説明

包装用紙箱

【課題】蓋体内隅部の段部が損壊し難く、かつ製函が行い易く、自動製函に好適な包装用紙箱を提供する。
【解決手段】蓋体内隅部の段部16が、隣接する側壁どうしを連結する第1連結片14aから切り起こされる三角形状の第1段部構成片16aと、該第1段部構成片に山折目26を介して連結されると共に第2連結片14bの中間部に山折目27を介して連結されている第2段部構成片16bとから構成される。第1段部構成片16aは、第1連結片14aと蓋体側壁13との間の谷折目に直交する遊端縁16cを有し、第1段部構成片と第2段部構成片との間の山折目26が、第1連結片と第2連結片との間の山折目25の仮想延長線より第1連結片に連なる側壁13がわに偏位している。第2段部構成片は、前記第1段部構成片の遊端縁と同じ高さ位置にある遊端縁16dを有している。連結片と段部構成片遊端縁との間に、組立時の摩擦軽減用透孔20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装用紙箱、特に箱本体の側壁が内外二重壁部と該二重壁部に連設された上壁部とを備える一方、箱本体に被せられる蓋体の内隅部に前記上壁部に当接する段部を備えている包装用紙箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の包装用紙箱は、蓋体を箱本体に被せた状態において、蓋体天壁が箱本体の側壁に直接接することがなく段部の高さ分だけ箱本体から浮いた状態となるため、箱本体の高さ以上の高さのある商品を収納できるという利点を有している。
【0003】
また、蓋体の天地を逆にして蓋体の中に箱本体を嵌め入れると、蓋体の段部が箱本体を底上げして持ち上げた格好になり、店頭での陳列時に商品の見映えも良好になることから、古くから、贈答品用の包装用紙箱として、ウイスキー、ブランデーあるいはワイン等の比較的重量がありかつ値の張る商品の包装に用いられている。
【0004】
この種の包装用紙箱としては、図8及び図9に示すように、第1〜第3構成片(36a)(36b)(36c)から構成された段部(36)が、平面視コ字状を呈する包装用紙箱(特許文献1)や、段部(36)が、第1構成片と第2構成片とから構成され、両構成片間の折目が、蓋体の側壁どうしを連結する一対の連結片間の山折目の延長線上に設けられた包装用紙箱(特許文献2)が公知である。
【特許文献1】実公昭39−29465号公報(第2図)
【特許文献2】実開昭54−2542号(第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の包装用紙箱は、蓋体の正常な組立状態においては、段部が蓋体の内隅部から突出して、所期の目的を達成するものであるが、いずれの包装用紙箱にも次のような欠点があることがわかった。
【0006】
まず、特許文献1に記載の包装用紙箱は、図8、図9(イ)及び(ロ)に示すように、段部(36)が第1〜第3構成片(36a)(36b)(36c)から構成されているために、いささか組立が行い難く、自動製函に不向きであった。
【0007】
また、組立後は、段部(36)の遊端縁が蓋体(30)の天壁(31)方向に向かって傾斜状となるために、被包装物の重量によっては、段部(36)が損壊するおそれもあることがわかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の包装用紙箱は、段部第1構成片及び第2構成片の各々が、隣り合う側壁どうしの連結片と各側壁との間の折目から連設されて、互いに重なり合うようにして内隅部から斜めに突出しているものであることから(特許文献2の第5図参照)、側壁に向かう力のかかり方によっては、内隅部から斜めに突出している段部が、所期する突出方向ではなく、いずれかの側壁に重なり合うようになることがあった。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、蓋体内隅部の段部が損傷し難く、かつ製函が行い易く、自動製函に好適な包装用紙箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の包装用紙箱は、
内外二重壁と該二重壁に連結する上壁とからなる側壁を有する上面開口の箱本体と、該箱本体に被せられ内隅部に前記上壁に当接する段部を有する蓋体とからなり、前記段部が、蓋体の隣接する側壁どうしを連結する互いに山折目を介して連設された一対の第1連結片及び第2連結片から切り起こし形成されてなる包装用紙箱において、
前記蓋体段部が、第1連結片から切り起こされる三角形状の第1段部構成片と、該第1段部構成片に山折目を介して連結されると共に前記第2連結片の中間部に山折目を介して連結されている第2段部構成片とからなり、
第1段部構成片は、第1連結片と蓋体側壁との間の谷折目に直交する開放縁を有し、 第1段部構成片と第2段部構成片との間の山折目が、第1連結片と第2連結片との間の山折目の仮想延長線より第1連結片に連なる側壁がわに偏位していることを特徴とする構成が採用される。
【0011】
請求項2に係る発明の包装用紙箱は、請求項1の構成に加えて、
前記第2連結片は、前記第1段部構成片の遊端縁と同じ高さ位置にある遊端縁を有している構成が採用される。
【0012】
請求項3に係る発明の包装用紙箱は、請求項1又は請求項2の構成に加えて、
連結片と段部構成片との間に、組立時の摩擦軽減用透孔が設けられている構成が採用される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、蓋体段部が、第1連結片から切り起こされる三角形状の第1段部構成片と、該第1段部構成片に山折目を介して連結されると共に前記第2連結片に山折目を介して連結されている第2段部構成片とからなり、第1段部構成片は、第1連結片と蓋体側壁との間の谷折目に直交する遊端縁を有しているので、箱本体が蓋体により閉蓋された場合に、従来のこの種の包装用紙箱と同様に、箱本体の高さ以上の高さのある商品を収納できる利点を有することはもとより、箱本体の側壁上壁部が遊端縁のほぼ全面に当接することとなり、包装用紙箱の複数個を積み重ねた際にも、荷重が分散され段部の変型も生じ難い。
【0014】
また、蓋体の天地を逆にして、蓋体に箱本体を嵌め入れたときも同様に、箱本体の底壁が蓋体段部遊端縁の全面に当接するので、荷重が分散される。
【0015】
さらに、第1段部構成片と第2段部構成片との間の山折目が、第1連結片と第2連結片との間の山折目の延長線上より第1連結片に連なる側壁がわに偏位しているので、第2段部構成片が第2連結片の中間部に連結されていることと相俟って、連結片を蓋体側壁内面に重ね合わせるように組み立てた際に、第1段部構成片と第2段部構成片とによる平面視三角形状の段部が確実に蓋体内側に向かって突出され、段部に加えられる水平方向からの力にも耐えられる強固な段部が実現される。
【0016】
さらに、展開状態から組み立てる際には、第1段部構成片と第2段部構成片との間の山折目が、第2連結片側の側壁の起立動作に対応して両段部構成片を確実に山折りとすると共に、第2段部構成片と第2連結片との間の山折目が、第1連結片側の側壁の起立動作に対応して第2段部構成片と第2連結片とを確実に山折りするので、組立も行い易く、特に機械による自動製函に好適である。
【0017】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、第2連結片が、第1段部構成片の遊端縁と同じ高さ位置にある遊端縁を有していることにより、段部にかかる荷重は、両段部構成片に分散され、より一層耐荷重性の優れた段部が実現されるという効果を奏する。
【0018】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、連結片と段部構成片との間に、組立時の摩擦軽減用透孔が設けられていることにより、組立時に段部の切り起こしがスムーズに行え、より一層自動製函に好適な包装用紙箱を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明に係る包装用紙箱の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、第1実施形態の箱本体に蓋体を被せる途上の斜視図、図2は、閉蓋時の要部断面図、図3は天地を逆にした蓋体に箱本体を嵌め入れた時の要部断面図、図4は、蓋体の展開状態平面図、図5は組立状態の説明図、図6(イ)は、蓋体隅部の展開状態拡大平面図、(ロ)は同蓋体隅部の組立時の拡大平面図、図7(イ)は、第2実施形態の蓋体隅部の展開状態拡大平面図、(ロ)は同蓋体隅部の組立時の拡大平面図である。
【0020】
図1に示すように、箱本体(1)は、底壁(6)の四周に立設された側壁(2)(3)(4)(5)のいずれもが内外二重壁を有すると共に、該二重壁に連結する上壁(2a)(3a)(4a)(5a)を備えたいわゆる額縁形式の従来公知の形態であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
この箱本体(1)の上面開口を閉蓋する蓋体(10)は、内隅部4箇所に段部(16)(16)(16)(16)が形成されており、この段部(16)(16)(16)(16)が、閉蓋時に箱本体の側壁上壁(2a)(3a)(4a)(5a)に当接することにより、蓋体天壁(11)を箱本体の側壁上壁(2a)(3a)(4a)(5a)から浮かせた状態を実現し、箱本体(1)の高さ以上の商品を収容可能としている。
【0022】
この蓋体(10)を、図4に示す展開状態平面図に基づいて説明すると、天壁(11)の四周に折目(21)(21)(22)(22)を介して長側壁(13)(13)及び短側壁(12)(12)が連設されると共に、隣接する側壁どうしは、連結片(14)(14)(14)(14)を介して互いに連結されている。
【0023】
連結片(14)は、長側壁(13)に折目(23)を介して連設された第1連結片(14a)と、短側壁(12)に折目(24)を介して連設された第2連結片(14b)とからなり、第1連結片(14a)と第2連結片(14b)とは、山折目(25)を介して互いに連結されている。
【0024】
段部(16)は、実質的にこの第1連結片(14a)及び第2連結片(14b)から切り起こし形成されれるもので、第1段部構成片(16a)と第2段部構成片(16b)とから構成されている。
【0025】
図6(イ)に示すように、第1段部構成片(16a)は、第1連結片(14a)と長側壁(13)との間の折目(23)と、該折目(23)に直交する切目(17)と、第2段部構成片(16b)との間の山折り目(26)とによって区画される三角形状を呈している。
【0026】
前記第2段部構成片(16b)との間の山折り目(26)は、第1連結片(14a)と第2連結片(14b)との間の山折目(25)の仮想延長線よりも長側壁(13)寄りに偏位した位置に設けられている。
【0027】
また、前記切目(17)に対応する部位が、蓋体の組立時に遊端縁(16c)となり、閉蓋時に箱本体(1)の側壁上壁(2a)(3a)(4a)(5a)に当接することになる。
【0028】
第2段部構成片(16b)は、前記第1段部構成片(16a)との間の山折目(26)と、第2連結片(14b)に設けられた山折目(27)と、第1連結片(14a)と第2連結片(14b)とに跨る摩擦軽減用透孔(20)に臨む遊端縁(16d)とによって区画される三角形状を呈している。
【0029】
この第2段部構成片(16b)は、第1段部構成片(16a)との間の山折目(26)と遊端縁(16d)とのなす角度と、同山折目(26)と第1段部構成片の切目(17)又は遊端縁(16c)とのなす角度とが同一に設定され、組立時に第1段部構成片の遊端縁(16c)と、第2段部構成片の遊端縁(16d)とが同じ高さ位置に揃うものとなされている。
【0030】
このような展開状態から蓋体を所期する形態に組み立てる動作について説明すると、図5(イ)に示すように、長側壁(13)と短側壁(12)とを同時に少しずつ、起立させていくと、第1連結片と第2連結片との間の山折目(25)が山折りされながら、図(ロ)に示すように、両段部構成片間の山折目(26)が山折りされ始める。
【0031】
この時、第2段部構成片と第2連結片との間の山折目(27)も山折りされるが、その程度は僅かである。
【0032】
さらに長短両側壁(13)(12)の起立が進むと、図5(ハ)に示すように第2段部構成片と第2連結片との間の山折目(27)も所期する角度に近い角度に山折りされ、長短両側壁(13)(12)が天壁(11)に対して直立するまでに起立すると、第2段部構成片と第2連結片との間の山折目(27)も所期する角度に山折りされる。
【0033】
そこで、第2連結片の短側壁対応面に設けられた接着部(19)を短側壁内面に貼着すると、所期する形態の蓋体が得られると共に、蓋体内隅部に短側壁から突出したかのような、図6(イ)に示すような平面視三角形状の段部(16)が得られるのである。
【0034】
この段部(16)は、第1段部構成片の遊端縁(16c)と第2段部構成片の遊端縁(16d)とが、同じ高さ位置にあるものと設定されているので、両遊端縁(16c)(16d)が揃って荷重を受けることになるので、荷重が分散され、耐荷重性に優れた包装用紙箱が提供されている。
【0035】
なお、第2段部構成片(16b)の遊端縁は、この実施形態のように必ずしも第1段部構成片(16a)の遊端縁(16c)と同じ高さ位置になくても良いが、第1段部構成片(16a)にかかる荷重を分散させる意味では、同じ高さ位置であることが好ましい。
【0036】
また、この実施形態では、両遊端縁(16c)(16d)の長さがほぼ同長に設定されているが、図7に示すように、第2段部構成片(16b)の遊端縁(16d)の長さを第1段部構成片(16a)の遊端縁(16c)の長さよりも長くしてもかまわない。
【0037】
さらに、この実施形態では、連結片(14)が側壁(12)に貼着されているが、例えば、側壁に内壁となる内方折り返し片を設け、その内方折り返し片によって連結片が包み込まれるようしたものとしてもよい。
【0038】
この場合、折り返し片の分だけ紙材料を余計に要することになるが、貼着状態の完了までに要する時間を不要とし、全体としての製造時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1実施形態に係る包装用紙箱の箱本体に蓋体を被せる途上の斜視図である。
【図2】同閉蓋時の要部断面図である。
【図3】同天地を逆にした蓋体に箱本体を嵌め入れた状態の要部断面図である。
【図4】蓋体の展開状態平面図である。
【図5】蓋体の組立状態説明図である。
【図6】(イ)は、蓋体隅部の展開状態拡大平面図、(ロ)は同蓋体隅部の組立時の拡大平面図である。
【図7】(イ)は、この発明の第2実施形態に係る包装用紙箱の他の実施形態の蓋体隅部の展開状態拡大平面図、(ロ)は、同同蓋体隅部の組立時の拡大平面図である。
【図8】従来の包装用紙箱蓋体の要部斜視図である。
【図9】(イ)は同蓋体の隅部の展開状態拡大平面図、(ロ)は同蓋体隅部の組立時の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・・・・・箱本体
2、3、4、5・・・・・・・側壁
2a、3a、4a、5a・・・・・・側壁上壁
10・・・・・・蓋体
11・・・・・・天壁
12・・・・・・短側壁
13・・・・・・長側壁
14・・・・・・連結片
14a・・・・・第1連結片
14b・・・・・第2連結片
16・・・・・・段部
16a・・・・・第1段部構成片
16b・・・・・第2段部構成片
16c・・・・・第1段構成片遊端部
16d・・・・・第2段部構成片遊端部
20・・・・・・摩擦軽減用透孔
25、26、27・・・山折目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外二重壁と該二重壁に連結する上壁とからなる側壁を有する上面開口の箱本体と、該箱本体に被せられ内隅部に前記上壁に当接する段部を有する蓋体とからなり、前記蓋体段部が、蓋体の隣接する側壁どうしを連結する互いに山折目を介して連設された一対の第1連結片及び第2連結片から切り起こし形成されてなる包装用紙箱において、
前記蓋体段部が、第1連結片から切り起こされる三角形状の第1段部構成片と、該第1段部構成片に山折目を介して連結されると共に前記第2連結片の中間部に山折目を介して連結されている第2段部構成片とからなり、
第1段部構成片は、第1連結片と蓋体側壁との間の谷折目に直交する遊端縁を有し、
第1段部構成片と第2段部構成片との間の山折目が、第1連結片と第2連結片との間の山折目の仮想延長線より第1連結片に連なる側壁がわに偏位していることを特徴とする包装用紙箱。
【請求項2】
前記第2段部構成片は、前記第1段部構成片の遊端縁と同じ高さ位置にある遊端縁を有している請求項1に記載の包装用紙箱。
【請求項3】
連結片と段部構成片遊端縁との間に、組立時の摩擦軽減用透孔が設けられている請求項1又は請求項2のいずれかに記載の包装用紙箱。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−296963(P2008−296963A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144883(P2007−144883)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000106715)ザ・パック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】