説明

化学プローブ組立体及び原子炉内で化学プローブ組立体を用いる方法

【課題】化学プローブ組立体及び原子炉内で化学プローブ組立体を用いる方法を提供すること。
【解決手段】電気化学的腐食電位(ECP)プローブ組立体は、運転中の原子炉において冷却材の化学的性質に起因した材料のECPを監視するのに用いることができる。例示的な実施形態の組立体は、潜在的に複数の異なる原子炉材料についての構成要素ECPを検出する少なくとも1つのECPプローブと、ECPプローブを覆う冷却材用流体流路を提供する構造体と、ECPプローブによって検出されたECPデータを外部受信機に送信又は搬送する信号送信機とを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
図1に示すように、沸騰水型原子炉(BWR)などの従来の原子炉は、ほぼ円筒形状の原子炉圧力容器(RPV)12を含むことができる。RPV12は、下端部において下部ヘッド28により閉鎖され、上端部において取り外し可能な上部ヘッド29により閉鎖することができる。円筒形炉心シュラウド34は、原子炉心36を囲むことができ、該原子炉心は、核分裂により出力を発生する複数の核燃料要素を含む。シュラウド34は、一方端において、シュラウド支持体38により支持することができ、他方端において、取り外し可能シュラウドヘッド39及びセパレータ管組立体を含むことができる。燃料バンドルは、炉心36のベースに位置付けられた炉心プレートにより整列させることができる。1つ又はそれ以上の制御ブレード20は、炉心36内に上向きに延びて、炉心36の燃料要素内の核分裂連鎖反応を制御するようにすることができる。加えて、1つ又はそれ以上の計装管50は、下部ヘッド28を通してなど、RPV12の外部から原子炉心36内に延びて、中性子モニター及び熱電対などの計装器を外部の位置から炉心36内に挿入し且つ密閉可能にすることができる。
【0002】
水などの流体冷却材は、炉心36及び炉心プレート48を通って上方に循環され、燃料要素の核分裂によって発生する熱により少なくとも部分的に蒸気に転換される。蒸気は、セパレータ管組立体及び蒸気乾燥器構造体15において分離及び乾燥され、RPV12の上部付近の主蒸気ノズル3を通ってRPV12から流出する。RPV12を通って循環され且つ内部で沸騰される冷却材は、典型的には純粋であり、冷却材の化学的性質を向上させる一部の添加剤を除いて脱イオン化される。RPV12内の構成要素及び燃料に対して不活性の安定した冷却材の化学的性質を維持する試みがなされているが、冷却材の化学的性質は、運転上の要求事項に適合するよう調整され、構成要素障害を通じて変更することができる。例えば、可溶性中性子吸収体を冷却材に添加し、炉心36内の核反応を良好に制御することができ、さもなければ、核分裂生成物が炉心36内の燃料要素の障害により意図せずに冷却材内に漏洩され、又は高温の被覆材−冷却材反応により燃料要素内に水素が生成される可能性がある。
【0003】
従来、上記で検討した原子炉内部に対する冷却材の化学的性質の影響を把握するため、並びに冷却材の化学的性質を運転要件に適合するよう成功裏に調整するために、幾つかの機構を通じて冷却材の化学的性質が監視されている。例えば、種々の冷却材条件における材料の腐食及び亀裂形成を反映した電気化学的腐食電位(ECP)すなわち原子炉内で使用される材料の特性は、循環している冷却材と接触したECPプローブにより監視することができる。RPV12へのアクセスは、運転中及び冷却材循環中は制限されて困難であり、その結果、ECP監視に利用可能であるのは特定の位置だけになる可能性がある。ECPプローブは、計装管50内の種々の位置に配置され、計装管内のサンプリング孔を通じて循環している冷却材と接触して構成要素のECPを測定することができる。下部ヘッド28のドレイン管路(図示せず)又は他の冷却材配管内に別のECPプローブを配置し、構成要素のECPに対する冷却材の化学的性質をサンプリングすることができる。例えば、ECPプローブは、軽減監視システム(Mitigation Monitoring System)マニホールド又は再循環配管システム(Recirculation Piping System)内に配置され、そこを流れる冷却材と接触し構成要素のECPを測定することができる。同様に、冷却材は、冷却材ループ保守整備中のRPV12から取り出され、実験室用オートクレーブ中の原子炉レベル状態にまで引き上げられ、RPV12外部のECPプローブを用いてECPをサンプリングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,623,611号明細書
【特許文献2】米国特許第5,192,414号明細書
【発明の概要】
【0005】
例示的な実施形態は、運転中の原子炉において冷却材の化学的性質から生じる構成要素の電気化学的腐食電位(ECP)特性を監視するのに用いることができるECPプローブ組立体に関する。例示的な実施形態の組立体は、潜在的に複数の異なる原子炉材料についての構成要素ECPを検出する少なくとも1つのECPプローブと、ECPプローブを覆う冷却材用流体流路を提供する構造体と、ECPプローブによって検出されたECPデータを外部受信機に送信又は搬送する信号送信機とを含む。ECPプローブは、何らかの数及び/又はタイプのものとすることができ、原子炉冷却材に曝される、ステンレス鋼、ジルコニウム合金、その他を含む異なる構成要素材料のECPを検出するようになる。ECPプローブは更に、イオン濃度、pH、その他を含む冷却材の化学的性質を検出し、冷却材に曝される材料の腐食又は亀裂電位を測定することができる。ECPプローブは、流体流路内で構造体内に収容され、冷却材が接触してECP検出が最大になるようにすることができる。ECPプローブ組立体は、流体流量及びECP検出を強化するために、冷却材入口においてベンチェリ又は他の構造を含むことができる。ECPデータは、有線又は無線信号送信機を通じて外部受信機に送信することができ、その結果、原子炉内部にアクセスすることなく、運転中の原子炉内の材料の健全性を評価することができるようになる。
【0006】
例示的な方法は、原子炉及び設備において例示的な実施形態のECPプローブ組立体を設置及び利用する段階を含む。例示的な方法は、設備内の所望の位置にECPプローブ組立体を固定する段階と、ECPデータを受け取り及び/又は処理してこれに基づいて設備を運転させることができる受信機にECPプローブを通信可能に接続する段階とを含む。設置位置は、所望の位置に近接した設備内の構成要素及び/又は所望の位置での予想される流体状態に基づいて決定することができる。例えば、ECPプローブ組立体は、炉心シュラウド壁34上又は原子炉圧力容器12内の炉心の上部に設置することができ、ここは、
冷却材の化学的性質が原子炉運転に大きな影響を及ぼす場所であるが、これまでは達成することができなかった。ECPプローブ組立体は、延長部を含むことができ、該延長部を通じて組立体を所望の位置の近傍構造に固定できるようになる。例示的な方法は、流体がECPプローブ組立体を通って流れるようにECPプローブ組立体を位置決めすることができる。例示的な方法は更に、通信導管が炉心シュラウド壁34を下り炉心プレート48に延び、更に炉心プレート48を超えて計装管50に延びることにより、原子炉内でECPプローブと計装管との間に通信導管を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来の原子炉圧力容器及びその内部の図。
【図2】例示的な実施形態のECPプローブ組立体の図。
【図3】例示的な方法において原子炉に設置された例示的な実施形態のECPプローブ組立体の図。
【図4】例示的な方法において原子炉に設置された例示的な実施形態のECPプローブ組立体の別の図。
【図5】例示的な方法において原子炉内でECPプローブから計装管まで通る導管の図。
【図6】例示的な方法において原子炉内で計装管を接合する導管の図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、添付図面を参照しながら例示的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本明細書で開示される特定の構造及び機能の詳細事項は、単に例示的な実施形態を説明する目的で表しているに過ぎない。例示的な実施形態は、多くの代替形態で具現化することができ、本明細書で記載される例示的な実施形態にのみ限定されるものと解釈すべきではない。
【0009】
第1、第2、その他の用語は、本明細書で様々な要素を説明するのに用いることができるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでないことは理解されるであろう。これらの用語は、単に、ある要素を別の要素と区別するのに使用される。例えば、例示的な実施形態の技術的範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、また同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で用いる場合に「及び/又は」という用語は、関連する記載項目の1つ又はそれ以上のいずれか及び全ての組合せを含む。
【0010】
ある要素が別の要素と「接続」、「結合」、「嵌合」、「取り付け」、又は「固定」されていると言及される場合、ある要素は他方の要素に直接接続又は結合することができ、或いは、介在する要素が存在できる点は理解される。これとは対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続」又は「直接結合」されていると言及される場合には、介在する要素は存在しない。要素間の関係を説明するのに使用される他の用語も同様に解釈すべきである(例えば、「〜間」と「〜間に直接」、「隣接」と「直近」、その他)。
【0011】
本明細書で使用される単数形態は、前後関係から明らかに別の意味を示さない限り複数形態も含む。更に、本明細書内で使用する場合に、用語「備える」及び/又は「備えている」という用語は、そこに述べた特徴部、完全体、ステップ、動作、要素及び/又は構成部品の存在を明示しているが、1つ又はそれ以上の他の特徴部、完全体、ステップ、動作、要素、構成部品及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことは理解されるであろう。
【0012】
幾つかの代替の実施においては、記載された機能/動作は、図に記載された順序又は本明細書において説明した順序とは異なる順序で行うことができる点に留意されたい。例えば、連続して示した2つの図は、含まれる機能/動作に応じてほぼ同時に実施することができ、又は逆の順序で実施することもできる。
【0013】
本出願の発明者らは、従来の電気化学的腐食電位(ECP)監視装置及び方法に関して、これまでに認識されていない特定の幾つかの問題を抱えている。例えば、原子炉圧力容器内の複数の位置において原子炉冷却材中の材料に関するECPデータの収集及び伝送は、運転中の原子炉圧力容器へのアクセスが制限されることに起因して実施可能ではない場合がある。計装管においてECPプローブに利用しやすい冷却材は、化学的性質、温度、圧力、その他が異なる場合があり、炉心、シュラウド溶接部付近、蒸気乾燥器の下、その他など、原子炉圧力容器の他の重要な位置にある材料とは異なる材料ECP特性値がもたらされる。その上、これらの異なる位置近傍の放射線レベルは様々であり、材料ECPに対する影響が計装管の直ぐ近くよりも大きい場合もある。このため、冷却材の化学的性質によるECP損傷を受けやすい他の原子炉圧力容器内部に放射線及び冷却材がどれほど影響を及ぼすかを正確に判定することは難しい可能性がある。更に、複数の計装管におけるECPプローブの配置は、複数の計装管内にECPプローブを配置することにより管内の他のタイプの計装器に利用可能なスペースが制限され、及び/又はこのような管への冷却材漏洩の可能性が高くなる場合がある。以下で検討する例示的な実施形態及び方法は、原子力発電プラントにおいて、原子炉内の複数の位置において改善された材料ECP監視、改善された炉心冷却材の化学的性質の制御、計装管の使用スペースの低減、及び/又は以下で検討する他の利点又は検討していない他の利点を含む、幾つかの利点を達成するために従来のECP監視に関してこれまで認識されていないこれらの影響に独自に対処する。
【0014】
(例示的な実施形態)
図2は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100の例図である。図2に示すように、ECPプローブ組立体100は、少なくとも1つのECPプローブ150を含む。例えば、ECPプローブ組立体は、4つのECPプローブ150a、150b、150c、150d、又は他のいずれかの所望の数のプローブを含むことができる。ECPプローブ150は、公知のタイプのECPプローブとすることができる。例えば、引用により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,192,414号は、冷却材中のステンレス鋼のECPを測定するためにステンレス鋼電極を備えたECPプローブを開示している。ステンレス鋼構成要素のECP、すなわち損傷の可能性は、冷却材と接触したときにステンレス鋼電極に発生する電圧によって測定することができる。或いは、例えば、双方とも引用により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,222,307号及び第6,623,611号は、pHレベルのような冷却材特性に基づいて、ジルカロイのような他の材料のECPを測定するプラチナ及び/又はジルコニウム合金先端を備えた他のタイプのECPプローブを開示している。
【0015】
ECPプローブ150a、b、c、dは、同じタイプ又は異なるタイプとすることができる。例えば、ECPプローブ150a及び150dは、ステンレス鋼に関してECPを測定することができ、ECPプローブ150cはインコネルに関してECPを測定することができ、ECPプローブ150bは更に、ジルコロイに関してECPを測定することができる。例示的な実施形態のECPプローブ組立体100において、例えば、対象の原子炉で使用される材料のタイプ、原子炉内に設置されている例示的な実施形態に最も近い構成要素の材料のタイプ、及び/又は冷却材化学的性質の予想される特定のタイプに基づいて、ECPプローブ150のあらゆる数及びそのタイプの組み合わせを用いることができる。例えば、ECPプローブ150c及び150dは、セラミックボール状構造内にクラスター化された鉄フェライトセンサ粒子を有するセラミックボール状プローブとすることができ、ECPプローブ150a及び150bは、セラミックボール状プローブ150d及び150cと同様に位置付けられた円筒プローブ内のプラチナ粒子を有するプラチナ形センサとすることができる。
【0016】
ECPプローブ150a、150b、150c、150dは、原子炉運転中のように、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100を通る冷却材流体流160と接触するようにECPプローブ組立体100内に装着される。例えば、ECPプローブ150a、150b、150c、及び150dは、該ECPプローブ150a、150b、150c、及び150dにおける活性電極が冷却材流体流160に対面するようにアライメントハウジング155内に装着することができる。或いは、1つ又はそれ以上のECPプローブ150は、冷却材流体流160に対してある角度又は垂直に位置することができる。アライメントハウジング155は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100の構造体110内でECPプローブ150と堅固に整列することができる。例えば、アライメントハウジング155は、溶接されるか、或いは、例えば、平頭ネジ、ピン、タング、磁石、接着剤、その他とすることができるファスナー101により構造体110に固定することができる。
【0017】
構造体110は、ECP監視のためECPプローブ150を作動冷却材と接触した状態に維持するように、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100を通る冷却材流体流160を収容し送り込むように全体的に密閉することができる。スクリーンメッシュ又は有孔プレートのような出口フィルター190は、冷却材流体流160を構造体110から流出させ、場合によっては冷却材内に係脱する可能性があるECPプローブ組立体100の何れかの部分を捕らえることができる。検出ウィンドウ151(図4)は、ECPプローブ150a、150b、150c、及び150d、その他を覆って構造体110内に含めることができる。検出ウィンドウ151は、光又は特定のタイプの放射線に対して透過性にすることができ、その結果、プローブは、アルファ、ベータ、及びチェレンコフ放射線のような電磁放射線を含む、原子炉内の放射線を検出することができるようになる。例えば、検出ウィンドウ151は、最大曝露を許容するよう覆いのない開口とすることができる。
【0018】
或いは、構造体110は、該構造体110内で要求に応じて冷却材流量、圧力、その他を調整するための他の孔又は開口を含み、もしくは形成することができる。構造体110は、ほぼ矩形の断面を備えて図示されており、例えば、約4インチ×3インチの矩形断面寸法を有することができる。勿論、構造体110は、円筒形、方形、円錐形、その他を含む、少なくとも1つのECPプローブ150及び冷却材流160を収容する何らかの形状又はサイズにすることができる。構造体の形状及びサイズは、液体冷却材流160の所望の流量又は質量流量を得るため、対象の原子炉内で所望の位置決めを得るため、及び/又は他のいずれかの所望の運転特性を得るために変えることができる。
【0019】
例示的な実施形態のECPプローブ組立体100は更に、構造体110内で冷却材流体流160が流れる入口及び出口190を含む。入口は、例示的な実施形態の組立体100を通る液体の冷却材流160の速度を増大させ、及び/又は液体冷却材流160を原子炉のより大きな流れ断面から集めて平均の冷却材化学的性質を良好に推定するベンチェリ120を含むことができる。或いは、所望の冷却材の流量及び容量をもたらすために、例示的な実施形態のECPプローブ組立体においてベンチェリ120の代わりに又はこれと組み合わせて、ディフューザ、チョークプレート、フィルター、その他を含む他の入口構造を用いることができる。ベンチェリ120又は他の何らかの構造は、ファスナー101又は、例えば、溶接又は摩擦を含む、他のいずれかの接合機構を用いて構造体110に固定することができる。
【0020】
流体冷却材が例示的な実施形態のECPプローブ組立体100を通って流れると、1つ又はそれ以上のECPプローブ150は、冷却材流中の関連材料のECPを示す電気的信号又は他の信号を生成する。これらの信号は、例えば、配線又は他の回路を含むことができる伝送媒体141を通って送信することができる。伝送媒体141はまた、ECPプローブ150からの信号を電磁波によって、例えば外部受信機に送信する無線送信機を含むことができる。ECPプローブ150は、外部電力なしで作動することができるが、電気的又は他の伝送媒体141は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100のあらゆる構成要素に電力を供給することができる。伝送媒体は、ECPプローブ150に通信可能に接続され、通信ポート140を通じて組立体100から出ることができる。
【0021】
アクセスプレート130は、構造体110から取り外し可能にすることができ、特に組立体100が取り外しできない又は他のアクセスができない区域に設置されている場合に、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100内部の構成要素に特別にアクセスできるようにする。例示的な実施形態のECPプローブ組立体100は更に、本体中間の延長部170及び/又は下部延長部175など、1つ又はそれ以上の外部固定構造を含むことができる。延長部170及び/又は175は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100の外部構成要素への接合、締結、結束、その他を可能にし、組立体100を原子炉内の特定の垂直位置に堅固に固定させるようにすることができる。例えば、本体中間延長部170は、そこを貫通するボルトを収容し、組立体100をフランジに接合することができる。このようにして、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100は、所望の位置に固定され、原子炉運転中の再配置又は冷却材流160の損失を伴うことなく特定の原子炉構成要素付近の冷却材ECP特性を測定することができる。勿論、所望の位置特性を確保するために、例示的な実施形態の組立体と共に他の接合/固定装置及び機構も使用可能である。
【0022】
例示的な実施形態のECPプローブ組立体と共に使用可能な上述の構成要素は、原子炉内の作動条件に耐えるように設計された材料から製造することができる。例えば、ベンチェリ120、構造体110、アライメントハウジング155、及び/又は延長部175、170のいずれも、高い放射能レベル及びタイプを有する高圧/高温の水性環境においてその物理的特性を実質的に維持する、ジルカロイ、オーステナイト系ステンレス鋼、ニッケル合金、その他から製作することができる。或いは、例えば、例示的な実施形態のECPプローブ組立体で使用される材料は、材料の不適合性及び汚損を最小限にするように、プローブが設置されている材料に一致するよう選択することができる。
【0023】
従って、例示的な実施形態のECPプローブ組立体は、運転中の原子炉のような幾つかの過酷な環境で使用可能である。例示的な実施形態に関連して上記で検討した幾つかの機能は、ECPプローブ組立体の特定の応用及び/又は所望の作動特性に基づいて再構成又は省略することができる。例示的な実施形態のECPプローブ組立体100は、以下で検討する例示的な方法に従って設置及び使用することができるが、例示的な実施形態のプローブ組立体に関して、他の用途及び設置位置を適用可能である点は理解される。
【0024】
(例示的な方法)
例示的な方法は、原子炉において例示的な実施形態のECPプローブ組立体100のようなECPプローブ組立体を設置する段階を含む。例示的な方法は、原子力発電プラント内にECPプローブ組立体を設置するための位置を決定する段階を含む。運転中の原子炉内で流れている冷却材と接触するあらゆる位置を選ぶことができる。この位置は、計装管のアクセス又は他の原子炉容器アパーチャのアクセスには依存しない。例えば、図3に示すように、シュラウドヘッド39の直ぐ下にあるフランジにおいて炉心シュラウド34の内側円周面の付近の位置は、炉心シュラウド34内の溶接部に近接していること、これらの構成要素及び溶接部が受ける放射線レベルが高いこと、及び/又はその位置の直ぐ下で炉心36(図1)から出た後に高い熱エネルギーを冷却材が処理することによるその位置での冷却材の化学的性質に起因して、関心のある位置とすることができる。炉心シュラウド34上の位置付近には容器アパーチャ又は他のアクセス点が存在しないか、又は僅かしか存在しない場合があるので、ここに設置された例示的な実施形態のECPプローブ組立体は、プラント運転及び監視の改善のために固有のデータを集めることを可能にすることができる。このような位置として、ECPプローブ組立体は、炉心シュラウド壁34上の主要な溶接継手の熱影響域付近の金属化学的性質を検出することができ、ECPプローブ150a、150b、150c、150dは、正確なECP測定を行うために、検出された金属面から約0.25インチ以内に離れて垂直方向で整列することができる。冷却材中の材料ECP特性の同様の関心事項に基づいて、原子力プラント及び/又は原子炉内の他の位置を選ぶことができる。
【0025】
ECPプローブ組立体は、所望の位置に設置され、その位置において材料ECP特性を受け取り且つ監視することができる。設置は、プラント製作中、燃料供給停止中、又はその位置にアクセス可能である他のいずれかの期間中に行うことができる。ECPプローブ組立体は、原子炉内の構成要素を安全に位置決めする幾つかの公知の方法によって設置することができる。例えば、ECPプローブ組立体100は、図3における炉心シュラウド34の表面に溶接することができる。或いは、図4に示すように、例えば、下部延長部(図2)をラグボルト及び/又はピン170を用いてシュラウドヘッド39の直ぐ下の炉心シュラウド34のフランジにボルト締めすることができる。ガスナー、ネジ、タング/レセプタ嵌合、或いは、結束、摩擦、又は接着を含む機構を用いることを含む、ECPプローブ組立体を所望の位置に設置及び固定する幾つかの代替の方法が実施可能である。
【0026】
所望の位置に設置されると、ECPプローブ組立体100を通る冷却材流160を生じる原子炉内の発電運転又は他の事象を開始することができる。必須ではないが、流体冷却材が原子炉容器を通って流れるときに、該流体冷却材がECPプローブ組立体100を通って流れるのを可能にするよう、既知の冷却材流160に対してECPプローブ100を設置することができる。例えば、冷却材流160の組立体の通過を確保するために、ECPプローブ組立体100からの冷却材出口の周りにクリアランスを維持することができる。運転中にECPプローブ組立体100内で個々のECPプローブと接触する冷却材は、材料ECP特性について監視することができる。例えば、ステンレス鋼及びジルカロイのECPを測定するECPプローブは、活性冷却材と接触し、ECPプローブ組立体100の位置にて冷却材からステンレス鋼又はジルカロイのECPを検出することができる。ECPプローブ検出により、実際の原子炉材料に対してのECPプローブ100の位置付近での冷却材の影響に起因した材料腐食及び可能性のある亀裂形成を正確に推定することができる。
【0027】
ECPプローブは、例えば、原子炉の外部にあるユーザ受信機により検出される電磁信号を用いて、腐食、pH、他の自由イオン、その他を反映した電圧を含むデータを設置されたECPプローブ組立体内の送信機を通してユーザに直接送信することができる。例示的な方法において設置されたECPプローブ組立体が信号を送信するために配線接続を必要とする場合、例示的な方法において伝送導管が更に設置される場合がある。例えば、図4に示すように、伝送導管200は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体100において図2に示す通信ポート140から、炉心シュラウド34の壁の下方に炉心プレート48上に設置することができる。伝送導管200は、例えば、伝送媒体141を隔離及び分離する耐放射線強化された1インチ又はそれよりも小さいパイプ又は管体とすることができ、該伝送媒体は、管体内でECPプローブからのECPデータを搬送する無機絶縁配線とすることができる。
【0028】
図4に示す伝送導管200は、ECPプローブ組立体100からの通信ルートを提供するため、他の特徴要素への屈曲、方向転換、又は接合を行うことができる。1つ又はそれ以上の留め具は、炉心シュラウド34の壁又は他の構成要素に対して伝送導管200を固定及び/又は案内し、例えば、伝送導管200の緩み又は振動を防ぐようにすることができる。
【0029】
図5に示すように、伝送導管200は、炉心シュラウド34の壁の下方に炉心プレート48まで延び、ここで屈曲され、すなわち炉心プレート48上で炉心プレート48を通過する計装管に通される。この経路設定では、伝送導管200は、原子炉を通る冷却材流への影響を最小限にすることができ、及び/又は原子炉運転を妨げないようにすることができる。伝送媒体141(図2)は、原子炉冷却材に曝露されることなく伝送導管200を完全に通り抜けることができる。放射線及び/又は熱遮蔽を伝送導管200内に設け、伝送媒体141上に対する原子炉運転状態を最小限にすることができる。例えば、上記で検討したように、伝送媒体141は無機絶縁配線とすることができる。
【0030】
図6に示すように、ここでは伝送導管200が計装管50に接合されており、伝送媒体141は、伝送導管200から計装管50内に通過することができる。この接合は、冷却材が計装管50に侵入するのを防ぐために、例えば、溶接250によってシールすることができる。次いで、伝送媒体141は、計装管50の下方に原子炉の外部に送給され、原子炉圧力容器12の外にあるドライウェル内に配置された従来のデータ収集システム処理装置に通信可能に接続することができる。或いは、伝送導管200は、外部にデータを送給するために、計装管又は他の原子炉容器内で使用される他のいずれかのアパーチャに連結することができる。
【0031】
ECPプローブ組立体100の設置、並びに原子炉運転中の設置位置における材料ECPに関するECPプローブ組立体からのデータを構成し且つ受け取ると、プラントオペレータは、プラント構成要素に対する冷却材の化学的性質の影響を正確に評価することができる。例示的な方法は、例示的な実施形態のECPプローブ組立体をプラント運転中にアクセスできない複数の位置に設置可能にし、また、例示的な実施形態のECPプローブ組立体は所望のECPプローブタイプで構成することができるので、運転中の原子炉内で、複数の異なる構成要素に関する複数の異なる位置での様々な材料のECPを遠隔で評価することができる。プラントオペレータは、プラント運転中に設置されたECPプローブ組立体から受け取ったデータに基づいて、プラント化学構成要素を調整して、構成要素の健全性の向上、構成要素損傷の低減、その他を行うようにすることができる。
【0032】
以上、例示的な実施形態及び方法を説明してきたが、当該例示的な実施形態は、これ以上の発明的活動もなく日常的な経験を介して例示的な実施形態を変更できることは、当業者には理解されるであろう。種々の変形形態は、例示的な実施形態の技術的思想及び範囲から逸脱するものとみなすべきではなく、当業者には明らかであるこのような全ての修正は、以下の請求項の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0033】
3 主蒸気ノズル
12 原子炉圧力容器(RPV)
15 蒸気乾燥器構造体
20 制御ブレード
28 下部ヘッド
29 上部ヘッド
34 炉心シュラウド、炉心シュラウド壁
36 原子炉心、炉心
38 シュラウド支持体
39 セパレータ管組立体、シュラウドヘッド
48 炉心プレート
50 計装管
100 例示的な実施形態のECPプローブ組立体、ECPプローブ組立体、組立体
110 構造体
120 ベンチェリ
130 アクセスプレート
140 通信ポート
141 伝送媒体
150 ECPプローブ
150a ECPプローブ
150b ECPプローブ
150c ECPプローブ, セラミックボール状プローブ
150d ECPプローブ, セラミックボール状プローブ
151 検出ウィンドウ
155 アライメントハウジング
160 冷却材流体流、液体冷却材流、流体冷却材流
170 本体中間延長部
175 下部延長部
200 伝送導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中の原子炉において使用可能な電気化学的腐食電位(ECP)プローブ組立体(100)であって、
運転中の原子炉内の流体が接触したときに、構成要素材料のECPを検出するよう構成された少なくとも1つのECPプローブ(150)と、
前記ECPプローブ(150)を収容し且つ前記流体を密閉して、該流体が前記組立体を通って流れて前記ECPプローブ(150)に接触するようになる構造体(110)と、
前記ECPプローブ(150)からの構成要素材料についてのECPを送信するよう構成された少なくとも1つの信号伝送媒体(141)と、
を備える組立体(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのECPプローブ(150)が複数のECPプローブ(150)であり、該複数のECPプローブ(150)の第1のECPプローブ(150a)及び第2のECPプローブ(150b)が異なる構成要素材料のECPを検出するように構成されている、請求項1に記載の組立体(100)。
【請求項3】
前記第1のECPプローブ(150a)がステンレス鋼を含み且つステンレス鋼のECPを検出し、前記第2のECPプローブ(150b)がジルコニウム合金を含み且つジルコニウム合金のECPを検出する、請求項1に記載の組立体(100)。
【請求項4】
前記第1のECPプローブ(150a)及び第2のECPプローブ(150b)の少なくとも1つが、プラチナ及び鉄フェライトセンサを含み、流体のpHに起因した構成要素材料のECPを検出する、請求項2に記載の組立体(100)。
【請求項5】
前記構造体(110)が、単一の流体入口と単一の流体出口とを含み、単一の流体流路(160)を提供するようにする、請求項1に記載の組立体(100)。
【請求項6】
前記信号伝送媒体(141)を外部回路に通信可能に接続するよう構成された通信ポート(140)を更に備え、前記信号伝送媒体(141)が導線であり、前記流体のECPが導線上で電気信号として送信される、請求項1に記載の組立体(100)。
【請求項7】
原子炉において電気化学的腐食電位(ECP)プローブ組立体(100)を設置する方法であって、
ECPプローブ組立体(100)を原子炉圧力容器(12)の内部に所望の方向及び位置で固定する段階を含み、
前記ECPプローブ組立体(100)が、
原子炉内で冷却材が接触したときに、構成要素材料のECPを検出するよう各々が構成された複数のECPプローブ(150)と、前記ECPプローブ(150)を収容し且つ前記冷却材を密閉して、該冷却材が前記組立体(100)を通って流れて前記ECPプローブ(150)に接触するようになる構造体(110)と、前記ECPプローブ(150)からの冷却材のECPを送信するよう構成された少なくとも1つの信号伝送媒体(141)と、
を備え、前記方法が更に、
前記ECPプローブ(150)を前記原子炉圧力容器(12)の外部にある受信機に通信可能に接続する段階を含む、方法。
【請求項8】
前記原子炉圧力容器(12)内で前記所望の位置に近接する構成要素、前記所望の位置における予想される冷却材状態、及び前記所望の位置における予想される放射線レベルに基づいて、前記所望の位置を決定する段階を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望の位置が、原子炉シュラウド壁(34)の主溶接継手の熱影響域の周りで前記原子炉圧力容器(12)内の炉心(36)上部の前記原子炉シュラウド壁(34)上にある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記通信可能に接続する段階が、ECPプローブと前記原子炉内の計装管(50)との間に通信導管(200)を接続する段階を含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127953(P2012−127953A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−268580(P2011−268580)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】