説明

包装用袋

【課題】合成樹脂製気泡シートからなる包装用袋において、狭い範囲で点として外力が加わった場合における緩衝効果を向上させる。
【解決手段】開口部11を有する袋体10と、開口部11を開閉するためのファスナ手段12、13とを備え、袋体10は、少なくとも凹凸シート101と平坦シート102、103とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部104が形成されている合成樹脂製気泡シート100から構成されており、ファスナ手段12、13は、開口部11を気密的に閉鎖することが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製気泡シートからなる包装用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の突起部が形成された凹凸シートに平坦シートが接合され、気体が密閉された多数の気泡部が形成された合成樹脂製気泡シートが知られている。合成樹脂製気泡シートは気泡部の存在によって緩衝効果に優れており、このような合成樹脂製気泡シートを用いて作られた包装用袋が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3007092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、気泡シートは、気泡部に広範囲で面として外力が加わった場合には緩衝効果が充分得られるものの、気泡部と気泡部との間の部分に狭い範囲で点として外力が加わった場合(いわゆる打突)には、緩衝効果が発揮できず、袋に収納された被包装物が損傷する可能性がある。また、気泡部の頂部に点として外力が加わる場合にも、外力の加わる方向によっては、気泡部をスリップして気泡部と気泡部との間の部分に外力が加わることがあり、この場合にも緩衝効果が発揮できない。
【0004】
そこで、本発明は上記点に鑑み、合成樹脂製気泡シートからなる包装用袋において、狭い範囲で点として外力が加わった場合における緩衝効果を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の発明は、開口部(11)を有する袋体(10)と、前記開口部(11)を開閉するためのファスナ手段(12、13)とを備え、前記袋体(10)は、少なくとも凹凸シート(101)と平坦シート(102、103)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(104)が形成されている合成樹脂製気泡シート(100)から構成されており、前記ファスナ手段(12、13)は、前記開口部(11)を気密的に閉鎖することが可能であることを特徴としている。
【0006】
このように、合成樹脂製気泡シート(100)からなる袋体(10)に気密性を有するファスナ手段(12、13)を設けることで、袋体(10)に被包装物を収納した状態で袋体(10)を密閉状態とすることができる。これにより、袋体(10)内部に封入された空気により緩衝効果が得られ、袋体(10)に狭い範囲で点として外力が加わった場合にも、外力から被包装物を保護することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、前記ファスナ手段(12、13)は、合成樹脂製レールファスナであることを特徴としている。これにより、包装用袋を容易に繰り返し使用することができる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明では、前記合成樹脂製気泡シート(100)は、ポリプロピレンから構成されていることを特徴としている。これにより、袋体(10)の強度を確保でき、被包装物を適切に保護することができる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。本発明の包装用袋体は、内部に被包装物を収納して包装するものであり、例えば宅配便などの用途に好適である。
【0011】
図1は、本実施例の包装用袋の斜視図であり、(a)は開口部11を閉じた状態、(b)は開口部11を開いた状態を示している。包装用袋は、被包装物を収納可能な袋体10を備えている。本実施形態の袋体10は、底面が長方形の角底袋として構成されており、底面の反対側(図1における上側)の端部に開口部11が設けられている。袋体10の側面は、底面から開口部11に向かって徐々に狭くなっており、開口部11の近傍にはマチが設けられている。このように、角底袋として構成された袋体10は、ある程度の容積を確保できるとともに、袋体10単体で自立することができる。
【0012】
袋体10は、合成樹脂製気泡シートから構成されている。図2(a)は合成樹脂製気泡シート100の斜視図であり、図2(b)は合成樹脂製気泡シート100を分解した状態を示す斜視図である。
【0013】
図2(a)、(b)に示すように、気泡シート100は合成樹脂製中空部材として構成されている。気泡シート100は、凹凸シート101と、凹凸シート101の両面に接合された2枚の平坦シート102、103とからなる3層構造となっている。凹凸シート101には複数の中空状(例えば円柱状)の突起部101aがエンボス加工されており、凹凸シート101の突起部先端側(図1の上側)に第1平坦シート102が接合されている。また、凹凸シート101の突起部開口側(図1の下側)には第2平坦シート103が接合され、これにより空気が封入された気泡部104が形成される。本実施形態の気泡シート100は、1枚の凹凸シート101と、これを挟む2枚の平坦シート102、103とからなる3層構造となっている。気泡シート100は、柔軟性を有しており、気泡部104により緩衝効果に優れるので、包装材料として好適に用いることができる。
【0014】
本実施形態では、気泡シート100を構成する合成樹脂として、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン系樹脂を用いている。気泡シート100は、本実施形態のように柔軟性が必要とされる場合には単位面積当り重量(目付重量)を30〜300グラム/m2とすることが望ましい。包装用袋は、内部に被包装物を収納した状態で、摩擦や加重が加わるような状況が考えられるので、ある程度の強度を有していることが望ましい。このため、本実施形態の気泡シート100は、ポリエチレンより強度(引張り強度、引裂き強度、圧縮強度など)に優れるポリプロピレンを用いている。
【0015】
図1に戻り、袋体10の開口部11には、開口部11を開閉するためのファスナ部12が設けられている。ファスナ部12はレールファスナとして構成されており、互いに嵌合する一対のメス側ファスナ部12aとオス側ファスナ部12bとからなる。ファスナ部12には、ファスナ部12を開閉するためのスライダ部13が設けられている。スライダ部13をファスナ部12に沿って移動させることでファスナ部12が開閉され、これにより袋体10の開口部11が開閉される。図1に示す例では、スライダ部13を図中の右側に移動させた状態(図1(a)に示す状態)でファスナ部12が閉鎖状態となり、スライダ部13を図中の左側に移動させた状態(図1(b)に示す状態)でファスナ部12が開放状態となる。
【0016】
ファスナ部12およびスライダ部13は、袋体10の同種の合成樹脂から構成されており、ファスナ部12は溶着により袋体10の開口部11に接合されている。ファスナ部12は気密性を有しており、ファスナ部12を閉鎖状態にすることで、袋体10は密閉状態となる。これにより、袋体10自体が1つの気泡部となり、袋体10を構成する合成樹脂製気泡シート100の気泡部104による緩衝効果に加え、袋体10全体として緩衝効果を得ることができる。
【0017】
図3は、袋体10の内部に被包装物20を収納した状態で外力が加わった状態を示す図である。袋体10の内部に被包装物20を収納した状態でファスナ部12を閉鎖状態にすることで、袋体10は密閉状態となる。このため、図3に示すように、袋体10に外力が加わった場合には、袋体10の内部に封入された空気による緩衝効果を得ることができ、袋体10全体で外力に対抗することができる。このため、袋体10に狭い範囲で点として外力が加わった場合にも、外力から被包装物20を保護することができる。
【0018】
次に、上記構成の包装用袋を用いた試験結果について説明する。この試験では、気泡部104の粒径10mm、高さ4mm、ピッチ11.5mm、目付重量60g/m2の気泡シート100を用い、底面50mm×250mm、高さ350mmの袋体10を作成し、開口部11にファスナ部12とスライダ部13を設けた。比較例として、開口部11にファスナ部12を設けず、開口部11を常時開放状態とした袋体10を用意した。
【0019】
ファスナ部12を設けた袋体10とファスナ部12を設けない袋体10の双方にカーボン紙を収納し、ファスナ部12を設けた袋体10の方は内部に充分に空気が入った状態でファスナ部12を閉鎖して密閉状態とした。ファスナ部12を設けた袋体10とファスナ部12を設けない袋体10の双方に対し、高さ400mmから1/2インチ径の鉄球を落下させた。それぞれの袋体10に対して鉄球の落下を5回繰り返した。この結果、ファスナ部12を設けた袋体10に収納したカーボン紙には、鉄球による打撃の跡が残らなかったが、ファスナ部12を設けない袋体10に収納したカーボン紙には、鉄球による打撃の跡が残った。これは、合成樹脂製気泡シート100による緩衝効果のみでは、鉄球による打撃を吸収できなかったのに対し、ファスナ部12を設けて密閉状態にした袋体10では、袋体10全体での緩衝効果により、鉄球による打撃を吸収できたことを意味している。
【0020】
以上説明したように、合成樹脂製気泡シート100からなる袋体10に気密性を有するファスナ部12を設けることで、袋体10に被包装物20を収納した状態で袋体10を密閉状態とすることができる。これにより、合成樹脂製気泡シート100の気泡部104による緩衝効果に加え、袋体10内部に封入された空気により緩衝効果が得られ、袋体10に狭い範囲で点として外力が加わった場合にも、外力から被包装物20を保護することができるようになる。
【0021】
また、本実施形態のように3層構造の気泡シート100を用いた場合には、外部に平坦シート102、103が露出するので、袋体10に加わる外力が横方向に拡散しやすく、袋体10に狭い範囲で点として外力が加わった場合にも、外力から被包装物20を確実に保護することができる。
【0022】
また、本実施形態では、袋体10を角底袋として構成しているので、ある程度の容積が確保された状態を保ちやすい。このため、袋体10の内部に多くの空気が入った状態で密閉状態にすることができ、袋体10に封入された空気による緩衝効果を大きくすることができる。
【0023】
また、スライド部13により開閉可能なファスナ部12を用いて袋体10の開口部11を開閉するように構成されているので、包装用袋を容易に繰り返し使用することができる。
【0024】
また、本実施形態の包装用袋は、合成樹脂製材料から袋体10を構成しているので防水性を有しており、さらにファスナ部12は気密性を有しているので、袋体10内部への水分の浸入を防ぐことができる。これにより、袋体10外部の水分から被包装物20を保護することができる。さらに、袋体10の内壁に防水フィルムを貼付することにより、防水性を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態の包装用袋では、袋体10、ファスナ部12、ライダ部13が同種の合成樹脂から構成されているので、リサイクルの際に分離する必要がない。
【0026】
また、合成樹脂製気泡シート100は通常無色透明であるので、袋体10に収納した被包装物20を外部から視認可能となる。このため、本実施形態の包装用袋は、袋体10に収納した被包装物20を外部から確認する必要がある用途に好適に用いることができる。さらに、包装用袋の用途に応じて合成樹脂製気泡シート100に着色を施すことで、袋体10に収納した被包装物20を外部から視認不能とすることができる。
【0027】
また、本実施形態の包装用袋は、緩衝作用を有する合成樹脂製気泡シート100により袋体10自体を作成しているので、被包装物20を合成樹脂製気泡シート100で包装し、紙製の袋などに収納する構成に比較して、包装状態の容積を低減することができる。
【0028】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、合成樹脂製気泡シート100を1枚の凹凸シート101と、この両側に接合された2枚の平坦シート102、103からなる3層品として説明したが、これに限らず、1枚の凹凸シートと1枚の平坦シートからなる2層品を用いてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、袋体10の開口部11を開閉するファスナ手段としてレールファスナを用いたが、これに限らず、袋体10の開口部11を気密的に閉鎖することができるものであれば、ファスナ手段を異なる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】上記実施形態の包装用袋の斜視図である。
【図2】(a)は合成樹脂製気泡シートの斜視図であり、(b)は合成樹脂製気泡シートを分解した状態を示す斜視図である。
【図3】袋体の内部に被包装物を収納した状態で外力が加わった状態を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 袋体
11 開口部
12 ファスナ部
13 スライダ部
20 被包装物
100 合成樹脂製気泡シート
101 凹凸シート
102、103 平坦シート
104 気泡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(11)を有する袋体(10)と、
前記開口部(11)を開閉するためのファスナ手段(12、13)とを備え、
前記袋体(10)は、少なくとも凹凸シート(101)と平坦シート(102、103)とが接合され、気体が密閉された多数の気泡部(104)が形成されている合成樹脂製気泡シート(100)から構成されており、
前記ファスナ手段(12、13)は、前記開口部(11)を気密的に閉鎖することが可能であることを特徴とする包装用袋。
【請求項2】
前記ファスナ手段(12、13)は、合成樹脂製レールファスナであることを特徴とする請求項1に記載の包装用袋。
【請求項3】
前記合成樹脂製気泡シート(100)は、ポリプロピレンから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用袋。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−18282(P2010−18282A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177764(P2008−177764)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】