説明

化合物および放射性医薬品の製造方法

本発明は、ポジトロン放出断層撮影(PET)に用いられるF−18標識放射性トレーサーを製造するための新規ペルフッ素化前駆物質、ならびに該前駆物質を用いた放射性標識化方法および精製方法に関する。また、本発明は、これらの前駆物質および方法を用いた放射性医薬キットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロン放出断層撮影(Positron Emission Tomography,PET)に用いられるF−18標識放射性トレーサーを製造するための新規ペルフッ素化前駆物質、ならびに該前駆物質を用いた放射性標識化方法および精製方法に関する。また、本発明は、これらの前駆物質および方法を用いた放射性医薬キットを含む。
【背景技術】
【0002】
F−18は、半減期が110分と望ましく、β+エネルギーが低い(635keV)ので、現在、ポジトロン放出断層撮影に用いられる最も重要なアイソトープである(Wust, F. (2005) Amino Acids, 29, 323-339.)。しかしながら、半減期が比較的短いため、F−18標識化合物の迅速な合成方法および精製方法が必要となる。
【0003】
[F−18]フッ化物源を用いた求核置換反応では、通常、放射性標識化剤の使用量と比較して過剰量の非放射性有機前駆物質(R−L)が用いられる。過剰の前駆物質(R−L)は、その後、放射性標識化合物(R−18F)が患者に診断適用され得る前に、反応混合物から除去されなければならない。なぜなら、R−Lは、R−18Fのその標的に対する結合と競合して、R−18Fのその標的に対する結合を妨害するからである。この競合が生じると、この効果によって、放射性医薬品の不十分な性能特性がもたらされる可能性がある。これは、特に、受容体結合性(すなわち、特異的ターゲッティング)放射性医薬品の場合にあてはまる。
【0004】
【化1】

【0005】
R−18FからのR−Lの精製は、一般的に、クロマトグラフィー、例えばHPLCによる精製処理によって行われる。しかしながら、この方法では、特殊な装置が必要であるとともに、操作が煩雑で時間がかかる場合がある。臨床上有用な大部分のラジオアイソトープの半減期を考慮すると、患者に対して投与する前に、できるだけ迅速に放射性合成および精製を完了させることが望ましい。
【0006】
確実かつ信頼性のある一定の方法によってF−18標識放射性医薬品を製造するために、最終医薬品R−18Fから望まない分子種を迅速かつ効率的に分離する精製方法が、当技術分野において求められている。
【0007】
ポジトロン放出断層撮影の放射性トレーサーとして好適に用いられる18F−放射性標識トレーサーの製造のための固相法は、例えば、WO 2003/002157に開示されている。
【0008】
固相によって支持された求核置換法は、実質的に精製工程を単純化し得るが、不均一な反応条件が通常効率的ではなく、溶液中で、すなわち、固相に支持されることなく実施された反応と比較して、放射化学的収率が低く、反応時間が遅いという本来的な欠点がある。そこで、均一条件下で置換反応を実施するために、効率的な精製ストラテジーをもつ幾つかの放射性標識化法が開発されている。
【0009】
WO 2005/107819 は、固相支持体に結合したスカベンジャー基(スカベンジャー樹脂)を用いた、基質ベクター−X−YにおけるYのR*による置換反応によって生じた放射性標識トレーサーベクター−X−R*の精製に関する。スカベンジャー樹脂Z−樹脂が、未反応の基質ベクター−X−Yに対する同様の置換反応に供されると、Yが置換されてベクター−X−Z−樹脂が生成し、それは、生成物であるベクター−XーR*(溶液中に残存する)からろ別され得る。こうして、精製処理によって、未反応の前駆物質から生成物が分離される。また、スカベンジャー樹脂は、反応基の部分Yを置換するようにのみ設計されている。すなわち、この方法は、未反応の前駆物質の除去に制限され、生成物から脱離基Yを同時に除去することができない。さらに、WO 2005/107819 に記載されたスカベンジャー樹脂の反応性部分Zは、Yに対する良好な置換剤となる基のみに限定される。
【0010】
USSN 61/044,550 は、求核置換反応のための精製ストラテジーを開示し、そこでは、脱離基が付加的な精製部分を有し、精製部分を含まない分子種(例えば、置換された生成物)から精製部分を含む分子種(例えば、未反応の前駆物質)を効率的に分離することを可能とする。
【0011】
有機化学において、ペルフッ素化部分は、容易な精製処理を可能とする試薬および触媒において用いられている。化合物ライブラリーの合成のためのコンビナトリアル・ケミストリーにおいて、様々な長さのペルフルオロタグが利用される。様々な適用について、J. A. Gladysz, D. P. Curran, I. T. Horvath (eds), Handbook of fluorous chemistry. Wiley-VHC,Weinheim に要約されている。
【0012】
Donavan 等. (J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 3536-3537) は、フッ素に富んだ可溶性支持体を利用した、求電子的放射性ヨード置換のための、「ホモジニアス」な可溶性支持体処理を開示し、該支持体において、脱離基はペルフッ素化部分に結合している。放射性ヨード化生成物は、その他のペルフッ素化分子種よりも強力なアフィニティーをもつペルフッ素化部分に基づいて、未反応の基質および脱離基の両方から単離される。フルオラス(fluorous)による精製に利用されるこのホモジニアスな置換処理は、求電子的放射性ヨード化に有効であることが示されているが、F−18/F−19交換の可能性があるため、一般的には、求核[F−18]フッ素化に有用であるとは認められない。F−18に対するF−19での交換によって、F−18放射性標識化反応において、生成物R−18Fの比放射能の低下および放射化学的収率の低下がもたらされることは周知である。F−18/F−19交換は、ペルフッ素化物質(例えば、テフロン)をF−18放射性トレーサーの製造方法に組み込もうとする際に特に困難な問題となることが知られている(例えば、J. Romer 等. Appl. rad. Isot. 55 (2001) 631-639.)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明によって解決されるべき技術的課題は、脱離基および残存する遊離体を生成物から容易かつ迅速に分離することができる、求核放射性フッ素化のためのホモジニアスな可溶性支持体処理を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、本発明者は、従来技術の知見に反して、F−18標識放射性医薬品の合成にペルフッ素化脱離基を使用することにより、ポジトロン放出断層撮影の造影剤としての使用が許容可能である放射化学的収率および比放射能で、放射性トレーサーを得ることができることを見出した。
【0015】
ある態様において、本発明は、式I:
R−L−M (I)
[式中、
Rはターゲッティング基質であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは、6〜30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基であり、
1個または2個以上のMが、Lに結合していてもよい。]
の化合物に関する。
【0016】
本発明のある態様において、Rは、これらに限定されるわけではないが、薬学的に活性な合成化合物(薬物)、代謝産物、シグナリング分子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバースアゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、単糖、二糖、三糖または多糖、およびステロイドからなる群より選択され得る。
【0017】
R−L−Mは、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(2-スルファモイル-ベンゾチアゾール-6-イルオキシ)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(4-スルファモイル-フェニル)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 4-スルファモイル-ベンジルエステル、ペルフルオロ-アルキル-1-スルホン酸 1,2-ビス-(アリール)-2-(ペルフルオロアルキル-1-スルホニルオキシ)-ビニルエステル、ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-シクロペンタ[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロン、3a,4,4a,7,8,8a-ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-4,8-エテノベンゾール[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロンではない。
【0018】
好ましい実施形態において、Rは、受容体、酵素もしくはインテグリンに特異的に結合するか、または、哺乳動物の体内の病理部位で優先的に発現されるトランスポーターによって特異的に輸送される、ここで、好ましくは、前記受容体、酵素もしくはインテグリンまたはトランスポーターは、前記哺乳動物の体内の病理部位で排他的に発現される。
【0019】
好ましい実施形態において、Rは、感染、炎症、癌、血小板凝集、血管形成、壊死、虚血もしくは組織低酸素、新生血管(angiogenic vessels)、アルツハイマー病プラーク、アテローム性動脈硬化プラーク、膵島細胞、血栓、セロトニントランスポーター、ニューロエピネフリントランスポーター、LAT1 トランスポーター、アポトーシスを起こした細胞、マクロファージ、好中球、EDB フィブロネクチン、受容体チロシンキナーゼ、または心臓交感神経ニューロンの部位に特異的に結合する。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、Rの具体例としては、これらに限定されるわけではないが、薬学的に活性な化合物(薬物)、ペプチド、代謝産物、シグナリング分子、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバースアゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、ステロイド、ホルモン、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンニトール、スクロース、スタキオース、ソルボース、およびそれらの誘導体、グルタミン、グルタメート、チロシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、アセテート、コリン、チミジン、フォレート、メトトレキサート、Arg-Gly-Asp ペプチド、走化性ペプチド、アルファメラノトロピンペプチド、ソマトスタチン、ボンベシン、ヒトプロインスリン結合ペプチド、およびそれらのアナログ、GPIIb/IIIa-結合性化合物、PF4-結合性化合物、αvβ3、αvβ6もしくはα4β1 インテグリン結合性化合物、ソマトスタチン受容体結合性化合物、GLP-1 受容体結合性化合物、シグマ 2 受容体結合性化合物、シグマ 1 受容体結合性化合物、末梢ベンゾジアゼピン受容体結合性化合物、上皮成長因子受容体結合性化合物、PSMA 結合性化合物、エストロゲン受容体結合性化合物、アンドロゲン受容体結合性化合物、セロトニントランスポーター結合性化合物、ニューロエピネフリントランスポーター結合性化合物、ドーパミントランスポーター結合性化合物、LAT1 トランスポーター結合性化合物、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0021】
当業者に明らかであるように、放射性標識化処理中にR−L−Mの官能基を保護する必要があるかもしれない。そのような保護基は、保護基に関する標準的化学に従って導入することができる(T. W. Greene, P. G. M. Wuts, Protection Groups in Organic Chemistry, published be John Wiley & Sons Inc.)。
【0022】
好ましい実施形態において、L−Mは、
a.Rのアルキル基炭素原子に結合したO−SO2−M、
b.Rのアリール基炭素原子に結合した+I−アリール−M、
c.Rのアリール基炭素原子に結合した+NA12
[式中、A1およびA2は、
a.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル、
b.M、
c.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−M
を含む群より選択される。]
を含む群より選択される。
【0023】
好ましい実施形態において、Mは、
a.T、
b.アリール−T、
c.O−T、
d.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−T、
e.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルコキシ−T、
f.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルケニル−T、
g.(CF2)p−O−T、
h.(CF2)p−O−分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−T、
i.(CF2)p−アリール−T、
j.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−アリール−T、
k.アリール−分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−T、
l.アリール−分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルコキシ−T、
m.アリール−分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルケニル−T
[式中、
pは1−2であり、
Tは、
a.分岐状または非分岐状の(C3−C10)ペルフルオロアルキル、
b.((CF2)t−O)m−(CF2)p−F
を含む群より選択され、
tは1−4であり、mは2−10である。]
を含む群より選択される。
【0024】
「アルキル」という用語は、炭素および水素のみからなる直鎖状または分岐鎖状の一価または二価の基であって、不飽和を含まず、メチル(C1)、エチル(C2)、n−プロピル(C3)、1−メチルエチル((C3)イソ−プロピル)、n−ブチル(C4)、n−ペンチル(C5)等のように特定の個数の炭素を有する基を意味する。「アルケニル」および「アルキニル」も同様に定義されるが、それぞれ、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合および少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む。
【0025】
「アルコキシ」という用語は、炭素および水素のみからなる直鎖状または分岐鎖状の一価または二価の基であって、不飽和を含まず、メチル(C1)、エチル(C2)、n−プロピル(C3)、1−メチルエチル((C3)イソ−プロピル)、n−ブチル(C4)、n−ペンチル(C5)等のように特定の個数の炭素を有する基と、対応部分への結合として機能する酸素原子とを意味する。
【0026】
明細書中で用いられる「アリール」という用語は、単独で、または別の基の部分として、環部分に6−12個、好ましくは6−10個の炭素を含む、単環式または二環式の芳香族基またはヘテロ芳香族基、例えば、フェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチルを意味するか、あるいは、5−14個の環原子を有し;環状アレイにおいて6、10または14個のΠ電子を共有し;さらに、炭素原子と1、2、3または4個の酸素、窒素または硫黄ヘテロ原子とを含む基を意味する。ヘテロアリール基の具体例としては、チエニル(thienyl)、ベンゾ[b]チエニル(benzo[b]thienyl)、ナフト[2,3-b]チエニル(naphtho[2,3-b]thienyl)、チアントレニル(thianthrenyl)、フリル(furyl)、ピラニル(pyranyl)、イソベンゾフラニル(isobenzofuranyl)、ベンゾオキサゾリル(benzoxazolyl)、クロメニル(chromenyl)、キサンテニル(xanthenyl)、フェノキシチイニル(phenoxythiinyl)、2H-ピロリル(2H-pyrrolyl)、ピロリル(pyrrolyl)、イミダゾリル(imidazolyl)、ピラゾリル(pyrazolyl)、ピリジル(pyridyl)、ピラジニル(pyrazinyl)、ピリミジニル(pyrimidinyl)、ピリダジニル(pyridazinyl)、インドリジニル(indolizinyl)、イソインドリル(isoindolyl)、3H-インドリル(3H-indolyl)、インドリル(indolyl)、インダゾリル(indazolyl)、プリニル(purinyl)、4H-キノリジニル(4H-quinolizinyl)、イソキノリル(isoquinolyl)、キノリル(quinolyl)、フタラジニル(phthalazinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、キナゾリニル(quinazolinyl)、シンノリニル(cinnolinyl)、プテリジニル(pteridinyl)、4aH-カルバゾリル(4aH-carbazolyl)、カルバゾリル(carbazolyl)、カルボリニル(carbolinyl)、フェナントリジニル(phenanthridinyl)、アクリジニル(acridinyl)、ペリミジニル(perimidinyl)、フェナントロリニル(phenanthrolinyl)、フェナジニル(phenazinyl)、イソチアゾリル(isothiazolyl)、フェノチアジニル(phenothiazinyl)、イソキサゾリル(isoxazolyl)、フラザニル(furazanyl)およびフェノキサジニル(phenoxazinyl)が挙げられる。
【0027】
アリール基は、さらに、シアノ、トリフルオロメチル、クロロ、フルオロ、ケト- またはエステル官能基等の置換基を含んでいてもよい。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、式Iの化合物は、
【化2】

を含む群より選択される。
【0029】
本発明の第2の態様では、式IIの化合物が、放射性フッ素化化合物の製造方法で用いるために提供される。さらに、式IIの化合物または式Iの化合物を用いた放射性フッ素化化合物Q−18Fの製造方法が提供される。
【0030】
式II:
Q−L−M (II)
[式中、
Qは有機部分であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6−30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基であり、
1個または2個以上のMがLに結合していてもよい。]
LおよびMは、上記と同義である。
【0031】
好ましい実施形態において、Qは、
a)上記と同義であるR、
b)Q−18Fの間接フッ素化剤としての使用を可能とする部分
を含む群より選択される。
【0032】
さらに好ましい実施形態において、Q−18Fは、
a)18F−(C1−C6)アルキル−Y、
b)4−[F−18]フルオロベンズアルデヒド、
c)4−[F−18]フルオロ安息香酸およびそのエステル
[式中、Yは、
a)ハロゲン、
b)スルホネート(例えば、メシラート(mesylate)、トシラート(tosylate)、トリフラート(triflate)、ノナフラート(nonaflate))
を含む群より選択される。]
を含む群より選択される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、式IIの化合物が、求核置換による診断用造影剤の製造方法で用いるために提供される。
【0034】
上記製造方法は、スキーム1に示す精製工程を含むことができる。
【化3】

【0035】
上記方法は、式IIの化合物を[F−18]フッ化物と反応させる求核置換工程を含み、必要に応じて、その後、放射性標識化合物Q−18Fを、薬学的に許容し得る塩、水和物または溶媒和物に変換させることができる。さらに、Q−18Fを、必要に応じて、Q'−18Fにさらに変換させることができる。F−18の半減期は短いので(110分)、放射性フッ素化化合物は、臨床で用いる日に調製する必要がある。そのような事情から、反応工程は、時間が短くなるように最適化され、収率は二次的考察事項となる。このような放射性フッ素化で用い得る試薬、溶媒および条件は、当業者に周知である(例えば、J. Fluorine Chem. 27 (1985) 117-191を参照)。例えば、[F−18]フッ化物および塩基を用いたF−18標識化処理が十分に確立されている。好適な塩基としては、例えば、炭酸カリウムまたはテトラアルキルアンモニウムカルボネートが挙げられる。クリプトフィックスTM (4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.8]-ヘキサコサン)またはクラウンエーテル等の錯化剤(complexing agent)を反応に用いることができる。好ましい温度は、室温から180℃の範囲から選択される。当業者に知られているように、放射性フッ素化反応は、例えば典型的な反応容器(例えば、Wheatonバイアル)またはマイクロリアクター中で実施することができる。反応における加熱は、典型的な方法、例えば、油浴、加熱ブロックまたはマイクロ波によって行うことができる。いわゆるホットセルを用いた手作業および/またはモジュール合成を用いた自動化法によって反応を行うこともできる(総説: Krasikowa, Synthesis Modules and Automation in F-18 labeling (2006), in: Schubiger P.A., Friebe M., Lehmann L., (eds), PET-Chemistry - The Driving Force in Molecular Imaging. Springer, Berlin Heidelberg, pp. 289-316)。
【0036】
上記方法の第2の工程は、Mを含まない分子種からMを含む分子種を容易に分離することを可能とするペルフッ素化部分Mを用いた精製を含む。以下、様々な分離様式をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではない。
【0037】
精製様式A:固相精製
ペルフッ素化分子で官能化された樹脂もしくは固体S、またはそのような材料からなるカートリッジもしくはカラムを用いた固相抽出によって、Mを含む分子種を、Mを含まない分子種から分離することができる。この精製様式において、Mを含む分子種はSに対して優先的に結合する。
好ましい実施形態において、Sは、ペルフッ素化逆相シリカゲルを含む。
【0038】
精製様式B:液相抽出
ペルフッ素化溶媒を用いた液相抽出によって、Mを含む分子種を、Mを含まない分子種から分離することができる。この精製様式において、Mを含む分子種は、ペルフッ素化溶媒相へ優先的に分配される。
【0039】
精製様式C:蒸留
Mを含まない分子種を反応混合物から蒸留させることによって、またはMを含む分子種を反応混合物から蒸留させることによって、Mを含む分子種を、Mを含まない分子種から分離することができる。
【0040】
必要に応じて、放射性標識の後、当技術分野の標準的な方法によって保護基を除去してもよい(T. W. Greene, P. G. M. Wuts, Protection Groups in Organic Chemistry, published be John Wiley & Sons Inc.)。
【0041】
保護基の除去は、分離/精製工程(Mを含む分子種からのMを含まない分子種の分離/精製工程)の前にまたは後に行うことができる。
【0042】
本発明の第3の態様では、式Iの化合物を含む放射性医薬キットが提供される。
本発明は、フッ素−18標識化合物Q−18Fを調製する方法であって、
式II:Q−L−M
[式中、
Qは有機部分であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6−30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基である。]
の化合物の求核フッ素化を含む方法に関する。
【0043】
この方法は、好ましい実施形態において、精製工程を含む。別の実施形態において、この精製工程は、残存する遊離体(educt)および脱離基を除去する。
【0044】
さらに別の実施形態において、上記精製工程はペルフッ素化部分Mの特性を利用する。
好ましい態様において、ペルフッ素化固相または液相は、上記精製工程のために用いられる。
【0045】
本発明は、フッ素−18標識化合物R−18Fを製造する方法であって、式IIの化合物の、[F−18]フッ化物イオン源によるフッ素化を含む方法に関する。
【0046】
この方法の好ましい実施形態において、上記フッ化物イオン源は、
a.フッ化カリウム
b.フッ化セシウム
c.テトラアルキルアンモニウムフルオリド
を含む群より選択され得る。
【0047】
別の態様において、上記フッ素化工程において、クリプトフィックスTMが用いられる。
さらに別の態様において、上記フッ素化反応は、均一溶液中で実施される。
所望により、放射性標識化合物Q−18Fを最終産物Q'−18Fにさらに変換してもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、上記方法は、精製工程を含む。
別の好ましい実施形態において、上記精製工程は固相抽出である。
さらに好ましい実施形態において、上記精製工程はペルフッ素化固定相を用いた固相抽出である。
【0049】
また、上記精製工程は液相抽出であってもよい。
さらに好ましい実施形態において、上記精製工程はペルフッ素化溶媒を用いた液相抽出である。
【0050】
本発明はまた、放射性標識化合物Q−18FをQ−18Fの精製後に最終産物Q'−18Fにさらに変換させる、放射性標識化合物の製造方法にも関する。
【0051】
さらに、別の態様において、本発明は、本発明の求核置換および/または精製を実施するためのキットに関する。ある実施形態において、本発明のキットは、少なくとも、それぞれO−LまたはQに結合した精製分子Mまたは分子L−Mを含む。別の実施形態において、本発明のキットは、少なくとも、Q−Lおよび精製分子Mを含む。さらに別の実施形態において、本発明のキットは、少なくとも分子Q−L−Mを含む。必要に応じて、本発明のキットは、製品取扱説明書、精製工程および/または所望の反応を実施するための1種または2種以上の化合物または樹脂、あるいは精製溶媒等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】HPLCにおける活性を示す図である。
【図2】HPLCにおける活性を示す図である。
【図3】HPLCにおける活性を示す図である。
【図4】HPLCにおける活性を示す図である。
【図5】HPLCにおける活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
特に、本発明は以下の発明を含む。
1.式I:
R−L−M(X) (I)
[式中、
Rはターゲッティング基質であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6〜30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基であり、
Xは1以上の値であり、さらに好ましくは、Xは1、2、3または4の値であってもよく、
R−L−Mは、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(2-スルファモイル-ベンゾチアゾール-6-イルオキシ)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(4-スルファモイル-フェニル)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 4-スルファモイル-ベンジルエステル、ペルフルオロ-アルキル-1-スルホン酸 1,2-ビス-(アリール)-2-(ペルフルオロアルキル-1-スルホニルオキシ)-ビニルエステル、ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-シクロペンタ[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロン、3a,4,4a,7,8,8a-ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-4,8-エテノベンゾール[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロンではない。]
の化合物。
【0054】
2.2個以上のMがLに結合している、式Iの化合物。
【0055】
3.Rが、哺乳動物の体内の標的部位に特異的に結合するターゲッティング部分である、上記1又は2の化合物。
【0056】
4.Rが、合成小分子、薬学的に活性な化合物(薬物)、代謝産物、シグナリング分子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバースアゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、単糖、二糖、三糖もしくは多糖、およびステロイドからなる群より選択される、上記1−3の化合物。
【0057】
5.Rが、受容体、酵素もしくはインテグリンに特異的に結合するか、または、哺乳動物の体内の病理部位で優先的に発現されるトランスポーターによって特異的に輸送される、ここで、好ましくは、上記受容体、酵素もしくはインテグリンまたはトランスポーターは、上記哺乳動物の体内の病理部位で排他的に発現される、上記1−4の化合物。
【0058】
6.Rが、感染、炎症、癌、血小板凝集、血管形成、壊死、虚血もしくは組織低酸素、新生血管(angiogenic vessels)、アルツハイマー病プラーク、アテローム性動脈硬化プラーク、膵島細胞、血栓、セロトニントランスポーター、ニューロエピネフリントランスポーター、LAT1 トランスポーター、アポトーシスを起こした細胞、マクロファージ、好中球、EDB フィブロネクチン、受容体チロシンキナーゼ、または心臓交感神経ニューロンの部位に特異的に結合する、上記1−5の化合物。
【0059】
7.Rが、合成小分子、薬学的に活性な化合物(薬物)、ペプチド、代謝産物、シグナリング分子、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバースアゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、ステロイド、ホルモン、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンニトール、スクロース、スタキオース、ソルボース、およびそれらの誘導体、グルタミン、グルタメート、チロシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、アセテート、コリン、チミジン、フォレート、メトトレキサート、Arg-Gly-Asp ペプチド、走化性ペプチド、アルファメラノトロピンペプチド、ソマトスタチン、ボンベシン、ヒトプロインスリン結合ペプチド、およびそれらのアナログ、GPIIb/IIIa-結合性化合物、PF4-結合性化合物、αvβ3、αvβ6もしくはα4β1 インテグリン結合性化合物、ソマトスタチン受容体結合性化合物、GLP-1 受容体結合性化合物、シグマ 2 受容体結合性化合物、シグマ 1 受容体結合性化合物、末梢ベンゾジアゼピン受容体結合性化合物、上皮成長因子受容体結合性化合物、PSMA 結合性化合物、エストロゲン受容体結合性化合物、アンドロゲン受容体結合性化合物、セロトニントランスポーター結合性化合物、ニューロエピネフリントランスポーター結合性化合物、ドーパミントランスポーター結合性化合物、LAT1 トランスポーター結合性化合物、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、上記1−6の化合物。
【0060】
8.LがO−SO2であって、LがRのアルキル基炭素原子に結合している、上記1−7の化合物。
【0061】
9.LがI+Arであって、LがRの芳香族炭素原子に結合しており、Arが芳香族部分またはヘテロ芳香族部分である、上記1−7の化合物。
【0062】
10.Arが、
a.(置換化)フェニル、
b.(置換化)チオフェン
を含む群より選択される、上記9の化合物。
【0063】
11.LがN+12であって、LがRの芳香族炭素原子に結合しており、
1およびA2が、
a.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル、
b.M、
c.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−M
を含む群より選択される、上記1−7の化合物。
【0064】
12.A1がメチルであって、A2がMである、上記11の化合物。
【0065】
13.Mが、
a.T
b.Ar−T
c.O−T
d.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−T
e.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルコキシ−T
f.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルケニル−T
g.(CF2)p−O−T
h.(CF2)p−Ar−T
i.分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−Ar−T
を含む群より選択され、
nが1−2であり、
Tが、
a.分岐状または非分岐状の(C3−C10)ペルフルオロアルキル
b.((CF2)t−O)m−(CF2)p−F
を含む群より選択され、
tが1−4であり、
mが3−10であり、
pが1−2である、上記1−11の化合物。
【0066】
14.フッ素−18標識化合物R−18Fを調製する方法であって、式Iの化合物の[F−18]フッ化物イオン源によるフッ素化を含む方法。
【0067】
15.上記フッ化物イオン源が、
d.フッ化カリウム
e.フッ化セシウム
f.テトラアルキルアンモニウムフルオリド
を含む群より選択される、上記14の方法。
【0068】
16.クリプトフィックスTMを用いる、上記14または15の方法。
【0069】
17.上記フッ素化反応が均一溶液中で実施される、上記14−16の方法。
【0070】
18.上記放射性標識化合物R−18Fを最終産物R'−18Fにさらに変換させる、上記14−17の方法。
【0071】
19.精製工程を含む、上記14−18の方法。
【0072】
20.上記精製工程が固相抽出である、上記19の方法。
【0073】
21.上記精製工程がペルフッ素化固定相を用いた固相抽出である、上記19または20の方法。
【0074】
22.上記精製工程が液相抽出である、上記19の方法。
【0075】
23.上記精製工程がペルフッ素化溶媒を用いた液相抽出である、上記21の方法。
【0076】
24.上記放射性標識化合物R−18FをR−18Fの精製後に最終産物R'−18Fにさらに変換させる、上記14−23の方法。
【0077】
25.上記14−24のいずれか1つの方法を実施するためのキットであって、上記1−13の式Iの化合物を含むキット。
【0078】
26.上記14−24のいずれか1つの方法を実施するためのキットであって、Mを含まない分子種からMを含む分子種を分離するための固相精製用ペルフッ素化物質を含むキット。
【0079】
27.上記14−24のいずれか1つの方法を実施するためのキットであって、Mを含まない分子種からMを含む分子種を分離するためのペルフッ素化液体抽出相を含むキット。
【0080】
28.フッ素−18標識化合物Q−18Fを調製する方法であって、
式II:Q−L−M
[式中、
Qは有機部分であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6−30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基である。]
の化合物の求核フッ素化を含む方法。
【0081】
29.精製工程を含む、上記28の方法。
【0082】
30.上記精製工程においてペルフッ素化部分Mの特性を利用する、上記29の方法。
【0083】
31.ペルフッ素化固相または液相が上記精製工程で用いられる、上記30の方法。
【実施例】
【0084】
実施例1
3-トリデカフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステルの合成
トリエチルアミン (0.33 mL) および DMAP (20 mg) を 2-フェノキシ-エタノール (66 mg, 1 eg) および 3-トリデカフルオロヘキシル-ベンゼンスルホニルクロリド (261 mg, 1.1 eg) のジクロロメタン (5 mL) 溶液に加えた。反応混合物を室温で 16 時間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、5% 重炭酸ナトリウム溶液で注意深く中和した。相を分離し、有機層を水および食塩水で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカゲル, ヘキサン/酢酸エチル = 9.5/0.5) で精製し、白色固形物として 3-トリデカフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステル 117 mg (41 %) を得た。
【0085】
実施例2
3-トリデカフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステルの放射性フッ素化, 2-[F-18]フルオロエトキシベンゼンの合成
[F-18]フッ化物を QMA カートリッジで捕捉した。活性物質を 1.5 mL クリプトフィックス (kryptofix) 溶液 (5 mg クリプトフィックス, 1 mg K2CO3, 1.25 mL アセトニトリル, 0.25 mL 水) を用いて、5 mL V-バイアルに溶出させた。溶液を、穏やかな窒素気流下、120 ℃で乾燥させた。アセトニトリル (2 x 1 mL) を加え、乾燥処理を繰り返した。 2 mL アセトニトリルを残渣に加え、アリコート 0.5 ml を採取し、3-トリデカフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステル 2 mg に加えた。混合物を室温で 15 分間攪拌した。
粗製反応混合物:
(HPLC, Chromolith SpeedROD RP-18e, MeCN/水, 0% MeCN - 95 % MeCN)
活性を図1に示す。
【0086】
反応混合物を水 (10 mL) で希釈し、ペルフルオロ 8 および C18 (tC18plus, waters) カートリッジを通過させた。カートリッジを 水 (5 mL) で洗浄し、生成物をエタノール (2 mL) で溶出させた。
図2は、HPLC における活性を示す。
図3は、HPLC による標準物質 (F-19 化合物) との共溶出を示す。
上図は活性に関し、下図はUVに関する。
【0087】
実施例3
1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル-1-スルホン酸クロリドの合成
【化4】

【0088】
PCl5 (486 mg, 2.34 mmol) を 1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル-1-スルホン酸 (33, 500 mg, 1.17 mmol) の 10 mL POCl3 懸濁液に加えた。混合物を 60 ℃で 6 時間、室温で 72 時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタンおよび氷水で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で中和した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下で溶媒を除去した。1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル-1-スルホン酸クロリド (477 mg) を黄色油状物として得、室温で結晶化させた。粗生成物をさらに精製することなく、次の反応に用いた。
【0089】
実施例4
3-ペルフルオロヘキシル-ベンゼンスルホニルクロリドの合成
【化5】

【0090】
(ペルフルオロヘキシル)ベンゼン (18.7 g) を、 0 ℃、窒素雰囲気下、クロロスルホン酸 (22 mL) に滴下して加えた。混合物を O ℃で 2.5 時間攪拌した。攪拌を室温で 18 時間継続した。反応混合物を氷水 (400 mL) に注意深く加えた。それをジエチルエーテル (3x) で抽出した。有機フラクションを合わせ、 10 % 重炭酸ナトリウム溶液および水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒をエバポレートした。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル = 97/3) で精製した。3-ペルフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 7.6 g を油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.32-8.26 (2 H), 7.99 (d, 1 H), 7.84 (t, 1 H).
【0091】
3-ペルフルオロヘキシル-ベンゼンスルホン酸 (1.05 g) を 15.4 mL POCl3 に溶解した。PCl5 (528 mg) を加え、混合物を 60 ℃で 6 時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、氷水を加えた。中和化のために、飽和重炭酸ナトリウム溶液をゆっくりと加えた。混合物をジクロロメタン (3x) で抽出した。有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒をエバポレートした。3-ペルフルオロヘキシル-ベンゼンスルホニルクロリド 863 mg を黄色油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.31-8.26 (2 H), 7.98 (d, 1 H), 7.84 (t, 1 H).
【0092】
実施例5
3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホニルクロリドの合成
【化6】

【0093】
ヨードベンゼン (3.23 g) を N2 雰囲気下で DMSO (32 mL) に溶解した。ヨードペルフルオロオクタン (4.2 mL) および銅粉 (3.0 g) を加え、懸濁液を 100 ℃で 16 時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物をろ過し (ジエチルエーテルで 2 回洗浄)、ろ液を 2M HCl で加水分解した。混合物をジエチルエーテルで抽出し、有機フラクションを合わせ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をエバポレートした。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン) で精製し、(ペルフルオロオクチル)ベンゼン 6.23 g を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 7.62-7.55 (3 H), 7.54-7.47 (d, 2 H).
【0094】
(ペルフルオロオクチル)ベンゼン (6.23 g) を、窒素雰囲気下、O ℃で、クロロスルホン酸 (5.85 mL) に滴下して加えた。混合物を 0 ℃で 2.5 時間攪拌した。室温で 18 時間攪拌を継続した。反応混合物を氷水 (400 mL) に注意深く加えた。それをジエチルエーテル (3x) で抽出した。有機フラクションを合わせ、10 % 重炭酸ナトリウム溶液および水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒をエバポレートした。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル = 98/2) で精製した。3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホン酸 2.0 g を淡黄色固形物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.31-8.26 (2 H), 7.98 (d, 1 H), 7.84 (t, 1 H).
【0095】
3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホン酸 (1.94 g) を 23.5 mL POCl3 に溶解した。PCl5 (810 mg) を加え、混合物を 60 ℃で 6 時間攪拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、氷水を加えた。中和化のために、飽和重炭酸ナトリウム溶液をゆっくりと加えた。混合物をジクロロメタン (3x) で抽出した。有機層を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、溶媒をエバポレートした。3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホニルクロリド 1.68 mg を淡黄色油状物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.31-8.26 (2 H), 7.98 (d, 1 H), 7.84 (t, 1 H).
【0096】
実施例6
4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホンスルホン酸クロリドの合成
【化7】

【0097】
1-ヨードペルフルオロオクタン (2.73 g, 5.00 mmol), モノヨードビフェニル (1.40 g, 5.00 mmol) および銅粉 (1.00 g, 15.6 mmol) の 10 mL DMSO 懸濁液を、窒素雰囲気下、100 ℃で 12 時間攪拌した。ろ過後、混合物を 2M HCl で洗浄し、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下で溶媒を除去した。粗製混合物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン) で精製した。4-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル 2.03 g を無色粉状物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 7.41 (t, J = 7.3 Hz, 1H, Ar), 7.48 (t, J = 7.3 Hz, 2H, Ar), 7.59-7.64 (m, 2H, Ar), 7.66 (d, J = 8.6 Hz, 2H, Ar), 7.72 (d, J = 8.6 Hz, 2H, Ar).
【0098】
4-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル (1.81 g, 3.17 mmol) を 45 mL クロロホルムに溶解した。クロロスルホン酸 (235 μL, 3.53 mmol) を滴下して加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒をエバポレートし、粗生成物をアセトニトリルから再結晶した。4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホン酸 1.06 g を無色固形物として得た。
【0099】
4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホン酸 (1.00 g, 1.53 mmol) の 10 mL POCl3 懸濁液に、PCl5 (364 mg, 1.75 mmol) を加えた。混合物を 60 ℃で 6 時間攪拌した。それをジクロロメタンおよび氷水で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で中和した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をエバポレートした。4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホンスルホン酸クロリド 820 mg を無色固形物として得、さらに精製することなく次の反応に用いた。
【0100】
実施例7
1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタン-1-スルホン酸 2-フェノキシエチルエステルの合成
【化8】

【0101】
4-ジメチルアミノピリジン (6.10 mg, 4.99 μmol), NEt3 (219 μl, 1.58 mmol) および 1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクチル-1-スルホン酸クロリド (470 mg, 1.05 mmol) を 2-フェノキシエタノール (132 μl, 0.525 mmol) の 5 mL ジクロロメタン溶液に 0 ℃で加えた。溶液を室温で一晩攪拌した。混合物をジクロロメタンで希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過および溶媒のエバポレーション後、粗製混合物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル = 8/2) で精製した。
1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタン-1-スルホン酸 2-フェノキシエチルエステル 365 mg を無色固形物として得た。
【0102】
実施例8
4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステルの合成
【化9】

【0103】
NEt3 (93.0 μL, 670 μmol), 4-ジメチルアミノピリジン (2.60 mg, 21.3 μmol) および 4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホンスルホン酸クロリド (300 mg) を 2-フェノキシエタノール (28.2 μL, 225 μmol) の 5 ml ジクロロメタン溶液に 0 ℃で加えた。混合物を 0 ℃で 6 時間、室温で 72 時間攪拌した。ジクロロメタンで希釈した後、溶液を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をエバポレートした。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル = 9/1) で精製した。4'-ヘプタデカフルオロオクチル-ビフェニル-4-スルホン酸 2-フェノキシ-エチルエステル 186 mg を無色固形物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.04 (d, 2 H), 7.76 (d, 2 H), 7.72 (4 H), 7.26-7.22 (2 H), 6.95 (t, 1 H), 6.77 (d, 2 H), 4.48-4.46 (2 H), 4.20-4.18 (2 H).
【0104】
実施例9
3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホン酸 2-{2-[2-(4-{(E)-2-[4-(tert-ブトキシカルボニル-メチル-アミノ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エチルエステルの合成
【化10】

【0105】
{4-[(E)-2-(4-{2-[2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エトキシ]-エトキシ}-フェニル)-ビニル]-フェニル}-メチル-カルバミン酸 tert-ブチルエステル 50 mg を 2 ml ジクロロメタンに溶解した。DMAP (2.7 mg) および Et3N (31 μl) を加え、混合物を 0 ℃まで冷却した。3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホニルクロリド (97.5 mg) の 2 mL ジクロロメタン溶液を滴下して加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル = 8:2) で精製した。3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホン酸 2-{2-[2-(4-{(E)-2-[4-(tert-ブトキシカルボニル-メチル-アミノ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エチルエステル (66 mg) を淡黄色固形物として得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.17-8.13 (2 H), 7.86 (d, 1 H), 7.72 (t, 1 H), 7.45-7.41 (4 H), 7.23-7.19 (2 H), 7.04-6.87 (4 H), 4.28-4.24 (2 H), 4.15-4.11 (2 H), 3.84-3.81 (2 H), 3.74-3.71 (2 H), 3.67-3.63 (2 H), 3.62-3.59 (2 H), 3.27 (3 H), 1.46 (9 H9.
【0106】
実施例10
2-{2-[2-(4-{(E)-2-[4-(tert-ブトキシカルボニル-メチル-アミノ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エチルエステルの放射性標識化
【化11】

【0107】
[F-18]フッ化物 (1.3 GBq) を QMA カートリッジ (SepPak light, waters) に捕捉した。活性物質を炭酸カリウム / クリプトフィックス (kryptofix) 溶液 (7.5 mg クリプトフィックス, 1.5 mg 炭酸カリウム, 1425 μL アセトニトリル, 75 μL 水) で溶出した。混合物を、穏やかな窒素気流下、140 ℃で乾燥した。2-{2-[2-(4-{(E)-2-[4-(tert-ブトキシカルボニル-メチル-アミノ)-フェニル]-ビニル}-フェノキシ)-エトキシ]-エトキシ}-エチルエステル (4 mg の 0.5 mL アセトニトリル溶液) を加え、得られた混合物を 30 ℃で 15 分間攪拌した。水を加え、混合物をペルフルオロ-C8 カートリッジ (Fluoroflash, Fluka) および C18 カートリッジ (tC18 SepPak plus, waters) を通過させた。カートリッジを水で洗浄した。エタノールを用いて、活性物質を C18 カートリッジから溶出させた (312 MBq) 。HPLC 分析 (C18) によって、過剰の前駆物質の分離が完了していること、および前駆物質の加水分解によって副生物がほとんど形成されていないことを確認した。
結果を図4に示す。
【0108】
実施例11
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[3-(3-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルオキシ)-プロピル]-グルタール酸ジ-tert-ブチルエステルの合成
【化12】

【0109】
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(3-ヒドロキシ-プロピル)-グルタール酸ジ-tert-ブチルエステル (84 mg) をジクロロメタン (2 mL) に溶解した。NEt3 (0.14 mL) および 3-ペルフルオロオクチル-ベンゼンスルホニルクロリド (119 mg) を加えた。混合物を室温で 4 時間攪拌した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー (シリカ, ヘキサン/酢酸エチル) で精製し、2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[3-(3-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルオキシ)-プロピル]-グルタール酸ジ-tert-ブチルエステル 120 mg を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ = 8.16-8.12 (2 H), 7.92-7.87 (1 H), 7.79-7.72 (1 H), 4.89-4.82 (1 H), 4.14-4.05 (3 H), 2.34-2.24 (1 H), 1.92-1.54 (6 H), 1.48-1.38 (27 H).
【0110】
実施例12
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[3-(3-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルオキシ)-プロピル]-グルタール酸ジ-tert-ブチルエステルの放射性標識化
【化13】

【0111】
[F-18]フッ化物 (459 MBq) を QMA カートリッジ (SepPak light, waters) に捕捉した。炭酸カリウム / クリプトフィックス溶液 (5 mg クリプトフィックス, 1 mg 炭酸カリウム, 950 μL アセトニトリル, 50 μL 水)を用いて、活性物質を溶出させた。混合物を、穏やかな窒素気流下、 140 ℃で乾燥した。2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-[3-(3-トリフルオロメチル-ベンゼンスルホニルオキシ)-プロピル]-グルタール酸ジ-tert-ブチルエステル (10 mg の 1 mL アセトニトリル溶液) を加え、得られた混合物を 40 ℃で 15 分間攪拌した。水を加え、混合物をペルフルオロ-C8 カートリッジ (Fluoroflash, Fluka) およびシリカカートリッジ (SepPak plus, waters) を通過させた。カートリッジを水 / アセトニトリルで洗浄した。溶液を、穏やかな窒素気流下、110 ℃で濃縮し、塩酸を加えた。混合物を 120 ℃で 10 分間加熱した。標識化生成物をカチオン交換カートリッジ (MCX, waters) で捕捉し、等張リン酸緩衝液で溶出させることにより、溶媒の交換を実施した。最終産物をプレカラム誘導体化 HPLC で分析した。非放射性副生物 (前駆物質の加水分解に由来) は得られなかった。
結果を図5に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
R−L−M(X) (I)
[式中、
Rはターゲッティング基質であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6〜30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基であり、
Xは1以上の値であり、
R−L−Mは、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(2-スルファモイル-ベンゾチアゾール-6-イルオキシ)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 2-(4-スルファモイル-フェニル)-エチルエステル、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロ-オクタン-1-スルホン酸 4-スルファモイル-ベンジルエステル、ペルフルオロ-アルキル-1-スルホン酸 1,2-ビス-(アリール)-2-(ペルフルオロアルキル-1-スルホニルオキシ)-ビニルエステル、ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-シクロペンタ[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロン、3a,4,4a,7,8,8a-ヘキサヒドロ-2,6-ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルオキシ)-4,8-エテノベンゾール[1,2-c:4,5-c']ジピロール-1,3,5,7(2H,6H)-テトロンではない。]
の化合物。
【請求項2】
Rが、合成小分子、薬学的に活性な化合物(薬物)、代謝産物、シグナリング分子、ホルモン、ペプチド、タンパク質、受容体アンタゴニスト、受容体アゴニスト、受容体インバースアゴニスト、ビタミン、必須栄養素、アミノ酸、脂肪酸、脂質、核酸、単糖、二糖、三糖もしくは多糖、ステロイド、ホルモン類、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンニトール、スクロース、スタキオース、ソルボース、およびそれらの誘導体、グルタミン、グルタメート、チロシン、ロイシン、メチオニン、トリプトファン、アセテート、コリン、チミジン、フォレート、メトトレキサート、Arg-Gly-Asp ペプチド、走化性ペプチド、アルファメラノトロピンペプチド、ソマトスタチン、ボンベシン、ヒトプロインスリン結合性ペプチド、およびそれらのアナログ、GPIIb/IIIa-結合性化合物、PF4-結合性化合物、αvβ3、αvβ6もしくはα4β1 インテグリン結合性化合物、ソマトスタチン受容体結合性化合物、GLP-1 受容体結合性化合物、シグマ 2 受容体結合性化合物、シグマ 1 受容体結合性化合物、末梢ベンゾジアゼピン受容体結合性化合物、上皮成長因子受容体結合性化合物、PSMA 結合性化合物、エストロゲン受容体結合性化合物、アンドロゲン受容体結合性化合物、セロトニントランスポーター結合性化合物、ニューロエピネフリントランスポーター結合性化合物、ドーパミントランスポーター結合性化合物、LAT1 トランスポーター結合性化合物、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Rが、受容体、酵素もしくはインテグリンに特異的に結合するか、または、哺乳動物の体内の病理部位で優先的に発現されるトランスポーターによって特異的に輸送される、ここで、好ましくは、前記受容体、酵素もしくはインテグリンまたはトランスポーターは、前記哺乳動物の体内の病理部位で排他的に発現される、あるいは、Rが、感染、炎症、癌、血小板凝集、血管形成、壊死、虚血もしくは組織低酸素、新生血管(angiogenic vessels)、アルツハイマー病プラーク、アテローム性動脈硬化プラーク、膵島細胞、血栓、セロトニントランスポーター、ニューロエピネフリントランスポーター、LAT1 トランスポーター、アポトーシスを起こした細胞、マクロファージ、好中球、EDB フィブロネクチン、受容体チロシンキナーゼ、または心臓交感神経ニューロンの部位に特異的に結合する、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
LがO−SO2であって、LがRのアルキル基炭素原子に結合している、請求項1−3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Mが、

Ar−T
O−T
分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−T
分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルコキシ−T
分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルケニル−T
(CF2)p−O−T
(CF2)p−Ar−T
分岐状または非分岐状の(C1−C6)アルキル−Ar−T
を含む群より選択され、
nが1−2であり、
Tが、
分岐状または非分岐状の(C3−C10)ペルフルオロアルキル
((CF2)t−O)m−(CF2)p−F
を含む群より選択され、
tが1−4であり、
mが3−10であり、
pが1−2である、請求項1−4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
フッ素−18標識化合物R−18Fを調製する方法であって、請求項1−5のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、[F−18]フッ化物イオン源によるフッ素化を含む前記方法。
【請求項7】
前記フッ化物イオン源が、
フッ化カリウム
フッ化セシウム
テトラアルキルアンモニウムフルオリド
を含む群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記フッ素化反応が均一溶液中で実施される、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
精製工程を含む、請求項6−8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記精製工程が固相抽出である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程がペルフッ素化固定相を用いた固相抽出である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記精製工程が液相抽出である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記精製工程がペルフッ素化溶媒を用いた液相抽出である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記放射性標識化合物R−18FをR−18Fの精製後に最終産物R'−18Fにさらに変換させる、請求項6−13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項6−14のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、請求項1−5のいずれか1項に記載の式Iの化合物を含む前記キット。
【請求項16】
式II:Q−L−M
[式中、
Qは有機部分であり、
Lは[F−18]フッ化物での置換に適した脱離基であり、
Mは6−30個のフッ素原子を有するペルフッ素化置換基である。]
の化合物の求核フッ素化を含む、フッ素−18標識化合物Q−18Fの調製方法であって、
ペルフッ素化部分Mの特性を利用した精製工程を含む前記調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−526267(P2011−526267A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515196(P2011−515196)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004537
【国際公開番号】WO2010/000409
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】