す個々の領域「データセル」が包含され、それらの、最大層数と領域数の範囲が予め定められている。
3.シンボルの特定(データ化)は「データセル」の包含関係パターンと各包含関係にあるセル同士の色彩の関係で決定される。
このような特徴を有するということは、逆に言えば、その形状や大きさには依存しないことが特徴であるとも言えよう。
【0163】
第1−2 2色の場合
・データセルに包含関係が無い場合
2色を用いる場合の具体的な例について説明する。
【0164】
本例の概念図が図15に示されている。図15に示すように、まず、外周の枠で、シンボルエリアが表されている。図15では、白地の中に黒地が包含されている「シンボルエリア表示層22」と、その中(黒地の中)に白地として包含されている「シンボルエリア表示層20」の2層によって「シンボルエリア100」が明示されている。
【0165】
この「シンボルエリア100」内に、データセル30a、30b、30c、30d、30eが包含されている。図1(a)ではデータセル数が5個の例が示されており、図1(b)ではデータセル数が6個の例がそれぞれ示されている。
【0166】
例えば、はじめにデータセル数を1〜10個の間で定義した場合、このデータセル数が図1におけるデータを示すことが好適である。
【0167】
この「シンボルエリア」内に、データセルが包含されている。
【0168】
・用語
本実施の形態2における用語の説明を行う。本実施の形態2では、撮像した画像データから、コードシンボルを見つけてその読み取り(デコード)を行い、データを復元する技術、及びそれに用いられる包含型コードシンボルの説明を行う。
【0169】
・「画像データ」と「色彩エリア(色彩領域)」
撮像した画像データには、種々の色彩エリアが存在する。この色彩エリアは、ある所定の色彩が付された領域を言う。本実施の形態では、領域(エリア)は、2次元上の領域(エリア)を言う。
【0170】
一方、コードシンボルは、所定の色彩が付されたセルから構成される。本実施の形態では、このセルは、画像データ中のいずれかの色彩エリアである。すなわち、色彩エリアは、セルとなる場合もあるし、また、背景を構成する色彩エリアもある。
【0171】
本実施の形態では、上でも述べたように、本実施の形態の包含型コードシンボルは、
・シンボルエリア表示層
・データセル
の2種のセルから構成される。便宜上、シンボルエリア表示層もここでは「セル」と呼ぶ。
【0172】
「シンボルエリア」
平面上の所定の領域であって、そのコードシンボルの存在エリアをシンボルエリアと言う。
【0173】
「セル」
コードシンボルの構成要素であって、データを表現する。セルが集合してコードシンボルが構成されている。上述したように、本実施の形態2においては、セルは、
・シンボルエリア表示層、
・データセル、
の2種があり、原則として、データセルがデータを表す。シンボルエリア表示層は、主として、そのコードシンボルを発見しやすくする役割を果たす。シンボルエリア表示層も、データセルも、画像データ中の色彩エリア(色彩領域)である。
【0174】
・データセルに包含関係がある場合
次にデータセル同士の包含関係がある場合を考える。
【0175】
図16においては、データセル数5で2層までの包含関係がある場合が示されている。これらはいずれもデータセルが5個の場合であるが、図16(a)は、包含関係が2:1:1:1の場合であり、図16(b)は、包含関係が3:1:1の場合である。そして、図16(c)は、包含関係が2:2:2の場合であり、図16(d)は、包含関係が3:2の場合である。そして、図16(e)は、包含関係が5の場合である。
【0176】
なお、この図16に示すように、データセルは「所定の定義された色彩で閉じた領域」と定義されるものである。
【0177】
従って、図16に示された例はいずれも「データセル数5」ではあるが、包含関係から図1(a)の場合を含めて全部で6通りのパターンを持つことになる。
【0178】
本発明ではデータセル数と、ここで示した包含関係のパターンと、をそのコードシンボル(検出シンボル)が表すデータとして認識し、このデータに基づいて各コードシンボルの識別を行う。
【0179】
第2 色彩の役割(特に有彩色を用いた場合のメリット)
上述した各例においては、2色の場合、特に白黒の場合を念頭において説明してきた。しかし、当然ながら有彩色である赤や青等の他の色彩を用いることで次のようなメリットが生じる。
【0180】
第2−1 特定手段としてのメリット
本発明は形状に無関係で、且つ、できるだけシンプルなパターンを目指している。従って、上記例のような場合、偶然に同様なパターンが存在してしまう可能性がある。そこで、仮に2色であってもある特定された色彩(赤や青等の他の有彩色)を使うことでこの可能性を低く抑えることができると考えられる。
【0181】
また、すでに下地に色が存在しているような場合(例えばオレンジ)、オレンジ内に黒等でマーキングを施す方が作業が簡単であるし、単に所定の色彩(例えば黒)を探す作業を使うことで切り出し(見つけ出すこと)が容易になる。
【0182】
また、仮に2色以上使う場合、シンボルエリア表示層に特定の色彩を使うことによって、シンボルの切り出しが容易になる。これによって例えば、白地に黒の模様を赤などで囲むだけで、切り出しが行いやすいコードシンボルを作ることが可能となる。
【0183】
以下に、これらの具体例を示す。
【0184】
図17(a)は黒線で丸に十字の模様を描いたものであるが、最外周に一層のシンボルエリア表示層24が配置されている。また、内部に4個のデータセル36a、36b、36c、36dが存在するパターンとして認識できる。
【0185】
図17(b)は顔のマークであるが、図17(a)と同様、最外周に一層のシンボルエリア表示層26と、6個のデータセル38a、38b、38c、38d、38e、38fが配置されている。そして、これらの包含関係は2:2:1:1のパターンであると認識することができる。
【0186】
図18(a)は看板などで赤地に黒でマーク・文字を描いた例である。2層のシンボルエリア表示層28a、28bと、6個のデータセル40a、40b、40c、40d、40e、40fとから構成されている。これらの包含関係は、3:2:1のパターンであると認識できる。
【0187】
この図18(a)の場合は、赤・黒の組み合わせなので、より認識しやすく同一パターンが存在する可能性も低い。
【0188】
図18(b)は、白地に黒色で描いた田中という文字を、赤線で囲んだ例である。赤白による2層のシンボルエリア表示層29a、29bと、黒・白の8個のデータセル42a、42b、42c、42d、42e、42f、42g、42hとから構成される。そしてこれらの包含関係が5:3のパターンであると認識できる。
【0189】
このように、図18では、すでにある文字等の模様の外周を“シンボルエリア表示層”で囲むことで認識可能なシンボルに変えた例を説明した。このような手法で簡単に追跡用のコードシンボルを生成することができるので、追跡動作を簡単に実行することができる。
【0190】
第2−2 バリエーション(データ量)を増加する種々の手段
これまで説明してきたコードシンボルでは、データセルの個数や包含関係で所定のデータを表してきた。そして、そのデータで各コードシンボル(検出シンボル)を区別してきた。
【0191】
ここで例えば、図15(a)において下地が白であり、この下地上に黒及び赤でマーキングをしてコードシンボルを構成する場合(つまり、白、黒、赤の三色で構成する場合)は、5個のデータセルを
黒:5個/赤:0個
黒:4個/赤:1個
黒:3個/赤:2個
黒:2個/赤:3個
黒:1個/赤:4個
黒:0個/赤:5個
の6通りの表し方がある。すなわち、表せるデータの種類の数を6倍に増やすことが可能である。
【0192】
また、上述した図16(a)で示した例において、同様に白地に、赤と黒を用いてマーキングするという条件でバリエーションを考察すると、
黒⊃赤、黒:3個/赤:0個
黒⊃赤、黒:2個/赤:1個
黒⊃赤、黒:1個/赤:2個
黒⊃赤、黒:0個/赤:3個
赤⊃黒、黒:3個/赤:0個
赤⊃黒、黒:2個/赤:1個
赤⊃黒、黒:1個/赤:2個
赤⊃黒、黒:0個/赤:3個
の8通りの表し方がある。すなわち、表せるデータの種類の数を8倍に増やすことが可能である。記号⊃は、包含関係を示す記号である。例えば、「黒⊃赤」は、黒のデータセルに赤のデータセルが含まれるという一対のデータセルの包含関係を示している。
【0193】
第3 認識方法
本実施の形態で提案するコードシンボル(検出シンボル)は、色彩のエリアに基づいてい、各色彩エリアの包含関係を認識し、各コードシンボルを認識している。
【0194】
従って、実際の応用の場面では、キャプチャされたデジタルカラー画像を使うことを一つの前提としている。
【0195】
また、使用する色彩は、一般的には、事前に定義されていることが好ましい。従って、この使用する色彩を基準として、その基準色を含む所定の色彩範囲を設定して、その色彩範囲の中の色彩は、上記基準色であると見なすこと(収斂させること)が好適である。使用する色彩がいくつか存在する場合は、キャプチャした画像の色彩は、そのいくつかの基準の色彩に収斂されていくことになる。
【0196】
なお、使用する色彩を事前に定義せず動的に変動させることも考えられ、そのような場合でも本発明は利用可能ではある。しかし、使用する色彩の動的な変動は、また別個の技術的アイデアであると思われるので、本特許では詳しい説明は省略する。本実施の形態では、使用する色彩が事前に定義されている場合を中心として説明を行う。
【0197】
図19には、色彩空間が所定の基準色を含んだいくつかの空間に分けられている例を示す説明図が示されている。図19に示した色立体で表された色彩空間は、縦方向に明度(B)を取り、水平面上の方位角が色相(H)を表している。そして、色立体の中心部分からの距離が彩度(S)を表している。
【0198】
特に、図19で表した色彩空間では、白(W)と、黒(K)と、赤(R)とに空間が分割されている場合の例が示されている。各部分空間には、それぞれ基準色である、白、黒、赤が含まれている。
【0199】
・ 「空間」と「領域」・「エリア」
なお、本特許において、「空間」の用語は、色彩上の空間を表し、その部分は部分空間等と称する。一方、「領域」「エリア」は、画像の中での一定の色彩が付された領域を表す。つまり、色彩上は「空間」の語を用い、画像上では「領域」「エリア」の語を用いている。
【0200】
さて、基準色に収斂された後、ノイズ等を除去すれば、画像データは、基準色のみが含まれた画像データとなる。この画像データを収斂色彩画像50と呼ぶ。この収斂色彩画像50が図20に示されている。
【0201】
この図20の上記収斂色彩画像50から、各「色彩領域(色彩エリア)間の境界線」のみを取り出す。ここで、シンボルに帰属する各色彩領域(データセル、シンボルエリア表示層の間に位置する領域)は定められた色彩で構成されている。
【0202】
従って、上記「色彩間の境界線」とは、定められた色彩の境界線で、且つ、閉じられた曲線になる。また、シンボルエリア表示層も、色彩間の境界線であり、閉じられた曲線である。
【0203】
このような境界線のみを取り出した画像を、色彩境界線画52と呼び、図21に示されている。この色彩境界線画52に基づきコードシンボルを検出する。このコードシンボル(検出シンボル)は、以下の条件下で認識を行う。
【0204】
(認識条件)
・事前に決められた色彩関係や層数に適合するシンボルエリア表示層を形成する単数もしくは複数の境界円が存在すること。
・上記シンボルエリア表示層が形成する境界円の中に、事前に決められた色彩関係に適合したデータセルによる境界円が存在すること。
・そのシンボルエリア表示層の境界円の個数が、予め定められた個数(もしくは個数の範囲)であること。
・またデータセルを構成する円の包含関係は、いわば「円の中に円が含まれる」ことになるが、この包含関係が事前に定めた層数もしくはそれ以下であること。
以上の認識条件下で、求めるものその物、もしくは関連する複数のシンボルを探し出すことができる。
【0205】
●撮像環境の考慮
これまで、撮像した画像データから、基準色を中心として一定範囲内の色彩を検知し、シンボルエリア表示層や、データセル等を検知していることを説明した。
【0206】
ところで、撮像の環境の照明によっては、撮像の色調が変化することもあるので、得られた画像データの全体の色調をまず判断してから、基準色の範囲を適宜シフト等して決定することが好適である。このような技術は、例えばホワイトバランス等の調整のように、自動的に行うことが従来から可能であるので、そのような技術を利用すれば実施することが可能である。さらには、そのような環境の影響を、補正データとして、コードシンボルに付しておくことも好適である。補正データについては後に詳述する。
【0207】
具体的にその場合の読み取り動作の例を示せば、以下の通りとなる。
【0208】
前記包含型コードシンボルを撮像して画像データを得るステップと、
前記画像データ中の色彩の分布に基づき、前記包含型コードシンボルを構成するセルに用いられる色彩の範囲を決定するステップと、
前記決定された色彩範囲に基づき、セルとなる色彩エリアを前記画像データ中の色彩エリアから、前記セルとなる色彩エリアを決定していくステップと、
を含むことになろう。従来から色彩分布からホワイトバランスを設定する手法は知られているので、当業者であれば、このようなことを実施するのは容易である。
【0209】
●層数についての注意点
上では、「包含関係が事前に定めた層数もしくはそれ以下であること」を認識条件の一つとしたが、この制限は緩和しても良い。例えば、事前に定めた層数を最大値とすれば、最大値を超える深さのデータセルが存在した場合は、その越えた部分のデータセルを無視してデータを求めるように構成することも好ましい。
【0210】
次に、下記3−1節、下記3−2節において、シンボルに対して、外周にシンボルエリア表示層の如き境界線円が存在した場合、あるいは、データセル内にデータセル状の境界円が存在した場合について検討する。
【0211】
これは、すなわち背景や汚れ、ノイズ等によりシンボルを表す境界円が層状に形成されてしまった場合等であると考えられる。
【0212】
3−1 外周に擬似境界円が付加された場合の問題点
本来の正規のシンボルに対して、その外周に、疑似的に境界円が付加された場合、これを加えるとデータセル数が擬似的に増えて見えることになる。つまり、上述した図16(e)のようなパターンと見分けがつかないことになる。
【0213】
例えば、擬似的に外部に境界円が2重に設けられれば、その新たな境界円がシンボルエリア表示層に「見えて」しまうので、本来のシンボルエリア表示層が2個の重なったデータセルに「見えて」しまうことになる。
【0214】
但し、
・データセル数(又はデータセル数の範囲)を決めておく。
・層数(又は層数の範囲)を決めておく。
・一対以上の包含関係にあるデータセルを必ず含むことをルールとして定めておく。
・データセルとシンボルエリア表示層の色彩を異ならせる。
などの手法・ルールを定めて、上記のような汚れ・ノイズ等による誤認識を回避し、擬似境界円の影響を排除して正しいシンボルを認識することができる。
【0215】
なお、このようなケースは、背景などの状況によっては生じることを完全に防止することは困難であるが、背景に紛らわしいものが無い状況下のアプリケーションに特化して利用することも好適である。
【0216】
また、アプリケーションによって背景の状況が予めわかっている場合も多いので、そのような背景の状況と紛らわしくないように上述したようなパラメータを設定しておくことが好適であろう。例えば、背景と明らかに異なる色彩を用いる、包含関係が背景に表れにくいようなものにしておく等の、工夫をすることが好適である。
【0217】
3−2 データセル部分に擬似境界円が付加された場合の問題点
この場合は、正規の境界円(データセルの境界円)の内側なので、シンボル内の何らかのノイズや、もともとシンボルが持っている模様の問題である。
【0218】
基本的な対策として、以下のことが考えられる。
【0219】
・まず、層数はあまり過大に増やさない。層数が多い場合は、ノイズによる擬似的な境界円が発生したと見ることができる。
【0220】
・又は、所定の層数以上の境界円は無視することが好ましい。この結果、必要以上に細かい(ノイズに近い)境界線を(無視して)見ないようにできる。
【0221】
3−2−1 さらなる問題点
しかし、データセル部分に擬似境界円が付加された場合の上記対策を施しても、次のような問題が生じる可能性がある。
【0222】
すなわち、データセルの一部をシンボルエリア表示層と見なしてシンボルの条件に合致してしまう場合である。これはすなわち、シンボルが入れ子になって見える状態である。
【0223】
これを回避するためには、
・データセルとシンボルエリア表示層の色彩仕様を変える。
【0224】
・入れ子が認識された場合、外側(あるいは内側、もしくは両方)を正しいシンボルであると見なすか、又は、全て正しくないと見なす、というルールを設けておく。
【0225】
このような対策によって、シンボルが入れ子になった場合でも読み取ることができ流可能性を大きく向上させることができる。
【0226】
3−3 切り出し
本実施の形態で提案するコードシンボルのパターンの切り出し手法は、種々考えられる。しかし、基本的には、まず、外縁を構成するシンボルエリア表示層を発見する処理から開始される。なお、切り出しとは、撮像等で得られた画像データから、そのコードシンボルであると判断される領域を抽出することを言う。本実施の形態で説明するコードシンボルにおいては、その切り出しを容易にするために、データセルとは別に、データセルを包含するようにシンボルエリア表示層が設けられている。
【0227】
従って、上述したように、まずは、このシンボルエリア表示層を発見することから開始することが好適である。
【0228】
(1)この「シンボルエリア表示層」は定められた色彩(下地)内に、別の定められた色彩で構成されるので、その色彩の関係を元に見つけていくことができる。またシンボルエリア表示層内には、必ず全ての他エリア(データセル)が内包されるので、その関係に基づいて、さらに特定することができる。
【0229】
位置の特定その1 切り出しターゲット
さらに、シンボルの位置の特定を容易にするために、まず考えられるのは、図22に示したように層数を増やすことである。この図22(a)では、シンボルエリア表示層として3層(3本)使用されている。図22(b)では、このシンボルエリア表示層の内側にデータセルが3個配置されている。そのうち1個は、さらに内部に他のデータセルを含んでいる。
【0230】
なお、図22(c)では、内部のデータセルが4個の例が示されている。そのうち1個のデータセルは更にその内部に他のデータセルを含んでいる。
【0231】

この結果、これらシンボルエリア表示層の間の色彩は、2色必要となる(図22(a)参照)。このように色彩を増やせば、背景中、偶然にその特定の色彩が使用される確率が減るので、より正確ににシンボルの位置を特定することができる。
【0232】
なお、シンボルの位置とは、そのシンボルが占める領域を意味する。
【0233】
位置の特定その2
シンボル位置の特定を容易にするために、第2に考えられることは、図23に示すように、所定の層において、複数のエリアを用いることである。図23(a)には、図22と同様に、3本のシンボルエリア表示層が用いられているが、その最内周のシンボルエリア表示層は、2個備えられている。
【0234】
シンボルエリア表示層は、最外周の1本は、そのシンボルの外縁を定義し、そのシンボルの位置(占める領域)を定義するものであるから、2本設けることはできない。しかし、内側のシンボルエリア表示層であれば、2個以上のエリアに分けること、すなわち、2本以上のシンボルエリア表示層を設けることも好適である。このような階層構造、包含関係によって、そのシンボルをより複雑に特徴付けることができる。
【0235】
より複雑に特徴付ければ、そのような特徴と背景画像とが一致してしまう可能性を少なくすることができるので、より正確なシンボルの検出・切り出しを行うことが可能である。
【0236】
但し、あまり複雑にしすぎると、以下のような点が問題と成る可能性が出てくるので、複雑にするにも一定の限度がある。
【0237】
(a)その包含構造を読み取ることが繁雑な作業となり、検知するまでに時間がかかる。
【0238】
(b)シンボルエリア表示層で大きな面積を消費してしまいがちになり、データを表現するためのデータセルが占めることができる面積が極めて狭くなってしまう可能性もある。
【0239】
図23のように、最も内側の層のシンボルエリア表示層を2本設けた場合は、それぞれの内側にデータセルを設けることができる。その様子が図23(b)に示されている。また、更にデータセルを足した例が図23(c)に示されている。
【0240】
なお、シンボルエリア表示層の更に内側のデータセルとの包含関係で、各シンボルを特徴付けることも好ましい。このような構成によれば、各シンボルをより正確に検知して切り出すことが可能である。
【0241】
位置の特定その3
シンボルの位置を特定するために、第3に考えることができるのは、図24に示すように、特定の色彩を使用するということである。
【0242】
図24(a)には、データセルとして1個のR色(赤色)が設けられている例が示されている。この赤いデータセルの存在によって、このシンボルを容易に識別でき、且つ、容易に切り出すことができる。この特定の色彩のデータセルは何処に存在していても良い。 図24(b)では、シンボルエリア表示層の直下のレベルに3個のデータセルが存在し、その中の1個が赤色のセル(図中ハッチングで示されている)である。また、図24(c)では、シンボルエリア表示層の直下のレベルに3個のデータセルが存在し、その中の1個が赤色のセル(図中ハッチングで示されている)であり、且つ、その赤色のセルには更に1個のデータセルが内包されている。
【0243】
また、図24(d)では、シンボルエリア表示層の直下のレベルに5個のデータセルが存在し、その中の1個が赤色のセル(図中ハッチングで示されている)である。
【0244】
シンボルエリア表示層を増やす手法も、また、特定の色彩を用いるセルを利用する方法でも、いずれの場合も、その表示層やデータセルは、最外層に位置していなくともかまわない。
【0245】
3−4 データ化
3−4−1 2色の場合(包含パターンのデータ化)
上記アルゴリズムで認識した結果 、シンボルエリア表示層内のデータセルの個数、層数の構成(所定の層数を限度とする)に基づき、上記実施の形態1と同様に数値化することができる。
【0246】
ここでは、まず2色の場合、すなわち、そのシンボルの包含パターンでデータを表し、色彩の種類はデータには影響しない場合を説明する。
【0247】
例えば、2層を上限とすれば、データセルの構成は以下のように与えられる。
【0248】
すなわち、下記の数列
1,2,1,1,3,2
のように表される。
【0249】
ここで、上記数列中、
上記「1」は層をなさないデータセルを表す。
【0250】
上記「2」、「3」は層をなしたデータセルである。特に、「2」は1対1の包含関係にあるものを表す。また、3は図16(b)に示される例のように、一つのセルに2つのセルが包含される場合を表す。
【0251】
さて、上記数列を大きい順に並べると、
3,2,2,1,1,1
となり、この例では、データセル数はこれらの総和の10となる。
【0252】
さて、求めるデータとして、上記数列を用いても問題は無い。しかし、これを系統的に並べて、順列番号を与えておき、この順列番号を「データ」として用いれば、冗長度は格段に減少し、数値の桁数のコンパクト化を図ることができ、効率的なデータ処理が可能となる。
【0253】
p(10)の場合に得ることができる数列の例が図25に示されている。
【0254】
図25に示された表では、p(10)の取りうる数列を列挙している。この図25を参照して各数列にS/N(シリアルナンバー:順列番号)を対応させることができる。そして、このシリアルナンバー(:順列番号)を最終的に変換するデータとして利用するのである。
【0255】
ちなみに、シンボルエリア表示層が2層の場合、以下の様に計算される。例えば、2層2色(たとえば白黒、かつ白地)と考えると、セル数5の場合、取り得る包含関係の全組合せ数であるmは以下の様に求められる。
【0256】
なお、下記の記述において、数値化したもの(各山のセル数)を→で示している。
【0257】

・白地に黒が5個(1層×5)
→1,1,1,1,1
・白地に「黒、その中に白が1個」が1個と黒が3個(2層×1+1層×4)
→2,1,1,1
・白地に「黒、その中に白が2個」が1個と黒が2個(2層×2+1層×3)
→3,1,1
・白地に「黒、その中に白が3個」が1個と黒が1個(2層×1+1層×4)
→4,1
・白地に「黒、その中に白が4個」が1個と黒が0個(2層×1+1層×4)
→5
・白地に「黒、その中に白が1個」が2個と黒が1個(2層×1+1層×4)
→2,2,1
・白地に「黒、その中に白が2個」が1個と「黒、その中に白が1個」が1個
→3,2
ここで数値化したものを見ると、いわゆる「分割数」になっていることが判明する。分割数とは、整数を自然数の和で表した(整数分割を行った)場合の表し方の数を言う。同じ整数があっても良いが、順番を変えただけのものは、同じ分割であると見なされる。
【0258】
例えば、自然数5は、
5=5
5=4+1
5=3+2
5=3+1+1
5=2+2+1
5=2+1+1+1
5=1+1+1+1+1
の7通りとなり、自然数5の分割数は7である。この分割数を表す関数を分割関数と呼びp(5)と表す。つまりp(5)=7である。
【0259】
このように、本包含型コードシンボルにおいて表現できるデータ量(表すことができるデータの種類)の数は、データセル数に対していわゆる分割関数で与えられる。したがって、nをデータセル数とすれば、p(n)が表すことができるデータ数となる。
【0260】
この分割関数には、「分割関数の漸化式」が適用できることが知られている。オイラーの五角数定理により、再帰関係式は
Σp(n−j(3j±1)/2)(−1)^j=0
で与えられることが知られている。
【0261】
これを計算した結果が、図26に示されている。
【0262】
ここまでの計算は、2層を前提にしている。多層の場合も数学的に解けるはずであるが、単純な形の数式は未だ見つけてはいない。一般式は、非常に複雑になることが予想される。
【0263】
実際に使用される層数などは限定的である場合が多いと思われるので、そのある程度決められたセル数で個別にプログラム等で計算するのが好適であろう。
【0264】
また色彩数が増えた場合に関しても、同様に一般化は少々困難であるので、ある程度決まった色彩数についてプログラムで算出する等によって個別に求めることが好適であろう。
【0265】
なお、既に述べたように、本包含型コードシンボルは、世の中に広く一般的に用いられるという用途より、プライベート使用に適した性質を有しているので、表せるデータ数の数式の一般化もそれほど必要ではないと考えられる。
【0266】
変形例
なお、ここで言う2色とは「白黒」とは限らず、色彩を決めればいかなるものでも同じである。例えば、「赤青」でももちろんかまわない。
【0267】
従って、選択された色がそのままシンボルの特性となるので、同一の包含パターンであっても色彩が異なれば、異なるシンボルであると認識することは可能である。
【0268】
例えば、S/N(順列番号)が同じ「11」であっても、色彩を識別して、「11白黒」、「11赤青」のようにシンボルを峻別することも好ましい。
【0269】
また、シンボルエリア表示層は必ずしも1層、2層とは限らないことも好適である。この場合、層数によって、データセルが同一の包含パターンであっても、異なるシンボルとして認識することは可能である。
【0270】
例えば、S/N(順列番号)が同じ「11」であっても、シンボルエリア表示層の層数を識別して、「2層11」、「3層11」のようにシンボルを峻別することも好ましい。
【0271】
●包含パターン(包含関係の組み合わせ)について
さて、「包含パターン」について述べたが、これは、「包含関係の組み合わせ」との意味である。包含関係とは、AセルがBセルに含まれているという如き関係を言い、これを全てのセルについて記述したものが包含関係の「組み合わせ」である。そして、この包含関係の組み合わせを、上述したように、「包含パターン」と呼んでいる。
【0272】
3−4−2 多色の場合(包含パターン+色彩パターン)
3色以上を使用すれば2色の場合に対して色彩の組み合わせによりデータ種類が増加する。この場合、データの表し方はさらに複雑になり、種々の方法が取り得る。
【0273】
図27は、図25の表のNo16のパターンを例にとって、色彩の組み合わせを示したものである。
【0274】
この図27においては、図28のようなRGBで構成されるパターンを想定しており、シンボルエリア内の下地色がR(図28参照)なので、各データセルの第1層はG又はBのみを取り得る(図28参照)。
なお、図27は、このデータセルについて、その取り得る内容を、3個のブロックを用いて表現している。
【0275】
まず、「4」のセル数から成るブロックは、図27に示すように、4個のデータセル(図28中Xで示している)が8通りの色彩のパターンを取り得ることを示している。
【0276】
また、「2」のセル数から成るブロックは、図27の中央に示すように、2個のデータセル(図28中Yで示している)が4通りの色彩のパターンを取り得ることを示している。
【0277】
同様に、「1111」のブロックにおいては、図27の右部分に示すように、4個のデータセル(図28中Zで示している)がGとBの個数比の種類数、すなわち5通りの色彩のパターンを取り得ることを表している。
【0278】
従って、図27の表の通りの組み合わせとなり、取り得る組み合わせは8×4×5=160通りとなる。
【0279】
ここで、シンボルの特性を考えると、パターンによるデータ部と色彩の組み合わせによるデータ部が区分けしてわかるように表すのが、品質面や使い勝手上、扱いやすいと考えられる。
【0280】
すなわち、
DATA=CCCPPPP
DATA=PPPCCCC
DATA=PPCCCCPP (ここでPはパターンデータ、Cはカラーデータ)
の様な例が考えられる。つまりパターンで表すデータ部分と、カラーで表すデータ部分とを組み合わせて全体の「DATA」となるのである。
【0281】
なお、上記データ中、パターンで表すデータ(の1桁、の1構成部分)をパターンデータと呼び、カラーで表すデータ(の1桁、の1構成部分)をカラーデータと呼ぶ。
【0282】
この場合、例えば以下のような取り扱いが好適である。
【0283】
(1)パターンデータは本来のデータを表し、カラーデータはチェックデータを表すように構成する。チェックデータとは、従来の種々のチェックデータを表す。例えば、パリティデータや、いわゆるCRCデータ等がこのチェックデータの好適な一例である。
【0284】
(2)パターンデータは、カラーの読み取り仕様を表し、カラーデータが本来のデータを表す。読み取り仕様とは、カラー(色彩)とデータとの関係を表す。色彩に「1」「0」を割り当てる仕様も好ましい。また、色彩の遷移、例えば「R→B」「B→G」「G→R」に「1」を割り当て、「B→R」「G→B」「R→G」に「0」を割り当てることも好適である。その他、種々の色彩とデータとの関係が考えられる。これらが読み取り仕様である。
【0285】
(3)パターンデータが商品種別を表し、カラーデータが生産管理データを表す。これは、商品にそのシンボルを付し、その商品の内容を表すために用いられるシンボルが実現できる。
【0286】
(4)パターンデータが学校を表し、カラーデータが学籍番号を表す。これは、学生に付され、その学生の属性を表すために用いられるシンボルを意味する。
【0287】
以上述べたような、それぞれカラーデータ・パターンデータの使い分けで応用範囲が広がることが予想される。
【0288】
さらに、
(5)パターンデータが所定のデータを表し、カラーデータがそのデータを補完するデータを表す。これは、所定のデータが補完する必要が生じた場合に有用な仕様である。
【0289】
(6)パターンデータが所定のデータを表し、カラーデータがその読み取り仕様の補正するデータを表す。これは、環境の光源によって、読み取れる色調が変化する場合等において、その補正を円滑に行うことができるシンボルである。
【0290】
なお、上に述べたパターンデータと、カラーデータとの分担は、逆でももちろんかまわない。例えば、(1)の代わりに、カラーデータは本来のデータを表し、パターンデータがチェックデータを表すように構成することも好適である。(2)が逆になった場合は、読み取り仕様は、包含関係とデータとの間の関係が読み取り仕様となる。(3)(4)(5)(6)も同様である。
【0291】
なお、2色の場合においても、先に述べたように色彩の選定により何種類かのコードシンボルを作成できるので、同様の考え方を取ることが可能である。
【0292】
3−4−3 ◆シンボルの登録
本実施の形態で提案してきたこのシンボルは、これまで示してきたように手書き等で簡単に作成でき、すでにあるマークをシンボルに転用することも可能である。
【0293】
従って、シンボルの作成は、従来のバーコードのように規格に沿ったマークをプリントするという手段でも可能であるが、すでにあるマークを取り込んでシンボルとして登録するという方法も取ることが可能である。
【0294】
この際、シンボル規定上、シンボル化したい模様は、シンボルたり得るために、所定の条件を満たしている必要がある。それらの条件は、例えば、
・シンボルエリア表示層で囲まれていること、
・データセル数が規定範囲内であること、
等である。
【0295】
もちろん、カメラ等の機器の光学的な制限、ソフトウェア上の制限・都合等から、ノイズや細かな模様、曖昧な色彩変化などに一定の制約を受けることが予想される。しかし、それでも、従来の形状が固定されたバーコード等と比較してかなり自由なパターンを得ることができ、既存のマークを自動認識シンボルとして利用することができるという従来に無い技術的効果を奏することができる。
【0296】
既存のマークを自動認識シンボルとして使用する場合は、予めそのマークを包含型コードシンボルとして、コード読み取り機等に登録しておく必要がある。登録しておくことによって、コード読み取り機は、そのマークをコードシンボルとして認識することができ、自動認識を行うことが可能となるのである。
【0297】
以下に、規定を満たすパターンをシンボルとして登録する場合の、処理の流れを示す。この処理の流れの概念図が図29に示されている。
【0298】
まず、図29(a)に示されているように、データをキャプチャする。これは撮像手段(ビデオカメラ等)が登録したいコードシンボルとして使用できそうなマークを中心とするマークを撮像することであり、図29(a)の如き、画像データが得られる。この撮像手段は、コード読み取り機の撮像手段をそのまま利用することが好適である。
【0299】
コード読み取り機は、光学的自動認識コードのコードシンボルを読み取るために一般にビデオカメラ等の撮像手段を備えており、その手段が撮像した画像データから、コードシンボルと推定される領域を切り出し、切り出した領域をコードシンボルと見なしてデコードを行い、そのコードシンボルが表すデータを算出する。算出したデータは所定の表示手段(液晶ディスプレイなど)を用いて利用者に表示される。
【0300】
従って、コード読み取り機は、典型的には、カメラを備えたコンピュータで構成することが好適な構成の一例である。カメラで撮像した画像データから、コンピュータがコードシンボルと思われる領域を切り出し、デコードを行うことによって、原データを得ることができる。得られたデータはコンピュータの液晶ディスプレイ等を介して利用者に提示される。
【0301】
なお、ディスプレイは、撮像した画像データ等も表示すればデコードの様子を利用者が知ることができ、便利である。
【0302】
さて、画像データは、上述したように、種々の色彩エリア(色彩領域)から構成される。コンピュータは、コードシンボルとなり得る色彩の箇所を選び出し、コードシンボルであるシンボルエリアを認識する。さて、基準色を中心として一定の色彩範囲の色彩をコードシンボルを構成するセルであると推定し、コードシンボルと思われる領域を見つけ出していくのである。この動作は、コードシンボルのデコード作業と基本的に同一である。読み取りの動作と基本的には同様にしてシンボルを読みとって登録を行えばよいと考えられる。
【0303】
しかしながら、実際には、登録しようとするマークは現実には、極めて種々の色彩をしていると考えるのが妥当であろう。従って、撮像した画像データの中から利用者が、コードシンボルとして利用する領域(色彩)をマウスなどのポインティングデバイスで直接指示することが極めて好適である。図29(b)においては、(1)(図中は丸1で表される)の部分がデータセルであると利用者が指摘し、(2)(図中は丸2で表される)の部分がシンボル表示層であると指摘するのである。するとコンピュータは、指摘された色彩エリアの色彩がコードシンボルに用いられる色彩であるとして登録し、読み出しの際に、この登録された色彩を基準として色彩を読み取るのである。
【0304】
なお、登録しようとするマークを「ターゲットシンボル」と称する。
【0305】
このように、ターゲットシンボルに基づいて、読み取り色彩範囲が設定されるのである。
【0306】
登録は、コンピュータ内部のハードディスク等に書き込むことによって行うのが好適である。もちろん、ネットワークを介して外部のデータベースに一括して集中して登録しておくことも好適である。
【0307】
図29(b)においては、指摘されなかった(3)(図中では丸3として表される)などは、いわゆる「背景」「外部色」として認識される。
【0308】
図29(c)においては、利用者が指摘・選択した色彩によって、その色彩の領域が切り出されて、ディスプレイに表示される。利用者は表示されたマークを見て、問題なければ登録を進める。色彩が微妙にすれている場合等においては、図29(b)に戻って色彩の選択指示からやり直す。
【0309】
さて、図29(c)において、切り出された領域が目的のマークを表していれば、そのパターンを登録するようコンピュータに指示を行う。コンピュータは、指摘されたマークを包含型コードシンボルとして認識し、データセルの個数、シンボルエリア表示層の個数、使用している色彩の数、等をディスプレイに表示する(図29(c)参照)。問題なければ、利用者は図29(c)のOKボタンをクリックして、登録をコンピュータに指示する。コンピュータは、このマークを包含型コードシンボルとして記憶し、読み取りの際にこれら登録されたデータを参照しながら読み取りを行う。
【0310】
本実施の形態において特徴的なことは、包含型コードシンボルを登録する際に、その包含型コードシンボルが利用する色彩と、その色彩範囲とがともに関連づけられて登録されることである。これによって、読み取りの際には登録された色彩範囲に基づき読み取りが行われるので、利用者毎、使用しようとするコードシンボル毎に、好ましい色彩範囲を設定することが出来、効率の良い読み取りを行うことが可能である。
【0311】
以上のようにして登録処理は進めされる。
【0312】
なお、この処理の流れの前提として、色彩のファクターは重要である。キャプチャデータの色彩のバラツキやパターン間の色彩値の差、カメラの特性、予測される使用環境などから、パターン色彩(パターンとして用いられる色彩)として認識する色彩範囲を適当な値の範囲に定める必要がある。
【0313】
ここで、パターン色彩とはシンボルとして用いられる色彩であり、赤や青、緑などである。つまり、これらの色彩であると認定され得る色彩の範囲を定めるのである。基本的には、基準となる基準色を中心として一定の範囲をパターン色彩であると見なす。パターン色彩は、マーキング色と呼ばれることもある。また、色彩範囲の中心となる基準色をマーキング色と呼ぶ場合もある。
【0314】
例えば、一般ユーザが使う場合などは、パターン色彩の色彩範囲を若干広めにとって、多少誤認識はあっても、シンボルを探し出すことを優先することが好ましい。このように、そのシンボルの仕様態様、使用目的、シンボルに対する考え方によって、パターン色彩の色彩範囲の仕様を変更することが好ましい。
【0315】
なお、色彩の値とは、RGB等で表すことが好ましい。例えば、Rを256ステップ(0〜255)で、Bを256ステップ(0〜255)で、Gを256ステップ(0〜255)で、表現することが考えられる。そして、(R:64 B:128 G:255)の色彩のように、色彩をRGBの成分の値で表現するのである。このように、色彩の値は、一般的にベクトルとなる。
【0316】
また、色彩の絶対値以外に、パターン間の色彩の差(ベクトル間の角度等)に着目し、この角度差に基づき、データ化を行う手段を採用することも好適である。
【0317】
3−4−3−1 シンボルの登録によって得られる効果・用途(プライベート使用について)
このように、本実施の形態で提案する包含型コードシンボルは、既存のマークを修正したり、単に手書きの文字や図形を利用する等して容易に作成し、登録することができるものである。
【0318】
従来のバーコード等の自動認識コードにおいては、個人が手軽にバーコードを作成することは困難であり、コンピュータを用いてプリンタ装置等で適宜作成する必要があった。さらに、その作成した自動認識コードを対象物に見えるように取り付ける必要があった。対象物が粘着シール等が貼付しやすいものであればよいが、布などであれば、バーコード等を見えるように付すことは現実問題として容易ではない。ボーコードを付したタグを作成し、それを縫いつける等の繁雑な作業が必要となる。
【0319】
これに対して、本実施の形態によれば、既存のマークをペンで丸で描いて囲む等の簡単な作業でよういに包含型コードシンボルを作成することができ、さらに登録することができるので、「プライベート使用」に適しているという効果を奏する。
【0320】
本実施の形態に係る包含型コードシンボルがプライベート使用に適している理由は他にもある。
【0321】
上述したように、通常のバーコード(有彩色を用いたカラービットコード等を含む)の場合、あるデータ(たとえば数字の「100」)をマークしたい人は、あるルールに従っ
てマーキングすれば必ず「100」がデコードできるし、又、できる必要があります。できなければ、他の利用者が困ることになる。これは旧来のバーコード等は、社会的に広く普及させて、だれもが読み取れる必要があるからである。
【0322】
一方、プライベート使用においては、自分用の特定のマークさえ認識できればよいので、通常のバーコードのように一般化する必要がない。このような目的・用途を前提とした使用場面において、包含型コードシンボルは非常に良く適合するものであることは上述したとおりである。
【0323】
すなわち、本実施の形態においては、まず個々の包含型コードシンボルが作成され、その作成された包含型コードシンボルが、読み取り装置に登録される。この登録の対象となるコードシンボルをターゲットシンボルと呼ぶ場合もある。
【0324】
したがって、その作成した包含型コードシンボルの色彩等にもとづき、読み取りの色彩範囲等が設定することができるので、「自分だけが使用する自動認識システム」として効果的に利用することができるという特徴がある。
【0325】
例えば運動会の前に自分の子供用に認識ワッペンを帽子か何かに貼り付けたとした場合は、このワッペンさえ読み取れればよい。従って、そのワッベン特有の色彩、(正確にはカメラ特性含めた、ワッペンから得られる画像の色彩信号)に特化したデコードである方がより望ましいことは明らかである。
【0326】
上記登録動作はこのような目的に合致したものであり、効率よく、プライベートで使用する包含型コードシンボルを得て、利用することが可能である。
【0327】
なお、この場合、環境で色彩は変化するので、それを見込んである程度の色彩の幅が必要になるが、この点については、既に図19や、図29に既に説明したとおりである。
【0328】
さて、このようにして、先にターゲットシンボル(登録しようとするマーク)をもとに特有の読み取り設定の調整(キャリブレーション)を行うことが、プライベート使用では特に有効であり、自分の個人的な自動認識コードを簡単に得ることができ、また、利用することが可能になったものである。例えば、運動会当日の朝に子供の帽子に絵や文字を描いて丸で囲めば、それだけで包含型コードシンボルが構成でき、かつ、簡単に登録することができる。そして、本番の運動会ですぐに使用することができ、極めて利便性の高い自動認識システムを個人的目的に使用することができる。
【0329】
従来のシステムと異なり、このようなことが簡単に実現できた理由はもう一つ存在する。それは、本実施の形態の包含型コードシンボルが形状について特段の制限を設けていないという点である。もし、形状に何らかの制限があるコードを使用する場合は、その形状を正確に再現する必要があることから、「手書き」等で簡単に描くことは困難であり、まして既存の適当な文字や図形のマークを利用することも事実上不可能である。
【0330】
このように、本実施の形態によれば、形状には何ら制限を設けずに、色彩領域の包含関係でデータを表現する自動認識コードである「包含型コードシンボル」を用いているので、以下のような特徴を有する。
【0331】
・認識できる率が向上する。形状に制限がないので、コードシンボルが何らかの理由によって変形しても読み取ることが可能である。従って、衣服等に直接付すことが可能である。
【0332】
・たとえ他に同様のパターンがあって、それを認識したとしても、ユーザーのターゲットを探すという操作には余り影響しない。偶然、他の子供も同じようなマーキングを包含型コードシンボルとして利用しているかもしれない。だからといって、自分の子供が認識できなくなるわけではないので、追跡することが可能である。
【0333】
本包含型コードシンボルは、画像データ中の包含型コードシンボルを認識し、そのデータを読むものであるので、一度に読み取るコードシンボルの数は2個以上でも問題はない。
【0334】
本願発明者らは、別途色彩の並び等でデータを表し形状には依存しないコードである「カラービットコード」を提案(特願2007−130504等)しているが、これらの色彩によるコードでは画像データの中から条件にあうコードシンボルを全て読み出している。(換言すれば、1個に限定する理由はない)。したがって、本件の包含型コードシンボルにおいても、基本的に画像データ中の包含型コードシンボルを全て読み出すので、他の子供の包含型コードシンボルが似ていても、自分の子供の包含型コードシンボルを追跡するのには原則として影響を及ぼさない。
【0335】
また、本件の包含型コードシンボルは、
・本願発明者が発明したカラービットコードと違って、マークを大きくすることができ、遠方からでも認識しやすい。
【0336】
・カラービットコードと異なり、2色でも可能である。包含型コードシンボルは、色彩だけでなく、セル(色彩領域)の包含関係によってもデータを表すので、包含関係を表せる最低2色があれば構築することが可能である。
【0337】
・カラービットコードと異なり、手書きマークに利用することができ、手書きの文字や図形に良くマッチングしたシステムを構築することができる。またマークに違和感が生じにくい。これは、人間がわかりやすい文字や図形等を応用することができるためであり、。無味乾燥なバーコードや、2次元バーコードなどとは一線を画するものである。
【0338】
このような特徴を有することから、個人的・家庭的な利用はもちろんのこと、ある会社内でプライベートに利用する場合や、あるイベントでのみ使用する一時的な自動認識コードなどに、好適に応用可能である。
【0339】
3−4−4 ◆線画パターンによるシンボル化
これまで、色彩エリアによるパターン化について説明してきた。つまり、既存の何らかのマークを色彩エリアの集合として自動認識コードの所定の検出シンボルとして利用するのである。これを達成するために、既存のマークを、包含関係を有する色彩エリアの集合として捉え、その色彩エリアによるパターン化を種々検討してきた。
【0340】
その一方、既存の種々のマークは、線画であると認識することも好適である。
【0341】
ここで、線とは結局の所、「幅の狭い色彩エリア」であるから、色彩エリアによるパターン化と本質的には同じであると言える。しかし、描かれた線を、そのまま「線」として認識することが、人間の直感と一致し、便利でわかりやすい場合が多い。それは、一般に、人間は文字マーク等を色彩エリアの集合として認識するのではなく、線の集合として認識する場合が多いためである。従って、データ化においても、線画として捉えてデータ化した方が、人間の直感に一致する結果が得られる場合が多いと考えられる。
【0342】
これを実現するためには、新たに、
・一定の太さの色彩エリアが延長している
という条件を加えることが妥当である。このような条件を加えることによって、パターン認識上、誤差の想定の計算が行いやすくなる。
【0343】
線画として捉えることによって、線の途切れ、手書きマーク等の二重線等を検知しやすくなり、これらの補正が行いやすくなる。
【0344】
更に、線画として捉えることによって、地色の状況変化の影響を受けにくくなると予想される。
【0345】
これらの効果を期待することができる。
【0346】
なお、この場合、認識は上述した図21の色彩境界線を、所定の色彩で所定の幅・太さの一定の色彩の細長いエリア(円状のエリア)として認識すれば良い。
【0347】
また「色彩境界線の内外の色彩」という値の代わりに、その内外の色彩の線であると認識して、上述したのと同様の処理を行えば良い。
【0348】
このように、「線その物の色彩」の一定の幅の細長いエリアとして、線を認識するだけで、その他の考え方・処理は上述した内容と変わらない。
【0349】
3−4−5 線画において注意すべき事項(線画パターンと包含パターンとの違い)
但し、図30に示すような例は、若干注意が必要である。
【0350】
まず、マークを線画パターンであると見る考え方によれば、色彩エリアは、いずれも、それらの線(曲線)に囲まれた領域であると見ることになる。従って、
閉じた領域を囲まない線は無意味と見ることができ、図30左図では内側の円と外側の円とを結ぶ短い「線」は、無視することができる(無いものとして扱う)。その結果、内側の小円は、その外部を取り囲んでいる外側の領域に包含されていると見ることができる。
【0351】
一方、線に太さがあるとして扱った場合は、曲線その物が(例えば黒色の)領域であるため、上述した小円内の領域と大円内領域はともに、この黒色の曲線領域中に包含される2個の領域であると見ることができる。この説明図が図30(b)に示されている。
【0352】
以上述べたように、線画パターンとして認識すると言うことは、一定の太さがあってもその中間点を取る等、により処理上、太さを見ないという処理を行うことである。
【0353】
従って、そのための処理が必要にはなる。例えば、一定の太さ以下の細線は太さ0の線として扱う等である。
【0354】
しかし、線ではなく、原則通りエリア(領域)と見た場合には、その内側と外側の2本の色彩境界線を処理しなければならないのに対して、線画として扱う場合は1本の処理ですむため、処理上、簡略化できるというメリットがある。加えてさらに、先に述べた途切れ等があっても、それに対する補正処理が容易であるというメリットもでてくる。
【0355】
なお、色彩データは、境界線の場合、その内外の色彩がデータになるが、線画の場合は、内、線、外の3つの色彩をデータとして持つことになる。つまり、線という概念を色彩の一つとして扱うのである。
【0356】
いずれにしても、マーキング方法や使用環境によって、妥当な手法を適宜選択するべきものである。また、色彩や層によって区別することも好適である。赤色を用いる場合は、線画であり、青色を用いる場合はエリアとして扱っている・・・等である。また、ある階層から上はエリアとして扱うが、ある階層以下の場合は、細かい画像になるので、全て線画として扱う等の処理を行うことも好適な処理の一例である。このように線画パターンとしての扱いと、包含パターンとしての扱いとを併用することも目的によっては好適である。
【0357】
なお、請求の範囲においては、マークを線画パターンとしてみた場合のコードシンボルを閉領域包含型コードシンボルと称している。これに対して、マークをセル(色彩セル)の包含パターンと見た場合のコードシンボルを、包含型コードシンボルと呼んでいる。
【0358】
第4 物品
以上述べたように、包含型コードシンボルは容易に登録でき、光学式自動認識コードとして利用できるので、これを物品に付せば、その物品に容易に自動認識コードを付することが可能となる。従来はその物品の型番等から、コードシンボルを作成する必要があり、コンピュータを用いて計算して求める必要があったが、本実施の形態によれば、容易に自動認識コードを付した物品が得られる。
【0359】
また、同様の作用・効果は、線画データとして利用した場合の、閉領域包含型コードシンボルを付した物品でも同様に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0360】
【図1】本実施の形態1におけるコードシンボルの仕様1の概念図である。
【図2】3層構造のコードシンボルの例を示す説明図である。
【図3】3層構造のコードシンボルの他の例を示す説明図である。
【図4】4層構造のコードシンボルの例を示す説明図である。
【図5】3層構造のコードシンボルを帽子に適用した様子を示す説明図である。
【図6】黒色のマーカーでマーキング可能なコードシンボルを帽子上に表した様子を示す説明図である。
【図7】ワッペンを用いて帽子上にコードシンボルをマーキングした様子を示す説明図である。
【図8】黒色のマーカーでマーキング可能なコードシンボルを帽子上に表した様子を示す他の説明図である。
【図9】黒色のマーカーでマーキング可能なコードシンボルを帽子上に表した様子を示す他の説明図である。
【図10】符号化を説明する場合の包含型コードシンボルの一例の説明図である。
【図11】包含型コードシンボルの包含関係を示すツリー図である。
【図12】pとqとの表を示す図である。
【図13】色彩エリアの一部が連続している様子を示す説明図である。
【図14】上記図13のコードシンボルのツリー図である。
【図15】2色を用いる場合の包含型コードシンボルの様子を示す説明図である。
【図16】データセル数が5で、2相まで許容する場合の包含型コードシンボルの説明図である。
【図17】3色以上を用いる場合の包含型コードシンボルの例を示す説明図である。
【図18】3色以上を用いる場合の包含型コードシンボルの例を示す説明図である。
【図19】色彩空間が所定の基準色を含んだいくつかの空間に分けられている様子を示す説明図である。
【図20】収斂色彩画像を示す図である。
【図21】色彩境界線画を示す図である。
【図22】シンボルエリア表示層の層数を増やし、シンボルの特定を容易にした例を示す図である。
【図23】同一レベルにおけるシンボルエリア表示層の数を増やし、シンボルの特定を容易にした例を示す図である。
【図24】特定の色彩を用いて、シンボルの特定を容易にした例を示す図である。
【図25】p(10)の場合に得ることができる数列の例である。
【図26】コードシンボルが表せるデータ量の計算結果の説明図である。
【図27】図25のNo16のパターンの色彩の組み合わせを示す説明図である。
【図28】RGBで構成される包含型コードシンボルの例を示す図である。
【図29】パターンを登録する流れを示す説明図である。
【図30】線画パターンと包含パターンとにおける留意点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0361】
10 赤帽
12 ワッペン
20 シンボルエリア表示層
22 シンボルエリア表示層
24 シンボルエリア表示層
26 シンボルエリア表示層
28a、29b シンボルエリア表示層
29a、29b シンボルエリア表示層
30a、30b、30c、30d、30e、 データセル
32a、32b、32c、32d、32e、32f データセル
34a、34b、34c、34d、34e、 データセル
36a、36b、36c、36d データセル
38a、38b、38c、38d、38e、38f データセル
40a、40b、40c、40d、40e、40f データセル
42a、42b、42c、42d、42e、42f データセル
50 収斂色彩画像
52 色彩境界線画
100 シンボルエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の色彩が付されたセルを複数個配置して成る色彩配列コードシンボルにおいて、
前記複数個のセルには、他のセルを全て包含する1個の全体セルが含まれ、
前記全体セル以外の前記セルは、常に、いずれか1個の他のセルに包含され、
前記全体セル以外の前記セルは、0個又は1個以上の他のセルを含むことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項2】
請求項1記載の包含型コードシンボルにおいて、
所定の前記セルの色彩は、そのセルを含む他のセルの色彩と異なることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項3】
請求項1記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記セルに用いられる色彩には、白と黒が含まれることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記包含型コードシンボルが表すデータは、前記包含型コードシンボルを構成するセルの個数、セル間の包含関係の組み合わせ、のいずれか又は両者によって表されることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、
その包含型コードシンボルが表すデータは、その包含型コードシンボルを構成するセルの色彩の組み合わせと、セル間の包含関係の組み合わせと、のいずれか又は両者によって表されることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルにおいて、
その包含型コードシンボルが表すデータは、その包含型コードシンボルを構成するセルの色彩の組み合わせと、セル間の包含関係の組み合わせと、の両者によって表され、
さらに、前記データは、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分と、の2種の互いに独立したデータ部分から構成されることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項7】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データのチェックデータを表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項8】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様を表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項9】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が商品種別を表し、いずれか他方が前記商品の生産管理データを表し、前記商品の内容を表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項10】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が学生の学校を表し、いずれか他方が前記学生の学籍番号を表し、前記学生の属性を表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項11】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの補間データを表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項12】
請求項6記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様の補正データを表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項13】
請求項1記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記全体セルと、所定の一部の他のセルと、の包含関係が固定されていることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項14】
請求項13記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記包含関係が固定されている前記全体セル及び前記所定の一部の他のセルとは、付されている色彩も固定されていることを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを読み取る方法において、
前記包含関係の深さを表す層数には、最大値が規定されており、前記最大値を越えた深い層のセルが存在する場合は、その深い層のセルを除いたセルに基づき、その包含型コードシンボルが表すデータを求めることを特徴とする包含型コードシンボル読み取り方法。
【請求項16】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを読み取る方法において、
前記包含型コードシンボルを撮像して画像データを得るステップと、
前記画像データ中の色彩の分布に基づき、前記包含型コードシンボルを構成するセルに用いられる色彩の範囲を決定するステップと、
前記決定された色彩範囲に基づき、セルとなる色彩エリアを前記画像データ中の色彩エリアから、前記セルとなる色彩エリアを決定していくステップと。
を含むことを特徴とする包含型コードシンボル読み取り方法。
【請求項17】
所定の色彩が付された線によって形成された閉領域を複数個配置して成る色彩配列コードシンボルにおいて、
前記複数個の閉領域には、他の閉領域を全て包含する1個の全体閉領域が含まれ、
前記全体閉領域以外の前記閉領域は、常に、いずれか1個の他の閉領域に包含され、
前記全体閉領域以外の前記閉領域は、0個又は1個以上の他の閉領域を含むことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項18】
請求項17記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
本閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の数と、前記閉領域の包含関係と、のいずれか一方又は両者によってデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項19】
請求項17記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
包含関係をなす前記閉領域に付された色彩と、前記閉領域を形成する線の色彩と、の組み合わせによって、データを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項20】
請求項17記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
包含関係をなす前記閉領域に付された色彩と、前記閉領域を形成する線の色彩と、の組み合わせと、
本閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の数と、前記閉領域の包含関係と、のいずれか一方又は両者と、
によってデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
その閉領域包含型コードシンボルが表すデータは、その閉領域包含型コードシンボルを構成する閉領域の色彩の組み合わせと、閉領域間の包含関係の組み合わせと、の両者によって表され、
さらに、前記データは、前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分と、の2種の互いに独立したデータ部分から構成されることを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項22】
請求項21記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データのチェックデータを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項23】
請求項21記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項24】
請求項21記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が商品種別を表し、いずれか他方が前記商品の生産管理データを表し、前記商品の内容を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項25】
請求項21記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方が学生の学校を表し、いずれか他方が前記学生の学籍番号を表し、前記学生の属性を表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項26】
請求項21記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記閉領域間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの補間データを表すことを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項27】
請求項21記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記色彩の組み合わせによって表される部分と、前記セル間の包含関係の組み合わせによって表される部分とは、いずれか一方がデータを表し、いずれか他方が前記データの読み取り仕様の補正データを表すことを特徴とする包含型コードシンボル。
【請求項28】
請求項17記載の閉領域包含型コードシンボルにおいて、
前記全体閉領域と、所定の一部の他の閉領域と、の包含関係が固定されていることを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項29】
請求項28記載の包含型コードシンボルにおいて、
前記包含関係が固定されている前記全体閉領域及び前記所定の一部の他の閉領域は、付されている色彩も固定されていることを特徴とする閉領域包含型コードシンボル。
【請求項30】
請求項17〜請求項29のいずれか1項に記載の閉領域包含型コードシンボルを読み取る方法において、
前記包含関係の深さを表す層数には、最大値が規定されており、前記最大値を越えた深い層の閉領域が存在する場合は、その深い層の閉領域を除いた閉領域に基づき、その閉領域包含型コードシンボルが表すデータを求めることを特徴とする閉領域包含型コードシンボル読み取り方法。
【請求項31】
請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルが付された物品。
【請求項32】
請求項17〜請求項29のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルが付された物品。
【請求項33】
請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の包含型コードシンボルを読み取り装置に登録する方法において、
登録対象である前記包含型コードシンボルを撮像して画像データを得るステップと、
前記画像データ中の包含型コードシンボルの色彩として利用者が指示する部位の色彩を取得するステップと、
前記指示された色彩に基づき、前記登録対象である包含型コードシンボルを切り出して、登録するステップと、
前記登録された包含型コードシンボルが用いる前記色彩と、その色彩と判断する色彩空間とを前記包含型コードシンボルと関連づけて登録するステップと、
を含むことを特徴とする包含型コードシンボル登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2010−117870(P2010−117870A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290428(P2008−290428)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(506226175)ビーコア株式会社 (39)
【Fターム(参考)】