説明

包装シート

【課題】本発明の課題は、保管中に薬剤が変質することを抑制する包装シートを提供することである。さらに、本発明の目的は、お年寄り又は手先の不自由な患者であっても、包装シートから容易に薬剤を取り出すことができる包装シートを提供することである。
【解決手段】本発明に係る包装シート100は、本体シート200と、封止部材300とを備える。本体シート200は、凹部230を有する。封止部材300は、凹部230の開口を覆うように、本体シート200にシールされる。本体シート200および封止部材300の少なくとも一方は、特定気体および光の少なくとも一方に対してバリア性を有する。凹部230は、複数個の薬剤T3が収納可能な大きさを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の薬剤を飲む患者が、薬剤を飲み忘れたり、薬剤を飲み間違えたりすることを防止するために、病院および調剤薬局では複数個の薬剤を一包化することが行われている。例えば、このような一包化用の薬剤パックとして、複数個の凹部を有する容器と、容器を密封するシールを有する台紙とを備える薬剤パックが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この薬剤パックは、1個の凹部に複数個の薬剤を収納することで、薬剤を一包化することができる。さらに、このシールおよび台紙には、薬剤を服用する曜日、時間帯および日付が記載されている。そのため、患者は薬剤を服用する時期を誤りにくい。さらに、医師、薬剤師および看護師などは、薬剤パックの空の凹部を確認することで、患者が適切に薬剤を服用したか否かを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の薬剤パックの容器の材料として、水蒸気および紫外線などに対してバリア性を十分に有していない材料、例えば、ポリエチレンテレフタラート等が用いられる。そのため、この薬剤パックに収納された薬剤は、水蒸気および紫外線などの影響で保管中に変質するおそれがある。また、この薬剤パックでは、シールを破って薬剤が取り出される。そのため、お年寄り又は手先の不自由な患者が力不足でシールを破ることができず、薬剤を薬剤パックから取り出すことができないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、保管中に薬剤が変質することを抑制する包装シートを提供することである。また、本発明の目的は、お年寄り又は手先の不自由な患者であっても、包装シートから容易に薬剤を取り出すことができる包装シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る包装シートは、本体シートと、封止部材とを備える。本体シートは、凹部を有する。封止部材は、凹部の開口を覆うように、本体シートにシールされる。本体シートおよび封止部材の少なくとも一方は、特定気体および光の少なくとも一方に対してバリア性を有する。凹部は、複数個の薬剤が収納可能な大きさを有する。
【0007】
この包装シートは、1個の凹部に複数個の薬剤を収納することで、薬剤を一包化することができる。また、包装シートは、外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限し、保管中に薬剤が変質することを抑制する。そのため、包装シートは、薬剤を長期間保管することができる。なお、特定気体とは、包装シートの薬剤に悪影響を及ぼす気体、具体的に水蒸気および酸素などである。光とは、具体的に紫外線などである。
【0008】
(2)
本発明に係る包装シートは、本体シートと、封止部材とを備える。本体シートは、凹部を有する。封止部材は、凹部の開口を覆うように、本体シートにシールされる。また、封止部材は、本体シートから易剥離可能である。凹部は、複数個の薬剤が収納可能な大きさを有する。
【0009】
この包装シートでは、1個の凹部に複数個の薬剤を収納することで、薬剤を一包化することができる。また、包装シートでは、封止部材は本体シートから易剥離可能なように本体シートにシールされる。そのため、お年寄り又は手先の不自由な患者は、包装シートから薬剤を容易に取り出すことができる。
【0010】
(3)
上述(1)または(2)の包装シートでは、本体シートは、複数個の凹部を有することが好ましい。本体シートおよび封止部材の少なくとも一方には、凹部に収納された薬剤を服用する曜日、時間帯および日付の少なくとも1つが、凹部にそれぞれ対応するようにして記載される。
【0011】
この包装シートには、凹部に収納された薬剤を服用する曜日、時間帯および日付の少なくとも1つが記載されているので、患者は薬剤を服用する時期を誤りにくい。また、包装シートでは、医師、薬剤師、看護師などは、空となった凹部に対応する記載を確認することで、患者が薬剤を服用したか否かを確認することができ、かつ、患者が薬剤を服用した時期を確認することができる。
【0012】
(4)
上述(1)〜(3)のいずれかの包装シートでは、凹部は、複数の区画を有することが好ましい。
【0013】
この包装シートは、各区画に異なる種類の薬剤をそれぞれ収納することができる。そのため、包装シートは、異なる種類の薬剤が互いに直接接触して反応することを防止する。よって、包装シートでは、保管中に薬剤が変質することを抑制する。
【0014】
(5)
上述(1)〜(4)のいずれかの包装シートでは、本体シートの厚みは、30μm以上800μm以下であることが好ましい。
【0015】
本体シートの厚みが上記範囲内の値のとき、本体シートは良好な剛性を持つ。そのため、包装シートは、外部からの力で破損しにくい。よって、包装シートは、包装シートの破損を防止するための保護カバー等を用いることなく、ポケットおよび鞄などにそのまま入れて持ち運ぶことができる。
【0016】
(6)
上述(1)〜(5)のいずれかの包装シートでは、本体シートおよび封止部材の少なくとも一方は、透明性を有することが好ましい。
【0017】
この包装シートは、収納された薬剤を視認することができる。よって、包装シートでは、病院および調剤薬局などにおいて薬剤の渡し間違いを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る包装シートは、保管中に薬剤が変質することを抑制する。また、本発明に係る包装シートは、お年寄り又は手先の不自由な患者であっても、包装シートから容易に薬剤を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装シートの表面の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る包装シートの裏面の平面図である。
【図3】図1に示した包装シートのA−A線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例(A)に係る包装シートの表面の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例(B)に係る包装シートの表面の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態の変形例(C)に係る包装シートの裏面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜3に示されるように、本発明の一実施形態に係る包装シート100は、主に、本体シート200および封止部材300から構成され、異なる種類の錠剤である薬剤T1〜T3を収納する。以下、本体シート200および封止部材300について、それぞれ詳しく説明する。
【0021】
<本体シート>
本体シート200は、図1、3に示されるように、主に、基層210およびバリア層220から構成され、複数の凹部230を有する。また、この本体シート200は、透明性を有する。封止部材300がヒートシールされた本体シート200は、基層210側で封止部材300と密着している。なお、本体シート200は、バリア層220を備えず、バリア性を有する基層210のみから構成されてもよい。
【0022】
本体シート200の厚みは、30μm以上800μm以下であることが好ましく、50μm以上600μm以下であることがより好ましく、100μm以上400μm以下であることが最も好ましい。本体シート200の厚みが30μm以上であるので、凹部230の潰れ又は破れが生じにくくなると共に、本体シート200のバリア性が向上する。また、本体シート200の厚みが800μm以下であるので、本体シート200の透明性が標準の本体シートの透明性に比べて低下しにくい。
【0023】
基層210の材料として、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの各種樹脂が用いられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、複数の種類を共重合させて用いられてもよいし、複数の種類をブレンドさせて用いられてもよい。基層210の厚みは、30μm以上800μm以下であることが好ましい。
【0024】
基層210を形成する樹脂に、本発明の趣旨が損なわれない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料、顔料、難然剤、可塑剤、結晶造核剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0025】
バリア層220は、包装シート100の外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限する。そのため、包装シート100は、薬剤T1〜T3を長期間保管することができる。特定気体とは、薬剤T1〜T3に悪影響を及ぼす気体、例えば、水蒸気および酸素などである。光とは、具体的に紫外線などである。
【0026】
特定気体である水蒸気をバリアすることを目的としたバリア層220の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、環状ポリオレフィン等の水分バリア性を有する樹脂が用いられる。このバリア層220を有する本体シート200にかかる透湿度は、10g/m・24h以下であることが好ましく、5g/m・24h以下であることがより好ましい。なお、この本体シート200の透湿度の測定は、本体シート200の材料となるシート(以下、「材料シート」という)の透湿度をJIS Z 0208に準拠して測定することによって行われる。この材料シートの厚みは、凹部230が形成される前の本体シート200の厚みと同じである。
【0027】
特定気体である酸素をバリアすることを目的としたバリア層220の材料として、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(エチレン−ポリビニルアルコール共重合体)等が用いられる。
【0028】
紫外線をバリアすることを目的としたバリア層220の材料として、例えば、紫外線吸収剤または顔料を含有する樹脂薄膜などが用いられる。このバリア層220を有する本体シート200にかかる光線透過曲線の90%吸収波長は、600nm以下であることが好ましい。なお、この本体シート200の光線透過曲線の90%吸収波長の測定は、本体シート200の材料シートの光線透過曲線の90%吸収波長を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、品名:V−650)で測定することによって行われる。この材料シートの厚みは、凹部230が形成される前の本体シート200の厚みと同じである。
【0029】
特定気体および光をバリアするバリア層220の材料として、例えば、透明樹脂フィルムに、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物などの無機酸化物からなる蒸着薄膜層が形成されたものが用いられる。なお、このバリア層220では、必要に応じて、透明樹脂フィルム上に透明プライマー層が形成されてもよいし、または蒸着薄膜層上にガスバリア被膜層が形成されてもよい。
【0030】
バリア層220が樹脂層である場合、バリア層220の厚みは、30μm以上800μm以下であることが好ましい。また、バリア層220が有機珪素化合物、金属または金属酸化物の蒸着膜層である場合、バリア層220の厚みは、0.5nm以上400nm以下であることが好ましい。
【0031】
凹部230は、収納する薬剤T1〜T3の個数、種類、大きさ等に応じた任意の形状およびサイズ、例えば、上壁を有する円筒形の形状で直径20mm、深さ10mmのサイズで形成される。1つの凹部230の内部空間に、患者が1回あたりで服用する薬剤T1〜T3が収納される。すなわち、薬剤T1〜T3は、凹部230に収納されることで一包化される。
【0032】
凹部230は、従来の包装シートの凹部よりもサイズが大きいことが望ましい。そのため、包装シート100では、もし患者が凹部230を1個だけ切り離した場合であっても、この切り離した凹部230を患者が誤って飲み込んでしまうおそれがない。
【0033】
凹部230として、朝用、昼用および夜用の3種類のものが形成される(図1参照)。例えば、朝用の凹部230には、朝に患者が1回あたりで服用する薬剤T1が1個、薬剤T2が2個収納される。昼用の凹部230には、昼に患者が1回あたりで服用する薬剤T3が1個収納される。夜用の凹部230には、夜に患者が1回あたりで用する薬剤T1、T2、T3が1個ずつ収納される。
【0034】
図1に示されるように、包装シート100の表面の上部分には、横方向Wに沿って時間帯を表す「朝」、「昼」、「夜」の文字が記載されている。また、包装シート100の表面の左側部分には、縦方向Hに沿って曜日を表す「月」〜「金」の文字、および日付を表す「1/1」〜「1/7」の文字が記載されている。これら曜日、時間帯および日付の記載に対応するようにして、凹部230は、横方向Wに沿って3個ずつ、縦方向Hに沿って7個ずつ配置される。包装シート100の表面の曜日、時間帯および日付の文字の記載は、本体シート200を透過して見えている封止部材300の表面に印刷された記載である。
【0035】
本体シート200の材料シートは、例えば、T−ダイ押出成形、インフレーション押出成形などによって形成される。凹部230は、例えば、本体シート200の材料シートを加熱プレス装置で加熱プレスすることによって形成される。また、本体シート200と封止部材300とのシールは、例えば、薬剤T1〜T3が収納された本体シート200に封止部材300がシール機でヒートシールされることによって行われる。この本体シート200と封止部材300とのヒートシールによって、凹部230の開口が封止部材300で覆われ、凹部230の内部空間が密封される。
【0036】
<封止部材>
図2、3に示されるように、封止部材300は、主に、基材層310、接着剤層320、クッション層330およびヒートシール層340から構成される。各層310、320、330、340は、この順で積層されている。この封止部材300は、めくり部350と、強シール部360と、スリット370とを有する(図2参照)。また、本体シート200にヒートシールされた封止部材300は、ヒートシール層340側で本体シート200と密着し、本体シート200から易剥離可能である。
【0037】
基材層310は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ABS樹脂などの樹脂から形成される。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、複数の種類を共重合させて用いられてもよいし、複数の種類をブレンドさせて用いられてもよい。基材層310の機械的強度を向上させるとき、基材層310は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66などの樹脂から形成されることが好ましい。
【0038】
基材層310の材料として、包装シート100の機械的強度を高めるために、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。基材層310の厚さは、12μm以上200μm以下であることが好ましく、16μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上50μm以下であることが特に好ましい。基材層310はカレンダー成形、T−ダイ押出し成形、またはインフレーション押出成形などによって形成される。
【0039】
接着剤層320は、フィルム等の被着体を貼り合わせるためのフィルム用接着剤として用いられる公知の接着剤樹脂から形成されることが好ましい。1液型の接着剤樹脂の場合、接着剤樹脂の材料としては、具体的に、エステル系樹脂、エーテル系樹脂などが挙げられる。2液型の接着剤樹脂の場合、接着剤樹脂の主剤としては、エステル系樹脂またはエーテル系樹脂が挙げられるが、エステル系樹脂が好ましい。接着剤樹脂の硬化剤としては、芳香族系硬化剤、脂肪族系硬化剤が挙げられる。また、接着剤樹脂は、溶剤を用いて扱われることが多く、溶剤に添加されて用いられる場合には、非水系であることが好ましい。接着剤層320は、加工容易性および低コスト化という点から、コーティング法などによって基材層310上に形成される。
【0040】
クッション層330は、少なくとも1層からなり、封止部材300が本体シート200にヒートシールされるときに、クッション的な役割を果たす。また、クッション層330は、封止部材300が本体シート200から剥離されるときの種々の剥離機構を達成する役割も果たす。転写剥離機構の場合、クッション層330は、接着剤層320との相性を考慮した層を含む。凝集破壊剥離機構の場合、クッション層330は、接着剤層320と隣り合う層に凝集破壊する層を含む。界面剥離機構の場合、クッション層330は、単層でもかまわないが、封止部材300に滑り性を付与するために、多層とすることが有効である。また、クッション層330は、安価で実施しやすいという点から、ドライラミネート法、共押出し法および押出ラミネート法などによって接着剤層320上に形成される。
【0041】
転写剥離機構の場合、クッション層330の材料には、接着剤層320に転写しやすく、かつ、低コストな材料として、オレフィン系樹脂、またはエラストマー系樹脂の材料が用いられる。また、クッション層330の材料としては、オレフィン系樹脂の場合は、クッション性の観点からポリエチレン系樹脂の素材が好ましく、低温シール性の観点から低密度ポリエチレンが特に好ましい。エラストマー系樹脂の場合は、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが好ましい。
【0042】
凝集破壊剥離機構の場合、クッション層330の材料には、ポリエチレンやオレフィン系樹脂の材料が用いられる。また、封止部材300を破壊しやすくするために、クッション層330の材料には、ポリエチレン、オレフィン系樹脂の材料と相溶しにくい副成分が混ぜられることが好ましい。相溶しにくい副成分としては、スチレン系樹脂の材料、例えば、ポリスチレンまたはポリアクリルスチレン等が用いられる。
【0043】
界面剥離機構の場合、クッション性と、クッション層330と接着剤層320との密着性とが必要であるため、クッション層330の材料には、スチレン系樹脂の材料が用いられる。ヒートシール時の伝熱の点から、クッション層330の厚みは、5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0044】
ヒートシール層340の材料として、アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂などが用いられる。ヒートシール層340は、グラビアコーティング法などによってクッション層330上に形成される。
【0045】
図2に示されるように、めくり部350は、封止部材300を本体シート200から剥離させるときにつまむ箇所である。めくり部350は、封止部材300が本体シート200にヒートシールされるとき、めくり部350となる箇所(図2の薄い灰色の箇所)をヒートシールしないことで形成される。また、めくり部350は、平面視において、縦方向Hに沿って、夜用の凹部230の左側部分、および朝用の凹部230と昼用の凹部230との間に形成される。
【0046】
強シール部360は、封止部材300を本体シート200から剥離させるとき、封止部材300の剥離を適切な位置で止める。強シール部360は、ヒートシールの温度、圧力、加熱時間などを調整して、強シール部360となる箇所(図2の濃い灰色の箇所)が他の箇所よりも本体シート200に強くシールされることで形成される。そのため、強シール部360は、本体シート200から容易に剥離しない。また、強シール部360は、平面視において、縦方向Hに沿って、昼用の凹部230と夜用の凹部230との間、および曜日の記載と朝用の凹部230との間に形成される。
【0047】
スリット370、371は、例えば、スリッタ装置を用いて封止部材300に形成された切り込みである。スリット370は、平面視において、横方向Wに沿って、全ての凹部230同士の間、および文字表示の時間帯の記載と凹部230との間に形成される。スリット371は、平面視において、縦方向Hに沿って、朝用の凹部230と昼用の凹部230との間にあるめくり部350を半分に分割するようにして形成される。
【0048】
患者は、スリット370に沿って封止部材300を剥離することができ、かつ、強シール部360で剥離を適切な位置で止めることができる。したがって、包装シート100では、患者は、所望の凹部230のみを開封することができる。
【0049】
封止部材300の表面には、上述したように、曜日、時間帯および日付が印刷されている(図1参照)。また、図2に示されるように、封止部材300の裏面の上部分には、横方向Wに沿って時間帯を表す「朝」、「昼」、「夜」の文字が印刷されている。封止部材300の裏面の右側部分には、縦方向Hに沿って曜日を表す「月」〜「金」の文字、および日付を表す「1/1」〜「1/7」の文字が印刷されている。封止部材300の裏面の凹部230を覆う部分には、各凹部230に収納された薬剤T1〜T3を服用する時間帯を表す「朝」、「昼」、「夜」を示す絵が印刷されている。
【0050】
<包装シートの供給の流れ>
(第1のケース)
包装シートメーカーは、製造した本体シート200の材料シートを分包機メーカーに供給する。分包機メーカーは、本体シート200の材料シート、封止部材300、シール機、および加熱プレス装置を、病院および調剤薬局などに供給する。病院および調剤薬局などは、本体シート200の材料シートを加熱プレス装置で加熱プレスして凹部230を形成し、本体シート200を得る。そして、病院および調剤薬局などは、薬剤T1〜T3を収納した本体シート200に、封止部材300をシール機でヒートシールし、包装シート100を得る。なお、分包機メーカーは、本体シート200を形成して、本体シート200、封止部材300、およびシール機を病院および調剤薬局などに供給してもよい。
【0051】
(第2のケース)
包装シートメーカーは、製造した本体シート200の材料シートを病院および調剤薬局などに直接供給する。分包機メーカーは、封止部材300、シール機、および加熱プレス装置を病院および調剤薬局などに供給する。病院および調剤薬局などは、本体シート200の材料シートを加熱プレス装置で加熱プレスして凹部230を形成し、本体シート200を得る。そして、病院および調剤薬局などは、薬剤T1〜T3を収納した本体シート200に、封止部材300をシール機でヒートシールし、包装シート100を得る。なお、分包機メーカーではなく包装シートメーカーが、封止部材300を病院および調剤薬局などに直接供給してもよい。
【0052】
(第3のケース)
包装シートメーカーは、製造した本体シート200および封止部材300を分包機メーカーに供給する。分包機メーカーは、シール機を病院および調剤薬局などに供給する。病院および調剤薬局などは、薬剤T1〜T3を収納した本体シート200に、封止部材300をシール機でヒートシールし、包装シート100を得る。なお、包装シートメーカーではなく分包機メーカーが、封止部材300を病院および調剤薬局などに供給してもよい。
【0053】
(第4のケース)
包装シートメーカーは、製造した本体シート200、封止部材300およびシール機を病院および調剤薬局などに供給する。病院および調剤薬局などは、薬剤T1〜T3を収納した本体シート200に、封止部材300をシール機でヒートシールし、包装シート100を得る。
【0054】
<本実施形態における効果>
包装シート100は、1個の凹部230に複数個の薬剤T1〜T3を収納することで、薬剤T1〜T3を一包化することができる。また、包装シート100は、外部から侵入する特定気体および光の少なくとも一方の透過を制限し、保管中に薬剤T1〜T3が変質することを抑制する。そのため、包装シート100は、薬剤T1〜T3を長期間保管することができる。
【0055】
包装シート100では、封止部材300は本体シート200から易剥離可能なように本体シート200にシールされる。そのため、お年寄り又は手先の不自由な患者は、包装シート100から薬剤T1〜T3を容易に取り出すことができる。
【0056】
包装シート100には、凹部230に収納された薬剤T1〜T3を服用する曜日、時間帯および日付の少なくとも1つが記載されているので、患者は薬剤T1〜T3を服用する時期を誤りにくい。また、包装シート100では、医師、薬剤師、看護師などは、空となった凹部230に対応する記載を確認することで、患者が薬剤T1〜T3を服用したか否かを確認することができ、かつ、患者が薬剤T1〜T3を服用した時期を確認することができる。
【0057】
本体シート200の厚みが30μm以上800μm以下であるとき、本体シート200は良好な剛性を持つ。そのため、包装シート100は、外部からの力で破損しにくい。よって、包装シート100は、包装シート100の破損を防止するための保護カバー等を用いることなく、ポケットおよび鞄などにそのまま入れて持ち運ぶことができる。
【0058】
包装シート100は、収納された薬剤T1〜T3を視認することができる。よって、包装シート100は、病院および調剤薬局などにおいて薬剤T1〜T3の渡し間違いが発生することを抑制する。
【0059】
<変形例>
(A)
図4に示されるように、包装シート100aの本体シート200aは、区切り部240で区切られた複数の区画を有する凹部231、232を有していてもよい。凹部231は、1個の薬剤T1を収納する区画、および2個の薬剤T2を収納する区画の2つの区画を有する。凹部232は、1個の薬剤T1を収納する区画、1個の薬剤T2を収納する区画、および1個の薬剤T3を収納する区画の3つの区画を有する。なお、凹部231、232の区切り部240は、封止部材300にヒートシールされてもよいし、ヒートシールされなくてもよい。
【0060】
包装シート100aは、各区画に異なる種類の薬剤T1〜T3をそれぞれ収納することができる。そのため、包装シート100aは、異なる種類の薬剤T1〜T3が互いに直接接触して反応することを防止する。よって、包装シート100aは、保管中に薬剤T1〜T3が変質することを抑制する。
【0061】
(B)
図5に示されるように、包装シート100bの本体シート200bは、平面視において、丸形の形状である朝用の凹部230、三角形の形状である昼用の凹部233、および四角形の形状である夜用の凹部234を有していてもよい。包装シート100bでは、凹部230、233、234の形状がそれぞれ異なる。そのため、患者は、薬剤T1〜T3を服用する時期を確認しやすい。
【0062】
(C)
図6に示されるように、包装シート100cの封止部材300cは、強シール部360に代えて、縦方向Hに沿って形成される切り込みであるスリット372を有していてもよい。スリット372は、平面視において、昼用の凹部230と夜用の凹部230との間、および曜日の記載と朝用の凹部230との間に形成される。スリット370、371、372によって、封止部材300cは、各凹部230に対応するように分割される。
【0063】
患者は、スリット370に沿って封止部材300cを剥離することができ、かつ、剥離させた封止部材300cをスリット372によって包装シート100cから取り外すことができる。したがって、包装シート100cでは、患者は、所望の凹部230のみを開封することができる。
【0064】
(D)
封止部材300は、接着剤層320、およびクッション層330を備えておらず、基材層310、およびヒートシール層340の2層から構成されてもよい。このクッション層330は、イージーピール(易剥離)機能を有する。イージーピール機能とは、流通時および保管時には凹部230の内部空間の密封性を保持し、かつ、開封時には手の力で容易に封止部材300を開けられる機能である。
【0065】
イージーピール機能は、クッション層330が相手材の界面から剥がれる界面剥離タイプ、クッション層330又は相手材の最外層の層間で剥がれる層間剥離タイプ、およびクッション層330が凝集破壊することで剥がれる凝集剥離タイプのいずれのタイプであっても良い。例えば、凝集剥離タイプのイージーピール機能の付与は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)樹脂、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)樹脂、エチレン−アクリレート共重合体(EAA)樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)樹脂、アイオノマー(ION)樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等と、ポリプロピレン(PP)樹脂とを混合することで達成される。ここで用いられるPP樹脂は、ポリプロピレンのホモポリマー、プロピレン−エチレンのランダムコポリマー、およびプロピレン−エチレンのブロックコポリマーのいずれのタイプであっても良い。
【0066】
(E)
包装シート100では、凹部230の個数は、複数ではなく単数であってもよい。また、凹部230は、包装シート100の曜日などの記載に対応するようになっていれば、横方向Wおよび縦方向Hに沿って、任意の個数ずつ配置されてもよい。
【0067】
(F)
包装シート100では、1個の凹部230に収納される薬剤T1〜T3の個数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。また、1個の凹部230に収納される薬剤T1〜T3の種類は、1種であってもよいし、複数種であってもよい。また、薬剤T1〜T3は、錠剤に代えて、カプセル剤または顆粒剤などであってもよい。
【0068】
(G)
包装シート100では、薬剤T1〜T3を服用する曜日、時間帯および日付の少なくとも1つが、凹部230にそれぞれ対応するようにして記載されていればよい。また、本体シート200および封止部材300の少なくとも一方に、凹部230に収納された薬剤T1〜T3を服用する曜日などが記載されていればよい。
【0069】
(H)
包装シート100では、本体シート200および封止部材300の少なくとも一方が、特定気体および光の少なくとも一方に対してバリア性を有していればよい。また、本体シート200、封止部材300の少なくとも一方が透明性を有していればよい。
【0070】
(I)
封止部材300ではなく本体シート200が、接着剤層320、クッション層330、およびヒートシール層340といったヒートシールに必要な層を有していてもよい。この場合、本体シート200が封止部材300にヒートシールされる。
【0071】
(J)
包装シート100は、封止部材300を本体シート200から易剥離させてから薬剤T1〜T3を取り出すものに代えて、封止部材300を突き破ってから薬剤T1〜T3を取り出すものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
100、100a、100b、100c 包装シート
200、200a、200b 本体シート
230、231、232、233、234 凹部
300、300c 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する本体シートと、
前記凹部の開口を覆うように、前記本体シートにシールされる封止部材とを備え、
前記本体シートおよび前記封止部材の少なくとも一方は、特定気体および光の少なくとも一方に対してバリア性を有し、
前記凹部は、複数個の薬剤が収納可能な大きさを有する包装シート。
【請求項2】
凹部を有する本体シートと、
前記凹部の開口を覆うように、前記本体シートにシールされる封止部材とを備え、
前記封止部材は、前記本体シートから易剥離可能であり、
前記凹部は、複数個の薬剤が収納可能な大きさを有する包装シート。
【請求項3】
前記本体シートは、複数個の前記凹部を有し、
前記本体シートおよび前記封止部材の少なくとも一方には、前記凹部に収納された前記薬剤を服用する曜日、時間帯および日付の少なくとも1つが、前記凹部にそれぞれ対応するようにして記載される請求項1または2に記載の包装シート。
【請求項4】
前記凹部は、複数の区画を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項5】
前記本体シートの厚みは、30μm以上800μm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装シート。
【請求項6】
前記本体シートおよび前記封止部材の少なくとも一方は、透明性を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136256(P2012−136256A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289970(P2010−289970)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】