説明

包装袋

【課題】シールされたフィルム片の周辺部を一部切り取った開口部を自在に開閉するための閉鎖手段を保管時あるいは運搬時に収容物より保護し、かつ該保護性が包装袋内部に内圧がかかった場合にも優れる包装袋の提供を目的とする。
【解決手段】互いに噛合する第1、第2の部材からなる開閉自在な閉鎖手段は、第1の部材を備える第1のベース部材の上部と、第2の部材を備える第2のベース部材の上部が、前記開口部を形成する、相対した各フィルム片の内側にそれぞれ接合されて形成され、さらに一方のベース部材の下端部が他方のベース部材より長く形成されていて、該下端部が相対する他方のフィルム片に易剥離シールにより接合され、開封時に剥離することにより開口部が開封されるイージーピール部が形成されることを特長とする包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールされたフィルム片の周辺部を一部切り取って開口部を形成することにより開封される包装袋、特に液体や粘稠体、それらを含む物品や、経管経腸栄養剤や経管経腸流動食等を収容する包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や薬品等の種々の収容物を収容する包装袋として、フィルム片の周辺部をシールして収容部が形成したパウチタイプの包装袋が広く使用されている。パウチタイプの包装袋として、一旦開封した後、収容物の保存等のために開封部を自在に開閉できるなどの閉鎖手段を有する包装袋があるが、中でもシールされたフィルム片の周辺部を一部切り取って未シール部による開口部を形成し、該開口部に予め閉鎖手段を設けた包装袋は、コスト性や製造の容易さから広く使用されている。
【0003】
また、収容物が経管経腸栄養剤(以下栄養剤と略することもある)や経管経腸流動食(以下流動食と略することもある)には、密封性や取り扱い性に優れるため、包装袋としてパウチタイプのものが多く使用されている。このようなパウチタイプの包装袋は、一般に注出口を有し、該注出口にチューブを接続して投与を行う。その際、患者の病態により投与後、または投与中に水分補給や薬剤を投与する場合がある。このような場合、成形部材などの別部材を予め包装袋の周縁部に取り付けて注入口としたものもあるが、材料や取り付けなどのコストが高くなったり、別部材を周縁部に挟み込む分、特に大口径の注入口とする場合など、包装袋を積み重ねると嵩高になって取り扱いにくい等の問題があり、包装袋の一部を切り取って注入口を形成する構成のものも多く使用されている。このような構成の場合、薬剤や水分の補給時以外は、収容物の衛生管理を考慮して、開口部に予めチャックシールなどの閉鎖手段を設けた包装袋が開発されている。
【0004】
しかし、開口部に予め設けられたチャックシールなどの閉鎖手段は、保管時あるいは運搬時に収容物による内圧で噛合がはずれ、噛合部分に収容物が付着して、噛合が不十分になったり、収容物が汚染されることがあるため、開封前には収容物から閉鎖手段を隔離し、開封時に剥離するイージーピール部を設けたものが開発されている(下記特許出願1、2参照)。
【0005】
従来、このようなイージーピール部は、包装袋を構成するフィルム片同士を剥離シールにより接合して形成されるが、保管時あるいは運搬時に落下などにより、包装袋内部に内圧がかかるとイージーピール部が剥離してしまい、本来の目的を果たせなくなることがある。
【0006】
また、開口部となる部分にイージーピール部を設け、イージーピール部の剥離による開封明示あるいは、イージーピール部の破裂による内圧の減少を目的としたものもあるが(下記特許出願3、4参照)、包装袋内部の内圧の影響でイージーピール部が剥離することを防止するものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−154017号公報
【特許文献2】特開2005−40630号公報
【特許文献3】特開2006−315760号公報
【特許文献4】特開2002−225889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シールされたフィルム片の周辺部を一部切り取って開口部を形成することにより開封される包装袋において、開口部を自在に開閉するための閉鎖手段を保管時あるいは運搬時に収容物より保護し、かつ該保護性が包装袋内部に内圧がかかった場合にも優れる包装袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために下記の構成を有するものである。
【0010】
(1)単一又は複数のフィルム片の周辺部をシールして収容部が形成され、シールされたフィルム片の前記周辺部を一部切り取って未シール部による開口部を形成することにより開封される包装袋であって、前記開口部には、互いに噛合する第1、第2の部材からなり、開口部の全幅に亘って延びる開閉自在な閉鎖手段と、開口部の全幅に亘って延びて開封前には収容部から前記閉鎖手段を隔離し、開封時に剥離することにより前記開口部が開封されるイージーピール部とを備え、前記第1の部材を備える第1のベース部材の上部と、前記第2の部材を備える第2のベース部材の上部が、前記開口部を形成する、相対した各フィルム片の内側にそれぞれ接合されて前記閉鎖手段が形成され、さらに一方のベース部材の下端部が他方のベース部材より長く形成されていて、該下端部が相対する他方のフィルム片に易剥離シールにより接合されてイージーピール部が形成されることを特長とする包装袋。
【0011】
(2)前記第1及び第2のベース部材が、フィルム片の周辺部をシールしたシール部の外縁部へ露出しないことを特長とする前記(1)記載の包装袋。
【0012】
(3)前記閉鎖手段が、基部より突出する、雄型の第1の部材及び雌型の第2の部材からなるチャックシールであることを特長とする前記(1)または(2)記載の包装袋。
【0013】
(4)前記閉鎖手段における、雄型の第1の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状を楕円形状とし、雌型の第2の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状の凹部を第1の部材の先端部の断面形状と略同一とし、かつ、第1、第2の部材の噛合時に第1の部材の基部近傍のみ第1の部材先端部と第2の部材先端部との間に隙間が形成される形状であることを特長とする前記(3)記載の包装袋。
【0014】
(5)前記開口部となる部分に、フィルム片の周辺部の切り取りを容易にするための易開封部を設け、該易開封部を用いて切り取られた開封端の位置がフィルム片同士で異なるよう易開封部が形成されていることを特長とする前記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の包装袋。
【0015】
(6)シールされたフィルム片の前記周辺部に注出部を備えることを特長とする前記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の包装袋。
【0016】
(7)経管経腸流動食用または経管経腸栄養剤用であることを特長とする前記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の包装袋。
【発明の効果】
【0017】
本発明の包装袋は、閉鎖手段を備えるベース部材の下端部を相対する他方のフィルム片に接合することにより、開封前には、開口部を自在に開閉するための閉鎖手段が収容物から隔離されるため、保管時あるいは運搬時に収容物による汚染等から保護されるため衛生管理性や取り扱い性に優れ、また、包装袋内部に内圧がかかった場合にも、前記ベース部材の下端部を接合するイージーピール部を剥離するような圧力がかかりにくい構成を有するため、耐圧性に優れる。さらに、上記保護性や耐圧性を閉鎖手段を備えるベース部材により簡単に現出できるため、製造が容易であり、コスト性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施形態1]
以下に図面を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。図1に本発明の実施形態の一例である包装袋の正面図、図2に図1の包装袋のX−X断面部分の構成、図3に図1の包装袋において開封時に開口部となる部分の拡大図を示す。図1〜3において、包装袋1の本体部は、2枚のフィルム片1a、1aの周辺部2を融着等によりシールしてシール部(図1中、斜線で示される)とし、収容部3が形成されている。収容物の充填は、包装袋の周辺部の一部を未シール部として他の部分を形成した後、未シール部を充填口として収容物を充填し、未シール部をシールして行う。
【0019】
図1の包装袋1の上部には、開封時に開口部となる部分4が形成されている。開封時に開口部となる部分4には、シール部から開口部となる未シール部5を通って、反対側のシール部へと横断する易開封部6が設けられており、該易開封部6の上側の一端をつまんで易開封部6に沿って引っ張り、シールされたフィルム片の上辺部(周辺部の一部)を切り取ることにより、未シール部5による開口部が形成され、包装袋は開封される。易開封部6はレーザー照射などによるハーフカットにより形成されている。なお、包装袋1を形成する2枚のフィルム片1a、1aのそれぞれに各々の軌跡が異なるよう易開封部6は形成されており、易開封部6に沿って切り取られた開封端の位置はフィルム片同士でずれるようになっている。これにより、それぞれのフィルム片がつまみやすくなって注入口を開けやすい。
【0020】
図1の包装袋1は、開封時に開口部となる部分4に、互いに噛合する第1、第2の部材からなり、開口部となる未シール部5の全幅に亘って延びる開閉自在な閉鎖手段としてチャックシール7が設けられ、該チャックシールの収容部3側には、イージーピール部8が設けられている。該イージーピール部8は、開口部となる未シール部5の全幅に亘って延び、開封前には収容部3からチャックシール7を隔離し、開封時に剥離することにより開口部が開封される。上記チャックシール7は、必要に応じて開封後に開口部を閉鎖するために設けられている。図1の包装袋1は、実際には、易開封部6によってフィルム片の上辺部を切り取った後、チャックシール7を開け、イージーピール部8を剥離して完全に開封される。
【0021】
図1の包装袋における開口部となる部分4は、以下のような構成を有する。即ち、チャックシール7(閉鎖手段)は、図2、図4に示すように、基部14より突出する雄型の先端部13を有する第1の部材7aと、基部16より突出する雌型の先端部15を有する第2の部材7bからなり、先端部13と15が互いに噛合して閉鎖される。第1の部材7aと第2の部材7bは、それぞれ第1のベース部材11と、第2のベース部材12に一体に形成されている。図2に示すように、第1のベース部材11の上部と、第2のベース部材12の上部が、包装袋を形成するフィルム片1a、1aの、開口部を形成する、相対する部分の内側にそれぞれシール部11a、12aにより接合され、さらに一方の第2のベース部材12の下端部が他方の第1のベース部材11より長く形成されていて、該下端部の、上部のシール部12aが形成された面と反対側の面が、相対する他方のフィルム片1aに易剥離シールにより接合されてイージーピール部8が形成される。図5には、開封時の開口部の断面状態を示す。図2に示すように、開封前には、第2のベース部材12の下端部が隔壁となり、閉鎖手段7が収容部3から隔離されるため、保管時あるいは運搬時に収容物による汚染等から保護される。落下や積み重ねなどにより包装袋内部に内圧がかかった場合にも、第2のベース部材12には矢印A方向に圧力がかかり、イージーピール部を剥離する方向には圧力がかかりにくいため、耐圧性に優れ、イージーピールが破れる等の問題が起こりにくい。また、包装袋の上部のシール部2aにより、開封前には閉鎖手段とイージーピール部は包装袋内に密封されるため、閉鎖手段7が外部から汚染されることはなく、イージーピール部8が破れて、収容物が汚染されたり、漏れるなどの問題も生じない。
【0022】
本発明の包装袋は、閉鎖手段を包装袋を形成するフィルム片に取り付けるために、該閉鎖手段を形成したベース部材を下方に延在させて、フィルム片に接合するのみでイージーピール部を形成するため、簡易な構造で閉鎖手段を収容物から隔離して閉鎖手段の汚染を防止でき、また、フィルム片同士を接合する場合に比べて、イージーピール部を剥離するような圧力がかかりにくく、耐圧性、衛生管理性、取り扱い性に優れる。さらに、上記の特性を閉鎖手段を備えるベース部材により簡単に現出できるため、製造が容易であり、コスト性に優れる。
【0023】
なお、下端部を他方ベース部材より長くし、イージーピール部を形成するベース部材は、閉鎖手段の第1の部材、第2の部材のいずれが形成されたものであっても良い。
【0024】
なお、図1の包装袋1には、開口部となる部分4の近傍のシール部に、包装袋を吊り下げ可能な吊り下げ手段として、フィルム片を貫通する穴9が形成されている。後述の注出部より注出を行うときなどに、穴9に治具を引っかける等して包装袋1を懸下することによって、注出部が下方に配置され、注出部からの収容物の注出が容易になる。本発明の包装袋は用途によって、吊り下げ等を目的として、上記のような穴が1または複数形成されていても良い。特に注出部を有し、注出作業を行う用途の場合は上記のような穴を有するのが好ましい。穴の形状、サイズ、配置等は、包装袋の用途、サイズ、構成材料等により適宜設定される。また、吊り下げ手段としては別個に形成されたフック等を設けても良い。
【0025】
また、図1の包装袋1においては、包装袋本体の下辺端部を内側へ切り欠いた形状とし、その切り欠いた部分の周辺部2の1辺に、収容物の注出を行うための注出部10が設けられている。本発明の包装袋は、収容を目的とする場合、開封時に開口部となる部分のみを設ければよいが、栄養剤用や流動食用等、収容物の注出を目的とする場合は、上記のような注出部を設けても良い。注出部の配置や構成は、包装袋の用途等により適宜設定される。特に、収容物が栄養剤や流動食の場合、注出時には、包装袋を吊り下げ手段により吊り下げるため、吊り下げ時に注出可能な配置とする必要があり、注出部を図1の包装袋1における穴9のような吊り下げ手段と対向する位置に設けるのが好ましい。注出部の構成材料、形状、サイズ、配置、取り付け方法等は、特に限定されず、通常一般に使用されているものを使用できる。図1の包装袋1において、注出部10は、開封時に注出口となる成形された注出口部材10aを先端が包装袋本体から突出するようにその基部を包装袋本体に熱接着等により取り付けて形成され、注出口部材10aの先端部は、破断により開封可能な封止部材10bにより開封時まで密封されている。さらに、注出口部材10aおよび封止部材10bは、包装袋本体から突出するように形成された二枚のフィルム片の間に配置され、該フィルム片の周辺部(図1中、符号2’で示される)はシールされて、該フィルム片間に注出口部材10aおよび封止部材10bが密封された状態となっている。さらに、注出口部材10aおよび封止部材10bを密封したフィルム片の基部には、フィルム片の切り取りを容易にするための易開封部6’が設けられている。注出時には、易開封部6を用いて、注出口部材10aおよび封止部材10bを密封したフィルム片を切り取ると同時に、封止部材10bをねじって封止箇所を破断させ、封止部材10bをフィルム片ごと除去することにより、注出口部材10aが露出し、注出口が開封される。該注出口は、チューブ等を接続して収容物を外部へ注出することができる。フィルム片によって注出口部材10aおよび封止部材10bを密封することにより、開封前の注出口の汚染を防止できる。注出部の構成としては、他に、包装袋本体を構成するフィルム片間にパイプを挟みこみ、フィルム片の一部を切り取ることによってパイプを露出させ、該パイプ先端にチューブ等を接続して収容物を外部へ注出する構成等も挙げられる。
【0026】
本発明において、包装袋本体を構成するフィルム片は単一のものを折り曲げて使用しても、複数のフィルム片を接合しても良い。また、該フィルム片の構成材料は特に限定されず、従来パウチに使用されている材料を使用できる。このような材料としては、例えば、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルム、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム、二軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等の各種フィルムを基材とし、これらの基材に、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のオレフィン系の熱接着樹脂をシーラント層として積層した複合フィルム等が挙げられる。また、内容物の保護性を高めるため等の点から、上記複合フィルムに、さらに単層フィルムや複合フィルムを複数積層したフィルムや、シリカ、酸化アルミニウム等を積層したフィルムも使用できる。特に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートや二軸延伸ポリアミドの積層フィルムに酸化アルミニウム層を積層したフィルムを基材として用いると、バリアー性や保香性に優れ、充填後のピンホール試験機又は金属探知機の使用やマイクロ波による加熱も可能になる。各フィルム片の厚みは一般的な10〜150μmのものを使用でき、全体のサイズも収容量に応じて適宜設定できる。包装袋本体の形成は、フィルム片の構成に応じてシーラント層の熱接着等により周辺部をシールして行う。なお、レトルト殺菌処理を行う必要がある場合は、それに応じて包装袋を構成するフィルム片、注出部等の材質を予め選択する。
【0027】
本発明の包装袋の本体部形状は、複数のフィルム片の周辺部をシールしてなるのであれば特に限定されないが、本発明の包装袋を経管経腸栄養剤や経管経腸流動食の収容用とする場合など、運搬時や湯煎時の作業性の点で、底面部等にガゼット部を設けてもよい。ガゼット部を設ける場合は、包装袋の自立性が向上し、また収容量も増大する。ガゼット部は、例えば本体部の主要部分を構成する2枚のフィルム片間の底面部のみにガゼット部を形成するフィルム片を介在するよう配置し、ガゼット部としてマチ状に形成する他、注入部や注出部のない側面部、あるいは天面部にもガゼット部を設け、収容量の増大等を計っても良い。
【0028】
本発明の包装袋の本体部形成時に、フィルム片の周辺部のシール形状やシール幅も密封可能であれば特に限定されず、上記実施形態のような穴や引っかけ部等を形成可能なように形状や幅を変化させてもよい。
【0029】
図1の上記実施形態では、開封時に開口部となる部分4に、シール部から開口部となる未シール部5を通って、反対側のシール部へと横断する易開封部6が設けられているが、本発明の包装袋は、開口部となる部分に、フィルム片の周辺部の切り取りを容易にするための易開封部が設けられているのが、より安定的に開封作業を行うことができて好ましい。易開封部としては、上記実施形態では、シール部の端部に曲線状の切れ込みを形成し、該切れ込みから手で引き裂きやすいよう直線状の易引き裂き部分を設けているが、切れ込みは直線状や、三角形状であってもよい。また、低コスト化のために、切れ込みのみを形成したものや、はさみ等で切るように開封箇所を印刷等により明示したものであっても良い。なお、本発明においては、該易開封部を用いて切り取られた開封端の位置がフィルム片同士で異なるよう易開封部が形成されているのが好ましく、具体的には、上記実施形態に示すように、包装袋を形成する2枚のフィルム片のそれぞれに各々の軌跡が異なるようハーフカット等の易開封部が形成され、易開封部に沿って切り取られた開封端の位置がフィルム片同士でずれて、それぞれのフィルム片をつまみやすくなるようにする等の方法が挙げられる。図6に、開封後の開封端の位置(図6中、符号17a、17bで示される)がフィルム片同士でずれている状態を示す。
【0030】
本発明の包装袋は、閉鎖手段の第1、第2の部材が形成された前記第1及び第2のベース部材が、フィルム片の周辺部をシールしたシール部の外縁部へ露出しないよう構成されているのが好ましい。ベース部材がシール部の外縁部へ露出しない、即ち、閉鎖手段及びイージーピール部の端部がシール部の外縁部へ露出しないことにより、シール部の強度が低下することがなくなり、落下時などに破袋による収容物の漏れや密閉性の低下が生じにくくなる。特に、イージーピール部は易剥離性であるために、その端部がシール部の外縁部へ露出すると、落下や取り扱い時の損傷等により剥離した場合などに、包装袋内部が外部へ連通し、収容物の漏れや衛生性に問題が生じるものである。
【0031】
本発明の包装袋において、閉鎖手段が、上記実施形態のような、基部より突出する、雄型の第1の部材及び雌型の第2の部材からなるチャックシールである場合に、開口部となる部分の密閉性がより効果的となる。チャックシールは、本発明のように、イージーピール部により隔離されない場合、保管時あるいは運搬時に収容物による内圧で噛合がはずれて噛合部分に収容物が付着し、噛合が不十分になりやすい。
【0032】
さらに、本発明の包装袋において、チャックシールは、雄型の第1の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状を楕円形状とし、雌型の第2の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状の凹部を第1の部材の先端部の断面形状と略同一とし、かつ、第1、第2の部材の噛合時に第1の部材の基部近傍のみ第1の部材先端部と第2の部材先端部との間に隙間が形成される形状であるのが好ましい。図4にチャックシールの構成実施形態の断面図を示す。図4のチャックシールは、第1のベース部材11に一体に形成された雄型の第1の部材7aと、第2のベース部材12に一体に形成された雌型の第2の部材7bとからなる。第1の部材7aは先端部13とベース部材につながる基部14からなり、第2の部材7bは先端部15とベース部材につながる基部16からなる。第1の部材7aの先端部13の長手方向に垂直な断面形状は楕円形状であり、第2の部材7bの先端部15の長手方向に垂直な断面形状の凹部は、第1の部材の先端部13の断面形状と略同一となっている。さらに、第1、第2の部材の噛合時に、第1の部材の基部14の近傍のみ第1の部材先端部13と第2の部材先端部15との間に隙間が形成されるようになっている。上記のような構成とすると、第1、第2の部材の噛合時に、先端部13と先端部15が密着して密閉性が向上し、また、噛合部分の断面形状を楕円形状とすることにより、第1の部材先端部13と第2の部材先端部15との噛合が強くなり、収容部の内圧が高まった場合でも、容易に噛合が外れることがなくなる。さらに、噛合の解合時には、上記隙間に指を掛けることにより、チャックシールを開けやすくなる。
【実施例1】
【0033】
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、バリア性を有する酸化アルミニウム(Al)の薄膜付き厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、厚さ15μmのポリアミド(PA)フィルムと、厚さ100μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムとを接着層を介して順次積層した積層フィルムを図1の包装袋1におけるフィルム片1a、1aに用いて、LLDPEフィルム側をシーラント層として周辺部を熱融着した。その際、開封時に開口部となる部分4のフィルム片内側には、図1に示すように閉鎖手段としてチャックシール7と、チャックシール7を開封前に保護するための開口部のイージーピール部8を設けた。図2に示すのと同様に、チャックシール7の雄型の第1の部材7aを備える第1のベース部材11と、雌型の第2の部材7bを備える第2のベース部材12を、開口部を形成する、相対した各フィルム片の内側に配置して、各ベース材の上部をフィルム片の内側にそれぞれ接合し、さらに下端部が第1のベース部材11より長く形成された第2のベース部材12の下端部を、相対する他方のフィルム片の閉鎖手段より下側部分に易剥離シールにより接合し、イージーピール部8を形成した。なお、チャックシールの第1、第2の部材、ベース材とも直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)により形成され、第2のベース部材12の下端部には易剥離テープが接合されている。また、注出部10は、図1に示すように、高密度ポリエチレン(HDPE)系樹脂からなる注出口部材10aおよびその先端部の封止部材10bを包装袋本体から突出するように形成された二枚のフィルム片の間に配置し、注出口部材10aの基部を包装袋本体に熱接着により取り付け、フィルム片の周辺部をシールして、該フィルム片間に注出口部材10aおよび封止部材10bを密封した。さらに、吊り下げ手段として、貫通孔9を打ち抜きにより形成した。包装袋のサイズは、概ね幅200mm(収容部分の幅は約180mm)、高さ240mm、シール幅は5〜10mm、貫通孔形成部分のシール幅は40〜50mmとした。貫通孔は直径20mmの円形とした。収容物の充填は、包装袋の周辺部の一部を未シール部として他の部分を形成した後、未シール部を充填口として収容物を充填し、未シール部を熱融着によりシールして行った。開口部は、易開封部6を引き裂き、チャックシール7を開け、イージーピール部8を剥離して開封し、未シール部5を開口部として形成する。貫通孔9に治具を引っかけて包装袋1を懸下し、開口部のチャックシールを開けて包装袋内部へ水の補給を行った後、チャックシールを閉じ、注出部10を開封して収容物を注出した。
【0034】
実施例1の包装袋の開口部を開封し、開口部から水600mlを充填し、チャックシールを噛合させて開口部を閉じた状態で、横向きに静置し、表1に示すよう加圧なしまたは加圧を行った10分間、チャックシールからの漏れを目視で確認した。試験数は、30袋とした。試験結果を表1に示す。
【0035】
表1の結果より、本発明の包装袋におけるチャックシールが耐圧性に優れることがわかる。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の包装袋は、閉鎖手段が保管時あるいは運搬時に収容物による汚染等から保護されるため衛生管理性や取り扱い性に優れ、また、包装袋内部に内圧がかかった場合の耐圧性に優れるため、収容物の衛生や品質管理を目的として開口部に閉鎖手段を有する包装袋として好適に用いることができ、特に、衛生管理性を必要とする経管経腸栄養剤や経管経腸流動食等を収容する包装袋として好適である。また、製造が容易であり、コスト性に優れるため、大量生産品の包装用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である包装袋の正面図である。
【図2】図1の包装袋のX−X断面部分の構成を示す図である。
【図3】図3は、図1の包装袋において、開封時に開口部となる部分の拡大図である。
【図4】閉鎖手段の実施形態の一例であるチャックシールの構成を示す断面図である。
【図5】開封時の開口部の断面状態を示す図である。
【図6】開封後の開封端の位置がフィルム片同士でずれている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 包装袋
1a フィルム片
2 周辺部
2’ 注出部周辺部
2a 上部のシール部
3 収容部
4 開封時に開口部となる部分
5 未シール部
6、6’ 易開封部
7 閉鎖手段(チャックシール)
7a 雄型の第1の部材
7b 雌型の第2の部材
8 イージーピール部
9 穴
10 注出部
10a 注出口部材
10b 封止部材
11 第1のベース部材
12 第2のベース部材
11a、12a ベース部材のシール部
13、15 先端部
14、16 基部
17a、17b 開封端の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一又は複数のフィルム片の周辺部をシールして収容部が形成され、シールされたフィルム片の前記周辺部を一部切り取って未シール部による開口部を形成することにより開封される包装袋であって、前記開口部には、互いに噛合する第1、第2の部材からなり、開口部の全幅に亘って延びる開閉自在な閉鎖手段と、開口部の全幅に亘って延びて開封前には収容部から前記閉鎖手段を隔離し、開封時に剥離することにより前記開口部が開封されるイージーピール部とを備え、前記第1の部材を備える第1のベース部材の上部と、前記第2の部材を備える第2のベース部材の上部が、前記開口部を形成する、相対した各フィルム片の内側にそれぞれ接合されて前記閉鎖手段が形成され、さらに一方のベース部材の下端部が他方のベース部材より長く形成されていて、該下端部が相対する他方のフィルム片に易剥離シールにより接合されてイージーピール部が形成されることを特長とする包装袋。
【請求項2】
前記第1及び第2のベース部材が、フィルム片の周辺部をシールしたシール部の外縁部へ露出しないことを特長とする請求項1記載の包装袋。
【請求項3】
前記閉鎖手段が、基部より突出する、雄型の第1の部材及び雌型の第2の部材からなるチャックシールであることを特長とする請求項1または2記載の包装袋。
【請求項4】
前記閉鎖手段における、雄型の第1の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状を楕円形状とし、雌型の第2の部材の先端部の長手方向に垂直な断面形状の凹部を第1の部材の先端部の断面形状と略同一とし、かつ、第1、第2の部材の噛合時に第1の部材の基部近傍のみ第1の部材先端部と第2の部材先端部との間に隙間が形成される形状であることを特長とする請求項3記載の包装袋。
【請求項5】
前記開口部となる部分に、フィルム片の周辺部の切り取りを容易にするための易開封部を設け、該易開封部を用いて切り取られた開封端の位置がフィルム片同士で異なるよう易開封部が形成されていることを特長とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項6】
シールされたフィルム片の前記周辺部に注出部を備えることを特長とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項7】
経管経腸流動食用または経管経腸栄養剤用であることを特長とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−143621(P2010−143621A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323805(P2008−323805)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】