説明

包装材用積層テープ

【課題】キャリアテープ等の包装基材に対する接着性及び、剥離性、かつ、帯電防止性に優れ、特に剥離時において紙製包装基材表層の紙繊維を毛羽立たせることなしに剥離することができる包装材用積層テープを提供する。
【解決手段】支持基材層上に、ベースポリマー、粘着付与樹脂、高分子型帯電防止剤を含む熱接着剤層が積層されている包装材用積層テープであって、接着剤層が、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を1〜20重量部、高分子型帯電防止剤を1〜30重量部含む包装材用積層テープである。高分子型帯電防止剤としてはポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤が好ましく熱接着剤層を構成するベースポリマーには、エチレン−α−オレフィン共重合体をベースポリマーの50重量%以下の範囲内で含まれているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電子部品の搬送時などに該電子部品等を包装する包装材用として使用される積層テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ部品を搬送する方法として、該電子部品を包装材に包装して搬送する、テーピングリール方式が知られている。このテーピングリール方式では、テープ状厚紙の長さ方向に一定間隔でチップ型部品収納用のポケットを設けたキャリア(紙製包装基材)に部品を挿入し、上からカバーテープ(トップテープ)を熱シールして封入して、リール状に巻き取られ搬送される。搬送後には、回路基板などの作製工程において、カバーテープを剥離し、チップ部品をエアー吸着ノズルで吸着して、基板上に実装するシステムが主流となっている
【0003】
このようなテーピングから基盤へのチップ供給までの一連の工程において、電子部品の包装材として用いられるカバーテープに対しては、チップを確実に供給するために次のような性能が要求されている。すなわち、(1)紙製包装基材に対して良好な接着性を有すること。(2)カバーテープ剥離の際、安定な剥離性があり、紙製包装基材からの毛羽発生などなく、部品実装時のトラブルがないこと。(3)カバーテープ剥離時に発生する剥離帯電によりチップがポケットから飛び出すのを抑制する、いわゆる帯電防止性に優れること。(4)輸送途中、環境条件に起因して部品がカバーテープに付着しないことなどである。
【0004】
特に近年、チップ型電子部品においては部品サイズが益々小型化し、カバーテープを剥離する際に生じる紙製包装基材表層を剥がし取る現象(毛羽発生)などが、実装機の吸着ノズルへの悪影響を与え、実装率の低下をもたらすなどの問題が発生している。このため、特に極小部品の包装等に用いられるカバーテープにおいては、良好な剥離性を有し、剥離時、紙製包装基材の表面を毛羽立たせないことが、帯電防止性能とともに重要な性能であり、このようなカバーテープが所望されている。
【0005】
包装材の剥離帯電圧を抑制する方法としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン系共重合体、アクリル系樹脂及びワックス類から選択された少なくとも1種の成分を表面又は内部に含有する包装基材と、分子内にカルボキシル基又はアシルオキシ基を含有するオレフィン系共重合体、アイオノマー樹脂、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン系化合物とのブロック共重合体から選択された少なくとも1種の重合体を含む樹脂組成物により形成された接着樹脂層を有しているカバーテープを組み合わせる方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法では、種類の違う基材とカバーテープを組み合わせた場合効果が得られなくなるため、組み合わせる基材の種類を問わず帯電防止性能を発揮することができるカバーテープが所望されている。
【0006】
又、帯電防止性を有するカバーテープとしては、ポリオレフィン系樹脂に帯電防止剤(界面活性剤=低分子型帯電防止剤)を練りこんだ接着剤層が中間層を介して支持基材上に積層されたものが知られている(特許文献2参照)。このカバーテープは、帯電防止剤とし配合した低分子型帯電防止剤が、カバーテープと紙製包装基材の界面にブリードし、ピール強度を低下させてしまう。このため、接着性を確保する為に接着付与剤を配合し、ピール強度を維持している。しかしながら、低分子成分である帯電防止剤は、接着層内を移動するため、時として紙製包装基材との接着力が高くなる場合や、局部的に接着力が上昇してしまうなどして、カバーテープを剥がす際、紙製包装基材の表層を引きちぎるなどして毛羽を発生させてしまう場合があった。このようなカバーフィルムは、部品のサイズ等によっては十分実用に耐え得るものであるが、極小サイズのチップ型電子部品においては、カバーテープを剥離する際に生じる紙製包装基材表層を剥がしとる現象(毛羽発生)などが、実装機の吸着ノズルへの悪影響を与え、実装率の低下をもたらす等の問題が発生している。このため、特に極小部品の包装等に用いられるカバーテープにとっては、良好な剥離性を有し、剥離時、紙製包装基材の表面を毛羽立たせないことが帯電防止性能とともに重要な性能である。
【0007】
また、接着剤層の表面抵抗率が温度湿度に依存して変化し、これにより接着剤層表面が帯電することを防ぐ方法として、接着剤に高分子型帯電防止剤を配合することが検討されている(特許文献3参照)。このようなカバーテープでは、キャリア台紙との接着性を確保するために、接着剤中に多量の粘着付与剤を配合するために接着力が適性な値よりも強くなったり、経時的に剥離性が低下し、紙製包装基材表面の紙繊維を引き剥がし(毛羽発生)、実装での不良を引き起こす場合があり、このような問題のないカバーテープが望まれている。
【0008】
さらにまた、カバーテープを紙製包装基材から剥離する際に生じる剥離振動(ビビリ)により、キャリア台紙キャビティ内のチップ部品が傾いたりキャビティから飛び出す現象(チップ飛び)などが発生し、チップ部品をエアー吸着ノズルで吸着する際正確な位置での吸着ができず、実装率低下の原因となっている。このような剥離振動の問題は、チップ部品の小型化軽量化が進むにつれますます顕著となっている。しかも、同一のカバーテープを用いても、キャリア台紙の種類やロットにより接着強度が異なるため、一定の剥離力によりカバーテープを剥離させ、剥離振動を低減させるためには、テーピング機での圧着条件を紙製包装基材の種類やロットがかわるごとに調整するなど、高レベルな管理が要求される。このため、キャリア台紙の種類やロットによらず、一定の圧着条件により一定の接着力を安定して発現し、剥離振動を生じにくいカバーテープが望まれている。
【特許文献1】特開2003−341720号公報
【特許文献2】特開2000−191991号公報
【特許文献3】特開2001−200217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、キャリアテープ等の包装基材に対する熱接着性に優れるとともに、帯電防止性能と、剥離時に紙製包装基材の表面を毛羽立たせることなく剥離できる良好な剥離性を長期間にわたり維持し、高い実装率を確保できる包装材用積層テープを提供することにある。
本発明の他の目的は、湿度等環境が変化しても適度な接着力を安定して維持し、キャリア台紙の種類やロットに依らずに一定の圧着条件により一定の接着力を安定して発現し、極小チップ部品の包装に使用した場合であっても、高い実装率を確保できる包装材用積層テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため鋭意検討した結果、支持基材層上に設ける熱接着剤層を特定の成分で構成すると、包装基材に対する接着性、帯電防止性、剥離時の毛羽発生抑制、剥離振動の抑制の何れをも充足できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、支持基材層上に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするベースポリマー、粘着付与樹脂、高分子型帯電防止剤を含む熱接着剤層が積層されている包装材用積層テープであって、熱接着剤層が、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を1〜20重量部、高分子型帯電防止剤を1〜30重量部含むことを特徴とする包装材用積層テープを提供する。
【0012】
上記高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル構造を含むものを好適に使用することができる。
【0013】
熱接着剤層は、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を2〜13重量部、高分子型帯電防止剤を10〜30重量部含むのが好ましい。
【0014】
熱接着剤層を構成するベースポリマーには、エチレン−α−オレフィン共重合体を少なくとも含み、その含有量はベースポリマーの50重量%以下であることが好ましい。
【0015】
ポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテルエステルアミドを含む高分子型帯電防止剤を好適に使用できる。
【0016】
熱接着剤層の厚みは、5〜50μmであり、熱接着剤層の表面抵抗率は1013Ω/□以下であるのが好ましい。また、本発明の包装材用積層テープを2種類の異なる紙製包装基材に190℃で熱シールした際に、各々の紙製包装基材に対する該テープの接着力の差が2倍以内であるのが好ましい。
【0017】
包装材用積層テープを紙製基材に熱シールした後、紙製包装基材から剥離させた際の接着剤層に生じる剥離帯電圧(23℃×65%RH、剥離角度180°、剥離速度5000mm/分、電極と接着剤層との距離5mm)の絶対値が200V以下であることが好ましい。
【0018】
熱接着剤層を構成する接着剤組成物は、該接着剤組成物を35℃×80%RHの条件にした高温恒湿機中に24時間保存した際の水分率が0.5%以下であるのが好ましい。
【0019】
本発明の包装材用積層テープは、紙製包装基材に熱シールした後、紙製包装基材表層の紙繊維を毛羽立たせることなしに剥離できることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装材用積層テープは、熱接着剤層が特定の成分により構成されているので、キャリアテープなどの包装基材に対する熱接着性に優れるとともに、帯電防止性能と良好な剥離性を長期にわたり維持できる。このため、本発明の包装材用積層テープを小型電子部品包装材のトップカバーとして使用した場合には、剥離時の紙製包装基材表層の毛羽立ちを大幅に抑制することができ、毛羽立ちによる実装機のエアーノズルへの影響も抑制することができる。また、組み合わせる基材の種類を問わず、トップカバー表面の帯電を防止し、帯電による電子部品への影響なども抑制するため、良好な部品実装性が可能となる。さらにまた、一般に普及している紙製包装基材に対して、基材の種類に依らず一定の圧着条件により一定の接着性を安定して発現する。このため、包装材用積層テープを紙製包装基材に熱シールする際に、紙製包装基材の種類やロットに応じて圧着条件を細かく調整することを要せず、剥離時には一定の力により良好に剥離できるため、剥離振動が抑制される。これらの接着性、剥離性、帯電防止性、剥離振動防止性などの性能は、テーピングにより電子部品等を包装後、長期間倉庫等で保管した後でも劣化することなく、高い実装率を達成できる。特に、静電気が発生しやすい乾燥した環境でも優れた帯電防止性能を発揮し、熱接着層を吸水後の水分率が一定の値以下である接着剤組成物により構成すれば、高湿度下や結露時においても一定の接着力を発現し、該一定の接着力を長期間にわたり維持するため、湿度等に左右されず安定した実装が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の包装材用積層テープは、支持基材層と支持基材層上に設けられた熱接着剤層とで構成されている。支持基材層を構成する支持基材としては、自己支持性を有するものであればよく、例えば和紙、薄葉紙、クレープ紙、混抄紙、複合紙などの紙類;不織布、布;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酸共重合樹脂などのオレフィン系樹脂、ポリプロピレン変性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル等の熱可塑性樹脂で構成されたプラスチックフィルム又はシート;銅、アルミニウムなどの金属で構成された金属箔又は薄板;これらの積層体などが挙げられる。
【0022】
前記支持基材は、融点が90℃以上であるのが好ましい。融点が90℃未満の場合には、金属製アイロンなどを用いて熱圧着によりテーピングを行う際に、支持基材が溶融してアイロンなどに付着し、本来の包装という目的を達成できなくなる恐れがある。
【0023】
支持基材層の表面(接着剤層とは反対の面)は、慣用の表面処理、易滑処理、帯電防止処理などが施されていてもよい。また、支持基材層の接着剤層と接する面には、オゾン処理、コロナ処理などの投錨性を向上するための処理が施されていてもよく、特に支持基材がプラスチックフィルムの場合は、アンカーコート剤塗布による投錨性向上手段が採られていてもよい。
【0024】
支持基材層の厚みは、機械的強度、ハンドリング性などが損なわれない範囲で用途に応じて広い範囲で選択できるが、一般には5〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度である。
【0025】
熱接着剤層は、ベースポリマー、粘着付与樹脂、及び高分子型帯電防止剤を含む熱可塑性接着剤で構成されている。ベースポリマーは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、必要に応じてその他のポリマー、例えば酢酸ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどを組み合わせて使用できる。なお、ベースポリマーはポリオレフィン系樹脂のみで構成されていてもよく、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒法ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン;エチレン共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)などのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体;アイオノマー;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体など);ポリプロピレン変性樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、ベースポリマー中に60重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは95重量%以上含まれる。
【0027】
その他のポリマーとしての酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−ビニルエステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0028】
熱可塑性エラストマーとしては例えば、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、SEP(スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体)などのスチレン系熱可塑性エラストマー;スチレン系ブロックコポリマー(例えばスチレン含有量5重量%以上のスチレン系ブロックコポリマー);ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリプロピレンとEPT(三元系エチレン−プロピレンゴム)とのポリマーブレンドなどのブレンド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0029】
ベースポリマーは、エチレン−α−オレフィン共重合体をベースポリマー中50重量%以下の範囲内で含んでいることが好ましい。すなわち、ベースポリマーはエチレン−α−オレフィン共重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリオレフィン系樹脂と、必要に応じてその他のポリマーとの組み合わせにより構成されているのが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量は、より好ましくはベースポリマーの5〜40重量%であり、特に好ましくは10〜35重量%である。ベースポリマー中にエチレン−α−オレフィン共重合体を含むことにより、接着剤は適度な接着力と良好な剥離性を発現し、さらに粘着特性の経時的な変化を防止できる。エチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が50重量%より多いと、接着力が適正な範囲である10〜70gf(98.1〜687mN)を超えてしまい、剥離後、紙製包装基材に毛羽が発生したり、熱接着剤層が柔らかくなりすぎ、テーピング機での圧着時に接着剤がシールコテなどに付着する等のトラブルが発生し、好ましくない。エチレン−α−オレフィン共重合体をベースポリマー中に含む場合は例えば、その他のポリマーとして、酢酸ビニル含有量15重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂又は、前記酢酸ビニル含有量15重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂に加えて低密度ポリエチレンを使用するのが好ましい。この際の好ましい配合量は例えば、低密度ポリエチレン:0〜10重量%、酢酸ビニル含有量15重量%以下であるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂:50〜95重量%、エチレン−α−オレフィン共重合体:5〜40重量%である。
【0030】
粘着付与樹脂としては、例えば、石油樹脂(脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、前期芳香族石油樹脂を水添した脂環族石油樹脂など)、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、クマロン・インデン樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独又は、2種以上組み合わせて使用できる。なお、接着剤層を押出ラミネートにより形成する場合には、高温で溶融酸化されるので、酸化に対する安定性の点から、脂環族石油樹脂が特に好ましい。
【0031】
接着剤層に粘着付与樹脂を含有することにより、テーピング作業性が向上するとともにキャリアテープなどの包装基材に対して安定かつ良好な接着力が得られる。
【0032】
粘着付与樹脂の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは2〜13重量部、特に好ましくは3〜10重量部程度である。粘着付与樹脂が1重量部未満の場合は、キャリアテープ(包装基材)との接着性が得られにくい。また、20重量部を超えると、キャリアテープとの接着性は良いが、剥離の際、紙製包装基材表面より紙の繊維を引きちぎり、毛羽の発生につながり、回路基板製造工程においてエアーノズルでの吸着不良などの問題が発生する。また、接着力が著しく上昇して、規格である10〜70gf(98.1mN〜687mN)の適正接着力の範囲を外れてしまい、トップカバーテープとしての使用に適さないこととなる。
【0033】
高分子型帯電防止剤の配合量は、ベースポリマー100重量部に対して1〜30重量部、好ましくは10〜30重量部、特に好ましくは15〜25重量部である。高分子型帯電防止剤の配合量が少ない場合は、所望の帯電防止性能が得られず、表面抵抗率が1013Ω/□を超えることとなり、極少のチップ部品では、静電気による接着剤層への付着などの問題が発生する。また、高分子型帯電防止剤の配合割合が多すぎると、帯電防止性能は良好となるが、接着性能の低下をまねき、所望の接着力が得られない。なお、高分子型帯電防止剤に加えて、一般に使用される低分子型帯電防止剤(界面活性剤)を併用して表面抵抗率を調整することも可能である。この際の低分子型帯電防止剤の使用量は特に制限されないが、ベースポリマー100重量部に対して、例えば5重量部を超えない範囲内で適宜選択することができる。低分子型帯電防止剤の配合量が多すぎると、低分子型帯電防止剤が熱接着剤層表面にブリードするなどの問題が発生する場合があり、好ましくない。
【0034】
高分子型帯電防止剤としては、帯電防止性を有するポリマーを何れも使用することができ、特に限定されない。例えば、ポリエーテルエステルアミドなどのポリアミド系コポリマー、カリウムアイオノマーなどのカルボン酸塩基含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基含有コポリマーなどが挙げられる。高分子型帯電防止剤は、低分子型の帯電防止剤のように接着剤層内を移動し、接着剤層表面に浮き出ることなどがないため、高分子型帯電防止剤を使用することにより、長期にわたり安定した帯電防止性と接着性が得られる。例えば、接着剤層の表面抵抗率を1013Ω/□以下(例えば、108〜1013Ω/□程度)、好ましくは109〜1012Ω/□程度とすることができる。また、接着力についても適正な接着力である10〜70gf(98.1mN〜687mN)を長期にわたり安定して維持することができる。
【0035】
高分子型帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド;ポリオレフィンとポリエーテルのブロックポリマー;ポリエチレンエーテル及びグリコールからなるポリマーなどのポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤を好適に使用することができる。ポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤を用いると、包装材用積層テープを包装基材に熱シールした後剥離する際に、ポリエーテル成分が基材側に残留し、接着剤中の帯電防止剤の一部が包装基材表面に転写されたかたちとなるため、包装基材の種類(素材)によらず、高い帯電防止効果を発揮することができる。例えば、本発明の包装材用積層テープを紙製包装基材に熱シールした後、紙製包装基材から剥離させた際の熱接着剤層に生じる剥離帯電圧の絶対値(23℃×65%RH、剥離角度180°、剥離速度5000mm/分、電極と接着剤層との距離5mm)は、どのような紙製包装基材を使用した場合であっても200V以下である。
【0036】
また、剥離時にポリエーテル成分が基材側に残留することにより、一般に普及しているいかなる紙製包装基材に対しても、一定の条件で熱シールした場合には一定の接着力を発現する。例えば、本発明の包装材用積層テープを北越製紙製紙製包装基材:商品名「HOCTO40」及紙び北越製紙製紙製包装基材:商品名「HOCTO40E」に190℃で熱シールした場合、紙製包装基材「HOCTO40E」に対する接着力は、紙製包装基材「HOCTO40」に対する接着力の2倍以内である。なお、本発明者の検討によれば、紙製包装基材「HOCTO40」は、一般に普及している紙製包装基材のなかで、高分子型帯電防止剤を含まず、低分子型帯電防止剤を含む接着剤に対して最も低い接着力を示し、紙製包装基材「HOCTO40E」は、高分子型帯電防止剤を含まず、低分子型帯電防止剤を含む接着剤に対して最も高い接着力を示す。例えば、富士共和製紙製:商品名「FK−42」、東京製紙製:商品名「TK−43」、王子製紙製:商品名「HJ−42」などの一般に普及している紙製包装基材に本発明の包装材用積層テープを190℃で熱シールした際の接着力は、何れも本発明の包装材用積層テープを紙製包装基材「HOCTO40E」に190℃で熱シールした際の接着力以下であり、かつ本発明の包装材用積層テープを紙製包装基材「HOCTO40」に190℃で熱シールした際の接着力の2倍以下である。
【0037】
ポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤は公知慣用のものを使用することができ、特に制限されないが、ポリエーテルエステルアミドを含む高分子型帯電防止剤を特に好適に使用できる。例えば、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドとポリ(オキシアルキレン)グリコールとの反応により得られ、平均分子量が8000〜100000程度のポリエーテルエステルアミドからなる高分子型帯電防止剤などを例示できる。高分子型帯電防止剤は、ベースポリマーや粘着付与樹脂の種類等により、相溶性やその他の物性を考慮して、適宜選択して使用すればよい。なお、高分子型帯電防止剤は、押出しラミネートや熱シールの際の高温による変質などを防止するために、熱分解温度が120℃以上であることが好ましい。
【0038】
粘着付与樹脂及び高分子型帯電防止剤の配合量は、それぞれ上述の範囲内で選択すればよいが、粘着付与樹脂及び高分子型帯電防止剤の添加量の総和がベースポリマー100重量部に対して好ましくは33重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下となるような範囲で選択するのが望ましい。粘着付与樹脂及び高分子型帯電防止剤の添加量の総和がこの範囲内であると、接着力や表面抵抗率などの特性の経時変化がさらに抑制された包装材用積層テープが得られるため、好ましい。
【0039】
また、接着剤層の構成成分として、必要に応じて酸化防止剤、紫外線防止剤、カップリング剤の他、製造時の易加工性を考慮して、離型剤、フィラーなどを添加できる。更に、前記以外の帯電防止剤などを併用して使用することもできる。
【0040】
上述のベースポリマー、粘着付与樹脂、高分子型帯電防止剤及び必要に応じて配合されるその他の成分を溶融混合することにより本発明の包装材用積層テープの接着剤層を構成する接着剤組成物が得られる。この接着剤組成物は、該接着剤組成物を粒径約3mmのペレット状に成形し、35℃×80%RHの条件にした恒温恒湿機中に24時間保存した際の水分率が0.5%以下、特に0.3%以下であることが好ましい。吸湿後の水分率がこの範囲内であると、接着剤層が該接着剤よりなる包装材用積層テープは、環境の変化による接着力の変動が特に抑制されており、所望の接着力安定的に持続する。とりわけ、高湿度下や結露時における接着力の低下は上記水分率範囲内において顕著に抑制される。
【0041】
上記成分により構成される接着剤層の厚さは、接着性やハンドリング性などの点から5〜50μm、特に10〜30μm程度が好ましい。接着剤層の厚さが5μm未満では十分な接着力が得られない場合があり、50μmより厚いと熱シール時に接着剤が染みだしてテーピングマシン等を汚染するトラブルが発生する場合がある。
【0042】
本発明では、前記支持基材層と接着剤層の間に、両者の密着性を向上するために、中間層を設けることもできる。この中間層は、例えば、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、などで構成できる。これらの成分は単独で又は2種以上混合して使用できる。ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマーとしては前記例示のものを使用できる。
【0043】
中間層の厚みとしては、製造工程における作業性や、積層テープとしたときの取り扱い性を損なわない範囲内で適宜選択できるが、例えばラミネート法により製造する場合であれば、5μm〜30μm程度が一般的である。
【0044】
本発明の積層テープは、例えば、接着剤層の構成成分を所定の割合で配合し、二軸混練機でメルトブレンドしてペレット化したもの、またはドライブレンドしたものを慣用のシングル又はタンデム押出しラミネート法により、支持基材上に中間層を介し、又は介さずにラミネートすることにより製造できる。また、接着剤層と中間層とを支持基材層上に共押出しラミネートにより積層して製造することもできる。
【0045】
このようにして得られる積層テープは、チップ固定抵抗器などの抵抗器、積層セラミックコンデンサなどのチップ型電子部品を搬送する際の包装材用積層テープ等として好適に使用できる。特に、紙製包装基材に熱シールした後、剥離する際の剥離性に優れており、紙製包装基材表層の紙繊維を毛羽立たせることなしに剥離することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)80重量部;エチレン−α−オレフィン共重合体20重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)10重量部、ポリエーテル構造を含む高分子型帯電防止剤(三光化学工業(株)製:商品名「サンコノールTBX−310」)5重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0048】
(実施例2)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)100重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)15重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット230」)1重量部、低分子型帯電防止剤(花王(株)製:商品名「TS−3B」)1重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0049】
(実施例3)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)70重量部;エチレン−α−オレフィン共重合体30重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)5重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット230」)20重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0050】
(実施例4)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)90重量部;エチレン−α−オレフィン共重合体10重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)10重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット230」)20重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0051】
(実施例5)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)90重量部;エチレン−α−オレフィン共重合体10重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)10重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット212」)20重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0052】
(比較例1)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)100重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)15重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット230」)0.5重量部、低分子型帯電防止剤(花王(株)製:商品名「TS−3B」)1重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0053】
(比較例2)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)100重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)15重量部、低分子型帯電防止剤(花王(株)製:商品名「TS−3B」)1重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0054】
(比較例3)
ベースポリマーとして、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソンMV0603」)100重量部、脂環族系石油樹脂(荒川化学工業(株)製:商品名「アルコンP−125」)40重量部、高分子型帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミド(三洋化成工業(株)製:商品名「ペレスタット230」)20重量部を2軸混練機にてメルトブレンドして溶融物を調製した。支持基材(厚み25μmのポリエステルフィルム)上に、押出ラミネート加工により、低密度ポリエチレン(LDPE)(三井石油化学工業(株)製:商品名「ミラソン16P」)からなる厚さ15μmの中間層を設け、さらにこの中間層の上に上記溶融物を、厚みが20μmとなるように溶融押出しして熱接着剤層を設け、支持基材、中間層及び熱接着剤層よりなる積層テープを得た。
【0055】
(評価方法)
実施例及び比較例で得られた各積層テープにつき、下記の試験を行った。
[150℃接着力:ピール強度]
紙製包装基材(北越製紙製:商品名「HOCTO40」)の表面に、各積層テープをテーピングマシン(東京ウェルズ製:商品名「TWA−6600」)を用いて、1600PCS/min、圧着温度150℃の条件で熱シールし、熱シール直後及び40℃で1ヶ月間保存した後の接着力を測定した。なお、接着力の測定は、剥離試験機を用いて、剥離速度300mm/min 剥離角度約180°の条件で行った。実施例1、2及び比較例1についての結果を表1に、実施例3、4及び比較例2、3についての結果を表2にそれぞれ示す。なお、実施例1、2及び比較例1については熱シール直後のみ測定を行った。
[180℃接着力:ピール強度]
圧着温度を180℃とした以外は、150℃接着力の測定と同様にして熱シール直後及び40℃で1ヶ月間保存した後の接着力を測定した。実施例1、2及び比較例1についての結果を表1に、実施例3、4及び比較例2、3についての結果を表2にそれぞれ示す。なお、実施例1〜2及び比較例1については熱シール直後のみ測定を行った。
[表面抵抗率]
各積層テープにつき、製造時(初期)及び40℃で1ヶ月間保存後の接着剤層表面の表面抵抗率を、高抵抗率計(三菱化学(株)製:商品名「ハイレスターUP」で測定した。実施例1、2及び比較例1についての結果を表1に、実施例3、4及び比較例2、3についての結果を表2にそれぞれ示す。なお、実施例1〜2及び比較例1については熱シール直後のみ測定を行った。
[実装性試験]
各積層テープをトップカバーとして用いて熱シールして、チップ(0603タイプ)[2000PCS/試験片]をキャリアに封入した後、室温まで冷却した。23℃/50%RHにおいてトップカバーを剥離後実装機にかけたときの、エアーノズルで吸着できたチップの全チップ数に対する割合を求めた。また、チップを封入した後、23℃/30%RHで1ヶ月間保存した後、同様に実装機にかけ、エアーノズルにより吸着できたチップの割合を求めた。実施例1〜2及び比較例1についての結果を表1に、実施例3、4及び比較例2、3についての結果を表2にそれぞれ示す。なお、実施例1〜2及び比較例1については熱シール直後のみ測定を行った。
[毛羽発生確認]
実施例3、4及び比較例2、3で得られた各積層テープを紙製包装基材(北越製紙製:商品名「HOCTO40」、富士共和製紙製:商品名「FK−42」、東京製紙製:商品名「TK−43」、王子製紙製:商品名「HJ−42」)に対し、テーピングマシン(東京ウェルズ製:商品名「TWA−6600」)を用いて、1600PCS/minの条件で圧着温度150℃及び180℃にて熱シールしたテーピングサンプルを40℃にて1ヶ月間保存した後、引き剥がした際、接着剤層表面に紙の繊維が付着しているかどうかを目視にて確認した。結果を表3に示す。尚、評価は以下の基準で行った。○:紙製包装基材表層からの毛羽立ちは目視確認されなかった。△:0.5mm未満毛羽(紙繊維)を目視確認した。×:0.5mm以上の毛羽(紙繊維)を目視確認した。
[剥離帯電圧]
各積層テープを、紙製包装基材(北越製紙製:商品名「HOCTO40」、富士共和製紙製:商品名「FK−42」、東京製紙製:商品名「TK−43」、王子製紙製:商品名「HJ−42」、北越製紙製:商品名「HOCTO40E」)に対し、テーピングマシン(東京ウェルズ製:商品名「TWA−6600」)を用いて、1600PCS/minの条件で圧着温度180℃にて熱シールしてサンプルを作製した。このサンプルの包装材用積層テープ(カバーテープ)を23℃、65%RHの雰囲気下で、剥離試験機を用いて180°方向に剥離速度5000mm/分の速度で100mm引き剥がし、その時の接着剤層表面の静電気発生量[剥離帯電圧(V);表面電位]を、表面電位測定器(商品名「ELECTROSTATIC VOLTMETER」:トレック・ジャパン株式会社製)を用いて測定した。表面電位測定用プローブの高さは、接着剤層表面から約5mmとした。結果を表4に示す。表面電位(表面の静電気発生量)の測定値(V)の数値は実測値である。
[一般に普及している紙製包装基材に対する接着力]
実施例3及び比較例2で得られた包装用積層テープを、一般に普及している紙製包装基材に、テーピングマシン(東京ウェルズ製:商品名「TWA−6600」)を用いて、1600PCS/minの条件で圧着温度130℃、150℃、170℃、190℃で熱シールしてサンプルを作成した。このサンプルの包装材用積層テープを剥離試験機を用いて剥離速度300mm/min、剥離角度180°で剥離して接着力を測定した。なお、一般に普及している紙製包装基材として北越製紙製:商品名「HOCTO40」、富士共和製紙製:商品名「FK−42」、東京製紙製:商品名「TK−43」、王子製紙製:商品名「HJ−42」、北越製紙製:商品名「HOCTO40E」を使用した。結果を表5に示す。
[吸湿後接着力]
紙製包装基材(北越製紙製:商品名「HOCTO40」)の表面に、各積層テープをテーピングマシン(東京ウェルズ製:商品名「TWA−6600」)を用いて、1600PCS/min、圧着温度150℃及び180℃の条件で熱シールし、熱シール直後及び23℃×80%RHで1ヶ月間保存した後の接着力を測定した。なお、接着力の測定は、剥離試験機を用いて、剥離速度300mm/min 剥離角度約180°の条件で行った。結果を表6に示す。
[水分率]
実施例4、5及び比較例2で得られた接着剤層を調製するための溶融物を粒径約3mmのペレット状に成形し、サンプルとした。このサンプルを解放した瓶に入れ、35℃×80%RHの条件にした高温恒湿機中に24時間保存した後、サンプルの水分率を電量滴定式水分測定装置を用いて測定した。結果を表6に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
実施例5で得られた包装材用積層テープは、接着剤層が高湿度下で保存後の水分率が低い接着剤により構成されているので、適度な接着力を高湿度に保存した場合であっても長期間にわたり維持している。これに対して実施例4で得られた包装材用積層テープは、接着力、表面抵抗率ともに良好で、該良好な値を長期間にわたり維持しており、毛羽発生や剥離帯電圧についても良好な成績であるが、接着剤層が高湿度下で保存後の水分率が0.6%と高い接着剤により構成されているため、高湿度下で保存した場合は接着力が低下する。また、比較例2で得られた包装材用積層テープは、高湿度下で保存後の接着剤の水分率は低いが、高分子型帯電防止剤を含まないため接着力が経時的に変化し、特に高湿度下で保存した場合には接着力が著しく低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材層上に、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするベースポリマー、粘着付与樹脂、高分子型帯電防止剤を含む熱接着剤層が積層されている包装材用積層テープであって、熱接着剤層が、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を1〜20重量部、高分子型帯電防止剤を1〜30重量部含むことを特徴とする包装材用積層テープ。
【請求項2】
高分子型帯電防止剤がポリエーテル構造を含む請求項1記載の包装材用積層テープ。
【請求項3】
熱接着剤層が、ベースポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を2〜13重量部、高分子型帯電防止剤を10〜30重量部含む請求項1又は2記載の包装材用積層テープ。
【請求項4】
熱接着剤層を構成するベースポリマーには、エチレン−α−オレフィン共重合体を少なくとも含み、その含有量はベースポリマーの50重量%以下である請求項1〜3何れかの項に記載の包装材用積層テープ。
【請求項5】
高分子型帯電防止剤が、ポリエーテルエステルアミドを含む高分子型帯電防止剤である請求項1〜4何れかの項に記載の包装材用積層テープ。
【請求項6】
熱接着剤層の厚みが5〜50μmであり、熱接着剤層の表面抵抗率が1013Ω/□以下である請求項1〜5何れかの項に記載の包装材用積層テープ。
【請求項7】
包装材用積層テープを2種類の異なる紙製包装基材に190℃で熱シールした際に、各々の紙製包装基材に対する該テープの接着力の差が2倍以内である請求項6記載の包装材用積層テープ。
【請求項8】
包装材用積層テープを紙製包装基材に熱シールした後、紙製包装基材から剥離させた際の接着剤層に生じる剥離帯電圧(23℃×65%RH、剥離角度180°、剥離速度5000mm/分、電極と熱接着剤層との距離5mm)の絶対値が200V以下である請求項6又は7記載の包装材用積層テープ。
【請求項9】
熱接着剤層を構成する接着剤組成物が、該接着剤組成物を35℃×80%RHの条件の恒温恒湿機中に24時間保存した際の水分率が0.5%以下である請求項1〜8何れかの項に記載の包装材用積層テープ。
【請求項10】
紙製包装基材に熱シールした後、紙製包装基材表層の紙繊維を毛羽立たせることなしに剥離することができる請求項1〜9何れかの項に記載の包装材用積層テープ。

【公開番号】特開2007−277501(P2007−277501A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129827(P2006−129827)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】