説明

化学ワイプ

基板表面を、有機リン酸または誘導体で処理したワイプに接触させるステップと、このワイプを基板表面の端から端まで移動させるステップとを含む、基板表面を処理する方法。実質的に水分を通さない容器内に、有機金属化合物で処理された材料を含むパッケージと、希釈剤を実質的に通さない容器内に、希釈剤に溶解または分散された、有機酸またはその誘導体を含むパッケージとを含む、表面を処理してその物理的性質を変化させるのに有用なキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2005年10月24日に出願された、米国仮特許出願番号60/729,631の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、化学ワイプ、様々な表面を処理するためのこのワイプの使用、このワイプを含有するパッケージ、および様々な表面で互いに組み合わせて使用するように設計された種々の化学ワイプのパッケージを含有するキットに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
清浄剤や殺菌剤などの様々な化学物質で処理されたワイプは、当技術分野で周知である。ワイプは、清浄化を目的として様々な表面を処理し、また抗菌保護などのある特定の性質を付与するのに使用することができる。
【0004】
眼鏡類やディスプレー装置などの様々な光学表面は、特にこの表面に反射防止膜を有する場合、塵を集めやすくまた染みが付きやすいこともまた公知である。汚れた染みは、清浄剤を含有する布で拭き取ることによって、除去または清浄化することができるが、そのような除去は、通常は一時的であり、その表面は、繰り返し塵を集める傾向がありまた染みが付く傾向があり、したがって、清浄化を繰り返し行う必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、繰り返し塵が集められる傾向、および染みが付きやすい傾向が低減するように、かつ/または、例えば柔らかい布で単に拭き取ることにより、繰り返し付いた染みが容易に除去され得るように、その処理においていくらかの永続性をもたらす手法により、そのような表面を処理することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、この問題に対処するものであり、染みが付く問題が著しく軽減されるように、光学表面を処理しまたこの表面の性質を変化させるのに使用することができる、化学ワイプを提供する。本発明のワイプは、例えば、表面がより親水的にまたは疎水的になるようにその表面の性質を変化させることが望まれる、その他の表面を処理するのにも使用することができる。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、下記を提供する:
(a)基板表面と、有機リンの酸またはその誘導体で処理されたワイプとを、直接または中間有機金属層を通して接触させるステップと、
(b)ワイプを基板表面の端から端まで移動させて、有機リンの酸またはその誘導体の被膜を、基板表面にまたは中間層に移すステップと
を含む、基板表面を処理する方法。
【0008】
基板表面をワイプで直接処理する場合、基板は必要に応じて、その表面に有効性が失われた疎水性コーティングを含有することができる。
【0009】
(a)基板表面と、有機酸またはその誘導体で処理されたワイプとを、中間有機金属層を通して接触させるステップと、
(b)ワイプを有機金属層の端から端まで移動させて、有機酸またはその誘導体の被膜を有機金属層に移すステップと
を含む、基板表面を処理する方法。
【0010】
必要に応じて、有機リンの酸などの有機酸を、典型的には噴霧によって有機金属層に付着させることができる。基板表面は、必要に応じて、その有効性が失われた疎水性コーティングを含有することができる。
【0011】
希釈液中に溶解または分散させた有機リンの酸またはその誘導体で処理された材料を、この希釈液を透過させない容器内に含むパッケージ。
【0012】
実質的に水分を透過させない容器内に、有機金属化合物で処理された材料を含むパッケージ。
【0013】
(a)実質的に水分を透過させない容器内に、有機金属化合物で処理された材料を含むパッケージと、
(b)実質的に希釈液を透過させない容器内に、希釈液中に溶解または分散された、有機酸またはその誘導体を含むパッケージと
を含む、表面を処理してその物理的性質を変化させるのに有用なキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(詳細な説明)
本発明のワイプは、典型的には、有機金属化合物で処理され、また一実施形態では場合に応じて有機酸で処理された、通常はシート形態にある可撓性多孔質材料を含む。「ワイプ」という用語は、物質で処理され、手で擦ることによってこの物質を表面に付着させるのに使用される材料を意味する。ほとんどの場合、ワイプは、手の指および親指により保持される。
【0015】
ワイプに関連した材料は、一般に吸収材料または吸着材料であり、例えば織布、不織布、または編地であり、フォームもしくはスポンジであり、または、場合に応じて、有機リンの酸および有機金属化合物を吸収しもしくは吸着させて保持するのに適しており、擦ることによってそのような物質を、処理がなされる表面に移すのに適したその他の構造である。
【0016】
不織布には、メルトブローン材料、コフォーム材料、エア−レイド材料、スパンボンド材料、ウェットレイド材料、ボンデッド−カーデッドウェブ材料、水流絡合(スパンレースとも呼ばれる)材料、およびこれらの組合せを含む、不織繊維シート材料を含めてもよい。これらの材料は、合成繊維もしくは天然繊維、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0017】
本明細書では、綿繊維、綿/ナイロンのブレンド、またはその他の織物などの織布材料を使用してもよい。スポンジの作製に使用される再生セルロース、およびポリウレタンフォームなども、本明細書で使用するのに適切であり得る。
【0018】
ワイプの処理に使用することができる有機酸には、その誘導体が含まれる。誘導体は、酸前駆体と同様に機能する材料であり、金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩などの酸塩、1から4個の炭素原子を含有する低級アルキルエステルなどの酸エステル、および酸錯体が含まれる。酸の有機基は、モノマー基であっても、オリゴマー基であっても、ポリマー基であってもよい。有機基は、カルボン酸、スルホン酸、および好ましくはリンの酸であり得る。
【0019】
モノマーカルボン酸およびスルホン酸の例は、
R−COOR’およびR−SO−OR’
であり、式中のRは、合計で1から30個、好ましくは6から20個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである。R’の少なくとも一部は、Hであることが好ましい。
【0020】
モノマーリン酸の例は、下式の構造
(RO)−P(O)−(OR’)
を有する化合物、または化合物の混合物であり、式中、xは1〜2であり、yは1〜2であり、x+y=3であり、Rは、好ましくは合計で1〜30個、好ましくは6〜18個の炭素を有する基であり、R’は、H、金属(アルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムなど)、または1から4個の炭素を有する低級アルキル(メチルやエチルなど)である。R’の一部はHであることが好ましい。リン酸の有機成分(R)は、不飽和炭素鎖(例えばオレフィン)を含む脂肪族(例えば、2〜20個、好ましくは6〜18個の炭素原子を有するアルキル)でもよく、またはアリールもしくはアリール置換部分でもよい。
【0021】
モノマーホスホン酸の例は、下式を有する化合物、または化合物の混合物であり、
【0022】
【化7】

式中、xは0〜1であり、yは1であり、zは1〜2であり、x+y+zは3である。RおよびR”は、好ましくはそれぞれ独立に、合計で1〜30個、好ましくは6〜18個の炭素を有する基である。R’は、H、金属(アルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムなど)、または1〜4個の炭素を有する低級アルキル(メチルやエチルなど)である。R’の少なくとも一部はHであることが好ましい。ホスホン酸の有機成分(RおよびR”)は、不飽和炭素鎖(例えばオレフィン)を含む脂肪族(例えば、2〜20個、好ましくは6〜18個の炭素原子を有するアルキル)でよく、またはアリールもしくはアリール置換部分でもよい。
【0023】
モノマーホスフィン酸の例は、下式を有する化合物、または化合物の混合物であり、
【0024】
【化8】

式中、xは0〜2であり、yは0〜2であり、zは1であり、x+y+z=3である。RおよびR”は、好ましくはそれぞれ独立に、合計で1〜30個、好ましくは6〜18個の炭素を有する基である。R’は、H、金属(アルカリ金属、例えばナトリウムやカリウムなど)、または1〜4個の炭素を有する低級アルキル(メチルやエチルなど)である。R’の一部はHであることが好ましい。ホスフィン酸の有機成分(R、R”)は、不飽和炭素鎖(例えばオレフィン)を含む脂肪族(例えば、2〜20個、好ましくは6〜18個の炭素原子を有するアルキル)でよく、またはアリールもしくはアリール置換部分でもよい。
【0025】
RおよびR”を構成し得る有機基の例には、長鎖および短鎖の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、および置換脂肪族炭化水素、および置換芳香族炭化水素が含まれる。置換基の例には、カルボキシル(カルボン酸など)、ヒドロキシル、アミノ、イミノ、アミド、チオ、シアノ、フルオロ(例えばCF(C2n)CHCHPO(式中、n=3〜15である)、CF(CFO(CFCF−CHCH−PO(式中、xは0から7であり、yは1から20であり、x+y≦27である)など)、ホスホネート、ホスフィネート、スルホネート、カーボネート、および混合した置換基が含まれる。
【0026】
有機リンの酸の代表例は、下記の通りである:アミノトリスメチレンホスホン酸、アミノベンジルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、O−アミノフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、アミノフェニルホスホン酸、アミノホスホノ酪酸、アミノプロピルホスホン酸、ベンズヒドリルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、ブチルホスホン酸、カルボキシエチルホスホン酸、ジフェニルホスフィン酸、ドデシルホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、メチルベンジルホスホン酸、ナフチルメチルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ビス−(パーフルオロヘプチル)ホスフィン酸、パーフルオロヘキシルホスホン酸、スチレンホスホン酸、ドデシルビス−1,12−ホスホン酸。
【0027】
モノマー有機リンの酸の他に、それぞれのモノマー酸の自己縮合から得られるオリゴマーまたはポリマーの有機リンの酸を使用してもよい。
【0028】
有機酸は、典型的には希釈剤に溶解または分散される。適切な希釈剤には、メタノール、エタノールまたはプロパノールなどのアルコール;ヘキサン、イソオクタンおよびデカンなどの脂肪族炭化水素、エーテル(例えばテトラヒドロフランおよびジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル)が含まれる。フッ素化材料の希釈剤は、過フッ素化テトラヒドロフランなどの過フッ素化化合物を含むことができる。また、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液も、希釈剤として使用することができる。
【0029】
補助材料を、有機酸および希釈剤(有機酸組成物)と共に存在させてもよい。その例には、表面活性剤、安定剤、湿潤剤、および帯電防止剤が含まれる。補助剤は、これが存在する場合には、有機酸組成物の不揮発性成分に対して30重量パーセントまでの量で存在する。
【0030】
組成物中の有機酸の濃度は、特に重要なわけではないが、少なくとも0.01ミリモル濃度、典型的には0.01から100ミリモル濃度、より典型的には0.1から50ミリモル濃度である。有機酸組成物は、成分のすべてを同時に混合することによって、または成分をいくつかのステップで添加することによって、調製することができる。
【0031】
有機酸組成物で処理されたワイプは、噴霧または浸漬(ディッピングなど)により、ワイプを組成物に接触させることによって調製することができる。処理時間は、特に重要なわけではなく、通常は1秒から60分程度に短い。処理時間は、例えば有機酸の濃度を変化させることによって、また処理組成物に付加されるワイプの数によって、かなりの程度まで変えることができる。典型的には、ワイプに含有される有機酸組成物の量は、処理されたワイプの全重量に対して0.001から80重量パーセントの間、より典型的には0.001から30重量パーセントの間に及ぶことができる。ワイプには、カプセル化された有機酸を含浸させることもできる。例えば、カプセル化材料は、処理がなされる表面の端から端までワイプを移動させるときに有機酸を放出する、セルロースやゼラチンなどの軟質ポリマーであり得る。
【0032】
処理されたワイプは、取扱いおよび保存中にこのワイプが乾き切らないように、実質的に希釈剤を通さないパウチなどの容器に保存または包装される。容器またはパウチは、アルミニウムなどの金属で、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、プロピレンとエチレンのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルのコポリマー、エチレンとアクリル酸エチルのコポリマー、エチレンとアクリル酸もしくはメタクリル酸のコポリマーからなる群から選択されたポリオレフィンで作製され得る。パウチは、典型的には0.5から15ミルの厚さを有する。
【0033】
処理されたワイプは、後により経済的な定量吐出が行われるように、有機酸組成物を含浸させまたは有機酸組成物に接触される、非常に数多くの個々のシートとして包装することができる。また、ワイプは、製造プロセス中に連続ウェブとして形成し、クロージャ付きキャニスタやクロージャ付きタブなどのディスペンサに投入することができる。クロージャは、処理されたワイプを外部環境から密閉し、希釈剤が早い段階で揮発するのを防止するためのものである。ディスペンサは、アルミニウムなどの金属、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、またはその他の硬質ポリマーなどのポリマーで形成され得る。ワイプの連続ウェブは、好ましくはディスペンサの最上部の細い開口を通過させることができ、最も好ましくはクロージャを通過させることができる。次いでこのウェブから、所望の長さまたはサイズのワイプを寸法決めする手段が必要になる。ナイフブレード、ギザギザのある刃、またはウェブを所望のサイズに切断するその他の手段を、ディスペンサの最上部に設け、非限定的な例として、細い開口が実際に二重の役割を果たして切断縁部としても働くようにすることができる。あるいは、ワイプの連続ウェブに、刻み目を入れ、折り曲げ、セグメント化し、または部分的に切断して均一なまたは不均一なサイズまたは長さにすることができ、したがって鋭い切断縁部の必要性をなくすことができる。さらに、ハンドティッシュと同じようにワイプを綴じ込むことができ、したがって1枚のワイプの取り出しは、次のワイプを進め、以下、同様である。処理されたワイプは、有機酸組成物を保持する容器が有機酸に接触しているフェルトチップを含有する、「マーカー」の形で使用することもできる。フェルトチップが、処理がなされる表面の端から端まで移動するにつれ、有機酸組成物は表面に分布される。
【0034】
別の実施形態では、有機酸を、スプレーボトルに保存し、処理がなされる表面に、例えば下記のように堆積された有機金属被膜上に、噴霧することができる。次いで必要に応じて、ワイプを表面の端から端まで移動させて、有機酸を分布させ得る。あるいは、有機酸組成物を表面に噴霧した後に、希釈剤を単純に蒸発させることができる。噴霧による塗布のためには、有機酸組成物を、アルミニウムなどの金属または上述のようなポリマー材料から作製された、ボトルまたは容器に保存することができる。
【0035】
有機金属化合物は、好ましくは金属またはメタロイドから誘導され、好ましくは周期表の第III族、第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択された遷移金属から得られる。周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択されたような遷移金属が好ましい。その例は、タンタル、チタン、およびジルコニウムである。有機金属化合物の有機部分は、この有機金属化合物が、有機酸と処理がなされる表面との付着を促進させると考えられるので、有機酸の酸(またはその誘導体)に対して反応性を有する基から選択される。また、後で記述されるように、有機金属化合物の有機基は、オキシド基およびヒドロキシル基など、処理がなされる表面の基に対して反応性があると考えられる。有機金属化合物の適切な有機基の例は、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド、イソブトキシド、tert−ブトキシド、およびエチルヘキシルオキシドなど、1から18個、好ましくは2から4個の炭素原子を含有するアルコキシド基である。アルコキシド、アセチルアセトネート、および塩化物基などの混合基を使用することができる。
【0036】
好ましい金属であるチタンおよびジルコニウムに関しては、非常に反応性の高い単純エステルおよびエステルのポリマー形態から、安定したキレート形態にまで及ぶ、有機チタネートおよびジルコネートであり、これらには、下記のものが含まれる:
a.一般式M(OR)を有し、式中のMがTiおよびZrから選択され、RがC1〜18アルキルである、チタンおよびジルコニウムのアルキルオルトエステル;
b.(a)のアルキルオルトエステルの縮合によって得ることが可能な、ポリマーアルキルチタネートおよびポリマーアルキルジルコネートであり、即ち一般式RO[−M(OR)O−]x−1Rであって、MおよびRが上述の通でありxが正の整数である、部分的に加水分解したアルキルオルトエステル;
c.オルトチタン酸、およびチタンに電子を供与することが可能な1個または複数の追加のヒドロキシル基、ケト基、カルボキシル基、またはアミノ基を含有する多官能性アルコールから誘導される、チタンキレート。これらのキレートは、一般式
Ti(O)(OH)(OR’)(XY)
を有し、式中でa=4−b−c−dであり;b=4−a−c−dであり;c=4−a−b−dであり;d=4−a−b−cであり;R’は、H、上述のR、またはX−Yであり、ただしXは、酸素または窒素などの電子供与基であり、Yは、
i.例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンの−CHCH−、
ii.例えば乳酸の
【0037】
【化9】

iii.例えばアセチルアセトンエノール形態の
【0038】
【化10】

および
iv.例えば1,3−オクチレングリコール中のような
【0039】
【化11】

などの2個または3個の炭素原子を有する脂肪族基である;
d.一般式Ti(OCOR)4−n(OR)を有し、式中のRが上述のC1〜18アルキルであり、nが1から3までの整数であるアシル酸チタン、およびそのポリマー形態;
e.これらの混合物。
【0040】
有機金属化合物は、通常は希釈剤に溶解または分散される。適切な希釈剤の例は、アルコール(メタノール、エタノール、およびプロパノールなど)、脂肪族炭化水素(ヘキサン、イソオクタン、およびデカンなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジアルキルエーテルおよびジエチルエーテル)である。
【0041】
また、補助剤を、有機金属化合物および希釈剤(有機金属組成物)と共に存在させてもよい。その例には、安定剤(例えば、立体障害アルコール)、界面活性剤、帯電防止剤が含まれる。補助剤が存在する場合には、組成物の不揮発性成分に対して30重量パーセントまでの量で存在する。
【0042】
組成物中の有機金属化合物の濃度は、特に重要なわけではないが、通常は少なくとも0.01ミリモル濃度、典型的には0.01から100ミリモル濃度、より典型的には0.1から50ミリモル濃度である。
【0043】
有機金属処理組成物は、成分のすべてを同時に混合することによって、または成分をいくつかのステップで組み合わせることによって、得ることができる。有機金属化合物は、水分に対して反応性があるので、水分が希釈剤または補助材料と共に導入されないように、また混合が実質的に無水雰囲気中で実施されるように、注意を払うべきである。
【0044】
ワイプは、有機酸処理のために、一般に上述のような有機金属組成物で処理される。ワイプに含有される有機金属化合物の含量は、典型的には、有機酸に関して既に述べた量である。
【0045】
有機金属化合物で処理されたワイプは、有機酸に関して既に十分に述べたような、水分および有機金属化合物に付随した希釈剤を実質的に通さない容器に保存または包装される。適切な容器材料の例は、有機酸組成物に関連して既に述べたようなものである。ポリマー材料は、金属化された箔と組み合わせて使用することが好ましい。これらの容器は、有機酸用の容器に関連して既に述べたポリマーの外層を含むが、真空蒸着によってポリエチレンテレフタレート被膜に付着されたアルミニウムなどの金属化被膜のコア層を有する積層体である。積層体の厚さは、通常は約3から15ミルである。
【0046】
有機酸パッケージおよび有機金属パッケージは、典型的には、有機酸組成物を含有する1つの容器、および有機金属組成物を含有する第2の容器を備えたキットとして提供される。次いで最終使用者は、処理されたワイプをこの容器から取り出し、所望の表面を処理する。有機酸がスプレーボトルに入っている実施形態では、有機酸は所望の表面に噴霧される。
【0047】
本発明により処理がなされる適切な表面または基板の例は、金属(例えば、タンタル、アルミニウム、銅、チタン、および鉄など、ならびに鋼および黄銅などの金属の合金);メタロイド(ケイ素およびゲルマニウムなど)、ガラスなどのセラミック材料、ならびにポリカーボネートなどのポリマー材料である。基板は、ほとんどの金属およびそれらの合金に関連した自然酸化物層など、表面ヒドロキシルまたはオキシド基を含有するものであることが好ましい。ケイ素などのメタロイドの自然酸化物層も、適切である。カルボキシル基またはヒドロキシル基などの反応性基を本質的に有するセラミック材料およびポリマーを、使用してもよい。例えば、ポリマー物質は、反応性官能基を有し得る。その例は、ヒドロキシル基を含有する1種または複数のモノマーから作製されたアクリルポリマーなどの、ヒドロキシル基を含有するポリマーである。また、閉じこめられたシリカおよびアルミナを含有する有機ポリマーなど、複合体である無機/有機ポリマーを使用してもよい。また、ポリマー表面は、これを空気の存在下で大気プラズマ処理にかけることにより、酸化してもよい。基板が反応性基を持たない場合は、基板を変性させてもよい。例えば、スパッタリングによって、金属酸化物層をガラスまたはポリマー基板に付着させてもよく、あるいは、基板にゾル−ゲルを付着させることによって酸化ケイ素上層を設けてもよい。インジウムスズ酸化物は、電気的な最終使用適用に好ましい金属酸化物であり、スパッタリングによって付着させることができる。また、金属酸化物は、ポリマー基板上に堆積することができ、例えば「積層」金属酸化物をポリマー基板に堆積することにより、反射防止特性を得ることができる。
【0048】
特に好ましい表面は、眼鏡類、カメラレンズ、およびディスプレー装置(例えば、発光ダイオード(有機発光ダイオード、ポリマー発光ダイオードが挙げられる)、液晶、およびプラズマスクリーンに関連するもの)に使用されるような、光学表面または電気光学表面である。反射防止層は、必要に応じて、これらの基板の表面にあってもよい。
【0049】
基板または表面は、典型的には、最初に基板表面を有機金属ワイプに接触させ、次いで有機酸に接触させることにより処理される。処理は、有機金属組成物および有機酸の反応性に応じて、典型的には周囲温度または高温(20〜200℃)である。ワイプを、基板表面の端から端まで移動させて、場合に応じて有機金属組成物および/または有機酸組成物の被膜を基板表面に移す。最初に付着させた被膜は、希釈剤の存在に起因して「濡れた外観」を有する。希釈剤が蒸発すると、化合物の被膜が残る。得られた被膜は、布で擦ることによって容易には除去されないので、耐久性がある。有機酸被膜は、塵が集まりにくく、かつ染みが付きにくく、塵および染みは、柔らかい布で軽くこすることによって容易に除去される。
【0050】
いかなる理論にも束縛されることを意図しないないが、有機リンワイプの場合、酸基は、処理がなされる基板表面の酸化物またはヒドロキシル基に会合または結合し、その結果、耐久性ある被膜になると考えられる。有機リンの酸は、有機基を基板表面から外に出て離れた方向に向けて自己組織化し、その表面の性質を変化させる。例えば、パーフルオロデシル基は、表面をより疎水的にし、かつ水分が浸透しにくくなるようにする。ドデシル基は、表面をより滑らかにし、かつ塵が集まりにくくなるようにする。ヒドロキシ低級アルキル基などの極性基は、表面をより親水性にし、おそらく清浄しやすくする。
【0051】
有機リンの酸のワイプ、特にフルオロ置換有機リンの酸のワイプは、疎水性コーティング、例えば、有機リンの酸とは異なる有機ケイ素または有機フルオロ染み付き防止コーティングを有する表面を処理するための、リペアキットの形で使用することもできることが見出された。そのようなコーティングは、時間の経過と共にその有効性を失う。驚くべきことに、本発明の有機リンワイプでの処理は、処理がなされる表面の疎水性を甦らせ得、驚くべき耐久性のコーティングを提供する。また、有機リンワイプおよび有機金属ワイプは、有機金属ワイプを最初に使用して、疎水性が失われたコーティングを有する表面を処理し、その後、有機リンワイプで処理が行われる、2成分リペアキットの形で使用することができる。
【0052】
この場合も、いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、有機金属組成物の場合、金属アルコキシドのアルコキシド基は、有機リンの酸を単独で使用した場合よりも低い温度で、酸化物および/またはヒドロキシル基の表面に、また有機酸の酸基に強力に結合することが考えられる。また、カルボン酸およびスルホン酸などのその他の有機酸では、有機酸を基板に固定するために、中間有機金属層が必要である。アルコキシド基と、酸化物および/またはヒドロキシル基と、酸基との間の結合は、表面酸化物および/またはヒドロキシル基と酸基との間の結合よりも強力であると考えられる。この結果、より耐久性ある複合被膜が得られる。
【実施例】
【0053】
下記の実施例は、本発明を例示することを意図され、本発明の精神および範囲から逸脱することなく多くの種々の実施形態を作り出すことができるので、本発明を限定すると解釈すべきではない。したがって本発明は、特許請求の範囲で定義される内容を除き、限定されない。
【0054】
(実施例1)
ドデカン中20mMのチタンテトラ−n−ブトキシドを含浸させた綿ワイプで、10秒間、4インチ×4インチの反射防止膜(ポリカーボネート被膜上の、インジウムスズ酸化物/SiO積層酸化物)の表面の端から端まで拭った。この結果、薄い溶媒被膜が得られ、これが蒸発することにより、[Ti(O)(OH)(n−ブトキシ)(式中、x=4−y−zであり、y=4−x−zであり、z=4−y−xであり、nは、2〜1000である。)の部分加水分解被膜が残された。次いでこの表面コーティングを、エタノール中の1H,2H,2H’−パーフルオロドデシル−1−ホスホン酸の2mM溶液を含浸させた綿ワイプで、拭う(10秒間)ことによって「活性化」した。表面に残されたあらゆる残留物または溶媒を、清浄な乾燥した布で表面を拭うことによって除去した。反射防止面の接触角は、約15度(未処理)から約118度(処理後)に増大した。この表面には染みが付きにくくなり、塵/染みの除去は、処理済みの(疎水性化された)表面においてはるかに容易になった。コーティングの疎水性は、(過剰な引掻きなどによって損傷を受けた場合には)パーフルオロホスホン酸溶液を再度付着させることによって、容易に再生することができた。
【0055】
(実施例2)
3M Company製の過フッ素化溶媒HFE−7100中の、約1582の重量平均分子量を有するポリ(ヘキサフルオロプロピレン)ホスホン酸(PHFPOPA)の0.2重量%溶液を調製し、これを使用して、ハンドワイプの形をしたティッシュに含浸させた。含浸済みティッシュで、ポリカーボネート平レンズブランクの表面を、端から端まで拭った。溶媒を蒸発させた結果、下記の表Iで報告された水接触角を有する疎水性コーティングが得られた。表Iは、マイクロファイバークロスで擦った後の水接触角の低下により決定された、コーティングの耐久性についても報告する。接触角が95°未満に低下した場合、このコーティングは機能しなくなったと考えた。
【0056】
(実施例3)
ハンドワイプの形をしたティッシュに、石油蒸留物(沸点範囲100〜140℃)中0.25重量%チタンテトラn−ブトキシド溶液を含浸させ、ポリシロキサン抗スクラッチコーティング(ハードコート)を有するポリカーボネート平レンズブランクの表面を端から端まで拭った(約3秒間)。溶媒は、ハンドワイプをレンズ表面の端から端まで移動させるにつれて蒸発し、有機金属化合物が表面に移される。ハンドワイプの形をとる第2のティッシュに、実施例2のPHFPOPA溶液を含浸させ、予め付着させた有機金属コーティングの表面を端から端まで拭った(約3秒間)。この場合も、ハンドワイプを表面の端から端まで移動させるにつれて溶媒が蒸発し、有機リン化合物が有機金属表面に移される。水接触角およびコーティングの耐久性を、下記の表Iに報告する。
【0057】
(実施例4)
PHFPOPA溶液を有機金属コーティング上に噴霧した(指押しポンプ噴霧器)こと以外、実施例3の手順を繰り返す。過剰な溶媒を蒸発させ、マイクロファイバークロスで穏やかに擦ることにより、残留物を除去した。水接触角および耐久性を、下記の表Iに報告する。
【0058】
【表1】

ゴニオメーターTANTEC接触角メータ、モデルCAM−MICROによって決定された水接触角。
150g/cmの力でマイクロファイバークロスで擦る。1サイクルは、前後に1回擦ることである。
【0059】
(実施例5)
ポリカーボネート眼科用レンズのSola Teflon Easycare(反射防止/染み付き防止コーティング)を、150g/cmの圧力でスチールウールで擦り、擦り操作の回数に対する水接触角の減少に注目した。水接触角が95°よりも小さくなると、コーティングはもはや疎水性とは見なされず、コーティングは機能しなくなった。次いでレンズに噴霧し、次いで89体積%のイソオクタン、5%のHFE−7100、5%のイソプロパノール、および1%の香料の混合物中0.05重量%PHFPOPAの溶液を含む、ハンドワイプの形をしたティッシュで拭った(リペアキット)。溶媒は、表面の端から端まで溶液を拭うにつれて蒸発し、PHFPOPAが表面に移される。コーティングの疎水性特性およびスチールウールでの連続摩擦により決定されたその耐久性を、下記の表IIに報告する。
【0060】
(実施例6)
レンズが、Essilor Crizal Alize反射防止/染み付き防止コーティングで被覆されたポリカーボネート材料であること以外、実施例5の手順を繰り返した。リペアキットコーティングの疎水性特性およびその耐久性を、下記の表IIに報告する。
【0061】
(実施例7)
レンズが、INDO天然超微細「自己清浄化」眼科用レンズであること以外、実施例5の手順を繰り返した。リペアキットコーティングの疎水性特性およびその耐久性を、下記の表IIに報告する。
【0062】
(実施例8)
Zeiss反射防止層で被覆されたポリカーボネート眼科用レンズを、実施例2で概略的に述べたように、75体積%のHFE−7100/25体積%のアセトンに溶かしたPHFPOPAの0.2重量%溶液を含浸させたティッシュで拭った。コーティング付きレンズを、実施例5で述べたように擦った。水接触角が95°よりも小さくなったら、擦られた表面を、直前に述べたようなPHFPPA溶液を含浸させたティッシュで処理した。溶媒は、擦られた表面上をハンドワイプが通過するにつれて蒸発し、PHFPOPAが表面に移される。リペアキットコーティングの疎水性特性およびその耐久を、下記の表IIに報告する。
【0063】
【表2】

表Iと同様に決定された水接触角。
150g/cmの力でスチールウールで擦る。1サイクルは、前後に1回擦ることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板表面と、有機リンの酸またはその誘導体で処理されたワイプとを、直接または中間有機金属層を通して接触させるステップと、
(b)前記ワイプを前記表面の端から端まで移動させて、前記有機リン酸またはその誘導体の被膜を、前記表面にまたは前記中間層に移すステップと
を含む、基板表面を処理する方法。
【請求項2】
前記基板が、ポリマー、金属、メタロイド、セラミック、およびガラスである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が、光学または電気光学の用途のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板が、眼鏡類およびディスプレー装置から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が、その表面に反射防止コーティングを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機リンの酸またはその誘導体が、リン酸、ホスホン酸、およびホスフィン酸であってこれらの誘導体も含めたものから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
(RO)−P(O)−(OR’)
の化合物または化合物の混合物を含む有機リン酸またはその誘導体であり、式中、xは1から2であり、yは1から2であり、x+y=3であり、Rは合計で1から30個の炭素を有する基であり、R’は、H、金属、または1から4個の炭素を有する低級アルキルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化1】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスホン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から1であり、yは1であり、zは1から2であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化2】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスフィン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から2であり、yは0から2であり、zは1であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記表面を、有機金属化合物で処理し、その後、有機リンの酸またはその誘導体を付着させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機金属化合物が、遷移金属アルコキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記有機金属化合物を、ワイプで前記表面に付着させ、前記ワイプを前記表面の端から端まで移動させる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
処理された前記ワイプが、希釈剤に溶解または分散されかつ0.01から100ミリモル濃度の濃度を有する有機リンの酸またはその誘導体から調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記有機リンの酸またはその誘導体の有機基が、CからC18の炭化水素基または置換炭化水素基を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記有機リンの有機基が、ハロゲン置換炭化水素基である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有機基がパーフルオロアルキル基である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炭化水素基または置換炭化水素基が、ドデシルおよびパーフルオロドデシルから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
有機金属処理済みワイプが、0.1から50ミリモル濃度の濃度を有する有機金属溶液から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記遷移金属が、周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記遷移金属が、チタンおよびジルコニウムから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルコキシド基が、CからC18アルコキシド基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記有機リンの酸またはその誘導体が、前記処理済みワイプの全重量に対して処理済みワイプの0.001から10パーセントを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記有機金属化合物が、前記処理済みワイプの全重量に対して処理済みワイプの0.001から30重量パーセントを構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記基板表面が、その表面に、有効性が失われた疎水性コーティングを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記疎水性コーティングが、前記有機リンの酸とは異なる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記基板が、光学または電気光学の用途のものである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記基板が、眼鏡類およびディスプレー装置から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(a)基板表面と、有機酸またはその誘導体で処理されたワイプとを、中間有機金属層を通して接触させるステップと、
(b)前記ワイプを前記有機金属層の端から端まで移動させて、有機酸またはその誘導体の被膜を前記有機金属層に移すステップと
を含む、基板表面を処理する方法。
【請求項29】
前記基板が、ポリマー、金属、メタロイド、セラミック、およびガラスである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記基板が、光学または電気光学の用途のものである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記基板が、眼鏡類およびディスプレー装置から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記基板が、その表面に反射防止コーティングを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記有機酸またはその誘導体が、カルボン酸、スルホン酸、およびリンの酸であってこれらの誘導体も含めたものから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記有機酸またはその誘導体が、下記の構造:
R−COOR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記有機酸が、下記の構造:
R−SO−OR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記表面が、有機金属化合物で処理され、その後、前記有機酸またはその誘導体が付着される、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
前記有機金属化合物が遷移金属アルコキシドである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記有機金属化合物を前記表面にワイプで付着させ、前記ワイプを前記表面の端から端まで移動させる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
処理された前記ワイプは、希釈剤に溶解または分散されかつ0.01から100ミリモル濃度の濃度を有する有機リンの酸またはその誘導体から調製される、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記有機酸またはその誘導体の有機基が、CからC18の炭化水素基または置換炭化水素基を含有する、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記有機酸の有機基が、ハロゲン置換炭化水素基である、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
前記有機基がパーフルオロアルキル基である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記炭化水素基または置換炭化水素基が、ドデシルおよびパーフルオロドデシルから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記有機金属処理済みワイプが、0.1から50ミリモル濃度の濃度を有する有機金属溶液から調製される、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記遷移金属が、周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記遷移金属が、チタンおよびジルコニウムから選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記アルコキシド基が、CからC18アルコキシド基を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記有機酸またはその誘導体が、前記処理済みワイプの全重量に対して、含浸済みワイプの0.001から10パーセントを構成する、請求項28に記載の方法。
【請求項49】
前記有機金属化合物が、前記処理済みワイプの全重量に対して、前記処理済みワイプの0.001から30重量パーセントを構成する、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
(a)基板表面と、有機金属化合物で処理されたワイプとを、接触させるステップと、
(b)前記ワイプを前記表面の端から端まで移動させて、前記有機金属化合物の被膜を前記表面に移すステップと、
(c)有機酸を、前記有機金属化合物の被膜に付着させるステップと
を含む、基板表面を処理する方法。
【請求項51】
前記基板が、ポリマー、金属、メタロイド、セラミック、およびガラスである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記基板が、光学または電気光学の用途のものである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記基板が、眼鏡類およびディスプレー装置から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記基板が、その表面に反射防止コーティングを有する、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記有機酸またはその誘導体が、リンの酸、カルボン酸、およびスルホン酸であってこれらの誘導体も含めたものから選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記有機酸またはその誘導体が、下記の構造:
R−COOR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記有機酸が、下記の構造:
R−SO−OR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記リンの酸が、有機リン酸、有機ホスホン酸、および有機ホスフィン酸から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記有機酸を、噴霧または浸漬によって付着させる、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記有機酸を、噴霧によって付着させる、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記有機酸またはその誘導体の有機基が、CからC18の炭化水素基または置換炭化水素基を含有する、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
前記有機酸の有機基が、ハロゲン置換炭化水素基である、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
前記有機基が、パーフルオロアルキル基である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記炭化水素基または置換炭化水素基が、ドデシルおよびパーフルオロドデシルから選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記有機金属処理済みワイプが、0.1から50ミリモル濃度の濃度を有する有機金属溶液から調製される、請求項50に記載の方法。
【請求項66】
前記有機金属化合物が遷移金属アルコキシドであり、前記遷移金属は周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項67】
前記遷移金属が、チタンおよびジルコニウムから選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記アルコキシド基が、CからC18アルコキシド基を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記有機金属化合物が、前記処理済みワイプの全重量に対して、前記処理済みワイプの0.001から30重量パーセントを構成する、請求項50に記載の方法。
【請求項70】
希釈剤を実質的に通さない容器内で、希釈剤に溶解または分散させた、有機リンの酸またはその誘導体で処理された材料を含むパッケージ。
【請求項71】
前記材料が、可撓性多孔質シートである、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項72】
前記可撓性多孔質シートが、ハンドワイプの形をとる、請求項71に記載のパッケージ。
【請求項73】
前記可撓性多孔質シートが、織布材料または不織布材料で作製される、請求項71に記載のパッケージ。
【請求項74】
前記有機リンの酸またはその誘導体が、有機リン酸、有機ホスホン酸、または有機ホスフィン酸であってこれらの誘導体も含めたものから選択される、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項75】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
(RO)−P(O)−(OR’)
の化合物または化合物の混合物を含む有機リン酸またはその誘導体であり、式中、xは1から2であり、yは1から2であり、x+y=3であり、Rは合計で1から30個の炭素を有する基であり、R’は、H、金属、または1から4個の炭素を有する低級アルキルである、請求項74に記載のパッケージ。
【請求項76】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化3】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスホン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から1であり、yは1であり、zは1から2であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項74に記載のパッケージ。
【請求項77】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化4】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスフィン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から2であり、yは0から2であり、zは1であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項74に記載のパッケージ。
【請求項78】
前記有機リンの酸で処理済みの材料が、希釈剤中に0.01から100.0ミリモル濃度の濃度を有する有機リンの酸またはその誘導体から調製される、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項79】
前記有機リンの酸またはその誘導体の有機基が、CからC20炭化水素基または置換炭化水素基を含有する、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項80】
前記有機リンの酸またはその誘導体の有機基が、ハロゲン置換炭化水素基である、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項81】
前記炭化水素基または置換炭化水素基が、ドデシルおよびパーフルオロドデシルから選択される、請求項80に記載のパッケージ。
【請求項82】
前記有機リンの酸またはその誘導体が、前記処理済み材料の全重量に対して、前記処理済み材料の0.001から30重量パーセントを構成する、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項83】
前記容器がプラスチックパウチである、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項84】
前記容器がオレフィンコポリマーを含む、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項85】
前記オレフィンポリマーまたはコポリマーが、エチレンポリマー、プロピレンポリマー、またはエチレン−プロピレンコポリマーから選択される、請求項84に記載のパッケージ。
【請求項86】
前記容器が、オレフィンポリマーまたはコポリマーと金属化被膜とを交互に配した層を含む、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項87】
前記容器が、0.5から15ミルの厚さを有する、請求項70に記載のパッケージ。
【請求項88】
実質的に水分を通さない容器内に有機金属化合物で処理された材料を含むパッケージ。
【請求項89】
前記材料が可撓性多孔質シートである、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項90】
前記可撓性多孔質シートがハンドワイプの形をとる、請求項89に記載のパッケージ。
【請求項91】
前記可撓性多孔質シートが、織布材料または不織布材料で作製される、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項92】
前記有機金属化合物が金属アルコキシドである、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項93】
前記有機金属処理済み材料が、希釈剤に溶解または分散されかつ0.1から50ミリモル濃度の濃度を有する有機金属化合物から調製される、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項94】
前記金属が、周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、または第VIB族から選択される遷移金属である、請求項92に記載のパッケージ。
【請求項95】
前記アルコキシド基が、CからC18アルコキシド基を含む、請求項92に記載のパッケージ。
【請求項96】
前記有機金属化合物が、前記処理済み材料の全重量に対して、前記処理済み材料の0.001から30重量パーセントを構成する、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項97】
前記容器がパウチである、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項98】
前記水分不透過性容器が、オレフィンポリマーまたはコポリマーと金属化被膜とを交互に配した層を含む、請求項88に記載のパッケージ。
【請求項99】
前記水分不透過性パウチが0.3から15ミルの厚さを有する、請求項97に記載のパッケージ。
【請求項100】
(a)実質的に水分を通さない容器内に、有機金属化合物で処理された材料を含むパッケージと、
(b)希釈剤を実質的に通さない容器内に、希釈剤に溶解または分散された、有機酸またはその誘導体を含むパッケージと
を含む、表面を処理してその物理的性質を変化させるのに有用なキット。
【請求項101】
パッケージ(a)内の前記材料が可撓性多孔質シートである、請求項100に記載のキット。
【請求項102】
前記可撓性多孔質シートがハンドワイプの形をとる、請求項101に記載のキット。
【請求項103】
前記有機酸がスプレーボトルに入っている、請求項100に記載のキット。
【請求項104】
前記有機酸が、前記有機酸で処理された材料に含有される、請求項100に記載のキット。
【請求項105】
前記有機酸を含有する材料がハンドワイプの形をとる、請求項104に記載のキット。
【請求項106】
前記有機酸またはその誘導体が、有機カルボン酸、有機スルホン酸、および有機リンの酸であってこれらの誘導体も含めたものから選択される、請求項100に記載のキット。
【請求項107】
前記有機酸が、下記の構造:
(RO)−P(O)−(OR’)
の化合物または化合物の混合物を含む有機リンの酸またはその誘導体であり、式中、xは1から2であり、yは1から2であり、x+y=3であり、Rは合計で1から30個の炭素を有する基であり、R’は、H、金属、または1から4個の炭素を有する低級アルキルである、請求項106に記載のキット。
【請求項108】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化5】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスホン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から1であり、yは1であり、zは1から2であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項106に記載のキット。
【請求項109】
前記有機リンの酸が、下記の構造:
【化6】

の化合物または化合物の混合物を含む有機ホスフィン酸またはその誘導体であり、式中、xは0から2であり、yは0から2であり、zは1であり、x+y+z=3であり、RおよびR”はそれぞれ独立に、合計で1から30個の炭素を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項106に記載のキット。
【請求項110】
前記有機カルボン酸またはその誘導体が、下記の構造:
R−COOR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項106に記載のキット。
【請求項111】
前記有機スルホン酸またはその誘導体が、下記の構造:
R−SO−OR’
のものであり、式中、Rは、合計で1から30個の炭素原子を有する炭化水素基または置換炭化水素基であり、R’は、H、金属、または低級アルキルである、請求項106に記載のキット。
【請求項112】
前記有機酸処理済み材料が、希釈剤中に0.01から100.0ミリモル濃度の濃度を有する有機酸またはその誘導体から調製される、請求項104に記載のキット。
【請求項113】
前記有機酸またはその誘導体の有機基が、CからC18の炭化水素基または置換炭化水素基である、請求項100に記載のキット。
【請求項114】
前記有機酸またはその誘導体の有機基が、ハロゲン置換炭化水素基である、請求項100に記載のキット。
【請求項115】
前記有機基がパーフルオロアルキル基である、請求項114に記載のキット。
【請求項116】
前記炭化水素基または置換炭化水素基が、ドデシルおよびパーフルオロドデシルから選択される、請求項113に記載のキット。
【請求項117】
前記有機酸またはその誘導体が、前記処理済みワイプの全重量に対して、処理済み材料の0.001から30重量パーセントを構成する、請求項104に記載のキット。
【請求項118】
前記有機金属化合物が金属アルコキシドである、請求項100に記載のキット。
【請求項119】
前記有機金属処理済み材料が、希釈剤に溶解または分散されかつ0.1から50ミリモル濃度の濃度を有する有機金属化合物から調製される、請求項100に記載のキット。
【請求項120】
前記金属が、周期表の第IIIB族、第IVB族、第VB族、および第VIB族から選択された遷移金属である、請求項118に記載のキット。
【請求項121】
前記アルコキシド基がCからC18アルコキシド基を含む、請求項118に記載のキット。
【請求項122】
前記有機金属化合物が、前記処理済みワイプの全重量に対して、前記処理済み材料の0.001から30重量パーセントを構成する、請求項100に記載のキット。
【請求項123】
前記容器がパウチである、請求項100に記載のキット。
【請求項124】
前記実質的に水分を通さない容器が、オレフィンポリマーまたはコポリマーと金属化被膜とを交互に配した層を含む、請求項100に記載のキット。
【請求項125】
前記実質的に希釈剤を通さない容器が、オレフィンポリマーまたはコポリマーを含む、請求項100に記載のキット。
【請求項126】
前記パウチが、0.5から15ミルの厚さを有する、請求項123に記載のキット。

【公表番号】特表2009−512905(P2009−512905A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537835(P2008−537835)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/041258
【国際公開番号】WO2007/050500
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508124051)アキュロン, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】