説明

包装用容器

【課題】容器の外側面の全面に印刷等により皮膜を形成した意匠性の高い包装用容器1において、製函機での製函過程での積み重ね時(スタッキング時)に、その角部およびその近傍から摩擦力によって印刷皮膜がはげ落ちるのを防止する。
【解決手段】基板11,21と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁12〜15,22〜25を備え、側壁によって形成される周側壁部には隣接する側壁によって角部が形成されている包装用容器1において、角部の物品収容面側であって角部の稜線から両側方の所定領域に、物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜A〜Dを形成する。積み重ね時に、上位の包装用容器1が下位の包装用容器1内に沈み込むときに、上位の包装用容器1の角部が下位の包装用容器1の角部に形成した皮膜A〜Dと接触することで、摩擦抵抗が小さくなり、上位の包装用容器1の角部近傍での印刷皮膜がはげ落ちがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備えており、該側壁が形成する周側壁部に少なくとも1つの角部が形成されている形態の包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店などにおいて提供されるハンバーガーなどを収納するのに適した包装用容器として、特許文献1に記載のように、下容器部である容器部と上容器部である蓋部とがヒンジ部を介して開閉自在となっている紙製の包装用容器が知られている。製函に当たっては、台紙から展開した状態のブランクスを打ち抜き、それを製函機によって、立体状に組み立てるとともに、基板から拡開状に立ち上がる側壁の側端縁同士を接着剤で貼り合わせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−210660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される形態の包装用容器を製函機を用いて製函するときに、製函機に備えられた容器収容枠内に、各角部がのり付けされて立体的に組み立てたものを雄型によって押し付け、複数個の容器を順次スタックしていく工程が含まれる。複数個の容器をスタックすることで、下位に位置する容器には上位に位置する容器の荷重が掛かるようになり、荷重の掛かった状態で所定時間放置することで、前記したのり付け部での接着を確実にしている。
【0005】
角部がのり付けされた状態の容器の接着乾燥は、容器収容枠内で行われるが、接着乾燥工程にある容器の上位位置に吸着アームによって搬入するように装置の設計がなされているとしても、上下の容器間で搬入位置にわずかな位置ずれが生じるのを回避するのは困難である。また、先に搬入した容器は角部ののり付けに用いた接着剤が未硬化状態にあるのが通常であり、搬入後にわずかに姿勢が変化するのも避けられない。
【0006】
それらのことから、下位に位置する容器の上に新たな容器をスタックするときに、新たにスタックする容器、すなわち上位に位置することとなる容器の周側壁に形成されている角部およびその近傍が、すでに容器収容枠内に収容されている容器、すなわち下位の容器の内側周側壁に接触しながら、次第に沈み込むようにスタックさられることが起こっている。
【0007】
包装用容器では、意匠上等の目的から外側面に種々の印刷が施されるが、前記のように製函機でのスタック時に、周側壁に形成される角部およびその近傍が下位の容器との間で摩擦接触した状態で次第に沈み込んでいくのを完全には回避することができず、そのときの摩擦力によって角部近傍での印刷塗膜が落ちてしまうことが起こり得る。模様落ちがあると外観意匠が低下し商品としては好ましくないので、現在の包装用容器では、周側壁に形成される角部およびその近傍には印刷を施さないようにしており、意匠上等での制限を受けているといえる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、容器の外側面の全面に印刷等により皮膜を形成しても、製函機での製函過程に、その角部およびその近傍で皮膜に落ちが生じるのを回避することができ、それにより、より意匠性の高い外面模様を持つことができるようにした包装用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の包装用容器は、基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備え、該側壁によって形成される周側壁部には隣接する側壁によって少なくとも1つの角部が形成されている包装用容器であって、前記角部の物品収容面側であって角部の稜線から両側方の所定領域には物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明による第2の包装用容器は、基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備え、該側壁によって形成される周側壁部には隣接する側壁によって少なくとも1つの角部が形成されている包装用容器であって、前記角部を形成する2つの側壁の一方の側壁の側端縁には糊代部位が形成され、該糊代部位が他方の側壁の側端部に接着することで前記角部が形成されており、前記角部の物品収容面側であって角部の稜線から両側方の所定領域には物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記の本発明による包装用容器では、包装用容器の周側壁の角部およびその近傍の内側面(物品収容面)には物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜が形成されている。そのために、製函時に製函機の容器収容枠内に複数個をスタックするときに、すでに収容されている容器とその上に新たにスタックしようとする容器との間にわずかな位置ずれが生じていて、新たにスタックする容器の周側壁に形成されている角部およびその近傍が、すでに容器収容枠内に収容されている容器の周側壁の角部およびその近傍の内側面と接触しながら、次第に沈み込んでいくのを回避できない場合でも、両者間の摩擦抵抗を大きく低減することができる。それにより、新たにスタックする容器の外側面の全部に印刷が施されている場合でも、模様落ちが生じるのを回避することができ、結果として、意匠性の高い外面模様を持つ包装用容器とすることができる。
【0012】
本発明による包装用容器において、容器の材料に特に制限はなく、1枚もののシート(単紙)であってもよく、外表面シートと波形形状をなす中芯シートと内表面シートとの積層体シートであってもよい。
【0013】
本発明による包装用容器において、前記摩擦係数の小さい皮膜を形成するための材料としては、容器の材料よりも摩擦係数が小さいことを条件に任意の材料を用いることができる。スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂等やそれらの共重合体等の材料を例示することができる。好ましくはスチレンアクリル系樹脂またはアクリル系樹脂であり、スチレンアクリル系樹脂の場合、より好ましくは塗工液固形分20〜30%(原液固形分35〜45%)であり、アクリル系樹脂の場合、より好ましくは塗工液固形分20〜30%(原液固形分50〜60%)のものである。
【0014】
また、前記材料によって摩擦係数の小さい皮膜を形成する態様は、任意であってよく、例えば、フィルムあるいはシート状とされた材料を貼り付けるような態様、あるいは液状あるいはエマルジョン状である材料を適宜の装置を用いて塗工する態様等が例として挙げられる。塗装の場合、塗工は一回でもよく、複数回の塗工でもよい。
【0015】
前記本発明による第2の包装用容器の一態様では、前記角部において、前記一方の側壁の側端縁に形成した糊代部位は前記他方の側壁の内側に位置している形態とされる。この形態では、接着剤が未硬化の状態で容器収容枠内に収容されたときに、前記糊代部位は接着すべき他方の側壁から内側に浮き上がった状態となりがちであり、この場合、新たにスタックしようとする包装用容器の角部およびその近傍は、その浮き上がった状態にある糊代部位の内側面とより多く接触しがちとなる。従って、上記態様の第2の包装用容器では、形成した摩擦係数の小さい皮膜が特に有効に作用して、新たにスタックする包装用容器の外面意匠性が低下するのを確実に回避することができる。
【0016】
本発明による包装用容器の一態様において、基板の一部にも前記周側壁部に形成した摩擦係数の小さい皮膜に連続するようにして摩擦係数の小さい皮膜が形成される。段積みするときに、下位の包装用容器と上位の包装用容器の位置ずれ具合は一定でなく、上位の包装用容器の角部の下端部近傍が、下位の包装用容器の角部に近接した基板部に当接することも起こり得る。上記態様の包装用容器では、この場合での被膜の落ちも回避することができる。
【0017】
本発明による包装用容器では、その外側面の全面にわたって印刷が施されている場合において、摩擦係数の小さい皮膜を形成したメリットが得られる。しかし、外側面の一部に印刷が施されている態様でも包装容器としての機能が損なわれるものではない。従って、本発明による包装用容器において、その外側面の全面にわたって印刷が施されている要件は選択的事項である。
【0018】
本発明による包装用容器は、基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備え、該側壁によって形成される周側壁部に、隣接する側壁によって少なくとも1つの角部が形成されて形態であればよく、少なくとも前記角部近傍においては、所期の目的が達せられる。包装用容器としてそれ以外の構成に特に制限はなく、任意である。
【0019】
実使用上でのより好ましい形態の包装用容器は、基板が底板であり該底板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の下容器部分と、基板が蓋板であり該蓋板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされている包装用容器であり、その包装用容器の前記下容器部分の周側壁部に形成される4つの角部および前記上容器部分の周側壁部に形成される4つの角部に前記摩擦係数の小さい皮膜が形成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外側面の全面に印刷を施した場合でも、製函の過程で印刷皮膜の落ちが生じるのを回避できる包装用容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による包装用容器の一例を示す展開図。
【図2】図1に展開図で示す包装用容器が仮接着状態にあるときを示す図。
【図3】図2に示す包装用容器を段積みするときの状態を説明する図。
【図4】包装用容器が閉じた状態にあるときの図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明による包装用容器の一例を示す展開図であり、包装用容器の物品収容面側を表面側として示している。図示する包装用容器1は、箱型の下容器部分Xと箱型の上容器部分Yとからなり、両者はヒンジ部Pで接続している。
【0023】
下容器部分Xは、基板を構成する矩形状の底板11と、該基板(底板11)の4周の折り曲げ線aから立ち上がる4つの側壁である、前板12、左右の側板13、14および後板15を備える。前板12はその両側端縁に折り曲げ線bで接続する糊代部位12a、12aを有し、また、後板15もその両側縁に折り曲げ線cで接続する糊代部位15a、15aを有している。
【0024】
そして、前記前板12の両側端縁における前記折り曲げ線b,bから5〜20mm程度内側までの(前板12の中央部に向かって延出された)領域と、前記折り曲げ線bを介して接続する糊代部位12a、12aのほぼ全域に亘るようにして、図でハッチングで示すように、その部分における包装用容器の素材(例えば紙)よりも摩擦係数が小さい材料、例えばスチレンアクリル系樹脂であって塗工液固形分20〜30%(原液固形分35〜45%)である材料からなる厚さ3〜7μm程度の樹脂被膜Aが形成されている。
【0025】
さらに、前記後板15の両側端縁における前記折り曲げ線c,cから5〜20mm程度内側までの(後板15の中央部に向かって延出された)領域と、前記折り曲げ線cを介して接続する糊代部位15a、15aのほぼ全域にも、図でハッチングで示すように、前記樹脂被膜Aと同様な樹脂被膜Bが形成されている。
【0026】
上容器部分Yも、同様に、基板を構成する蓋板21と、該基板(蓋板21)の4周の折り曲げ線dから立ち上がる4つの側壁である、前板22、左右の側板23、24および後板25を備える。後板25はその両側端縁に折り曲げ線eで接続する糊代部位25a、25aを有し、左右の側板23、24は前板22側に延出する糊代部位23a、24aを折り曲げ線fで接続するようにして有している。そして、下容器部分Xの後板15の上縁と上容器部分Yの後板25の下縁とは連接しており、その部分が組み立て後に包装用容器1のヒンジ部Pとなる。
【0027】
そして、前記後板25の両側端縁における前記折り曲げ線e,eから5〜20mm程度内側までの(後板25の中央部に向かって延出された)領域と、前記折り曲げ線eを介して接続する糊代部位25a、25aのほぼ全域にも、図でハッチングで示すように、前記脂塗膜Aあるいは樹脂被膜Bと同様な樹脂被膜Cが形成されている。
【0028】
また、前記左右の側板23、24における前記折り曲げ線f,fから5〜20mm程度内側までの(側板23,24のそれぞれの中央部に向かって延出された)領域と、前記折り曲げ線fを介して接続する糊代部位23a、23aのほぼ全域にも、図でハッチングで示すように、他の樹脂皮膜と同様な樹脂被膜Dが形成されている。
【0029】
なお、前記樹脂被膜A〜Dの形成は、台紙のままで行うことが好ましく、台紙から展開した状態のブランクスを打ち抜くときに打ち抜き作業に連続した作業として行ってもよく、打ち抜き後に後作業として行ってもよい。また、樹脂被膜A〜Dは、樹脂の塗膜であってもよく、樹脂フィルムの貼り付け膜であってもよい。
【0030】
組み立てに当たっては、上記展開図として示したブランクスが図示しない製函機にかけられ箱状に折り曲げられる。それにより、基板である底板11の周囲から拡開状に立ち上がる4つの側壁12〜15を備えた箱型の下容器部分Xと、基板である蓋板21の周囲から拡開状に立ち上がる4つの側壁22〜25を備えた箱型の上容器部分Yとが、ヒンジ部Pで接続している形状とされる。
【0031】
具体的には、最初に、底板11と蓋板21の周囲に位置する各前板12と22、各左右の側板13、14と23、24および各後板15と25が、底板11と蓋板21に対して立ち上がった姿勢とされる。
【0032】
そして、下容器部分Xにおいては、前板12の両側の糊代部位12a、12aがほぼ90度に内側に折り曲げられて、左右の側板13、14の前板12側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされ、また、後板15の両側の糊代部位15a、15aもほぼ90度に内側に折り曲げられて、左右の側板13、14の後板15側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされる。また、折り曲げの過程で、前記重畳することとなる領域の各糊代部位側あるいは各側壁側のいずれか一方には接着剤が塗布され、立ち上げ後に前記重畳部を圧接することで、前板12、左右の側板13、14、後板15である4つの側壁における隣接する側壁同士は、前記糊代部位を介して互いに仮接着された状態となる。
【0033】
上容器部分Yにおいても同様であり、後板25の両側の糊代部位25a、25aがほぼ90度に内側に折り曲げられて左右の側板23、24の後板25側の側端縁内側面に重畳した姿勢とされ、また、左右の側板23、24の糊代部位23a、24aもほぼ90度に内側に折り曲げられて前板22の両側端縁内側面に重畳した姿勢とされる。ここでも、折り曲げの過程において、前記重畳することとなる領域の各糊代部位側あるいは各側壁側のいずれか一方には接着剤が塗布され、立ち上げ後に前記重畳部を圧接することで、前板22、左右の側板23、24、後板25である4つの側壁における隣接する側壁同士は、前記糊代部位を介して互いに仮接着された状態となる。
【0034】
上記の仮接着された状態の包装用容器1が図2に示される。図2に示すように、仮接着状態となった包装用容器1において、下容器部分Xでは、底板11の周囲の折り曲げ線aから4つの側壁12〜15が周側壁として拡開状に立ち上がるとともに、前記折り曲げ線b,b,c,cの部分が周側壁に形成される4つの角部の稜線となっており、周側壁における各稜線(折り曲げ線b,b,c,c)を含む両側方には、前記した樹脂被膜A,A,B,Bが形成された状態となっている。上容器部分Yでも同様であり、蓋板21の周囲の折り曲げ線dから4つの側壁22〜25が周側壁として拡開状に立ち上がるとともに、前記折り曲げ線e,e,f,fの部分が周側壁に形成される4つの角部の稜線となっており、周側壁における各稜線(折り曲げ線e,e,f,f)を含む両側方には、前記した樹脂被膜C,C,D,Dが形成された状態となっている。
【0035】
図2は、図示しない製函機によって製函された包装用容器1の状態を示す。製函機は雄型および雌型を有する。雌型の凹部には、その凹部に連通された容器収容枠が設けられている。また、雌型の一端には複数本の固定冶具と複数の接着剤塗布装置とが設けられている。製函機には台紙を打ち抜いたブランクスを吸着ハンドによって移送させ、雌型の一端面に固定冶具によって固定される。そして、接着剤塗布装置によって所望の位置に接着剤が塗布される。そして、雄型によって雌型に押し付けられると、折り曲げ線に沿って折り曲げられたブランクスは立体的に仮接着の状態で組み立てられるとともに、雌型凹部を通って容器収容枠に収められる。この状態で接着乾燥させる。この作業を繰り返すことにより、容器収容枠内には仮接着された状態で多段に段積みされた状態(スタックされた状態)となる。そして、段積みされた状態では、下位に位置する包装用容器1は上位に位置する包装用容器1からの荷重を受けることとなり、荷重の掛かった状態で所定時間放置することで、前記した仮接着部位での接着剤の硬化が進行し、容器収容枠の輪郭に沿った形状の包装用容器1が完成する。
【0036】
図3は、下位に位置する包装用容器1aの上に上位の包装用容器1bを積み上げるときの状態を示している。下位の包装用容器1aと上位の包装用容器1bとが位置ずれのない状態で積み重なるときには、上位の包装用容器1bが下位の包装用容器1a内に沈み込むときに、両者の周側壁部間に発生する摩擦抵抗は全周にわたってほぼ均一であり、またその値も設計値の範囲内である。そのために、包装用容器1の外側面の全面に印刷塗膜が形成されているとしても、積み重ね時に生じる摩擦抵抗によって上位の包装用容器1bの印刷塗膜がはげ落ちるようなことはない。
【0037】
しかし、下位の包装用容器1aと上位の包装用容器1bとが所期どおりではなく、わずかに位置ずれした状態で積み重ねられるときには、上位の包装用容器1bの周側壁の角部が、下位の包装用容器1aの周側壁の角部近傍での内周面に接した状態で、下位の包装用容器1a内に沈み込む状態となる。そのときに、上位の包装用容器1bの周側壁の角部およびその近傍に設計値以上の摩擦力が生じるのを避けられず、その大きな摩擦力によってその近傍の印刷塗膜にはげ落ちが生じる恐れがある。
【0038】
本発明による包装用容器1では、包装用容器1の周側壁の内周面(物品収容面)における角部およびその近傍には、物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい材料からなる樹脂被膜A,B,C,Dが形成されており、そのために、上記のように、上位の包装用容器1bの周側壁の角部が、下位の包装用容器1aの周側壁の角部近傍での内周面に接した状態で下位の包装用容器1a内に沈み込むときにも、上位の包装用容器1bの周側壁の角部およびその近傍に生じる摩擦力を大きく低減することができる。それにより、その近傍の印刷塗膜が形成されていたとしても、摩擦によってはげ落ちるのを回避することができる。結果として、包装用容器1の外側面の全面に印刷による模様を形成することが可能となり、意匠性の高い包装用容器1とすることができる。
【0039】
接着剤が硬化した後、容器収容枠から包装用容器1のスタックを取り出し、保管されまた使用に供される。例えば、包装用容器1の下容器部分Xにハンバーガーのような食品を収容し、その上に上容器部分Yを被せることで、図4に示すように、蓋の閉じられた包装用容器1となる。
【0040】
上記の包装用容器1は、本発明による包装用容器の一実施の形態であって、他に多くの変形例が存在する。例えば、包装用容器の全体形状が、図1〜図4に示した下容器部分Xと上容器部分Yが連接した箱型形状のものである必要もない。例えば、下容器部分Xのみあるいは上容器部分Yのみからなる形態でもよい。さらに、一つの角部に前記した樹脂被膜が形成されていればよく、容器としての残りの形状は角部を有しない形状であってもよい。さらに、図示の例では、包装用容器の周側壁の一部にのみ樹脂被膜を形成したが、それに連続するようにして基板(底板11,蓋板21)側の一部にも樹脂被膜を形成してもよい。この場合には、積み重ね時に、上位の包装用容器1bの角部の基板側が下位の包装用容器1aの基板と衝接したときに、印刷被膜が摩擦力ではげ落ちるのを回避することができる。
【0041】
また、図示した包装用容器1では、各糊代部位12a,15a、25a,23a,24aは、製函するときに、対応する側壁の内側に位置するようになっているが、対応する側壁の外側において接着する形態の包装用容器であってもよく、その場合には、周側壁の角部において対向して位置する2つの側壁における稜線とその近傍に樹脂塗膜A〜Dが形成する。
【符号の説明】
【0042】
1…包装用容器、
X…下容器部分、
Y…上容器部分、
P…ヒンジ部、
A〜D…物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜(樹脂塗膜)、
a〜f…折り曲げ線であり、周側壁の角部を形成する稜線を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備え、該側壁によって形成される周側壁部には隣接する側壁によって少なくとも1つの角部が形成されている包装用容器であって、
前記角部の物品収容面側であって角部の稜線から両側方の所定領域には物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
基板と該基板の周囲から拡開状に立ち上がる側壁を備え、該側壁によって形成される周側壁部には隣接する側壁によって少なくとも1つの角部が形成されている包装用容器であって、
前記角部を形成する2つの側壁の一方の側壁の側端縁には糊代部位が形成され、該糊代部位が他方の側壁の側端部に接着することで前記角部が形成されており、前記角部の物品収容面側であって角部の稜線から両側方の所定領域には物品収容面の他の領域よりも摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項3】
前記角部において、前記一方の側壁の側端縁に形成した糊代部位は前記他方の側壁の内側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
基板の一部にも前記周側壁部に形成した摩擦係数の小さい皮膜に連続するようにして摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の包装用容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装用容器であって、その外側面には全面にわたって印刷が施されていることを特徴とする包装用容器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装用容器であって、該包装用容器は、基板が底板であり該底板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の下容器部分と、基板が蓋板であり該蓋板から立ち上がる4つの側壁を備えた箱型の上容器部分とがヒンジ部を介して開放姿勢と閉鎖姿勢とを選択的に取りうるようにされている包装用容器であり、該包装用容器の前記下容器部分の周側壁部に形成される4つの角部および前記上容器部分の周側壁部に形成される4つの角部に前記摩擦係数の小さい皮膜が形成されていることを特徴とする包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−171630(P2012−171630A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32331(P2011−32331)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】