説明

包装フィルム

【課題】偽造防止の可能な印刷を施した金属光沢面を有する包装フィルムを提供する。
【解決手段】包装フィルムは、金属光沢面を有する基材と、金属光沢面上に設けられたアンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムを赤外線吸収成分として含む第一印刷層と、第一印刷層上に設けられた赤外線の鏡面反射率の低い第二印刷層とからなる。ここで、アンチモンドープ酸化錫は、前記第一印刷層の層厚が0.4μmを超え25μm未満であることが好ましく、さらに、第二印刷層の層厚は0.5μmを超え35μm未満であることが好ましい。また、アンチモンドープ酸化錫を含む印刷層は、さらに顔料又は染料と、を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルムに関する。さらに詳しくは、無機系の赤外線吸収剤を含有したインキを用いて、金属光沢面を有する基材に偽造防止可能な印刷を施した包装フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有するフィルムは美しい外観を呈し、人目を引くことができるため、デザイン上、利用価値は高く、包装用のフィルムとして活用されている。例えば、薬剤包装の一形態であるPTP(プレススルーパック)包装においては、包装される薬剤の銘柄やメーカー名等が印刷されたアルミ箔層を有するフィルムが、薬剤の形状に合致する成型を施した塩化ビニルやポリプロピレン等の透明または半透明のフィルムの蓋材として使用されている。
【0003】
しかしながら、金属光沢を有するフィルムと同種あるいは類似の材料を入手することは比較的容易であり、かつ薬剤の銘柄やメーカー名等のマークを模倣することも容易なこともあり、偽造品を製造することは容易であり、PTP包装品の偽造が問題となっている。
【0004】
紙幣や有価証券等においては、赤外線吸収インキを用いた偽造防止技術が用いられている。赤外線吸収インキを用いた偽造防止技術とは、目視では区別困難であるが、赤外線カメラでは、白色と黒色に見える赤外線吸収率の大きく異なる二種類のインキで印刷し、紙幣や有価証券等の印刷部分を赤外線カメラで確認して真贋を判定するものである。
【0005】
赤外線吸収インキは、一般には赤外線吸収剤を加えて調合される。赤外線吸収剤としては、無機色素のカーボンブラックや赤外領域に吸収を持つ有機色素が一般的に用いられている。赤外領域に吸収を持つ有機色素としては、例えばポリメチレン系、フタロシアニン系、ジチオール金属錯塩、ナフトキノン系、アントラキノン系、インドールフェノール系、アゾ系、トリアリルメタン系等の化合物を挙げることができる。
有機色素を含有した赤外線吸収インキは、多彩な色の赤外線吸収インキに調合することはできるが、インキの耐耗性、耐光性が劣るという問題が指摘されている。
【0006】
一方、赤外線吸収剤としてカーボンブラックのような無機色素を用いた赤外線吸収インキは、インキの耐耗性、耐光性は有機色素を含有した赤外線吸収インキより優れているものの、カーボンブラックが濃い暗色系の色調を有する顔料であるためインキの色は黒色系や明度の低いものに限られていた。このため、カーボンブラック含有赤外線吸収インキを用いた場合、色彩のバリエーションに富んだデザインを印刷するための赤外線吸収インキを調合することができなかった。仮に、カーボンブラックの色調を明るくするため、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色顔料を添加すると、赤外線反射顔料を混合することになるので、インキの赤外線吸収性が阻害されてしまうという問題がある。
【0007】
特許文献1には、アルミ層上に薬剤の銘柄やメーカー名を印刷した印刷層上および印刷層以外の領域に赤外線吸収層を設けた包装体が開示されている。しかし、この技術は、印刷層以外の領域と印刷層の赤外線反射率を近づけ、赤外線カメラで確認したときに、薬剤の銘柄やメーカー名を印刷した印刷層が目立たないようにして、異物の発見を容易にすることを目的としている。すなわち、赤外線吸収層が設けられているものの、赤外線カメラの検査において、赤外線吸収層は目立たず、薬剤の銘柄やメーカー名が印刷された印刷層と区別して識別することができず、赤外線吸収インキを用いた偽造防止を意図するものではない。
【0008】
また、金属光沢を有するフィルム上にカーボンブラックを用いた赤外線吸収インキのような赤外線吸収率の高いインキを使用した印刷物の場合、赤外線カメラによる検査時に金属光沢面の鏡面反射により赤外線吸収インキを区別することが難しくなるだけはなく、金属光沢面にインキがなじみにくいため、印刷部が盛り上がり、金属光沢面に凸凹ができ、目視しやすくなるという問題がある。
特許文献2には、アルミ箔面上に赤外線吸収インキと同色系の隠遁層を設け、隠遁層の上に赤外線吸収層を設けた印刷物が開示されている。しかし、赤外線吸収インキが暗色系であるため、印刷領域が暗い色調になり意匠性に乏しい印刷となってしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−7205号公報
【特許文献2】特開平10−24944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、偽造防止の可能な印刷を施した金属光沢面を有する包装フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
赤外線カメラによる検査時の鏡面反射を防ぐためには、金属光沢面上に設けられた赤外線吸収印刷層及びその周辺を無機系の赤外線反射顔料を用いた赤外線反射層で覆うことが望ましい。しかし、無機系の赤外線反射顔料は、白色系の顔料であるため、赤外線反射層で覆われることにより赤外線吸収層の赤外線吸収性が阻害されやすく、逆に赤外線反射層を薄くすると、目視下で暗色系の赤外線吸収層は、簡単に識別されてしまうことになる。
本発明者らが無機系赤外線吸収剤を含有する赤外線吸収インキについて鋭意検討した結果、アンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムを赤外線吸収剤として含有する赤外線吸収インキを、赤外線反射インキと組み合わせて用いることにより、目視では同色に見えるが、赤外線カメラでは金属光沢面の鏡面反射を防ぎ、赤外線吸収インキによる印刷部を区別して見分けることの可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の包装フィルムは、金属光沢面を有する基材と、金属光沢面上に設けられたアンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムを赤外線吸収成分として含む第一印刷層と、該第一印刷層上に設けられた赤外線の鏡面反射率の低い第二印刷層とからなる。
第一印刷層の層厚は、0.3μmを超え25μm未満、好ましくは0.5μm以上20μm以下の範囲である。第2の印刷層の層厚は0.5μmを超え35μm未満であり、特に好ましくは、1μm以上30μm以下の範囲である
【0013】
赤外線の鏡面反射率の低い印刷層は、白色系のインキであり、下地を隠遁する性質が強いため、層厚が厚いとアンチモンドープ酸化錫を含む印刷層を赤外線カメラで識別できなくなる。層厚の範囲は1μm〜30μmの範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の包装フィルムは、目視下では第二印刷層が第一印刷層を隠遁するため、第一印刷層を見分けることが難しい。しかし、赤外線カメラを用いることにより二つの印刷層を区別して見分けることができるため、第一印刷層に描かれた文字や図形等を判別することができる。すなわち、包装フィルム上の第一印刷層は目視下では隠し文字や隠し絵となるが、赤外線カメラの下ではこれらの隠し文字や隠し絵を確認することができるため、包装フィルムの真贋の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の包装フィルムの1形態の断面を示す模式図である。
【図2】本発明の包装フィルムの、別の形態の断面を示す模式図である。
【図3】実施例で用いたアンチモンドープ酸化錫の粒度分布である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳しく説明する。
図1に示すように、本発明の包装フィルム1は、金属光沢面を有する基材2と、金属光沢面上に設けられたアンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムをインク赤外線吸収成分として含む第一印刷層3と、第一印刷層3上に設けられた赤外線の鏡面反射率の低い第二印刷層4とからなる。
【0017】
金属光沢面を有する基材2は、金属性の光沢を有する素材であればよく、アルミニウム箔等の金属箔を単独で使用してもよく、また、アルミニウム等の金属箔を樹脂フィルム及び紙の少なくとも一種に積層したもの、あるいは金属蒸着フィルムであっても良い。
【0018】
金属光沢面を有する基材2は、フィルム形態で使用することが望ましい。フィルムの厚みは7〜50μmであれば優れた耐水性(耐湿性)、強度、包装体の取扱性等を得ることができる。
【0019】
アルミニウム箔を用いる場合、硬質材、半硬材、軟質材等のいずれであっても良く、適宜選択すれば良い。
【0020】
また、金属箔は、必要に応じ、公知の方法で型付け、脱脂及び/又は洗浄、アンカーコート、オーバーコート、表面処理等を施すこともできる。
【0021】
金属箔を紙に積層又は蒸着する場合、例えば純白ロール紙、クラフト紙、上質紙、模造紙、洋紙、和紙、各種のコート紙等を適用できる。これらは一種又は二種以上で使用することができる。
【0022】
金属箔を樹脂に積層又は蒸着する場合、例えばポリアミド( ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、エチレン− ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。これらは一種又は二種以上で使用することができる。
【0023】
第一印刷層3は、アンチモンドープ酸化錫や錫ドープ酸化インジウムを赤外線吸収剤として含有し、文字、記号、図形又はそれらの組み合わせ等の印刷層である。さらに、第一印刷層3には第二印刷層4と色調を合わせるため、染料が加えられていてもよい。
【0024】
アンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムは、赤外線吸収成分として3〜20%(重量比)含まれていることが好ましい。
アンチモンドープ酸化錫をインキ成分とする場合、その平均粒径は、0.01μm〜100μmの範囲にあることが望ましい。
平均粒径0.01μm〜100μmのアンチモンドープ酸化錫は、明度が高いため、様々な色の顔料や染料と組み合わせて、バリエーションに富んだ色に調合することができ、特に淡い色の赤外線吸収インキとすることもできるためである。
【0025】
平均粒径が0.01μm以下の場合、赤外線吸収性の低下、凝集等の問題が生じ、100μmを超えると印刷に支障が生ずる。好ましくは、グラビア印刷用インキでは30μm以下、フレキソ印刷用インキでは30μm以下、オフセット印刷用インキでは3μm以下、シルク印刷用インキでは100μm以下である。
【0026】
アンチモンドープ酸化錫は、酸化錫と酸化アンチモンの焼成により得ることができる。すなわち、酸化錫、酸化アンチモンを水と混合した後、乾燥し、焼成して得られた粉体を粉砕して得られる。
酸化錫と酸化アンチモンの配合比(重量比)は、70:30〜99.9:0.1の範囲である。酸化アンチモンの配合比率は、30を超えるとアンチモンドープ酸化錫の明度が低くなり、0.1より少なくするとアンチモンドープ酸化錫の赤外線吸収性が悪くなる。明度と赤外線吸収性のバランスの良い顔料とするには、好ましくは、80:20〜98:2の範囲である。さらに好ましくは、95:5である。
【0027】
具体的には、例えば、配合比(重量比)70:30〜99.9:0.1の酸化錫と酸化アンチモンとを水に混合し、得られた混合物を約200℃で乾燥させた後、約1300℃で約5時間焼成して得ることができる
【0028】
アンチモンドープ酸化錫は、ややグレーがかった色に着色しているため、様々な色を有する赤外線吸収インキのベースとなるインキ(以下ベースインキという)が暗色系を呈することになる。濃い暗色系の赤外線吸収インキを調合する場合には問題とならないが、明色系の赤外線吸収インキとするためには問題がある。特に、淡色系の赤外線吸収インキとすることは困難である。仮に、ベースインキの色調を明るくするため、酸化チタン、酸化亜鉛等の白い顔料を添加した場合には、赤外線吸収性が疎外されることになるので好ましくない。
【0029】
しかし、アンチモンドープ酸化錫の平均粒径が、0.01μm〜100μmの範囲では、淡い白色をしたベースインキが得られる。ベースインキが適度に白色を帯びていることが重要である。ベースインキに色付けをする際には、ベースインキが無色透明であるよりも、適度に白色を帯びているほうが、色付けをする染料や顔料の発色がよいからである。この場合には、暗色系、明色系の赤外線吸収インキをより容易に調合することができる。
前述したように、平均粒度が0.01μmより小さいと赤外線が透過してしまうので赤外線吸収性が低下するため、好ましくなく、100μmを超えて大きくなるとベースインキが次第にグレー色を帯びるので好ましくない。
なお、平均粒度の測定は、レーザー回析・散乱法に拠って行えばよい。
【0030】
特に平均粒度が0.1〜3.0μmの範囲にあるアンチモンドープ酸化錫を含むインキは、白色度(明度、L値)が85以上を有する。なお、他の色の顔料や染料と混合する場合には、白色度は70以上であればよいが、色彩のくすみを抑えてクリアーな色に調合するためには75以上がさらに好ましい。
なお、アンチモンドープ酸化錫の白色度は次のようにして測定したものである。すなわち、以下の組成のベースインキを普通紙(J、富士ゼロックス社製)にバーコーターNo.18を使用してインキを1回塗布し乾燥させた。得られた印刷物を分光光度計(U−4000自記分光光度計、日立製作所)を用いて、波長800〜350nm、光源D65、視野角2度でのL値を測定して白色度(明度)の値とした。なお、普通紙(J、富士ゼロックス社製)をベースラインとして使用した。
樹脂:ポリエステル樹脂 30g
溶剤:メチルエチルケトン:トルエン=1:1混合物 170g
アンチモンドープ酸化錫 10g
なお、L値は0〜100で表現され、白色度が低いほど(明度が低いほど)値は小さくなる。
【0031】
第一印刷層3の厚さは、0.4μmを超え25μm未満、特に0.5μm以上20μm以下の範囲であることが望ましい。0.5μmより薄くなると赤外線で検知することが難しくなり、20μm以上になると段差が生じ、目視でも確認しやすくなるので好ましくない。
【0032】
第二印刷層4は、赤外線による鏡面反射率が金属光沢面より低い層である。赤外線線による鏡面反射を低くするためには、化学的安定性が高く隠遁力(JIS K5400.7.3.2)の高い顔料、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、バライト粉、亜鉛華、鉛白等の無機系白色顔料を10〜30重量%含むインキを用い、第一印刷層及び/又は基材の金属光沢面を覆うように層を形成すればよい。鏡面反射の影響をより少なくするため、第一印刷層上とその周辺部の金属光沢面上にも第二印刷層を形成することが特に好ましい。なお、無機系白色顔料は、これら例示に限定されるものではなく、JIS Z 8741に基づいた鏡面光沢度が前記例示に近似するものであればよい。二酸化チタンの場合、赤外線の透過度の低い0.1〜0.3μmの粒径が適している。
なお、赤外線の鏡面反射率の低い印刷層4をバリエーションに富んだ色彩とするため、インキには様々な色の顔料や染料が添加されていてもよい。
【0033】
第二印刷層4は、第一印刷層の一部又は全体を覆って形成された層であり、文字や絵のような意匠性を有するものであっても或いは帯状に第一印刷層を覆っていてもよい。
【0034】
第二印刷層4の厚さは、0.5μmを超え35μm未満、特に1μm〜30μmの範囲が好ましい。0.5μm、特に1μmより薄いと第一印刷層3との段差が目立ち、第一印刷層3を目視し易くなるので好ましくない。30μm、特に35μmを超えると赤外線カメラでアンチモンドープ酸化錫を含む印刷層3を認識できなくなるので好ましくない。カーボンブラック等の赤外線吸収剤を第一印刷層のインキとして用いた場合、第二印刷層4の厚さが30μm程度では第一印刷層3を、目視できない程度に隠遁することができない。しかし、アンチモンドープ酸化錫や錫ドープ酸化インジウムを第一印刷層のインク成分として用いた場合、第一印刷層3の明度が高いため、厚さが1μm〜30μmであっても第一印刷層3を目立ちにくくすることが可能である。
【0035】
化学的安定性が高く隠遁力(JIS K5400.7.3.2)の高い顔料やアンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウムをインキとするためには高分子ポリマー、顔料や染料等の着色剤、溶剤等と配合して調合する。アンチモンドープ酸化錫を成分とする場合、配合割合は、グラビア印刷用インキの場合、樹脂1に対して0.2〜1.0である。また、他の印刷方式では、以下の範囲が適切である。
フレキソ印刷用インキの場合は、樹脂1に対して0.2〜1.0。
オフセット印刷用インキの場合は、樹脂1に対して0.2〜1.0。
シルク印刷用インキの場合は、樹脂1に対して0.2〜1.0。
【0036】
第一印刷層及び第二印刷層のインキ成分である高分子ポリマーは、透明な単一の分子重合樹脂あるいは共重合樹脂である熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を成分とするものである。これらの樹脂は単独あるいは混合して用いてもよい。また、溶剤にはトルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の有機溶媒を用いることができるが、これらに限定されるものではない。着色剤は、特に限定されるものではなく、一般的な顔料や染料を選択して用いることができる。希釈溶剤は、一般的に用いられるキシレン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等から適宜選択して用いればよい。なお、希釈溶剤は、赤外線吸収インキの印刷適正に応じて添加されるもので、印刷方法等の印刷条件に応じた量を使用すればよい。印刷は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法のほか、一般的に用いられる各種印刷法、又はこれらの複数の印刷法を組み合わせて行うことができる。
【0037】
図2に別の形態の包装フィルム1’を示す。
包装フィルム1’は、赤外線の鏡面反射率の低い印刷層4の上に赤外線を透過するインキ層5が設けられている。
赤外線を透過するインキ層5は、赤外線を透過するインキによって印刷された層である。
【0038】
赤外線を透過するインキは、可視光領域の吸収性が高く、赤外領域の透過性が高いものが良いが、その吸収性や透過性の範囲は特に限定されるものではない。ただし、カーボンブラック等の赤外線吸収性の高いものは適さない。赤外線吸収インキ印刷層をより隠蔽させるためには、可視光領域の吸収性が高い暗色系のインキの方が望ましく、赤、青、黄色等一般的なインキを重ねて印刷してもよい。赤外線を透過するインキの例としては、シアン、マゼンタ、イエローの3原色を混合した黒色インキがある。
【実施例】
【0039】
[第一印刷層のインキ]
錫とアンチモンの組成比(重量比)が、95:5のアンチモンドープ錫を粉砕し、平均粒径を0.7μm程度に調整した。得られたアンチモンドープ酸化錫の粒度分布を図3に示す。
なお、粒度分布は、レーザー回析・散乱法により、マイクロトラック粒度分析装置(Microtrac 9.0L MT3000)日機装株式会社製)で測定した。
得られたアンチモンドープ酸化錫を用い、以下に示す組成のベースインキを作成した。
樹脂:ポリエステル樹脂:塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体=1:1の混合物
30g
溶剤:MEK(メチルエチルケトン)とトルエンの1:1の混合物 170g
アンチモンドープ錫:組成比(Sn:Sb=95:5)
平均粒径 0.7μm 10g
【0040】
得られたインキの明度を以下のように測定した。
普通紙(J、富士ゼロックス社製)にバーコーダーNo.18を使用してインキを1回塗布し乾燥させた。得られた印刷物を、分光光度計(U−4000自記分光光度計、日立製作所)を用いて、波長800〜350nm、光源D65、視野角2度でのL値を測定して白色度(明度)の値とした。なお、普通紙(J、富士ゼロックス社製)をベースラインとして使用した。L*値は93であった。
【0041】
上記組成のベースインキを硬質のアルミニウム箔に、厚さ0.3〜25μmの厚さで「SAMPLE」の文字を印刷した。
【0042】
[第二印刷層のインキ]
次の成分を有するPPZ−C96インキ(T&K TOKA製)インキを、第一印刷層を覆うように1〜35μmで印刷した。
白色顔料:酸化チタン
樹脂:ポリエステル樹脂
混合比率=樹脂:溶剤:白色顔料=1:5.7:0.6
【0043】
印刷を施した包装フィルムを20名のパネルによって目視で第一印刷層の文字の読み取を試験した。
また、赤外線検知器で読み取り試験を行った。
結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
第一印刷層の層厚が0.4μm(比較例1)では、赤外線による識別ができなかった。また第二印刷層の層厚が35μm(比較例4)では、赤外線検知器では識別ができなかった。
また、第一印刷層の層厚が25μm(比較例2)、第二印刷層の層厚が0.5μmでは、8割以上のパネルが第一印刷層の文字を読み取ることができた。
【0046】
以上の結果から、第一印刷層は、0.4μmを超え25μm未満の範囲が好ましく、特に層厚が0.5μm以上20μm以下の範囲であれば目視判別不可能であり、赤外線検知器での識別が可能であることがわかる。
【0047】
また、第二印刷層は0.5μmを超え35μm未満の範囲が好ましく、特に1μm以上30μmの範囲の厚さであれば、第一印刷層の目視、赤外線検知器への影響を与えないことがわかる。
【0048】
符号の簡単な説明
1:包装フィルム
2:基材2
3:第一印刷層
4:第二印刷層
5:赤外線を透過するインキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属光沢面を有する基材と、該金属光沢面上に設けられたアンチモンドープ酸化錫又は錫ドープ酸化インジウムが赤外線吸収成分として含まれる第一印刷層と、該第一印刷層上に設けられた赤外線による鏡面反射率が上記金属光沢面より低い第二印刷層とからなる、包装フィルム。
【請求項2】
前記第一印刷層の層厚が0.4μmを超え25μm未満である請求項1記載の包装フィルム。
【請求項3】
前記第二印刷層の層厚が0.5μmを超え35μm未満である、請求項2に記載の包装フィルム。
【請求項4】
前記第二印刷層が無機系白色顔料を含有する、請求項1記載の包装フィルム。
【請求項5】
前記第二印刷層上に、さらに赤外線を透過する印刷層が設けられた、包装フィルム。
【請求項6】
前記第一印刷層がさらに顔料又は染料と、を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の包装フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の包装フィルムからなる、偽造防止用包装フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−234595(P2010−234595A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83780(P2009−83780)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】