説明

化合物半導体極細線の製造方法、及び化合物半導体極細線集合体

【課題】精度よく且つ量産化に適した化合物半導体極細線の製造方法、化合物半導体極細線集合体を提供する。
【解決手段】電析法を用いて、ナノサイズの微細貫通孔を複数有するテンプレートの微細貫通孔中に、化合物半導体を充填する。あるいは微細貫通孔中に化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素を交互に層状に充填した後に第1元素と第2元素を拡散熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体ナノワイヤの製造に適した化合物半導体極細線の製造方法、及び化合物半導体極細線集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化合物半導体ナノワイヤの形成やその応用(例えば電子デバイス、光デバイス等)に関する研究が盛んになってきている。化合物半導体ナノワイヤの製法としては、化合物半導体結晶をイオンビーム照射法等により削り出して極細線化する方法が知られている。また、化合物半導体ナノワイヤの製法として、気相−液相−固相(VLS)法、有機金属気相選択成長法(いわゆるMOVPE選択成長法)が知られている。VLS法は、半導体上にランダムに形成された触媒金属を核として特定な方向に成長させる方法である。MOVPE選択成長法は、電子ビームリソグラフィーを利用して基板上に作成した非晶質マスクパターン開口部からのエピタキシャル成長を利用する方法である。いずれも気相成長により行われる。特許文献1及び非特許文献1には、気相成長法により作製された半導体ナノワイヤに関する先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236157号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本結晶成長学会誌, Vol.34, No.4, pp.224−232 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の例えば、化合物半導体結晶を削り出して極細線化する方法では、極細線化の削り出しの際に、外部応力により容易に脆性破壊してしまい、真っ直ぐなワイヤ形状を保持することが、極めて困難であった。また、真空雰囲気中で化合物半導体結晶を気相成長させる場合、その成長速度は著しく低く、薄膜形状のものに限定される。一方、水溶液中で化合物半導体結晶を電析成長させる場合も、電気抵抗が大きいため、厚膜化が困難であり、化合物半導体の極細線を量産できる方法については報告されていない。
【0006】
VLS法による化合物半導体ナノワイヤの製法では、ナノワイヤの直径サイズの制御が困難であり、触媒金属核を基板上に形成する工程が煩雑である等の課題がある。MOVPE選択成長法による化合物半導体ナノワイヤの製法では、非晶質マスクパターンを形成させるのに、電子ビームリソグラフィー等の大掛かりな装置が必要である等の課題がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑み、精度よく且つ量産化に適した化合物半導体極細線の製造方法、及び化合物半導体極細線集合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る化合物半導体極細線の製造方法は、ナノサイズの微細貫通孔を複数有するテンプレートを形成する工程と、電析法を用いて、テンプレートの微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素が合金化された状態で前記化合物半導体を充填する工程とを有する。好ましくは、化合物半導体を充填する工程の後に、熱処理工程を有する。
【0009】
本発明の化合物半導体極細線の製造方法では、電析法、例えば直流電析法を用いて、テンプレートの複数の微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素を充填する。直流電析法による場合、微細貫通孔中に第1元素と第2元素が合金化された状態で充填され、複数の化合物半導体極細線の単相が得られる。
【0010】
本発明に係る化合物半導体極細線の製造方法は、ナノサイズの微細貫通孔を複数有するテンプレートを形成する工程と、電析法を用いて、テンプレートの微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素を交互に層状に充填する工程と、第1元素と第2元素を拡散熱処理する工程とを有する。
【0011】
本発明の化合物半導体極細線の製造方法では、電析法、例えばパルス電析法を用いて、テンプレートの複数の微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素を交互に層状に充填する。その後、第1元素と第2元素を拡散熱処理することにより、第1元素と第2元素とが相互拡散し、複数の化合物半導体極細線の単相が得られる。
【0012】
本発明に係る化合物半導体極細線集合体は、複数のナノサイズの微細貫通孔を有するテンプレートと、微細貫通孔内に電析法で充填された化合物半導体極細線とを有する。
【0013】
本発明の化合物半導体極細線集合体では、電析法により形成された複数の化合物半導体極細線がテンプレートに支持されるので、集合体を1つの基板として捉えれば表面積が大きい化合物半導体が得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る化合物半導体極細線の製造方法によれば、化合物半導体極細線を精度よく且つ量産化することができる。
【0015】
本発明に係る化合物半導体極細線集合体によれば、表面積が大きい化合物半導体基板として構成できるので、大きな表面積を必要とする化合物半導体デバイスに適用して構成である。例えば、各化合物半導体極細線を、積層された複数のpn接合を有する構造とすれば、微小構造でありながら表面積の大きな太陽電池を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の説明に供する実験で用いた電析装置を示す概略構成図である。
【図2】表1の電解浴を用いたときの、各電解浴のカソード分極曲線図である。
【図3】電析ZnTe薄膜のX線回折パターンを示す図である。
【図4】熱処理後の電析ZnTe薄膜のX線回折パターンを示す図である。
【図5】電析したままの状態のZnTe薄膜におけるZn含有量の電析電位依存性を示すグラフである。
【図6】熱処理後のZnTe薄膜におけるZn含有量の電析電位依存性を示すグラフである。
【図7】実験に用いたメンブレンフィルタ及びこれを取り付けた陰極の要部の斜視図である。
【図8】浴試料No.2を用いたときの、陰極電流の経時変化を示すグラフである。
【図9】実験で得られたZnTeナノワイヤのSEM像である。
【図10】本発明の実験で得られたZnTeナノワイヤにおけるZn含有量の電析電位依存性を示すグラフである。
【図11】本発明に係る化合物半導体極細線集合体の実施の形態を示す概略断面図である。
【図12】本発明に係る太陽電池の実施の形態を示す製造工程順の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る化合物半導体極細線の製造方法は、従来の気相成長などの手法ではなく、電析法を用いて行われる。本発明の化合物半導体極細線の製造方法実施の形態の説明に先立ち、化合物半導体を電析法により製造する際の最適条件についての実験検証を説明する。
【0018】
[実験例]
亜鉛を含むII−VI族化合物半導体(ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe等)は、広いバンドギャップを持つため、光電子材料として期待されている。例えば、ZnTeは2.26eVのバンドギャップを持ち、水溶液から電析可能であり、環境汚染物質である例えばCd、Se,Pb、Hg等を含まない。
【0019】
まず、ZnTe合金ナノワイヤを電析法により作製するための最適条件を、ZnTeの電析薄膜を用いて求める。表1に電解浴組成を示す。
【0020】
【表1】

【0021】
水溶液でのTeの溶解量は非常に小さく、Znに比べてTeの析出電位は貴である。Teを溶解させ析出電位をより卑にするために、錯化剤として浴試料No.1〜浴試料No.3は、クエン酸(HCit)及びクエン酸ナトリウム2水和物(NaCit・2HO)を添加し、浴試料No.4は、リンゴ酸(Maric acid)を添加した。浴試料No.2は、電析中に水酸化亜鉛が生成されることを防ぐため、pH緩衝作用が大きく、またナノワイヤとした際に付きまわり性の向上が予想されるホウ酸を加えた。浴試料No.3は、浴中の溶存酸素を除去するため窒素(N)ガスによるバブリングを行った。テルル(Te)の方が電析し易いことを考慮して、浴中の亜鉛(Zn)の存在比が高くなるような浴組成とした。
【0022】
NaSOは、イオンの移動度を良くし、電気分解するときの陰極と陽極間の極間電圧を下げる作用をする。NaSO加えることにより、電析時の消費電力を抑えることができる。クエン酸により、Teがイオン状態となることで、微細貫通孔内にTeが入ることができる。NaCit・2HOは、電解浴のpHを調整させるためであり、クエン酸:NaCit・2HOの比が10:10(mM)でpHを5.0程度にすることができる。リンゴ酸は、クエン酸と同様の働きをする。HBOは、硫酸ナトリウムよりさらに電気伝導性を良くし、しかもpHが5.0付近で メンブレンフィルタの微細貫通孔の中で水素イオンが枯渇したときに、水素イオンを出してくれる役割を果す。
【0023】
図1に、本実験例で用いた電析装置を示す。電析装置1は、常に一定の電圧を保ちながら電気分解ができるように構成されている。電析装置1は、電解浴2を入れた浴槽3内に、陽極(Au)4と、陽極4を挟んで陰極5と参照電極6を配置して構成される。陽極4から端子t1が導出され、陰極5から2つの端子t2及びt3が導出され、参照電極6から端子t4が導出される。参照電極6は、飽和Ag/AgCl電極が用いられ、ガラス管7内に封入される。ガラス管7の底部にはイオンが浸透し得るフィルタ18が設けられ、ガラス管7内に飽和塩化カリウム溶液19が封入される。陽極4は金線が用いられる。陰極5はITO(Indium Tin Oxide)ガラスが用いられる。ITOガラスとは、Inに数%のSnOを添加した化合物をスパッタし導電性を持たせたガラスで形成される。この陰極5であるITOガラス上にポリイミドテープ8を被着し、電析面積9を例えば20mm×20mmとした。浴槽3内には窒素ガス(N)を導入して電解浴2をバブリングするためのNガス導入部材10が配置される。符号20は、電解浴2を所要の温度に設定するための加熱手段を示す。
【0024】
電析装置1では、陽極4と陰極5間に電流を流して電気分解がなされる。この電析装置1は、陽極4と陰極間に常に一定の電流を流しながら、参照電極6の端子t4と陰極7の端子t3間で電圧をモニタできるようにし、また、陽極4の端子t1と陰極5の端子t2間に常に一定の電圧をかけて電気分解を行いながら、そのときに流れた電流をモニタリングできるように構成される。参照電極6と陰極7との間では電流が流れない構成となっている。
【0025】
電析条件として、浴温は353K(80℃)、電析時間は180minとした。Nガスは電析を開始する60min前からバブリングさせ、電析中も常にバグリングを行った。
【0026】
図2に、それぞれの電解浴のカソード分極曲線を示す。縦軸に定電流電解時の定電流を1分ごとに変化させたときの、電流値を示し、横軸にカソードポテンシャル、つまり陰極電位(参照電極6である塩化水銀電極に対しての電圧)を示す。縦軸の電流値は、析出反応速度に対応する。横軸の陰極電位は、溶液中に存在する参照電極6のエネルギー状態、つまり電解浴のエネルギー状態を基準として、参照電極6と第2の陰極7間の電圧で示している。陰極電位がプラス側(グラフ左側)に行く程、イオン状態が安定し、マイナス側(右側)に行く程、析出結晶状態が安定していることを示している。
【0027】
立ち上がりの電位領域Aでは、Teの析出であり、Znは未だイオン状態にあり、析出していない。電流密度を上げて行き陰極電位がよりマイナス側になる電位領域Bでは、Te析出が不足するも、アンダーポテンシャル析出によるZnTe化合物の析出が認められる。領域Bでは純Teの析出とZnTeの析出の2つの反応が考えられる。亜鉛水酸化物の量をコントロール、あるいは陰極電位のコントロールで、金属Teの析出を抑えて、ZnTeのみの析出も可能になる。さらにマイナス電位の電位領域Cでは、Znのみが析出する。
【0028】
アンダーポテンシャル析出によるZnTe析出の化学反応式を次に示す。
Zn2++O+2H+4e → Zn(OH)
Zn(OH)+TeCit+2H+3e → ZnTe+2HO+Cit3−
【0029】
次に、電位領域Bで析出したZnTe薄膜対して定性分析を行った。
【0030】
図3に、各浴試料No.1〜No.4にて電析したZnTe薄膜(以下、電析ZnTe薄膜という)のX線回折パターンを示す。各浴試料において、(111)面のZnTeのピークが得られた。(100)面のTeのピークは生じない。ホウ酸を加えた浴試料No.2、リンゴ酸を加えた浴試料No.4より作製した試料から(101)面のTeのピークが得られた。
浴試料No.2では、ホウ酸の電離反応により、陰極5表面でのpHの上昇が抑制され、水酸化亜鉛が生成されにくくなり、Teがより析出し易くなることが確認された。
浴試料No.4では、クエン酸錯体に比べてリンゴ酸錯体の析出電位が貴であるため、Teがより析出し易くなることが確認された。
【0031】
浴試料No.1、No.3では、Teが析出されず、ZnTeのみ析出することが認められたが、内部応力が存在していると考えられる。それ故、後述の表2で示すように、バンドギャップ値が低くなってしまう。
【0032】
そこで、ZnTeを析出した後、熱処理する。熱処理温度としては、200℃〜400℃の範囲が好ましい。ZnとTeの融点が420℃と450℃であり、再結晶開始温度は融点の約半分なので、200℃より低温では再結晶が進行せず、400℃を超えると結晶が融解する。本実験での熱処理条件は、温度が573K(300℃)、保持時間が60minである。図4に、各電解浴試料No.1〜No.4にて電析ZnTe薄膜の熱処理後のX線回折パターンを示す。熱処理後では、電析膜からTeが蒸発し、Teのピークが小さくなる。内部歪みも取り除かれる。また、結晶が粗大化し、ZnTeのピークが先鋭(シャープ)になっている。
【0033】
次に、ZnTe薄膜のバンドギャップを測定した。測定は、ZnTe薄膜に光を当てて、その吸収スペクトルを測定した。表2に、電析したままの状態のZnTe薄膜のバンドギャップ推定値を示し、表3に、300℃、60minの熱処理後のZnTe薄膜のバンドギャップ推定値を示す。いずれもアンダーポテンシャル領域(B)、つまり、−0.6V〜−1.0Vの電析電位におけるバンドギャップ推定値である。
【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
表2では、いずれの浴試料(No.1〜No.4)でも理論値(2.26eV)よりも小さな値になることが認められる。表3では、熱処理後、歪が取り除かれ、Teが揮発されて結晶性が良くなり、バンドギャップの値が改善されることが認められる。バンドギャップ値については、熱処理後の表3に示すように、電解浴として、浴試料No.3及びNo.4を用いて電析電位が−0.7V〜−0.9Vの条件のときに、バンドギャップ値が最も改善されている。
【0037】
次に、電析で得たZnTe結晶の組成比について調べた。Zn:Te=1:1であることが望ましい。図5に、電析したままの状態のZnTe薄膜(電析ZnTe薄膜)におけるZn含有量の電析電位依存性を示す。図5Aは浴試料No.1、図5Bは浴試料No.2、図5Cは浴試料No.3、図5Dは浴試料No.4をそれぞれ用いたグラフである。電析したままの状態では、Teの含有量が多い結果となり、電析膜中にTeが共析していることが認められる。
【0038】
図6に、熱処理後のZnTe薄膜におけるZn含有量の電析電位依存性を示す。図6Aは浴試料No.1、図6Bは浴試料No.2、図6Cは浴試料No.3、図6Dは浴試料No.4をそれぞれ用いたグラフである。実線が熱処理後の特性、破線が電析したままの状態の特性(図4と同じ)である。熱処理の結果、ZnTe薄膜中のZnの割合が大きくなる傾向が見られ、共析していたTeが蒸発したためと認められる。電析したままの状態及び電析後に熱処理したものの何れもが、−0.8V付近でZn:Te=1:1に近い組成となっている。
【0039】
上述の実験結果から、ZnTe結晶を電析する際、電解浴として浴試料No.1〜No.4の何れも使用可能であるが、特に、浴試料No.3とNo.4を用い、電析電位を−0.7V〜−0.8Vとした条件が最適と認められる。
【0040】
上例では、亜鉛を含むII−VI族化合物半導体、そのうちのZnTe結晶の電析による製造について説明したが、本発明は、その他のZnO、ZnS、ZnSeなど、あるいは他のII−VI族化合物半導体結晶の製造方法にも適用することができる。さらに、本発明は、他の化合物半導体、例えばIII−V族化合物半導体結晶の製造にも適用できる。
【0041】
本発明に係る化合物半導体極細線の製造方法は、上述した電析法における最適条件を利用して製造することができる。次に、本実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法について説明する。
【0042】
[第1実施の形態]
(化合物半導体極細線の製造方法例)
本発明に係る第1実施の形態の化合物半導体極細線の製造方法を説明する。第1実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法は、複数の極微細貫通孔を有するテンプレートを用意し、電析法により極微細貫通孔内に化合物半導体を充填して化合物半導体極細線を製造する。このときの電析条件として、前述の化合物半導体の電析薄膜で検証した電析条件を採用し、特に、図2の電解カソード分極曲線で明らかとなったアンダーポテンシャル領域、つまり化合物半導体として電析できる電位領域Bを利用する。
【0043】
第1実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法は、直径がナノサイズの極微細貫通孔を複数、本例では多数、有するテンプレートを形成する。テンプレートとしては、例えば、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ、アルミナフィルタ等を用いることができる。このテンプレートの極微細貫通孔中に、化合物半導体を構成する第1元素と第2元素が合金化された化合物半導体を、電析法(いわゆる電解めっき法)により充填する。例えば、II−VI族化合物半導体極細線を製造する場合には、上記極微細貫通孔中にII−VI族化合物半導体の形で充填する。電析法としては、電析電流を定電流とした直流電析法が用いられる。II−VI族化合物半導体の組成に応じた電位領域(B)(図2参照)に設定することにより、テンプレートの極微細貫通孔中にII−VI族化合物半導体が電析し充填される。すなわち、テンプレートの極微細貫通孔中において、化合物半導体単相の極微細線が形成される。
【0044】
電析されたままの状態の化合物半導体極細線を所要の半導体デバイスに適用することができる。すなわち、比較的に低いバンドギャップ値でも使用可能な半導体デバイスであれば、電析されたままの状態の化合物半導体極細線を使用することができる。
【0045】
一方、電析されたままの状態の化合物半導体極細線では、前述のX線回折パターンで示すように、化合物半導体のピークと共に一方の構成元素のピークが現われたり、あるいは内部歪みが生じるなどして、バンドギャップ値が低減すると考えられる。そこで、第1実施の形態のさらに好ましい製造方法は、テンプレートの極微細貫通孔内に化合物半導体を電析し充填した後、熱処理を施して、ピークが現われる一方の構成元素を揮発させ、あるいは内部歪みを除去する。熱処理温度としては、一方の構成元素の揮発、あるいは内部歪み除去を可能にする温度から化合物半導体結晶が融解しない温度までの範囲とすることができる。例えばZnTeの場合には、200℃〜400℃の範囲とすることが好ましい。ZnとTeの融点が420℃と450℃であり、再結晶開始温度は融点の約半分なので、200℃より低い温度では再結晶が進行せず、歪み除去が十分に行われ難く、400℃を超えると結晶が融解する。またこの温度範囲であれば、結晶成長、つまりグレイン成長が起こる。この熱処理により、歪みが取り除かれ、Teが揮発されて結晶性が良くなり、より広いバンドギャップ値を有する化合物半導体極細線を製造することができる。
【0046】
テンプレートとして、ポリカーボネート製メンブレンフィルタを用いるときは、ポリカーボネートの融点が約250℃であるので、200℃〜250℃での熱処理が可能である。テンプレートとしてアルミナフィルタを用いるときは、アルミナの融点が約2020℃であるので、200℃から400℃までの熱処理が可能である。
【0047】
テンプレート内において、多数の化合物半導体極微細線、つまり化合物半導体ナノワイヤを一括して得た後、テンプレートを残した状態で所要の半導体デバイスに適用することができる。あるいは、テンプレートを例えば溶解除去する等して、テンプレートから多数の化合物半導体単相の極細線を取り出し、多数の化合物半導体極細線、つまり化合物半導体ナノワイヤのみを一括して得ることもできる。そして、この化合物半導体ナノワイヤのみの状態で、所要の半導体デバイスに適用することができる。
【0048】
さらに、詳細に説明する。電析装置は、図1に示したと同様の構成を有する電析装置を用いる。すなわち、電析装置は、電解浴を入れた浴槽内に、4端子構造とした陽極と、陽極を挟んで陰極と参照電極を配置して構成される。参照電極には飽和Ag/AgCl電極が用いられる。陽極には金線が用いられる。浴槽内には窒素ガス(N)を導入して電解浴をバブリングするためのNガス導入部材が配置される。なお、電析装置としては、電析電位を常に精度よくコントロールするときは、参照電極を配置した方がよいが、参照電極を設けない構成とすることもできる。そして、陽極に対応するように、陰極上に直径がナノサイズの極微細貫通孔を複数、本例では多数有するテンプレートを支持し、化合物半導体として電析できる電析電位にして、陽極及び陰極間に直流電流を流して電析を行う。
【0049】
次に、直径がナノサイズの極微細貫通孔を複数、本例では多数有するテンプレートを用意する。テンプレートとして、例えば、図7Aに示すポリカーボネート製メンブレンフィルタ11を用いる。ポリカーボネート製メンブレンフィルタ11は、本例では、直径Rが13mm程度、厚さTが6μm程度のポリカーボネートシート14に、孔径rが100nm程度の極微細貫通孔13を孔密度4×10個/cmで形成して構成される。このポリカーボネート製メンブレンフィルタ11の裏面に、金(Au)スパッタ膜12が形成される。
【0050】
多数の微細貫通孔13を有するポリカーボネート製メンブレンフィルタ11は、次のようにして形成することができる。ポリカーボネート製のフィルムに多数のイオンビームを照射後、アルカリ水溶液中でエッチング処理を施す。イオンビームが通過したところが低分子状態に変質し、この変質した部分が優先的エッチグされることにより、多数の微細貫通孔13を有するポリカーボネート製メンブレンフィルタ11が得られる。
【0051】
一方、図7Bに示すように、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ11が金スパッタ膜12及び銀ペースト16を介して、銅箔15が被着された陰極5上に被着される。さらに、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ11の上面に臨む多数の極微細貫通孔13を除いて、全面に電解めっき阻止用のポリイミドフィルム17が被着形成される。
【0052】
陰極5上のメンブレンフィルタ11を洗浄した後、陰極5が、電析装置の電解浴中に配置される。アンダーポテンシャル領域に対応する電析電位に設定し、陽極及び陰極間に直流電流を流してメンブレンフィルタ11の極微細貫通孔13内に化合物半導体の電析(電解めっき)を行って化合物半導体を充填する。
【0053】
ZnTeナノワイヤを製造する場合には、電解浴として前述した浴試料No.1〜No.4の何れかを用いて行われる。好ましくは、前述した最適条件、例えば電解浴に浴試料No.1あるいはNo.4を用い、電析電位、つまり第1の陰極の電位を−0.7V〜−0.9Vの条件で電析を行う。この電析により、多数の極微細貫通孔内にZnTe結晶が充填され、一括して多数のZnTeナノワイヤが作製される。
【0054】
さらに好ましくは、ZnTe結晶を電析した後、200℃〜400℃の熱処理を施す。この熱処理により、ZnTe結晶に共析したTeを揮発させ、内部歪みを除去して結晶性の良いZnTe結晶が得られ、バンドギャップ値がより改善されたZnTeナノワイヤが作製される。
【0055】
図8に、電解浴としてホウ酸を含む浴試料No.2を用いて電析した場合の、陰極電流の経時変化を示す。図8の縦軸は陰極電流、横軸は時間である。図8によれば、ZnTeナノワイヤの成長過程が、物質移動律速過程から電荷移動律速過程へと変化している。この陰極電流の経時変化でナノワイヤの成長速度が分かる。電析時間、約3000秒で陰極電流の増加が観測され、ナノワイヤがメンブレンフィルタ表面に到達していることが分かる。ZnTeナノワイヤでは、1秒間に2nm程度成長することが確かめられている。
【0056】
図9は、熱処理前のZnTeナノワイヤが確実に成長していることを確認するための走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像(SEM像)を示す。SEM像は、メンブレンフィルタ11を有機溶剤で除去した後のZnTeナノワイヤであり、倒れた状態にある。ZnTeナノワイヤの形状は、メンブレンフィルタの形状を全体的に反映しており、メンブレンフィルタ上の広い範囲で観測された。
【0057】
図10に、ZnTeナノワイヤにおけるZn含有量の電析電位依存性を示す。縦軸はZn含有量(原子%)とTe含有量(原子%)、横軸は陰極電位である。図10によれば、ZnTeナノワイヤの組成として、陰極電位(電析電位)が−0.8V程度において、Zn組成が50原子%程度となり、Zn:Te=1:1の組成となることが認められる。ZnTeナノワイヤが成長するに従い、実際の反応が起こるナノワイヤ先端部にかかる電位が薄膜に比べ貴になる。
【0058】
上例では、化合物半導体としてZnTeを適用したが、ZnO、ZnS、ZnSe、などの亜鉛を含むII―VI族化合物半導体に適用することができる。また、その他のII―VI族化合物半導体に適用することができる。さらには、III―V族化合物半導体、例えば水溶液から電析可能なInSb等に適用可能できる。電析する化合物半導体の組成により、最適な電析条件、例えば電解浴、電析電位等を設定して電析を行うようにする。
【0059】
第1実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法によれば、複数の極微細貫通孔を有するテンプレートを用い、電析法により極微細貫通孔内に化合物半導体結晶を電析し充填することにより、ナノワイヤ形状を確実に維持して多数の化合物半導体極細線を一括して製造することができる。従って、化合物半導体極細線、すなわち化合物半導体ナノワイヤの量産化を可能にする。電析した状態の化合物半導体結晶を、その後に熱処理することにより、さらに化合物半導体の結晶性を良くすることができ、広いバンドギャップ値を有する化合物半導体ナノヤイヤを製造することができる。本実施の形態では、Cd等の環境汚染物質を含まず、亜鉛を含むII―VI続化合物半導体ナノワイヤを製造することができる。
【0060】
[第2実施の形態]
(化合物半導体極細線の製造方法例)
本発明に係る第2実施の形態の化合物半導体極細線の製造方法を説明する。第2実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法は、複数の極微細貫通孔を有するテンプレートを用意し、電析法により、極微細貫通孔中に化合物半導体構成元素を充填し、熱処理して化合物半導体極細線を製造する。このときの電析条件として、前述の化合物半導体の電析薄膜で検証した電析条件を採用し、特に、図2の電解カソード分極曲線で明らかとなった一方の化合物半導体構成元素が電析できる電位領域(A)と、他方の化合物半導体構成元素が電析できる電位領域(C)を利用する。
【0061】
第2実施の形態に係る化合物半導体極細線の形成方法は、前述の第1実施の形態と同様に、直径がナノサイズの極微細貫通孔を複数、本例では多数有するテンプレートを形成する。テンプレートとしては、前述の第1実施の形態で説明したと同様の例えば、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ、アルミナフィルタ等を用いることができる。このテンプレートの極微細貫通孔中に、化合物半導体を構成する第1元素と第2元素を電析法(いわゆる電解めっき法)により交互に層状に充填する。例えば、II−VI族化合物半導体極微細線を製造する場合には、上記極微細貫通孔中にII族元素とVI族元素を交互に電析し、層状に充填する。電析法としては、電析電流を上記電位領域(A)と(C)とに対応する電流に切り替えられるパルス電流とした、いわゆるパルス電析法が用いられる。パルス電析法を用いると、II族元素とVI族元素を交互に電析することができる。その後、第1元素と第2元素が交互に層状に充填されたテンプレートを熱処理し、第1元素と第2元素を熱拡散処理する。すなわち、第1元素と第2元素を相互拡散させる。熱処理温度としては、第1実施の形態で説明したと同様に、再結晶開始温度から化合物半導体結晶が融解しない温度までの範囲とすることができる。例えばZnTeの場合には、前述と同様に、200℃〜400℃の範囲とすることが好ましい。この熱拡散処理により、極微細貫通孔中において、化合物半導体単相の極細線が形成される。
【0062】
テンプレート内において、多数の化合物半導体極微細線、つまり化合物半導体ナノワイヤを一括して得た後、テンプレートを残した状態で所要の半導体デバイスに適用することができる。あるいは、テンプレートを例えば溶解除去する等して、テンプレートから多数の化合物半導体単相の極細線を取り出し、多数の化合物半導体極細線、つまり化合物半導体ナノワイヤのみを一括して得ることもできる。そして、この化合物半導体ナノワイヤのみの状態で、所要の半導体デバイスに適用することができる。
【0063】
さらに、詳細に説明する。電析装置は、第1実施の形態で説明示したと同様の構成を有する電析装置を用いる。電析装置の重複説明は省略する。第2実施の形態では、陰極上に直径がナノサイズの極微細貫通孔を複数、本例では多数有するテンプレートを支持し、化合物半導体の構成元素である第1元素が電析できる電析電位と第2元素が電析できる電析電位が切り替えられるパルス電流を、陽極及び陰極間に流して電析を行う。テンプレートとしては、例えば図7Aに示したポリカーボネート製メンブレンフィルタ11を用いる。陰極上のメンブレンフィルタ11に対して洗浄が施される。
【0064】
ZnTeナノワイヤを製造する場合には、電解浴として前述した浴試料No.1〜No.4の何れかを用いて行われる。好ましくは、前述した最適条件、例えば電解浴に浴試料No.1あるいはNo.4を用い、電析電位、つまり陰極の電位を0V〜−0.6V未満と、−1.0Vを超える電位との条件で電析を行う。この電析により、多数の極微細貫通孔内にTe結晶とZn結晶が交互に充填される。Te結晶とZn結晶を交互に電析し充填した後、200℃〜400℃の熱処理を施し、TeとZnを相互熱拡散してZnTe化合物半導体とする。これによって、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ11各極微細貫通孔13内に結晶性の良いZnTeナノワイヤが作製される。
【0065】
上例では、化合物半導体としてZnTeを適用したが、ZnO、ZnS、ZnSe、などの亜鉛を含むII―VI族化合物半導体に適用することができる。また、その他のII―VI族化合物半導体に適用することができる。さらには、III―V族化合物半導体、例えば水溶液から電析可能なInSb等に適用可能できる。電析する化合物半導体の組成により、第1元素、第2元素の最適な電析条件、例えば電解浴、電析電位等を設定して電析を行うようにする。
【0066】
第2実施の形態に係る化合物半導体極細線の製造方法によれば、複数の極微細貫通孔を有するテンプレートを用い、電析法により極微細貫通孔中に第1元素及び第2元素を交互に電析し充填し、その後に熱処理することにより、ナノワイヤ形状を確実に維持して多数の化合物半導体極細線を一括して製造することができる。従って、化合物半導体極細線、すなわち化合物半導体ナノワイヤの量産化を可能にする。熱処理で最終的な化合物半導体が構成されるので、良好な結晶性が得られ、広いバンドギャップ値を有する化合物半導体ナノヤイヤを製造することができる。本実施の形態では、Cd等の環境汚染物質を含まず、亜鉛を含むII―VI続化合物半導体ナノワイヤを製造することができる。
【0067】
[第3実施の形態]
(化合物半導体極細線集合体の構成例)
図11に、上述の化合物半導体極細線の製造方法で得られた化合物半導体極細線集合体の構成を示す。本実施の形態に係る化合物半導体極細線集合体21は、複数のナノサイズの微細貫通孔22を有するテンプレート23と、各微細貫通孔23中に電析法で充填された化合物半導体極細線、つまり化合物半導体ナノワイヤ24とを有して構成される。化合物半導体ナノワイヤ24は、テンプレート23の下面の金スパッタ膜25より一体に成長される。
【0068】
化合物半導体ナノワイヤ24は、II―VI族化合物半導体、III―V族化合物半導体で構成することができる。化合物半導体ナノワイヤは、好ましくはCd、Se,Pb、Hg等の環境汚染物質を含まないII―VI族化合物半導体、すなわち亜鉛を含むII―VI族化合物半導体で構成される。特に、ZnTe化合物半導体で構成されるのが好ましい。化合物半導体ナノワイヤ24は、pn接合を有して構成することができる。さらに、pn接合が多層に形成されても良い。p型層とn型層とが縦方向に交互に積層されてpn接合が多層に形成されている場合、隣合うpn接合間、つまりpn接合を構成するそれぞれの隣合うp型層とn型層の間に電極層を介挿してpn接合を直列接続するような構成とすることもできる。
【0069】
pn接合は、II―VI族化合物半導体を例にとると、II族元素リッチでn型層が電析され、VI族元素リッチでp型層が電析される。電析電位を制御し、あるいは電解浴を切り替えて、この電析を繰り返せばpn接合が形成される。テンプレート23としては、光透過性を有し柔軟性を有するポリカーボネート製メンブレンフィルタ、あるいはアルミナフィルタなどを用いることができる。
【0070】
本発明では、上記化合物半導体極細線集合体21を用いて、太陽電池、緑色発光ダイオードを含む発光ダイオードなどの半導体デバイス、すなわち光電子デバイスを構成することができる。さらに、本発明では、上記化合物半導体極細線集合体21を用いて、その他の半導体デバイスを構成することができる。
【0071】
[第4実施の形態]
(太陽電池の構成例)
図12に、上述の化合物半導体極細線集合体21を太陽電池に適用した実施の形態を示す。以下、本実施の形態に係る太陽電池31をその製法と共に説明する。本例では電析する化合物半導体をZnTe化合物半導体とする。先ず、図12Aに示すように、微細貫通孔22を有するテンプレート23を用意する。テンプレート23は、光透過性を有するポリカーボネート製メンブレンフィルタとする(以下、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ23として説明する)。
【0072】
次に、図12Bに示すように、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ23の下面にメタル膜による一方の電極26を被着形成する。
【0073】
次に、このポリカーボネート製メンブレンフィルタ23を用いて前述したように、電析装置内に装着し、第1実施の形態で示した製法を用いてZnTeの電析を行う。そして、図12Cに示すように、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ23の各微細貫通孔22内にpn接合jを形成するp型層33及びn型層34を交互に積層するように電析し充填して、ZnTeナノワイヤ35を形成する。このとき、ZnTeナノワイヤ35の下端、上端と、縦方向に隣合うpn接合jを形成するそれぞれのn型層34とp型層33間に、それぞれpn接合を直列接続するための電極36が形成される。電極36としては、例えば銅(Cu)あるいは亜鉛(Zn)などのメタルが用いられる。
【0074】
p型層33はZnリッチのZnTeで形成することができ、n型層34はTeリッチのZnTeで形成することができる。このため、1元系の電解浴を用いて電析電位を制御して電極36、p型層33及びn型層34を順次繰り返すように電析してZnTeナノワイヤ35を形成する。あるいは、電解浴を切り替えて、電極36、p型層33及びn型層34を順次繰り返すように電析してZnTeナノワイヤ35を形成する。
【0075】
次に、図12Dに示すように、ポリカーボネート製メンブレンフィルタ23の上面に透明導電膜である例えばITO電極37を形成して、目的の太陽電池31を得る。
【0076】
本実施の形態に係る太陽電池31では、光透過性を有するポリカーボネート製メンブレンフィルタ23が用いられる。このポリカーボネート製メンブレンフィルタ23の各微細貫通孔22内に縦方向にpn接合jが直列接続されるように、電極36、p型層33及びn型層34の3層構造を繰り返し電析して成るZnTeナノワイヤ35が埋め込まれる。そして、ポリカーボネート製メンブレンフィルタの多数のZnTeナノワイヤの端部が臨む上端面及び下端面に、それぞれ一方の電極となるITO電極37及び他方の電極26を形成して、太陽電池31が構成される。上面のITO電極37は接続用の電極36を介してn型層34にオーミックに接続される。下面の電極26は接続用の電極26介してp型層33にオーミックに接続される。
【0077】
本実施の形態に係る太陽電池31では、太陽光がZnTeナノワイヤ35の上面から入射されると共に、光透過性のポリカーボネート製メンブレンフィルタ23を通過してZnTeナノワイヤ35の側面からも入射されることになり、1つのZnTeナノワイヤ35についての光の吸収が大きくなる。一方、pn接合jが多層に配列された多数のZnTeナノワイヤ35が並列接続した形になって太陽電池31が構成されるので、太陽電池31としての表面積が大きくなり、pn接合の面積が大きくなる。従って、変換効率の良い高性能の太陽電池31を提供することができる。微小構造でありながら表面積の大きな太陽電池を構成することができる。
【0078】
ポリカーボネート製メンブレンフィルタ23は、柔軟性を有しているので、本実施の形態の太陽電池31を平面上に配置できることは勿論のこと、曲面上、円筒面上に配置することができるなど、多様な面上への配置を可能にする。
【0079】
テンプレートとして、アルミナフィルタを用いることもできる。耐熱性に優れるので、熱処理が可能である。但し、アルミナフィルタは柔軟性を有しない。
【0080】
上例の太陽電池31は、ZnTeナノワイヤを適用したが、前述した他の化合物半導体ナノワイヤを適用することもできる。
【符号の説明】
【0081】
1・・電析装置、2・・電解浴、・・3・・浴槽、4・・陽極、5・・陰極、6・・参照電極、10・・N2ガス導入部材、11・・テンプレート、13・・微細貫通孔、21・・化合物半導体極細線集合体、22・・微細貫通孔、23・・テンプレート、24・・化合物半導体ナノワイヤ、31・・太陽電池、33・・p型層、34・・n型層、35・・ZnTeナノワイヤ、36・・電極、26・・電極、37・・光透過性の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノサイズの微細貫通孔を有するテンプレートを形成する工程と、
電析法を用いて、前記テンプレートの微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素が合金化された状態で前記化合物半導体を充填する工程と
を有する化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項2】
前記充填する工程の後に、熱処理する工程を有する
請求項1記載の化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項3】
ナノサイズの微細貫通孔を複数有するテンプレートを形成する工程と、
電析法を用いて、前記テンプレートの微細貫通孔中に、化合物半導体の構成元素である第1元素と第2元素を交互に層状に充填する工程と、
前記第1元素と前記第2元素を拡散熱処理する工程と
を有する化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項4】
前記第1元素がII族元素であり、第2元素がVI族元素である
請求項1乃至3のいずれかに記載の化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項5】
前記化合物半導体が亜鉛を含むII−VI族化合物半導体である
請求項1乃至4のいずれかに記載の化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項6】
前記化合物半導体がZnTeである
請求項1乃至4のいずれかに記載の化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項7】
前記テンプレートをポリカーボネート製メンブレンフィルタで形成する
請求項1乃至6のいずれかに記載の化合物半導体極細線の製造方法。
【請求項8】
複数のナノサイズの微細貫通孔を有するテンプレートと、
前記微細貫通孔内に電析法で充填された化合物半導体極細線と
を有する化合物半導体極細線集合体。
【請求項9】
前記化合物半導体極細線がII―VI族化合物半導体極細線であり、
前記化合物半導体極細線が直列接続された多層のpn接合を有する
請求項8記載の化合物半導体極細線集合体。
【請求項10】
前記テンプレートが光透過性を有するテンプレートで形成される
請求項8または9記載の化合物半導体極細線集合体。
【請求項11】
太陽電池として構成された請求項10記載の化合物半導体極細線集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162844(P2011−162844A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26986(P2010−26986)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】