説明

包装容器

【課題】包装容器の変形を防止し、使用時でも外観形状が損なわれない包装容器を提供する。
【解決手段】徐放性物質を有する内容物を収容する包装容器1において、少なくとも内容物の徐放性物質が接する部分が、ポリオレフィン系樹脂であってポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂を混合した混合樹脂からなるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭剤や芳香剤などの徐放製剤を収容する包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から徐放性物質を含む徐放製剤(消臭剤や芳香剤など)は、包装容器に収容した製品として多く提供されてきている。そして、前記徐放製剤が薬剤と徐放性物質の溶剤とを主成分としてなるものにあっては、耐薬性材料からなる小容器に入れ、この小容器を製品パッケージとなる前記包装容器に収容した形態で流通し、小売り店舗などでの陳列販売されている。使用に際しては、前記小容器に設けられているガスバリア性に優れたフィルム材を剥ぎ取るなどして通気部分をその小容器に設け、この状態で包装容器の内部に位置させるようにしている。
【0003】
図1と図2は徐放製剤を内容物として収容した包装容器1の一例を示していて、複数の透孔2が開口された前面部3と上端に吊り下げフック4を有する後面部5と底面側のヒンジ6を介して連接され、前面部3と後面部5とを組合わせることで開閉可能な容器本体7が形成され、その容器本体7の内側に上述した徐放製剤入りの小容器8を配置するものとなっていた。
そして、容器本体の材料としては、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂が成形性が良く、特許文献1にも示されているようにヒンジを有する容器など様々な容器に適し、さらに安価であることから、上述の徐放製剤を収容する包装容器の材料として使用されてきている。
【特許文献1】特開平9−207927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、徐放製剤を内容物として収容する包装容器において、上述のように一般消費者が容器本体を一度開いて、小容器から徐放製剤が揮散できる状態にしてから容器本体を再び閉じる操作が行なえるようにヒンジにより開閉できる構造であるため、その容器本体の材料として、ヒンジ特性が良好となるようにポリプロピレン系コポリマー樹脂が選択されていた。
しかしながら、このポリプロピレン系コポリマー樹脂は、溶剤(徐放性物質)がしみ込む度合いの高い樹脂であり、パラフィンなどの鉱物油を溶剤としている徐放製剤が収容物であると、容器本体に溶剤がしみ込むことで、つぎの問題が生じるようになっていた。
【0005】
例えば、一般消費者が徐放製剤を収容した包装容器からなる商品を購入してきて、内部の小容器を開封して使用することになる。その小容器の開封によって鉱物油の溶剤が薬剤とともに揮散し、まず最初に容器本体の内面側に溶剤がしみ込み始めて、その内面が溶剤により膨潤し始める。
そして、容器本体の前面部及び後面部それぞれでは、内面が膨潤して体積が僅かながらも増し、一方、外面それぞれはまだ膨潤していない状態であるため、前面部や後面部が変形し始める。特に図示したような透孔を多く有する前面部では、この部分の剛性自体も小さいことから、図2の仮想線(二点破線)に示すように凹む変形が生じて、包装容器の商品しての外観を損なうという問題が発生する。
【0006】
一方、ポリプロピレン系ホモポリマー樹脂を上記容器本体の材料として用いることも考えられるが、このポリプロピレン系ホモポリマー樹脂を用いた場合、容器の変形は最も起こり難いものの、しかし、包装容器としての耐衝撃性やヒンジ特性に劣るという不具合がある。
以上の点から本発明者らにあっては、容器の成型材料としてポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂との混合樹脂を用いることで、このポリオレフィン系樹脂を材料とした包装容器であっても、上記鉱物油からの影響を受け難い有用な包装容器となることに着目した。また、ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂での有用な点と、ポリオレフィン系コポリマー樹脂での有用な点も引き出すことができる点についても着目して、本発明に至った。
そこで本発明は上記事情に鑑み、包装容器の変形を防止することを課題とし、使用時でも外観形状が損なわれない包装容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、徐放性物質を有する内容物を収容する包装容器において、少なくとも前記内容物の徐放性物質が接する部分が、ポリオレフィン系樹脂であってポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂を混合した混合樹脂からなるものであることを特徴とする包装容器を提供して、上記課題を解消するものである。
【0008】
そして、本発明において、上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂がポリプロピレンであり、ランダムまたはブロックコポリマー樹脂とすることが良好である。
また、本発明において、上記混合樹脂における上記ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂と上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂との質量%での混合比が、6:4〜9:1の範囲とすることが良好である。
また、本発明において、ヒンジを介した開閉部分を有していて、かつ上記混合樹脂における上記ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂と上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂との質量%での混合比が、6:4〜8:2の範囲とすることが可能である。
さらに、本発明において、上記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂とすることが良好である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、収容物が有する徐放性物質が接する部分、例えば、内容物が包装容器の内部に直接収容されていて、収容物中の徐放性物質が直接に包装容器に接している場合や、収容物が上述した小容器に入れられ、収容物から薬剤を伴ないながら徐放性物質が揮散することによって包装容器に接する場合に、その徐放性物質が接する部分が、ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂との混合樹脂としている。そして、徐放性物質が接する部分においても、ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂(結晶化度が高く、徐放性物質がしみ込み難い点を特徴の一つとして備える)が存在していることから、徐放性物質のしみ込み度合いが小さく、膨潤し難くなって容器の変形が生じないようになる。よって、包装容器の外観を継続的に維持することができる。
さらに、ポリオレフィン系コポリマー樹脂も存在するので、ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂での成形性の悪い点や耐衝撃性の低い点を良好に向上させることができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、ポリオレフィン系コポリマー樹脂がポリプロピレンであり、ランダムまたはブロックコポリマー樹脂であるので、耐衝撃性が向上する。また、ヒンジ等の力のかかる部分の耐久性も向上する。
また、請求項3の発明により、徐放性物質が接する部分において耐衝撃性やヒンジ特性が向上した包装容器が得られるようになる。
また、請求項4の発明により、ヒンジを有して開閉できるものであるので、上述した内容物入り小容器を簡単に出し入れして交換できる包装容器が得られる。そして、ヒンジの部分についてはヒンジ特性が確保され、ヒンジに割れや裂けを生じさせず、包装容器における開閉部分の機能を継続的に保持できる。
また、請求項5の発明により、ポリプロピレン系樹脂が持つ耐衝撃性やヒンジ特性に優れた点を活かした包装容器が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、従来例の説明に用いた図1と図2を本発明の実施の形態の説明にも用いる。
本発明における包装容器1の容器本体7は全体がポリオレフィン系樹脂からなるものであって、その成型材料を、ポリプロピレン系ホモポリマー樹脂とポリプロピレン系コポリマー樹脂を混合した混合樹脂としているものである。そして、前記ポリプロピレン系コポリマー樹脂については、ポリプロピレン系ランダムコポリマー樹脂またはポリプロピレン系ブロックコポリマー樹脂が選択されて成型されているものである。
【0012】
さらに、容器本体7を成型している混合樹脂での混合割合にあっては、上記ポリプロピレン系ホモポリマー樹脂と上記ポリプロピレン系コポリマー樹脂とを、質量%での混合比で6:4としている。
このように容器本体7自体において、結晶化度の高く除幼生物質がしみ込み難いポリプロピレン系ホモポリマー樹脂がより多く存在していることから、図示のように内部に配置された小容器8を開封して、その小容器8に入れられていた主要物から薬剤を伴なって揮散する徐放性物質(鉱物油)が容器本体7の内面に接触し始めても、前面部3や後面部5の内面が膨潤し難くなる。よって、容器本体7は変形を生じないようになったり、また、変形したとしてもその変形の程度が目立たない極めて小さな変形にとどまり、包装容器1の外観が損なわれることがないものである。
【0013】
また、さらに耐衝撃性やヒンジ特性に優れるポリプロピレン系コポリマー樹脂もこの容器本体7に多く存在していることから、容器本体自体の耐衝撃性が良好であり、そのポリプロピレン系コポリマー樹脂自体についてもポリプロピレン系ランダムコポリマー樹脂またはポリプロピレン系ブロックコポリマー樹脂としているので、前面部3と後面部5とのそれぞれの底部側を連結しているヒンジ6についても切れや割れを生じさせず、さらに開閉部の開閉操作が良好に行なえるように設けられている。
【0014】
この実施の形態において、容器本体7を成型している混合樹脂での混合割合を、上記ポリプロピレン系ホモポリマー樹脂と上記ポリプロピレン系コポリマー樹脂との質量%での混合比を8:2としてもよく、この場合でも容器の変形や、開閉部分の不良を生じさせることはない。また、容器本体全体を混合樹脂から成型したが、揮散する徐放性物質が接触する度合いが極めて高い前面部の内面側と後面部の内面側のみに層として形成するようにしてもよい。
【0015】
上記実施の形態においては、前面部と後面部とからなる容器本体の内部に、徐放製剤を入れた小容器を配置するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、包装容器を、蓋材を有するカップ状の形態で内部に徐放製剤が直接収容される一次容器であって、使用時には前記蓋材を除去するようにしたものであってもよい。このようにヒンジ部分を備えず一次容器の形態とする場合には、成型材料である混合樹脂を、ポリプロピレン系ホモポリマー樹脂とポリプロピレン系コポリマー樹脂とを質量%の混合比で9:1としてもよく、容器自体の変形を防止するものとすることができる。そして、ポリプロピレン系コポリマー樹脂を、ポリプロピレン系ランダムコポリマー樹脂またはポリプロピレン系ブロックコポリマー樹脂とする必要は必ずしもない。
また、この例でも容器全体を混合樹脂で成型する必要もなく、徐放性物質が直接接触する内面側のみに層として形成するようにしてもよい。
【0016】
混合樹脂のポリプロピレン系ホモポリマー樹脂とポリプロピレン系コポリマー樹脂との質量%での混合比を以下のように変えた四体の包装容器(試験体a,b,c,d)を作製し、徐放性物質を有する内容物に対する耐性(内容物耐性)、耐衝撃性を試験した。その評価を表1に示す。包装容器の形態は図1、図2に示した形態のものであり、内容物耐性では内容物を上記実施の例のように小容器に入れて、その小容器から徐放性物質を揮散させた。
【0017】
試験の内容物耐性についての評価は、変形が確認されたものを×、変形が確認できないものを○として示した。
耐衝撃性についての評価は、−5℃と−20℃の環境下で1.2mの高さからコンクリート面に自然落下させたときに、割れたものを×、割れなかったものを○として示した。
【0018】
【表1】

【0019】
上記耐衝撃性の試験において、−20℃の環境下で、試験体cに割れが認められたが、徐放性物質を揮散させる消臭剤や芳香剤を収容する包装容器には、過度な環境下となっており、−5℃の環境下で割れが認められないので、充分に良好な結果が得られたと判断した。
以上の試験から、混合樹脂におけるポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂との質量%での混合比が、6:4〜9:1の範囲である混合樹脂を、内容物の徐放性物質が接する部分に形成することが、包装容器として充分に有効であると判断できた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】包装容器の一例を示す説明図である。
【図2】変形した前面部の状態を横断面で示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1…包装容器
2…透孔
3…前面部
4…フック
5…後面部
6…ヒンジ
7…容器本体
8…小容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐放性物質を有する内容物を収容する包装容器において、少なくとも前記内容物の徐放性物質が接する部分が、ポリオレフィン系樹脂であってポリオレフィン系ホモポリマー樹脂とポリオレフィン系コポリマー樹脂を混合した混合樹脂からなるものであることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂がポリプロピレンであり、ランダムまたはブロックコポリマー樹脂である請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
上記混合樹脂における上記ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂と上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂との質量%での混合比が、6:4〜9:1の範囲である請求項1または2に記載の包装容器。
【請求項4】
ヒンジを介した開閉部分を有していて、かつ上記混合樹脂における上記ポリオレフィン系ホモポリマー樹脂と上記ポリオレフィン系コポリマー樹脂との質量%での混合比が、6:4〜8:2の範囲である請求項1から3の何れか一項に記載の包装容器。
【請求項5】
上記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である請求項1から4の何れか一項に記載の包装容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−107701(P2009−107701A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283498(P2007−283498)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】