包装機
【課題】サーメット合金のような高価な材料を使用することなく、サーメット合金で製作された溶断刃と同等の耐久性を有する溶断刃を提供する。
【解決手段】横シール機構17は、筒状フィルムFmに熱および圧力を与える溶断刃53によって筒状フィルムFmを溶断する。溶断刃53の少なくとも先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。汎用材料である高速度工具鋼が所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の性能を確保することができ、その上、溶断刃53の材料費が低減され、さらに溶断刃53の加工時間も短縮される。
【解決手段】横シール機構17は、筒状フィルムFmに熱および圧力を与える溶断刃53によって筒状フィルムFmを溶断する。溶断刃53の少なくとも先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。汎用材料である高速度工具鋼が所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の性能を確保することができ、その上、溶断刃53の材料費が低減され、さらに溶断刃53の加工時間も短縮される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装機に関し、特に、フィルムの溶断装置を備えた包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムを溶断する溶断装置として、フィルムに熱および圧力を与える溶断刃によって、フィルムを溶着しつつ切断する装置が広く普及している。例えば、特許文献1(特開2006−306445号公報)に開示されている溶断装置では、繰り返し使用による溶断刃の切断性の劣化を抑制するため、溶断刃の材料として、セラミックである金属複ホウ化物と、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)等の金属とを合わせて焼き固めた、いわゆるサーメット(Cermet)合金を使用して成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、サーメット合金を使用した溶断刃は耐久性に優れているが、高コストであり、その上、製作リードタイムが長いため、トータルコスト増大の要因となっている。
【0004】
本発明の課題は、包装機において、サーメット合金のような高価な材料を使用することなく、サーメット合金で製作された溶断刃と同等の耐久性を有する溶断刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る包装機は、シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、溶断装置を備えている。溶断装置は、筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う。また、溶断装置は、一対のシールジョーと、溶断刃および受け刃と、ヒータとを有している。一対のシールジョーは、旋回しながら筒状フィルムの溶断予定部分の下流側と上流側とを円弧状のシール面で横方向に挟み、加熱してシールを行う。溶断刃および受け刃は、筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて筒状フィルムの溶断予定部分を溶断する。ヒータは、シールジョー、溶断刃、および受け刃を加熱する。また、シールジョー、溶断刃、および受け刃が動作し、溶断刃と受け刃とによる溶断予定部分の溶断を、シールジョーのシール面が溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に終了させる。さらに、少なくとも溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。
【0006】
この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0007】
本発明の第2観点に係る包装機は、シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、溶断装置を備えている。溶断装置は、筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う。また、溶断装置は、一対のシールジョーと、溶断刃および受け刃と、ヒータとを有している。一対のシールジョーは、筒状フィルムを横方向に挟み、加熱してシールを行う。溶断刃および受け刃は、筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて筒状フィルムを溶断する。ヒータは、シールジョー、溶断刃、および受け刃を加熱する。また、シールジョー、溶断刃、および受け刃が動作し、溶断刃と受け刃とによる筒状フィルムの溶断を、シールジョーのシール面が溶断予定部分の両側を挟んでシールを完了する前に終了させる。さらに、少なくとも溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。
【0008】
この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0009】
本発明の第3観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、溶断刃の先端がシールジョーのシール面から受け刃側に突出している。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0010】
本発明の第4観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理が窒化処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0011】
本発明の第5観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理がショットピーニング処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0012】
本発明の第6観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理が窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0013】
本発明の第7観点に係る包装機は、第1観点から第6観点のいずれか1つに係る包装機であって、硬さがHv1000以上である。この包装機では、溶断刃の耐久性が、サーメット合金を使用した溶断刃の耐久性と同等レベルまで向上する。
【0014】
本発明の第8観点に係る包装機は、第1観点から第7観点のいずれか1つに係る包装機であって、溶断刃の刃先の幅が、0.05mm以上、0.2mm未満である。
【0015】
この包装機では、溶断刃の先端の耐摩耗性が向上する。
【0016】
本発明の第9観点に係る包装機は、第1観点から第8観点のいずれか1つに係る包装機であって、高速度工具鋼が日本工業規格におけるSKH51である。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【0017】
本発明の第10観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、溶断刃の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されている。この包装機では、フィルム溶断動作時、溶断刃と受け刃との間に圧が一気にかからないので、溶断刃の耐久性が向上する。
【0018】
本発明の第11観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、刃渡り方向から視た前記溶断刃の先端の稜線は、所定半径の円弧である。その所定半径は、シールジョーのシール面の円弧径と等しい。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【0019】
本発明の第12観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、溶断刃の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されている。また、溶断刃の先端の稜線を含む仮想面は、溶断刃の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面である。その所定半径は、シールジョーのシール面の円弧径と等しい。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装機の斜視図。
【図2】包装機の製袋包装ユニットの概略構成を示す斜視図。
【図3】横シール機構において旋回動作する第1シールジョー及び第2シールジョーの側面図。
【図4】刃先側から視た溶断刃の斜視図。
【図5】シールジョーの断面図。
【図6】変形例に係る包装機の横シール機構の溶断刃の斜視図。
【図7】第2実施形態に係る包装機の横シール機構において旋回動作する第1シールジョーと第2シールジョーの側面図。
【図8】第1シールジョーと第2シールジョーの動作のタイムチャート。
【図9】第1シールジョーと第2シールジョーの動作の他のタイムチャート。
【図10】第3実施形態に係る包装機の溶断刃の断面図。
【図11A】シールジョーが動作する前の横シール機構の断面図。
【図11B】シールジョーが動作を開始したときの横シール機構の断面図。
【図11C】第1シールジョーと第2シールジョーとが密着したときの横シール機構の断面図。
【図11D】第1シールジョーと第2シールジョーと離間させたときの横シール機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
<第1実施形態>
(1)包装機1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る包装機の斜視図である。また、図2は、包装機の製袋包装ユニットの概略構成を示す斜視図である。図1及び図2において、包装機1は、組合せ計量機2、製袋包装ユニット5及びフィルム供給ユニット6を備えている。
【0024】
組合せ計量機2は、商品Cを軽量し所定の合計重量になるよう排出する。製袋包装ユニット5は、被包装物の袋詰めを行う本体部分である。フィルム供給ユニット6は、製袋包装ユニット5に袋となるフィルムを供給する。
【0025】
また、製袋包装ユニット5の前面には操作スイッチ類7が配置されている。操作スイッチ類7を操作する操作者が視認できる位置には、操作状態を示すタッチパネル式ディスプレイ8が配置されている。
【0026】
組合せ計量機2、フィルム供給ユニット6及び製袋包装ユニット5は、操作スイッチ類7やタッチパネル式ディスプレイ8から入力された操作および設定に従って制御される。する。なお、操作スイッチ類7やタッチパネル式ディスプレイ8は、CPU、ROM、RAMなどから構成される制御部(図示せず)に接続されており、その制御部が組合せ計量機2および製袋包装ユニット5に設置されている各種センサから必要な情報を取り込み、その情報を各種制御において利用する。
【0027】
(2)詳細構成
(2−1)組合せ計量機2
組合せ計量機2は、製袋包装ユニット5の上部に配置されており、商品Cを計量ホッパで計量した後、これらの計量値を所定の合計重量になるように組み合わせて順次排出する。
【0028】
(2−2)フィルム供給ユニット6
フィルム供給ユニット6は、製袋包装ユニット5の成形機構13に対してシート状のフィルムを供給するユニットであって、製袋包装ユニット5に隣接して設けられている。また、フィルム供給ユニット6にはフィルムが巻かれたロールがセットされ、このロールからシート状のフィルムが繰り出される。
【0029】
(2−3)製袋包装ユニット5
図1および図2に示すように、製袋包装ユニット5は、成形機構13と、プルダウンベルト機構14と、縦シール機構15と、横シール機構17と、支持フレーム12とから構成されている。成形機構13は、シート状で送られてくるフィルムを筒状に成形する。プルダウンベルト機構14は、筒状となったフィルム(以下、筒状フィルムFmとよぶ)を下方に搬送する。縦シール機構15は、筒状フィルムFmの重ね合わせ部分を縦方向にシールする。横シール機構17は、筒状フィルムFmを横方向にシールすることで袋の上下端を封止する。支持フレーム12は、それらの機構を支える。また、支持フレーム12の周囲には、ケーシング9が取り付けられている。
【0030】
(2−3−1)成形機構13
成形機構13は、チューブ13bと、フォーマ13aとを有している。チューブ13bは、筒形状の部材であり、上下端が開口している。このチューブ13bの上端の開口部には、組合せ計量機2で計量された商品Cが投入される。フォーマ13aは、チューブ13bを取り囲むように配置されている。フィルムロールから繰り出されてきたシート状のフィルムは、フォーマ13aとチューブ13bとの間を通るときに筒状に成形される。成形機構13のチューブ13bやフォーマ13aは、製造する袋の大きさに応じて取り替えることができる。
【0031】
(2−3−2)プルダウンベルト機構14
図2に示すように、プルダウンベルト機構14は、チューブ13bに巻き付いた筒状フィルムFmを吸着して下方に連続搬送する機構であって、チューブ13bを挟んで左右両側にそれぞれベルト14cが設けられている。プルダウンベルト機構14では、吸着機能を有するベルト14cを駆動ローラ14aおよび従動ローラ14bによって回して筒状フィルムFmを下方に運ぶ。なお、図2においては、駆動ローラ14a等を回転させるローラ駆動モータの図示を省略している。
【0032】
(2−3−3)縦シール機構15
縦シール機構15は、チューブ13bに巻き付いた筒状フィルムFmの重なり部分を、一定の圧力でチューブ13bに押しつけながら加熱して縦にシールする機構である。縦シール機構15は、チューブ13bの正面側に位置しており、ヒータや、そのヒータにより加熱され筒状フィルムFmの重なり部分に接触するヒータベルトを有している。また、縦シール機構15は、図示しないが、ヒータベルトをチューブ13bに近づけたり遠ざけたりするための駆動装置も備えている。
【0033】
(2−3−4)横シール機構17
横シール機構17は、チューブ13bの下方に設けられている。横シール機構17は、一対のシールジョー51により、筒状フィルムFmを横方向に熱シールする。また、横シール機構17は溶断刃53と受け刃55とを有しており、シールジョー51によるシール部分の中間高さ位置を、溶断刃53と受け刃55とにより溶断する。つまり、横シール機構17は、溶断装置である。
【0034】
(2−3−4−1)第1シールジョー51aと第2シールジョー51b
図3は、横シール機構において旋回動作する第1シールジョー51a及び第2シールジョー51bの側面図である。図3において、第1シールジョー51aには、筒状フィルムFmに向って開口する第1穴517が形成されており、第1穴517を挟んで上下に第1シール面516が形成されている(図5参照)。説明の便宜上、第1穴517より上側のシール面を第1上シール面516a、第1穴517より下側のシール面を第1下シール面516bとよぶ。
【0035】
また、第2シールジョー51bには、筒状フィルムFmに向って開口する第2穴519が形成されており、第2穴519を挟んで上下に第2シール面518が形成されている(図5参照)。説明の便宜上、第2穴519より上側のシール面を第2上シール面518a、第2穴519より下側のシール面を第2下シール面518bとよぶ。第1シール面516および第2シール面518はともに半径Rの円弧面である。なお、本実施形態では、R=100である。
【0036】
一対のシールジョー51の内部には、それぞれヒータ51hが設けられている。ヒータ51hを動作させると、シールジョー51の全体が加熱され、シール面も加熱状態となる。
【0037】
(2−3―4−2)溶断刃53
第1シールジョー51aの第1穴517内には、溶断刃53が設けられている。以下、溶断刃53について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0038】
図4は、刃先側から視た溶断刃53の斜視図である。また、図5は、シールジョー51の断面図である。図4において、溶断刃53の先端部分は、長手方向に沿って三角波状の刃先53aが形成されている。刃先53aは、その先端側から視ても正面側から見ても三角波状を成す、複雑な形状である。また、図5に示すように、溶断刃53の先端面は、平面ではなく第1シール面516と同じく半径Rの円弧面である。なお、溶断刃53の先端面は、第1シール面516から距離dだけ突出している。この溶断刃53の先端面とは、刃渡り方向に波形に成形された刃先の先端が描く稜線を含む仮想面のことであり、刃の厚み方向に沿って半径Rで湾曲している。
【0039】
従来、溶断刃53の材料には、サーメット合金が使用されていたので、材料が高価な上に、溶断刃53の複雑な刃先形状へ加工するために必要なリードタイムが長く、コスト増加の要因であった。
【0040】
本実施形態の溶断刃53は、従来の問題点を解消すべく、材料には、加工性に優れた汎用の高速度工具鋼を採用している。但し、特許文献1の段落[0042]でも開示されているとおり、高速度工具鋼で製作された溶断刃の耐久性は、サーメット合金で製作された溶断刃より劣る。それゆえ、本実施形態では、溶断刃53の耐久性を高めるため、刃先53aを含む先端部分に表面処理が行なわれ、先端部分の硬さが所定値以上になるように調整されている。
【0041】
具体的には、溶断刃53の先端部分に、窒化処理、またはショットピーニング処理、または窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理が行なわれ、先端部分の硬さがHv1000以上になるように調整されている。なお、未処理では、先端部分の硬さはHv800程度である。
【0042】
また、図4及び図5に示す刃先53aの最先端の厚みtは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。さらに、刃先53aの最先端の曲率半径は、従来の寸法を踏襲して、半径rは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。
【0043】
出願人は、高速道工具鋼の日本工業規格におけるSKH51で溶断刃53を製作し、先端部分に窒化処理を行なった第1サンプルS1、先端部分にショットピーニング処理を行なった第2サンプルS2、先端部分に窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理を行なった第3サンプルS3、及び先端部分になんら処理を行なっていない第4サンプルS4について、同じフィルムを同じサイクルでシールするという条件で耐久性試験を行なった。なお、第1サンプルS1及び第3サンプルS3の先端部分の硬さはHv1100以上、第2サンプルS2の先端部分の硬さはHv1000以上、第4サンプルS4の先端部分の硬さは900未満である。
【0044】
その結果、先端部分になんら処理が行なわれていない第4サンプルS4が試験開始後3ヶ月程度で溶断不能になった。しかし、先端部分に窒化処理が行なわれた第1サンプルS1、先端部分にショットピーニング処理が行なわれた第2サンプルS2、及び先端部分に窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理が行なわれた第3サンプルS3は、6ヶ月を経過しても溶断不能にならなかった。これは、従来のサーメット合金製の溶断刃と同等レベルの耐久性である。特に、第3サンプルS3については、溶断回数にして1200万回の耐久性を示した。
【0045】
横シール時には、溶断刃53の刃先は、筒状フィルムFmを挟んで受け刃55と対峙する。また、溶断刃53および受け刃55は、ヒータ51hによってシールジョー51とほぼ同じ温度まで加熱される。
【0046】
(2−3―4−3)受け刃55
第2シールジョー51bの第2穴519内には受け刃55が設けられている。受け刃55の先端面は、第2シール面518から距離dだけ窪んでいる。
【0047】
(3)動作
次に、図3及び図5を参照しながら、第1シールジョー51aと第2シールジョー51bの動作について説明する。なお、図3において一点鎖線で示されたシールジョーは旋回動作の一軌跡を示している。
【0048】
第1シールジョー51aと第2シールジョー51bとが筒状フィルムFmを挟んで円弧軌跡を描くように旋回する。先ず、第1シールジョー51aと第2シールジョー51bとが旋回し筒状フィルムFmの挟み付けを開始したとき、最初に、第1下シール面516b及び第2下シール面518bの下側部分で筒状フィルムFmを挟む。第1下シール面516b及び第2下シール面518bは円弧面を筒状フィルムFmに押し付けるように一定角度回転して、筒状フィルムFmをシールする。
【0049】
第1下シール面516b及び第2下シール面518bによるシールが終了すると同時に、溶断刃53と受け刃55とが筒状フィルムFmを挟み込む。溶断刃53の先端面は第1シール面516から距離dだけ突出し、受け刃55の先端面は第2シール面518から距離dだけ窪んでいるので、溶断刃53の先端面が筒状フィルムFmを受け刃55の窪みに押し込むような状態となる。
【0050】
溶断刃53および受け刃55は、ヒータ51hによってシールジョー51とほぼ同じ温度まで加熱されているので、筒状フィルムFmのうち溶断刃53の先端面によって受け刃55の窪みに押し込まれた部分が溶断される。
【0051】
筒状フィルムFmの溶断が完了した後、第1シールジョー51aの第1上シール面516a及び第2シールジョー51bの第2上シール面518aの下側部分が筒状フィルムFmを挟む。第1上シール面516a及び第2上シール面518aは円弧面を筒状フィルムFmに押し付けるように一定角度回転して、筒状フィルムFmをシールする。
【0052】
このように、溶断刃53および受け刃55による筒状フィルムFmの溶断が完了したのちに、第1上シール面516a及び第2上シール面518aによるシールが完了する。
【0053】
(4)特徴
(4−1)
この包装機では、少なくとも溶断刃53の先端部分は、高速度工具鋼が使用され、窒化処理またはショットピーニング処理によって、硬さがHv1000以上に調整されている。また、第1シールジョー51aの第1上シール面516a及び第2シールジョー51bの第2上シール面518aが溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に、溶断刃53と受け刃55とによる溶断予定部分の溶断が終了する。また、この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0054】
(4−2)
また、この包装機では、溶断刃53の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されているので、筒状フィルムFmの溶断動作時に、溶断刃53と受け刃55との間に圧が一気にかからないので、溶断刃53の耐久性が向上する。
【0055】
(4―3)
さらに、この包装機では、溶断刃53の先端の稜線を含む仮想面が、溶断刃53の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面である。
【0056】
(5)変形例
図6は、変形例に係る包装機の横シール機構17の溶断刃53の斜視図である。図6において、溶断刃53は、中央部を成す有効刃531、両端部を成す無効刃532,533を有している。有効刃531は、実際に筒状フィルムFmを溶断する部分である。無効刃532,533は、筒状フィルムFmを溶断する機能はなく、有効刃531が、万が一、シール面に衝突したときに有効刃531の刃先531aを保護する機能を有している。
【0057】
具体的には、無効刃532の刃先532aおよび無効刃533の刃先533aでは、先端が有効刃531の刃先531aよりもCだけ突出している。この実施形態ではC=0.5mmであり、さらに、その突出部分は半径0.5mmで丸められ、強度、耐摩耗性が高められている。
【0058】
それゆえ、有効刃531が対向する第2シールジョー51bのシール面(例えば、図11A参照)に衝突するような事態になっても、無効刃532の刃先532a及び無効刃533の刃先533aが先にシール面に当たり、有効刃531の刃先531aがシール面に衝突する事態を回避している。したがって、有効刃531の刃先531aの欠けや、割れなどが防止される。
【0059】
<第2実施形態>
第1実施形態では、一対のシールジョーが旋回しながら筒状フィルムFmに対して円弧面で接触するが、それに限定されるものではない。ここでは、第1シールジョーと第2シールジョーとが旋回運動によって近接および離間を繰り返す、他の構成を説明する。
【0060】
(1)横シール機構117
図7は、第2実施形態に係る包装機の横シール機構117において旋回動作する第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの側面図である。なお、横シール機構117以外は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。また、図7において点線で示されたシールジョーは旋回動作の軌跡を示している。
【0061】
第2実施形態は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが平面で筒状フィルムFmを挟んでD字状の軌跡を描くように旋回する点、及び、溶断刃153が第1ヒータ153hを有し、受け刃155が第2ヒータ155hを有している点で、第1実施形態と異なる。
【0062】
しかも、制御部は、第1ヒータ153h及び第2ヒータ155hそれぞれを個別に制御して、溶断刃153及び受け刃155をそれぞれ異なる溶断温度に調節する。
【0063】
また、制御部は、ヒータ51hそれぞれを個別に制御して、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの各部位それぞれを異なるシール温度に調節する。
【0064】
図8は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの動作のタイムチャートである。図8において、制御部は、溶断刃153及び受け刃155の動作を調節する。例えば、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとがD字状に旋回するとき、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが筒状フィルムFmの挟み付けを開始した後に、溶断刃153を押し出して受け刃155との間で筒状フィルムFmを押圧して筒状フィルムFmの溶断を開始し、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが離反して筒状フィルムFmの挟み付けを終了する前に、溶断刃153を後退させて筒状フィルムFmの溶断を終了する。
【0065】
つまり、溶断開始時刻をシール開始時刻より遅くしながらも、溶断完了時刻tcをシール完了時刻tsより早くするのである。この場合、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが時刻tsに離反したときに袋は筒状フィルムFmと切り離されて落下する。
【0066】
また、図9は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの動作の他のタイムチャートである。図9において、例えば、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとがD字状に旋回するとき、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが対接して筒状フィルムFmの挟み付けを開始する前に、溶断刃153を押し出して受け刃155との間で筒状フィルムFmを押圧して筒状フィルムFmの溶断を開始し、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが離反して筒状フィルムFmの挟み付けを終了した後に、溶断刃153を後退させるようにしてもよい。
【0067】
ただし、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが離反する前の時刻tcに、溶断は完了している。つまり、溶断開始時刻をシール開始時刻より早くし、かつ溶断完了時刻tcもシール完了時刻tsより早くするのである。この場合も、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが時刻tsに離反したときに袋は落下する。
【0068】
以上のように、第2実施形態に係る包装機の横シール機構117は、筒状フィルムFmを溶着してシールする第1シールジョー151a及び第2シールジョー151bと、そのシール領域内の所定の部位を溶融して切断する溶断刃153及び受け刃155とを含んでいる。また、第1シールジョー151a及び第2シールジョー151bがヒータ51hを有し、溶断刃153が第1ヒータ153hを有し、受け刃155が第2ヒータ155hを有している。それゆえ、それぞれ異なるシール温度と溶断温度との両方に適正に対応することが可能となり、ヒータ51hで相対的に低いシール温度を設定しながら、第1ヒータ153h及び第2ヒータ155hで相対的に高い溶断温度を設定することができる。その結果、筒状フィルムFmがシール領域で溶融して変形することを避けながら、同じ筒状フィルムFmを速やかに溶断することが可能となる。
【0069】
なお、溶断刃153を受ける受け刃155の面は、第2シールジョー151bのシール面より奥に位置している。この構成によって、筒状フィルムFmが押されながら溶断されるようになり、その結果、溶着し易くなりフレアが防止される。
【0070】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、第1シールジョーと第2シールジョーが平面で筒状フィルムFmを挟んでD字状の軌跡を描くように旋回する構成について説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第1シールジョーと第2シールジョーとが往復運動によって近接および離間を繰り返す構成であってもよい。この構成を第3実施形態として、以下に説明する。
【0071】
(1)横シール機構217
図10は、第3実施形態に係る包装機の溶断刃の断面図である。なお、断面位置は、図4のA−O−A線と同位置である。図10において、刃先253aの最先端の厚みtは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。さらに、刃先253aの最先端の曲率半径は、従来の寸法を踏襲して、半径0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。
【0072】
図11Aは、シールジョー251が動作する前の横シール機構217の断面図である。図11Aにおいて、横シール機構217の一対のシールジョー251は、筒状フィルムFmを挟んで対峙している。説明の便宜上、図11A正面視左側のシールジョー251を第1シールジョー251a、図11A正面視右側のシールジョー251を第2シールジョー251bとよぶ。
【0073】
第1シールジョー251aには、筒状フィルムFmに向って開口する第1ガイド穴513が形成されており、第1ガイド穴513を挟んで上下にシール面が形成されている。また、第2シールジョー251bには、筒状フィルムFmに向って開口する第2ガイド穴515が形成されており、第2ガイド穴515を挟んで上下にシール面が形成されている。
【0074】
一対のシールジョー251の内部には、それぞれヒータ251hが設けられている。ヒータ251hを動作させると、シールジョー251の全体が加熱され、シール面も加熱状態となる。
【0075】
第1シールジョー251aの第1ガイド穴513内には、溶断刃253が設けられている。また、第2シールジョー251bの第2ガイド穴515内には受け刃255が設けられている。溶断刃253の刃先は、筒状フィルムFmを挟んで受け刃255と対峙している。また、溶断刃253および受け刃255は、ヒータ251hによってシールジョー251とほぼ同じ温度まで加熱される。
【0076】
(2)横シール機構217の動作
図11Bは、シールジョー251が動作を開始したときの横シール機構217の断面図である。図11Bにおいて、制御部は、駆動機構(図示せず)を介して、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bとを接近させ、溶断刃253の先端と受け刃255の先端とで筒状フィルムFmを挟み込む。それゆえ、筒状フィルムFmは溶断刃2および受け刃255によって両側から所定に圧力で押される。
【0077】
このとき、溶断刃253および受け刃255は、ヒータ251hによって加熱されているので、溶断刃253および受け刃255は、筒状フィルムFmとの接触部分に熱と圧力とを与え、筒状フィルムFmを溶着しつつ切断する。
【0078】
図11Cは、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bとが密着したときの横シール機構217の断面図である。図11Cにおいて、第1シールジョー251aのシール面と第2シールジョー251bのシール面とは、筒状フィルムFmを挟んで密着する。受け刃255の後端部分には付勢部材257が連結されており、受け刃255は溶断刃253に押されて第2ガイド穴515の奥へ後退する。このとき、ヒータ251hよって加熱されているシール面が、所定時間をかけて筒状フィルムFmを熱シールする。
【0079】
図11Dは、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bと離間させたときの横シール機構217の断面図である。図11Dにおいて、熱シール終了後、筒状フィルムFmから生成された包装袋の端部は、シール部分と溶断部分とで二重に閉じられた状態となっている。
【0080】
(3)特徴
(3−1)
横シール機構217では、溶断刃253の先端部分に高速度工具鋼が使用され、窒化処理またはショットピーニング処理によって、硬さがHv1000以上に調整されている。その結果、従来のサーメット合金製の溶断刃と同等の性能を確保することができ、溶断刃253の材料費が低減され、さらに溶断刃253の加工時間も短縮される。
【0081】
(3−2)
溶断刃253の刃先253aの幅は0.05mm以上、0.2mm未満であるので、刃先253aの耐摩耗性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように本発明によれば、溶断刃の耐久性が高まるので、包装機の横シール機構(溶断装置)だけに限らず、加熱金属で樹脂部材を溶断する装置にも有用である。
【符号の説明】
【0083】
17 横シール機構(溶断装置)
53 溶断刃
53a 刃先
Fm 筒状フィルム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2006−306445号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装機に関し、特に、フィルムの溶断装置を備えた包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムを溶断する溶断装置として、フィルムに熱および圧力を与える溶断刃によって、フィルムを溶着しつつ切断する装置が広く普及している。例えば、特許文献1(特開2006−306445号公報)に開示されている溶断装置では、繰り返し使用による溶断刃の切断性の劣化を抑制するため、溶断刃の材料として、セラミックである金属複ホウ化物と、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)等の金属とを合わせて焼き固めた、いわゆるサーメット(Cermet)合金を使用して成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、サーメット合金を使用した溶断刃は耐久性に優れているが、高コストであり、その上、製作リードタイムが長いため、トータルコスト増大の要因となっている。
【0004】
本発明の課題は、包装機において、サーメット合金のような高価な材料を使用することなく、サーメット合金で製作された溶断刃と同等の耐久性を有する溶断刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る包装機は、シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、溶断装置を備えている。溶断装置は、筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う。また、溶断装置は、一対のシールジョーと、溶断刃および受け刃と、ヒータとを有している。一対のシールジョーは、旋回しながら筒状フィルムの溶断予定部分の下流側と上流側とを円弧状のシール面で横方向に挟み、加熱してシールを行う。溶断刃および受け刃は、筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて筒状フィルムの溶断予定部分を溶断する。ヒータは、シールジョー、溶断刃、および受け刃を加熱する。また、シールジョー、溶断刃、および受け刃が動作し、溶断刃と受け刃とによる溶断予定部分の溶断を、シールジョーのシール面が溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に終了させる。さらに、少なくとも溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。
【0006】
この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0007】
本発明の第2観点に係る包装機は、シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、溶断装置を備えている。溶断装置は、筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う。また、溶断装置は、一対のシールジョーと、溶断刃および受け刃と、ヒータとを有している。一対のシールジョーは、筒状フィルムを横方向に挟み、加熱してシールを行う。溶断刃および受け刃は、筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて筒状フィルムを溶断する。ヒータは、シールジョー、溶断刃、および受け刃を加熱する。また、シールジョー、溶断刃、および受け刃が動作し、溶断刃と受け刃とによる筒状フィルムの溶断を、シールジョーのシール面が溶断予定部分の両側を挟んでシールを完了する前に終了させる。さらに、少なくとも溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている。
【0008】
この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0009】
本発明の第3観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、溶断刃の先端がシールジョーのシール面から受け刃側に突出している。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0010】
本発明の第4観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理が窒化処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0011】
本発明の第5観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理がショットピーニング処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0012】
本発明の第6観点に係る包装機は、第1観点または第2観点に係る包装機であって、表面処理が窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理である。この包装機では、少なくとも第1観点または第2観点の効果を奏することができる。
【0013】
本発明の第7観点に係る包装機は、第1観点から第6観点のいずれか1つに係る包装機であって、硬さがHv1000以上である。この包装機では、溶断刃の耐久性が、サーメット合金を使用した溶断刃の耐久性と同等レベルまで向上する。
【0014】
本発明の第8観点に係る包装機は、第1観点から第7観点のいずれか1つに係る包装機であって、溶断刃の刃先の幅が、0.05mm以上、0.2mm未満である。
【0015】
この包装機では、溶断刃の先端の耐摩耗性が向上する。
【0016】
本発明の第9観点に係る包装機は、第1観点から第8観点のいずれか1つに係る包装機であって、高速度工具鋼が日本工業規格におけるSKH51である。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【0017】
本発明の第10観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、溶断刃の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されている。この包装機では、フィルム溶断動作時、溶断刃と受け刃との間に圧が一気にかからないので、溶断刃の耐久性が向上する。
【0018】
本発明の第11観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、刃渡り方向から視た前記溶断刃の先端の稜線は、所定半径の円弧である。その所定半径は、シールジョーのシール面の円弧径と等しい。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【0019】
本発明の第12観点に係る包装機は、第1観点に係る包装機であって、溶断刃の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されている。また、溶断刃の先端の稜線を含む仮想面は、溶断刃の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面である。その所定半径は、シールジョーのシール面の円弧径と等しい。この包装機では、少なくとも第1観点の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る包装機の斜視図。
【図2】包装機の製袋包装ユニットの概略構成を示す斜視図。
【図3】横シール機構において旋回動作する第1シールジョー及び第2シールジョーの側面図。
【図4】刃先側から視た溶断刃の斜視図。
【図5】シールジョーの断面図。
【図6】変形例に係る包装機の横シール機構の溶断刃の斜視図。
【図7】第2実施形態に係る包装機の横シール機構において旋回動作する第1シールジョーと第2シールジョーの側面図。
【図8】第1シールジョーと第2シールジョーの動作のタイムチャート。
【図9】第1シールジョーと第2シールジョーの動作の他のタイムチャート。
【図10】第3実施形態に係る包装機の溶断刃の断面図。
【図11A】シールジョーが動作する前の横シール機構の断面図。
【図11B】シールジョーが動作を開始したときの横シール機構の断面図。
【図11C】第1シールジョーと第2シールジョーとが密着したときの横シール機構の断面図。
【図11D】第1シールジョーと第2シールジョーと離間させたときの横シール機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
<第1実施形態>
(1)包装機1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る包装機の斜視図である。また、図2は、包装機の製袋包装ユニットの概略構成を示す斜視図である。図1及び図2において、包装機1は、組合せ計量機2、製袋包装ユニット5及びフィルム供給ユニット6を備えている。
【0024】
組合せ計量機2は、商品Cを軽量し所定の合計重量になるよう排出する。製袋包装ユニット5は、被包装物の袋詰めを行う本体部分である。フィルム供給ユニット6は、製袋包装ユニット5に袋となるフィルムを供給する。
【0025】
また、製袋包装ユニット5の前面には操作スイッチ類7が配置されている。操作スイッチ類7を操作する操作者が視認できる位置には、操作状態を示すタッチパネル式ディスプレイ8が配置されている。
【0026】
組合せ計量機2、フィルム供給ユニット6及び製袋包装ユニット5は、操作スイッチ類7やタッチパネル式ディスプレイ8から入力された操作および設定に従って制御される。する。なお、操作スイッチ類7やタッチパネル式ディスプレイ8は、CPU、ROM、RAMなどから構成される制御部(図示せず)に接続されており、その制御部が組合せ計量機2および製袋包装ユニット5に設置されている各種センサから必要な情報を取り込み、その情報を各種制御において利用する。
【0027】
(2)詳細構成
(2−1)組合せ計量機2
組合せ計量機2は、製袋包装ユニット5の上部に配置されており、商品Cを計量ホッパで計量した後、これらの計量値を所定の合計重量になるように組み合わせて順次排出する。
【0028】
(2−2)フィルム供給ユニット6
フィルム供給ユニット6は、製袋包装ユニット5の成形機構13に対してシート状のフィルムを供給するユニットであって、製袋包装ユニット5に隣接して設けられている。また、フィルム供給ユニット6にはフィルムが巻かれたロールがセットされ、このロールからシート状のフィルムが繰り出される。
【0029】
(2−3)製袋包装ユニット5
図1および図2に示すように、製袋包装ユニット5は、成形機構13と、プルダウンベルト機構14と、縦シール機構15と、横シール機構17と、支持フレーム12とから構成されている。成形機構13は、シート状で送られてくるフィルムを筒状に成形する。プルダウンベルト機構14は、筒状となったフィルム(以下、筒状フィルムFmとよぶ)を下方に搬送する。縦シール機構15は、筒状フィルムFmの重ね合わせ部分を縦方向にシールする。横シール機構17は、筒状フィルムFmを横方向にシールすることで袋の上下端を封止する。支持フレーム12は、それらの機構を支える。また、支持フレーム12の周囲には、ケーシング9が取り付けられている。
【0030】
(2−3−1)成形機構13
成形機構13は、チューブ13bと、フォーマ13aとを有している。チューブ13bは、筒形状の部材であり、上下端が開口している。このチューブ13bの上端の開口部には、組合せ計量機2で計量された商品Cが投入される。フォーマ13aは、チューブ13bを取り囲むように配置されている。フィルムロールから繰り出されてきたシート状のフィルムは、フォーマ13aとチューブ13bとの間を通るときに筒状に成形される。成形機構13のチューブ13bやフォーマ13aは、製造する袋の大きさに応じて取り替えることができる。
【0031】
(2−3−2)プルダウンベルト機構14
図2に示すように、プルダウンベルト機構14は、チューブ13bに巻き付いた筒状フィルムFmを吸着して下方に連続搬送する機構であって、チューブ13bを挟んで左右両側にそれぞれベルト14cが設けられている。プルダウンベルト機構14では、吸着機能を有するベルト14cを駆動ローラ14aおよび従動ローラ14bによって回して筒状フィルムFmを下方に運ぶ。なお、図2においては、駆動ローラ14a等を回転させるローラ駆動モータの図示を省略している。
【0032】
(2−3−3)縦シール機構15
縦シール機構15は、チューブ13bに巻き付いた筒状フィルムFmの重なり部分を、一定の圧力でチューブ13bに押しつけながら加熱して縦にシールする機構である。縦シール機構15は、チューブ13bの正面側に位置しており、ヒータや、そのヒータにより加熱され筒状フィルムFmの重なり部分に接触するヒータベルトを有している。また、縦シール機構15は、図示しないが、ヒータベルトをチューブ13bに近づけたり遠ざけたりするための駆動装置も備えている。
【0033】
(2−3−4)横シール機構17
横シール機構17は、チューブ13bの下方に設けられている。横シール機構17は、一対のシールジョー51により、筒状フィルムFmを横方向に熱シールする。また、横シール機構17は溶断刃53と受け刃55とを有しており、シールジョー51によるシール部分の中間高さ位置を、溶断刃53と受け刃55とにより溶断する。つまり、横シール機構17は、溶断装置である。
【0034】
(2−3−4−1)第1シールジョー51aと第2シールジョー51b
図3は、横シール機構において旋回動作する第1シールジョー51a及び第2シールジョー51bの側面図である。図3において、第1シールジョー51aには、筒状フィルムFmに向って開口する第1穴517が形成されており、第1穴517を挟んで上下に第1シール面516が形成されている(図5参照)。説明の便宜上、第1穴517より上側のシール面を第1上シール面516a、第1穴517より下側のシール面を第1下シール面516bとよぶ。
【0035】
また、第2シールジョー51bには、筒状フィルムFmに向って開口する第2穴519が形成されており、第2穴519を挟んで上下に第2シール面518が形成されている(図5参照)。説明の便宜上、第2穴519より上側のシール面を第2上シール面518a、第2穴519より下側のシール面を第2下シール面518bとよぶ。第1シール面516および第2シール面518はともに半径Rの円弧面である。なお、本実施形態では、R=100である。
【0036】
一対のシールジョー51の内部には、それぞれヒータ51hが設けられている。ヒータ51hを動作させると、シールジョー51の全体が加熱され、シール面も加熱状態となる。
【0037】
(2−3―4−2)溶断刃53
第1シールジョー51aの第1穴517内には、溶断刃53が設けられている。以下、溶断刃53について図4及び図5を参照しながら説明する。
【0038】
図4は、刃先側から視た溶断刃53の斜視図である。また、図5は、シールジョー51の断面図である。図4において、溶断刃53の先端部分は、長手方向に沿って三角波状の刃先53aが形成されている。刃先53aは、その先端側から視ても正面側から見ても三角波状を成す、複雑な形状である。また、図5に示すように、溶断刃53の先端面は、平面ではなく第1シール面516と同じく半径Rの円弧面である。なお、溶断刃53の先端面は、第1シール面516から距離dだけ突出している。この溶断刃53の先端面とは、刃渡り方向に波形に成形された刃先の先端が描く稜線を含む仮想面のことであり、刃の厚み方向に沿って半径Rで湾曲している。
【0039】
従来、溶断刃53の材料には、サーメット合金が使用されていたので、材料が高価な上に、溶断刃53の複雑な刃先形状へ加工するために必要なリードタイムが長く、コスト増加の要因であった。
【0040】
本実施形態の溶断刃53は、従来の問題点を解消すべく、材料には、加工性に優れた汎用の高速度工具鋼を採用している。但し、特許文献1の段落[0042]でも開示されているとおり、高速度工具鋼で製作された溶断刃の耐久性は、サーメット合金で製作された溶断刃より劣る。それゆえ、本実施形態では、溶断刃53の耐久性を高めるため、刃先53aを含む先端部分に表面処理が行なわれ、先端部分の硬さが所定値以上になるように調整されている。
【0041】
具体的には、溶断刃53の先端部分に、窒化処理、またはショットピーニング処理、または窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理が行なわれ、先端部分の硬さがHv1000以上になるように調整されている。なお、未処理では、先端部分の硬さはHv800程度である。
【0042】
また、図4及び図5に示す刃先53aの最先端の厚みtは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。さらに、刃先53aの最先端の曲率半径は、従来の寸法を踏襲して、半径rは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。
【0043】
出願人は、高速道工具鋼の日本工業規格におけるSKH51で溶断刃53を製作し、先端部分に窒化処理を行なった第1サンプルS1、先端部分にショットピーニング処理を行なった第2サンプルS2、先端部分に窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理を行なった第3サンプルS3、及び先端部分になんら処理を行なっていない第4サンプルS4について、同じフィルムを同じサイクルでシールするという条件で耐久性試験を行なった。なお、第1サンプルS1及び第3サンプルS3の先端部分の硬さはHv1100以上、第2サンプルS2の先端部分の硬さはHv1000以上、第4サンプルS4の先端部分の硬さは900未満である。
【0044】
その結果、先端部分になんら処理が行なわれていない第4サンプルS4が試験開始後3ヶ月程度で溶断不能になった。しかし、先端部分に窒化処理が行なわれた第1サンプルS1、先端部分にショットピーニング処理が行なわれた第2サンプルS2、及び先端部分に窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理が行なわれた第3サンプルS3は、6ヶ月を経過しても溶断不能にならなかった。これは、従来のサーメット合金製の溶断刃と同等レベルの耐久性である。特に、第3サンプルS3については、溶断回数にして1200万回の耐久性を示した。
【0045】
横シール時には、溶断刃53の刃先は、筒状フィルムFmを挟んで受け刃55と対峙する。また、溶断刃53および受け刃55は、ヒータ51hによってシールジョー51とほぼ同じ温度まで加熱される。
【0046】
(2−3―4−3)受け刃55
第2シールジョー51bの第2穴519内には受け刃55が設けられている。受け刃55の先端面は、第2シール面518から距離dだけ窪んでいる。
【0047】
(3)動作
次に、図3及び図5を参照しながら、第1シールジョー51aと第2シールジョー51bの動作について説明する。なお、図3において一点鎖線で示されたシールジョーは旋回動作の一軌跡を示している。
【0048】
第1シールジョー51aと第2シールジョー51bとが筒状フィルムFmを挟んで円弧軌跡を描くように旋回する。先ず、第1シールジョー51aと第2シールジョー51bとが旋回し筒状フィルムFmの挟み付けを開始したとき、最初に、第1下シール面516b及び第2下シール面518bの下側部分で筒状フィルムFmを挟む。第1下シール面516b及び第2下シール面518bは円弧面を筒状フィルムFmに押し付けるように一定角度回転して、筒状フィルムFmをシールする。
【0049】
第1下シール面516b及び第2下シール面518bによるシールが終了すると同時に、溶断刃53と受け刃55とが筒状フィルムFmを挟み込む。溶断刃53の先端面は第1シール面516から距離dだけ突出し、受け刃55の先端面は第2シール面518から距離dだけ窪んでいるので、溶断刃53の先端面が筒状フィルムFmを受け刃55の窪みに押し込むような状態となる。
【0050】
溶断刃53および受け刃55は、ヒータ51hによってシールジョー51とほぼ同じ温度まで加熱されているので、筒状フィルムFmのうち溶断刃53の先端面によって受け刃55の窪みに押し込まれた部分が溶断される。
【0051】
筒状フィルムFmの溶断が完了した後、第1シールジョー51aの第1上シール面516a及び第2シールジョー51bの第2上シール面518aの下側部分が筒状フィルムFmを挟む。第1上シール面516a及び第2上シール面518aは円弧面を筒状フィルムFmに押し付けるように一定角度回転して、筒状フィルムFmをシールする。
【0052】
このように、溶断刃53および受け刃55による筒状フィルムFmの溶断が完了したのちに、第1上シール面516a及び第2上シール面518aによるシールが完了する。
【0053】
(4)特徴
(4−1)
この包装機では、少なくとも溶断刃53の先端部分は、高速度工具鋼が使用され、窒化処理またはショットピーニング処理によって、硬さがHv1000以上に調整されている。また、第1シールジョー51aの第1上シール面516a及び第2シールジョー51bの第2上シール面518aが溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に、溶断刃53と受け刃55とによる溶断予定部分の溶断が終了する。また、この包装機では、溶断刃の先端部分に、汎用材料である高速度工具鋼を適用し所定の硬さに調整されることによって、従来と同等の耐久性を確保することができる。その結果、溶断刃の材料費が低減され、さらに溶断刃の加工時間も短縮される。
【0054】
(4−2)
また、この包装機では、溶断刃53の先端が刃渡り方向に沿って波形に成形されているので、筒状フィルムFmの溶断動作時に、溶断刃53と受け刃55との間に圧が一気にかからないので、溶断刃53の耐久性が向上する。
【0055】
(4―3)
さらに、この包装機では、溶断刃53の先端の稜線を含む仮想面が、溶断刃53の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面である。
【0056】
(5)変形例
図6は、変形例に係る包装機の横シール機構17の溶断刃53の斜視図である。図6において、溶断刃53は、中央部を成す有効刃531、両端部を成す無効刃532,533を有している。有効刃531は、実際に筒状フィルムFmを溶断する部分である。無効刃532,533は、筒状フィルムFmを溶断する機能はなく、有効刃531が、万が一、シール面に衝突したときに有効刃531の刃先531aを保護する機能を有している。
【0057】
具体的には、無効刃532の刃先532aおよび無効刃533の刃先533aでは、先端が有効刃531の刃先531aよりもCだけ突出している。この実施形態ではC=0.5mmであり、さらに、その突出部分は半径0.5mmで丸められ、強度、耐摩耗性が高められている。
【0058】
それゆえ、有効刃531が対向する第2シールジョー51bのシール面(例えば、図11A参照)に衝突するような事態になっても、無効刃532の刃先532a及び無効刃533の刃先533aが先にシール面に当たり、有効刃531の刃先531aがシール面に衝突する事態を回避している。したがって、有効刃531の刃先531aの欠けや、割れなどが防止される。
【0059】
<第2実施形態>
第1実施形態では、一対のシールジョーが旋回しながら筒状フィルムFmに対して円弧面で接触するが、それに限定されるものではない。ここでは、第1シールジョーと第2シールジョーとが旋回運動によって近接および離間を繰り返す、他の構成を説明する。
【0060】
(1)横シール機構117
図7は、第2実施形態に係る包装機の横シール機構117において旋回動作する第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの側面図である。なお、横シール機構117以外は第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。また、図7において点線で示されたシールジョーは旋回動作の軌跡を示している。
【0061】
第2実施形態は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが平面で筒状フィルムFmを挟んでD字状の軌跡を描くように旋回する点、及び、溶断刃153が第1ヒータ153hを有し、受け刃155が第2ヒータ155hを有している点で、第1実施形態と異なる。
【0062】
しかも、制御部は、第1ヒータ153h及び第2ヒータ155hそれぞれを個別に制御して、溶断刃153及び受け刃155をそれぞれ異なる溶断温度に調節する。
【0063】
また、制御部は、ヒータ51hそれぞれを個別に制御して、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの各部位それぞれを異なるシール温度に調節する。
【0064】
図8は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの動作のタイムチャートである。図8において、制御部は、溶断刃153及び受け刃155の動作を調節する。例えば、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとがD字状に旋回するとき、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが筒状フィルムFmの挟み付けを開始した後に、溶断刃153を押し出して受け刃155との間で筒状フィルムFmを押圧して筒状フィルムFmの溶断を開始し、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが離反して筒状フィルムFmの挟み付けを終了する前に、溶断刃153を後退させて筒状フィルムFmの溶断を終了する。
【0065】
つまり、溶断開始時刻をシール開始時刻より遅くしながらも、溶断完了時刻tcをシール完了時刻tsより早くするのである。この場合、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが時刻tsに離反したときに袋は筒状フィルムFmと切り離されて落下する。
【0066】
また、図9は、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bの動作の他のタイムチャートである。図9において、例えば、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとがD字状に旋回するとき、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが対接して筒状フィルムFmの挟み付けを開始する前に、溶断刃153を押し出して受け刃155との間で筒状フィルムFmを押圧して筒状フィルムFmの溶断を開始し、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bとが離反して筒状フィルムFmの挟み付けを終了した後に、溶断刃153を後退させるようにしてもよい。
【0067】
ただし、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが離反する前の時刻tcに、溶断は完了している。つまり、溶断開始時刻をシール開始時刻より早くし、かつ溶断完了時刻tcもシール完了時刻tsより早くするのである。この場合も、第1シールジョー151aと第2シールジョー151bが時刻tsに離反したときに袋は落下する。
【0068】
以上のように、第2実施形態に係る包装機の横シール機構117は、筒状フィルムFmを溶着してシールする第1シールジョー151a及び第2シールジョー151bと、そのシール領域内の所定の部位を溶融して切断する溶断刃153及び受け刃155とを含んでいる。また、第1シールジョー151a及び第2シールジョー151bがヒータ51hを有し、溶断刃153が第1ヒータ153hを有し、受け刃155が第2ヒータ155hを有している。それゆえ、それぞれ異なるシール温度と溶断温度との両方に適正に対応することが可能となり、ヒータ51hで相対的に低いシール温度を設定しながら、第1ヒータ153h及び第2ヒータ155hで相対的に高い溶断温度を設定することができる。その結果、筒状フィルムFmがシール領域で溶融して変形することを避けながら、同じ筒状フィルムFmを速やかに溶断することが可能となる。
【0069】
なお、溶断刃153を受ける受け刃155の面は、第2シールジョー151bのシール面より奥に位置している。この構成によって、筒状フィルムFmが押されながら溶断されるようになり、その結果、溶着し易くなりフレアが防止される。
【0070】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、第1シールジョーと第2シールジョーが平面で筒状フィルムFmを挟んでD字状の軌跡を描くように旋回する構成について説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、第1シールジョーと第2シールジョーとが往復運動によって近接および離間を繰り返す構成であってもよい。この構成を第3実施形態として、以下に説明する。
【0071】
(1)横シール機構217
図10は、第3実施形態に係る包装機の溶断刃の断面図である。なお、断面位置は、図4のA−O−A線と同位置である。図10において、刃先253aの最先端の厚みtは、0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。さらに、刃先253aの最先端の曲率半径は、従来の寸法を踏襲して、半径0.05mm以上、0.2mm未満に設定している。
【0072】
図11Aは、シールジョー251が動作する前の横シール機構217の断面図である。図11Aにおいて、横シール機構217の一対のシールジョー251は、筒状フィルムFmを挟んで対峙している。説明の便宜上、図11A正面視左側のシールジョー251を第1シールジョー251a、図11A正面視右側のシールジョー251を第2シールジョー251bとよぶ。
【0073】
第1シールジョー251aには、筒状フィルムFmに向って開口する第1ガイド穴513が形成されており、第1ガイド穴513を挟んで上下にシール面が形成されている。また、第2シールジョー251bには、筒状フィルムFmに向って開口する第2ガイド穴515が形成されており、第2ガイド穴515を挟んで上下にシール面が形成されている。
【0074】
一対のシールジョー251の内部には、それぞれヒータ251hが設けられている。ヒータ251hを動作させると、シールジョー251の全体が加熱され、シール面も加熱状態となる。
【0075】
第1シールジョー251aの第1ガイド穴513内には、溶断刃253が設けられている。また、第2シールジョー251bの第2ガイド穴515内には受け刃255が設けられている。溶断刃253の刃先は、筒状フィルムFmを挟んで受け刃255と対峙している。また、溶断刃253および受け刃255は、ヒータ251hによってシールジョー251とほぼ同じ温度まで加熱される。
【0076】
(2)横シール機構217の動作
図11Bは、シールジョー251が動作を開始したときの横シール機構217の断面図である。図11Bにおいて、制御部は、駆動機構(図示せず)を介して、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bとを接近させ、溶断刃253の先端と受け刃255の先端とで筒状フィルムFmを挟み込む。それゆえ、筒状フィルムFmは溶断刃2および受け刃255によって両側から所定に圧力で押される。
【0077】
このとき、溶断刃253および受け刃255は、ヒータ251hによって加熱されているので、溶断刃253および受け刃255は、筒状フィルムFmとの接触部分に熱と圧力とを与え、筒状フィルムFmを溶着しつつ切断する。
【0078】
図11Cは、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bとが密着したときの横シール機構217の断面図である。図11Cにおいて、第1シールジョー251aのシール面と第2シールジョー251bのシール面とは、筒状フィルムFmを挟んで密着する。受け刃255の後端部分には付勢部材257が連結されており、受け刃255は溶断刃253に押されて第2ガイド穴515の奥へ後退する。このとき、ヒータ251hよって加熱されているシール面が、所定時間をかけて筒状フィルムFmを熱シールする。
【0079】
図11Dは、第1シールジョー251aと第2シールジョー251bと離間させたときの横シール機構217の断面図である。図11Dにおいて、熱シール終了後、筒状フィルムFmから生成された包装袋の端部は、シール部分と溶断部分とで二重に閉じられた状態となっている。
【0080】
(3)特徴
(3−1)
横シール機構217では、溶断刃253の先端部分に高速度工具鋼が使用され、窒化処理またはショットピーニング処理によって、硬さがHv1000以上に調整されている。その結果、従来のサーメット合金製の溶断刃と同等の性能を確保することができ、溶断刃253の材料費が低減され、さらに溶断刃253の加工時間も短縮される。
【0081】
(3−2)
溶断刃253の刃先253aの幅は0.05mm以上、0.2mm未満であるので、刃先253aの耐摩耗性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように本発明によれば、溶断刃の耐久性が高まるので、包装機の横シール機構(溶断装置)だけに限らず、加熱金属で樹脂部材を溶断する装置にも有用である。
【符号の説明】
【0083】
17 横シール機構(溶断装置)
53 溶断刃
53a 刃先
Fm 筒状フィルム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2006−306445号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、
前記筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う溶断装置を備え、
前記溶断装置は、
旋回しながら前記筒状フィルムの溶断予定部分の下流側と上流側とを円弧状のシール面で横方向に挟み、加熱してシールを行う一対のシールジョーと、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて前記筒状フィルムの前記溶断予定部分を溶断する溶断刃および受け刃と、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃を加熱するヒータと、
を有し、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃が動作し、前記溶断刃と前記受け刃とによる前記溶断予定部分の溶断を、前記シールジョーの前記シール面が前記溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に終了させ、
少なくとも前記溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている、
包装機。
【請求項2】
シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、
前記筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う溶断装置を備え、
前記溶断装置は、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、加熱してシールを行う一対のシールジョーと、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて前記筒状フィルムを溶断する溶断刃および受け刃と、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃を加熱するヒータと、
を有し、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃が動作し、前記溶断刃と前記受け刃とによる前記筒状フィルムの溶断を、前記シールジョーの前記シール面が溶断予定部分の両側を挟んでシールを完了する前に終了させ、
少なくとも前記溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている、
包装機。
【請求項3】
前記溶断刃の先端部分は、前記シールジョーのシール面から前記受け刃側に突出している、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項4】
前記表面処理は、窒化処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項5】
前記表面処理は、ショットピーニング処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項6】
前記表面処理は、窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項7】
前記硬さは、Hv1000以上である、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項8】
前記溶断刃の刃先の幅は、0.05mm以上、0.2mm未満である、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項9】
前記高速度工具鋼は、日本工業規格におけるSKH51である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項10】
前記溶断刃の先端は刃渡り方向に沿って波形に成形されている、
請求項1に記載の包装機。
【請求項11】
刃渡り方向から視た前記溶断刃の先端の稜線は、所定半径の円弧であり、
前記所定半径は、前記シールジョーの前記シール面の円弧径と等しい、
請求項1に記載の包装機。
【請求項12】
前記溶断刃の先端は刃渡り方向に沿って波形に成形されており、
前記溶断刃の先端の稜線を含む仮想面は、前記溶断刃の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面であり、
前記所定半径は、前記シールジョーの前記シール面の円弧径と等しい、
請求項1に記載の包装機。
【請求項1】
シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、
前記筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う溶断装置を備え、
前記溶断装置は、
旋回しながら前記筒状フィルムの溶断予定部分の下流側と上流側とを円弧状のシール面で横方向に挟み、加熱してシールを行う一対のシールジョーと、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて前記筒状フィルムの前記溶断予定部分を溶断する溶断刃および受け刃と、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃を加熱するヒータと、
を有し、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃が動作し、前記溶断刃と前記受け刃とによる前記溶断予定部分の溶断を、前記シールジョーの前記シール面が前記溶断予定部分の上流側を挟んでシールを完了する前に終了させ、
少なくとも前記溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている、
包装機。
【請求項2】
シート状フィルムを筒状フィルムに成形し、シールして製袋しながら被包装物の充填を行う包装機であって、
前記筒状フィルムの溶断、および横方向へのシールを行う溶断装置を備え、
前記溶断装置は、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、加熱してシールを行う一対のシールジョーと、
前記筒状フィルムを横方向に挟み、熱および圧力を与えて前記筒状フィルムを溶断する溶断刃および受け刃と、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃を加熱するヒータと、
を有し、
前記シールジョー、前記溶断刃、および前記受け刃が動作し、前記溶断刃と前記受け刃とによる前記筒状フィルムの溶断を、前記シールジョーの前記シール面が溶断予定部分の両側を挟んでシールを完了する前に終了させ、
少なくとも前記溶断刃の先端部分は、高速度工具鋼で成形され、表面処理によって所定の硬さに調整されている、
包装機。
【請求項3】
前記溶断刃の先端部分は、前記シールジョーのシール面から前記受け刃側に突出している、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項4】
前記表面処理は、窒化処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項5】
前記表面処理は、ショットピーニング処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項6】
前記表面処理は、窒化処理およびショットピーニング処理の複合処理である、
請求項1又は請求項2に記載の包装機。
【請求項7】
前記硬さは、Hv1000以上である、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項8】
前記溶断刃の刃先の幅は、0.05mm以上、0.2mm未満である、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項9】
前記高速度工具鋼は、日本工業規格におけるSKH51である、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の包装機。
【請求項10】
前記溶断刃の先端は刃渡り方向に沿って波形に成形されている、
請求項1に記載の包装機。
【請求項11】
刃渡り方向から視た前記溶断刃の先端の稜線は、所定半径の円弧であり、
前記所定半径は、前記シールジョーの前記シール面の円弧径と等しい、
請求項1に記載の包装機。
【請求項12】
前記溶断刃の先端は刃渡り方向に沿って波形に成形されており、
前記溶断刃の先端の稜線を含む仮想面は、前記溶断刃の厚み方向に沿って湾曲する所定半径の円弧曲面であり、
前記所定半径は、前記シールジョーの前記シール面の円弧径と等しい、
請求項1に記載の包装機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【公開番号】特開2013−82490(P2013−82490A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225014(P2011−225014)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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