説明

化合物WS727713

本発明は、メラノコルチン受容体モジュレーターとして有用な新規化合物に関する。特に、本発明は、化合物WS727713、培養培地中で、Pseudonocardiaに属するWS727713産生株を培養し、培養ブロスから化合物を回収することによる該化合物を生産する方法、該化合物を含有する医薬組成物、メラノコルチン受容体調節のための薬剤または化粧品の製造のための該化合物の使用、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤、拒食症などの治療または予防のための薬剤または化粧品の製造のための該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤または化粧品として有用な新規化合物、それらの製造方法およびそれらを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メラノコルチンは(MC)は、プレプロホルモンの酵素的分割による翻訳後修飾由来のペプチドホルモンの一つのグループである。MCとしては、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)ならびにα-MSH、β-MSHおよびγ-MSHのようなメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が挙げられる。これらのMCは、膜MC受容体(MC-R)を介してさまざまな生理学的機能を調節している。5つのMC-R(MC1-R、MC2-R、MC3-R、MC4-RおよびMC5-R)がクローン化され特徴付けられている。MC1-R(α-MSH 受容体として初めて発見された)は、外皮のメラニン細胞において発現し、表皮のメラニン色素沈着および動物の色彩に関与している。
【0003】
最近、MC1-Rは痛みや炎症に関与し、MC1-R mRNAは、好中球または単核球などの炎症細胞において発現することが発見された。単球における一酸化窒素の産生および好中球の遊走に対するα-MSHの抑制作用をMC1-Rが説明するようである。α-MSH分子がヒトにおける炎症反応の動物モデルにおいて炎症反応を低下させるという証拠が示されている。α-MSHは、マウス皮膚における一般的な刺激誘発炎症を減少させた。また、α-MSHは、カラギナン誘発マウス足浮腫を抑制した。このようにMC1-Rアゴニストは炎症反応に対する薬剤として有用であると予測される。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、メラノコルチン受容体のモジュレーターとして有用な新規な化合物、それらの製造方法およびそれらを含有する医薬または化粧品組成物に関する。
さらに特に、本発明は、炎症反応に対して減少効果を有するメラノコルチン受容体アゴニスト化合物に関する。
【0005】
本発明の発明者らは、またWS727713のようなメラノコルチン受容体モジュレーターが強力な抗炎症効果を有することを見出した。従って、WS727713のようなメラノコルチン受容体モジュレーターは、抗炎症剤の活性成分として有用であり、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳炎症性疾患、腎炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤、拒食症などのメラノコルチン受容体の調節に反応性の疾患に対する治療または予防剤として有用である。
【0006】
従って、本発明の一つの目的は、上記に述べたような生物学的活性を有する化合物を提供することである。
本発明の他の目的は、培地中での、Pseudonocardia属に属するWS727713産生株の醗酵によるWS727713の製造方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、活性成分として、WS727713を含有する医薬組成物を提供することである。
本発明のその上さらなる目的は、上記に述べた疾患を治療および予防するためのWS727713のようなメラノコルチン受容体モジュレーターの使用を提供することである。
【0007】
すなわち、本発明は以下を提供する。
(1)下記の性質を有する、実質的に純粋なWS727713化合物:
a) 分子式: C30H44N8O8
b) 1H 核磁気共鳴スペクトル :
(500 MHz, DMSO-d6) δ
9.76 (1H, s, 交換可能), 8.76 (1H, d, J=7.5 Hz, 交換可能), 8.23 (1H, d, J=5 Hz, 交換可能), 7.76 (1H, dd, J=8.5 および 3 Hz, 交換可能), 7.25 - 7.17 (5H, m), 5.71 (1H, dd, J=10.5 および 5 Hz), 5.08 (1H, dd, J=11 および 4 Hz, 交換可能), 5.03 (1H, m), 4.99 (1H, m), 4.92 (1H, m), 4.85 (1H, m), 4.83 (1H, d, J=3 Hz, 交換可能), 4.76 (1H, br d, J=12 Hz, 交換可能), 4.12 (1H, dd, J=16.5 および 8.5 Hz), 3.65 (1H, dd, J=16.5 および 3 Hz), 3.58 (1H, m), 3.07 (1H, dd, J=13.5 および 8.5 Hz), 2.94 (1H, br d, J=13 Hz), 2.86 (1H, dd, J=13.5 および 6 Hz), 2.73 - 2.68 (2H, m), 2.58 (1H, m), 2.24 (1H, br d, J=13 Hz), 2.08 (1H, br d, J=14 Hz), 1.88 (1H, m), 1.67 (1H, m), 1.55 (1H, m), 1.42 - 1.36 (2H, m), 1.21 (1H, m), 1.19 (3H, d, J=7 Hz), 1.09 (1H, m), 0.76 (3H, d, J=6.5 Hz), 0.75 (3H, d, J=6.5 Hz).
c) 13C 核磁気共鳴スペクトル :
(125 MHz, DMSO-d6) δ
173.8 (s), 171.7 (s), 170.4 (s), 169.8 (s), 169.1 (s), 167.6 (s), 137.2 (s), 129.2 (d) x2, 128.0 (d) x2, 126.3 (d), 60.2 (d), 53.2 (t), 51.1 (d), 50.8 (d), 49.6 (d), 47.4 (d), 47.0 (t), 44.7 (d), 41.2 (t), 36.4 (t), 35.4 (t), 33.2 (t), 23.6 (d), 23.5 (t), 23.1 (q), 21.7 (q), 21.0 (t), 15.8 (q).
【0008】
(2)寄託番号FERM BP-7570を有する、Pseudonocardia属に属する放線菌(actinomycetes)株。
(3)培地中で上記(2)の放線菌株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することにより得られた、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物。
(4)培地中で、Pseudonocardia属に属するWS727713産生株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することを含む上記(1)のWS727713化合物の製造方法。
(5)Pseudonocardia属に属するWS727713産生株が、上記(2)の放線菌株である上記(4)の方法。
(6)上記(1)のWS727713化合物またはその塩および医薬的に許容可能で、実質的に毒性のない担体または賦形剤を含有する医薬または化粧品組成物。
(7)薬剤または化粧品としての使用のための上記(1)の化合物。
(8)培地中で、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物を産生するPseudonocardia属に属する放線菌株を培養し、該化合物を回収することを含む、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物の製造方法。
(9)培地中で、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物を産生するPseudonocardia属に属する放線菌株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することより得られたメラノコルチン受容体調節活性を有する化合物。
(10)上記(1)の化合物またはその塩を含有するメラノコルチン受容体モジュレーター。
(11)上記(1)の化合物またはその塩をヒトまたは動物に投与することを含むメラノコルチン受容体を調節する方法。
(12)メラノコルチン受容体を調節するための薬剤または化粧品の製造のための上記(1)の化合物またはその塩の使用。
【0009】
(13)上記(1)の化合物またはその塩および医薬的に許容可能で、実質的に毒性のない担体または賦形剤を含有する、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための医薬または化粧品組成物。
(14)上記(1)の化合物またはその塩をヒトまたは動物に投与することを含む、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための方法。
(15)虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための薬剤の製造のための上記(1)の化合物またはその塩の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
メラノコルチン受容体の活性に強い調節効果を有する化合物は、以下の特徴により同定されうる。赤外線スペクトル、1H核磁気共鳴スペクトルおよび13C核磁気共鳴スペクトルのチャートは図1〜3に示される。
a)分子式: C30H44N8O8
b)ESI-MS(+:m/z): 645(M+H)+
c)赤外線スペクトル(図1):
νmax (KBr): 3310, 2950, 1640, 1545, 1450, 1410, 1370, 1350,
1300, 1245, 1160, 1125, 1095, 995 cm-1
d)1H核磁気共鳴スペクトル(図2):
(500 MHz, DMSO-d6) δ
9.76 (1H, s, 交換可能), 8.76 (1H, d, J=7.5 Hz, 交換可能), 8.23 (1H, d, J=5 Hz, 交換可能), 7.76 (1H, dd, J=8.5 および 3 Hz, 交換可能), 7.25 - 7.17 (5H, m), 5.71 (1H, dd, J=10.5 および 5 Hz), 5.08 (1H, dd, J=11 および 4 Hz, 交換可能), 5.03 (1H, m), 4.99 (1H, m), 4.92 (1H, m), 4.85 (1H, m), 4.83 (1H, d, J=3 Hz, 交換可能), 4.76 (1H, br d, J=12 Hz, 交換可能), 4.12 (1H, dd, J=16.5 および 8.5 Hz), 3.65 (1H, dd, J=16.5 および 3 Hz), 3.58 (1H, m), 3.07 (1H, dd, J=13.5 および 8.5 Hz), 2.94 (1H, br d, J=13 Hz), 2.86 (1H, dd, J=13.5 および 6 Hz), 2.73 - 2.68 (2H, m), 2.58 (1H, m), 2.24 (1H, br d, J=13 Hz), 2.08 (1H, br d, J=14 Hz), 1.88 (1H, m), 1.67 (1H, m), 1.55 (1H, m), 1.42 - 1.36 (2H, m), 1.21 (1H, m), 1.19 (3H, d, J=7 Hz), 1.09 (1H, m), 0.76 (3H, d, J=6.5 Hz), 0.75 (3H, d, J=6.5 Hz).
e)13C核磁気共鳴スペクトル(図3):
(125 MHz, DMSO-d6) δ
173.8 (s), 171.7 (s), 170.4 (s), 169.8 (s), 169.1 (s), 167.6 (s), 137.2 (s), 129.2 (d) x2, 128.0 (d) x2, 126.3 (d), 60.2 (d), 53.2 (t), 51.1 (d), 50.8 (d), 49.6 (d), 47.4 (d), 47.0 (t), 44.7 (d), 41.2 (t), 36.4 (t), 35.4 (t), 33.2 (t), 23.6 (d), 23.5 (t), 23.1 (q), 21.7 (q), 21.0 (t), 15.8 (q).
【0011】
特に、WS727713は以下の物理化学的特徴を有する:
分子式:
C30H44N8O8
ESI-MS(+:m/z): 645(M+H)+
HR-ESI-TOF/MS(+:m/z)
計算値 645.3360(M+H)+
実測値 645.3387(M+H)+
比旋光度:
[α]D(23℃) 32° (c=0.5,DMSO中)
溶解度:
可溶: メタノール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、DMSO
難溶: H2O
呈色反応
陽性: 沃素蒸気反応、硫酸セリウム反応、
エーリッヒ反応、ドラーゲンドルフ反応
陰性: モーリッシュ反応、ニンヒドリン反応
【0012】
薄層クロマトグラフィー(TLC):
固定相 展開溶媒 Rf値
シリカゲル60 F254* CHCl3:CH3OH=10:1 0.45
RP-18W F254S HPTLC* MeCN:水=80:20 0.53
* E. Merck社製
高速液体クロマトグラフィー (HPLC):
条件:
移動相:35%アセトニトリル水溶液
カラム: Mightysil RP-18 GP (4.6 X 150mm)
流速: 1.0 ml/分
検出: UV 210 nm
保持時間: 9.3分
赤外線スペクトル (図1):
νmax (KBr): 3310, 2950, 1640, 1545, 1450, 1410, 1370,
1350, 1300, 1245, 1160, 1125, 1095, 995 cm-1
【0013】
1H 核磁気共鳴スペクトル (図2):
(500 MHz, DMSO-d6) δ
9.76 (1H, s, 交換可能), 8.76 (1H, d, J=7.5 Hz, 交換可能), 8.23 (1H, d, J=5 Hz, 交換可能), 7.76 (1H, dd, J=8.5 および 3 Hz, 交換可能), 7.25 - 7.17 (5H, m), 5.71 (1H, dd, J=10.5 および 5 Hz), 5.08 (1H, dd, J=11 および 4 Hz, 交換可能), 5.03 (1H, m), 4.99 (1H, m), 4.92 (1H, m), 4.85 (1H, m), 4.83 (1H, d, J=3 Hz, 交換可能), 4.76 (1H, br d, J=12 Hz, 交換可能), 4.12 (1H, dd, J=16.5 および 8.5 Hz), 3.65 (1H, dd, J=16.5 および 3 Hz), 3.58 (1H, m), 3.07 (1H, dd, J=13.5 および 8.5 Hz), 2.94 (1H, br d, J=13 Hz), 2.86 (1H, dd, J=13.5 および 6 Hz), 2.73 - 2.68 (2H, m), 2.58 (1H, m), 2.24 (1H, br d, J=13 Hz), 2.08 (1H, br d, J=14 Hz), 1.88 (1H, m), 1.67 (1H, m), 1.55 (1H, m), 1.42 - 1.36 (2H, m), 1.21 (1H, m), 1.19 (3H, d, J=7 Hz), 1.09 (1H, m), 0.76 (3H, d, J=6.5 Hz), 0.75 (3H, d, J=6.5 Hz).
【0014】
13C 核磁気共鳴スペクトル (図3):
(125 MHz, DMSO-d6) δ
173.8 (s), 171.7 (s), 170.4 (s), 169.8 (s), 169.1 (s), 167.6 (s), 137.2 (s), 129.2 (d) x2, 128.0 (d) x2, 126.3 (d), 60.2 (d), 53.2 (t), 51.1 (d), 50.8 (d), 49.6 (d), 47.4 (d), 47.0 (t), 44.7 (d), 41.2 (t), 36.4 (t), 35.4 (t), 33.2 (t), 23.6 (d), 23.5 (t), 23.1 (q), 21.7 (q), 21.0 (t), 15.8 (q).
【0015】
色および状態:
白色結晶
融点:
272-277℃(分解)
【0016】
産生株No.727713の特徴
No.727713株は、日本国千葉県で集められた落ち葉サンプルから単離した。No.727713株の分類研究のため、ShirlingおよびGottlieb(Shirling, E. B. and D. Gottlieb: Methods for characterization of Streptomyces species. Int. J. Syst. Bacteriol. 16, 313-340, 1966)、ならびにWaksman(Waksman, S. A.: The actinomycetes Vol. 2: Classification, identification and description of genera and species: The Williams and Wilkins Co., Baltimore, 1961)が報告した方法および培地を用いた。観察は14日間30℃で培養後行った。形態学的観察は、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を使用して、フミン酸-ビタミン寒天(Hayakawa, M. and Nonomura, H.: Humic acid-vitamin agar, a new medium for the selective isolation of soil actinomycetes. J. Ferment. Technol., 65, 501-509, 1987) 上で増殖した培養物において行った。増殖のための温度範囲は、1000 ml水道水中、酵母エキス(Daigo Eiyo, Osaka, Japan)2 g、可溶性スターチ10 gおよび寒天16 gを含有する酵母エキス−スターチ寒天(滅菌前に1N NaOH でpH 7.2に調整)において決定した。炭素源利用は、0.1%酵母エキスを加えたPridoham-Gottlieb培地(Pridoham,T.G. and D. Gottlieb: The utilization of carbon compounds by some Actinomycetales as an acid for species determination: J. Bacteriol. 56: 107-114, 1948)で測定した。この研究において用いられた色名は、Methuen Handbook of Colour (Kornerup, A. and J. H. Wanscher: Methuen Handbook of Colour, Methuen, London, 1978)から採用した。細胞の調製およびジアミノピメリン酸(diaminopimeric acid)の異性体の検出は、Beckerらの手法(Becker, B., M. P. Lechevalier, R. E. Gordon and H. A. Lechevalier: Rapid differentiation between Nocardia and Streptomyces by paper chromatography of whole-cell hydrolysates: Appl. Microbiol. 12, 421-423, 1964)により行った。全細胞糖組成は、Lechevalier-Lechevalierの方法(Lechevalier, M. P. and H. A. Lechevalier: Chemical composition as a criterion in the classification of aerobic actinomycetes. Int. J. Syst. Bacteriol., 20, 435-443, 1970)により決定した。16S rDNA配列は、Reichertらの方法(Katrin Reichert, Andre Lipski, Silke Pradella, Erko Stackebrandt and Karlheinz Altendorf: Pseudonocardia asaccharolytica sp. nov. and Pseudonocardia sulfidoxydans sp. nov., two new dimethyl disulfide-degrading actinomycetes and emended description of the genus Pseudonocardia: Int. J. Syst. Bacteriol. 48, 441-449, 1998)により決定した。菌株型の16S rDNA配列は、DDBJデータベース(http://www.ddbj.nig.ac.jp)から得た。系統樹は、CLUSTAL プログラム(Thompson, J.D., Gibson, T.J., Plewniak, F., Jeanmougin, F. and Higgins, D. G.: The CLUSTAL X windows interface: flexible stradesies for multiple sequence alignment aided by quality analysis tools. Nucleic Acids Res. 24: 4876-4882, 1997) で作成した。
【0017】
細菌学的特徴は、以下の通りであった。
様々な寒天培地上の培養特徴や生理学的特徴は、表1及び2にそれぞれ示す。菌株の増殖は、酵母エキス−モルトエキス寒天、オートミール寒天およびペプトン−酵母エキス−鉄寒天上で観察されたが、無機塩−スターチ寒天、グリセロール−アスパラギン寒天およびチロシン寒天上では観察されなかった。気中菌糸体は、フミン酸-ビタミン寒天上でのみ観察され、その気中菌糸体の色は白色であった。生育裏面の色はライトオレンジであった。メラノイド色素は、チロシン−酵母エキスブロスおよびペプトン−酵母エキス−鉄寒天においては産生されなかった。可溶性色素は産生されなかった。菌体内色素はpH感受性ではなかった。
【0018】
形態学的特徴として、基生菌糸はよく増殖し、不規則に分枝した。膨らんだ菌糸片の形成が観察された。この菌株は、まっすぐな胞子鎖を有し、鎖あたり10を超える胞子を含む気中菌糸体を生じた。胞子の形は、紡錘体(1.6-2.3 × 0.5-0.6 μm)であった。それらの表面は滑らかであった。球状顆粒、胞子嚢および運動性胞子またはフラグメントは観察されなかった。
No.727713株は、11〜32℃の温度範囲において増殖することが可能であり、増殖最適条件は28℃であった。
メソ−ジアミノピメリン酸、ラクトースおよびアラビノースが、この菌株の全細胞加水分解物において検出され、細胞壁タイプはIV型であった。
No.727713株の部分配列は、配列表中配列ID NO:1に示す。No.727713株とPseudonocardia属のメンバーとの間の16S rDNA相同値は、91.8-97.4%であり、それらは系統樹において単一のクラスターを作る(データは示さない)。
【0019】
形態学的および化学的特徴ならびに上記に述べた系統分析に基づいて、No.727713株はPseudonocardia属に属すると認められる(Lechevalier, M. P. and H. A. Lechevalier: Chemical composition as a criterion in the clasification of aerobic actinomycetes. Int. J. Syst. Bacteriol., 20, 435-443, 1970; Pridham,T.G.,et al.: Appl. Microbiol. 6: 54, 1958)。従って、この菌株をPseudonocardia sp. No.727713として規定した。この菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 AISTつくば 中央第6 305-8566にFERM BP-7570として寄託した(寄託日:2001年4月25日)。
【0020】
【表1】

【0021】
これらの特徴は、30℃で14日間インキュベート後観察した。色の記載はMethuen Handbook of Colour (Kornerup, A. および J. H. Wanscher, 3rd ed., pp.252, Methuen, London, 1978) に基づいた。
【0022】
【表2】

【0023】
WS727713の生産は、単に例示する目的で与えられる、ここで記載されている特定の生物の使用に限定されないと理解されるべきである。本発明は、組換えDNA技術、X線照射、紫外線照射、N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、2−アミノプリンなどの従来の手段により記載した生物から生産し得る人工変異株ならびに天然変異株などの、WS727713を生産し得るいずれの変異株の使用も含む。
【0024】
WS727713の生産
上記記載した特徴を有する化合物の中で、Pseudonocardiaに属するWS727713産生株が好気条件下で(例えば振盪培養、液内培養など)、同化可能な炭素および窒素源を含有する培地で増殖する場合に、WS727713は生産される。
培地における好ましい炭素源は、グルコース、スクロース、スターチ、フルクトースまたはグリセリンなどの糖質である。
好ましい窒素源は、アンモニウム塩(例、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなど)、尿素またはアミノ酸などの無機および有機の窒素化合物ならびにピーナッツパウダー、酵母エキス、ビーフエキス、ペプトン、ポリペプトン、グルテンミール、綿実粉、大豆パウダー、大豆ミール、コーンスティープリカー、乾燥酵母、小麦胚芽などである。
【0025】
炭素および窒素源は、組み合わせて用いると有利であるが、微量の増殖因子および多量の無機栄養素を含有する不純な材料も使用に適しているので、それらの純粋な形で使用することは必要でない。
【0026】
所望時に、炭酸ナトリウムまたは炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウム、マグネシウム塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩またはコバルト塩などの無機塩類を培地に加えてもよい。
必要なら、特に培地が深刻に泡立った場合、液体パラフィン、脂肪油、植物油、鉱物油、シリコーンなどの消泡剤を加えてもよい。
【0027】
培養混合物の撹拌やエアレーションは、プロペラまたは同様な機械の撹拌装置による撹拌、ファーメンターの回転または振盪による撹拌などの、様々な方法によって達成しうる。
醗酵は、醗酵条件やスケールに従って変化しうるが、約50時間〜150時間の期間にわたり、通常約10℃と40℃との間、好ましくは20℃〜30℃の温度で実施される。
得られた培養ブロスは、その後WS727713の回収のために、例えば、適当な溶媒またはいくつかの溶媒の混合物での溶媒抽出、クロマトグラフィーまたは適当な溶媒またはその混合物からの再結晶などの、生物活性物質の回収および精製のために従来使用されている様々な工程にかけられる。
【0028】
WS727713は、本発明の範囲内である溶媒和物の形であり得る。溶媒和物としては、好ましくは水和物およびエタノレートが挙げられる。
上記の化合物の生物学的特徴を示す例として、以下にいくつかの生物学的データを示す。
【0029】
試験1.結合アッセイ
バインディングバッファーは、25 mM HEPES-KOH (pH 7.0)、1.5 mM CaCl2、1 mM MgSO4、100 mM NaCl、1 mM 1,10-フェナントロリン、0.2% BSAおよびコンプリートTMプロテアーゼ阻害剤(ベーリンガー−マンハイム)1錠/100 mLで構成した。結合アッセイは、Receptor Biology, Incの方法を修正した。膜の懸濁液(25 ml)、[125I]-NDP-MSH (25 ml, NEN,最終3.08x10-11 M)、バッファー (50 ml)および阻害剤を、37℃で60分間インキュベートした。その後、該混合物をGF/C (0.5%ポリエチレンイミンでプレソークした)にかけて濾過し、氷冷のPBS(-)で2回洗浄した。GF/Cフィルターにトラップされた放射活性は、乾燥後、Top Counter(Packard)を用いて測定した。
【0030】
B16細胞を、10%FBSおよび抗生物質を補充したRPMI1640中で増殖させた。サブコンフルエントな細胞を氷冷のPBS (-)で2度洗浄し、かきとった。細胞を、それから超音波にかけ、4℃で5分間2,000 rpm で遠心分離した。こうして得られた上清を4℃で60分間、30,000 rpmで遠心分離した。膜分画を、氷冷のPBS (-)で懸濁し、-80℃で貯蔵した。
【0031】
各受容体タンパクの最終濃度は以下のとおりであった: MC1-R (B16)、0.139 mg/ml; MC3-R (組換え体*)、0.0693 mg/ml; MC4-R (組換え体*)、0.104 mg/ml;およびMC5-R(組換え体*)、0.070 mg/ml(*:Receptor Biology, Inc.から)
【0032】
表3に示すように、WS727713は、メラノコルチン受容体に対する[125I]-NDP-MSHの結合を抑制した。この結果は、WS727713がメラノコルチン受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することを示す。
【0033】
【表3】

【0034】
試験2.WS727713によるマウスにおけるLPS誘導TNF-α産生の用量依存性減少
腫瘍壊死因子(TNF-α)は、急性および慢性の炎症性疾患および損傷における病的過程および機能的障害の根底にある。神経免疫調節ペプチド(neuroimmunomodulatory peptide)α-MSHは、TNF-αを含む炎症性サイトカインの作用および生産を調節する。WS727713について試験するために、2度の反復実験において、生理食塩水中のリポポリサッカライド(LPS; Sigma, L-3129, E.coli 0127:B8, 100 mg/頭)または生理食塩水のみのどちらかを雄性マウス(ICR)に腹腔内注射した。WS727713は、LPS注射の30分前に腹腔内注射した。マウスはLPS注射の60分後に屠殺した。血清TNF-αレベルは、酵素結合免疫吸着法(TNF-α ELISA kit; Amersham)を用いて測定した。結果は表4に示す。
【0035】
表4に示すように、LPS誘発TNF-αレベルは、用量依存的にWS727713の投与により減少した。結果は、WS727713がメラノコルチン受容体アゴニストとしての機能を有することを示す。
【0036】
【表4】

【0037】
実質的に純粋な化合物WS727713は、メラノコルチン受容体MC1-R、MC3-R、MC4-R、および/またはMC5-Rのモジュレーターであり、特に、MC1-Rのアゴニスト活性を有する。実質的に純粋な化合物WS727713を含有する医薬組成物は炎症または免疫状態により生じる疾患に対する治療または予防剤として有用である。さらに、炎症、特に、NF-kBの活性化および/または炎症性サイトカインの放出により生じる炎症を治療するために有用である。さらに、実質的に純粋な化合物WS727713を含有する医薬製剤は以下の疾患の治療および予防のために有用である。
【0038】
炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、セリアック病、胆嚢病、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、痛風性関節炎、変形性関節症、骨粗しょう症、外傷性関節炎、風疹関節炎、筋肉変性、膵炎(急性または慢性)、乾癬、糸球体腎炎、血清病、狼瘡(全身性エリテマトーデス)、じんましん、スクレラクレマ(scleraclerma)、強皮症、慢性甲状腺炎、グレイブス病、皮膚炎(接触またはアトピー)、外陰部膣前庭炎症候群、皮膚筋炎、脱毛症、アトピー性湿疹、魚鱗癬、発熱、敗血症、偏頭痛、群発性頭痛、アルツハイマー病、パーキンソン氏病、クロイツフェルト−ヤコブ病、多発性硬化症、結核、痴呆および移植または移植片対宿主拒絶(例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺、すい臓、骨髄、角膜、小腸、皮膚同種移植、皮膚同種移植片および異種移植片など)などの慢性および急性炎症、ならびに免疫変調に関連する疾患。
【0039】
喘息、急性呼吸窮迫症候群、花粉症、アレルギー性鼻炎、および慢性閉塞性肺疾患などの呼吸アレルギーおよび疾患;HIV脳炎、脳マラリア、髄膜炎および毛細血管拡張性失調症などの中枢神経系の炎症性障害;および術後痛、神経筋痛、頭痛、癌による痛み、歯痛および関節痛などの痛み。
【0040】
単純ヘルペス1型(HSV-1)、単純ヘルペス2型(HSV-2)、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バー、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、アジソン病(副腎の自己免疫疾患)、特発性副腎不全、自己免疫多腺性疾患(自己免疫多腺性症候群としても知られている)、慢性活性肝炎または急性肝炎感染(A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎など)、自己免疫性胃炎、自己免疫性溶血性貧血および自己免疫性好中球減少症のようなウイルスおよび自己免疫疾患;および菌状息肉腫などの真菌感染症。
【0041】
アテローム性動脈硬化、移植アテローム性動脈硬化、末梢血管疾患、炎症性血管疾患、間欠性跛行、再狭窄、脳血管発作、一過性虚血発作、心筋虚血および心筋梗塞(infraction)。また高血圧、高脂血症、冠動脈疾患、不安定狭心症、血栓症、トロンビン誘発血小板凝集、ならびに/または血栓症および/もしくはアテローム性動脈硬化プラークの形成から生じる病態などの循環系疾患。
【0042】
脳卒中や他の虚血性脳疾患および/またはそれに関連する神経変性、ならびに外傷性脳損傷の神経変性またはその結果。
【0043】
日焼け、にきび、白斑、円形脱毛症(alopecia arreata)、光過敏障害、色素欠乏症、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、乾燥肌およびポルフィリン症。
【0044】
鬱病、不安、強迫衝動(強迫神経症)、神経症、精神病、不眠症/睡眠障害、睡眠時無呼吸、および薬物または物質の乱用などの神経変性障害。
【0045】
性的不能、性欲減弱および勃起障害(勃起の達成または維持不能、射精不能、早漏、オルガスムス達成不能など)などの男性の性機能障害。性的覚醒障害または性欲、性的受容性、オルガスムス、および/または性的機能の誘発点の障害に関する障害、ならびに性交痛、早産、月経困難症、月経過多および子宮内膜症などの女性の性機能障害。
【0046】
肥満および拒食症(例えば、食欲、代謝率、脂肪摂取または炭水化物欲求の変化による);および糖尿病(耐糖能亢進および/またはインスリン抵抗性低下による)などの体重障害。
【0047】
肺、前立腺、結腸、乳、卵巣および骨の癌、皮膚の癌(例メラノーマ浸潤)、または固形腫瘍の形成または成長などの新生物障害。
【0048】
肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、およびシクロスポリン誘発腎症などの線維症。
【0049】
猫免疫不全ウイルス、ウシ免疫不全ウイルスおよび犬免疫不全ウイルスなどの家畜ウイルス感染症などの獣医学的疾患。
【0050】
ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎および微生物感染。
【0051】
本発明の医薬および化粧品組成物は、例えば、固体、半固体または液体形で、外用、腸内または非経口投与に適した有機または無機の担体または賦形剤との混合物中、活性成分として化合物WS727713のようなメラノコルチン受容体モジュレーターを含有する医薬製剤の形で用いられる。活性成分は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル剤、坐剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、軟膏、リニメント、点眼剤、ローション、点眼剤、ローション、ゲル、クリーム、および使用に適切なその他の形態のために、通常毒性のない医薬的に許容可能な担体と混合され得る。
【0052】
使用し得る担体は、固体、半固体または液体形である、水、グルコース、ラクトース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、スターチペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイダル シリカ、ポテトスターチ、尿素および製剤を製造する際の使用に適したほかの担体である。加えて、補助剤、安定剤、増粘剤、溶解剤および着色剤ならびに香料を用いてもよい。
【0053】
ヒトにその組成物を適用するために、静脈内、筋肉内、局所または経口投与によって適用するのが好ましい。一方化合物WS727713などのメラノコルチン受容体モジュレーターの治療有効量の投与量は、治療する個々の患者の年齢及び状態によって変化し依存もする。個々の患者が治療を受ける場合、静脈内投与の場合、化合物WS727713などのメラノコルチン受容体モジュレーターの1日量0.001-100 mg/kg体重(ヒト)、筋肉内投与の場合、化合物WS727713などのメラノコルチン受容体モジュレーターの1日量0.001-100 mg/kg体重(ヒト)、また経口投与の場合、化合物WS727713などのメラノコルチン受容体モジュレーターの1日量0.01-320 mg/kg体重(ヒト)を通常治療のために与える。
【実施例】
【0054】
実施例
以下の実施例は本発明をより詳細に説明する目的のために与えられる。
【0055】
実施例1
(1)WS727713の生産のためのPseudonocardia sp. No.727713の醗酵:
白金耳量の斜面培養物を、広口三角フラスコ(225 ml)中の2% 可溶性スターチ、0.8% 酵母エキスおよび0.5% 寒天を含有する滅菌されたシード培養培地(滅菌前にpH 7.0に調整)60 mlに植え付けた。フラスコをロータリーシェーカー(220 rpm、5.1 cm-throw)で30℃で7日間インキュベートして、それから5個の広口三角フラスコ(225 ml)中の同じ滅菌された培地80 mlにそれぞれ植え付けた(2%)。該フラスコをロータリーシェーカー(220 rpm、5.1 cm-throw)で30℃で4日間インキュベートした。
【0056】
得られたシード培養物は30リットルジャーファーメンター中の滅菌した生産培地の20リットルに植え付けた(2%)。生産培地は、1% グルコース、1.5% 可溶性スターチ、0.5% 酵母エキス、1% β-シクロデキストリン、1% CaCO3、0.05% アデカノール LG-109 (旭電化工業株式会社、日本)および0.05% Silicone KM-70 (信越化学株式会社、日本)から構成した(滅菌前にpH 7.0に調整)。醗酵は通気20 L/分および200rpmの撹拌下において28℃で5日間行った。
醗酵ブロス中のWS727713の生産は下記に示すHPLC分析により計測した。
【0057】
(分析用HPLC条件)
カラム Mightysil RP-18 GP 150-4.6, 5 mm
(5 μm, 4.6 mm ID×150 mm L、関東化学株式会社、日本)
溶離液 CH3CN:H2O=35:65
流速 1 ml/分
温度 室温
検出 UV 210 nm
保持時間 9.3分
【0058】
(2)WS727713の単離:
培養が完了後、培養ブロス(16L)を、室温で、等量のアセトンで数分撹拌して抽出した。抽出物を、珪藻土を用いて濾過した。濾液を真空で濃縮して水溶液を得た(15L)。該溶液をDiaion HP20 (三菱化学株式会社)カラム(800 ml)にかけ、カラムを20% アセトニトリル (4 L)で洗浄した。カラムを40% アセトニトリル (2.4 L)および60% アセトニトリル (3.6 L)で溶出した。溶出液(6.0L)を水で12Lに希釈して、水で充填したDaisogel SP-120-ODS-Bカラム(1L)(15/30 μm,ダイソー株式会社、日本)にかけた。カラムを32.5% アセトニトリルで溶出した。溶出は、上記に示した分析用HPLCにより測定した。WS727713を含有するフラクションを集めて真空で濃縮し、粉末を得た。この粉末を少量のメタノールで溶解し水から結晶化させた。結晶を濾過し乾燥させて白色針状物として1.5 gのWS727713を得た。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の新規化合物はメラノコルチン受容体調節活性を有し、抗炎症剤の活性成分として有用であり、メラノコルチン受容体の調節に反応する病気に対する治療または予防剤として有用である。
【0060】
本出願は、オーストラリアで出願された特許出願番号2004901919を基礎にして、その内容は本明細書に全て包含される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、赤外線スペクトルのチャートを示す。
【図2】図2は、H核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す。
【図3】図3は、13C核磁気共鳴スペクトルのチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の性質を有する、実質的に純粋なWS727713化合物:
a) 分子式: C30H44N8O8
b) 1H 核磁気共鳴スペクトル :
(500 MHz, DMSO-d6) δ
9.76 (1H, s, 交換可能), 8.76 (1H, d, J=7.5 Hz, 交換可能), 8.23 (1H, d, J=5 Hz, 交換可能), 7.76 (1H, dd, J=8.5 および 3 Hz, 交換可能), 7.25 - 7.17 (5H, m), 5.71 (1H, dd, J=10.5 および 5 Hz), 5.08 (1H, dd, J=11 および 4 Hz, 交換可能), 5.03 (1H, m), 4.99 (1H, m), 4.92 (1H, m), 4.85 (1H, m), 4.83 (1H, d, J=3 Hz, 交換可能), 4.76 (1H, br d, J=12 Hz, 交換可能), 4.12 (1H, dd, J=16.5 および 8.5 Hz), 3.65 (1H, dd, J=16.5 および 3 Hz), 3.58 (1H, m), 3.07 (1H, dd, J=13.5 および 8.5 Hz), 2.94 (1H, br d, J=13 Hz), 2.86 (1H, dd, J=13.5 および 6 Hz), 2.73 - 2.68 (2H, m), 2.58 (1H, m), 2.24 (1H, br d, J=13 Hz), 2.08 (1H, br d, J=14 Hz), 1.88 (1H, m), 1.67 (1H, m), 1.55 (1H, m), 1.42 - 1.36 (2H, m), 1.21 (1H, m), 1.19 (3H, d, J=7 Hz), 1.09 (1H, m), 0.76 (3H, d, J=6.5 Hz), 0.75 (3H, d, J=6.5 Hz).
c) 13C 核磁気共鳴スペクトル :
(125 MHz, DMSO-d6) δ
173.8 (s), 171.7 (s), 170.4 (s), 169.8 (s), 169.1 (s), 167.6 (s), 137.2 (s), 129.2 (d) x2, 128.0 (d) x2, 126.3 (d), 60.2 (d), 53.2 (t), 51.1 (d), 50.8 (d), 49.6 (d), 47.4 (d), 47.0 (t), 44.7 (d), 41.2 (t), 36.4 (t), 35.4 (t), 33.2 (t), 23.6 (d), 23.5 (t), 23.1 (q), 21.7 (q), 21.0 (t), 15.8 (q).
【請求項2】
寄託番号FERM BP-7570を有する、Pseudonocardia属に属する放線菌(actinomycetes)株。
【請求項3】
培地中で請求項2の放線菌株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することにより得られた、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物。
【請求項4】
培地中で、Pseudonocardia属に属するWS727713産生株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することを含む請求項1のWS727713化合物の製造方法。
【請求項5】
Pseudonocardia属に属するWS727713産生株が、請求項2の放線菌株である請求項4の方法。
【請求項6】
請求項1のWS727713化合物またはその塩および医薬的に許容可能で、実質的に毒性のない担体または賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項7】
薬剤または化粧品としての使用のための請求項1の化合物またはその塩。
【請求項8】
培地中で、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物を産生するPseudonocardia属に属する放線菌株を培養し、該化合物を回収することを含む、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物の製造方法。
【請求項9】
培地中で、メラノコルチン受容体調節活性を有する化合物を産生するPseudonocardia属に属する放線菌株を培養し、その培養ブロスから化合物を回収することより得られたメラノコルチン受容体調節活性を有する化合物。
【請求項10】
請求項1の化合物またはその塩を含有するメラノコルチン受容体モジュレーター。
【請求項11】
請求項1の化合物またはその塩をヒトまたは動物に投与することを含むメラノコルチン受容体を調節する方法。
【請求項12】
メラノコルチン受容体を調節するための薬剤または化粧品の製造のための請求項1の化合物またはその塩の使用。
【請求項13】
請求項1の化合物またはその塩および医薬的に許容可能で、実質的に毒性のない担体または賦形剤を含有する、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための医薬組成物。
【請求項14】
請求項1の化合物またはその塩をヒトまたは動物に投与することを含む、虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための方法。
【請求項15】
虚血(ishemia)/再かん流傷害、脳および腎臓の炎症性疾患、肝炎、敗血症/敗血症性ショック、低酸素性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、関節リウマチ(RA)、痛風性関節炎、大動脈弁閉鎖不全症(AR)、若年性慢性関節炎、変形性関節症、腎炎、耐性誘導、接触過敏症、炎症性腸疾患(IBD)、性機能障害、移植、痛み、HIVの疾患の増悪、炎症後色素脱失、癜風、特発性滴状低メラニン症、発熱、機能性腸疾患、肥満、満腹効果、糖尿病、皮膚外分泌機能の調節、白髪(限局性白髪)、白髪交じりの髪(gray hair)、膵炎、線維症(肥厚性瘢痕、ケロイド、限局性強皮症、全身性硬化症、強皮症皮膚移植片対宿主拒絶反応、肝硬変、特発性ブレオマイシン誘発肺線維症、シクロスポリン誘発腎症)、ブドウ膜炎(特にベーチェット症候群およびサルコイドーシスにおける)、血管炎、微生物感染、セリアック病、外陰部膣前庭炎症候群、メラノーマ浸潤または拒食症を治療または予防するための薬剤の製造のための請求項1の化合物またはその塩の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−532476(P2007−532476A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535124(P2006−535124)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005653
【国際公開番号】WO2005/097973
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】