説明

包装米飯の製法

【課題】米穀類などと炊き水を上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に充填し、炊飯して美味しい米飯を炊くことができるとともに、容易に、かつ確実に、良好なヒートシールおよび密封包装ができる包装米飯の製法の提供。
【解決手段】上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部4を備えた包装用容器1に米2と炊き水を充填して炊飯した後、前記包装用容器の上部を覆い、前記フランジ状ヒートシール部に加圧してヒートシールして密封包装した蓋材フィルム9を備えた包装米飯の製法において、炊飯後、前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする前に、炊飯中に前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物6に水を供給して10、前記固形状の付着物を液状化8した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装米飯の製法に関するものであり、更に詳細には、米穀類、豆類、米飯類、その加工品などを上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に充填し、炊き水を加えて、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って美味しい米飯を炊くことができるとともに、良好なヒートシールおよび密封包装ができる包装米飯の製法を提供することである。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用容器に充填した米を加熱殺菌してから炊き水を加えて炊飯する無菌包装米飯の製造方法がある(特許文献1〜4参照)。
しかし、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って炊飯して、美味しい米飯を炊くと、前記包装用容器のシール面に固形状の付着物が発生し、この付着物が発生した前記包装用容器のシール面に蓋材フィルムをヒートシールして密封包装すると、前記包装用容器のシール面と蓋材フィルムとのヒートシールが妨げられ、不完全なシールしか得られず、良好な密封包装が得られない。
【0003】
そこで、炊飯中に一部が吹きこぼれないように加熱を適宜調整して、前記包装用容器のシール面に固形状の付着物が発生しないようにする方法があるが、このような加熱では不十分であり、炊飯して美味しい米飯を炊くことができないという問題があった。
【0004】
また、前記包装用容器の高さを高くして、前記包装用容器のシール面に固形状の付着物が発生しないようにする方法があるが、容器のコストが高くなり、また容器の体積が大きくなるなどの問題があり、また、容器内を不活性ガスなどで置換する場合には、置換効率が悪くなるなどの問題もあった。
【0005】
一方、フランジ部4に、蒸気を外部に逃がすための1個以上の穴6a〜6dを設けたトレー状の容器本体50のフランジ部の穴の外側の外周縁に蓋材60を熱接着して炊飯し、吹きこぼれは前記穴6a〜6dから排出し、炊飯後、フランジ部の穴の外側の裏面にシール材70を熱接着して前記穴を封止する米飯類の炊飯及び密封包装用容器100が提案されている(特許文献5参照)。
しかしこのような構成では、容器コストが高くなる上、操作が煩雑となりコストアップになる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2912876号公報
【特許文献2】特許第2826088号公報
【特許文献3】特許第2949275号公報
【特許文献4】特公平7−100004号公報
【特許文献5】特開2005−59860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、米穀類、豆類、米飯類、その加工品などを上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に充填し、炊き水を加えて、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って美味しい米飯を炊くことができるとともに、容易に、かつ確実に、良好なヒートシールおよび密封包装ができる包装米飯の製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究の結果、米穀類、豆類、米飯類、その加工品などを上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に充填し、炊き水を加えて、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って炊飯し、前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給して液状化してから蓋材フィルムを加圧してヒートシールすることにより、良好なヒートシールおよび密封包装ができることを見いだして、本発明を成すに至った。
【0009】
前記課題を解決するための本発明の請求項1は、上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に米と炊き水を充填して炊飯した後、前記包装用容器の上部を覆い、前記フランジ状ヒートシール部に加圧してヒートシールして密封包装した蓋材フィルムを備えた包装米飯の製法において、
炊飯後、前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする前に、炊飯中に前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給して、前記固形状の付着物を液状化した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装することを特徴とする包装米飯の製法である。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1記載の包装米飯の製法において、前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給する際に、固形状の付着物が付着した前記フランジ状ヒートシール部のみに水を供給するか、あるいはさらに前記包装用容器中の米飯表面にも同様に水を供給することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2に記載の包装米飯の製法において、前記炊飯工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の包装米飯の製法において、前記炊飯工程の前に殺菌工程を設け、前記殺菌工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1は、上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に米と炊き水を充填して炊飯した後、前記包装用容器の上部を覆い、前記フランジ状ヒートシール部に加圧してヒートシールして密封包装した蓋材フィルムを備えた包装米飯の製法において、
炊飯後、前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする前に、炊飯中に前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給して、前記固形状の付着物を液状化した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装することを特徴とする包装米飯の製法であり、
水の供給により付着物を液状化することによって、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧するだけで、付着物がシール面から容易に除去され、前記包装用容器のシール面と蓋材フィルムとの間に実質的に付着物がなくなり、ヒートシールが妨げられることがなく、容易に、かつ確実に、良好なヒートシールおよび密封包装ができるとともに、
炊き水を加えて、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って美味しい米飯を炊くことができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の請求項2は、請求項1記載の包装米飯の製法において、前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給する際に、固形状の付着物が付着した前記フランジ状ヒートシール部のみに水を供給するか、あるいはさらに前記包装用容器中の米飯表面にも同様に水を供給することを特徴とするものであり、
ヒートシール部のみに水を供給する場合は、米飯に対して影響を与えることなく付着物を液状化できるという効果を奏し、あるいはさらに米飯表面にも供給する場合には、供給する方法が限定されず容易であり、さらには米飯表面の水分が不足がちな場合には、それを補うことも出来、米飯の品質を向上させることができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0015】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2に記載の包装米飯の製法において、前記炊飯工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とするものであり、
常温で長期間保存可能な美味しい無菌包装米飯を容易に製造することができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0016】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の包装米飯の製法において、前記炊飯工程の前に殺菌工程を設け、前記殺菌工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とするものであり、
常温で長期間保存可能な美味しい無菌包装米飯をより確実に容易に製造することができるというさらなる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(イ)は、精白米を洗米した後、水に浸漬して水を含浸させ、その米を計量して包装用容器に充填し、炊き水を加えて炊飯している状態を示す説明図であり、(ロ)は、炊飯後に、包装用容器のフランジ状ヒートシール部のシール面に固形状の付着物が付着した状態を示す説明図であり、(ハ)は、炊飯後に、包装用容器のフランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を噴霧している状態を示す説明図であり、(ニ)は、水を噴霧することにより固形状の付着物が液状化した状態を示す説明図であり、(ホ)は、固形状の付着物が液状化した後、フランジ状ヒートシール部に蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明の内容を図1を用いて詳細に説明する。
図1(イ)に示したように、まず、精白米を洗米した後、水に浸漬して水を含浸させ、その米2を計量して包装用容器1に充填し、炊き水を加えて炊飯する。包装用容器1は、上部が開口し、開口部3周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部4を備えている。十分な加熱を行って炊飯すると、炊飯中に沸騰による泡立ち5が発生し、一部が吹きこぼれることもあり、フランジ状ヒートシール部4面にその一部が残る。
【0019】
図1(ロ)に示したように、炊飯後に、包装用容器1のフランジ状ヒートシール部4のシール面に固形状の付着物6が付着する。
ここで、固形状とは、水分が低く流動性がない状態の物質、もしくは、粘性が強く、流動性に乏しい半固形の粘体状の物質を指す。
【0020】
図1(ハ)に示したように、炊飯後に、包装用容器1のフランジ状ヒートシール部4のシール面に付着した固形状の付着物6にスプレー10を用いて水を噴霧する。
【0021】
図1(ニ)に示したように、水を噴霧することにより固形状の付着物6は液状化8する。
ここで、液状化とは、固形状物質が水に溶解して流動性がある状態の物質に変化すること、もしくは完全には溶解していなくても、固形状物質が流動性のある液体に分散あるいは浮遊し、実質的に流動性がある状態の物質に変化することを指す。
【0022】
図1(ホ)に示したように、水を噴霧することにより固形状の付着物6が液状化8した後、フランジ状ヒートシール部4に蓋材フィルム9を加圧してヒートシールすると、液状化8した付着物6は加圧によりシール面から、すなわちフランジ状ヒートシール部4のシール面と蓋材フィルム9の下面のシール面との間から、外部に搾り出されるので、前記シール面には液状化8した付着物6が実質的になくなり、良好な密封包装を行うことができる。
【0023】
本発明で用いる精白米、米穀類、豆類、米飯類、その加工品などは特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、豆ご飯を作るために、精白米に豆類を混ぜたものでもよい。また、精白米には、無洗米を用いてもよい。
【0024】
本発明に用いる水は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水など公知の水を用いることができる。
【0025】
本発明において包装用容器のフランジ状ヒートシール部のシール面に供給する水の温度は特に限定されないが、好ましくは5℃〜60℃のものを使用できる。
水を供給する際の前記フランジ状ヒートシール部のシール面の温度にもよるが、供給する水の温度が、5℃以上60℃以下の範囲であれば、シール面に付着した固形状の付着物6の量の多少に関係なく、固形状の付着物6を迅速に液状化して、より迅速・確実に密封シールすることができる。さらに、供給した水が再蒸発しにくく、液状化した固形状の付着物6が再び乾燥固化する恐れがなく、確実に密封シールすることができる。
【0026】
本発明で用いる炊き水は特に限定されるものではなく、具体的には、水の他にも調味液やソース類など各種液体を用いることができ、各種味付きごはんを炊くことも可能である。
前記開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に充填した米を炊飯する前に、適宜必要な量の炊き水を加えてから炊飯する。
【0027】
本発明で炊飯後は必要に応じ冷却した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする。
冷却時の冷却温度は、供給した水の再蒸発を防止できる温度であればよく特に限定されないが、目安として前記フランジ状ヒートシール部の表面温度が5℃〜80℃となるように冷却すると好ましい。
供給する水の温度にもよるが、ヒートシール部のシール面の表面温度が、5℃以上80℃以下の範囲であれば、供給した水が再蒸発しにくく、液状化した固形状の付着物6が再び乾燥固化する恐れがなく、シール面に付着した固形状の付着物6の量の多少に関係なく、固形状の付着物6を迅速に液状化して、より迅速・確実に密封シールすることができる。
なお、冷却方法は、冷却空気などによる積極的な冷却の他に、自然放冷などでもよい。
【0028】
本発明で行う水の供給方法は特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、スプレー装置などを用いる噴霧方法をはじめ、塗布方法、滴下方法などを単独あるいは2種以上の方法を組み合わせて、水を供給することができる。
【0029】
本発明においては、前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給するが、固形状の付着物が付着した前記フランジ状ヒートシール部のみに水を供給するか、あるいはさらに前記包装用容器中の米飯表面にも水を供給することができる。
【0030】
供給する水の量は特に限定されず、シール面に付着した固形状の付着物6の量などにより、適宜決定される。
前記フランジ状ヒートシール部のみに水を供給する場合、供給する水量の下限は、ヒートシール部表面積100cm あたり好ましくは1g、さらに好ましくは5gである。
供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり1g以上であれば、ヒートシール部全体に水を供給することができ、供給した水によりシール面に付着した固形状の付着物6を液状化して、シール不良を防止することができる。
供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり5g以上であれば、シール面の撥水性や供給方法などにかかわらず、供給した水によりシール面に付着した固形状の付着物6を迅速に液状化して、より迅速・確実に密封シールすることができる。さらに、供給した水が蒸発し、液状化した固形状の付着物6が再び乾燥固化する恐れもなく、より確実に密封シールすることができる。
また、供給する水量の上限は特に限定されないが、供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり100g以下であれば、水を前記フランジ状ヒートシール部のみに供給しやすく、水の供給量を節約できる。
【0031】
前記フランジ状ヒートシール部に加えて、前記包装用容器中の米飯表面にも水を供給する場合、供給する水の量は、前記フランジ状ヒートシール部表面積100cm あたり好ましくは1g以上100g以下、さらに好ましくは5g以上50g以下である。
供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり1g以上であれば、ヒートシール部全体に水を供給することができ、供給した水によりシール面に付着した固形状の付着物6を液状化して、シール不良を防止することができる。また、供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり100g以下であれば、水の供給量が節約できるほか、品質に対する影響をより受けにくくなり、粥、雑炊、リゾットなどの比較的水分量の高い米飯では、より容易に風味良好の米飯を製造できる。
供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり5g以上であれば、シール面の撥水性や供給方法などにかかわらず、供給した水によりシール面に付着した固形状の付着物6を迅速に液状化して、より迅速・確実に密封シールすることができる。さらに、供給した水が蒸発し、液状化した固形状の付着物6が再び乾燥固化する恐れもなく、より確実に密封シールすることができる。また、供給する水の量が、ヒートシール部表面積100cm あたり50g以下であれば、前記包装用容器中の米飯表面のべたつきや軟化など、米飯の品質低下が発生することなく、米飯の種類によらず、風味良好の米飯を製造できる。
【0032】
なお、炊き水を加える前に、必要に応じて加熱殺菌を行ってもよい。
加熱殺菌には、市販の飽和水蒸気を用いた加圧・加熱殺菌装置やマイクロ波を用いた加熱殺菌装置など公知の方法や装置を用いることができる。
【0033】
炊飯の方法は、特に限定されず、具体的には、例えば、ガス直火炊き、高周波誘導加熱(IH)、水蒸気炊飯、マイクロ波加熱などの公知の方法や装置あるいはこれらの2つ以上の組合わせを挙げることができる。所定の温度、所定の圧力下で、一定時間、炊飯する。
【0034】
そして、水の供給後、ヒートシール機で完全にシールして密封包装する際に、包装用容器1内の空気を不活性ガス置換した後、ヒートシールして密封包装することもできる。
また、脱酸素剤を封入してもよい。
【0035】
無菌工程は、例えば、米国航空宇宙局(NASA)の規格でクラス100〜クラス10000のクリーンルームやクリーンブース内等で無菌的に行なうなど、無菌環境で行なうことが好ましい。無菌環境で行なう際には使用する設備・包材・容器等は充分に殺菌されたものを使用する。また、無菌環境で行なう際には、使用する洗米水、浸漬水、炊き水(調味液やソース類など各種液体を含む)や炊飯後フランジ状ヒートシール部などに供給する水は、必要に応じ殺菌されたものを使用する。
【0036】
本発明で用いる包装用容器1は上部が開口し、開口部3周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部4を備えているものであれば、形状は丸、多角形、楕円、トレー状形状、円筒状形状、深い形状など特に限定されるものではない。
【0037】
包装用容器1は、耐熱性および耐水性があればよく、材質はプラスチック、紙、ガラス、セラミックス、金属あるいはこれらの組合わせなどいずれでもよく、例えばガスバリヤー性耐熱容器包装体、耐熱性合成樹脂フィルム及び/又は金属箔のラミネート材からなるプラスチック容器などを挙げることができる。
また、蓋材フィルムは、包装用容器1とのシール適性などを考慮し適宜選択される。
例えば、包装用容器1は、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を中間層とし、上下層には、ポリプロピレンを積層しこれを容器に成形したもの、また、蓋材フィルムとしては、「PET/Kナイロン/ポリエチレン系シーラント」などが使用できる。
【0038】
そして、密封包装した後、そのままあるいは所定数ダンボール箱に梱包するなどして適温に維持された貯蔵庫内で貯蔵したり、搬送・輸送に供する。
【0039】
上記実施の形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
精白米を洗米した後、常温の水に1時間浸漬して水を含浸させ、その米を110g計量して、炊飯後もそのまま製品として使用できる上部が開放した図1に示した耐熱性プラスチック製包装用容器1に充填した。
そして、市販の水蒸気式加圧・加熱殺菌機に前記包装用容器1を収容して130℃で60秒間、殺菌した。
そして、殺菌後、殺菌した炊き水90gを前記包装用容器1に供給し、水蒸気を用いて30分間、炊飯した。
その後、10分間放冷(フランジ状ヒートシール部の表面温度が60℃になるまで放冷)した後、図1(ハ)に示したように、包装用容器1のフランジ状ヒートシール部4のシール面に付着した固形状の付着物6および包装用容器1内の米飯7表面にスプレー10を用いて殺菌した水(30℃)をフランジ状ヒートシール部表面積100cm あたり10g噴霧した。
図1(ニ)に示したように、殺菌した水を噴霧することにより固形状の付着物6を液状化した。
そして図1(ホ)に示したように、クリーンブース内で、ヒートシール機で完全にヒートシールして密封包装した。
得られた米飯は、粘りの強い美味しい米飯であった。
包装用容器1を20個用いて同様に密封包装したが、シール不良はなかった。
【0042】
(比較例1)
図1(ハ)、(ニ)に示したような水を噴霧して固形状の付着物6の液状化をしなかった以外は、実施例1と同様にして、炊飯し、密封包装した。
包装用容器1を20個用いて同様に密封包装したが、20個中にシール不良が15個発生した。
【0043】
(実施例2〜7)
実施例1における、供給する水の噴霧量を適宜変更し、その他は実施例1と同じ方法にて炊飯し、密封包装した。
得られた米飯は、粘りの強い美味しい米飯であった。
それぞれ、包装用容器1を20個用いて同様に密封包装した。
実施例6を除き、シール不良はなかった。
実施例6においては、シール不良が1個だけ発生した。
結果を表1に示す。
【0044】
(実施例8、9)
実施例1における、水を供給する場所を変更し、前記フランジ状ヒートシール部に加えて、前記包装用容器中の米飯表面にも同様に水を噴霧した。水の噴霧量は、前記フランジ状ヒートシール部表面積100cm あたり5gおよび50gとし、その他は実施例1と同じ方法にて炊飯し、密封包装した。
得られた米飯は、表面がべたつくことなく、粘りの強い美味しい米飯であった。
包装用容器1を20個用いて同様に密封包装したが、シール不良はなかった。
結果を表1に示す。
【0045】
(実施例10、11)
実施例1における、浸漬米量を50gとし、炊き水として雑炊調味液200gを使用し、水を供給する場所を変更し、前記フランジ状ヒートシール部に加えて、前記包装用容器中の米飯表面にも同様に水を噴霧した以外は、実施例1と同じ方法にて炊飯し、密封包装した。水の噴霧量は、前記フランジ状ヒートシール部表面積100cm あたり50gおよび100gとした。
得られた米飯は、美味しい雑炊であった。
包装用容器1を20個用いて同様に密封包装したが、シール不良はなかった。
結果を表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に米と炊き水を充填して炊飯した後、前記包装用容器の上部を覆い、前記フランジ状ヒートシール部に加圧してヒートシールして密封包装した蓋材フィルムを備えた包装米飯の製法において、
炊飯後、前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする前に、炊飯中に前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給して、前記固形状の付着物を液状化した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装することを特徴とする包装米飯の製法であり、
炊き水を加えて、炊飯中に一部が吹きこぼれるような、十分な加熱を行って美味しい米飯を炊くことができるとともに、容易に、かつ確実に、良好なヒートシールおよび密封包装ができるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値は甚だ大きい。
【符号の説明】
【0047】
1 包装用容器
2 米
3 開口部
4 フランジ状ヒートシール部
5 泡立ち
6 固形状の付着物
7 米飯
8 液状化
9 蓋材フィルム
10 スプレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口し、開口部周縁に外向きのフランジ状ヒートシール部を備えた包装用容器に米と炊き水を充填して炊飯した後、前記包装用容器の上部を覆い、前記フランジ状ヒートシール部に加圧してヒートシールして密封包装した蓋材フィルムを備えた包装米飯の製法において、
炊飯後、前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールする前に、炊飯中に前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給して、前記固形状の付着物を液状化した後、前記フランジ状ヒートシール部に前記蓋材フィルムを加圧してヒートシールして密封包装することを特徴とする包装米飯の製法。
【請求項2】
前記フランジ状ヒートシール部のシール面に付着した固形状の付着物に水を供給する際に、固形状の付着物が付着した前記フランジ状ヒートシール部のみに水を供給するか、あるいはさらに前記包装用容器中の米飯表面にも水を供給することを特徴とする請求項1記載の包装米飯の製法。
【請求項3】
前記炊飯工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の包装米飯の製法。
【請求項4】
前記炊飯工程の前に殺菌工程を設け、前記殺菌工程から密封シール工程までを無菌空間で行うことにより無菌包装米飯を製造することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の包装米飯の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−139654(P2011−139654A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1333(P2010−1333)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000116297)ヱスビー食品株式会社 (40)
【Fターム(参考)】