説明

包括的な転写機構エンジニアリング

本発明は、改良された表現型を有する、変化した細胞を産生するための、包括的な転写機構エンジニアリングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2005年9月28日出願の米国出願第11/238096号の一部継続出願であり、2005年12月7日出願の米国仮出願第60/748315号の35U.S.C.119(e)の基での利益を主張し、それらの開示全体を明細書中に参考文献として組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、改良された表現型を有する、変化した細胞を産生する、包括的な転写機構エンジニアリングに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの重要な細胞の表現型が、疾患状態から代謝産生物過剰産生までにわたり、多くの遺伝子により影響されることが、現在、一般的に受容されている。だが、ほとんどの細胞および代謝エンジニアリング手段は、ベクターコンストラクションにおける実験的制限および転換効率による、単一の遺伝子の欠失または過剰発現に、ほぼ独占的に依存する。これらの制限は、複数の遺伝子修飾の同時の探索(simultaneous exploration)を排除し、遺伝子修飾検索を単一の遺伝子が一時に修飾される制限された配列手段へと限定する。
【0004】
米国特許第5,686,283号は、細菌細胞において低レベルで潜在するまたは発現する他の細菌遺伝子の発現を活性化させるrpoSによりコードされるシグマ因子の使用を記載する。しかしながら、かかる特許は、遺伝子の転写を包括的に変化させるためにかかるシグマ因子を変異させることを記載しない。
【0005】
米国特許第5,200,341号は、温度感受性rpoD遺伝子を有する細菌株の耐熱性変異体の選別により、温度感受性rpoD遺伝子のサプレッサとして同定される、変異rpoH遺伝子を提供する。細菌の突然変異生成は着手されず、また温度抵抗性以外の表現型に対して選択されたサプレッサ株もまたそうである。かかる変異体rpoH遺伝子が異種タンパク質を発現するように修飾された他のバクテリアに添加される場合、かかる異種タンパク質は細菌中に増加したレベルで蓄積される。
【0006】
米国特許第6,156,532号は、細胞における熱ショックタンパク質の発現量を強化する熱ショックタンパク質遺伝子に対して特異的に機能する、熱ショックタンパク質に対する遺伝子コーディングおよびシグマ因子(rpoH)に対する遺伝子コーディングを導入することにより修飾される微生物を記載する。かかる修飾された微生物は、アミノ酸などの発酵性産生物を産生するに有用である。かかる微生物において用いられるシグマ因子は、変異されていなかった。
【0007】
指向進化は、Streptomycesによる抗生(チロシン)産生に対する(Zhang et al., Nature, 415, 644-646 (2002))、およびLactobacillusの酸耐性に対する(Patnaik et al., Nature Biotech. 20, 707-712 (2002))細菌ゲノムのシャッフリングにより、微生物に適用されてきた。かかる方法は、任意の特異的な単数または複数の遺伝子における変異を標的とせず、代わりに原形質融合を用いた所望の表現型を有する株のゲノムを非組み換え的にシャフッリングし、次いで、かかる所望の表現型において改良を有する株を選別した。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明は包括的に転写機構エンジニアリングを利用し、改良された表現型を有する変化した細胞を産生する。特に、本発明はゲノム規模レベル上でのプロモーターに対する異なる選択を有する、変異した細菌シグマ因子の産生を介して実証される。変異したシグマ因子の導入から生じる細胞は、急速および際立った表現型における改善、例えば有害な培養条件の耐性または改良された代謝産生物の産生など、を有する。
【0009】
指向進化の方法および概念と混合される、細胞への変異体転写機構の導入は、複雑な細胞表現型を改善するための複数の、同時の遺伝子の改変を評価することによる高スループット法で、大いに拡大した検索スペースを調査できるようにする。
【0010】
突然変異生成および選別の繰り返しのラウンドを介する指向進化は、抗体および酵素の特性を広げる点で、成功を収めてきている(W. P. Stemmer, Nature 370, 389-91 (1994))。これらの概念は、近年、異なるメトリクスにより計測される広いダイナミックレンジの強さに及ぶプロモーター活性のライブラリーに対する検索におけるDNAの非コーディング、機能領域へと拡大され、そして適用されてきている(H. Alper, C. Fischer, E. Nevoigt, G. Stephanopoulos, Proc Natl Acad Sci U S A 102, 12678-12683 (2005))。しかしながら、進化で引き起こされた手段は、細胞表現型を改善する手段としての包括的な転写機構の合成的修飾を対象としない。だが、詳細な生化学的研究により、あるプロモーター配列に対する転写率およびin vitro選択性の両方が、細菌性シグマ因子上の鍵となる残基を修飾することにより変化させることができるということが示された(D. A. Siegele, J. C. Hu, W. A. Walter, C. A. Gross, J Mol Biol 206, 591-603 (1989); T. Gardella, H. Moyle, M. M. Susskind, J Mol Biol 206, 579 590 (1989))。かかる修飾された転写機構ユニットは、非常に際立った方法で細胞特性に影響を与える潜在性を有する、同時の包括的な転写レベル変更を導入する独自の機会を提供する。
【0011】
本発明の1つの側面により、細胞の表現型を変化させるための方法が提供される。かかる方法は、包括的な転写機構、および随意にそのプロモーターをコードする核酸を変異させること、細胞中にかかる核酸を発現させ変異した包括的な転写機構を含む変化した細胞を提供すること、およびかかる変化した細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、かかる方法は、また、かかる変化した細胞の表現型を決定すること、またはかかる変化した細胞の表現型を変更前のかかる細胞の表現型と比較することを含む。さらなる態様において、かかる方法は、また、かかる核酸の変異を繰り返し、第n世代の変化した細胞を産生することを含む。さらに他の態様において、かかる方法は、また、第n世代の変化した細胞の表現型を決定すること、あるいは第n世代の変化した細胞の表現型を、任意の前の世代の変化した細胞または変更前のかかる細胞の表現型と比較することを含む。好ましい態様において、かかる包括的な転写機構の変異を繰り返すステップは、変異した包括的な転写機構をコードする核酸、および随意的にそのプロモーターを変化した細胞から単離すること、かかる核酸を変異させること、および変異した核酸をもう1つの細胞へと導入することを含む。
【0012】
ある態様において、かかる細胞は原核細胞、好ましくは細菌細胞または古細菌(archaeal)細胞である。かかる態様において、かかる包括的な転写機構は、好ましくはシグマ因子またはアンチシグマ因子である。かかるシグマ因子をコードする核酸分子は、rpoD(σ70)遺伝子、rpoF(σ28)遺伝子、rpoS(σ38)遺伝子、rpoH(σ32)遺伝子、rpoN(σ54)遺伝子、rpoE(σ24)遺伝子およびfecI(σ19)遺伝子を含む。かかるシグマ因子またはアンチシグマ因子は、発現ベクターから発現させることができる。
【0013】
他の態様において、かかる細胞は真核細胞である。好ましい真核細胞は酵母細胞、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、幹細胞および真菌細胞を含む。ある態様において、1つまたは2つ以上の真核細胞は、多細胞生物に含有されるか、または多細胞生物を形成する。いくつかの態様において、かかる核酸は組織特異性プロモーター、細胞特異性プロモーター、または細胞小器官特異性プロモーターからの細胞において発現される。
【0014】
さらに他の真核性の態様において、かかる包括的な転写機構は、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIII、あるいはRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターへと結合する。好ましい包括的な転写機構は、TFIIDまたはそのサブユニット、例えばTATA結合タンパク質(TBP)またはTBP関連因子(TAF)、例えばTAF25を含む。包括的な転写機構をコードする核酸機構は、GAL11遺伝子、SIN4遺伝子、RGR1遺伝子、HRS1遺伝子、PAF1遺伝子、MED2遺伝子、SNF6遺伝子、SNF2遺伝子およびSWI1遺伝子を含む。他の態様において、かかる包括的な転写機構は、核酸メチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチラーゼまたはヒストンデアセチラーゼである。かかる包括的な転写機構は、ある態様において、発現ベクターから発現される。
【0015】
いくつかの態様において、かかる核酸はかかる真核生物の細胞小器官、好ましくはミトコンドリアまたは葉緑体、の核酸である。かかる核酸は、随意に、発現ベクターの一部分である。
ある態様において、かかる核酸は核酸の集団(例えば、ライブラリ)の一員である。そのため、本発明の方法は、いくつかの態様において、かかる集団をかかる細胞へと導入することを含む。
【0016】
さらなる態様において、かかる核酸を発現させるステップは、かかる核酸をかかるゲノムへと融合すること、またはかかる内因性の包括的な転写機構をコードする核酸を置換することを含む。
かかる核酸の変異は、ある態様において、かかる核酸の指向進化、例えばエラープローンPCRによる変異、または遺伝子シャッフリングによる変異を含む。他の態様において、かかる核酸の変異はかかる核酸を1つまたは2つ以上の変異とともに合成することを含む。
【0017】
本発明における核酸の変異は、1つまたは2つ以上の点変異、および/または1つまたは2つ以上の切断および/または欠失を含む。
本発明のいくつかの態様において、包括的な転写機構のプロモーター結合領域は1つまたは2つ以上の切断または欠失により中断または除去されない。他の態様において、かかる変異した包括的な転写機構は、非変異の包括的な転写機構に対して増加した遺伝子の転写、非変異の包括的な転写機構に対して減少した遺伝子の転写、非変異の包括的な転写機構に対して増加した遺伝子の転写の抑制、および/または非変異の包括的な転写機構に対して減少した遺伝子の転写の抑制を呈する。
【0018】
さらに他の態様において、かかる方法は、また、既定の表現型へと変化した細胞を選択することを含む。好ましくは、かかる選択のステップは、選択的条件および/またはかかる表現型に対する個々の細胞のハイスループットアッセイ下で変化した細胞を培養することを含む。
【0019】
多様多種な表現型を本発明に従って選択することができる。いくつかの好ましい態様において、かかる表現型は有害な培養条件の増加した耐性である。かかる表現型は:溶媒耐性または有害廃棄物耐性、例えば、エタノール、ヘキサンまたはシクロヘキサンなど;工業媒体の耐性;高糖分濃度の耐性;高塩分濃度の耐性;高温の耐性;極度のpHの耐性;界面活性剤の耐性、浸透圧ストレスの耐性および複数の有害な条件の耐性、を含む。
【0020】
他の好ましい態様において、かかる表現型は、増加した代謝産生物産生である。代謝産生物は、リコピン、エタノール、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、および治療用タンパク質、例えば抗体または抗体断片など、を含む。
さらに他の好ましい態様において、かかる表現型は毒性基質、代謝中間体または産生物に対して耐性である。毒性代謝産生物は、有機溶媒、酢酸塩、パラヒドロキシ安息香酸(pHBA)および過剰発現したタンパク質を含む。
【0021】
追加の表現型は、抗生物質抵抗性およびアポトーシスへの増加した抵抗性を含む。
いくつかの態様において、かかる細胞は多細胞生物に含有される。かかる態様において、好ましい表現型は、1つまたは2つ以上の成長特性、世代時間、1つまたは2つ以上の疫病または疾患に対する抵抗性、植物の果実またはその他の部分の産生、1つまたは2つ以上の発育変動、1つまたは2つ以上の寿命変化、機能の獲得または損失、および/または増加したロバスト性を含む。
【0022】
かかる方法において用いられる細胞は、かかる包括的な転写機構の変異に先立ってかかる表現型に対して最適化されることができる。
本発明の方法は、ある態様において、また、かかる変化した細胞における遺伝子発現の変化を同定することを含む。遺伝子発現におけるかかる変化は、好ましくは、核酸マイクロアレイを用いて決定される。
【0023】
本発明のもう1つの側面に従い、細胞の表現型を変化させるための方法が提供される。かかる方法は第2の細胞における遺伝子発現の変化を検出することにより同定される第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させることを含み、そこにおいてかかる第2の細胞における遺伝子発現の変化は、かかる第2の細胞の包括的な転写機構を変異させることにより産生される。
【0024】
いくつかの態様において、かかる第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させることは、かかる第2の細胞において増加した1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を増加させることを含む。いくつかの好ましい態様において、かかる1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現は、かかる第1の細胞に1つまたは2つ以上の遺伝子産生物を発現する1つまたは2つ以上の発現ベクターを導入することにより、または1つまたは2つ以上の遺伝子産生物をコードする1つまたは2つ以上の内因性遺伝子の転写を増加させることにより、増加される。後者の態様において、1つまたは2つ以上の内因性遺伝子の転写を増加させることは、1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御(例えば、プロモーター/エンハンサー)配列を変異させることを含む。
【0025】
他の態様において、かかる第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させることは、変化した細胞において減少した1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を減少させることを含む。好ましくは、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現は、siRNA分子である、またはsiRNA分子を発現する核酸分子などの、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を低下させる核酸分子を、かかる第1の細胞へと導入することにより減少される。他の態様において、かかる1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現は、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物あるいは1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御(例えば、プロモーター/エンハンサー)配列を変異させることにより、減少される。
【0026】
かかる第2の細胞における遺伝子発現の変化は、好ましくは、核酸マイクロアレイを用いて決定される。
他の態様において、かかる第2の細胞における遺伝子発現の変化は、遺伝子のモデルまたはタンパク質ネットワークを構築するために用いられ、かかるモデルはネットワークにおける1つまたは2つ以上の遺伝子産生物のうちどれが変化するかを決定するために用いられる。
かかる包括的な転写機構は、いくつかの態様において、1つより多い核酸および/またはポリペプチドの配列を含む、あるいは1つより多い核酸によりコードされる。
また、本発明に従い、前述の方法により産生される細胞が提供される。
【0027】
本発明のもう1つの側面に従い、代謝産物の産生を変化させるための方法が提供される。かかる方法は、任意の前述の方法に従い、変化した細胞を産生する選択された代謝産生物を産生する細胞の包括的な転写機構を変異させること、および増加量または減少量のかかる選択された代謝産生物を産生する、変化した細胞を単離することを含む。いくつかの態様において、かかる方法は、また、単離された細胞を培養すること、およびかかる細胞または細胞培養からかかる代謝産生物を回収することを含む。好ましい代謝産生物は、リコピン、エタノール、ポリヒドロキシブチレート(PHB)および治療用タンパク質、例えば組み替えタンパク質、抗体または抗体断片、を含む。
【0028】
いくつかの態様において、かかる細胞は原核細胞であり、細菌細胞または古細菌細胞を含む。他の態様において、かかる細胞は真核細胞であり、酵母細胞、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、幹細胞および真菌細胞を含む。ある後者の態様における包括的な転写機構は、真核細胞、好ましくはミトコンドリアまたは葉緑体の細胞小器官の核酸によりコードされる。
【0029】
本発明のもう1つの側面により、複数の異なる核酸分子種を含む集団(例えば、ライブラリー)が提供され、そこにおいて、それぞれの核酸分子種が異なる変異を含む包括的な転写機構をコードすることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、かかる包括的な転写機構はシグマ因子またはアンチシグマ因子である。好ましくは、シグマ因子をコードする核酸は、rpoD(σ70)遺伝子、rpoF(σ28)遺伝子、rpoS(σ38)遺伝子、rpoH(σ32)遺伝子、rpoN(σ54)遺伝子、rpoE(σ24)遺伝子またはfecI(σ19)遺伝子である。他の好ましい態様において、かかる包括的な転写機構は、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIII、あるいはRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターに結合する。好ましくは、かかる包括的な転写機構はTFIIDまたはそのサブユニット、例えばTATA結合タンパク質(TBP)またはTBP関連因子(TAF)、例えばTAF25、である。他の態様において、かかる包括的な転写機構は、核酸メチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチラーゼまたはヒストンデアセチラーゼである。
【0030】
ある態様において、かかる核酸分子種は発現ベクター中に含有され、好ましくは組織特異性プロモーター、細胞特異性プロモーター、細胞小器官特異性プロモーターから発現される。かかる発現ベクターは、好ましくは複数の異なる核酸分子種を含有し、そこにおいてそれぞれの核酸分子種は異なる包括的な転写機構をコードする。
【0031】
他の態様において、かかる包括的な転写機構は指向進化により変異され、好ましくはエラープローンPCRを用いておよび/または遺伝子シャッフリングを用いて実行される。包括的な転写機構における好ましい変異は、1つまたは2つ以上の点変異および/または1つまたは2つ以上の切断および/または欠失である。いくつかの態様において、かかる切断は、かかる包括的な転写機構のプロモーター結合領域を含まない。
【0032】
さらに他の態様において、細胞のかかる包括的な転写機構は、任意の前述の方法に従って変異される。
【0033】
本発明のさらなる側面において、前述の核酸分子の集団を含む細胞の集団(例えば、ライブラリー)が提供される。いくつかの態様において、かかる集団は複数の細胞を含み、かかる複数の細胞のそれぞれは、1つまたは2つ以上の核酸分子を含む。かかる細胞は好ましくは原核細胞、例えば細菌細胞または古細菌細胞、あるいは真核細胞、例えば酵母細胞、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、幹細胞または真菌細胞である。他の態様において、かかる核酸分子はかかる細胞のゲノムへと融合するか、または内因性の包括的な転写機構をコードする核酸を置換する。
【0034】
本発明のさらにもう1つの側面に従い、変異の複数のラウンドにより産生される包括的な転写機構をコードする核酸が提供される。かかる複数のラウンドの変異は、好ましくは、エラープローンPCRによる変異および/または遺伝子シャッフリングによる変異により実行されるような、指向進化を含む、
【0035】
いくつかの態様において、かかるか核酸は複数の異なる包括的な転写機構種をコードする。かかる核酸は、好ましくは、かかる同じ型の包括的な転写機構種の複数の異なるバージョンをコードする。また、本発明に従い、前述の核酸によりコードされる包括的な転写機構が提供される。
本発明のもう1つの側面において、(カルボキシ末端)領域4を含む、切断されたシグマ因子タンパク質が提供される。
【0036】
本発明のさらなる側面に従い、選択された廃棄物のバイオレメディエーションのための方法が提供される。かかる方法は、任意の前述の方法に従い、細胞の包括的な転写機構を変異させて変化した細胞を産生すること、変化しない細胞に対して増加した量のかかる選択された廃棄物を代謝する変化した細胞を単離すること、かかる単離された細胞を培養すること、およびかかる変化した細胞をかかる選択された廃棄物へ暴露することを含み、それによりかかる選択された廃棄物のバイオレメディエーションを提供する。
本発明のこれらのおよび他の側面、ならびにそのさまざまな態様は、本発明の図面および詳細な説明を参照することにより、より明らかとなるであろう。
【0037】
図面の簡単な説明
図1は、包括的な転写機構エンジニアリングの基本的な手順を描く。変化した包括的な転写機構を細胞中へ導入することにより、かかる転写は変化し、遺伝子の発現レベルは包括的な様式で変わる。この研究において細菌性シグマ因子70(rpoDによりコードされる)はエラープローンPCRを受け、さまざまな変異体を産生した。かかる変異体は次いで低コピー発現ベクターへとクローン化されるが、その間、ほぼ完全な内部制限酵素部位の存在のために、シグマ因子の切断された形態となる可能性が生じた。かかるベクターを付いてE. Coli中へと導入し、所望の発現型に基づいてスクリーニングした。単離された変異体はそれから引き続く突然変異生成のラウンドおよび表現型をさらに改善する選別を受けることができる。
【0038】
図2は、エタノール耐性シグマ因子変異体の単離を示す。エタノールに対する耐性を増加させた変異体シグマ因子を含有する株を単離した。図2A:変異体因子の指向進化のさまざまなラウンドを介する表現型の全体的な増強。全体的な増強(y軸)を、対照群に対する0、20、40、50、60、70および80g/Lのエタノールにおける、かかる変異体に対する倍加時間の倍の低下の合計を取ることにより評価した。第3ラウンドまでに、成長速度における改善は小さくなり、増加するようになるようである。図2B:σ70タンパク質上の変異の位置を、既に同定された決定的な機能領域に関して指し示す。第2のラウンドの突然変異生成の結果、その領域における2つの先立った変異の1つのみを含有する切断された因子を同定された。図2C:ラウンド3の変異体(赤)および対照(青)株に対する成長曲線を示す。ラウンド3の変異体は、全ての試験をしたエタノール濃度において、顕著に改良された成長速度を有する。図2D:エタノール耐性変異体シグマ因子のエタノール耐性変異体のアミノ酸配列アラインメント(天然型、配列番号17;ラウンド1、配列番号18;ラウンド2、配列番号19;ラウンド3、配列番号20)。
【0039】
図3は、追加の表現型に対するシグマ因子の配列解析を示す。図3A:σ70タンパク質領域の酢酸塩およびpHBA変異体の変異の位置を、既に同定された決定的な機能領域に関して指し示す。大多数の酢酸塩変異体は、完全長シグマ因子であった。pHBAに対して同定された変異体は、特定の遺伝子転写に対する阻害剤として作用すると見込まれる切断された因子であった。図3B:酢酸塩耐性変異体シグマ因子のアミノ酸配列アラインメント(天然型、配列番号17;Ac1、配列番号21;Ac2、配列番号22;Ac3、配列番号23;Ac4、配列番号24;Ac5、配列番号25)。図3C:pHBA耐性変異体シグマ因子のアミノ酸配列アラインメント(天然型、配列番号17;pHBA1、配列番号26)。
【0040】
図4は、単離された株の、ヘキサン耐容性シグマ因子変異体との培養物の細胞密度を描く。図4は、また、最良のヘキサン耐容性変異体である、Hex−12およびHex−18の配列を示す。
図5は、単離された株の、シクロヘキサン耐容性シグマ因子変異体との培養物の細胞密度を示す。
図6は、増加濃度のナリジクス酸における、抗生物質抵抗性シグマ因子変異体の単離された株の培養物の細胞密度を描く。
【0041】
図7A〜7Dは、15および24時間における、リコピン生産に関して選別された株の培養およびアッセイの結果を、最良の株からのシグマ因子変異体の配列とともに、示す。
図8は、コントロールに対し発酵の間に達成されるリコピン生産における最大の倍増を描くドットプロットである。円のサイズは、倍加に比例する。
【0042】
図9は、いくつかの対象の株に対する、15時間後のリコピン含有量を描く。この図は、配列遺伝子ノックアウトによる株の改良の伝統的な方法に対し、包括的な転写機構エンジニアリングにより提供される改善を比較する。この例において、包括的な転写機構エンジニアリングの方法は、複数の遺伝子ノックアウトのシリーズよりも、表現型の増加においてより強力であった。さらに、改善は、前加工された株において達成された。
【0043】
図10は、最少グルコース媒体における、増加した指数増殖期に対して選択された株を示す。図7Aは、シグマ因子エンジニアリングを用いて獲得された、さまざまな株(赤色および黄色のバーは対照群を表す)に対する結果を表す。図7Bは、トランスポゾン突然変異生成を用いて作られたランダムノックアウトライブラリーから選択された株の結果を表す。
【0044】
図11は、増加した濃度のSDSにおける、SDS耐性シグマ因子変異体の耐容株の培養物の細胞密度を、最良の株からのシグマ因子変異体の配列とともに、描く。
【0045】
図12は、酵母における、LiCl gTME変異体の成長解析を示す。変異体Taf25またはSpt15を持つ株を、上昇レベルのLiClの合成最少媒体において、ひととおりの順番のサブクローニングで単離した。増殖収率(OD600で測定した)を、16時間後の変異体および対照株に対して示す。Taf25は低濃度のLiClにおいて対照群よりも優れている一方、Spt15変異体は高濃度でより優れていた。
【0046】
図13は、酵母における、LiCl gTME変異体の配列解析を描く。変異を、概要的に示すそれぞれの因子の決定的な機能要素上にマッピングして示す。それぞれの変異体は、ただ単一のアミノ酸置換を有するように見なされる。
【0047】
図14は、酵母における、ブドウ糖gTME変異体の成長解析を示す。変異体Taf25またはSpt15を持つ株を、上昇レベルのブドウ糖の合成最少培地において、ひととおりの順番のサブクローニングで単離した。ここにおいて、両方のタンパク質は類似の濃度範囲にわたって改善を示すところ、SPT15タンパク質が最大の改善を有した。
【0048】
図15は、酵母におけるブドウ糖gTME変異体の配列解析を描く。変異を、それぞれの因子の概要的に示す決定的な機能要素上にマッピングして示す。それぞれの変異体は、ただ単一のアミノ酸置換を有するように見なされるが、しかしながら、いくつかの他のSPT15タンパク質を単離したところ、いくつかは多くの変異を有していた。
【0049】
図16は、酵母における、エタノール−ブドウ糖gTME変異体の成長解析を示す。変異体Taf25またはSpt15を持つ株を、上昇レベルのエタノールおよびブドウ糖の合成最少培地において、ひととおりの順番のサブカルチャーで単離し、20時間の増殖でアッセイした。ここにおいて、かかるSTPタンパク質は、かかるTAF変異体の影響力をはるかに超えた。
【0050】
図17は、酵母における、エタノール−ブドウ糖gTME変異体の配列解析を描く。変異を、それぞれの因子を描写的に示す決定的な機能要素上にマッピングして示す。それぞれの変異体は、DNAまたはタンパク質接触に対する決定的な領域におけるいくつかの単一のアミノ酸置換を有するように見なされる。
【0051】
本発明の詳細な説明
包括的な転写機構は、全ての細胞系(原核および真核)におけるトランスクリプトームの制御に関与する。細胞系において、かかるシグマ因子は、RNAポリメラーゼホロ酵素のプロモーター優先傾向に注目することにより、包括的な転写の組織化に決定的な役割を果たす(R. R. Burgess, L. Anthony, Curr. Opin. Microbiol 4, 126-131 (2001))。Escherichia coliは、6つの代替のシグマ因子、およびrpoD遺伝子によりコードされる1つの主要な因子、σ70を含有する。かかるタンパク質レベルにおいて、残基の領域はプロモーターサイトおよびかかるホロ酵素との接触に対して解析されてきた(J. T. Owens et al., PNAS 95, 6021-6026 (1998))。E. Coli.および他の細菌におけるσ70の結晶構造解析および部位特異性突然変異生成が、レポーター遺伝子の増加したまたは減少した転写により証拠付けられる、RNAポリメラーゼホロ酵素のin vitroプロモーター優先傾向を変化させる能力を実証してきた(A. Malhotra, E. Severinova, S. A. Darst, Cell 87, 127-36 (1996))。本発明は、ゲノム規模レベルでのプロモーターに対し変動する優先傾向を有する変異体シグマ因子を産生する能力を利用する。
【0052】
伝統的な菌株改良パラダイムは、配列的な、単一の遺伝子の修飾を作ることに圧倒的に依存し、しばしば包括的な最大に到達し損ねる。その理由は、代謝の外形は複雑であり(H. Alper, K. Miyaoku, G. Stephanopoulos, Nat Biotechnol 23, 612-616 (2005);H. Alper, Y.-S. Jin, J. F. Moxley, G. Stephanopoulos, Metab Eng 7, 155-164 (2005))、付加的または強欲なサーチアルゴリズムのために、全ての変異が同時に導入されるときのみ有益である、合成変異体を明らかにし損ねるということである。一方、タンパク質エンジニアリングは、増強された抗体親和性、酵素特異性、または触媒活性に対するランダム化された突然変異生成および選別を介して、適正を即座に改善することができる(E. T. Boder, K. S. Midelfort, K. D. Wittrup, Proc Natl Acad Sci U S A 97, 10701-5 (2000);A. Glieder, E. T. Farinas, F. H. Arnold, Nat Biotechnol 20, 1135-9 (2002);N. Varadarajan, J. Gam, M. J. Olsen, G. Georgiou, B. L. Iverson, Proc Natl Acad Sci U S A 102, 6855-60 (2005))。これらの例において得られる強烈な増強に対する重要な理由は、多くの同時の変異を評価することにより、巨大なアミノ酸組み合わせ空間の重大なサブセットを精査するこれらの方法の能力である。本発明を用いて、われわれはσ70シグマ因子の包括的な制御的機能を活用して、複数の同時の遺伝子発現変化を同様に導入し、そして改良された細胞表現型に関与する変異体を選択することにより全体の細胞エンジニアリングを容易にする。
【0053】
本発明は、細胞の表現型を変更するための方法を提供する。かかる方法において、包括的な転写機構のタンパク質、および随意にそのプロモーターをコードする核酸を変異させること、変異した包括的な転写機構タンパク質を含む変化した細胞を提供し細胞中にかかる核酸を発現させること、およびかかる変化した細胞を培養することを含む。明細書中で用いる「包括的な転写機構」は、複数の遺伝子の転写を調節する1つまたは2つ以上の分子である。かかる包括的な転写機構は、RNAポリメラーゼ分子の活性とともに相互作用し、そして調節することにより、遺伝子転写に影響を及ぼすタンパク質であることができる。かかる包括的な転写機構は、また、転写される細胞のゲノムの能力を変更するタンパク質(例えば、メチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチラーゼおよびデアセチラーゼ)であることができる。さらに、包括的な転写機構は、複数の遺伝子の転写を変更するタンパク質(例えば、micro RNA)であることができる。
【0054】
本発明に従うに有用な包括的な転写機構は、細菌性シグマ因子およびアンチシグマ因子を含む。シグマ因子をコードする例示的な遺伝子は、σ70をコードするrpoD;σ28をコードするrpoF;σ38をコードするrpoS;σ32をコードするrpoH;σ54をコードするrpoN;σ24をコードするrpoE;およびσ19をコードするfecIを含む。アンチシグマ因子はかかるシグマ因子に結合し、その能力、そしてその結果転写を制御する。E. Coliにおいて、アンチシグマ因子は、それらのなかでも、rsd(シグマ因子70に対し)またはflgMによりコードされる。かかるアンチシグマ因子を制御させ、正常細胞に対する転写におけるそれらのインパクトを制御することができる。さらに、変異体シグマ因子の変異体アンチシグマ因子との新規のペアリングをさらに作り、細胞におけるさらなる転写の制御を作ることができる。例えば、かかるアンチシグマ因子を、かかる変異体シグマ因子により付与された表現型の調節可能な制御をできるようにする、誘導可能なプロモーターを用いて、発現させることができる。
【0055】
包括的な転写機構は、また、真核性ののRNAポリメラーゼ、例えばRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIII、あるいはRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターなど、の活性に結合する、および調節するポリペプチドを含む。かかる真核性の包括的な転写機構の例は、TFIIDまたそのサブユニット、例えばTATA結合タンパク質(TBP)、あるいはTBP関連因子(TAF)、例えばTAF25など、および伸長因子である。酵母からのさらなる例は、GAL11、SIN4、RGR1、HRS1、PAF1、MED2、SNF6、SNF2、およびSWI1を含む
【0056】
包括的な転写機構は、また、転写される染色体DNAの能力を変更するポリペプチド、例えば核酸メチルトランスフェラーゼ(例えば、DamMT、DNMT1、Dnmt3a);ヒストンメチルトランスフェラーゼ(例えば、Set1、MLL1);ヒストンアセチラーゼ(例えば、PCAF、GCN5、Sas2pおよび他のMYST型ヒストンアセチラーゼ、TIP60);およびヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDA1、HDAC2、HDAC3、RPD3、HDAC8、Sir2p)、ならびに関連する因子(例えば、HDAC類は mSin3A、Mi-2/NRD、CoREST/kiaa0071、N-CoR およびSMRTと関連する)を含む。
【0057】
さらに他の包括的な転写機構は、真核細胞の細胞小器官、例えばミトコンドリアまたは葉緑体など、の核酸分子によりコードされる。
多くの例において、包括的な転写機構を変異させるプロセスは包括的な転写機構の複数の変異を反復して作ることを含むであろうが、その必要はない、なぜなら、かかる包括的な転写機構の単一の変異でさえ、明細書中で実証されるような表現型の劇的な変更を結果的に引き起こすことができるからである。
【0058】
本発明の方法は、かかる包括的な転写機構を変異させ、次いでかかる変異した包括的な転写機構を細胞中へと導入し、変化した細胞を作製することにより、典型的に実行される一方、例えば変異体の包括的な転写機構との置換により、または内因性の包括的な転写機構のin situ変異により、内因性の包括的な転写機構遺伝子を変異させることもまた可能である。明細書中で用いる「内因性」は、細胞に対して天然型であることを意味する;包括的な転写機構を変異させる場合、内因性は細胞中のかかる遺伝子またはかかる包括的な転写機構の遺伝子を指す。対照的に、より典型的な手順は、包括的な転写機構の遺伝子またはかかる細胞の外部の遺伝子を変異させ、次いでかかる遺伝子をかかる細胞中へと導入することを含む。
【0059】
かかる包括的な転写機構遺伝子は、導入される細胞と同種または異種であることができる。例えば、明細書中で示すように、E. Coliシグマ因子70を変異させ、E. Coliへと導入し、かかるE. Coli細胞の表現型を変更させる。E. Coliの他の包括的な転写機構は、また、同様の様式で用いることができるであろう。同様に、特別な酵母種、例えば、S. cerevisiaeまたはS. pombeなど、の包括的な転写機構を、変異させ、同じ酵母種へと導入することができるであろう。同様に、線虫種、例えばC. elegansなど、または哺乳類種、例えばM. musculus、R. norvegicusまたはH. sapiensなど、の包括的な転写機構を、標準的な組み換え遺伝子技術を用いて、明細書中で提供される具体例に類似の様式で、変異させ、そして同種のものへ導入させることができる。
【0060】
代替的に、異なる種からの包括的な転写機構を利用し、遺伝子の転写制御においてさらなる変化形を提供することができる。例えば、Streptomyces細菌の包括的な転写機構を変異させ、E. Coliへと導入することができるであろう。かかる異なる包括的な転写機構は、また、異なる系または門の有機体を由来とすることができる。用いる変異の方法に依存して、同様のおよび異なる包括的な転写機構を、本発明の方法、例えば遺伝子シャッフリングにより、における使用に対して組み合わせて用いることができる。
【0061】
随意的に、そのコード配列自体よりもしろ、包括的な転写機構のかかる転写制御配列を変異させることができる。転写制御配列は、プロモーターおよびエンハンサーを含む。かかるプロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、包括的な転写機構のコード配列に連鎖され、次いでかかる細胞中へと導入することができる。
【0062】
かかる変異体の包括的な転写機構をかかる細胞へと導入し、変化した細胞を作製したのち、次いで、かかる変化した細胞の表現型を決定する/アッセイする。これは、特別な表現型の存在(または欠如)に変化した細胞を選択することにより、為すことができる。表現型の例は、以下により詳細に記載する。かかる表現型は、また、かかる変化した細胞の表現型を、また、変更に先立ってかかる細胞の表現型と比較することにより決定することができる。
【0063】
好ましい態様において、かかる包括的な転写機構の変異およびかかる変異した包括的な転写機構の導入は1度または2度以上繰り返され、「第n世代」の変化した細胞を産生するところ、「n」はかかる包括的な転写機構の変異および導入の反復の数である。例えば、(かかる包括的な転写機構の最初の変異および導入ののちに)かかる包括的な転写機構の変異および導入を1回繰り返すと、第2世代の変化した細胞が結果として生じる。その次の反復により、第3世代の変化した細胞が結果として生じ、それに引き続く。かかる細胞の表現型は、明細書中のあらゆる箇所で記載されるように、反復して変異した包括的な転写機構が含有され、次いで決定される(または、変異しない包括的な転写機構またはかかる変異体の包括的な転写機構の前の反復を含有する細胞と比較される)。
【0064】
かかる包括的な転写機構を反復して変異させるプロセスにより、配列変異ステップにわたる表現型の改善を可能にし、そのそれぞれは結果としてかかる包括的な転写機構の複数の変異を引き起こすかもしれない。反復の変異により、特定のアミノ酸残基がかかる包括的な転写機構においてかかる反復のプロセスにわたって「出現する」および「消失する」という変異が、結果として生じるかもしれない。かかる変異の例は、実施例において提供される。
【0065】
かかる手順の典型的な使用において、かかる包括的な転写機構はかかる包括的な転写機構をコードする核酸分子を変異させることにより、指向進化を受ける。かかる核酸分子を変異させる好ましい方法は、かかるコード配列を突然変異生成させ、次いでかかる核酸分子をベクター(例えば、プラスミド)へと挿入することである。ベクターへと挿入するに先立ってかかるコード配列を変異させることが好ましいが、このプロセスは、必要に応じ、反転してもよい、つまり、まずかかる核酸分子をベクターへと挿入し、次いでかかる配列を突然変異生成させる。
【0066】
かかる包括的な転写配列の指向進化が繰り返される場合、つまり本発明の反復のプロセスにおいて、好ましい方法は、かかる変異した包括的な転写機構、および随意にそのプロモーターをコードする核酸を、その変化した細胞から単離することを含む。かかる単離された核酸分子を、次いで変異し(第2世代の変異した包括的な転写機構をコードする核酸を産生し)、次いでもう1つの細胞へと導入する。
【0067】
単離された核酸分子は、変異する場合、異なる変異または一連の変異を有する、突然変異した核酸分子の集団を形成する。例えば、ランダムに突然変異する場合、かかる核酸分子は、かかる核酸分子長上の1つまたは2つ以上の部位においての変異を含む変異のセットを有することができる。そして、第1のメンバーのかかるセットは、ヌクレオチドn1において1つの変異を有しうる(式中、nxはかかる核酸分子のヌクレオチド配列のメンバーを表わし、xはかかる分子の第1〜最後のヌクレオチドの部位である)。かかるセットの第2のメンバーは、ヌクレオチドn2に1つの変異を有しうる。かかるセットの第3のメンバーはヌクレオチドn1およびn3において2つの変異を有しうる。かかるセットの第4のメンバーは、部位n4およびn5に2つの変異を有しうる。かかるセットの第5のメンバーは、3つの変異:ヌクレオチドn4およびn5に2つの点変異、およびヌクレオチドn6〜n7に欠失、を有しうる。かかるセットの第6のメンバーは、ヌクレオチドn1、n5およびn8に点変異、およびかかる3’末端ヌクレオチドの切断を有しうる。かかるセットの第7のメンバーは、ヌクレオチドn11〜n12と交換したヌクレオチドn9〜n10を有しうる。ランダム変異および定方向変異の組み合わせを含む、さまざまな他の組み合わせが、当業者により容易に想定される。
【0068】
核酸分子のかかる集団は、ベクター中に挿入された多数の異なる突然変異した核酸分子などの、核酸のライブラリーとすることができる。かかるライブラリーは、細胞中へと貯蔵され、複製され、等分され、および/または導入され、分子生物学の標準的な方法に従い、変化した細胞を産生することができる。
【0069】
指向進化に対するかかる包括的な転写機構の変異は、好ましくはランダムである。しかしながら、また、かかる包括的な転写機構へと導入された変異のランダムさを限定し、かかる包括的な転写機構に対し非ランダムまたは特定のランダムさとすること、またはこれらの変異のいくつかの組み合わせとすることが可能である。例えば、特別なランダム変異に対し、かかる変異をかかる包括的な転写機構をコードする核酸分子のある部位へと限定してもよい。
【0070】
変異の方法を、所望の変異の型に基づいて選択することができる。例えば、ランダム変異に対し、かかる核酸分子のエラープローンPCR増幅などの方法を用いることができる。部位特異的な突然変異生成を用いて、特定の変異をかかる核酸分子の特定のヌクレオチドで導入することができる。かかる核酸分子の合成を用いて、特異的変異および/またはランダム変異を、後者は1つまたは2つ以上の特異的なヌクレオチドにおいて、またはかかる核酸分子の全長にわたって、導入することができる。核酸の合成に対する方法は、当業界において周知である(例えば、Tian et al.、Nature 432: 1050-1053 (2004))。
【0071】
DNAシャッフリング(遺伝子シャッフリングとしても知られる)を用いて、核酸分子の断片を切り替えることによりさらに他の変異を導入することができる。例えば、米国特許第6,518,065号、関連特許、およびそれらに引用される参考文献を参照のこと。切り替えられる原料として用いられる核酸分子は、単一の型の包括的な核酸分子(例えば、σ70)、または1つより多い方の包括的な核酸分子をコードする核酸分子であることができる。例えば、単一種の異なるシグマ因子(例えば、E. Coliのσ70およびσ28)、または異なる種類からのシグマ因子などの、異なる包括的な転写機構をコードする核酸分子をシャッフルすることができる。同様に、異なる型の包括的な転写機構、例えばシグマ因子70およびTFIID、をコードする核酸分子を、シャッフルすることができる。
【0072】
ランダムまたは非ランダムの様式での、核酸分子を変異させるさまざまな他の方法が、当業者に周知である。1つまたは2つ以上の異なる方法を組み合わせで用いて、包括的な転写機構をコードする核酸分子において変異を作成することができる。この側面において、「組み合わせで」は、異なる型の変異を単一の核酸分子で組み合わせて、セットの核酸分子において類別することを意味する。異なる型の変異は、点変異、ヌクレオチドの切断、ヌクレオチドの欠失、ヌクレオチドの付加、ヌクレオチドの置換、およびヌクレオチドの断片のシャッフリング(例えば、再類別)を含む。そのため、任意の単一の核酸分子は、1つまたは2つ以上の型の変異を有し、これらは、ランダムにまたは非ランダムにセットの核酸分子に類別することができる。例えば、核酸分子のセットは、かかるセットにおいてそれぞれの核酸分子に対して共通の変異、およびかかるセットにおいてそれぞれの核酸分子に対して共通ではない異なる数の変異を有することができる。かかる共通の変異は、例えば、所望に変更されたかかる細胞の表現型に対して有利であるとされるものでよい。
【0073】
好ましくは、かかる包括的な転写機構のプロモーター結合領域は、1つまたは2つ以上の切断または欠失によって中断または除去されない。
かかる変異した包括的な転写機構は、非変異の包括的な転写機構に対して、増加したまたは減少した遺伝子の転写を呈することができる。さらに、かかる変異した包括的な転写機構は、非変異の包括的な転写機構に対して増加したまたは減少した遺伝子の転写の抑制を呈することができる。
【0074】
明細書中で用いる「ベクター」は、所望の配列が異なる遺伝子環境間での搬送に対して、または宿主細胞における発現に対して、制限およびライゲーションにより挿入されてもよい、多数の核酸の任意のものであってよい。ベクターは、典型的にはDNAにより構成されるが、RNAベクターもまた利用可能である。ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルスゲノムおよび人工的な染色体を、限定なく含む。
【0075】
クローニングベクターは、自発的に複合できるかまたは宿主細胞中のゲノムへと融合されるものであり、ベクターが決定可能な様式で切断してもよい、および新しい組み換えベクターが宿主細胞においてその複製する能力を獲得するように所望のDNA配列がライゲートされてもよい、1つまたは2つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位によりさらに特徴付けられるものである。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、宿主細菌でのコピー数における、またはかかる宿主が有し分裂により再産生する前の宿主あたりのただ単一の時間におけるプラスミドの増加につれ、多くの回数で起こるかもしれない。ファージの場合、複製は、溶解期(lytic phase)の間に、または溶原期(lysogenic phase)の間には消極的に、起こるかもしれない。
【0076】
発現ベクターは、所望のDNA配列が、制限またはライゲーションにより、制限配列へと操作可能に結合するように挿入してもよく、およびRNA転写として発現されてもよい。ベクターは、ベクターで転換または導入されたまたはされていない細胞の同定に用いるに適合する1つまたは2つ以上のマーカー配列をさらに含有してもよい。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性のいずれかを増加または減少させたタンパク質をコードする遺伝子、その活性が業界で公知の標準的なアッセイにより検出可能な酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたはアルカリホスファターゼ)をコードする遺伝子、および転換されたまたは導入された細胞、宿主、コロニーまたはプラーク(例えば、緑色蛍光タンパク質)の表現型に明白に影響を及ぼす遺伝子を含む。好ましいベクターは、操作可能に接合するDNA断片において存在する構造的な遺伝子産生物の自己複製および発現が可能なものである。
【0077】
明細書中で用いる、コード配列および調節配列は、かかる調節配列の影響下または制御下でかかるコード配列の発現または転写が起こるように共有結合的に結合する場合、「操作可能に」接合するとされる。かかるコード配列が機能タンパク質へと翻訳されることが所望であるならば、2つのDNA配列は、5’調節配列におけるプロモーターの誘発が結果として係るコード配列の転写を引き起こすならば、およびかかる2つのDNA配列間の連鎖の性質が(1)結果としてフレームシフト変異の誘発を起こさない、(2)かかるコード配列の転写を導くプロモーター領域の能力と干渉しない、または(3)タンパク質へと翻訳される対応するRNA転写の能力と干渉しないならば、操作可能に接合するとされる。そのため、プロモーター領域は、かかるプロモーター領域が生成した転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドへと翻訳されるようなDNA配列の転写に影響を及ぼすことができるならば、コード配列へと操作可能に接合するであろう。
【0078】
遺伝子発現に必要な調節配列の厳格な性質は、種または細胞の型の間で異なるかもしれないが、概して、必要に応じて、転写および翻訳のそれぞれの開始と関連する、5’非転写および5’非翻訳配列を、例えば、TATAボックス、キャッピング配列(capping sequence)、CATT配列など、を含むであろう。特に、かかる5’非翻訳調節配列は、操作可能に接合した遺伝子の転写制御に対するプロモーター配列を含む、プロモーター領域を含むであろう。調節配列は、また、記載のように、エンハンサー配列または上流活性化配列を含むであろう。本発明のベクターは5’リーダーまたはシグナル配列を随意に含むであろう。適合したベクターの選択および設計は、当業者の能力および裁量の範疇にある。
【0079】
発現に必要な要素を全て含有する発現ベクターは市販であり、当業者に公知である。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照のこと。細胞は、概して、CT抗原ポリペプチドまたはその断片または変異体をコードする異種DNA(RNA)の細胞へと導入することにより設計される。その異種DNA(RAN)は、転写要素の操作可能な制御下に置かれ、かかる宿主細胞の異種DNAを発現できるようにする。
【0080】
哺乳類細胞におけるmRNA発現の好ましい系は、G418抵抗性を付与する遺伝子などの選択可能なマーカーを含有するpRc/CMVまたはpcDNA3.1など(Invitrogen, Carlsbad, CAより入手可能)のもの、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサープロモーター配列などである。さらに、pCEP4ベクター(Invitrogen)は、多コピー染色体外要素としてのプラスミドの維持を容易にする、Epstein Barrウイルス(EBV)起源の発現を含有し、霊長類またはイヌ科細胞系における発現に適合する。
【0081】
変異した包括的な転写機構をコードする核酸分子が細胞内に発現される場合、さまざまな転写制御配列(例えば、プロモーター/エンハンサー配列)を用いて、かかる包括的な転写機構の発現を導くことができる。かかるプロモーターは、天然型プロモーター、つまり、かかる包括的な転写機構のプロモーターであることができ、かかる包括的な転写機構の発現の正常な調製を提供する。かかるプロモーターは、また、普遍的に発現するもの、例えばベータアクチン、ユビキチンB、ファージプロモーターまたはかかるサイトメガロウイルスプロモーターであることができる。本発明において有用なプロモーターは、また、かかる包括的な転写機構を普遍的に発現しないものとすることができる。例えば、かかる包括的な転写機構は、組織特異性プロモーター、細胞特異性プロモーター、または細胞小器官特異性プロモーターを用いる細胞において発現させることができる。さまざまな調整(conditional)プロモーター、例えば分子の存在または不在により制御されるプロモーターなど、例えば、テトラサイクリン反応性プロモーターなど、を、また、用いることができる(M. Gossen and H. Bujard、Proc. Natl Acad. Sci. USA、89、5547 5551 (1992))。
【0082】
変異した包括的な転写機構をコードする核酸分子を、業界標準の方法および技術を用いて、単数または複数の細胞へと導入することができる。例えば、核酸分子を様々な導入法、形質導入、電気穿孔法、粒子衝突、注入(細胞の顕微注入および多細胞生物への注入)、リポフェクション、YAC(酵母人工染色体)に対する酵母スフェロプラスト/細胞融合、植物細胞に対するAgrobacterium媒介導入、などにより、導入することができる。
【0083】
変異した包括的な転写機構をコードした核酸分子の発現は、また、かかる核酸分子をゲノム中へと融合することにより、またはかかる内因性の包括的な転写機構をコードする核酸配列を置換することにより達成してもよい。
【0084】
包括的な転写機構を変異することにより、複数のラウンドの変異により産生される包括的な転写機構をコードする核酸分子を含む、新規の組成物が提供される。かかる複数のラウンドの変異は指向進化を含むことができ、そこにおいてそれぞれのラウンドの変異に、所望の表現型を付与する変異した包括的な転写機構を選別する選別プロセスが引き続く。かかる変異した包括的な転写機構の変異および選別の方法は明細書中の他の箇所で記載される。これらの核酸分子により産生される包括的な転写機構が、また、提供される。
【0085】
ある場合において、変異した包括的な転写機構は、かかる非変異の包括的な転写機構の切断された形態であることが見出されてきた。特に、シグマ因子70に対し、σ70タンパク質のカルボキシル末端のみを残す、σ70のアミノ末端切断により、導入される細菌へ有利な表現型が付与されることが見出されてきた。そして、包括的な転写機構の断片、特に非変異の包括的な転写機構のプロモーター結合特性を保持する断片、より特別には領域4を含むσ70断片、が提供される。ベクターおよび/または細胞中に含有される核酸分子を含む、かかる切断された包括的な転写機構をコードする核酸分子が、また、提供される。
【0086】
本発明において有用な細胞は、原核細胞および真核細胞を含む。原核細胞は足筋細胞および古細菌細胞を含む。真核細胞は、酵母細胞、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、幹細胞、および真菌細胞を含む。真核細胞は、また、例えば、多細胞生物の一部分またはその全てに含有されてもよい。多細胞生物は、哺乳類、線虫、例えばCaenorhabditis elegansなど、植物、例えばArabidopsis thalianaなど、Bombyx mori、Xenopus laevis、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、ウニおよびDrosophila melanogasterを含む。
【0087】
細菌の例は、Escherichia spp.、Streptomyces spp.、Zymonas spp.、Acetobacter spp.、Citrobacter spp.、Synechocystis spp.、Rhizobium spp.、Clostridium spp.、Corynebacterium spp.、Streptococcus spp.、Xanthomonas spp.、Lactobacillus spp.、Lactococcus spp.、Bacillus spp.、Alcaligenes spp.、Pseudomonas spp.、Aeromonas spp.、Azotobacter spp.、Comamonas spp.、Mycobacterium spp.、Rhodococcus spp.、Gluconobacter spp.、Ralstonia spp.、Acidithiobacillus spp.、Microlunatus spp.、Geobacter spp.、Geobacillus spp.、Arthrobacter spp.、Flavobacterium spp.、Serratia spp.、Saccharopolyspora spp.、Thermus spp.、Stenotrophomonas spp.、Chromobacterium spp.、Sinorhizobium spp.、Saccharopolyspora spp.、Agrobacterium spp.およびPantoea spp.を含む。
【0088】
古細菌(archaea)(archaebacteriaとしても知られる)の例は、Methylomonas spp.、Sulfolobus spp.、Methylobacterium spp. Halobacterium spp.、Methanobacterium spp.、Methanococci spp.、Methanopyri spp.、Archaeoglobus spp.、Ferroglobus spp.、Thermoplasmata spp. およびThermococci spp.を含む。
【0089】
酵母の例は、Saccharomyces spp.、Schizosaccharomyces spp.、Pichia spp.、Paffia spp.、Kluyveromyces spp.、Candida spp.、Talaromyces spp.、およびDebaryomyces spp.を含む。
【0090】
菌類の例は、Aspergillus spp.、Pennicilium spp.、Fusarium spp.、Rhizopus spp.、Acremonium spp.、Neurospora spp.、Sordaria spp.、Magnaporthe spp.、Allomyces spp.、Ustilago spp.、Botrytis spp.、およびTrichoderma spp.を含む。
【0091】
昆虫細胞の例は、Spodoptera frugiperda 細胞系、例えばSf9およびSf21など、Drosophila melanogaster 細胞系、例えばKc、Ca、311、DH14、DH15、DH33P1、P2、P4およびSCHNEIDER-2 (D. Mel - S2)など、ならびにLymantria dispar細胞系、例えば652Y、を含む。
【0092】
哺乳類細胞の例は、初代細胞、例えば幹細胞および樹枝状細胞など、ならびに哺乳類細胞系、例えばVero、HEK 293、Sp2/0、P3UI、CHO、COS、HeLa、BAE-1、MRC-5、NIH 3T3、L929、HEPG2、NS0、U937、HL60、YAC1、BHK、ROS、Y79、Neuro2a、NRK、MCF-10、RAW 264.7、およびTBY-2など、を含む。
【0093】
幹細胞系は、hESC BG01、hESC BG01V、ES-C57BL/6、ES-D3 GL、J1、R1、RW.4、7AC5/EYFP、およびR1/Eを含む。さらなるヒト幹細胞系は、(NIHの称号で)CH01、CH02、GE01、GE07、GE09、GE13、GE14、GE91、GE92、SA19、MB01、MB02、MB03、NC01、NC02、NC03、RL05、RL07、RL10、RL13、RL15、RL20、およびRL21を含む。
【0094】
包括的な転写機構の指向進化は、変化した細胞を産生し、そのいくつかは変更された表現系を有する。そのため、本発明は、また、既定の単数または複数の表現型に変化した細胞を選択することを含む。既定の表現型の選択は、選択的条件下で変化した細胞の培養に付随する。既定の表現型の選択は、また、かかる表現型に対する個々の細胞のハイスループットアッセイに付随することができる。例えば、有害な条件への耐性および/または代謝産生物の増加した産生に対して、選択することができる。耐性の表現型は、溶媒、例えばエタノールなど、および有機溶媒、例えばヘキサンまたはシクロヘキサンなど、の耐性;毒性代謝産生物、例えば酢酸塩、パラヒドロキシ安息香酸(pHBA)、パラヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシプロピンアルデヒド、過剰発現したタンパク質、有機溶媒および免疫抑制分子など、の耐性;界面活性剤の耐性;浸透圧ストレスの耐性;高等分濃度の耐性;高温の耐性;極度のpH条件(高いまたは低い)の耐性;アポトーシスへの抵抗性;毒性基質、例えば有害廃棄物など、の耐性;工業媒体の耐性;増加した抗生物質抵抗性、など、を含む。エタノール耐性、有機溶媒耐性、酢酸塩耐性、パラヒドロキシ安息香酸耐性、SDS耐性および抗生物質抵抗性に対する選別を、実施例で例示する。他の実施例において、リコピンおよびポリヒドロキシブチレートの増加した産生に対する選別を例示する。酵母細胞での実施例において、高糖分(ブドウ糖)耐性、浸透圧ストレス(LiCl)耐性、および高いブドウ糖およびエタノール濃度に対する複数の耐性を例示する。
【0095】
多細胞生物において明らかにされる追加の表現型を、また、選択することができる。包括的な転写機構の変異体のバージョンを、哺乳類または他の真核細胞系へと、また、有機体全体へさえも導入することができ(例えば、胚細胞系への導入または卵母細胞への注入を介し)、表現型のスクリーニングを可能にする。かかる表現形は、他の有機体の単一の細胞において明白にされていても、されていなくてもよく、1つまたは2つ以上の成長特性、世代時間、1つまたは2つ以上の疫病または疾患に対する抵抗性、植物の果実またはその他の部分の産生、1つまたは2つ以上の発育変動、1つまたは2つ以上の寿命変化、機能の獲得または損失、増加したロバスト性、などを含む。
【0096】
変異した包括的な転写機構を含有する変化した細胞に関して明細書中で用いる「耐性」は、変化した細胞が、変化しない細胞、または先の変化した細胞よりもより大規模に有害な条件を引き出すことができるということを意味する。例えば、かかる変更していない、または前に変化した細胞は、「子供の」である変化した細胞の「親」であり、また、かかる変更していない、または前に変化した細胞は、第n世代である、試験される細胞と比較すると、第(n−1)世代である。「有害な条件に抵抗する」は、かかる変化した細胞が、かかる変更しないまたは前に変化した細胞と比して、増加した成長および/または生存を有することを意味する。本概念は、また、細胞に対して毒性である代謝産生物の増加した産生を含む。
【0097】
高糖分濃度の耐性に関し、かかる濃度は、≧100g/L、≧120g/L、≧140g/L、≧160g/L、≧180g/L、≧200g/L、≧250g/L、≧300g/L、≧350g/L、≧400g/L、≧450g/L、≧500g/L、などであることができる。高糖分濃度の耐性に関し、かかる濃度は、≧100g/L、≧120g/L、≧140g/L、≧160g/L、≧180g/L、≧200g/L、≧250g/L、≧300g/L、≧350g/L、≧400g/L、≧450g/L、≧500g/L、などであることができる。高塩分濃度の耐性に関し、かかる濃度は≧1M、≧2M、≧3M、≧4M、≧5M、などであることができる。高温耐性に関し、かかる温度は、細菌細胞に関し、例えば、≧42℃、≧44℃、≧46℃、≧48℃、≧50℃であることができる。他の温度カットオフ値を、用いる細胞の型に従って選択してもよい。極度のpHの耐性に関し、例示的なpHカットオフ値は、例えば、≧pH10、≧pH11、≧pH12、≧pH13、または≦pH4.0、≦pH3.0、≦pH2.0、≦pH1.0である。界面活性剤の耐性に関し、例示的な界面活性剤の濃度は、≧5%w/v、≧6%w/v、≧7%w/v、≧8%w/v、≧9%w/v、≧10%w/v、≧12%w/v、≧15%w/v、などである。エタノールの耐性に関し、例示的なエタノールの濃度は、≧4%v/v、≧5%v/v、≧6%v/v、≧7%v/v、≧8%v/v、≧9%v/v、≧10%v/v、などである。浸透圧ストレスの耐性に関し、浸透圧ストレスを誘発する例示的な濃度(例えば、LiClで)は、≧100mM、≧150mM、≧200mM、≧250mM、≧300mM、≧350mM、≧400mM、などである。
【0098】
本発明は、細胞により代謝産生物の増加した産生を獲得することを含む。明細書中で用いる「代謝産生物」は、細胞中で作られる、または作られることができる任意の分子である。代謝産生物は、代謝中間体または最終産生物を含み、それらの任意のものはかかる細胞に対して毒性であってよく、その場合において、かかる増加した生産はかかる毒性代謝産生物の耐性と関連してもよい。そして、代謝産生物は、小分子、ペプチド、巨大タンパク質、脂質、糖、などを含む。例示的な代謝産生物は、実施例で実証する代謝産生物(リコピン、ポリヒドロキシブチレートおよびエタノール);治療用タンパク質、例えば抗体または抗体断片など、を含む。
【0099】
本発明は、また、複数の表現型、例えば複数の有害な条件の耐性、複数の代謝産生物の産生、またはこれらの組み合わせなど、に対する選択を提供する。この例は、実施例において実証されるところの、酵母による高いブドウ糖およびエタノールの複数の耐性である。
【0100】
変異した包括的な転写機構を導入するに先立つ、既定の表現型に対して先に最適化された細胞を使用することが、有利であるかもしれない。そのため、リコピンの産生において、例えば、少量のリコピンのみを産生する細菌細胞で開始するよりむしろ、より大量のリコピンを、より好ましくは最適な量のリコピンを産生する細胞を、好ましく用いる。そのような場合、かかる変異した包括的な転写機構を用いて、既に改良された表現型をさらに改善する。
【0101】
かかる変異した包括的な転写機構の作用を介して、かかる変化した細胞は遺伝子の変更した発現を有するであろう。本発明の方法は、ある側面において、かかる変化した細胞における遺伝子発現の変化を同定することを含む。遺伝子発現の変化は、業界で周知のさまざまな方法を用いて同定されることができる。好ましくは、遺伝子発現の変化は、核酸マイクロアレイを用いて決定される。
【0102】
本発明のいくつかの側面において、変異した包括的な転写機構によって細胞中で産生される遺伝子発現の変化は、もう1つの細胞において再現し、同様な(または類似の)表現型を産生することができる。かかる変異した包括的な転写機構により産生される遺伝子発現の変化は、上記のように同定することができる。そして、個々の遺伝子は、組み換え遺伝子発現または他の手段を介して、修飾に対して標的化されることができる。例えば、変異した包括的な転写機構は、遺伝子A、B、C、D、およびEの発現における増加、ならびに遺伝子F、G、およびHの発現における減少を産生してもよい。本発明は、1つまたは2つ以上のこれらの遺伝子の発現を調整し、かかる変異した包括的な転写機構により産生された表現型を再現することを含む。既定の表現型を再現するために、遺伝子A、B、C、D、E、F、G、およびHの1つまたは2つ以上を、例えば、かかる遺伝子配列を含有する発現ベクターを細胞中へ導入し、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物をコードする1つまたは2つ以上の内因性遺伝子の転写を増加させることにより、あるいは、1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御(例えば、プロモーター/またはエンハンサー)配列を変異する、または、例えば、核酸分子がsiRNA分子である、または発現するように1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を減少させる第1の核酸分子へと導入することにより、あるいは、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物をコードする1つまたは2つ以上の遺伝子、または1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御(例えば、プロモーター/エンハンサー)配列を変異させることにより、増加させることが出来る。
【0103】
随意に、変異した包括的な転写機構を含有する細胞における遺伝子発現の変化は、遺伝子またはタンパク質ネットワークのモデルを構築し、次いでかかるネットワーク中の1つまたは2つ以上の遺伝子産生物のいずれを変更するかを選択するのに用いられる。遺伝子またはタンパク質ネットワークのモデルは、Idekerおよび同僚(例えば、Kelley et al., Proc Natl Acad Sci USA 100(20), 11394-11399 (2003);Yeang et al. Genome Biology 6(7), Article R62 (2005);Ideker et al., Bioinformatics. 18 Suppl 1:S233-40 (2002)を参照のこと)、またはLiaoおよび同僚(例えば、.Liao et al., Proc Natl Acad Sci USA 100(26), 15522-15527 (2003);Yang et al., BMC Genomics 6, 90 (2005)を参照)の方法を介して生産することができる。
【0104】
本発明は、また、明細書中に記載の任意の方法により産生される細胞、およびかかる細胞を含有する多細胞生物を含む。かかる細胞は、分子の工業的産生(例えば、多くの耐性表現型および増加した代謝産生物産生表現型);バイオレメディエーション(例えば、有害廃棄物耐性表現型);癌発生において活性である遺伝子の同定(例えば、アポトーシス抵抗性表現型);抗生物質に対する細菌および他の原核生物の抵抗性における遺伝子活性の同定;殺虫剤に対する疫病の抵抗性における遺伝子活性の同定;などを含む、さまざまな目的に対して有用である。
【0105】
もう1つの側面において、本発明は代謝産物の産生を変更するための方法を提供する。かかる方法は、包括的な転写機構を変異して、明細書中の他の箇所に記載される方法に従って変化した細胞を産生することを含む。かかる細胞は、好ましくは選択された代謝産生物を産生する細胞であり、および、上記のように、好ましくはかかる代謝物の産生に対して先に最適化される。次いで、増加量または減少量の選択された代謝産生物を産生する変化した細胞を単離することができる。かかる方法は、また、単離された細胞を培養し、その代謝産生物をかかる細胞または細胞培養物から回収することを含むことができる。細胞を培養するおよび代謝産生物を回収するステップを、業界で周知の方法を用いて実行することができる。さまざまな好まれる細胞の型、包括的な転写機構および代謝産生物は、明細書中の他の箇所で提供される。
【0106】
本発明にしたかがって提供されるもう1つの方法は、選択された廃棄物のバイオレメディエーションのための方法である。明細書中で用いる「バイオレメディエーション」は、環境における毒性化合物の除去を強化する、細菌またはたの原核生物などの微生物の使用である。バイオレメディエーションにおける困難の1つは、その部位に存在する特別な毒素に基づいて、部位を効果的に修正する細菌株または他の微生物を得ることである。細胞のかかる表現型を変更するための方法は、かかる細菌株を提供する理想的な方法を示す。一例として、バイオレメディエーションは、本発明に従って、変化した細胞を産生する細胞の包括的な転写機構を変異し、変化しない細胞に比して増加量のかかる選択された廃棄物を代謝する変化した細胞を単離することにより、達成されることができる。次いで、かかる単離された細胞を培養し、かかる選択された廃棄物に暴露し、それにより選択された廃棄物のバイオレメディエーションを提供することができる。代替として、修復を必要とする毒性廃棄物処理場における原料の試料が選択された媒体としての役割を果たし、それにより特定の毒性廃棄物処理場に存在する毒物の特定の混合物に対して特異的に選択された微生物を得るであろう。
【0107】
本発明は、また核酸分子の集団を提供し、分子生物学の標準的な命名法を用いた、核酸分子の「ライブラリー」として、当業界においては解されるであろう。かかる集団/ライブラリーは複数の異なる核酸分子種を含有し、それぞれの核酸分子種は、本明細書中の他の箇所で記載される、異なる変異を有する包括的な転写機構をコードする。
【0108】
本発明の他の集団/ライブラリーは、上記の核酸分子の集団/ライブラリーを含む細胞の集団/ライブラリーである。かかる集団/ライブラリーは複数の細胞を含み、複数の細胞のそれぞれの細胞は、1つまたは2つ以上のかかる核酸分子を含む。かかる集団において存在する細胞の型は明細書中の他の箇所に記載され、単一の細胞ならびに1つまたは2つ以上の係る細胞を含む多細胞生物を含む。細胞のライブラリーにおいて、かかる核酸分子は染色体外の核酸(例えば、プラスミド上)として存在することができ、かかる細胞のゲノムへと融合されることができ、そして内因性の包括的な転写機構をコードする核酸分子を置換することができる。
【0109】
核酸または細胞のかかる集団/ライブラリーを、多数の用途のために、使用者に提供することができる。例えば、細胞の集団を、使用者が所望の表現型にスクリーニングできる。同様に、核酸分子の集団が使用者により細胞へと導入され、変化した細胞を作製することができ、次いでかかる変化した細胞を対象の特定の表現型に対してスクリーニングすることができる。例えば、明細書中に記載された表現型を用いるために、使用者はリコピン産生を増加させるように探索し、そしてある量のリコピンを産生する細菌株を保持し、突然変異した包括的な転写因子を細菌株へと導入し、次いで改良されたリコピン産生に対してスクリーニングできる。包括的な転写機構の変異または再導入による、指向変化のさらなるラウンドを、また、実行し、リコピン産生におけるさらなる改善を獲得することができる。
【0110】
集団/ライブラリーを、業界で通常用いられる容器、例えばチューブ、マイクロウェルプレート中に、貯蔵することができる。
【0111】

原料および方法
株および培地
E. Coli DH5 α(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、プロトコールに記載される定常の導入、ならびにこの実験における全ての表現型解析に用いた。株を5g/LのD−ブドウ糖を含有し、1mMのチアミンを添加したLB-Miller培地またはM9最少培地のいずれかにおいて、225RPMの回転攪拌で、37℃にて生育させた。低コピープラスミドの繁殖に対しては34μg/mlのクロラムフェニコールを、高コピープラスミドの維持に対しては、必要に応じ、68μg/mlのクロラムフェニコール、20μg/mlのカナマイシン、および100μg/mlのアンピシリンを、必要に応じて培地に添加した。細胞密度は、600nmにおける分光光度法でモニターした。M9最少塩はUS Biological (Swampscott, MA)より購入し、X-galはAmerican Bioanalytical (Natick, MA)より購入し、残りの全ての化学物質はSigma-Aldrich (St. Louis, MO)より購入した。プライマーは、Invitrogenより購入した。
【0112】
ライブラリー構築
低コピーの宿主プラスミド(pHACM)を、宿主バックグラウンド株としてpUC19(Yanisch-Perron, et al., Gene 33: 103-119, 1985)を用いて、ならびに、pACYC184中のCAT遺伝子(Chang, et al., J Bacteriol 134: 1141-1156, 1978)、およびpSC101からの複製の起源のpSC101(Bernardi, et al., Nucleuc Acuds Res 12: 9415-9426, 1984)を用いて、アンピシリン抵抗性をクロラムフェニコールと置換して、構築した。かかるpACYC184からのクロラムフェニコール遺伝子をAatIIとともに増幅し、AhdI制限部位をCMセンスAhdI:GTTGCCTGACTCCCCGTCGCCAGGCGTTTAAGGGCACCAATAAC(配列番号1)およびCMアンチAatII:CAGAAGCCACTGGAGCACCTCAAAACTGCAGT(配列番号2)プライマーを用いてオーバーハングした。かかる配列をpUC19骨格とともに分解し、ともにライゲーションし、pUC19-Cmを形成した。pSC101からのかかるpSC101断片は、pSCセンスAflIII:CCCACATGTCCTAGACCTAGCTGCAGGTCGAGGA(配列番号3)およびpSCアンチNotI:AAGGAAAAAAGCGGCCGCACGGGTAAGCCTGTTGATGATACCGCTGCCTTACT(配列番号4)プライマーを用いて、AflIIIおよびNotI制限部位オーバーハングとともに増幅した。この断片をpUC19-Cm構築とともに分解し、ともにライゲーションし、pHACMを形成した。
【0113】
rpoD遺伝子(Eco遺伝子 受託番号:EG10896;Bナンバー:b3067;配列番号27)を、rpoDセンスSacI:AACCTAGGAGCTCTGATTTAACGGCTTAAGTGCCGAAGAGC(配列番号5)およびrpoDアンチHindIII:TGGAAGCTTTAACGCCTGATCCGGCCTACCGATTAAT(配列番号6)プライマーを用いて、青色/白色スクリーニングを可能にする、pHACM中のlacZ遺伝子を標的とする、HindIIIおよびSacI制限オーバーハングを用いた、E. ColiゲノムDNAから増幅した。断片突然変異生成を、さまざまな濃度の初期のテンプレートを用いたGenemorphII Random Mutagenesis kit (Stratagene, La Jolla, CA)を用いて実行し、生産プロトコールに記載される低度、中等度および高度の変異率を得た。PCRに次ぎ、これらの断片をQiagen PCRクリーンアップキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製し、HindIIIおよびSacIで一晩かけて分解し、分解したpHACM骨格へと一晩かけてライゲートし、E. Coli DH5αコンピテント細胞へと導入した。細胞をLB寒天プレート上にプレートし、塗布し、液体ライブラリーを作製した。白色コロニーの総ライブラリーサイズは、約10〜10であった。
【0114】
表現型選別
液体ライブラリーからの試料を負荷環境へと配置し、生存変異体に対し選別した。エタノール耐性に関し、株は50g/Lのエタノールを含有する、ろ過したLB中に配置した。これらの培養は、30×115mmの閉塞蓋の遠心チューブ中で、37℃で振盪して実行した。株を20時間後にプレートし、個々のコロニー試験に関して選別した。酢酸塩耐性に対しては、M9最少培地において20g/Lで開始し、30g/Lへと増加させた、酢酸塩の増加濃度において、2度、順番に継代培養した。次いで、細胞をLBプレートへと撒き、いくつかのコロニーを単一コロニーアッセイのために選択した。パラヒドロキシ安息香酸(pHBA)耐性に対しては、株をM9最少培地中の20g/LのpHBA中で培養し、20時間後にプレートし、生存細胞を選択した。改良された表現型であると同定された全ての株からのプラスミドを回収し、コンピテント細胞の新鮮なバッチへと再導入した。いくつかのコロニーが、表現型を検証するための生物学的な複製を実行するそれぞれのプレートから選択された。
【0115】
配列解析
変異体シグマ因子の配列は、以下の一式のプライマーを用いて、配列決定された。
S1:CCATATGCGGTGTGAAATACCGC(配列番号7)、
S2:CACAGCTGAAACTTCTTGTCACCC(配列番号8)、
S3:TTGTTGACCCGAACGCAGAAGA(配列番号9)、
S4:AGAAACCGGCCTGACCATCG(配列番号10)、
A1:GCTTCGATCTGACGGATACGTTCG(配列番号11)、
A2:CAGGTTGCGTAGGTGGAGAACTTG(配列番号12)、
A3:GTGACTGCGACCTTTCGCTTTG(配列番号13)、
A4:CATCAGATCATCGGCATCCG(配列番号14)、
A5:GCTTCGGCAGCATCTTCGT(配列番号15)、および
A6: CGGAAGCGATCACCTATCTGC(配列番号16)。
配列を整列させ、Clustal W version 1.82を用いて比較した。
【0116】
主なシグマ因子、σ70は、増加した耐性表現型の探索のもと、E. Coliにおいて指向進化を受けた。この主なシグマ因子は、変異がプロモーターの優先傾向および転写率を変更し、そして包括的なレベルにおいてトランスクリプトームを調節するという前提のもと、選択された。かかるrpoD遺伝子および天然型プロモーター領域は、エラープローンPCRを受け、低コピー発現ベクターへとクローン化された(図1)。およそ10〜10の生存ライブラリーが初期に構築され、株へと導入された。
【0117】
このライブラリーは、高エタノール、高酢酸塩および高いパラヒドロキシ安息香酸(pHBA)濃度の極端な条件において培養することにより、選別を受ける。これらの条件は、工業的関連性のために選択される:酢酸塩は細胞増殖に阻害的なE. Coliの副産生物であり、一方バイオエタノール産生に対する見込みは、エタノールに対する増加された耐性を持つ株を設計することにより増強することができ、そして予想される収率を増加させる(L. O. Ingram et al., Biotechnol Bioeng 58, 204-14 (Apr 5, 1998))。さらに、pHBA産生の電気的被覆としての産生には、かなりの工業的な関心があるが、しかしながら細胞に対し極端に毒性である(T. K. Van Dyk, L. J. Templeton, K. A. Cantera, P. L. Sharpe, F. S. Sariaslani, J Bacteriol 186, 7196-204 (Nov、2004);J. L. Barker, J. W. Frost, Biotechnol Bioeng 76, 376-90 (Dec、2001))。これらの耐性表現型のそれぞれは、ランダム化された細胞性突然変異形成、遺伝子相補性およびノックアウト検索、およびマイクロアレイ改正により調査されてきたが(R. T. Gill, S. Wildt, Y. T. Yang, S. Ziesman, G. Stephanopoulos, Proc Natl Acad Sci U S A 99, 7033-8 (May 14, 2002))、今までは限定された成功しか収めなかった。
【0118】
エタノール 耐性
シグマ因子ライブラリーの変異体は、LB複合培地におけるエタノールの高濃度の存在下において、増殖する能力に基づき、まず、選択される(L. P. Yomano, S. W. York, L. O. Ingram, J Ind Microbiol Biotechnol 20、132-8 (Feb、1998))。この選別に対し、株は連続的に50g/Lのエタノールで2度、一晩継代培養し、次いでプレートし、耐久性変異体に対する選別をした。合計20のコロニーを選択し、異なるエタノール濃度における増殖に対してアッセイした。改良された株の単離および検証ののち、最良の変異体シグマ因子は連続的なラウンドの進化を受けた。引き続く反復のいずれにおいても、選別濃度は70および80g/Lエタノールへと増加させた。これらの濃縮実験において、用いられる強い選択圧力のために、細胞は培養の4〜8時間後にプレートした。それぞれのラウンドから単離された変異体は、さまざまなエタノール濃度において、改良された全般的な増殖を示した(図2A)。
【0119】
図2Bは、それぞれのラウンドの突然変異生成から単離された最良の変異体の配列を同定する。エタノール耐性シグマ因子の配列アラインメントを、図2Dで提供する。興味深いことに、第2のラウンドの変異は、全体的なエタノール適性の増加に明らかに役立つ切断された因子を形成させた。この切断は、制限酵素短縮におけるアーチファクトから生じ、タンパク質の領域3の一部分および完全な領域4を含む。領域4は、プロモーター領域への結合に関与し、切断された形態は、全長タンパク質に対し、結合親和性を増加させることが予め示されていた(U. K. Sharma, S. Ravishankar, R. K. Shandil, P. V. K. Praveen, T. S. Balganesh, J. Bacteriol. 181, 5855-5859 (1999))。それゆえ、この切断された変異体は、残りのシグマ因子機構が除去されるため、好ましいプロモーター領域への結合および転写の阻害により、強いそして特異的な転写の阻害として役に立つ。第2ラウンド変異体の切断された形態において、最初のラウンドのI511V変異はイソロイシンへと戻され、ただ1つの変異のみを残す。
【0120】
この切断された形態は第3のラウンドの突然変異生成および選別を受け、8つのさらなる変異を持つ因子を産生する。この最終ラウンドにおいて、R603C変異は元の残基へと戻り、多くの新たな変異が出現し、ラウンド2およびラウンド3の間の可視的な類似性のみとしての切断のみを残した。これらの突然変異生成のラウンドおよび生成配列は、タンパク質指向進化と比較しての差異が示される。後者の場合において、タンパク質の機能を増加させる変異は、本来、典型的には付加的である。一方、転写機構の変更において誘導される変異は、これらの因子はトランスクリプトームに対するコンジットとして作用するため、必ずしも付加的なものではない。これに関連し、多くの極大が、遺伝子変更のさまざまなサブセットに起因して生じ、改良された表現型へと導くかもしれない。
【0121】
かかる変異体シグマ因子を保有する全ての単離された株は、上昇したエタノール濃度において、対照群に対して、増加した成長速度を呈する。さらに、エタノールの欠如におけるかかる変異体株の成長表現型は、影響されなかった(表1)。
【0122】
【表1】

表1:エタノール耐性シグマ因子の指向進化。倍加時間の倍数の低下における改善を、3ラウンドの指向進化に対し、エタノールの増加した濃度に対して表す。ラウンド2および3におけるかかる変異体は、より高濃度のエタノールにおいて、成長速度における顕著な増加を示した。より高濃度における維持可能な細胞増殖の継続的な増加が、指向進化のラウンドにわたって見られた。
【0123】
第2のラウンドで単離された、切断された変異体は、より高いエタノール濃度において増加した成長速度を示した;しかし、その成長速度は、より低いエタノール濃度においては、第1のラウンドの変異体を比較して低下した。第3のラウンドから単離された変異体は回復された成長速度を示し、20〜50g/Lのエタノール濃度の間では、第1のラウンドのものと類似した。最も重要なことに、それぞれの引き続くラウンドは、細胞が8時間より長くにわたって増殖を維持することができる最高のエタノール濃度を、伴う細胞密度の低下でのエタノール毒性に圧することなく、増加させた。この方法にわたって得られたエタノール耐性における強烈な増加を、(図2C)で示されるラウンド3株の成長曲線により、野生型対照群のものとともに描く。シグマ因子エンジニアリング(SFE)により、より伝統的な方法を用いた著作物において以前報告されたレベルを超えて、かかるエタノール耐性を増加させることができた。さらに、SFEの反復のラウンドの適用により、かかる細胞の表現型をさらに改善できることが説明された。
【0124】
酢酸塩およびpHBA耐性
第2の例として、オリジナルのシグマ因子変異体ライブラリーを、M9最少培地における酢酸塩20g/Lにおいて、続いて30g/Lで、2度連続して継代培養した。単一のコロニーをこの混合物から単離し、再導入して、任意の染色体に基づく増殖適合を排除し、異なる酢酸塩濃度において、増殖に対してアッセイした。単離された株は高レベルの酢酸塩の存在において、耐性における強烈な増加を示した。さらに、かかる成長速度は、再度、酢酸塩の非存在において実質的には影響されなかった(表2)。30g/Lの酢酸塩において、単離された株は10.5〜12.5時間の倍加時間を有し、いくつかの抑制された対照群の倍加時間(56時間の倍加時間)の約1/5であった。
【0125】
【表2】

表2:追加の表現型に対する転写機構エンジニアリングの適用。上昇した酢酸塩のレベルまたは高レベルのpHBAの存在のいずれかにおいて増加した耐性を示す変異体を単離した。耐性における増加は化学物質の上昇したレベルで見られたが、しかしながら、成長速度において逆効果は見られず、そしてこれらの化学物質の不存在下で生じなかった。
【0126】
図3Aは、酢酸塩に対する増加された細胞の耐性を引き出す単離されたシグマ因子における領域により分類される、さまざまな変異を概説する。酢酸塩耐性シグマ因子の配列アラインメントを、図3Bに提供する。5つの単離された変異体の1つのみが切断された。M567V変異は酢酸塩変異体の2つにおいて出現し、かかる変異の多くはかかるシグマ因子の機能的ドメイン間に分布されるようである。興味深いことに、株は類似した耐性プロファイルを有するが、潜在する変異はことなっており、異なる分子機構がかかる転写プロファイルを影響させるということを示す。
【0127】
もう1つの例として、かかる変異体ライブラリーを20g/LのHBAの存在において培養し、高pHBA濃度における増殖および生存に関してこの化合物への増加し耐性の株に対して選別した。1つの株が、対照群およびpHBAの非存在における必然的に不変の増殖表現型と比べて、13時間における増殖収率における著しい改善で単離した(表2)。変異体HBA1は、合計6つの変異を持つ、切断された形態のシグマ因子を示すところ(図3A)、6つのうち4つの残基はバリンへと変換された。pHBA耐性シグマ因子の配列アラインメントを、図3Cで提供する。
【0128】
これらの例は、有機体が新規の細胞表現型を手に入れられるようにする、包括的なトランスクリプトーム変化を導入する、シグマ因子エンジニアリングの潜在性を説明する。近年、我々は包括的な転写機構エンジニアリングを耐性表現型を超えて成功的に延長させ、代謝産生物の過剰産生の率を増加させる変異体に対して選択してきた。さらに、この概念は真核性の転写機構要素を含む他の宿主系とともに探求されてきた。これらの例のそれぞれにおいて、転写抑制機構の要素におけるランダム変異によりもたらされる包括的な変化は、ランダム突然変異による合理的エンジニアリングまたは伝統的菌株改良を介して獲得可能なレベルを超える細胞表現型へと改善すると示される。
【0129】
我々は、指向進化の包括的な転写機構への適用を、初めて実証した。この戦略により、典型的な連続的細胞ごとの戦略と対照的に、複数の遺伝子の同時の遺伝子制御の指向修飾を可能にした。さらに、我々は、転写因子エンジニアリングの広大な配列空間の深くへと探索することにより配列表現型の改善を可能とするように、指向進化のかかるパラダイムを適用可能であることを見出した。結果として、相対的に非効率な反復した探索戦略によっては到底達成しそうにない、複数の遺伝子により制御される複雑な表現型を鍵解くことが、今、可能となる。
【0130】
記載された方法が、また、逆に、遺伝子型−表現型ランドスケープの複雑な相互作用を明らかにするために適用できるということは、注目すべきことである。かかる適用において、多数のハイスループット細胞および分子アッセイを採用し、変化した細胞の状態を評価し、究極的にはこれらの変異体の観察される表現型に潜む作用の全体的なメカニズムを推定するであろう。ここに記載する指向進化の包括的な転写機構への適用は、遺伝子の標的を同定するためのパラダイム転移の方法であり、所望の表現型を導き、全体の細胞エンジニアリングのゴールを実現する。
【0131】
例2:
有機溶媒耐性
包括的な転写機構エンジニアリングの適用は、付加的な耐性表現型を含んで拡張されてきた。有機溶媒に対する細菌株耐性は、いくつかの状況において有用である:(1)有害廃棄物のバイオレメディエーション、(2)細菌からの有機溶媒のバイオプロダクト、および(3)2相反応器を要するバイオプロセス適用(例えば、疎水性産生物操作を連続的に除去するための抽出性発酵、など)。E. Coliにおける溶媒耐性を増加させる潜在性を調査するために、原型のrpoD(σ70)変異体ライブラリーを培養し、指数増殖器に収穫し、LB培地およびヘキサン(10%v/v)を含有する2相系へと導入した。株を、ヘキサン存在下での18時間増殖後、単離した。
【0132】
これらの個々のコロニーを再び指数増殖期へと培養し、次いでヘキサンの存在下で収穫した。細胞密度は17時間後に測定した。ヘキサンとの培養物からの細胞密度を図4に示す。図4で示される株は、生物学的複製を実行した再導入株である。全ての選択された株は、突然変異しない形式のrpoD遺伝子を含有する対象株に対する細胞密度における増加を有する。さらに、PCR解析により、変異株Hex-3、Hex-8、Hex-11、Hex-12、Hex-13、Hex-17およびHex-19はシグマ因子の全体的な形式を有する一方、Hex-2、Hex-6、Hex-9、Hex-10、Hex-18株は切断された形式を有した。図4は、また、かかる2つの最良に実行された変異体Hex-12およびHex-18の配列(変異の位置)を示す。
【0133】
さらに、これらの配列を、ヘキサンよりも毒性のある有機溶媒として知られるシクロヘキサンの存在下で、増殖に関して試験した。図5は、シクロヘキサンのとの培養物からの細胞密度を示す。ヘキサン選択物から単離された株のいくつかを、また、示し、対照群に対する細胞密度において増加した。
【0134】
例3:
抗生物質抵抗性
包括的な転写機構エンジニアリングの適用を、抗生物質抵抗性を含んで拡大させた。微生物における抗生物質抵抗性は、感染と戦う代替法を求めるヘルスケアおよび製薬会社において、ストレスを置く重要な問題となりつつある。多くの抵抗性株が、抵抗性に対してコードする特異的な遺伝子を含有すると知られる。しかしながら、微生物がそのような遺伝子を進化させられるようになる前に、それらはまず、抗生物質の存在下で存続する試みにおいて、初期の抵抗性を獲得する。かかるゲノムにおいて起こるランダム変異は代替のものであるが、細胞はまた、これらの抗生物質に対する反応におけるそれらの遺伝子発現を変化することができる。包括的な転写機構エンジニアリングの使用は、抗生物質抵抗性株を作る可能性を同定するために試験した。この表現型は、トランスクリプトームの変更された発現により制御され、変異体転写機構を介して調節された。これらの株の遺伝子発現の解析により、かかる株の抵抗性を制御する新規の遺伝子標的および酵素の同定をできるようにし得る。
【0135】
それから、これらの標的は、かかる同定された酵素の活性を阻害するまたは増強する小分子薬剤へと発達するようにできる。抗生物質抵抗性のトピックは、かかる対照群の最小阻害濃度であるおよそ80μg/mlより過剰である、250μg/mlのナリジスク酸、キノロン(シプロフロキサシンと同じファミリーの薬剤)の存在下で変異体シグマ因子ライブラリーを培養することにより、試験した。図6は、ナリジクス酸の増加濃度におけるさまざまな単離された株に対する細胞密度(OD600)を表す。いくつかの単離された株は、高濃度のナリジスク酸存在下で、顕著な増殖を示した。これらの株は、プラスミドを初期の宿主株へと導入後における検証に関して、試験した。さらに、これらの変異体を配列決定した;PCR解析により、変異株NdA-7およびNdA-15は全長のシグマ因子である一方、NdA-10、NdA-11、NdA-12およびNdA-13は切断された形式であった。
【0136】
例4:
代謝産生物過剰産生表現型
包括的な転写機構エンジニアリングの基本的なテネットは、複数および同時の遺伝子発現修飾を作る能力である。以前、この方法は増加した耐性表現型を持つ変異体の同定に対して成功的に採用された。これらの引き続く例において、rpoDによりコードされる、かかる主要なシグマ因子の変異体ライブラリーは、単一の遺伝子修飾により達成されるレベルを超えて、代謝産生物過剰産生表現型を増強する能力に関して試験された。
【0137】
リコピン産生
以前、我々は、前もって設計された株のバックグウンドにおいてリコピン産生の増加を示す単一および複数遺伝子ノックアウト標的の多数を同定した(Alper et al., Nat Biotechnol 2005 and Alper et al., Metab Eng 2005)。この研究において、我々はリコピン産生を増加させる包括的な転写機構エンジニアリングの技術の利用を探索した。親株とともに以前設計されたいくつかの利用可能なバックグラウンドを利用し、それぞれのバックグラウンドにおいて独立して、変異体因子に対する探索が可能となり、その結果増加したリコピン産生となった。この研究に関し、親株Δhnrおよび2つの同定された包括的な最大株ΔgdhAΔaceEΔfdhFおよびΔgdhAΔaceEΔPyjiDを選択した。次いで、4つの試験した遺伝子バックグラウンドそれぞれからの最良の変異体を取りかえ、4株を4つの同定された変異体シグマ因子と混合することにより作られたランドスケープを調査した。
【0138】
変異体シグマ因子の同定
かかる変異体シグマ因子ライブラリーをかかる4つの株それぞれへと導入し、リコピン産生に基づいて、5g/Lのブドウ糖を添加した最少培地プレート上で選択した。それから、選択された株を培養し、リコピン産生に関し、15および24時間後に、M9培地を用いてアッセイした。図7A〜Dは、これらのサーチの結果を、最良の株からのシグマ因子変異体の配列とともに描く。制御プラスミドを持つまたは持たない株に関するリコピン産生を示す。いくつかのバックグラウンドに関し、この制御プラスミドの結果、このプラスミドが欠如する株に対し、リコピン産生における大きな減少が生じた。興味深いことに、これらの同定された因子の全ては切断された。さらに、hnrノックアウトバックグラウンドから同定された変異体は、単純に切断され、変異を含有しなかった。この切断に対する作用の推測されるモードを考えると、この変異体因子はrpoDの制御下で発現される全ての正常な遺伝子を必然的に抑制することが考えら得る。hnr変異体において、より高い安定レベルの静止期シグマ因子、σは、転写の残りを引き継ぐために利用可能である。さらに、このバックグラウンドにおいて2番目に高い変異体は、いくつかの変異を含有する全長シグマ因子という結果となった。
【0139】
株および同定された変異体因子の組み合わせ
次いで、異なる遺伝のバックグランドを持つ4つの株を、4つの独立して同定された変異体シグマ因子と組み合わせ、生じた16株のランドスケープを分析した。まず、興味深いことに、所定の遺伝背景に対して配列化した、図7A〜7Dで同定した変異体のいずれも、もう1つの遺伝背景において同定されたものと重複しなかった。結果として、まず、かかるランドスケープが対角優位(diagonally-dominant)であることが推測され、かかる変異体因子により引き出される効果が遺伝背景特異性であることを示した。これらの16株を対照群とともに、段階的なブドウ糖供給で、2×M9培地中で培養した。かかるリコピンレベルを15、24、39、および48時間時点で分析した。図4は、発酵の間の対照群に対して達成されたリコピン産生における最大倍増を描くドットプロットを提示する。円のサイズは、倍増に比例する。推測されるように、かかるランドスケープは、同定された株のバックグラウンドにおいて圧倒的に機能する変異体因子に関し、明白に対角優位であった。
【0140】
図9は、対象のいくつかの株に対する、15時間後のリコピン含有量を描く。親株およびhnrノックアウトの両方における突然変異生成の単一のラウンドにより、3つの明白な遺伝子ノックアウトの導入により前もって設計した株と、同様な結果を達成することができた。しかしながら、これらの背景において、リコピンレベルは、追加の変異体シグマ因子の導入を介して、さらに増加させることができた。
【0141】
これらの結果により、(1)包括的な転写機構エンジニアリング(gTME)は、代謝表現型を引き出すことができ、より重要には、(2)gTMを用いる単一のラウンドの選別は、単回のノックアウトまたは過剰発現修飾よりも効果的である、ということが示された。さらに、同定された変異体は一般的に株のバックグラウンドにわたって一般的に導入可能ではなく、それぞれの株におけるリコピン産生の異なるモードがあるかもしれないということを示す。これらの様式の例として、野生型株における最大の倍加の差異がたった15時間後に認められ、そして発酵終了までには対照株と収束した。逆に、ΔgdhAΔaceEΔPyjiD株における変異体因子は、増加時点に対する対照群と比較して、リコピン含有量において次第に増加した。それにもかかわらず、最高のリコピン産生の結果、前もって設計された株のバックグラウンドにおけるgTMEを使用し、ただ1回のみの選別ならば、最適化された株において開始するのがよいということが示された。しかしながら、エタノール耐性の結果により、指向進化の適用を介して、適正における連続した改善を達成できることが示され、リコピン産生をさらに増加させることが可能であるかもしれない。しかしながら、エタノール耐性の結果により、指向進化の適用を介し適正における連続した改善を達成できることが提示され、リコピン産生をさらに増加させることができるかもしれないということを示す。
【0142】
ポリヒドロキシブチレート(PHB)のバイオプロダクト
包括的な転写機構エンジニアリングの適用は、代謝産生物過剰生産のさらなる例を含むよう拡張されてきた。(リコピン産生に加えて)追加の代謝の表現型である、ポリヒドロキシブチレート(PHB)のバイオプロダクトを、転写機構エンジニアリングを用いて調査した。PHBがアセチル−coAの前駆体分子から産生された。
【0143】
材料/方法
修正pJOE7(Lawrence, A. G., J. Choi, C. Rha, J. Stubbe, and A. J. Sinskey. 2005. Biomacromolecules 6:2113-2119)プラスミドで転換したEscherichia coli (XL-1 Blue, Stratagene, La Jolla, Calif.)を、20g/Lブドウ糖および25μg/mLカナマイシン含有Luria-Bertani(LB)培地中、37℃で培養した。修正pJOE7は、Dr. Anthony Sinskey (MIT, Cambridge, MA)より寛大に譲受され、C. necatorからのphaABおよびAllochromatium vinosumからのphECを含有し、カナマイシン抵抗性をコードする。PHBでない対照として、pha遺伝子がない同様なプラスミドも、また、培養した。最適密度を用い、Ultraspec 2100 pro (Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)を用いた細胞増殖を追跡した。
【0144】
染色およびフローサイトメトリー
他に記載のない限りは、ナイルレッド(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)原液を溶解させて、ジメチルスルホキシド中で1mg/mlとした。染色の最適化において示されるように、3μLの原液を1mlの染色バッファーへ添加した。フローサイトメトリーを、FACScan (Becton Dickinson, Mountain View, CA)上で、以下の設定を用いて実行した;Synechocystis FSC=E00, SSC=411, FL-1=582, FL-2=551およびE. coli FSC=E00, SSC=411, FL-1=582, FL-2=535。細胞を空冷アルゴンイオンレーザー(488nm)で励起させ、FL2(585nm)を用いてナイルレッド染色を検出した。フローサイトメトリー解析をWinMDI 2.8を用いて50,000細胞において実施した。
【0145】
染色効率を分解のRS(式1)で特性化した、式中Mnは、n(n=1はPHB産生細胞、n=2は非PHB対照)の蛍光分布の相乗平均であり、δnは、蛍光分布の相乗平均である。RSは2つの集団を分別する能力の定量的測定である。
【数1】

細胞生存は、最終染色集団におけるcfuの培地からの細胞に対する割合でアクセスした。
【0146】
化学的PHB解析
PHBを従来より示されるように解析した(Taroncher-Oldenburg, G., and G. Stephanopoulos. 2000. Applied Microbiology and Biotechnology 54:677-680)。>10mgの細胞を培養物より遠心分離(10分、3,200g)で収集した。得られたペレットを冷脱イオンHOで一度洗浄し、80℃で一晩乾燥させた。乾燥したペレットを1mlの濃縮H2SO4中で60分間沸騰させ、4mlの0.014MのH2SO4で希釈した。サンプルを遠心分離し(15分、18,000g)、細胞残屑を除去し、Aminex HPX-87Hイオン排除カラム(300 x 7.8 mm; Bio-Rad, Hercules, Calif.)を用いてHPLCにより解析した(Karr, D. B., J. K. Waters, and D. W. Emerich. 1983. Applied and Environmental Microbiology 46:1339-1344)。市販のPHB(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)を試料と平行して加工し、基準として用いた。
【0147】
E. coli染色最適化
修飾pJOEを持つE. coli XL1-blueおよび非PHB対照を、記載通りに培養した。
【0148】
ショック最適化:培養物を静止期へと成長させた。ショックの後、さまざまな異なる透過化の方法を、分解能および生存性に対して試験した。スクロースショックを既に示されるように実行した(Vazquez-Laslop, N., H. Lee, R. Hu, and A. A. Neyfakh. 2001. J. Bacteriol. 183:2399-2404)。1mlの細胞を4℃へと10分間冷却した。かかる細胞を遠心分離し(3分、3000g、4℃)、1mlの氷冷TSEバッファー10 mM Tris-Cl [pH=7.5]、20% スクロース、2.5 mM Na-EDTA)へと再懸濁した。細胞を氷上で10分間培養し、次いで、1ml脱イオン水中に3μLナイルレッド原液とともに再懸濁した(3分、3000×g、4℃)。細胞を30分間、暗所で染色し、FACScanで解析した。イソプロパノールショックをした細胞を遠心分離し(3分、3000×g)、70%イソプロパノール中へ15分間再懸濁した。次いで、細胞を遠心分離し(3分、3000×g)、脱イオン水中へ3μLナイルレッド原液とともに再懸濁した。
【0149】
細胞を30分間暗所で培養し、FACScanで解析した。1mLの細胞培養物を遠心分離(3分、3000×g)することにより、DMSOショックを実行した。50μLのナイルレッド原液をかかるペレットに直接添加した。かかるペレットを即座にボルテックスし、30sの培養後に水中1mLに希釈した。細胞を暗礁で30分間培養し、FACScanで解析した。コンピテント細胞調製の場合のように、ヒートショックを実行した(Sambrook, J., E. F. Fritsch, and T. Maniatis. 1989. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press)。1mlの細胞を10分間冷却した。次いで細胞を遠心分離し(3分、3000g、4℃)、1mlの冷80mM MgCl/20mM CaCl中に再懸濁した。細胞を遠心分離し(3分、3000g、4℃)、1mLの0.1M CaCl中に3μLナイルレッド原液とともに再懸濁した。細胞を42℃、90sでヒートショックした。細胞を暗所で30分間培養し、次いでFACScanで解析した。
【0150】
濃度最適化:3μLの異なるナイルレッド溶液を用いて、30〜30,000ng/mLの最終濃度へのスクロースショックにより、細胞を作製した。
スクロース濃度最適化:異なるスクロース濃度(0、5、10、15、20%)のTSEバッファーを用いて、スクロースショックにより細胞を作製した。
【0151】
変異体シグマ因子ライブラリーを、上記のようにEscherichia coliへと導入した。最少グルコース培地において、増加した指数増殖期PHBに対し、株を選択した。さらに、また、トランスポゾン突然変異生成を用いて作ったランダムノックアウトライブラリーを試験し、伝統的な菌株改良法の効率に対する転写機構エンジニアリングの効率を比較した。図10Aは、シグマ因子エンジニアリングを用いて得られた様々な株に対するデータ(赤および黄色のバーは対照群を表す)を提供する。比較として、図10Bは、ランダムノックアウトライブラリーから選択された株の結果を提供する。シグマ因子エンジニアリングを用いて得られたいくつかの変異体は、およそ25%dcw(乾燥細胞重量(dry cell weight))のPHBを産生した。シグマ因子エンジニアリングの1ラウンドで得られた最良の株は、ランダムノックアウトを用いて得られた最良の株より、はるかに優れていた。最良の変異体のバックグラウンドにおける突然変異生成の第2のラウンドを、PHB表現型のさらなる改善のために、上記のように実行した。
【0152】
例5:
ライブラリー多様性および構築
シグマ因子ライブラリーのサイズおよび幅は、以下の方法の1つまたは2つ以上のように増加した。
【0153】
(1)かかるライブラリーは、主要なシグマ因子のE. coli(σ70、rpoDによりコードされる)だけでなく、1つまたは2つ以上の代替の形態、例えばrpoS、rpoF、rpoH、rpoN、rpoEおよび/またはfecIを含む。
表現型をさらに改善し、転写機構ユニットの複数の変異体の形式を同時に導入することにより、最適化した株を探索することも可能であり得る。かかる突然変異したシグマ因子遺伝子(または他の包括的な転写機構)を、例えば、2つまたは3つ以上のこれらの遺伝子を共発現する発現カセットを用いて、発現させる。かかる2つまたは3つ以上の遺伝子は、2つまたは3つ以上の同じ型の転写機構(例えば、2つの形式のrpoD)または2つまたは3つ以上の異なる転写機構(例えば、rpoDおよびrpoS)であってもよい。
【0154】
同様に、1つより多い異なる形式の包括的な転写機構は、表現型を適切に最適化するに有益であってもよい。例えば、複数の突然変異したシグマ70(rpo70)遺伝子を共発現させることができる。
【0155】
(2)上記のエラープローンPCRで導入されたランダム変異に加え、かかるライブラリーは、C末端およびN末端の両方、ならびにその組み合わせからの、全ての可能性のある切断を含む。
【0156】
(3)さらに、かかるライブラリーは、かかる領域を人工的に融合することによる、シグマ因子のさまざまな領域の代替のキメラを含む。例えば、シグマ因子70の領域1は、シグマ因子38の領域1を置換するのに用いられる。多様性を作るためのDNAシャッフリングを用いる類似の手段が、業界に周知である(例えば、Maxygenに譲渡された、W. Stemmer et alの遺伝子シャッフリング特許:maxygen.com/science-patentsのリスティングを参照のこと)。
【0157】
(4)他の細菌からのシグマ因子は、E. coliシグマ因子70に関し上記の同じ構造(例えば、ランダム変異、切断、キメラ、シャッフリング)におけるライブラリーに含まれる。これらの因子は、DNA結合の特異的性質を保有してもよく、トランスクリプトーム変化の送達を作るのに役立つかもしれない。
【0158】
例6:
真核細胞における包括的な転写機構エンジニアリング
包括的な転写機構の指向進化を、強化された組み換えタンパク質産生および誘発条件におけるアポトーシスの抵抗性に対して、酵母および哺乳類系(例えば、CHO、HeLa、Hek 細胞系)に適用する。
【0159】
包括的な転写機構(例えば、TFIID)をコードする遺伝子は、エラープローンPCR、切断および/またはDNAシャッフリングを受け、包括的な転写機構変異体の多様なライブラリーを作る。かかるライブラリーを酵母または哺乳類細胞へと導入し、第1の実験において、かかる細胞による組み換えタンパク質の産生を試験する。容易にアッセイ可能なタンパク質は、これらの実験、例えばSEAPまたは蛍光タンパク質(例えば、GFP)に対して好ましい。蛍光タンパク質の場合、蛍光活性化細胞ソーターを用いて選択でき、または、複数ウェルプレートで生育させる場合は、蛍光プレートリーダーを用いてタンパク質産生における増強を決定することができる。
【0160】
第2の実験において、抗アポトーシス表現型を、酵母または哺乳類細胞において試験する。
【0161】
例7:
SDS耐性
包括的な転写機構の指向進化を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)に対する細胞耐性の問題に適用した。
【0162】
変異体rpoDライブラリーを、増加量のSDS(5重量%、次いで15重量%SDS)を含有するLB培地中で次いで継代培養したEscherichia coli DH5αへと導入した。株を、SDS中の増加した耐性に関して選択した。株SDS−2を選択し、再導入して表現型を検証した。株SDS−2を次いで5〜20重量%SDSで試験した。この変異体は上昇したSDSレベルにおいて増加した増殖を有することが見出され、SDSの欠如においての生育に対する有害な効果はなかった。図11はSDSの増加濃度におけるSDS耐性シグマ因子変異体の単離された株の培養物の細胞密度を、かか最良の株からのシグマ因子変異体の配列とともに示す。
【0163】
例8:
複数の表現型のエンジニアリング
包括的な転写機構エンジニアリングを、E. coliにおける複数の耐性表現型を付与する問題へと適用した。エタノールおよびSDS両方への耐性を獲得するために、第1のセットの実験において、株を3つの代替の方策に従って単離した;(i)変異体をエタノールおよびSDSの両方における処置/選別後に単離した、(ii)まずエタノールに対して耐性である変異体を単離し、次いで突然変異生成の追加のラウンドを施し、エタノール/SDS混合物を用いて選別した、そして(iii)まずSDSに対して耐性である変異体を単離し、次いで、追加のラウンドの突然変異生成を施し、エタノール/SDS混合物を用いて選別した。これらの株をさまざまな濃度のエタノールおよびSDSの存在下で生育に関して試験し、成長曲線を得、これらの方策の効率を評価した。かかる実験は、上記の他の例のプロトコールを用いて、実施した。
【0164】
第2のセットの実験において、変異体シグマ因子をエタノール耐性株から単離し、SDS耐性株から単離した変異体シグマ因子とともに共発現させた。これらの実験は、上記の他の例のプロトコールを用いて実施した。
【0165】
例9:
包括的な転写機構エンジニアリング(gTME)の酵母系への拡張
任意の型の細胞系において、タンパク質のサブセットは包括的な遺伝子発現の調製に関与する。そのように、これらのタンパク質は、より高次な生命体の表現型に広く影響を及ぼす多様なトランスクリプトーム修飾にアクセスポイントを提供する。この例により、gTMEの酵母(Saccharomyces cerevisiae)の真核のモデル系への適用が実証される。原核系の転写機構と全く対照的に、真核性の転写機構は、プロモーター特異性を調節することに関連するコンポーネントおよび因子の数に関し、より複雑である。まず、真核系においては、別の機能を有する3つのRNAポリメラーゼ酵素がある一方、原核生物においてはただ1つのみ存在する。
【0166】
さらに、この複雑さの例は、RNA Pol II系の基本転写因子または補助活性化因子として分類される、およそ75の要素で例示される(Hahn、Nat Struct Mol Biol、11(5)、394-403、2004)。基本因子TFIIDの要素は、TATA結合タンパク質(Spt15)および14の他の関連する因子(TAFs)を含み、プロモーター特異性を調節する主なDNA結合タンパク質であると考えられる(Hahn、2004)。さらに、TATA結合タンパク質変異体は、3つのポリメラーゼの優先傾向を変化させることが示され、酵母における全体的な転写を組織化する、極めて重要な役割であると示される(Schultz, Reeder, & Hahn, Cell, 69(4), 697-702, 1992)。この研究の焦点は、転写の主なタンパク質:TATA結合タンパク質(Spt15)およびTAF(TAF25)、であろう。
【0167】
結晶構造は、TATA結合結合タンパク質に関しては入手可能であり、直接的なDNA結合に関するタンパク質部分、ならびにTAFおよびポリメラーゼの部分と結合するタンパク質に関する他の部分を、明示する(Bewley, Gronenborn, & Clore, Annu Rev Biophys Biomol Struct, 27、105-131, 1998;Chasman et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 90(17), 8174-8178, 1993;J. L. Kim, Nikolov, & Burley, Nature, 365(6446), 520-527, 1993)。この構造は、かかるDNAと相互作用する2つの繰り返し領域およびタンパク質と相互作用する2つのらせんからなる。アッセイおよび突然変異解析により、TATA結合タンパク質はプロモーター特異性および包括的な転写において重要な役割を果たすことが示される。さらに、重要な残基が、DNA接触点およびタンパク質相互作用点に対して提示されてきた(Arndt et al., Mol Cell Biol, 12(5), 2372-2382, 1992;J. Kim & Iyer, Mol Cell Biol, 24(18), 8104-8112, 2004;Kou et al., Mol Cell Biol, 23(9), 3186-3201, 2003;Schultz, Reeder, & Hahn, 1992;Spencer & Arndt, Mol Cell Biol, 22(24), 8744-8755, 2002)。
【0168】
かかるTAFは、変動する量の注意を受容してきた。この研究の対象であるTAF25タンパク質は、配列アラインメントを用いて、突然変異解析を介して解析され、多くの遺伝子の転写に影響を及ぼすことが示されてきた(Kirchner et al., Mol Cell Biol, 21(19), 6668-6680, 2001)。このタンパク質は、タンパク質相互作用に決定的である、一連のらせんおよびリンカーを有すると見なされる。これらのタンパク質はgTMEの方法を用いて調査され、対象の2つの表現型が導かれた:(1)モデル浸透圧ストレスに対するLiCl耐性、(2)高いブドウ糖耐性、および(3)高いエタノールおよび高いブドウ糖に対する連立する耐性。
【0169】
方法
本研究で用いたS. cerevisiae 株 BY4741 (MATa;his3D1;leu2D0;met15D0;ura3D0)は、EUROSCARF, Frankfurt, Germanyより得た。それを、YPD培地(10gの酵母エキス/リットル、20gのBacto Peptone/リットルおよび20gのブドウ糖/リットル)で培養した。酵母の形質転換に関し、Frozen-EZ Yeast Transformation II(ZYMO RESEARCH)を用いた。選択マーカーとしてURA3を持つプラスミドを生じる酵母形質転換細胞を選別し生育させるために、6.7gのYeast Nitrogen Base(Difco)/リットル、20gのブドウ糖/リットルおよび適合したヌクレオチドの混合物を含有する、酵母完全合成(yeast synthetic complete (YSC))培地を用い、明細書中でYSC Ura-培地と言及されるアミノ酸(CSM-URA、Qbio遺伝子)を、固体培地に対し、1.5%の寒天とともに添加した。
【0170】
かかるライブラリーを作製し、酵母プロモーターライブラリーの一部として前もって作製したTEF-mut2プロモーターのもとでクローン化した。Taf25遺伝子をゲノムDNAからプライマーであるTAF25_センス:TCGAGTGCTAGCAAAATGGATTTTGAGGAAGATTACGAT (配列番号28)およびTAF25_アンチ:CTAGCGGTCGACCTAACGATAAAAGTCTGGGCGACCT (配列番号29)を用いてクローン化した。Spt15遺伝子をゲノムDNAから、プライマーSPT15_センス:TCGAGTGCTAGCAAAATGGCCGATGAGGAACGTTTAAAGG(配列番号30)およびSPT15_アンチ:CTAGCGGTCGACTCACATTTTTCTAAATTCACTTAGCACA(配列番号31)を用いてクローン化した。遺伝子をGeneMorph II Mutagenesis Kitを用いて突然変異させ、産生物をNheIおよびSalIを用いて短縮させ、XbaIおよびSalIで短縮したプラスミド骨格へと繋げた。かかるプラスミドをE. coli DH5αへと導入し、プラスミドMiniPrep Spin Kitを用いて単離し、酵母へと導入した。プラスミドを、プライマー:Seq_Forward: TCACTCAGTAGAACGGGAGC(配列番号32)およびSeq_Forward: TCACTCAGTAGAACGGGAGC(配列番号32)を用いて配列化した。
【0171】
株を、必要に応じて、200〜400mM LiCl、200〜300g/Lのブドウ糖、および5%エタノール/100g/Lブドウ糖〜6%エタノール/120g/Lブドウ糖中での連続サブクローニングにより単離した。細胞を選択培地プレート上へと撒いて単離し、性能に関してアッセイした。プラスミドを単離し、再導入して、生物学的複製における表現型を再確認した。
【0172】
LiCl耐性
浸透圧ストレス反応および耐性は、細胞における、複雑で、多面的な反応である。酵母に関し、およそ100mMの上昇したLiCl濃度により浸透圧ストレスを誘発することが示されてきた(Haro, Garciadeblas, & Rodriguez-Navarro, FEBS Lett, 291(2), 189-191, 1991;Lee, Van Montagu, & Verbruggen, Proc Natl Acad Sci U S A, 96(10), 5873-5877, 1999;Park et al., Nat Biotechnol, 21(10), 1208-1214, 2003)。TBPまたはTAF25のいずれかの変異体形式を保因する酵母細胞ライブラリーを、200〜400mMのLiClの存在下で連続継代培養した。株を単離および再転換し、かかる表現型は変異体因子の成果であることを再実証した。興味深いことに、それぞれのライブラリーからの最良の株は、LiClに対して変動する改善を示した。かかるTAF25は、低LiCl濃度において、それぞれのTAF非変異対照群より優れていたが、約200mMの濃度においては有効ではなかった。逆に、SPT15変異体は、150〜400mMの上昇レベルにおいて対照群よりも優れるものとできた。それぞれの場合において、LiCl欠如における増殖表現型は、かかる変異体因子の存在により影響を及ぼされなかった。増殖収率における改善の概要を図12において提示する。配列解析(図13)により、LiCl耐性における改善はそれぞれのタンパク質における単一の変異により制御され、SPT変異は非保存領域で生じた。
【0173】
高ブドウ糖耐性
高ブドウ糖発酵が、酵母のバッチ培養から産生された、増加されたエタノールに関して探究されてきた。しかしながら、これらの「非常に高い重大な(gravity)発酵」は、しばしば、細胞増殖に対し極めて阻害性であり、典型的には細胞を変更することよりむしろ、培地組成物を変更することにより処置される(Bafrncova et al., Biotechnology Letters, 21(4), 337 - 341, 1999;Bai et al., J Biotechnol, 110(3), 287-293, 2004;Thatipamala, Rohani, & Hill, Biotechnology and Bioengineering, 40(2), 289-297, 1992)。gTMEを用いてこの問題を探求するために、TBPまたはTAF25のいずれかの変異体形式を保因する酵母細胞ライブラリーを、200〜400g/Lのブドウ糖の存在下で連続継代培養した。株を単離し、再導入して、かかる表現型がかかる変異体因子の成果であることを再実証した。
【0174】
株は、16時間の培養後、細胞密度において2〜2.5倍の増加を示した。LiClの場合と異なり、TAF25およびSPT15の両方のタンパク質は、150〜250g/Lの間で生じる、対照群に対する最大の改善で、上昇したブドウ糖に対する類似の反応を示した。しかしながら、かかるSPT15変異体は、TAF25に対して大きな改善を示した。図14はこれらの変異体の増殖の改善を提示し、配列は図15で提示される。この場合、両方のタンパク質はたった1つの変異しか有しなかったが、しかしながらいくつかの準最適な変異体がSPT15タンパク質に対して単離され、それらのうちいくらかは7もの変異を有していた。ここで示される両方の変異は公知のタンパク質接触領域、特にTAF25タンパク質におけるI143残基に配置される。
【0175】
エタノールおよびブドウ糖の複合耐性
酵母に関するバイオエタノールの成功的な発酵は、高ブドウ糖およびエタノール濃度の両方に対する耐性を必要とする。この目的を達成するために、複合耐性表現型を、エタノールおよびブドウ糖の上昇レベル(5%および100g/L)へと両方の変異体ライブラリーを同時に処置することを介して、試験した。単離された株を再導入し、5および6%エタノールの存在下のブドウ糖濃度の範囲下でアッセイした。興味深いことに、かかるSPT15変異体は試験をした全ての濃度において対照群より優れており、いくつかの濃度においては13倍もの改善であった。この改善は、6%エタノールの存在下で増殖できなかったTAF25変異体の全体の改善をはるかに超えていた。図16はこれらの最良の株の成長解析を表示し、配列は図17で提供される。かかる変異体転写機構の導入を介して達成される改善は、他の手段の改善された細胞表現型を介して得られた改善をはるかに凌いだ。さらに、これらの結果により、高い引力(gravity)の発酵を用いる高いエタノール産生の生育可能なソースとして酵母を使用する存在性を促進させる。
【0176】
当業者は、定常的な実験のみ用いて、本明細書中に記載される発明の具体的態様の多くの同等物を認識するであろうし、または再確認することができる。そのような同等物は、以下の請求の範囲に包含されると意図する。
明細書中で開示される全ての引例は、その全体を引例として組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】包括的な転写機構エンジニアリングの基本的な手順を描く図である。
【図2A】変異体因子の指向進化のさまざまなラウンドを介する表現型の全体的な増強を示すグラフである。
【図2B】σ70タンパク質上の変異の位置を、既に同定された決定的な機能領域に関して指し示す図である。
【図2C】ラウンド3の変異体および対照株に対する成長曲線を示すグラフである。
【図2D】エタノール耐性変異体シグマ因子のエタノール耐性変異体のアミノ酸配列アラインメントである。
【図3A】σ70タンパク質領域の酢酸塩およびpHBA変異体の変異の位置を、既に同定された決定的な機能領域に関して指し示す図である。
【図3B】酢酸塩耐性変異体シグマ因子のアミノ酸配列アラインメントである。
【図3B−1】酢酸塩耐性変異体シグマ因子のアミノ酸配列アラインメントである。
【図3C】pHBA耐性変異体シグマ因子のアミノ酸配列アラインメントである。
【0178】
【図4】単離された株の、ヘキサン耐容性シグマ因子変異体との培養物の細胞密度を描く図、および最良のヘキサン耐容性変異体である、Hex−12およびHex−18の配列である。
【図5】図5は、単離された株の、シクロヘキサン耐容性シグマ因子変異体との培養物の細胞密度を示すグラフである。
【図6】図6は、増加濃度のナリジクス酸における、抗生物質抵抗性シグマ因子変異体の単離された株の培養物の細胞密度を描くグラフである。
【図7A】図7Aは、15および24時間における、リコピン生産に関して選別された株の培養およびアッセイの結果を示すグラフ、および最良の株からのシグマ因子変異体の配列である。
【図7B】図7Bは、15および24時間における、リコピン生産に関して選別された株の培養およびアッセイの結果を示すグラフ、および最良の株からのシグマ因子変異体の配列である。
【図7C】図7Cは、15および24時間における、リコピン生産に関して選別された株の培養およびアッセイの結果を示すグラフ、および最良の株からのシグマ因子変異体の配列である。
【図7D】図7Dは、15および24時間における、リコピン生産に関して選別された株の培養およびアッセイの結果を示すグラフ、および最良の株からのシグマ因子変異体の配列である。
【図8】図8は、コントロールに対し発酵の間に達成されるリコピン生産における最大の倍増を描くドットプロットである。
【図9】図9は、いくつかの対象の株に対する、15時間後のリコピン含有量を描く図である。
【0179】
【図10A】図10Aは、シグマ因子エンジニアリングを用いて獲得された、さまざまな株(赤色および黄色のバーは対照群を表す)に対する結果を表すグラフである。
【図10B】図10Bは、トランスポゾン突然変異生成を用いて作られたランダムノックアウトライブラリーから選択された株の結果を表すグラフである。
【図11】図11は、増加した濃度のSDSにおける、SDS耐性シグマ因子変異体の耐容株の培養物の細胞密度を示すグラフ、および最良の株からのシグマ因子変異体の配列である。
【図12】図12は、酵母における、LiCl gTME変異体の成長解析を示すグラフである。
【図13】図13は、酵母における、LiCl gTME変異体の配列解析である。
【図14】図14は、酵母における、ブドウ糖gTME変異体の成長解析を示すグラフである。
【図15】図15は、酵母におけるブドウ糖gTME変異体の配列解析である。
【図16】図16は、酵母における、エタノール−ブドウ糖gTME変異体の成長解析を示すグラフである。
【図17】図17は、酵母における、エタノール−ブドウ糖gTME変異体の配列解析である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の表現型を変化するための方法であって、
包括的な転写機構、および随意にそのプロモーターをコードする核酸を変異させること、
前記核酸を細胞に発現させ、変異した包括的な転写機構を含む、変化した細胞を提供すること、および、
前記変化した細胞を培養すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
変化した細胞の表現型を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸の変異を繰り返し、第n世代の変化した細胞を産生することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第n世代の変化した細胞の表現型を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
包括的な転写機構の変異の繰り返しのステップが、変異した包括的な転写機構をコードする核酸、および随意にそのプロモーターを変化した細胞から単離すること、前記核酸を変異させること、ならびに前記変異した核酸を別の細胞へと導入することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
細胞が原核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
原核細胞が細菌細胞または古細菌細胞である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
包括的な転写機構がシグマ因子またはアンチシグマ因子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シグマ因子をコードする核酸がrpoD(σ70)遺伝子、rpoF(σ28)遺伝子、rpoS(σ38)遺伝子、rpoH(σ32)遺伝子、rpoN(σ54)遺伝子、rpoE(σ24)遺伝子またはfecI(σ19)遺伝子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シグマ因子またはアンチシグマ因子が発現ベクターから発現される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
細胞が真核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
真核細胞が酵母細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
真核細胞が植物細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
真核細胞が昆虫細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
真核細胞が幹細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
真核細胞が真菌細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
真核細胞が多細胞生物に含有される、請求項11〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
核酸が、細胞において組織特異性プロモーター、細胞特異性プロモーター、または細胞小器官特異性プロモーターから発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
包括的な転写機構が、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、またはRNAポリメラーゼIII、あるいはRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、またはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターに結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
包括的な転写機構がTFIIDまたはそのサブユニットである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
サブユニットがTATA結合タンパク質(TBP)またはTBP関連因子(TAF)、例えばTAF25である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
包括的な転写機構をコードする核酸が、GAL11遺伝子、SIN4遺伝子、RGR1遺伝子、HRS1遺伝子、PAF1遺伝子、MED2遺伝子、SNF6遺伝子、SNF2遺伝子またはSWI1遺伝子である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
包括的な転写機構が、核酸メチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチラーゼまたはヒストンデアセチラーゼである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
包括的な転写機構が発現ベクターから発現される、請求項20または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
核酸が真核細胞の細胞小器官の核酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
細胞小器官がミトコンドリアまたは葉緑体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
核酸が発現ベクターの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
核酸が核酸の集団の一員である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
細胞に集団を導入することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
核酸を発現させるステップが、核酸をゲノム中へと融合させること、または内因性の包括的な転写機構をコードする核酸を置換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
核酸の変異が核酸の指向進化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
指向進化がエラープローンPCRによる変異を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
指向進化が遺伝子シャッフリングによる変異を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
核酸の変異が、核酸を1つまたは2つ以上の変異とともに合成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
核酸の変異が1つまたは2つ以上の点変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
核酸の変異が1つまたは2つ以上の切断または欠失である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
包括的な転写機構のプロモーター結合領域が、1つまたは2つ以上の切断または欠失によって中断または除去されない、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
変異した包括的な転写機構が、非変異の包括的な転写機構に相対した増加した遺伝子の転写を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
変異した包括的な転写機構が、非変異の包括的な転写機構に相対した低下した遺伝子の転写を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
変異した包括的な転写機構が、非変異の包括的な転写機構に相対した増加した遺伝子転写の抑制を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
変異した包括的な転写機構が、非変異の包括的な転写機構に相対した低下した遺伝子転写の抑制を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
既定の表現型へと変化した細胞を選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
選択のステップが、変化した細胞を選択条件下で培養することを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
選択のステップが表現型に対する個々の細胞のハイスループットアッセイを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
表現型が、有害な培養条件への増加した耐性である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
表現型が溶媒耐性または有害廃棄物耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
溶媒がエタノール、ヘキサンまたはシクロヘキサンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
表現型が工業媒体への耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
表現型が高糖分濃度への耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
表現型が高塩分濃度または浸透圧ストレスへの耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
表現型が高温への耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
表現型が極度のpHへの耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
表現型が界面活性剤への耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
表現型が複数の有害な条件への耐性、例えば高糖分濃度および高エタノール濃度の耐性である、請求項46に記載の方法。
【請求項56】
表現型が増加した代謝産生物産生である、請求項43に記載の方法。
【請求項57】
代謝産生物がリコピンまたはエタノールである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
代謝産生物がポリヒドロキシブチレート(PHB)である、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
代謝産生物が治療用タンパク質である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
治療用タンパク質が抗体または抗体断片である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
表現型が毒性基質、代謝中間体または産生物に対して耐性である、請求項43に記載の方法。
【請求項62】
毒性代謝産生物が有機溶媒である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
毒性代謝産生物が酢酸またはパラ−ヒドロキシ安息香酸(pHBA)である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
毒性代謝産生物が過剰発現したタンパク質である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
表現型が抗生物質抵抗性である、請求項43に記載の方法。
【請求項66】
表現型がアポトーシスに対する増加した抵抗性である、請求項43に記載の方法。
【請求項67】
細胞が多細胞物に含有される、請求項43〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
表現型が、1つまたは2つ以上の成長特性、世代時間、1つまたは2つ以上の疫病または疾患に対する抵抗性、植物の果実またはその他の部分の産生、1つまたは2つ以上の発育変動、1つまたは2つ以上の寿命変化、機能の獲得または損失、および/または増加したロバスト性である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
方法において使用される細胞が、包括的な転写機構の変異に先立ち、表現型に対して最適化される、請求項1に記載の方法。
【請求項70】
変化した細胞における遺伝子発現の変化を同定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項71】
遺伝子発現の変化を核酸マイクロアレイを用いて決定する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
細胞の表現型を変化させるための方法であって、
第2の細胞における遺伝子発現の変化を検出するために同定される第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させ、そこにおいて前記第2の細胞における遺伝子発現の変化が前記第2の細胞の包括的な転写機構を変異させることにより産生されること、
を含む、前記方法。
【請求項73】
第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させることが、第2の細胞において増加する1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を増加させることを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現が、第1の細胞へ1つまたは2つ以上の遺伝子産生物を発現する1つまたは2つ以上の発現ベクターを導入することにより、増加される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現が、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物をコードする1つまたは2つ以上の内因性遺伝子の転写を増加させることにより、増加される、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
1つまたは2つ以上の内因性遺伝子の転写を増加させることが1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御配列を変異させることを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
第1の細胞における1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を変化させることが、変化した細胞において低下した1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を減少させることを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現が、第1の細胞へ1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現を低下させる核酸分子を導入することにより低下させる、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
核酸分子がsiRNA分子であるか、またはsiRNA分子を発現する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
1つまたは2つ以上の遺伝子産生物の発現が、1つまたは2つ以上の遺伝子産生物をコードする1つまたは2つ以上の遺伝子、あるいは前記1つまたは2つ以上の遺伝子の転写制御配列を変異させることにより低下される、請求項77に記載の方法。
【請求項81】
第2の細胞における遺伝子発現の変化が、核酸マイクロアレイを用いて決定される、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
第2の細胞における遺伝子発現の変化が、遺伝子またはタンパク質ネットワークのモデルを構築するために用いられ、そこにおいて、前記モデルが1つまたは2つ以上の遺伝子産生物のいずれが変化するかを選択するために用いられる、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
包括的な転写機構が1つより多い核酸および/またはポリペプチドを含む、または1つより多い核酸によりコードされる、請求項1〜82のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
請求項1〜83のいずれかに記載の方法により産生される細胞。
【請求項85】
代謝産生物の産生を変化させるための方法であって、
請求項1〜83のいずれかに記載の方法に従って、変化した細胞を産生する選択された代謝産生物を産生する細胞の包括的な転写機構を変異させること、および、
増加したまたは減少した量の前記選択された代謝産生物を産生する変化した細胞を単離すること、
を含む、前記方法。
【請求項86】
請求項85に記載の方法であって、前記方法が、
単離された細胞を培養すること、および、
前記細胞または前記細胞培養物から代謝産生物を回収すること、
をさらに含む、前記方法。
【請求項87】
代謝産生物がリコピンまたはエタノールである、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
代謝産生物がポリヒドロキシブチレート(PHB)である、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
代謝産生物が治療用タンパク質である、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
治療用タンパク質が組み換えタンパク質である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
治療用タンパク質が抗体または抗体断片である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
細胞が原核細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項93】
原核細胞が細菌細胞または古細菌細胞である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
細胞が真核細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
真核細胞が酵母細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
真核細胞が植物細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項98】
真核細胞が昆虫細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項99】
真核細胞が幹細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項100】
真核細胞が真菌細胞である、請求項94に記載の方法。
【請求項101】
包括的な転写機構が真核細胞の細胞小器官の核酸によりコードされる、請求項85に記載の方法。
【請求項102】
細胞小器官がミトコンドリアまたは葉緑体である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
複数の異なる核酸分子種を含む集団であって、個々の核酸分子種が異なる変異を含む包括的な転写機構をコードする、前記集団。
【請求項104】
包括的な転写機構がシグマ因子またはアンチシグマ因子である、請求項103に記載の集団。
【請求項105】
シグマ因子をコードする核酸が、rpoD(σ70)遺伝子、rpoF(σ28)遺伝子、rpoS(σ38)遺伝子、rpoH(σ32)遺伝子、rpoN(σ54)遺伝子、rpoE(σ24)遺伝子またはfecI(σ19)遺伝子である、請求項104に記載の集団。
【請求項106】
包括的な転写機構が、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIII、あるいはRNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIのプロモーターに結合する、請求項C1に記載の集団。
【請求項107】
包括的な転写機構がTFIIDまたはそのサブユニットである、請求項106に記載の集団。
【請求項108】
サブユニットがTATA結合タンパク質(TBP)またはTBP関連因子(TAF)、例えばTAF25である、請求項107に記載の集団。
【請求項109】
包括的な転写機構が、核酸メチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアセチラーゼまたはヒストンデアセチラーゼである、請求項103に記載の集団。
【請求項110】
核酸分子種が発現ベクターに含有される、請求項103に記載の集団。
【請求項111】
核酸が組織特異性プロモーター、細胞特異性プロモーター、または細胞小器官特異性プロモーターから発現される、請求項110に記載の集団。
【請求項112】
発現ベクターが複数の異なる核酸分子種を含有し、それぞれの核酸分子種が異なる包括的な転写機構をコードする、請求項110に記載の集団。
【請求項113】
包括的な転写機構が指向進化により変異される、請求項103に記載の集団。
【請求項114】
指向進化がエラープローンPCRを用いて実行される、請求項113に記載の集団。
【請求項115】
指向進化が遺伝子シャッフリングを用いて実行される、請求項113に記載の集団。
【請求項116】
包括的な転写機構における変異が1つまたは2つ以上の点変異である、請求項103に記載の集団。
【請求項117】
包括的な転写機構における変異が1つまたは2つ以上の切断または欠失である、請求項103に記載の集団。
【請求項118】
切断が包括的な転写機構のプロモーター結合領域を含まない、請求項117に記載の集団。
【請求項119】
細胞の包括的な転写機構が請求項1〜83のいずれかに記載の方法に従って変異される、請求項103に記載の集団。
【請求項120】
請求項103〜119のいずれかに記載の核酸分子の集団を含む細胞の集団。
【請求項121】
複数の細胞を含み、前記複数の細胞のそれぞれが1つまたは2つ以上の核酸分子を含む、請求項120に記載の集団。
【請求項122】
細胞が原核細胞である、請求項120に記載の集団。
【請求項123】
原核細胞が細菌細胞または古細菌細胞である、請求項122に記載の集団。
【請求項124】
細胞が真核細胞である、請求項120に記載の集団。
【請求項125】
真核細胞が酵母細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項126】
真核細胞が哺乳類細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項127】
真核細胞が植物細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項128】
真核細胞が昆虫細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項129】
真核細胞が幹細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項130】
真核細胞が真菌細胞である、請求項124に記載の集団。
【請求項131】
核酸分子が細胞のゲノムへと融合する、または内因性の包括的な転写機構をコードする核酸を置換する、請求項120に記載の集団。
【請求項132】
複数のラウンドの変異により産生される包括的な転写機構をコードする、核酸。
【請求項133】
複数のラウンドの変異が指向進化を含む、請求項132に記載の核酸。
【請求項134】
指向進化がエラープローンPCRによる変異を含む、請求項133に記載の核酸。
【請求項135】
指向進化が遺伝子シャッフリングによる変異を含む、請求項133に記載の核酸。
【請求項136】
核酸が複数の異なる包括的な転写機構種をコードする、請求項132に記載の核酸。
【請求項137】
核酸が複数の異なるバージョンの同じ型の包括的な転写機構種をコードする、請求項132に記載の核酸。
【請求項138】
請求項132〜136に記載の核酸によりコードされる包括的な転写機構。
【請求項139】
(カルボキシ末端)領域4を含む、切断されたシグマ因子タンパク質。
【請求項140】
選択された廃棄物のバイオレメディエーションのための方法であって、
請求項1〜83のいずれかに記載の方法に従って、変化した細胞を産生する細胞の包括的な転写機構を変異させること、
変化しない細胞に相対して増加した量の選択された廃棄物を代謝する変化した細胞を単離すること、
前記単離された細胞を培養すること、および、
前記変化した細胞を前記選択された廃棄物へと暴露し、それにより前記選択された廃棄物のバイオレメディエーションを提供すること、
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3B−1】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−509533(P2009−509533A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533553(P2008−533553)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037597
【国際公開番号】WO2007/038564
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】