説明

包装体

【課題】開封後の持ち運びや内容物の取り出しを容易に行うことができ、加工性にも優れた包装体を提供する。
【解決手段】包装体1の上部の開封位置には、切り込み線10と、その一端の側部シール部8の領域内に、開封開始手段としてノッチ11が設けられている。切り込み線10は、側部シール部8の間において壁面フィルム3a 、3bの下方に向かって湾曲している。切り込み線10に沿って上部を切り取ることで、開封後の包装体1の少なくとも一方の側端上部に把持部13が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状、ゲル状、固形状、粉末状等の食品や医薬製剤、または医療器具等を包装する包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状、ゲル状、固形状、粉末状等の食品や医薬製剤、またはシリンジやカテーテル等の医療器具を包装フィルムで密封する場合の包装形態としては、内面側に熱可塑性樹脂が積層された樹脂フィルムを用い、4辺または3辺をシールして形成されたフィルム袋に内容物を充填した後、充填口をシールする包装形態が用いられる。これらの包装形態では、フィルム端縁のシール部に形成された開封用の切り込み(ノッチ)の両側を把持してフィルムを引き裂くことで、内容物を取り出すようになっている。
【0003】
このような従来の包装形態においては、開封用ノッチからフィルムを引き裂くとき、開封により包装袋の一端が大きく開口してしまうため、包装袋の開封端縁を把持しようとすると内容物が手に付着するおそれがあった。
【0004】
特に、内容物が収納された状態で包装袋ごと加熱調理またはレトルト殺菌処理する場合、包装袋を湯煎や電子レンジ等で加熱された内容物に近い包装袋の開封端縁も熱くなっているため、把持しにくいという問題点があった。また、内容物が医療用の製剤や医療器具である場合、内容物を取り出す開封端縁を把持すると衛生上好ましくないという問題点があった。
【0005】
そこで、開封後の持ち運び性や内容物の取り出し性を向上させた包装袋が種々提案されており、例えば特許文献1及び2には、包装袋のシール領域の一部を拡大して把持部を設けた包装袋が開示されている。また、特許文献3には、把持部を指先で確実に摘むために孔または突起を設けた把持部付密封用小袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3034765号公報
【特許文献2】特開平7−69357号公報
【特許文献3】実用新案登録第3158128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3のような従来の包装袋では、シール領域の一部に幅広の把持部を形成するため、その分だけ包装袋の内容量が少なくなるという問題点があった。また、幅広の把持部を形成したり、孔や突起を形成したりするために加工性が低下するという問題点もあった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み、開封後の持ち運びや取り出しを容易に行うことができ、加工性にも優れた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも基材層と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体により形成され、内容物が封入される収納部と、該収納部の側縁を閉鎖する側部シール部と、該側部シール部に形成される開封開始手段と、該開封開始手段に連続して前記収納部を横断するように形成され、前記収納部の上部を切り取るための連続または間欠のハーフカットラインから成る切り込み線と、を有する包装体であって、前記切り込み線は、前記収納部の少なくとも一方の側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成されており、前記収納部の上部を切り取ることで前記収納部の少なくとも一方の側端に把持部が形成されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記切り込み線は、前記収納部の両側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成されており、前記収納部の上部を切り取ることで前記収納部の両側端に把持部が形成されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記切り込み線は、互いに略平行な複数の連続するハーフカットラインからなることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記切り込み線は、互いに略平行な2本の間欠ハーフカットラインからなり、各間欠ハーフカットラインを構成する切り込みは略コ字状または略円弧状に形成され、切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットライン間で互いに向き合うように配置されることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記2本の間欠ハーフカットラインに沿って、略コ字状または略円弧状の切り込みで構成される1本以上の間欠ハーフカットラインをさらに形成するとともに、切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットラインに向くように配置したことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記間欠ハーフカットラインを構成する各切り込みの両端部は、前記切り込み線に垂直な方向から見たとき、対向する切り込みの端部から切り込みの長さの1/10以上内側に重なることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記切り込み線は、基材フィルムと熱可塑性樹脂層のいずれかを残して形成されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記積層体は、前記基材フィルムと、前記熱可塑性樹脂層を含むプレシートとを積層して形成されており、前記切り込み線は、前記基材フィルムの積層前に前記プレシート側に形成されることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の包装体において、前記切り込み線は、前記熱可塑性樹脂層の裏面側から形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の構成によれば、収納部の上部を切り取る切り込み線を収納部の少なくとも一方の側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成することで、開封後の収納部の少なくとも一方の側端に把持部が形成されるため、把持部を把持して開封後の包装体を容易に持ち運ぶことができる。また、内容物の取り出し口となる開封端縁を把持する必要がないため衛生的である。
【0019】
本発明の第2の構成によれば、開封後の収納部の両側端に把持部が形成されるため、内容物が流動物である場合に把持部を両手で把持して開封後の包装体を安定して持ち運ぶことができる。
【0020】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の包装体において、切り込み線を、互いに略平行な複数の連続するハーフカットラインで構成することにより、包装体の開封端縁が1本のハーフカットラインの軌道からずれたとしても、隣接する他のハーフカットラインに沿って開封されるため、切り込み線の軌道に沿って円滑に開封することができる。
【0021】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1又は第2の構成の包装体において、切り込み線を、互いに略平行な2本の間欠ハーフカットラインとするとともに、各間欠ハーフカットラインを構成する略コ字状または略円弧状の切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットライン間で互いに向き合うように配置することにより、包装体の開封端縁が2本の間欠ハーフカットラインの間からずれることなく、切り込み線の軌道に沿って円滑に開封される。
【0022】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第4の構成の包装体において、2本の間欠ハーフカットラインに沿って、略コ字状または略円弧状の切り込みで構成される1本以上の間欠ハーフカットラインをさらに形成するとともに、切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットラインに向くように配置することにより、切り込み線の軌道からの包装体の開封端縁のずれをより確実に防止することができる。
【0023】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第4又は第5の構成の包装体において、切り込み線に垂直な方向から見たとき、間欠ハーフカットラインを構成する各切り込みの両端部が、対向する切り込みの端部から切り込みの長さの1/10以上内側に重なることにより、切り込みの端部方向に曲げられた実際の開封端縁は、切り込み線の軌道からずれることなく、常に対向する間欠ハーフカットラインの切り込みに確実に案内される。
【0024】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の包装体において、切り込み線は、基材フィルムと熱可塑性樹脂層のいずれかを残して形成されることにより、包装体の密封性を確保することができる。
【0025】
また、本発明の第8の構成によれば、上記第1乃至第7のいずれかの構成の包装体において、積層体は、基材フィルムと、熱可塑性樹脂層を含むプレシートとを積層して形成され、切り込み線は基材フィルムの積層前にプレシート側に形成されることにより、切り込み線の形成によって基材フィルムが傷付くおそれがないため、包装体の密封性をより確実にすることができる。
【0026】
また、本発明の第9の構成によれば、上記第8の構成の包装体において、プレシートに形成される切り込み線は、熱可塑性樹脂層の裏面側から形成されることにより、包装体の内面となる熱可塑性樹脂層の表面に傷が付かないため、熱可塑性樹脂層への内容物の浸透を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装体の平面図
【図2】第1実施形態の包装体における切り込み線及びノッチ付近の部分拡大図
【図3】第1実施形態の包装体が開封された状態を示す平面図
【図4】本発明の第2実施形態に係る包装体における切り込み線及びノッチ付近の部分拡大図
【図5】第2実施形態に係る包装体における切り込み線の変形例を示す部分拡大図
【図6】本発明の第3実施形態に係る包装体における切り込み線及びノッチ付近の部分拡大図
【図7】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25との間に印刷層21、バリア層23、中間層24を含む積層構成を示す図
【図8】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25との間に印刷層21、バリア層23を含む積層構成を示す図
【図9】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25との間に印刷層21を含む積層構成を示す図
【図10】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、バリア層23の一方の面に印刷層21を形成し、他方の面にドライラミネート層22を介して熱可塑性樹脂層25を積層したプレシート30を含む積層構成を示す図
【図11】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、図10におけるプレシート30の印刷層21側から切り込み線10を形成した積層構成を示す図
【図12】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、図10の構成に加えて印刷層21の外側にドライラミネート層22を介して中間層24を積層したプレシート30を含む積層構成を示す図
【図13】本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図であり、図12におけるプレシート30の中間層24側から切り込み線10を形成した積層構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明の包装体について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る包装体の概略平面図である。なお、図1に示す包装体1は、レトルト用自立性袋(スタンディングパウチ)を例示している。
【0029】
包装体1は、底部2が、前後の壁面フィルム3a 、3b の下部の間に、底面フィルム3cを内側に折り返して、底面フィルム折り返し部4まで挿入してなるガセット部5を有する形式で形成され、内側に折り込まれた底面フィルム3cの両側下部の端縁部には、それぞれ底面フィルム切り欠き部6が設けられ、ガセット部5は、包装体1の内側が両側から中央部にかけて円弧状に凹状となるシールパターンの底部シール部7でヒートシールして形成され、前後の壁面フィルム3a 、3bの両側端縁部を側部シール部8でヒートシールし収納部(胴部)9が形成されている。
【0030】
また、包装体1の上部の開封位置には、切り込み線10と、その一端の側部シール部8の領域内に、開封開始手段としてノッチ11が設けられている。切り込み線10は、側部シール部8の間において壁面フィルム3a 、3bの下方に向かって略U字状に湾曲している。
【0031】
なお、包装体1の上部の端縁部は、上部シール部12でヒートシールされるが、この部分は、内容物の充填口に使用するため、内容物の充填前は未シールの開口部とし、内容物の充填後にヒートシールして密封される。
【0032】
図2は、図1の包装体1における切り込み線10及びノッチ11付近の部分拡大図である。図2に示すように、切り込み線10は、ノッチ11の先端に連続する第1ハーフカットライン10aと、第1ハーフカットライン10aの下側に沿って延びる第2ハーフカットライン10bと、第1ハーフカットライン10aの上側に沿って延びる第3ハーフカットライン10cとから成る略平行な3本のハーフカットラインから構成されている。
【0033】
次に、図1及び図2を用いて本実施形態の包装体1の開封方法について説明する。なお、包装体1の壁面フィルム3a、3bを構成する基材フィルム20(後述)として一軸延伸フィルムを用い、MD方向(フィルムの流れ方向)を開封方向(図1の左右方向)と一致させておく。ノッチ11から側部シール部8を引き裂くと、壁面フィルム3a、3bは一軸延伸フィルムのMD方向に沿って図1の左右方向に開封されていき、上部シール部12を含む包装体1の上部が第1ハーフカットライン10aに沿って湾曲しながら切り取られていく。
【0034】
ここで、実際に上部が切り取られた包装体1の開封端縁は、特に第1ハーフカットライン10aの湾曲部分において第1ハーフカットライン10aの軌道からずれ易い。しかし、第1ハーフカットライン10aの上下には第2ハーフカットライン10b及び第3ハーフカットラインが形成されているため、包装体1の開封端縁が第1ハーフカットライン10aの軌道からずれたとしても、第2ハーフカットライン10b、第3ハーフカットライン10cに沿って開封される。
【0035】
上部シール部12を含む包装体1の上部が完全に切り取られ、包装体1が開封された状態を図3に示す。本発明の包装体1では、切り込み線10に沿って上部を切り取ることで、開封後の包装体1の両側上部に把持部13が形成される。
【0036】
把持部13は上方に突出しているため内容物との距離が遠く、開封端縁の他の部分に比べて温度が低い。そこで、把持部13を把持することで、加熱後に開封された包装体1を容易に持ち運ぶことができる。また、把持部13は包装体1の両側に形成されるため、両手で把持部13を把持することにより包装体1の開封端縁を水平に保持した状態で持ち運ぶことができ、内容物をこぼすおそれもない。
【0037】
なお、本実施形態では略平行な3本のハーフカットライン10a〜10cで切り込み線10を構成したが、略平行な2本のハーフカットラインで構成しても良いし、4本以上のハーフカットラインで構成しても良い。また、ここでは開封開始手段としてノッチ11を設けたが、ノッチ11に代えて、側部シール部8に複数の微細な突き刺し孔からなる傷痕群領域と、傷痕群領域を囲むとともに切り込み線10に向けて先細りとなるハーフカット(案内手段)を設けることもできる。
【0038】
また、本実施形態では包装体1の両側端に把持部13が形成されるようにしたが、切り込み線10を略L字状に湾曲させて、開封後の包装体1のいずれか一方の側端のみに把持部13が形成されるようにしても良い。この場合、両側端に把持部13が形成される構成に比べて持ち運び時の安定性の点でやや劣るものの、包装体1内に収容される内容物が流動物や粉末でない場合は把持部13を片手で把持して容易に持ち運ぶことができる。
【0039】
図4は、本発明の第2実施形態に係る包装体1における切り込み線10及びノッチ11付近の部分拡大図である。本実施形態では、切り込み線10は多数の切り込みが間欠的に連なる第1間欠ハーフカットライン10d、第2間欠ハーフカットライン10eから成る略平行な2本の間欠ハーフカットラインから構成されており、ノッチ11の先端は2本の間欠ハーフカットラインの間に配置されている。包装体1の他の部分の構成は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0040】
第1実施形態と同様にノッチ11から側部シール部8を引き裂くと、壁面フィルム3a、3bはポリエステルフィルムのMD方向に沿って図1の左右方向に開封されていき、第1間欠ハーフカットライン10dまたは第2間欠ハーフカットライン10eに到達する。そして、上部シール部12を含む包装体1の上部が第1間欠ハーフカットライン10dまたは第2間欠ハーフカットライン10eに沿って湾曲しながら切り取られていく。
【0041】
第1間欠ハーフカットライン10dに沿って上部が切り取られるとき、図4に示すように、第1間欠ハーフカットライン10dを構成する個々の切り込み15aは略コ字状であり、切り込み15aの両端は上向きになっているため、包装体1の開封端縁は切り込み15aの端部方向(第1間欠ハーフカットライン10dの上側)にずれ易くなる。しかし、第1間欠ハーフカットライン10dの上側には第2間欠ハーフカットライン10eが形成されているため、第1間欠ハーフカットライン10dの軌道からずれた開封端縁は第2間欠ハーフカットライン10eに沿って開封されていく。
【0042】
一方、第2間欠ハーフカットライン10eに沿って上部が切り取られるとき、第2間欠ハーフカットライン10eを構成する個々の切り込み15bの両端は下向きになっているため、包装体1の開封端縁は切り込みの端部方向(第2間欠ハーフカットライン10eの下側)にずれ易くなる。しかし、第2間欠ハーフカットライン10eの下側には第1間欠ハーフカットライン10dが形成されているため、第2間欠ハーフカットライン10eの軌道からずれた開封端縁は第1間欠ハーフカットライン10dに沿って開封されていく。
【0043】
このように、第1間欠ハーフカットライン10d及び第2間欠ハーフカットライン10eを構成する切り込み15a及び15bを略コ字状とし、両端部が互いに向き合うように配置することで、包装体1の開封端縁が第1間欠ハーフカットライン10d及び第2間欠ハーフカットライン10eの間からずれることなく、切り込み線10の軌道に沿って円滑に開封される。
【0044】
さらに、図4に示すように、切り込み15a及び15bのピッチをずらすことにより、第1間欠ハーフカットライン10dを構成する切り込み15aの両端部が、切り込み線10に垂直な方向において対向する第2間欠ハーフカットライン10eを構成する切り込み15bに必ず重なる。このようにすることで、切り込み15a(または切り込み15b)の端部方向に曲げられた実際の開封端縁は切り込み線10の軌道からずれることなく、常に対向する切り込み15b(または切り込み15a)に確実に案内される。
【0045】
なお、本実施形態では切り込み15a及び15bのピッチを略1/2ずらしており、切り込み15a(または切り込み15b)の両端部は対向する切り込み15b(または切り込み15a)の略中央部に重なっている。しかし、切り込み15a及び15bのピッチのずれ量はこれに限定されず、切り込み15a(または切り込み15b)の両端部が対向する切り込み15b(または切り込み15a)の端部から切り込みの長さの1/10以上内側に入っていれば良い。
【0046】
図5は、第2実施形態に係る包装体1における間欠ハーフカットラインの他の例を示す部分拡大図である。図5では、第1間欠ハーフカットライン10d、第2間欠ハーフカットライン10eを構成する切り込み15a、15bが略円弧状に形成されている。
【0047】
図5の構成においても、第1間欠ハーフカットライン10d及び第2間欠ハーフカットライン10eを構成する略円弧状の切り込み15a及び15bの両端部が互いに向き合うように配置することで、包装体1の開封端縁が第1間欠ハーフカットライン10d及び第2間欠ハーフカットライン10eの間からずれることなく、切り込み線10に沿って円滑に開封される。
【0048】
また、図4と同様に、切り込み15a及び15bのピッチをずらすことにより、切り込み15a(または切り込み15b)の端部方向に曲げられた実際の開封端縁は切り込み線10からずれることなく、常に対向する切り込み15b(または切り込み15a)に確実に案内される。
【0049】
図6は、本発明の第3実施形態に係る包装体1における切り込み線10及びノッチ11付近の部分拡大図である。本実施形態では、第2実施形態の構成において第2間欠ハーフカットライン10eの上側にさらに第3間欠ハーフカットライン10fを形成している。包装体1の他の部分の構成は第1及び第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、第3間欠ハーフカットライン10fを構成する切り込み15cの両端部は切り込み15bと同様に下向きになっており、さらに切り込み15b及び切り込み15cのピッチは略1/2ずれている。そのため、仮に実際の開封端縁が第2間欠ハーフカットライン10eの軌道から上側にずれたとしても、第3間欠ハーフカットライン10fに沿って開封される。そして、第3間欠ハーフカットライン10fに移動した開封端縁は切り込み15cの両端部に沿って対向する切り込み15bに案内される。これにより、開封端縁の切り込み線10からのずれをより確実に防止することができる。なお、第1間欠ハーフカットライン10dの外側(下側)に、さらに間欠ハーフカットラインを設けることもできる。また、図5のように、切り込み15a、15bが略円弧状に形成されている3本以上の間欠ハーフカットラインで切り込み線10を構成することもできる。
【0051】
図7は、本発明の包装体を構成する壁面フィルムの一例を示す断面図である。壁面フィルム3aは、最外層である基材フィルム20と、印刷層21と、バリア層23と、中間層24と、最内層である熱可塑性樹脂層25を順次積層した積層体である。印刷層21とバリア層23との間、バリア層23と中間層24との間、中間層24と熱可塑性樹脂層25との間には、それぞれドライラミネート層22が形成されている。また、切り込み線10(ハーフカットラインまたは間欠ハーフカットライン)は熱可塑性樹脂層25から中間層24の深さまで形成されている。なお、壁面フィルム3b及び底面フィルム3c(いずれも図1参照)についても全く同様の構成であるため説明を省略する。
【0052】
次に、壁面フィルム3aを構成する各層について詳細に説明する。基材フィルム20は、包装体1を構成する基本素材となること、更に、金属または金属酸化物の薄膜からなるバリア層(後述)を設ける場合、バリア層を保持する基材となること等から、それらの形成、加工等の条件に耐え、かつ、その特性を損なうことなくそれらを良好に保持することができ、更に、包装体の製造に際し、加工作業性、耐熱性、滑り性、耐ピンホール性、水蒸気またはガスバリア性、その他の諸物性において優れたものであることが好ましい。
【0053】
本発明に用いられる基材フィルム20としては、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム等の単体ないしそれらの積層体が用いられ、2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムが特に好適に用いられる。2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムの具体的な材質としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン−2、6−ナフタレート樹脂、ポリブチレン−2、6−ナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂等の各種のポリエステル系樹脂を使用することができる。
【0054】
特に、MD方向に直線カット性を付与した一軸延伸フィルムを使用し、MD方向と包装体1の開封方向(図1の左右方向)とを合わせておくことで、開封が容易で取り扱い性に優れた包装体1となる。
【0055】
2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムは、例えば、上記のポリエステル系樹脂の1種ないし2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、或いは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を製膜化する前に予め混合して製膜化する方法等により、ポリエステル系樹脂フィルムを製造し、更に、例えばテンター方式、或いはチューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルムを使用することができる。基材フィルム20の膜厚としては、3〜50μm程度、より好ましくは、5〜30μm程度が望ましい。
【0056】
なお、基材フィルム20の製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、ごく微量から数十%まで、その目的に応じて任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0057】
なお、静電気の発生に伴う不具合を防止して、ラミネート適性、製袋性、充填包装適性等を向上させるために、基材フィルム20の表面に帯電防止コート層を設けても良い。帯電防止コート層の形成方法としては、例えば、樹脂をビヒクルの主成分とし、これに帯電防止剤の1種ないし2種以上を添加し、更に、必要に応じて可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、充填剤、着色剤等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、溶剤・希釈剤等で十分に混練して樹脂組成物を調製する。次いで、該樹脂組成物を使用し、これを基材フィルム20の表面に、通常のコーティング法、或いは、印刷法等を用いて、コーティングないし印刷して、帯電防止コート層を形成する。
【0058】
帯電防止剤としては、例えば、陰イオン系活性剤、陽イオン系活性剤、非イオン系活性剤、両性表面活性剤等の界面活性剤、金属粉やカーボン等の無機系帯電防止剤、シリコーン系帯電防止剤、高級脂肪酸およびそのエステル類、酸アミド類、塩類、パラフィン系炭化水素類、ワックス類等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。
【0059】
ビヒクル樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体(ABS系樹脂)、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。
【0060】
なお、基材フィルム20の原料であるポリエステル系樹脂のペレットに、上記のような帯電防止剤の1種ないし2種以上を添加し、これを十分に混練した後、製膜することにより、基材フィルム20に帯電防止性を付与することもできる。
【0061】
熱可塑性樹脂層25は、熱によって溶融して壁面フィルム3a、3b、及び底面フィルム3cを相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等から選ばれた1種ないし2種以上を使用することができる。好ましいものとしては、未延伸ポリプロピレンを挙げることができる。熱可塑性樹脂層25の厚さとしては、ヒートシール性等を考慮すると、10μm〜100μm程度、特に15μm〜50μm程度であることが好ましい。
【0062】
また、例えば加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度その他を改良、改質する目的で、熱可塑性樹脂層25を構成する溶融押し出し樹脂に、前述の帯電防止剤の1種ないし2種以上を添加し、更に、その製膜化に際して、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を挙げることができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0063】
印刷層23は、基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25との間に文字、図形、記号、模様等の所望の印刷模様を形成するものである。印刷層23の形成方法としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、必要に応じて可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤の1種または2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整する。そして、このインキ組成物を用いてグラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の印刷方式により基材フィルム20の裏面に所望の印刷模様を印刷して印刷層23を形成する。
【0064】
バリア層23は、封入される内容物が水分や酸素により変質し易い場合、包装体1に高い水蒸気バリア性、ガスバリア性を付与するものである。バリア層23としては、基本的には、金属箔や、金属または金属酸化物を蒸着した蒸着膜であれば使用可能であり、その材質としては、例えばケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属またはその酸化物を使用することができる。好ましいものとしては、アルミ箔、ケイ素(Si)酸化物を蒸着したシリカ蒸着ポリエステルフィルム等を挙げることができる。
【0065】
上記の金属酸化物の表記は、例えばSiOx、AlOx、MgOx等のようにMOx (ただし、式中、Mは金属元素を表し、Xの値は金属元素によってそれぞれ範囲が異なる。)で表される。上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0〜2、アルミニウム(Al)は、0〜1.5、マグネシウム(Mg)は、0〜1、カルシウム(Ca)は、0〜1、カリウム(K)は、0〜0.5、スズ(Sn)は、0〜2、ナトリウム(Na)は、0〜0.5、ホウ素(B)は、0〜1、5、チタン(Ti)は、0〜2、鉛(Pb)は、0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は、0〜1.5の範囲の値をとることができる。
【0066】
上記において、X=0の場合は完全な金属であり、包装体1に透明性が要求される場合は使用することができないが、透明性が要求されない場合は使用可能である。また、Xの範囲の上限値は、金属が完全に酸化した状態の値である。本発明において、一般的にケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は使用される例に乏しく、ケイ素(Si)は、1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は、0.5〜1.5の範囲のものを使用することができる。
【0067】
上記のようなバリア層23の膜厚としては、バリア層23が金属箔である場合は5〜30μm、また蒸着膜である場合には使用する金属または金属酸化物の種類等によって異なるが、例えば50〜2000Å位、好ましくは100〜1000Å位の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。また、バリア層23として使用される金属または金属酸化物を2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した金属または金属酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0068】
中間層24は、包装体1は物理的及び化学的に過酷な条件におかれる場合、包装体1に高い密封性、耐突き刺し(耐ピンホール)性、耐熱性、耐光性、品質保全性、作業性、衛生性等を付与するものである。
【0069】
中間層24としては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂フィルムないしシートを任意に選択して使用することができる。
【0070】
上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。好ましいものとしては、延伸ナイロンフィルムを挙げることができる。その他、着色剤や紫外線吸収剤等の所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性フィルムないしシート等を使用することもできる。また、中間層24の厚さは任意であるが、数μm〜300μm程度の範囲から選択して使用することができる。中間層24の積層位置についても、基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25の間であれば特に制限はなく、例えば図7においてバリア層23と中間層24の積層順を入れ替えても良い。
【0071】
ドライラミネート層22は、積層体を構成する基材フィルム20、印刷層21、バリア層23、中間層24、熱可塑性樹脂層25を強固に密着させて層間剥離(デラミネーション)の発生を防止するものである。ドライラミネート層22を構成するラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、或いは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を使用することができる。
【0072】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。ドライラミネート層22の形成方法としては、積層する両者の一方の面に、上記のラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法或いは印刷法等によって塗布し、次いで溶剤等を乾燥させて形成することができ、そのコーティングないし印刷量としては、乾燥状態で0.1〜10g/m程度が望ましい。
【0073】
また、切り込み線10が熱可塑性樹脂層25から中間層24の深さまで形成されているため、基材フィルム20及びバリア層24で包装体1の密封性を確保しつつ、包装体1に円滑な開封性を付与することができる。
【0074】
次に、本発明の包装体に用いられる壁面フィルム(積層体)の他の積層構造について説明する。図8〜図13は、本発明の包装体を構成する壁面フィルムの他の構成例を示す断面図である。図8の例では、中間層24が積層されておらず、バリア層23の内側にドライラミネート層22を介して熱可塑性樹脂層25が積層されている。また、図9の例では、バリア層23及び中間層24の両方が積層されておらず、基材フィルム20の内側にドライラミネート層22を介して熱可塑性樹脂層25が直接積層されている。さらに、切り込み線10が熱可塑性樹脂層25から基材フィルム20の上面に到達する深さまで形成されている。他の部分の構成は図7と同様である。図8及び図9の構成においても、切り込み線10によって包装体1に円滑な開封性を付与しつつ、切り込み線10の形成されていない基材フィルム20で包装体1の密封性を確保することができる。
【0075】
図10の例では、バリア層23の一方の面に印刷層21を形成し、他方の面にドライラミネート層22を介して熱可塑性樹脂層25を積層したプレシート30を形成しておく。つまり、図10の構成ではバリア層23がプレシート30の基材層の役割を果たすことになる。そして、このプレシート30の印刷層21側にドライラミネート層22が積層された基材フィルム20をラミネートして壁面フィルム3a(積層体)を形成するものである。図10の構成においても、切り込み線10によって包装体1に円滑な開封性を付与しつつ、切り込み線10の形成されていない基材フィルム20で包装体1の密封性を確保することができる。
【0076】
また、基材フィルム20を積層する前のプレシート30に切り込み線10を形成することができるため、図11に示すように、プレシート30の印刷層22側から熱可塑性樹脂層25に向かって切り込み線10を形成しても良い。図11の構成によれば、熱可塑性樹脂層25の表面(包装体1の内面)に傷が付かないため、熱可塑性樹脂層25へ浸透し易い内容物を充填する場合に有利となる。
【0077】
図12の例では、図10の構成に加えて、印刷層21の外側にドライラミネート層22を介して中間層24を積層したプレシート30を形成しておく。つまり、図12の構成では中間層24がプレシート30の基材層の役割を果たし、その上に印刷層21、バリア層23、熱可塑性樹脂層25が積層されることになる。そして、このプレシート30の中間層24側にドライラミネート層22が積層された基材フィルム20をラミネートして壁面フィルム3a(積層体)を形成するものである。図12の構成では、切り込み線10によって包装体1に円滑な開封性を付与しつつ、切り込み線10の形成されていない基材フィルム20及び中間層24により、図10の構成に比べて包装体1の高い密封性、耐突き刺し性を確保することができる。
【0078】
また、図10の構成と同様に基材フィルム20を積層する前のプレシート30に切り込み線10を形成することができるため、図13に示すように、プレシート30の中間層24側から熱可塑性樹脂層25に向かって切り込み線10を形成しても良い。
【0079】
以上説明したように、壁面フィルム3a、3bを構成する基材フィルム20と熱可塑性樹脂層25のいずれかを残して切り込み線10を形成することで、包装体1の密封性を確保することができる。
【0080】
次に、本発明の包装体の製造方法について説明する。図7に示したような積層構成の場合、先ず、基材フィルム20の表面に必要に応じて印刷層21、ドライラミネート層22、バリア層23、中間層24等を積層した後、溶融押し出し法により熱可塑性樹脂層25を積層して壁面フィルム3a、3b、及び底面フィルム3cを製造する。壁面フィルム3a、3bには、予め切り込み線10(ハーフカットライン若しくは間欠ハーフカットライン)を形成しておく。
【0081】
切り込み線10の形成方法としては、外周面に切り込み線10の形状に応じて刃が形成されたカットローラと、カットローラに対向する受け側ローラとで構成されるローラ対を壁面フィルム3a、3bの製造ライン上に設けておく。そして、壁面フィルム3a、3bを、熱可塑性樹脂層25がカットローラ側になるようにローラ対の隙間を通過させることで、所望の形状の切り込み線10を形成することができる。
【0082】
切り込み線10の深さは、カットローラと受け側ローラとの隙間により調整することができる。また、切り込み線10の形成位置は、印刷層21と同時に形成された位置合わせマーク(トンボ)をセンサで検知することにより所定の位置に形成することができる。
【0083】
図1に示した包装体1は、例えばバッチ式に製造することができる。その場合、熱可塑性樹脂層25が対向するように2枚の壁面フィルム3a、3bを重ね、下部に底面フィルム3cを、熱可塑性樹脂層25を外向きにして折り返して挟んだ後、底部シール部7、側部シール部8を形成することにより、内容物を内包する収納部9が形成される。次に、側部シール部8にノッチ11を形成することにより、包装体1を製造する。最後に内容物を所定量充填し、残りの一辺をヒートシールして上部シール部12を形成する。
【0084】
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0085】
また、本発明の包装体1は、図1に示したようなスタンディングパウチ型に限られず、例えば側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型等のヒートシール形態によりヒートシールして種々の形態の包装体1を製造することができる。さらに、一枚の積層体のみで包装体1を製造することも可能である。即ち、積層体13aを折り曲げて二方シール型、三方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)等のヒートシール形態により収納部9を形成すれば良い。
【0086】
本発明の包装体1は連続的に製造することもできる。その場合、ロール状に巻かれた長尺の壁面フィルム3a及び3bを順次繰り出し、両方の積層体の周囲をヒートシールすると同時に内容物を充填する工程を連続して行うことにより、内容物が封入された複数の収納部9がマトリクス状に連なる長尺の包装体1を製造する。その後、包装体1はスリッターにより長尺方向にカットされ、さらに所定数ずつ幅方向にカットされる。
【0087】
こうして得られた本発明の包装体1は、液状、ゲル状、固形状、粉末状等の食品や医薬製剤、またはシリンジやカテーテル等の医療器具の包装材として、開封後の持ち運び性、内容物の取り出し性、製造性等の優れた特性を有することから、使用性及びコスト等を著しく改良した包装体を提供できるものである。
【0088】
その他本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図7〜図13に示した壁面フィルム3a、3b(積層体)の積層構造は好ましい一例であり、少なくとも基材フィルム20と最内層である熱可塑性樹脂層25とを含む積層構造であれば良い。
【0089】
また、上記実施形態では切り込み線10を収納部9の下方に向かって略U字状に湾曲させているが、切り込み線10の形状も一例にすぎず、例えば略円弧状に湾曲させても良いし、略コ字状または略V字状に屈曲させても良い。しかし、切り込み線10が屈曲していると、屈曲部分で開封端縁が切り込み線10の軌道からずれやすくなる。そのため、略U字状或いは略円弧状とすることが好ましい。
【0090】
また、上記の製造方法は好ましい一例に過ぎず、例えば壁面フィルム3a、3bの製造方法として、通常の包装材料を製造するときに使用する積層法、例えば、ウエットラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法、その他の方法を用いることもできる。
【0091】
また、必要ならば上記各層の積層を行う際に、被積層基材の表面に、例えばアンカーコート処理、コロナ放電処理、オゾン処理、フレーム処理、ブラスト処理等の前処理を任意に施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、内容物として液状、ゲル状、固形状、粉末状等の食品や医薬製剤、またはシリンジやカテーテル等の医療器具等を包装する包装体に利用可能であり、収納部の上部を切り取るための切り込み線が、収納部の少なくとも一方の側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成されており、収納部の上部を切り取ることで収納部の少なくとも一方の側端に把持部が形成されるものである。
【0093】
これにより、把持部を把持して開封後の包装体を持ち運ぶことができ、内容物の取り出し口となる開封端縁を把持する必要がないため衛生的である。特に、内容物が収納された状態で包装袋ごと加熱調理もしくはレトルト殺菌処理されるものである場合、熱くなっている包装袋の開封端縁を把持することなく、上方に突出した把持部を安全に把持することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 包装体
2 底部
3a、3b 壁面フィルム(積層体)
3c 底面フィルム(積層体)
7 底部シール部
8 側部シール部
9 収納部
10 切り込み線
10a〜10c ハーフカットライン
10d〜10f 間欠ハーフカットライン
11 ノッチ(開封開始手段)
12 上部シール部
13 把持部
15a〜15c 切り込み
20 基材フィルム
21 印刷層
22 ドライラミネート層
23 バリア層
24 中間層
25 熱可塑性樹脂層
30 プレシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体により形成され、内容物が封入される収納部と、
該収納部の側縁を閉鎖する側部シール部と、
該側部シール部に形成される開封開始手段と、
該開封開始手段に連続して前記収納部を横断するように形成され、前記収納部の上部を切り取るための連続または間欠のハーフカットラインから成る切り込み線と、
を有する包装体であって、
前記切り込み線は、前記収納部の少なくとも一方の側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成されており、前記収納部の上部を切り取ることで前記収納部の少なくとも一方の側端に把持部が形成されることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記切り込み線は、前記収納部の両側端から下方に向かって湾曲若しくは屈曲するように形成されており、前記収納部の上部を切り取ることで前記収納部の両側端に把持部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記切り込み線は、互いに略平行な複数の連続するハーフカットラインからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記切り込み線は、互いに略平行な2本の間欠ハーフカットラインからなり、各間欠ハーフカットラインを構成する切り込みは略コ字状または略円弧状に形成され、切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットライン間で互いに向き合うように配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項5】
前記2本の間欠ハーフカットラインに沿って、略コ字状または略円弧状の切り込みで構成される1本以上の間欠ハーフカットラインをさらに形成するとともに、切り込みの両端部が隣接する間欠ハーフカットラインに向くように配置したことを特徴とする請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
前記間欠ハーフカットラインを構成する各切り込みの両端部は、前記切り込み線に垂直な方向から見たとき、対向する切り込みの端部から切り込みの長さの1/10以上内側に重なることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の包装体。
【請求項7】
前記切り込み線は、基材フィルムと熱可塑性樹脂層のいずれかを残して形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の包装体。
【請求項8】
前記積層体は、前記基材フィルムと、前記熱可塑性樹脂層を含むプレシートとを積層して形成されており、前記切り込み線は、前記基材フィルムの積層前に前記プレシート側に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の包装体。
【請求項9】
前記切り込み線は、前記熱可塑性樹脂層の裏面側から形成されることを特徴とする請求項8に記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−46231(P2012−46231A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191457(P2010−191457)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】