説明

包装装置

【課題】駆動源としてステッピングモータを用いた包装装置において、確実に駆動装置を制動維持することができる制御装置を備えた包装装置を提供する。
【解決手段】駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部等により、搬送されるフィルムを包装部に移送し、該移送されたフィルムにより被包装物の包装を完了させ、前記包装の停止と、停止の解除とを行う非常停止スイッチを備えた包装装置において、駆動装置24としてステッピングモータを用い、その駆動装置を駆動させるパルス制御と、非常停止スイッチ47が操作されると電源の供給が断たれる制御回路45と、駆動装置24を制動維持させる制動回路46を設け、制動回路46は、制御回路45への電源が断たれると駆動装置24を静止状態に励磁して制動状態を維持し、制御回路45が駆動装置24を駆動させるパルス制御が行われると、駆動装置24の制動維持を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は商品をフィルムで包装する包装装置に関し、詳しくは包装装置を動作させる駆動機構部の制動維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルムを用いたストレッチフィルム包装装置は、各部を動作させる為の駆動源としてサーボモータを用いることが多かった。サーボモータは、非常に高価ではあるが、停止精度が高く、低速〜高速域まで同じトルクを発生させることができ、瞬間的に定格トルク以上の力を出せることからサーボモータが多く用いられていた。
しかし、最近ではステッピングモータの性能が向上し、サーボモータに比べて安価であるため、ストレッチフィルム包装装置の各部を動作させる為の駆動源として、ステッピングモータが多く用いられるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、例えばストレッチフィルム包装装置も、駆動装置にステッピングモータを用い、該駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部により繰り出されるフィルムで被包装物(商品)を覆い包装を行っているが、緊急に当該包装装置を止める非常停止時には、作業者の安全を確保する(安全基準を満たす)ために、該ステッピングモータを駆動させる制御基板(ドライバ基板)への電源供給を絶つ仕組みになっている。
【0004】
しかしながら、前記ステッピングモータを駆動させる制御基板(ドライバ基板)への電源供給を断つと、前記ステッピングモータは無励磁状態での静止トルクが生じるが、その静止トルクは小さいため前記駆動装置(ステッピングモータ)をしっかりと制動維持することができない。
そのため、前記ステッピングモータと連動する回転軸を制動維持する為に、電磁ブレーキ等の装置を前記回転軸へ別途組み付け、制動維持する必要がある。
【0005】
そのために、電磁ブレーキ等の制動装置を組み込んだ設計並びに制御が必要であり、メカ設計及び制御が複雑になると同時に、メンテナンスの箇所が増えるという欠点があった。また、包装装置のコストアップになるという経済的問題もある。
尚、前記ステッピングモータには、(1)パルス信号を与えることによって決められたステップ単位で回転し、回転角度と回転速度はパルス信号の回数と周期によって決まるので細かい制御を行うことができる点、(2)通電状態(励磁状態)で大きな静止トルクが得られ、通電しない状態(無励磁状態)でも小さな静止トルクが得られる点、(3)パルス信号の送出を止めるとその位置で停止するので正確な回転角度制御に適している点、(4)ブラシレスモータの一種であるので、機械的な接触子がなく長寿命である点、等の特徴が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−301622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、駆動源としてステッピングモータを用いた包装装置において、別途制動装置を組み込むことなく、全ての電源を絶つこと無く、確実に駆動装置を制動維持することができる制御装置を備えた包装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に本発明の包装装置は、駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部等により、搬送されるフィルムを包装部に移送し、該移送されたフィルムにより被包装物の包装を完了させ、前記包装の停止と、停止の解除とを行う非常停止スイッチを備えた包装装置において、前記駆動装置としてステッピングモータを用い、その駆動装置を駆動させるパルス制御と、前記非常停止スイッチが操作されると電源の供給が断たれる制御回路と、前記駆動装置を制動維持させる制動回路とを設け、前記制動回路は、前記制御回路への電源が断たれると前記駆動装置を静止状態に励磁して制動状態を維持し、前記制御回路が前記駆動装置を駆動させるパルス制御が行われると、前記駆動装置の制動維持を中止することを特徴とする。
前記駆動装置を静止状態に励磁して制動状態に維持するとは、ステッピングモータ(別名:パルスモータ)のロータがステータの巻き線と引き合って、ロータの回転を止めておくことで、巻き線に一定の電流を与え続けることで、回転を止めておくためのトルク(ホールディング・トルク)を最大に働かせ、制動維持できる。
前記制御回路と制動回路は前記駆動装置に対して直列的接続、或いは並列的接続の何れでもよい。
【0009】
前記制動回路による前記駆動装置の制動維持は、前記制御回路が行う前記駆動装置への制御が、所定のパルス信号の回数或いは周期を逸脱した時、該制御回路の制御を中止し、当該駆動装置を静止状態に励磁して制動状態を維持するようにする。即ち、制動回路が制御回路から出力される「パルス信号の回数」と「周期」を監視し、正常値と比較判定することで制御回路から駆動装置への出力を断つ、制御回路の監視(CPUの制御)によって行うことができる。
【0010】
また、制御回路から駆動装置への出力の遮断は、前記制動回路による制御回路の監視(CPUの制御)による方法に限らず、人的行為、即ち、作業者の意思に基づいて制御回路から駆動装置への出力を断つ方法でもよい。その具体例としては、例えば、包装動作の停止と、その停止の解除を行う非常停止スイッチを設け、該非常停止スイッチが操作された停止時は、前記制御回路の前記駆動装置への出力(ステータの巻き線に励磁電流を流し順次切換える制御)を断ち、停止解除時は、前記制御回路の前記駆動装置への出力の制御を開始するようにしてもよい。
【0011】
上記手段によれば、駆動装置をパルス信号に基づいて駆動制御する制御回路と、駆動装置を制動維持させる制動回路とを別々に設けて制御することで、パルス信号を出力する制動回路への電源供給を断つことで駆動装置を確実に停止させることができ、且つ電源供給を絶つことで制動回路によって駆動装置を確実に制動維持することができる。よって、全ての電源を遮断することなく、駆動装置を制動維持するために電磁ブレーキ等の装置を設けることもなく、作業者の安全を確実に確保する(安全基準を満たす)ことができる。
【0012】
そして、前記制動回路による制動制御は、該制御回路に不具合が生じ、駆動装置を誤作動させるようなトラブルが生じた場合は該制動回路による制御回路の監視によって、制御回路のパルス制御を中止させ、駆動装置の作動を停止させると共に、該駆動装置を制動維持することができる。
また、包装作業を監視する作業者による非常停止スイッチの操作(包装停止、停止解除)によって駆動装置の停止、制動維持を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の包装装置は、駆動装置をパルス信号に基づいて駆動制御する制御回路と、駆動装置を制動維持させる制動回路とを別々に設けて制御することで、包装装置の全ての電源供給を断つことなく、前記制御回路への電源供給を断つことにより、停止させたい駆動装置を速やかにして確実に停止させることができ、且つ駆動装置を制動維持することができるので、作業者の安全を速やかにそして確実に確保する(安全基準を満たす)ことができる。よって、駆動装置を制動維持するために電磁ブレーキ等の装置を設ける必要がなくなるので、メカ設計及び制御を簡素化でき、製品のコストダウンを図ることができる。また、メンテナンスを行う箇所を少なくすることができる。
【0014】
また、制御回路に不具合が生じ、駆動装置を誤作動させるようなトラブルが生じた場合でも、該制動回路による制御回路の監視によって、制御回路のパルス制御を中止させ、駆動装置の作動を停止させると共に、該駆動装置を制動維持することができるので、更に作業者の安全を確保する(安全基準を満たす)ことができる。
更に、包装作業を監視する作業者による非常停止スイッチの操作(包装停止、停止解除)によって駆動装置の停止及びその制動維持と、駆動装置の制動解除及び始動とを行うことができるので、作業者の安全性の確保と、包装作業の再開とをスムーズに制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る包装装置の概略を示す縦断側面図。
【図2】同縦断正面図。
【図3】図2の(X)−(X)線に沿える拡大断面図。
【図4】クランプ手段と左右折り込み板及び後折り込み板の配置関係を示す概略平面図。
【図5】包装機の制御手段の電気的構成を示すブロック図。
【図6】制御回路と制動回路と駆動装置の接続例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態をプリストレッチ手段を備えたストレッチフィルム包装機について図面に基づき説明する。
図1及び図2に示すストレッチフィルム包装機は、機枠Aの前方に被包装物を載置する商品載置部(計量部)aを設け、該商品載置部aに載せた被包装物をプッシャコンベアBにより機枠A内部に設けたエレベータ1まで搬送する。このプッシャコンベアBの側近に、被包装物の幅,奥行き,高さの各寸法を測定するセンサが設けられている。
上記エレベータ1の上方には包装部bが設けられ、その包装部bの側方(図2の右側)にフィルムロール配置部2とその配置部2にセットされたフィルムロール3から繰り出されるフィルム3’の先端部を保持するフィルム保持手段Cが設けられ、そのフィルム保持手段Cで保持されているフィルム先端を挟持して引き出し、前記包装部bまで移送するクランプ手段Dが前記フィルム保持手段Cの先端に接近させて配置されている。
また、前記フィルム保持手段Cとクランプ手段Dとの間には該クランプ手段Dで挟持され引き出されたフィルム3’を所定長さにカットするカッタEが配置されている。
又、クランプ手段Dの上方には左右折り込み板4,4’と後折り込み板5、及び後折り込み板5の上方に位置して排出プッシャ6が配設されている。
【0017】
よって、エレベータ1上に載せられた被包装物は、エレベータ1の上昇により上記包装部bに展張されたフィルム3’に対して突き上げられ、引き伸ばされた状態のフィルムの端部を、左右折り込み板4,4’と後折り込み板5とにより被包装物の底部に折り込んだ後、排出プッシャ6により被包装物を機枠A前側の排出部(ヒートシール部)7へ向けて水平に押動しながら、上記フィルム3’の前側端部を前折り込みローラ7’で被包装物の底部に折り込んでフィルムによる包装が完了される。尚、ストレッチフィルム包装機が計量包装値付機の場合には、上記排出プッシャ6による被包装物の押し出し移送中にラベルが貼付される。
【0018】
前記フィルム保持手段Cは、フィルムロール配置部2にセットされたフィルムロール3のフィルム3’の先端部を保持するもので、図2及び図3に示すように、フィルムの下側に位置して前後方向に所定の間隔をおいて平行に配置した無端ベルト8に亘って架設固定されたフィルム受け板8’と、そのフィルム受け板8’の表面に支持されるフィルムを前記フィルム受け板8’とで挟んで保持する同形状の保持板9と、前記フィルム受け板8’に取り付けた保持ローラ10とで構成され、保持板9は機枠Aに対して開閉回動自在とした保護カバー11の内側に上下摺動自在に支持されると共に、無端ベルト8に架設固定されているフィルム受け板8’と係着して一緒に上下摺動し、フィルム受け板8’と保持板9とで挾着保持するフィルム3’の先端をクランプ手段Dに受け渡し得るように構成されている。
【0019】
また、フィルム受け板8’に取り付けられている保持ローラ10は、その外表面を鏡面状にし、且つ該受け板8’に開設した通孔12より保持板9に開設した通孔内に嵌入突出させて該フィルム3’を保持ローラ10の周面に沿って蛇行させ、フィルム保持を確実に行うと共に、該保持ローラ10はフィルムの引き出し方向にのみ回転自在なるように構成されている。
【0020】
さらに、前記した無端ベルト8はモータ13の回転軸に固定したプーリと、繰出しローラ(フィルム供給ローラ)14と同軸のプーリ15と、従動プーリ16とに亘って巻回されており、前記モータ13の駆動によって無端ベルト8がフィルムの移動方向に沿って上下(正逆回転)するように構成されている。
又、上記したフィルム保持手段Cにフィルムロール3のフィルムを引き出し供給する繰出しローラ14の駆動は後述するクランプ手段Dの駆動系にプーリを介して連結され、該繰出しローラ14の駆動、停止が前記フィルム保持手段Cとは別々に制御され、且つフィルムを切断するカッタの作動と同時に停止できるよう制御されている。
【0021】
更に又、フィルム保持手段Cを構成するフィルム受け板8’と保持板9の上端部にはフィルム幅の異なるフィルムロールに対応し得るように幅方向の一方端を基準として反対側に複数の切り欠き17’が形成され、その切り欠きにより後述するクランプ手段Dへのフィルムの受け渡しが行われるように構成されている。
【0022】
クランプ手段Dは、フィルムの幅方向の側端部を挟持する上下一対の無端状の弾性ベルト18,18’と、下側の弾性ベルト18’を上側の弾性ベルト18側へ圧接するクランプ板19と、下側の弾性ベルト18’の始端側は前記したフィルム保持手段C側に向けて下向きに傾斜させ、その下向きに傾斜した始端側の上面に重ね合わせて配置すると共に、その先端側を開閉移動自在とした押えベルト20とで構成され、それらが図3に示すように包装部bを挟んで前後に、フィルムロール3から引き出されたフィルム3’の幅方向の側端部を挟持する位置に配置されている。
【0023】
そして、その前後一対の構成部材は取り付け枠21,21’に支持され、その取り付け枠21,21’は該取り付け枠21,21’の下側に直角に交差して配置された2本の案内杆22,22’に連結部材23,23’を介して支持されており、一方のクランプ手段D1を取り付けた取り付け枠21は固定され、他方のクランプ手段D2を取り付けた取り付け枠21’は案内杆22,22’に沿って移動自在に構成され、その可動側のクランプ手段D2にはプリストレッチ手段、即ち間隔拡張手段が連結されて固定側のクランプ手段D1との間隔を広狭調節し得るように構成されている。
【0024】
上記のクランプ手段Dを構成する上下一対の無端状の弾性ベルト18,18’はフィルムを挟持して搬送し得るよう同方向に駆動回転される。その駆動方式はステッピングモータ(パルスモータ)24で下側の弾性ベルト18’が巻回されている駆動ローラ18’aを回転し、且つその駆動ローラの軸に固着したチェーンスプロケット(図示せず)と上側の弾性ベルト18が巻回されている駆動ローラ18aの軸に固着したチェーンスプロケット(図示せず)とに亘ってチェーンを巻回して動力伝達が行われ上側の弾性ベルト18も回転するように構成されている。
【0025】
又、上側の弾性ベルト18に対して下側の弾性ベルト18’を圧接するクランプ板19は図4に示すように5個に分割され、その5個のクランプ板は中央クランプ板19a,中央クランプ板19aの左右に配置された第1の左右クランプ板19b,19b’、及び前記第1の左右クランプ板19b,19b’の外側に配置された第2の左右クランプ板19c,19c’の如く中央クランプ板19aに対して左右対称位置に配置されている。
そして、上記5個のクランプ板は外側に配置される第2の左右クランプ板19c,19c’の長さよりその内側に配置される第1の左右クランプ板19b,19b’及び中央クランプ板19aの長さが短く形成されている。
更に、上記のクランプ板19はその中央クランプ板19aを略包装位置の中央(センタリング完了後のフィルムの中心位置)に配置し、他は前記中央のクランプ板19aに対し左右対称位置に配置されている。
【0026】
図5は上述した装置の電気的構成を示すもので、計量ラベルプリンタ制御部Fと、包装機構制御部Gとを備え、計量ラベルプリンタ制御部Fは主として計量ラベルプリンタ関係の制御を行うもので、本発明と直接関係しないため図示及び説明を省略し、本発明と関係する包装機構制御部Gについて説明する。
包装機構制御部Gは、主として包装機の機構部の制御を行うものでCPU29によって制御される。
【0027】
CPU29にはバス29aを介して交信用インターフェース回路(INF)30,ROM31,RAM32,操作部33,表示部34,及び機構駆動部35が接続されている。
交信用インターフェース回路(INF)30は、計量ラベルプリンタ制御部Gと各種データ、指令の交信を行うための回路である。
ROM31は、CPU29が実行するプログラム、包装制御データテーブルが記憶されている。その包装制御データテーブルについては後で詳細に説明する。
RAM32は、CPU29がROM31の包装制御データテーブルを実行する場合に用いる各種レジスタ及びフラグのエリア等が記憶されている。
操作部33は、装置の起動、停止等のための各種スイッチ及びデータの入力等を行うキーボードからなる。
表示部34は、タッチパネルで構成されており、CPU30の指令に基づいて入力データの表示、プリセットデータの表示、各種メッセージの表示を行うもので、別名コンソール部とも呼ばれている。
【0028】
機構駆動部35は、包装を実行する場合に包装機の各機構部を駆動するための回路で、具体的にはエレベータ1を駆動するモータ36,被包装物を搬入するコンベアBの駆動モータ37,クランプ手段Dの駆動モータ24,フィルムの左右端部を商品の底部に折り込む左右折り込み板4,4’を作動させる駆動モータ38,フィルムの後端部を商品の底部に折り込む後折り込み板5を作動させる駆動モータ39,排出プッシャ6を作動させる駆動モータ40,エレベータ1を駆動するカム41の回転角度を検出するロータリーエンコーダ42,フィルム3’をカットするカッタEを作動させる電磁ソレノイド25,クランプ手段Dの複数個に分割されたクランプ板19を上下動作させる電磁ソレノイド26,クランプ手段Dの可動側クランプ手段D2をフィルムの幅方向に移動させるプリストレッチモータ43等がある。
【0029】
以下、上記ストレッチフィルム包装装置におけるフィルム保持手段Cに、フィルムロール3からフィルムを引き出し供給する繰出しローラ4を駆動、停止する駆動源のクランプ手段駆動モータ(ステッピングモータ)24の制御を図6に基づいて説明する。
前記クランプ手段駆動モータ(ステッピングモータ)24は、通常のインダクションモータ、直流機等の様に交流又は直流電源を直接用いて駆動させる事ができません。
これを駆動させるためには、ステッピングモータに設けられたステータの巻線に流す励磁電流を順次切換え駆動させるためのドライバ(制御回路)が必要となります。
クランプ手段Dを作動させる駆動モータのステッピングモータ24の制御は、図6に示すように、ステッピングモータ24の回転速度や回転方向を決めるパルス信号を出力するパルス発振器44と、ステッピングモータ24の巻き線に流れる励磁電流を順次切り替える駆動回路(ドライバ)を備えた制御回路(ステッピングドライバ回路)45と、ステッピングモータ24を2相励磁に誘起し制動を維持する制動回路(ブレーキ回路)46が設けられ、前記制御回路45には非常停止スイッチ(停止解除手段)の停止開閉器47が接続され、前記制動回路46にはブレーキ制御スイッチ48が接続され、該ブレーキ制御スイッチ48は前記停止開閉器47と連係作動するようになっている。即ち、非常停止スイッチの停止開閉器47が押されると、ブレーキ制御スイッチ48がONになり、非常停止スイッチの停止開閉器47が解除されると、前記ブレーキ制御スイッチ48はOFFになる。
前記ステッピングモータ24を駆動制御する制御回路(ステッピングドライバ回路)45は、前記パルス発振器44を使用した場合にCPU29からの入力信号により、ステッピングモータ24のモータ巻き線の励磁電流を順次切り替えるために、周波数の可変、起動、停止、正逆回転のパルスを出力させる信号回路(不図示)、ステッピングモータの駆動方法であるバイポーラ駆動、ユニポーラ駆動により、相励磁電流を切り替える分配回路(不図示)、モータを駆動するのに必要な電流を増幅する増幅回路(不図示)、そして、モータ及び回路を駆動させる直流電源(2P)により構成されている。尚、非常停止スイッチの停止開閉器47が押されると、前記制御回路45の電源供給は断たれ、前記駆動装置が備えるステータの巻き線に励磁電流を流し生ずる起磁力を順次切換える制御が断たれることとなる。
前記制御回路(ステッピングドライバ回路)45は、パルス数を入力するライン(1P)、回転角(ステップ角)を入力するライン(1P)、パルスイネーブル(使用許可/禁止)のライン(1P)、カレントダウン(回転方向)のライン(2P)、5Vを供給するライン(1P)の全部で6ライン(6P)の入力ラインと、ユニポーラ型ステッピングモータ24のステータの巻き線に励磁電流を流して生ずる起磁力を順次切換え駆動させる出力ライン(6P)が備わっている。
前記制動回路(ブレーキ回路)46も同様の回路が設けられており、制動回路(ブレーキ回路)46の入力ライン(6P)は前記制御回路の出力ライン(6P)とストレートに接続され、前記ブレーキ制御スイッチ48がOFFの時は、前記制御回路の出力ライン(6P)からの出力をそのまま当該制動回路の出力ライン(6P)に流して、ユニポーラ型ステッピングモータ24のステータの巻き線に電流を流して磁力を発生させ駆動させるが、非常停止スイッチの停止開閉器47が押され、ブレーキ制御スイッチ48がONになると、ステッピングモータ24のロータがステータの巻き線と引き合ってロータの回転を停止させ、巻き線に一定の電流を与え続けて、回転を止めておくための最大の静止トルクを働かせる励磁電流を出力ライン(6P)より流し、ステッピングモータ24を停止させ、静止状態に制動維持させる。
【0030】
上記包装装置で物品の包装作業を行っている場合、CPU29は制御回路45に対してステッピングモータ24を作動させるパルス制御を指示しているが、非常停止スイッチの停止開閉器47が押された場合は、前記CPU29の制御を作業者の意志に基づいて中断させるボタンであるから、該ボタンが押された場合には、緊急(最大限の速さで)停止させる必要がある。
この停止を行う場合、電源を断つことが一番速やかに停止させる方法である。しかしながら、包装装置の元電源を断った場合は、包装中の物品を破損させる可能性が高い為、今作動(駆動)させている機構部のみの電源を断ち、作動を停止させた後、停止させた機構部を制動維持させる必要がある。
前記機構部の電源を断った後、その機構部の制動を維持させる必要性は、現在行われている包装を、停止解除後にスムーズに再開させるためであると共に、例えば、フィルム搬送途中である場合、緊急停止した搬送中のフィルムを無駄にすることなく利用できるようにする目的もある。
【0031】
図6に示した本発明の制御装置によれば、包装作業中に非常停止スイッチの停止開閉器47が押されると、ステッピングモータ24を駆動させる制御回路45への電源が断たれると同時にブレーキ制御スイッチ48がONになる。ブレーキ制御スイッチ48がONになると、制動回路46はステッピングモータ24を2相励磁に誘起し、制動状態を維持させる。即ち、ステッピングモータ24の巻き線に、ブレーキ制御スイッチ48及び制動回路46により一定の電流が与えられることで、ロータはステータと引き合って、ロータはガッチリと最大トルクで停止し制動状態に維持される。
尚、仮に制御回路45のパルス制御が続行されている場合は、そのパルス制御(パルス信号)による出力(ステータの巻き線に励磁電流を流し順次切換える制御)を遮断した後、前記の制動制御、ステッピングモータ24を2相励磁に誘起し、制動維持が行われる。
【0032】
ステッピングモータ24の制動維持が行われた後、作業者により非常停止スイッチの停止開閉器47が解除されると、前記ブレーキ制御スイッチ48はONからOFFになる。
ブレーキ制御スイッチ48がOFFになると、制動回路46からステッピングモータ24に与えられた電流の供給が停止されるため、2相励磁も解除され、ステッピングモータ24の制動維持は中止される。そして、制御回路45のパルス制御が再開され、ステッピングモータ24は駆動を再開する。
【0033】
前記ステッピングモータ24の制動維持は、作業者による非常停止スイッチの停止開閉器47の操作に限らず、制御回路のパルス信号の出力(パルス信号の回数と周期)を監視し、前記パルス信号の出力が不規則な状態になった場合、前記制動回路46が、制御回路45に異常が発生したと判定して、制御回路45からステッピングモータ24への出力を遮断すると同時に制動回路46がステッピングモータ24に一定の電流を与え、ステッピングモータ24を2相励磁に誘起し、最大の静止トルクで制動状態を維持させる。
【0034】
即ち、本発明は制御回路45のパルス信号によって、決められたステップ単位で前記ステッピングモータ24を回転させる。従って、制動回路46が制御回路45の「パルス信号の回数」と「周期」を監視し、比較判定することで、正常であるか否かを判定することが可能となる。
ステッピングモータ24の回転角度と回転速度は、制御回路45のパルス信号の回数と周期によって決まり、下記に示した式で制御される。

回転角度=ステップ角(度)×パルス数
回転速度[rpm]=(ステップ角(度)/360)×パルス速度[Hz]×60[s]

例えば、ステッピングモータが一般的なユニポーラ型(単極性)ステッピングモータである場合、ステータの巻き線に電流を流して磁力を発生させ、ロータを引き付けて回転させる方式で、該ステッピングモータ24が1ステップで1.8度回転するとした場合、200パルスで1回転(360度)することになる。
そして、制御回路45で刻々と出力される「パルス信号の回数」と「周期」が規則的でない場合、制動回路46は、前記制御回路45に異常が発生したと判定することができる。また、出力ラインの値の変化(周期)により判断するようにしてもよい。
従って、制御回路45の出力を周期的に記憶し判定する必要があるが、CPU30から信号をもらうか、或いは直接制御回路45からの出力を制動回路46が受けて該制動回路46が判定してもよい。
【0035】
本発明の包装装置は、フィルム移送機構部、フィルム折り込み機構部等の各機構部を連動駆動する駆動装置としてステッピングモータを用い、そのステッピングモータの駆動/停止を制御する制御回路とは別に、該駆動装置を停止状態に制動維持する制動回路を設け、前記制御回路への電源供給が断たれた時、前記制動回路によって駆動装置を静止状態に励磁して制動状態を維持し、前記制御回路が駆動装置を駆動させるパルス制御が行われると、前記駆動装置の制動維持が中止されるようにしたので、包装装置の全ての電源供給を断つことなく、前記制御回路への電源供給を断つことにより、停止させたい駆動装置を速やかにそして確実に停止させることができ、且つその駆動装置を制動維持することができるので、作業者の安全を確実にそして素早く確保することができる。そして、駆動装置を制動維持する為の電磁ブレーキ等の装置を設ける必要がないため、メカ設計及び制御を簡素化でき、製品のコストダウンを図ることができる。
【0036】
本発明は図示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、繰出しローラの駆動例を用いて説明したがこれに限らず、ステッピングモータを駆動源として稼動するものであれば何れの機構部であってもよく、例えば、被包装物を搬入する搬入機構部、フィルム折り込み機構部等、何れでもよい。
(2)ステッピングモータの励磁方式は一般的に知られている1相励磁方式、2相励磁方式、1−2相励磁方式の何れでもよいが、2相励磁は1相励磁に比べて大きなトルクが得られ、しっかりと制動維持することができるため特に有効である。
(3)実施の形態では、非常停止スイッチが押された時に、制御回路の電源供給を断つと共に制動回路により駆動装置を停止させ制動維持をさせているがこれに限らず、センサ(フォトセンサ等)を用いて、駆動装置を停止させ制動維持させるようにしても良い。この場合、例えば、作業者が触れると危険な箇所等の手前側に前記センサを設け、このセンサがONになった時に前記制御回路の電源供給を断つと共に前記制動回路が駆動装置を停止させ制動維持させるようにしても良い。この場合の停止解除は、例えば、包装装置のコンソールの表示画面上に解除ボタンを表示させ、前記表示画面上の解除ボタンが押されると、前記センサがOFFである事を確認した後、前記制動回路による駆動装置の制動維持を中止し、前記制御回路へ電源の供給を行ない駆動装置を駆動させるようにする。
(4)実施の形態では、制御回路及び制動回路を、駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部、フィルム折り込み機構部等により、包装部に張設したフィルムに下側から被包装物を突き上げて該被包装物の上面を前記フィルムで覆った後、フィルムの端部を前記被包装物の底部側に折り込んで包装を完了させる装置に用いているがこれに限らず、例えば、駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部が移送するフィルムを下地シートに載置された被包装物の上面に覆った後、上方より被包装物の四方をヒートプレートにより押圧し、被包装物の四方のフィルムと下地とを熱溶着させて被包装物を封入するヒートシール包装装置に用いても良い。
【符号の説明】
【0037】
24…ステッピングモータ(駆動装置) 45…制御回路
46…制動回路 47…停止開閉器(非常停止スイッチ)
48…ブレーキ制御スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置と連動して作動するフィルム移送機構部等により、搬送されるフィルムを包装部に移送し、該移送されたフィルムにより被包装物の包装を完了させ、前記包装の停止と、停止の解除とを行う非常停止スイッチを備えた包装装置において
前記駆動装置としてステッピングモータを用い、その駆動装置を駆動させるパルス制御と、前記非常停止スイッチが操作されると電源の供給が断たれる制御回路と、前記駆動装置を制動維持させる制動回路とを設け、前記制動回路は、前記制御回路への電源が断たれると前記駆動装置を静止状態に励磁して制動状態を維持し、前記制御回路が前記駆動装置を駆動させるパルス制御が行われると、前記駆動装置の制動維持を中止することを特徴とする包装装置。
【請求項2】
前記制動回路は、前記制御回路が行う前記駆動装置への制御が、所定のパルス信号の回数或いは周期を逸脱した時該制御回路の制御を中止し、当該駆動装置を静止状態に励磁し、制動状態を維持することを特徴とする請求項1記載の包装装置。
【請求項3】
前記非常停止スイッチは、前記被包装物の包装停止の操作により前記制御回路への電源を断ち、前記停止解除操作により、前記制御回路への電源供給を開始することを特徴とする請求項1記載の包装装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−230811(P2011−230811A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104573(P2010−104573)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】