説明

包装材用積層体

【課題】 本発明は、非吸着性に優れ、且つ、ヒートシール性に優れ、さらに、成膜が容易である非吸着性のシーラント層を有する包装材用積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有する積層体であって、環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含み、該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在し、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、積層体における最表層であることを特徴とする上記積層体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等の内容物に含有される有効成分の吸着量が低減された非吸着性のシーラント層を有する包装材用積層体に関し、より詳細には、内容物の吸着量が低減され、薬効成分の有効量を高く維持することができ、且つ、ヒートシール性に優れ、さらに、成膜が容易であるシーラント層を有する包装材用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装袋や蓋材等の包装材の最内層には、ヒートシール性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMA等のコポリマー樹脂が使用されている。これらの樹脂は、ヒートシールにより高い密着強度を達成することができるが、種々の有機化合物を吸着し易いことが知られている。したがって、これらの樹脂を最内層、すなわち内容物と接する層として有する包装材は、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装には不適であり、あらかじめ内容物中に有効成分を多めに含ませる等の対策が必要である。
【0003】
そこで、ヒートシール性を有しながら、有効成分を吸着しにくいシーラント層の開発がなされている。代表的には、アクリロニトリル系樹脂からなる非吸着性シーラント層を最内層とする包装材が使用されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロニトリル系樹脂は、ヒートシール性が悪く、また高価であるため、より好ましい非吸着性シーラントの開発が求められている。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2には、最内層が、アルミニウム箔または無機物の蒸着膜で形成される非吸着性包装材が開示されている。前記包装材は、前記アルミニウム箔や蒸着膜に部分的に接着性樹脂層を形成することで製袋して使用されている。接着性樹脂層としては、ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂などが開示されている。しかしながら、このような包装材は、その製造工程が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−132946号公報
【特許文献2】特開平10−45176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決し、内容物を吸着しにくくしたものである。すなわち非吸着性に優れ、且つ、ヒートシール性に優れ、さらに、成膜が容易である非吸着性のシーラント層を有する包装材用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々研究の結果、基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有する積層体であって、環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含み、該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在し、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、積層体における最表層であることを特徴とする、上記積層体が、上述の目的を達成することを見出した。
【0008】
そして、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有する積層体であって、
環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含み、該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在し、
環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、積層体における最表層であることを特徴とする、上記積層体。
2.基材層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層との間に、ガスバリア性を有するガスバリア層が設けられていることを特徴とする、上記1に記載の積層体。
3.直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、上記1又は2に記載の積層体。
4.オレフィン系樹脂がエチレンであることを特徴とする、上記1〜3のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、種々の有機化合物、例えばl−メントールやサリチル酸メチル等の薬効成分を吸着しにくい。また、上記のとおり、本発明の積層体の最表層を構成する環状ポリオレフィン系樹脂組成物中の環状ポリオレフィン系樹脂は、高い分子間力を発揮するため、分子間の距離が近い密な表面構造を有する。したがって、低分子量成分の溶出を抑制できるため、保香性にも優れ、また包装材の最内層を形成するのに十分なヒートシール性を示す。
【0010】
また、一般的に、環状ポリオレフィン系樹脂は、その溶融成膜時に、高い分子間力が働き、ポリマー間で凝集を引き起こすことが知られている。その結果、膜の至る所で樹脂が凝集して瘤状のゲル塊を形成し、均一な膜表面を得ることが難しい。そして、この傾向は、インフレーション法による成膜時には一層顕著になり、該法により得られる環状ポリオレフィン系樹脂膜は、その表面全体に無数のゲル塊が発生する。
【0011】
しかしながら、本発明に従って、環状ポリオレフィン系樹脂に流度の高いオレフィン系樹脂を混合することによって、環状ポリオレフィン系樹脂の分子同士の不均一な凝集が抑制される。したがって、本発明の積層体の最表層を構成する環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、成膜が容易であり、均質で、良好な透明性を有する美麗な膜を形成することができる。また、インフレーション法による高速成膜時にも同様の効果を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明の積層体は、基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有することにより、優れた層間密着性及びシール強度を示す。そして、この積層体を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が最内層となるように製袋して得られる包装袋や包装容器は、良好な耐衝撃性を示す。
また、本発明の積層体は、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層とを共押出により成膜することにより、これらの層間の密着性及び成膜の安定性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【図2】本発明の積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の本発明について以下に更に詳しく説明する。
<1> 本発明の積層体の層構成
図1及び図2は、本発明の積層体の層構成についてその一例を示す概略的断面図である。
本発明の積層体としては、図1に示すように、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層1及びそれに隣接して積層された直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層2と、基材層3とを有する積層体を挙げることができる。この積層体において、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層1が、最表層を形成する。
【0015】
また、本発明の積層体の別の態様としては、図2に示すように、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層2と、基材層3との間に、ガスバリア性を有するガスバリア層4が設けられる。基材層3とガスバリア層4との間、及びガスバリア層4と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層2との間には、必要に応じて、接着剤層5やアンカーコート剤層6のような層間密着性を高めるための層を設けることができる。
以下、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
【0016】
<2> 環状ポリオレフィン系樹脂組成物層
本発明の積層体の環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、環状ポリオレフィン系樹脂組成物からなる。この組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含むものである。
【0017】
環状ポリオレフィン系樹脂
本発明において、環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(COP)、及び、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)との共重合体、すなわち環状オレフィンコポリマー(COC)を包含する。
【0018】
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができるが、特にビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
【0019】
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5 ]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5 .17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6 .02.7 .09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5 .19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。環状オレフィンは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
【0020】
環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。
【0021】
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、上記の環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
また、環状オレフィンコポリマーの製造は、25〜45モル%のα−オレフィンと、5
5〜75モル%の環状オレフィンとを、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
本発明において好適に使用される開環メタセシス重合体及び環状オレフィンコポリマーは、いくつか市販されており、例えば日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR(R)」やポリプラスチック株式会社製の「TOPAS(R)」等が挙げられる。
【0022】
オレフィン系樹脂
環状ポリオレフィン系樹脂に、高流度のオレフィン系樹脂を混合することにより、成膜時の環状ポリオレフィン系樹脂同士の凝集によるゲル塊の発生を防ぎ、均一な膜表面を得ることができる。
本発明において、オレフィン系樹脂としては、190℃でのメルトフローレート(MFR)が5〜40g/10分、好ましくは10〜35g/10分、さらに好ましくは15〜30g/10分である任意のオレフィン系樹脂を使用することができる。
メルトフローレートが5g/10分より小さいと、環状ポリオレフィン系樹脂に適切な流動性を与えることができず、ゲル塊の発生を防ぐことができない。
一方、メルトフローレートが40g/10分より大きいと、成膜適性が失われ、均一なフィルムを得ることが困難となる。
なお、本発明において、メルトフローレートは、JIS−K−7210(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定する。
オレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。
具体的には、日本ポリエチレン株式会社製の「ノバテック(R)」等が挙げられる。
【0023】
環状ポリオレフィン系樹脂組成物
環状ポリオレフィン系樹脂組成物において、オレフィン系樹脂は、該樹脂組成物中に3〜50質量%、好ましくは5〜10質量%の比率で配合される。
また、さらに必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を含んでもよい。
混合物全体に対して、オレフィン系樹脂の配合比率が3質量%未満であると、環状ポリオレフィン系樹脂に適切な流動性を与えることができず、ゲル塊の発生の原因となる。
一方、配合比率が50質量%より多いと、環状ポリオレフィンの有する非吸着性が損なわれ、また、透明性が低下する。
【0024】
<3> 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
本発明の積層体において、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層上に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層が隣接して積層される。
本発明において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層を形成する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒から得ることができる、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのコポリマーである。ここで、炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、などが挙げられる。これらモノマーを、低圧法、スラリー法、溶液法、気相法等の重合方法を用いて重合する。通常は、短鎖分布として炭素1000個あたり、3〜25個の短鎖分岐を有するが、炭素数約20個を超えるような長鎖分岐は有しない。通常、直鎖状低密度ポリエチレンにおいて、エチレン由来の構造単位は約99.9〜90モル%であり、α−オレフィン由来の構造単位は約0.1〜10モル%である。本発明では、構造均一性に優れる点で、メタロセン触媒で調製された直鎖状低密度ポリエチレンを好適に使用することができる。
【0025】
本発明において使用するのに好適な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、住友化学株式会社製の「スミカセン」等が挙げられる。
さらに、本発明において、上記のような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を主成分とし、これに、必要ならば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を添加してもよい。
【0026】
<4> 基材層
本発明の積層体を形成する基材層としては、包装用途に適した化学的ないし物理的強度を有する任意のフィルムを使用することができる。
このようなフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの二軸延伸フィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などのポリアミドの二軸延伸フィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの樹脂フィルムを好適に使用できるほか、防湿セロハン、合成紙、紙なども使用することができる。 これらは単独で使用してもよく、また、複数を組み合わせて積層して使用することもできる。
【0027】
必要に応じて、例えば、任意の表面前処理を行って、他層との密着性を改善してもよい。このような表面前処理としては、例えば、他層を積層する側のフィルム表面に、あらかじめアンカーコート剤層を設けること等が挙げられる。
本発明において好適に使用されるアンカーコート剤としては、特に限定されないが、慣用の有機チタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤(ウレタン系)、ポリブタジエン系アンカーコート剤のほか、ポリオレフィン共重合体を水に分散した水性ポリオレフィン共重合体系アンカーコート剤等が挙げられる。
【0028】
<5> ガスバリア層
本発明の積層体において、基材層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層との間に、必要に応じて、ガスバリア性を有するガスバリア層を設けることができる。
このようなガスバリア層は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化インジウムスズなどの無機酸化物やアルミニウムなどの金属の蒸着層であってよい。または、ガスバリア性を有することが知られる種々の樹脂フィルム、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロンMXD6、ポリアクリロニトリル(PAN)などのほか、アルミニウム箔などの金属フィルム、或いは、PVDCやポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)などの塗膜層を設けた二軸延伸ナイロンフィルム(ONフィルム)、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)などのガスバリアフィルムであってよい。
【0029】
ガスバリア層の積層方法としては、ガスバリア層が蒸着層である場合は、化学気相成長法及び物理気相成長法等の任意の蒸着法によって、基材層上に積層される。蒸着層の層厚は、適宜に設定することができるが、好適には、約5〜100nmの範囲である。
ガスバリア層がガスバリアフィルムである場合は、接着剤層を介して基材層上に貼り合せることによって積層される。貼り合せに使用する接着剤としては、任意のものを用いることができるが、押出ラミネート法(いわゆる、サンドイッチラミネート法)で貼り合わせる場合は、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、低密度ポリエチレンなどを単独で使用するか、またはこれらにハードレジンなどの接着性向上剤をブレンドした樹脂などを使
用することができる。
【0030】
また、基材フィルムとガスバリアフィルムとをドライラミネート法で貼り合わせてもよく、その場合は接着剤として、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用することができる。
本発明の積層体の製造において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をガスバリア層上に積層する前に、これらの層が積層されるガスバリア層の表面に、必要に応じて、任意の表面前処理を行ってもよい。このような表面前処理としては、例えば、ガスバリア層表面に、あらかじめ、上述のアンカーコート剤からなるアンカーコート剤層を設けること等が挙げられる。
【0031】
<6> 製造方法
本発明の積層体の製造は、任意の方法によりなされるが、成膜安定性及び層間密着性の観点から好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とを、共押出することが好ましい。すなわち、共押出コーティング法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを、基材層又はガスバリア層上に共押出コーティングすることにより形成するか、又は、溶融共押出法(例えばTダイ法、インフレーション法)等の成膜法により、環状ポリオレフィン系樹脂組成物と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを共押出して多層シーラントフィルムを製造し、これを基材層又はガスバリア層上にラミネートする。ここで、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が積層体における最表層となるように、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層側の面と基材層又はガスバリア層とを対向させて積層する。
特に、共押出コーティングすることにより、基材層又はガスバリア層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層、及び、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層間密着性が高まり、一層高いシール強度を示すシーラント層を提供することができる。
【0032】
<7> 層厚
本発明の積層体は、任意の厚さを有するものであってよいが、安定した成膜化及び製品コストの観点から好適には、全体として20〜300μmの厚さを有する。ここで、各層の層厚としては、包装用途に応じて適宜に設定することができるが、安定した成膜化、非吸着性及び製品コストの観点から、基材層の層厚は望ましくは5〜30μmであり、紙を基材として用いる場合には30〜300g/m2が望ましい。ガスバリア層の層厚は望ましくは5〜30μmであり、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の層厚は、望ましくは2〜30μmであり、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層の層厚は、望ましくは10〜120μmである。
【0033】
<8> 使用
本発明の積層体を使用し、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層が最内層となるように製袋して、包装袋とすることができる。また、本発明の積層体を、環状ポリオレフィン系樹脂組成物層を最内層とする蓋材として使用し、包装容器を製造することができる。
包装袋を製造するには、本発明の積層体を二つ折にするか、又は積層体2枚を用意し、その環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の面を対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋として製造することができる。
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0034】
本発明の積層体を蓋材として使用する包装容器を製造するには、樹脂製容器の開口部に、本発明の積層体の環状ポリオレフィン系樹脂組成物層の面が接するように重ね合せ、袋と同様にヒートシールすることによって行うことができる。
積層体において、ガスバリア層または直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と対向する側と反対側の基材層の表面に、必要に応じて印刷層や種々の包装資材をさらに積層してもよい。
本発明の積層体は、優れた非吸着性を示し、且つ良好なヒートシール性を示す。したがって、これよりなる包装袋や包装容器は、特に、有機化合物を有効成分として含む医薬品、化粧品、食品等の包装のために、例えば、貼付剤の外袋、散剤の分包袋、顆粒剤のスティック袋として、好適に使用することができる。
次に本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
(1)環状オレフィンコポリマー(ポリプラスチックス(株)製TOPAS(R)8007−F04;メルトフローレート1.9g/10分(190℃);密度1.02g/cm3)90質量%、及び、低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックM6525;メルトフローレート28.0g/10分(190℃);密度0.916g/cm3)10質量%を含む混合物を十分に混練して、環状ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。(2)基材フィルムとして、2軸延伸ポリエステルフィルム(PET;東洋紡績(株)製エスペット(R)T4102;厚さ12μm)を用い、その一方の面上に接着剤(ロックペイント(株)製ロックボンドJ/アドロック、RU77T/H−7;配合比10/1)を、版深90μmの斜線版を用いて塗工量3.0g/m2で塗布し、厚さ7μmのアルミ箔(日本製箔(株)製A1N30H−O)と貼り合せた後、40℃の恒温槽に48時間保管し、接着剤を硬化させた。
(3)上記のアルミ箔を設けた面に、アンカーコート剤(三井化学(株)製タケラック/タケネート、A−3210/A−3075;配合比3/1)を、版深20μmの斜線版を用いて塗工量0.4g/m2で塗布した。
(4)次いで、このアンカーコート剤の塗布面上に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCW8003;メルトフローレート8.0g/10分(190℃);密度0.914g/m3)、及び、上記(1)で調製した環状ポリオレフィン系樹脂組成物を、共押出コーティング法によりこの順で積層した。これにより、本発明の積層体が得られた。得られた積層体の層構成は以下のとおりであった:
基材フィルム/接着剤/アルミ箔/アンカーコート剤/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層(30μm)/環状ポリオレフィン系樹脂組成物層(10μm)
【0036】
[実施例2]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=95:5(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、本発明の積層体を製造した。
【0037】
[比較例1]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=98:2(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0038】
[比較例2]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=40:60(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、
積層体を製造した。
【0039】
[比較例3]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、混合比を、環状オレフィンコポリマー:低密度ポリエチレン=100:0(質量基準)とした以外は実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0040】
[比較例4]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の調製において、環状オレフィンコポリマーと混合するオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレン(メルトフローレート28.0g/10分)の代わりに、異なるメルトフローレートを有する低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製ノバテックLC522;メルトフローレート4.0g/10分(190℃);密度0.923g/cm3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0041】
[比較例5]
環状ポリオレフィン系樹脂組成物の代わりに、低密度ポリエチレン樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製サンテックM6555;メルトフローレート55.0g/10分(190℃);密度0.917g/cm3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0042】
[比較例6]
シーラント層の形成において、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の代わりに、非直鎖状の低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCE4009;メルトフローレート7.0g/10分(190℃);密度0.920g/m3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0043】
[比較例7]
実施例1と同様にして基材層上にガスバリア層を積層し、その上にアンカーコート剤を塗布した。
次いで、このアンカーコート剤の塗布面に、シーラント層として低密度ポリエチレン樹脂(住友化学(株)製 スミカセンCE4009;メルトフローレート7.0g/10分(190℃);密度0.920g/m3)を、押出コーティングにより、厚みが40μmとなるように積層して、積層体を製造した。
【0044】
[評価方法・結果]
(1)吸着性試験
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体を10cm×10cm四方に切り取り、その初期重量を測定した。
容積10リットルのステンレス容器内にl−メントール固体10gを入れ、蓋をして容器内をl−メントール蒸気で満たし、その中に、切り取った積層体を吊り下げて、40℃で7日間保管した。
保管後、積層体を取り出して、重量を測定し、初期重量との差から、l−メントールの吸着量を算出した。
(2)シール強度試験
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体を、基材層を外側にして重ね合せ、ヒートシーラー(テスター産業(株)製TP-701S HEAT SEAL TESTER)で、160℃で1秒間、圧力1kgf/cm2でヒートシールした。
次いで、これを幅15mmの短冊状に切り出し、テンシロン引張試験機((株)オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて圧着されたシール部を引き剥がし、シール強度を測定し
た。このときの引張速度は300mm/分とした。
(3)フィルム外観評価
実施例1〜2及び比較例1〜7の積層体のシーラント層の外観を検査し、ゲル塊の有無及び表面の平滑性について確認を行った。ゲル塊が見られず、平滑な表面が得られた場合は「良」とし、ゲル塊が見られたり、不均一な表面が得られたりした場合は「悪」と判定した。
【0045】
以下の表に結果を示す。
【0046】
【表1】

【符号の説明】
【0047】
1 環状ポリオレフィン系樹脂組成物層
2 直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層
3 基材層
4 ガスバリア層
5 接着剤層
6 アンカーコート剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層及び環状ポリオレフィン系樹脂組成物層をこの順に有する積層体であって、
環状ポリオレフィン系樹脂組成物は、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とを含み、該オレフィン系樹脂は、190℃でのメルトフローレートが5〜40g/10分であって、且つ、該樹脂組成物中に3〜50質量%の割合で存在し、
環状ポリオレフィン系樹脂組成物層は、積層体における最表層であることを特徴とする、上記積層体。
【請求項2】
基材層と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層との間に、ガスバリア性を有するガスバリア層が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層と環状ポリオレフィン系樹脂組成物層とは、共押出コーティングにより積層されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
オレフィン系樹脂がエチレンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86462(P2012−86462A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235241(P2010−235241)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】