説明

包装用シート

【課題】塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性の高い包装用シート及びPTP包装体を提供する。
【解決手段】
少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含む第1の樹脂層を備える包装用シート。または、前記第1の樹脂層中の高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)との重量配合比(A/B)が70/30以上90/10以下である包装用シート。更には前記包装用シートを用いて作製されるプレススルーパック包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品、食品等の包装用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品、食品等の包装にはプラスチックシートを成形して作成したポケットに内容物を収納し、粘着剤を塗布したアルミ箔を蓋材として熱シールして包装するいわゆるプレススルーパック(以下PTP)包装体が用いられてきた。プラスチックシートとしては透明性、成形性、剛性、コスト面などから主としてポリ塩化ビニル樹脂が用いられてきた。しかし、内容物が吸湿性を有するものである場合ポリ塩化ビニル樹脂では防湿性に劣るため、防湿性の優れたポリ塩化ビニリデン樹脂をコーティングして用いて対応してきたが、これらは高価なものとなりコスト面で問題であった。
【0003】
また近年、環境問題よりポリ塩化ビニル樹脂及びポリ塩化ビニリデン樹脂が焼却処理の際のハロゲン系ガスの発生などから敬遠されている。一方、最近の成形機の改良に伴い以前は成形が難しかったポリプロピレンシートが防湿性、低コスト性及び易処理性に注目されて種々の用途で使用されるようになってきており、PTP包装用としても用いられるようになった。近年では、水分に敏感な薬剤や新薬開発速度を促進させるため信頼性に優れる水蒸気バリア性の高いシートが求められおり、その場合ポリプロピレン樹脂に石油樹脂を添加することによって水蒸気バリア性を向上させる方法が実施されてきた(例えば特許文献1および特許文献2)。しかし、ポリプロピレン樹脂に石油樹脂を添加する方法では、ポリ塩化ビニル樹脂シートにポリ塩化ビニリデン樹脂をコーティングした積層シートに比較し、水蒸気バリア性が不十分であり改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−143613号公報
【特許文献2】特開平2−302445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性の高い包装用シート及びPTP包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の包装用シートは、少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含む第1の樹脂層を備えるものである。
【0007】
[2]本発明の包装用シートは、前記第1の樹脂層中の高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)との重量配合比(A/B)が70/30以上90/10以下とすることができる。
【0008】
[3]本発明の包装用シートは、前記石油樹脂(B)が水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂とすることができる。
【0009】
[4]本発明の包装用シートは、前記石油樹脂(B)の数平均分子量が300以上2000以下とすることができる。
【0010】
[5]本発明の包装用シートは、前記第1の樹脂層上に更に水蒸気バリア性を有する第2の樹脂層を備えるものとすることができる。
【0011】
[6]本発明の包装用シートは、前記第2の樹脂層がビニルアルコール系樹脂(C)を含むものとすることができる。
【0012】
[7]本発明の包装用シートは、前記ビニルアルコール系樹脂(C)がエチレン−ビニルアルコール共重合体またはポリビニルアルコールを含むものとすることができる。
【0013】
[8]本発明の包装用シートは、前記第2の樹脂層が更に無機充填剤(D)を含むものとすることができる。
【0014】
[9]本発明の包装用シートは、前記無機充填剤(D)が無機層状化合物とすることができる。
【0015】
[10]本発明の包装用シートは、前記無機層状化合物が膨潤性マイカとすることができる。
【0016】
[11]本発明の包装用シートは、前記第2の樹脂層中のビニルアルコール系樹脂(C)と無機充填剤(D)との重量配合比(C/D)が50/50以上95/5以下とすることができる。
【0017】
[12]本発明の包装用シートは、前記第2の樹脂層上に更に第3の樹脂層を備えるものとすることができる。
【0018】
[13]前記第3の樹脂層がポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂を含むものとすることができる。
【0019】
[14]本発明のプレススルーパック包装体は前記〔1〕乃至〔13〕のいずれかに記載の包装用シートを用いて作製することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の包装用シートは、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性が高く、PTP包装体への成形性も優れ、また本発明のPTP包装体は耐防湿性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の包装用シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の包装用シートの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の包装用シートの一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のPTP包装体の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のPTP包装体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、以下図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
(第1の樹脂層)
本発明の包装用シートは、図1〜3に例示するように少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含む第1の樹脂層1を備えるものである。
【0024】
第1の樹脂層1に用いられる高密度ポリエチレン樹脂(A)の密度は945kg/m以上970kg/m3以下が好ましい。密度を前記範囲内とすることで、高い水蒸気バリア性や透明性を得ることができる。
【0025】
また高密度ポリエチレン樹脂(A)は、メルトフローレート(以下MFRという)が0.2〜8g/10分であることが好ましい。MFRを前記範囲内とすることで、フィルムの透明性や剛性を損なうことなく、また溶融押出性に優れ、ダイス押出面の「メヤニ」の発生も抑制することができる。
【0026】
高密度ポリエチレン樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。例えば、エチレンを、炭素数3〜18のα−オレフィンの存在下又は不存在下、遷移金属を含む化合物を触媒として重合することによって得られ、重合反応は30℃〜300℃の重合温度で、常圧〜3000kg/cm2の重合圧力下で行われる。重合方法としては、溶媒溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0027】
前記第1の樹脂層1中の高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)との重量配合比(A/B)は70/30以上90/10以下であることが好ましい。前記第1の樹脂層中の重量配合比を前記下限値以上とすることによりシートの剛性を保持し、n−ヘプタンを溶媒とする残留モノマーや低分子量化合物の抽出量が150ppm以内に抑えられ厚生省告示第20号に適合することができる。また前記上限値以下とすることによりシートの成形性を向上させ、高いレベルの水蒸気バリア性を付与させることができる。
【0028】
第1の樹脂層1に用いられる石油樹脂(B)としては、脂肪族系、芳香族炭化水素樹脂系、脂環族飽和炭化水素樹脂系、共重合系等が使用可能であるが、透明性と臭気の観点から脂肪族系炭化水素樹脂が好ましく、より好ましくはジシクロペンタジエンを熱重合したのちに水添反応を施して得られる水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂である。軟化点(環球法、JIS K2548に準ずる)は、70〜150℃程度とするのが好ましく、より好ましくは90〜140℃である。軟化点を70℃以上にすることにより組成物のポリオレフィンに対する接着性能および耐熱性のバランスが良好となる。軟化点を150℃以下とすることで、樹脂の製造が容易になり、製造コストの面でも有利になるため好ましい。
【0029】
石油樹脂(B)の数平均分子量は、300以上2000以下とするのが好ましく、より好ましくは500以上1500以下である。数平均分子量を前記範囲以上とすることにより、樹脂組成物の凝集力等の接着性能が良好となり、水蒸気バリア性も向上する。数平均分子量を前記範囲以下とすることで、ベースポリマーのゴム系重合体または合成樹脂系重合体との相溶性が良好となるとともに、樹脂の製造が容易になり、製造コストの面でも有利になるため好ましい。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値による。
【0030】
第1の樹脂層1の混合方法は、特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法が挙げられる。公知のブレンド方法としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(A)および石油樹脂(B)をドライブレンドする方法、メルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法には、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いることができ、またメルトブレンドする方法には、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いることができる。
【0031】
第1の樹脂層1には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤等の添加剤を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX 1010)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRGANOX 1076)等のフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のホファイト系安定剤等が挙げられる。
【0032】
滑剤としては、例えば、エルカ酸アミド、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられ、抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0033】
上記の種々の添加剤は、高密度ポリエチレン樹脂(A)石油樹脂(B)を予めブレンドして得られる第1の樹脂層1に添加して用いても良く、高密度ポリエチレン樹脂(A)または石油樹脂(B)のそれぞれに添加して用いても良く、または、添加剤をマスターバッチとして用いても良い。
【0034】
第1の樹脂層1の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のフィルムの製造方法を用いることができる。公知のフィルムの製造方法としては、例えば、インフレーション法、Tダイキャスト法等が挙げられ、好ましくはTダイキャスト法である。
【0035】
(第2の樹脂層)
本発明の包装用シートは、水蒸気バリア性を向上させるために、図2に示すように第1の樹脂層1上に更に水蒸気バリア性を有する第2の樹脂層2を備えることができる。
【0036】
第2の樹脂層2は、ビニルアルコール系樹脂(C)を主成分とすることができる。ビニルアルコール系樹脂(C)は、ビニルエステル重合体のけん化物またはビニルエステルと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体のけん化物である。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。ビニルエステルと共重合可能なビニルモノマーとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のα−オレフィン系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル系単量体;アリルアルコール;ビニルトリメトキシシラン;N−ビニル−2−ピロリドン、イソプロペニルアルコール、7−オクテン−1−オール、アリルアセテート、イソプロペニルアセテート等が挙げられる。特に水蒸気バリア性と透明性の観点からビニルアルコール系樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体またはポリビニルアルコールとすることが好ましい。
【0037】
エチレンービニルアルコール共重合体は、エチレンー酢酸ビニル共重合体をけん化することによって得られ、水蒸気バリア性、透明性が共に良好という特徴がある。エチレンービニルアルコール共重合体溶液の溶媒としては、エチレンービニルアルコール共重合体を溶解する水性、非水性のどちらの溶媒でも使用できる。非水性の溶媒としてはアルコール類あるいは水とアルコールの混合物を挙げることができる。
【0038】
ポリビニルアルコールは、ビニルエステル重合体のけん化物またはビニルエステルと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体のけん化物である。ここでビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表例として挙げられるが、その他にプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルも挙げられる。これらのビニルエステルは一種あるいは二種以上混合して使用してもよい。
【0039】
第2の樹脂層2は、更に無機充填剤(D)を含むものとすることができる。無機充填剤を含むことにより樹脂組生物の機械的特性が高くなり、又、水蒸気バリア性も向上する。特に水蒸気バリア性を飛躍的に向上させる観点からは無機層状化合物がより好ましい。
【0040】
無機層状化合物としては、溶媒に膨潤、へき開する無機層状化合物が好ましく用いられる。これらの中でも膨潤性を持つ粘土系鉱物が好ましく、粘土系鉱物はシリカの4面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を有する2層構造よりなるタイプと、シリカの4面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を両側から挟んだ3層構造よりなるタイプに分類される。前者としてはカオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者としては層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチーブンサイト、マイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガイライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等で天然であっても合成物であってもよい。また鱗片状シリカ等でも使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コーティング剤組成物に使用した場合の水蒸気バリア性から膨潤性マイカがより好ましい。
【0041】
無機層状化合物のアスペクト比は100以上4000以下であることが好ましく、特に100以上3000以下であることが好ましい。アスペクト比を前記下限値以上とすることで水蒸気バリア性を向上させることができる。また、アスペクト比を前記上限値以下とすることで透明性と成形性を維持することができる。また、無機層状化合物の平均粒子径は0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。平均粒子径を前記下限値以上とすることにより水蒸気バリア性を向上させることができる。また、平均粒子径を前記上限値以下とすることにより透明性と成形性を維持することができる。
【0042】
ビニルアルコール系樹脂(C)と無機充填剤(D)の混合方法としては、均一に混合、分散する限り特に限定されないが、例えば、先ず、溶媒としての水に膨潤またはへき開した状態での無機層状化合物を作製し、次に、そのような状態の無機層状化合物を水もしくは溶剤に溶解させたビニルアルコール系溶液へ撹拌機もしくはホモジナイザー等を用いて分散させることができる。
【0043】
前記第2の樹脂層2中のビニルアルコール系樹脂(C)と無機充填剤(D)との重量配合比(C/D)は50/50以上95/5以下であることが好ましく、特に70/30以上95/5以下であることがより好ましい。前記第2の樹脂層中の重量配合比を前記下限値以上とすることにより透明性と成形性を維持することができる。また、前記上限値以下とすることにより高い水蒸気バリア性を付与することができる。
【0044】
本発明の第2の樹脂層2の厚みは1μm以上50μm以下であることが好ましい。厚みを前記範囲とすることで、シート状態で十分な水蒸気バリア性を得ることができ、また、成形時にクラックが発生しないため、PTP包装体に成形した後も高い水蒸気バリア性を維持することができる。
【0045】
第2の樹脂層と第1の樹脂層との密着性や防湿性を向上させる目的で、第1の樹脂層上にアルキルチタネート系、ポリイソシアネート系、ポリアルキレンイミン系、ポリウレタン系等のアンカーコートを介在させても構わない。さらに第1の樹脂層表面にコロナ処理やプラズマ処理、オゾン処理等を施しておくことができる。
【0046】
(第3の樹脂層)
本発明の包装用シートは、図3に示すように前記第2の樹脂層上に更にポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂を含む第3の樹脂層を備えたものとすることができる。
【0047】
第3の樹脂層に用いられるポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、PTP包装体への成形加工性の観点から融点が170℃以下のものを用いることが好ましい。
【0048】
本発明に用いられる第3の樹脂層の厚みは10μm以上70μm以下であることが好ましい。厚みが前記範囲の場合、成形時の耐クラック性が良好となりPTP包装体としても高い水蒸気バリア性を維持することが可能となる。また、シート全体の厚みも厚くならず、PTP包装体としたときに製剤の押し出し性を損なわないため好ましい。
【0049】
第3の樹脂層と第2の樹脂層との密着性やPTP包装体の防湿性を向上させる目的で、第2の樹脂層上にアルキルチタネート系、ポリイソシアネート系、ポリアルキレンイミン系、ポリウレタン系等のアンカーコートを設けても構わない。さらに第2の樹脂層表面にコロナ処理やプラズマ処理、オゾン処理等を施しておく事ができる。
【0050】
本発明の包装用シートの製造方法は、本発明の多層シート構成が得られる方法であれば特に限定されないが、第1の樹脂層上に第2の樹脂層を塗工、乾燥し多層シートを形成した後に、更に第3の樹脂層をラミネートすることにより製造することができる。ラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネート法等が挙げられる。
【0051】
(本発明の包装用シートの使用方法)
本発明の包装シートの使用例としてPTP包装体の底材が挙げられる。PTP包装体とは、図4および5に示すように、例えば医薬品包装分野の場合、錠剤、カプセル剤等の固形剤の包装用として、本発明の包装用シートをポケット形状に成形して底材5、その中に固形の薬剤6を充填し、例えばアルミ箔からなる蓋材4で密封した包装体である。水分による劣化がある薬剤の場合、包装用シートには高いレベルの水蒸気バリア性が求められている。この点、本発明の包装用シートは水蒸気バリア性が良好のため、PTP包装体の底材5として好適に用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
第1の樹脂層として、高密度ポリエチレン樹脂(旭化成株式会社製、サンテックHD−B161、密度961kg/m)90重量部、水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂(荒川化学工業株式会社製、アルコンP−125、数平均分子量820)10重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
【0054】
(実施例2)
高密度ポリエチレン樹脂80重量部、石油樹脂20重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0055】
(実施例3)
高密度ポリエチレン樹脂70重量部、石油樹脂30重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0056】
(実施例4)
高密度ポリエチレン樹脂60重量部、石油樹脂40重量部とした以外は実施例1と同様にして包装用シートを得た。
【0057】
(実施例5)
前記の高密度ポリエチレン樹脂80重量部および石油樹脂20重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にて厚み0.3mmの第1の樹脂層を得た。次いで、イソシアネート系のアンカーコート剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、コロネートL)を0.5μmの厚さに塗布し乾燥させた後に、第2の樹脂層としてポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、エクセバールRS−2117)を95重量部、膨潤性マイカゾル(トピー工業株式会社製、NTS−5、アスペクト比2000、平均粒子径10μm)をマイカの固形分が5重量部となる比率で配合し、固形分濃度が10重量部となるように水で希釈したコーティング溶液を乾燥後の塗膜が10μmとなるように塗布、乾燥し、総厚が0.31mmの包装用シートを得た。
【0058】
(実施例6)
前記の高密度ポリエチレン樹脂80重量部、および石油樹脂20重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にて厚み0.28mmの第1の樹脂層を得た。次いで、前記イソシアネート系のアンカーコート剤を0.5μmの厚さに塗布し乾燥させた後に、第2の樹脂層として、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ社製、エクセバールRS−2117)を95重量部、膨潤性マイカゾル(トピー工業株式会社製、NTS−5、アスペクト比2000、平均粒子径10μm)をマイカの固形分が5重量部となる比率で配合し、固形分濃度が10重量部となるように水で希釈したコーティング溶液を乾燥後の塗膜が10μmとなるように塗布、乾燥して第2の樹脂層を得た。さらに、第2の樹脂層面にコロナ処理を施し、先に用いたのと同様のアンカーコート剤を0.5μmの厚さに塗布し乾燥させ、第3の樹脂層として、ポリプロピレン樹脂20μmをドライラミネート法にて積層して、総厚が0.31mmの包装用シートを得た。
【0059】
(実施例7)
前記の高密度ポリエチレン樹脂80重量部、および石油樹脂20重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にて厚み0.28mmの第1の樹脂層を得た。次いで、前記イソシアネート系のアンカーコート剤を0.5μmの厚さに塗布し乾燥させた後に、第2の樹脂層として、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、エクセバールRS−2117)を50重量部、膨潤性マイカゾル(トピー工業株式会社製、NTS−5、アスペクト比2000、平均粒子径10μm)をマイカの固形分が50重量部となる比率で配合し、固形分濃度が10重量部となるように水で希釈したコーティング溶液を乾燥後の塗膜が10μmとなるように塗布、乾燥して第2の樹脂層を得た。さらに、第2の樹脂層面にコロナ処理を施し、先に用いたのと同様のアンカーコート剤を0.5μmの厚さに塗布し乾燥させ、第3の樹脂層として、ポリプロピレン樹脂20μmをドライラミネート法にて積層して、総厚が0.31mmの包装用シートを得た。
【0060】
(比較例1)
第1の樹脂層として、ポリプロピレン樹脂(株式会社プライムポリマー製、プライムポリプロE200GV)70重量部、前記石油樹脂30重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
【0061】
(比較例2)
第1の樹脂層として、低密度ポリエチレン樹脂(宇部丸善ポリエチレン株式会社製、UBEポリエチレンF222NH)70重量部、石油樹脂30重量部をドライブレンドにて配合し、2軸押出機で溶融混練しTダイキャスト法にてシーティングし、厚み0.3mmの包装用シートを得た。
【0062】
(水蒸気バリア性の評価)
得られた包装用シートの水蒸気バリア性を、JIS Z 0208:40℃/90%RHに準拠し測定した。結果を表1に示す。
【0063】
(PTP包装体成形後の水蒸気バリア性の評価)
実施例5および6については、得られた包装用シートを、PTP成形機(FBP−M2、CKD社製)により凹部を成型し、そこに吸湿剤(錠剤型合成ゼオライト、東海化学工業所社製)を充填し、アルミ箔を接着してPTP包装体を作製した。まず、PTP包装体の重量を測定してから、その後40℃/90%RHの恒温恒湿槽に投入し、吸湿剤の水分吸収によるPTP包装体の重量変化を経時で測定し、成形後の包装用シートの水蒸気バリア性を測定した。結果を表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の包装用シートは、塩素、フッ素等のハロゲン系材料を含まず、水蒸気バリア性が高く、例えばPTP包装体の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・第1の樹脂層
2・・・第2の樹脂層
3・・・第3の樹脂層
4・・・蓋材
5・・・底材
6・・・薬剤
11、12、13・・・包装用シート
21、22・・・包装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)とを含む第1の樹脂層を備える包装用シート。
【請求項2】
前記第1の樹脂層中の高密度ポリエチレン樹脂(A)と石油樹脂(B)との重量配合比(A/B)が70/30以上90/10以下である請求項1記載の包装用シート。
【請求項3】
前記石油樹脂(B)が水素添加ジシクロペンタジエン系石油樹脂である請求項1または2に記載の包装用シート。
【請求項4】
前記石油樹脂(B)の数平均分子量が300以上2000以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項5】
前記第1の樹脂層上に更に水蒸気バリア性を有する第2の樹脂層を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項6】
前記第2の樹脂層がビニルアルコール系樹脂(C)を含むものである請求項5に記載の包装用シート。
【請求項7】
前記ビニルアルコール系樹脂(C)がエチレン−ビニルアルコール共重合体またはポリビニルアルコールを含むものである請求項6記載の包装用シート。
【請求項8】
前記第2の樹脂層が更に無機充填剤(D)を含むものである請求項5〜7のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項9】
前記無機充填剤(D)が無機層状化合物である請求項8記載の包装用シート。
【請求項10】
前記無機層状化合物が膨潤性マイカである請求項9記載の包装用シート。
【請求項11】
前記第2の樹脂層中のビニルアルコール系樹脂(C)と無機充填剤(D)との重量配合比(C/D)が50/50以上95/5以下である請求項5〜10のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項12】
前記第2の樹脂層上に更に第3の樹脂層を備える請求項5〜11のいずれか1項に記載の包装用シート。
【請求項13】
前記第3の樹脂層がポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂を含むものである請求項12に記載の包装用シート。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の包装用シートを用いて作製されるプレススルーパック包装体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210975(P2012−210975A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162720(P2011−162720)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】