説明

化学的、生化学的、生物学的および物理学的分析、反応、アッセイなどのためのデバイスおよび方法

本発明は、好ましい実施形態では、毛管現象反応チャンバ、非毛管現象ゾーン、および底部構造を備え、毛管作用を使用して液体を自動的に定量的に吸収し、反応チャンバ内に保持できる反応ユニットを使用する、化学的、生化学的、生物学的および物理学的分析、反応、およびアッセイの実験を実施するためのデバイスおよび方法に関する。プレートフレーム上に多数の反応ユニットを含むマルチユニットプレートを、リザーバプレート、廃液パッド、および液体移送ガイドと共に並行実験に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的、生化学的、生物学的および物理学的分析、反応、およびアッセイの実験を実施するためのデバイスおよび方法に関する。本発明は、また、化学試料、生化学試料または生物試料を並行処理および分析するためのデバイスおよび方法に関する。本発明は、更に、化学試料、生化学試料または生物試料のサンプリング、移送、分配、貯蔵、希釈および抽出に使用されるデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物工学および製薬産業には、小型化は、限られた試料、貴重な化学化合物および高価な試薬の使用量を少なくすることだけでなく、感度を向上させることと、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)などの反応ウェルまたは管の容量対表面積比に依存する幾つかのタイプのアッセイのインキュベーション時間を短縮することを意味するため、小型化は現代の分析科学および技術の開発傾向である。しかし、マイクロウェルプレートを使用する小型化された分析システムでは、たとえ自動化しても小さいウェルへのまたは小さいウェルからの定量的な液体移送に関して困難や問題が生じる。ピペッティング、圧電式液滴分注、スプリットピン分注、および微量注入(microspritzing)といった現行の液体操作方法は、かなりの跳ねかけや気泡の閉じ込めから起こる隣接するウェルの汚染や試料の量の損減を引き起こし易い可能性がある。様々なタイプのハイスループットスクリーニングアッセイおよび方法は主として、小さい生物工学企業から国際的な製薬巨大企業までの企業によって新しい治療薬の発見や開発に使用されている。これらのアッセイは、費用を低減し、高価な試料を節約するためにマルチウェルプレートで、少量で実施されることが多い。現在、96、384、または1536ウェルフォーマットのマルチウェルプレートがハイスループットスクリーニングアッセイに原則的に使用されている。アッセイ手順には多数のピペッティング工程が含まれるため、96ウェルフォーマットでもハイスループットアッセイを手動で実施するには既に非常に時間がかかり、人為的なピペッティングミスが起こり易くなる可能性がある。自動化されたアッセイシステムは、酵素活性、受容体結合、高分子相互作用、タンパク質発現、およびタンパク質折り畳みおよび集合体などの様々な生化学および分子生物学試験のハイスループットスクリーニング能力を向上できる可能性があるが、極端に高価なロボットシステムは、小さい生物工学企業には持つ余裕がない可能性があり、大きな製薬企業にとっても限られたスクリーニングだけを実施するために購入する価値がない。これまでのところ、ELISAのような分離工程を必要とする小型化されたアッセイのための劇的な進歩がない。
【0003】
多重検出法は現代の分析方法の傾向であり、単一の試料から様々な検体を同時に検出することを可能にする。この方法は、診断、臨床試験、および経路識別に特に有用である。タンパク質マイクロアレイ法は、多重検出の要件を満たすことができるが、まだ幾つかの技術的難点が存在する。例えば、それはハイスループットおよび手動で実施されるように設計されていない。全ての検体の反応条件は同じである。更に、自動化とプロテインチップの極端に高い費用が克服され得ないバリアとなり、広く使用されない。
【0004】
鳥インフルエンザの世界的な大発生の直前に、流行状況を監視、防止、および抑制するためにELISAのようなアッセイで膨大な量の試料を試験することができる、費用効果が高く、使用しやすく、堅牢で、迅速で、ハイスループットのマイクロアッセイシステムが緊急に必要とされる。病院、生物工学および製薬産業、学術機関および大学、農業、食品および飲料産業もこのような技術を歓迎する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の欠点に鑑みて、本発明の目的は、少量で、分析、反応およびアッセイの化学的、生化学的、生物学的および物理学的実験を行うためのデバイスおよび方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、反応チャンバへのまたは反応チャンバからの定量的な液体移送を容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0007】
本発明の更に別の目的は、反応チャンバへのまたは反応チャンバからの並行した定量的な液体移送を容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料の定量的なサンプリングを容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0009】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料の定量的な液体移送を容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0010】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料を定量的に貯蔵するためのデバイスおよび方法を提供することである。
【0011】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料の希釈を容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0012】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料の抽出を容易にするデバイスおよび方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、化学試料、生化学試料または生物試料の多重検出を実施するためのデバイスおよび方法を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、自動化と同じまたは類似の正確さと速度で、化学試料、生化学試料または生物試料を手動でハイスループット処理および分析するためのデバイスおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実験または応用のために小さいウェルに、および/または小さいウェルから少量の液体を定量的に移送することにおける難点は、分析、反応およびアッセイシステムの更なる小型化、並びにハイスループット能力の更なる向上の妨げとなっている。この問題を解決するために、本発明は、化学的、生化学的、生物学的および物理学的分析、反応およびアッセイの少量実験のための液体移送を容易にするデバイスおよび方法を提供する。本発明は、また、多くの化学実験、生化学実験、生物実験または物理実験を並行処理および分析するように実施できるデバイスおよび方法を含む。本発明は、更に、化学試料、生化学試料または生物試料を定量的にサンプリング、移送、分配、貯蔵、希釈、および抽出するためのデバイスおよび方法を含む。
【0016】
一般に、本発明により、反応ユニットと称されるデバイス内で実験を実施する。一実施形態では、反応ユニットは、毛管作用に基づいて、液体を自動的に定量的に吸収することができる、および/または定量の液体を内部に保持することができる毛管現象(capillarity)反応チャンバを備える。反応チャンバは、一般に反応ユニット本体によって形成され、通常は、液体移送中に液体および空気が通過することを可能にする開放構造を有する。
【0017】
反応ユニットの断面を見ると、閉鎖された反応チャンバと開放された反応チャンバを区別することが可能である。閉鎖された反応チャンバは、液体および空気が通過する両端の開放構造以外、本体に追加の開放構造を有しておらず、開放された反応チャンバがその本体に少なくとも1つの追加の開放構造を有する。幾つかの実施形態では、反応チャンバは、反応ユニットの非毛管現象ゾーンに開口しており、それは、液体を内部に残留させず、少なくとも空気が通過する開放構造を有する。更に幾つかの実施形態では、少なくとも液体が通過するチャネルの役割をするように、反応ユニットの底部構造が反応チャンバに取り付けられてもよい。
【0018】
反応チャンバおよび/または非毛管現象ゾーンおよび/または反応ユニットの底部構造の様々な形状が本発明に使用されるのに好適である。それらは、反応ユニットの主軸と平行から垂直まで任意の角度でその軸に沿って長手方向に延びてもよい。好ましい実施形態では、それらの全てが反応ユニットの主軸に沿って長手方向に延びる。
【0019】
一実施形態では、反応ユニットは、光線が試料以外に物体がない反応ユニットの内部空間を通過することを可能にする形状を有する。
【0020】
適用分野に応じて、反応チャンバ、非毛管現象ゾーンまたは底部構造の断面は、円形、三角形、正方形、長方形である断面またはその組み合わせを有してもよい。一実施形態では、反応チャンバは、反応チャンバの液体が空になるとき、表面に薄い液体の層を形成するように、表面積および/または液体付着が増加するように少なくとも部分的に粗い表面を有する。
【0021】
適宜、反応チャンバは、例えば、円錐形の反応チャンバによって、受光面積が増加するように成形されている、および/またはそのような幾何学的形状を有する。表面の幾何学的形状は、反応チャンバ内の検体から発生する光信号が開放構造の方に向けられるように成形されてもよい。また、反応ユニットの全体または一部は、光信号損失を減少させる、および/または光学的汚染を減少させる、および/またはエバネッセント波(evanescence)を発生させる、および/または化学的相互作用を受けにくくする、および/または他の目的の材料の層を含むことが可能である。
【0022】
幾つかの実施形態では、非毛管現象ゾーンまたは底部構造またはその両方が、反応ユニット中の光路を画定する光ガイドデバイスの役割をすることができる。
【0023】
一実施形態では、非毛管現象ゾーンの幾何学的形態は、入射光を反応チャンバに、または光信号を反応チャンバから検出器に向けることができる。
【0024】
一実施形態では、焦点が反応チャンバに来るように組み込みレンズを非毛管現象ゾーンの上部に取り付けてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、反応ユニットは2つ以上の毛管現象反応チャンバを有してもよい。
【0026】
一実施形態では、特定の分子(例えば、タンパク質、核酸、および脂質)、または生物学的因子(ウイルス、微生物、および細胞など)、または小さい人工粒子が反応チャンバの表面に結合することを可能にするまたは可能にしない任意の種類の固体材料で、反応ユニットの全体または一部を製造することができる。或いは、特定の分子または生物学的因子または小さい人工粒子を吸収できるようにまたは吸収できないように、反応チャンバ表面の少なくとも一部を物理的にまたは化学的に処理する。
【0027】
一実施形態では、反応チャンバの内部に、例えば、特定の分子または生物学的因子のためのゲル、ビーズ、焼結ガラス、または粒子状物質などの多孔質材料が入っている。
【0028】
一実施形態では、反応チャンバは、任意の形態の少なくとも1つの電極を備える。
【0029】
一実施形態では、反応チャンバは、少なくとも1つの組み込み光ファイバを備える。
【0030】
一実施形態では、反応チャンバは、少なくとも1つの組み込み超小型超音波デバイスを備える。
【0031】
一実施形態では、反応チャンバは、任意の種類の少なくとも1つの組み込みセンサを備える。
【0032】
実験または応用において本発明による反応ユニットで液体を操作する方法は、以下のプロセス工程を含むが、それらに限定されない。
【0033】
一実施形態では、定量的な完全装填(full loading)は、反応ユニットの底部開放構造を液体と接触させて液体を反応チャンバに吸入することによって実施される。
【0034】
一実施形態では、定量的に完全に装填するとき、機械的振動プロセスを使用する。
【0035】
一実施形態では、定量的な部分的充填はまた、開放構造を非濡れ性の表面の所望の量の液体と接触させることによって可能であり、それは反応チャンバを完全に充填するのに十分ではない。
【0036】
一実施形態では、また、液体の総量が反応チャンバの容量を越えないとき、上記の定量的な部分的充填手順を繰り返すことによって、幾つかの定量的充填が可能である。
【0037】
或いは、所望の量の液体をピペットで取って非毛管現象ゾーンに入れることによって、またはピペットで取って反応チャンバに直接入れることによって定量的な完全装填または部分的装填を実施することができる。
【0038】
一実施形態では、反応ユニットの開放構造が、液体に対して反応チャンバよりはるかに強い毛管作用を有する乾燥または湿潤材料(例えば、水溶液の場合、濾紙を使用することができる)に接触して液体を吸い出す毛管作用を使用することによって、空気圧を使用して液体を非毛管現象ゾーンに送り、例えば、ピペットなどのデバイスを使用して吸い取ることによって、真空を使用することによって、遠心分離を使用することによって、或いは空気流または空気圧を使用して液体を直接追い出すことによって、反応チャンバ内の液体を全量、空にすることができる。
【0039】
一実施形態では、液体を非毛管現象ゾーンに送り、非毛管現象ゾーンから所望の量を吸い取る、または、例えば、ピペットなどの液体移送デバイスで反応チャンバから直接吸い取ることにより、液体の定量的な部分量を反応ユニットから除去することができる。
【0040】
別の実施形態では、スポッティングで液体を濡れ性の表面に移送することによって液体の定量的な部分量を反応ユニットから除去することができる。
【0041】
一実施形態では、第1の液体を完全におよび定量的に交換するために、反応ユニットの底部開口部が第2の液体の表面に接触するとき、反応チャンバの1倍または幾倍の容量を有する非毛管現象ゾーンに第2の液体を加えることができる。第2の液体は、第1の液体を反応チャンバから押し出し、古いものを交換する。
【0042】
一実施形態では、第1の液体を部分的におよび定量的に交換するために、反応ユニットの底部開口部が第1の液体の表面に接触するとき、非毛管現象ゾーンに第2の液体を所望の量、加えることができる。第2の液体は、第1の液体を反応チャンバから同量、押し出す。
【0043】
一実施形態では、反応チャンバの液体を混合するとき、反応ユニットの開放構造を通して空気圧の変動を加えることができる。空気圧の変動は、反応ユニット内の液体を振動させる。例えば、液体はまず、非毛管現象ゾーンの方に移動した後、元の位置に戻る。
【0044】
別の実施形態では、機械的波動または音波のある一定の周波数を使用して、液体を混合することができる。
【0045】
更に別の実施形態では、液体を混合するために、組み込み電極または組み込み超小型超音波デバイスを含む反応ユニットを使用して、分子を反応チャンバ内で移動させることができる。
【0046】
A.マルチユニットプレート
本発明により、実験を並行して実施するためのデバイスである、マルチユニットプレートまたはストリップは、プレート本体に組み込まれているかまたは取り付けられている前述のような複数の反応ユニットを備える。一般に、反応ユニットは、プレート本体から少なくとも部分的に突出している。好ましくは、各反応ユニットの主軸は、プレート本体の面(planner)に垂直である。マルチユニットプレートは、例えば、従来の96ウェルフォーマットのプレートなどのリザーバプレート、および液体移送のための廃液パッド(waste pad)と共に使用されるように、例えば、2、...、96、384、1536またはそれより多くのフォーマットで構成されている。一実施形態では、マルチユニットプレートは、例えば、側壁の形態のスタンドまたは他の手段を備えてもよい。スタンドは、エラーなく液体を移送するようにマルチユニットプレートを一方向だけで整列させるため、リザーバプレートおよび廃液パッド(waster pad)上の構造と一致する案内構造を有してもよい。幾つかの実施形態では、反応ユニットとプレート本体は、反応ユニットをプレート本体に取り付けるおよび/またはプレート本体から取り外すことができるように、一致した構造を有する。
【0047】
B.リザーバプレート
本発明により、液体移送のためにマルチユニットプレートと共に使用されるデバイスである前記リザーバプレートは、プレート本体内にある単一のウェル或いは複数のより小さいウェルまたは溝を備える。各反応ユニットがウェルまたは溝に入り、液体を一方向だけで移送することを可能にするように、マルチユニットプレート上の構造と一致する案内構造がプレートの縁部にあってもよい。
【0048】
C.廃液パッド(Waster pad)
適宜、反応ユニット、若しくは、マルチユニットプレートと共に使用される廃液パッドは少なくとも1つの反応チャンバから液体を除去することが想定される。廃液パッドは、反応チャンバより高い毛細管効果を提供する少なくとも1層の液体吸収性材料を備え;それによって液体を除去することが可能になる。基板は、各反応ユニットがパッドに一方向で接触するようにマルチユニットプレート上の構造と一致する案内構造を本体の縁部に有してもよい。
【0049】
D.液体移送ガイド
適宜、液体移送ガイドは、リザーバプレートからマルチユニットプレートへの、またはマルチユニットプレートから廃液パッドへの液体移送を容易にすること、方向のミスをなくすこと、並びに反応ユニットの損傷を防止することが想定される。それは、一般に、リザーバプレートまたは廃液パッドを保持する収納構造を有する基板、および、基板上に固定された支持物に沿って下降できる上マルチユニットプレートホルダを備える。ホルダは、基板の方に移動するとき、マルチユニットプレートの各反応ユニットの底部がリザーバプレートのウェル内の溶液または廃液パッドの吸収層に接触することを可能にする開口部を有する。
【0050】
E.低容量フルスペクトルキュベットアダプタ
本発明の一実施形態により、光線が反応ユニットを通過することを可能にするために、反応ユニットを分光光度計の光路に保持および位置決めする低容量フルスペクトルキュベットアダプタを提供する。
【0051】
本明細書に記載される発明は、後述の詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されるが、それらは添付の特許請求の範囲に記載される本発明を限定するものと考えられるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明により、反応ユニット1は、分析、反応、アッセイ、サンプリング、移送、分配、貯蔵、希釈および/または抽出などの実験または応用を実施するのに使用されるデバイスである。
【0053】
図1は、反応ユニットの一実施形態およびその使用を示す。ここに示す反応ユニット1は、上部の非毛管現象ゾーン2と下部の閉鎖された毛管現象反応チャンバ3を備える管状のデバイスである。両方とも反応ユニット1の主軸4に沿って長手方向に延びる。反応チャンバ3は、それが毛管作用を使用して、反応ユニットの下部3の容量以下の容量を有する空間を充填するのに十分な量の液体を吸入することを可能にする半径を有するように設計されている。一実施形態では、半径は0.005mm〜1.5mmの範囲である。他の寸法も適切な可能性がある。
【0054】
しかし、非毛管現象ゾーン2の半径は、毛管現象を有していないか、または、重力に抗して液体を非毛管現象ゾーン2内に維持するほど強くない弱い毛管現象を有してもよい。或いは、非毛管現象ゾーンは、化学処理により、反応チャンバの一部から得られてもよい。このような設計では、反応チャンバまたは反応ユニットの下部の容量に等しい液体の量だけを、毛管作用で自動的に吸収することができる。底部開放構造が溶液と接触すると試料溶液は底部開口部5を通って入ることができ、その間、空気は上部開口部6を通って反応ユニットから出て行く。溶液は非毛管現象ゾーン2に到達すると、液体を更に引き込むほど毛管作用が十分でないため、流入を停止する。底部開口部5が試料溶液表面を離れるとき、反応チャンバ3内の毛管現象が重力に抗して液体を引き離すのに十分に強いため、反応ユニット1は反応チャンバ3内に同量の溶液を保持することができる。この毛管作用で行われる液体装填は、単純で、確実で、使用し易い液体移送方法を提供する。
【0055】
例えば、分光光度計などの検出デバイスを使用して、図示されている実施形態ではレンズ27および孔28を通過した後、主軸4に沿って反応ユニット1を通過する光源26からの光7で反応チャンバ3内の溶液中の検体を測定することができる。検体の濃度は、検出器8によって得られる光学濃度から導き出すことができる。図示されている実施形態では、光が反応チャンバ本体10を通過することを阻止するため、光ガイドデバイスとして黒い環のような底部構造9を任意に取り付けてもよい。溶液以外に他の物体が、反応ユニットの光路内にないため、デバイスを、広いスペクトル検出(例えば、UVから赤外までのフル光スペクトル)のためのキュベットとして直接使用することができる。
【0056】
図2は、図1の反応ユニット1を斜視図で示す。分かるように、反応ユニット1は、管状の毛細管ゾーン3、およびそれに隣接して非毛細管ゾーン2を備える。2つのゾーンの間に移行領域29が配置されており、図示されている実施形態ではそれは円錐の形状を有する。適用分野に応じて、他の形状が適切である。分かるように、毛細管ゾーン3と非毛細管ゾーン2の断面は両方とも円形である。しかし、幾つかの実施形態では、反応チャンバ3の断面は、例えば、チャンバの表面積を特に増加させるために、毛管作用を増加させるために、全容量を増加させるために、および/または他の目的で、異なる幾何学的パターンを有してもよい。適用分野に応じて、正方形、丸、星形、楕円形または長方形の断面で最良の結果が得られる場合がある。
【0057】
図3は、別の実施形態を斜視図で示し、図4は同じ実施形態を上面図で示し、図5は図4の線BBに沿った断面図を示す。図5で最もよく分かるように、毛細管ゾーン3と非毛細管ゾーン2の間に配置されている移行領域29は略U形であり、毛細管ゾーン3に隣接する略水平のセクションを有する。それによって、液体が非毛細管ゾーン内に残留しないことが達成されるが、平坦な(flatter)角度ではそれが起こる傾向がある。
【0058】
上部から底部までの断面の寸法は、用途に応じて様々であってよい。例えば、図8にさかさまに示されているような円錐形の反応チャンバ3は、例えば、中心軸4を中心に所望の角度αで直線12を回転させることによって形成される内面11を有し、円錐状の表面11が円筒状の形状と比較してより多くの光を受け取ることができるため、反応チャンバ3の内面11に結合した検体13によって発生する蛍光の検出に好ましい。
【0059】
図9は、略U形の反応チャンバ3を有する一実施形態をさかさまに示す。内面11は、中心軸4を中心に特定の曲線15を回転させることによって形成される。このU形の設計は、検体14によって発生する、光信号16(例えば、ルミネセンスまたは蛍光)をより多く反応チャンバ3の広い開口部17の方に向ける。
【0060】
反応チャンバの毛管現象の強さ、反応チャンバ開口部の寸法、および/または、底端部の寸法および表面特徴に関連する底部の液体保持量は、液体と空気の間の界面の表面形態(例えば、凹状、凸状、および平坦)に幾らかの影響を及ぼす可能性があることが観察された。異なる要求を満たすように単一のパラメータまたは複数のパラメータを変化させることによって、異なる表面形態を得ることができる。例えば、底端部の寸法は液体の保持量を決定する主要因の1つであり;寸法が大きいほど保持量は大きくなる。底部開口部の寸法および/または反応チャンバ本体の端部の厚さを変えることによって保持量を変化させることが可能である。底部開口部が試料溶液から離れるとき、反応チャンバの上開口部の液面は凹状になる傾向があることが分かった。底部の保持量が凹状の表面を平坦なまたは凸状の表面に変えるのに必要とされる量よりも少ない場合、上開口部の表面は凹状になる。従って、これらの2つのパラメータを変化させることによって、所望の表面形態を容易に得ることができる。例えば、反応チャンバ本体の端部の厚さが徐々に減少する、より小さい底部開口部を有する円錐形の反応チャンバは、最小限の保持量を有し、上開口部に凹状の液面を形成することができ、凹状の液面はレンズの役割をし、平行な入射光を反応チャンバの壁の方にそらすことができるため、それは蛍光測定に、より好適である。吸光度測定では、略平坦な表面を生じさせることができる反応チャンバがより好適である。
【0061】
幾つかの好ましい実施形態では、非毛管現象ゾーン2は、円形、正方形、または長方形の断面幾何学的形態と、平坦、V状またはU状の底部、または他の組み合わせを有してもよい。それは、単純な光ガイド構造の役割をし、光が反応チャンバ以外の反応ユニット本体を通過することを妨げることもできる。例えば、非毛管現象ゾーン本体の全体または一部を製造またはコーティングするのに、光透過性でない(non−optical transparent)材料を使用することができる。幾つかの特定の用途では、非毛管現象ゾーン2の内面30は、中心軸4を中心に所望の曲線を回転させることによって形成される回転対称な円筒状または円錐状の形状を有してもよい。形状に応じて、内面30は、光源26(図1参照)から入射する光7を反応チャンバ3上に集束させるか、または反応チャンバ内の光信号を検出器に向ける光ガイドデバイスとして機能し得る。代わりに、または追加で、図10〜図12に概略的に示されるような組み込みレンズ19を、非毛管現象ゾーン2の上部に光ガイドデバイスとして配置してもよい。図10は、反応ユニット1を上から見た斜視図で示し、図11は図10による反応ユニット1を上面図で示し、図12は、図11による反応ユニット1を通る線AAに沿った断面図を示す。
【0062】
反応ユニット1の内面の全体または一部は、本体を通過することによる光信号の損失を回避するため、ひいては、より多くの光を開口部の検出器に向けるため、高反射性の表面コーティングを有してもよい。例えば、図9に示すように、光透過性の本体10の外側表面20は、銀または他の適切な材料の層を有してもよい。反応チャンバ内の検体14によって発生する光放射16は、最終的により広い上開口部17と下開口部5からのみ出ることができる。検出器(ここでは詳細に示されていない)はこれらの開口部からの光信号16を捕えることができる。反射性の表面はまた、反射層を保護するため、光学的汚染を回避するためなどの他の目的で保護被膜の層を有してもよい。例えば、反応チャンバの表面がアルミニウム層を有するとき、他の材料の被覆層(over−layer)によって、試薬がアルミニウム表面と直接接触することを回避できる。
【0063】
特定の用途またはアッセイ法(例えば、ELISAのような不均質アッセイ、または均質アッセイ)に基づく標的分子の選択的な結合または非結合を可能にするように、反応ユニットの表面を化学的におよび/または物理的に処理してもよい。所望の材料の表面層を導入することによって、層内の分子の官能性領域は、共有結合、またはイオン性、疎水性相互作用のような非共有結合、または金属結合により標的分子と相互作用するか、または標的分子が結合しないように保護する。例えば、反応チャンバの表面は、抗体の層でコーティングされており、試料中の対応する抗原は抗体に結合し、反応チャンバから試料溶液を除去した後、表面に残留する。様々な実施形態では、好ましくは、流体液滴の形成を回避するために、反応ユニットの外面またはその一部を化学的に処理し、非濡れ性の表面を形成してもよい。例えば、疎水性の外面は、水溶液で実施される反応またはアッセイに、より好適である。
【0064】
粗い表面仕上げ(詳細には示されていない)を使用することによって、より多くの標的分子が付着できるように、反応チャンバ3はその表面積を大きく増加させることができる。反応チャンバの粗い表面仕上げは、また、液体保持を増加させ、親水性または疎水性材料で製造された反応チャンバの表面に薄い液体の層を形成することができる。液体の層は、液体が、とりわけ疎水性材料で製造された反応チャンバに流入することを容易にし、また、結合した分子が迅速に乾燥しないように保護する。
【0065】
反応ユニット1は、一般に金属、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリレートまたはポリカーボネート)、ゴム、または他のものなどの固体材料で製造される。幾つかの用途では、反応チャンバと非毛管現象ゾーンは異なる機能を有し、毛管現象、および耐薬品性などの特徴のような異なる要件を満たす必要があるため、反応チャンバと非毛管現象ゾーンを異なる材料(例えば、組成、構造、および色などが異なる)で製造することができるか、または、反応チャンバおよび非毛管現象ゾーンを1つの材料で製造し、それらの1つを別の材料で処理することができる。例えば、反応ユニットの本体全体を疎水性プラスチックで製造してもよく、タンパク質またはオリゴヌクレオチドが付着できる官能性領域を含有する親水性ポリマーで反応チャンバの表面をコーティングすることができる。
【0066】
反応ユニットを製造する従来の技術としては、微細機械加工、放電加工(EDM)、または化学エッチングが挙げられる。或いは、ポリマーまたは樹脂を使用して、反応ユニットを注型することができる。異なる部品を一緒に組み立てるかまたは2つの半分の反応ユニットを一緒に融合することによって反応ユニットを製造することもできる。例えば、反応チャンバの本体内に銀層を含む反応ユニットを注型するために、外面に銀層を有する所望の中空の管を、反応ユニットの注型用金型内に固定することができる。外側の中空の管と、注型される樹脂またはポリマーとの間に永久結合が形成するように、中空の管とポリマーの化学的性質は理想的に選択される。中空の管の内面は反応チャンバを構成する。このようにして、電極、および光ファイバなどの多くの異なるデバイスを反応ユニットに容易に組み込むことができる。
【0067】
本発明の異なる用途により、反応ユニットは、追加の特徴、構造およびデバイスと組み合わせた様々な形態を有することができる。図13は、多重検出のための反応ユニット1を側面図(図13a)と上面図(図13bおよび図13c)で示す。反応ユニット1は、それぞれに抗体22が入っている幾つかの反応チャンバ3を備える。反応チャンバは、互いに略平行に配置されている。複数の抗原を含有する試料を装填した後、反応チャンバ内の抗体22は、試料溶液から標的の抗原だけを捕獲する。標的の抗原が入っている反応チャンバは、追加の試薬を用いて光信号を発生することができ、それを、例えば、CCDカメラなどのデバイスで記録することができる。
【0068】
図面に概略的に示されている反応ユニット1の実施形態は、化学反応、分子相互作用、および細胞活性などに関連する電気信号を検出するために、反応チャンバに適応した任意の種類の電極(詳細に示されていない)を含んでもよい。例えば、それは、酸化還元反応などの電気化学反応を検出することができる。また、このような反応ユニットを使用して、反応チャンバ内で液体を流動させ、荷電分子を移動させてもよく、温度を上昇させてもよく、電気化学ルミネセンスを誘導させてもよい。例えば、交流電場の印加は反応チャンバ内で荷電分子を前後に移動させて、分子の拡散を促進すること、反応速度を上げること、または溶液を混合することができる。また、電気浸透流動現象を使用して溶液を混合することができる。また、溶液を混合する、反応速度を上げる、および温度を上昇させるためなどに、超小型超音波デバイス(詳細に示されていない)を反応ユニットに組み込んでもよい。本発明の一実施形態により、例えば、エバネッセント波を生じさせ、その後、蛍光検出のために光ファイバ表面に固定化された分子に結合した、蛍光標識された(fluorophor labeled)分子を励起させることができるように、反応チャンバ内に光ファイバ(詳細に示されていない)を組み込んでもよい。光ファイバは、光学濃度、蛍光、およびルミネセンスなどの測定のために反応チャンバに、および/または反応チャンバから光を向ける光ガイドデバイスとして機能し得る。反応ユニット1を、クロマトグラフィー、および電気泳動などのためのデバイスとして使用してもよい。例えば、クロマトグラフィーおよび合成のために、反応チャンバ内に多孔質材料を充填してもよい。反応チャンバの底部開口から多孔質材料が損失することを回避するために、小さい穴を有する底部構造を使用してもよい。
【0069】
図14は、本発明による反応ユニット1を有するピペット40を斜視図で示す。ピペット40および反応ユニット1は、内部が見えるように破断図(cut view)で示されている。例えば、低容量ピペットなどの液体移送デバイスのために反応ユニット1を使用することができ、そこで、反応ユニットはピペットのチップとして、毛管作用を使用して液体リザーバから液体を自動的に定量的に吸収することができ、その後、分注デバイスは液体を受け入れ容器に押し出すことができる。移送される液体の量は、反応ユニットの反応チャンバの容量によって画定される。ピペット40は、a)ハウジング31、2つのシリンダ端部(一端はハウジング31内に位置決めされ、他端はハウジングから延びてピペットチップホルダ34を形成する)と開放構造33(開口部)を含むシリンダ32、シリンダ内を上限と下限の間を移動するピストン35であって、ピストンが上限に配置されているとき、シリンダの内部空間はまたシリンダの開放構造33を通して大気とつながっており、ピストンが下降し、開放構造を過ぎるとき、シリンダの内部空間内の空気はピペットチップホルダ34の開放構造を通って行くことしかできず、このようにして、ピペットチップ内の液体を受け入れ容器に分注するピストン35、およびピストンを動かすプランジャ36;b)チップホルダの端部に取り付けられ、移送される液体を自動的に吸収する、並びに保持することができる使い捨てピペットチップ(反応ユニット)1を備える。このチップをチップホルダから取り外し、廃棄し、新しいチップと取り替えることができる。ピペットを自動または手動で作動させることによって液体を移送するようにピペットを構成してもよい。自動操作されるピペットは、液体を移送するためにプランジャを作動させてピペットシリンダ内でピストンを移動させるモーターを含んでもよい。手動操作されるピペットは、ピストンを作動させるために、ピペットの使用者が通常は親指でプランジャヘッド(38)に力を加えることを必要とする。
【0070】
吸収する量は専らチップ自体によって決定されるため、液体移送デバイスは非常に正確な、高価な、複雑な、製造が困難なピストンとシリンダのユニットを必要としない。そのうえ、本デバイスは正確であり、較正を必要とせず、人為的な移送量の差がなく、指の動きをあまり必要とせず、手が温かいため、体温によって起こるピペッティング量の変化がないといったことがある。更に、移送される液体の両側の空気圧は吸収位置で常に同じであるため、不揮発性流体並びに高揮発性流体にデバイスを使用することができる。チップによって吸収される流体はごく少量であり、流体を定量的に吸収するチップに干渉するほど高くシリンダ内の圧力が増加しないため、不揮発性流体のためにシリンダ壁に開放構造を有する必要がない場合がある。既存のピペットを分注デバイスとして使用してもよい。
【0071】
反応ユニットは定量の液体を吸収し、保持することができるため、それをサンプリング、移送、分配、希釈、抽出、および貯蔵などのためのデバイスとして使用することができる。例えば、図6に示されるような開放された毛管現象反応チャンバは、反応チャンバ内の液体が本体10の開放構造23(間隙)を通して別のものと直接接触できるため、希釈および抽出に好ましいデバイスとなり得る。規定の希釈を達成するため、反応ユニット内の定量の第1の溶液を、ウェルまたは管内の所望の量の第2の溶液と容易に混合することができる。抽出のため、2つの液体は互いに不溶性でなければならず、反応ユニットは、それらの1つを反応チャンバ内に保持するのに十分強い毛管現象を生じさせなければならない。抽出中、反応チャンバ内の液体はそこに留まり、別のものと取り替えられてはならない。例えば、親水性試料溶液を吸収するために親水性反応ユニットを使用することができ、その後、抽出するために容器内の所望の疎水性溶媒に浸漬することができる。2つの溶液間で検体の再分配が起こり、最終的に平衡状態に到達する。
【0072】
図7に概略的に示されているような閉鎖された反応チャンバ3は、試料を直接貯蔵するのに好適なデバイスである。貯蔵された凍結試料(例えば、生物試料および化合物など)が落下することを防止するために、例えば、V状またはU状などの、底部が上部より小さい寸法を有するように、反応チャンバを設計することができる。或いは、より小さい寸法または異なる断面を有する底部構造を使用して試料を保持することができる。更に、底部構造は疎水性材料で製造されてもよく、開放構造の寸法が親水性の液体の通過を可能にするのに十分大きいように設計されるが、非濡れ性の底部構造は液体の表面張力によりその空間を充填するほど溶液を引き寄せないため、溶液が底部封止膜に接触することが回避される。
【0073】
また、温度、pH、および標的分子などを測定するために、マイクロセンサを反応チャンバに適応させてもよい。
【0074】
ナノテクノロジーの開発で、ますます新しく有用なデバイスを本発明に適応させることもできる。
【0075】
マルチユニットプレート
本発明により、前記のいずれかの種類の用途の並行実験をマルチユニットプレート上の多数の反応ユニットで実施してもよい。図15は、マルチユニットプレート39を斜視図で示し、図16は上面図で示し、図17は図17の線AAに沿った断面図で示す。幾つかの反応ユニット1をプレート本体41に統合することができる。各反応ユニット1の軸4は、プレート本体41に略垂直である。マルチユニットプレートは、液体移送のため、例えば、96ウェルフォーマット(詳細に示されていない)のプレートなどのリザーバプレート、および、廃液パッドと共に使用するように構成される。マルチユニットプレートが位置決めされている表面に反応ユニットの底部が接触することを回避するのに十分に高いスタンド(詳細に示されていない)が、プレート本体の縁部で突出していてもよい。スタンドは、リザーバプレートおよび廃液パッド上のものと一致し、マルチユニットプレートを所望の方向でリザーバプレートおよび廃液パッドと整列させ、ミスのない液体移送ができるようにする案内構造(詳細に示されていない)を含んでもよい。
【0076】
マルチユニットプレートを金属、プラスチック、およびガラスなどの任意の固体材料で製造することができるが、これらは例として挙げたものであり、限定するものではない。マルチユニットプレートフレーム(反応ユニットなしのマルチユニットプレート)および反応ユニットを別々に製造した後、一緒に組み立ててもよい。多くの(numerals)構造を使用して、マルチユニットプレートフレームの開口部に反応ユニットを固定することができる。例えば、一実施形態では、スクリュとナットの構造を使用し、プレートフレームは反応ユニットのラックの役割をする。この設計は、サンプリング、貯蔵、希釈、および移送などに、より好適になり得る。また、マルチユニットプレートフレームおよび反応ユニットを全部、注型で製造することもできる。場合によっては、反応ユニットの一部をプレート本体と一緒に製造した後、一緒に組み立ててもよい。例えば、1つのプレート本体内に非毛管現象ゾーンを製造することができ、反応ユニットの残りの部分をマルチユニットプレートフレームと一緒に製造する。
【0077】
希釈プレート
本発明により、希釈プレートは、希釈を非常に容易且つ迅速にするためのマルチユニットプレートの特定の使用である。一実施形態では、規定の容量を有する希釈ユニット(または反応ユニット)をプレート本体に、要求に基づいた所望のフォーマットで固定することができる。例えば、A〜Hの各縦列の希釈ユニットは、1、2、3、4、5、6、7および8マイクロリットルの容量を有する。縦列フォーマットの溝付きリザーバプレートを使用し、各試料を各溝付きウェルに装填する。各縦列内の希釈ユニットは、連続した量の各試料を吸収する。次いで、例えば、遠心分離により、ウェルのあるリザーバプレートに試料を移送することができ、そこで、A〜Hの各縦列のウェルに1、2、3、4、5、6、7および8マイクロリットルの試料が入れられる。このようにして、アッセイにおける標準液および試料の一連の希釈を標準液または試料から多くのピペッティング工程なしに単一の工程で容易に行うことができる。
【0078】
液体移送アレイデバイス
本発明の図18の実施形態により、液体移送アレイデバイスは、a)一端が本体から突出し、ピペットチップのためのホルダ53を形成するアレイプレート本体52内の多数のシリンダ51;b)一方側が駆動プレート本体55に固定されており、スロット56を含む他方側がシリンダ内を移動できる多数のピストン54;c)ホルダに取り付けることができる、定量的に自動的に液体を移送する多数のピペットチップ57、を備える。駆動プレートが液体吸収位置にあるとき、ピストンのスロットによって貫通穴の内部空間は大気とつながり、そのため、取り付けられたチップは、さもなければ増加するシリンダ内の空気圧の影響を受けることなく、定量の液体をリザーバから自動的に吸収することができる。スロットがシリンダ内に入った後、駆動プレートがピストンを更に押すとき、液体を受け入れ容器の中に分注することができる。
【0079】
膜を基板にするシステムは、前記のピストンとシリンダのシステムとして機能し、正圧を生じさせることができる。図19は、正圧の加圧ガスを使用してチップから受け入れマルチウェルプレートへの液体移送を実施する液体移送アレイデバイスの図である。デバイスは多数の貫通穴132(底端部はピペットチップホルダ133を形成する)を有するアレイプラテン131、ガス入口/出口137を有する駆動力発生装置(producer)の、アレイプラテンと同じフォーマットの開口部136を含む底部プラテン135に取り付けられた弾性膜134を備える。吸収位置にあるとき、アレイプラテンの上貫通穴端部は膜に接触せず、従って、貫通穴は上端で大気に開口している。円内に図示されている分注位置にあるとき、アレイプラテンおよび駆動力発生装置は一緒に合わせさられ、間にある膜はアレイプラテンの上側にぴったりと接触し、貫通穴132の上端を封止する。次いで、加圧ガスを駆動力発生装置に流入させて、開口部136の膜133を押し、膜133がアレイプラテンの貫通穴132の方に曲がり、チップ138から液体を押し出すようにする。加圧ガスタンクまたはポンプで加圧ガスを得ることができる。また、それらがアレイプラテン131およびチップ138として使用されるとき、この膜を基板にするシステムをマルチユニットプレートまたは希釈プレートから液体を排出するのに直接使用することができる。
【0080】
リザーバプレート
リザーバプレートは、複数のウェル、溝、格子状の溝、または大きく平坦なウェルのような多くのタイプを有してもよい。これらのプレートは、金属、ガラス、またはプラスチックといった様々な固体材料から製造されてもよいが、これらは例として挙げたものであり、限定するものではない。試薬の結合を回避するために、または用途により溶液を排出するためにプレートの表面を化学的に処理してもよい。液体リザーバプレートの寸法は、各反応ユニットの底部開口部がリザーバプレートのウェル内の溶液に接触することを可能にする。ウェルまたは溝のような対応する位置に反応ユニットが入るように案内するために、マルチユニットプレートのスタンド上の構造と一致する案内機能構造があってもよい。
【0081】
リザーバプレートのウェルは、マルチユニットプレートの反応ユニットのフォーマットに対応するフォーマットで配置される。ウェルは、反応ユニットの突出部分が入るのに十分大きいものとする。従って、反応ユニットの底部開口部はウェル内の液体に接触し、定量の液体を吸収して反応チャンバに入れることができる。
【0082】
リザーバプレートの溝付きウェルは、反応ユニットの底部開口部が溝の中の液体に接触することを可能にする寸法およびフォーマットを有するものとする。溝のフォーマットと長さは、ピペッティングの回数が減少するように異なる用途に合うように設計されている。図20は、全長縦列フォーマットの溝付きリザーバプレートの一実施形態である。溝61は、マルチユニットプレートの1つの縦列の全ての反応ユニットが同じ溝に入ることを可能にするのに十分長い。反応ユニットが対応する溝に入るように案内するために、マルチユニットプレートのスタンド上の構造と一致する案内構造62がプレートの縁部にあり、各縦列の反応ユニットには同じ試料が入れられる。図21に示されるような全長横列フォーマットの溝付きリザーバプレートを使用して、異なる検出試薬を横列方向に導入する場合、各横列の反応ユニットには同じ検出試薬が入る。このようにして、1つの試料を幾つかの異なる試薬で同時に試験することができる。図22の格子状の溝付きリザーバプレートは、全ての反応ユニットに同じ溶液を充填するための溝付きリザーバプレートの特定の場合のものである。その代わりに、大きく平坦なウェルのあるリザーバプレートを使用することができるが、格子状の溝タイプのプレートの方が液体移送を実施するのに必要な溶液が少ない。
【0083】
廃液パッド
図22は、廃液パッドの一実施形態を示す。廃液パッドは、基板71、非常に強い液体吸収能力を有する吸収層72、および、下層を保護し液体の通過を可能にする表面層73を備える。吸収層は、基板上の壁状構造74で形成された空間に配置されている。前記上表面層はフレーム構造75で固定されている。反応ユニットが表面層に所望の方向で接触するように案内するために、マルチユニットプレートのスタンド上の構造と一致する案内構造62があってもよい。
【0084】
他の変形では、基板は、例えば、上部装填の場合、多量の液体を除去する必要があるとき、層を機能的な状態に維持するため、吸収層の下の排水構造と、吸収層から液体を吸い出す真空ポンプのようなデバイスへの接続を可能にする開口部を含んでもよい。
【0085】
図23は、例えば、反応チャンバの洗浄を繰り返す幾つかの手順を更に容易にするために、溝状のリザーバ77が隣接している複数のストリップパッド76として設計された廃液パッドの一実施形態を示す。溝またはストリップパッドのような対応する位置に反応ユニットが行くように案内するために、マルチユニットプレート上の構造と一致する案内構造62があってもよい。従って、反応チャンバの充填および洗浄用バッファの除去を同じプレート上で実施することができる。
【0086】
液体移送ガイド
本発明の一実施形態により、図24の液体移送ガイドは、基板上にリザーバプレートまたは廃液パッドを収納する三面壁構造82を有する基板81、および、穴84によって案内され、基板81上に固定された支持物85に沿って下降できる上マルチユニットプレートホルダ83を備える。マルチユニットプレートホルダ83は、マルチユニットプレートが溝構造に沿って摺動し出入りすることを可能にする溝構造86を含む。マルチユニットプレートホルダの開口部構造87は、それが基板の方に下降するとき、マルチユニットプレート上の各反応ユニットの底部がリザーバプレートのウェルの中の溶液または廃液パッドの吸収層に接触することを可能にする。基板とホルダとの間に、2つの機能を有するばね構造88が取り付けられている。1つはホルダが基板に近づき過ぎて、その結果、マルチユニットプレートの損傷が起こらないように保護することであり、もう1つは、リザーバプレートまたは廃液パッドが摺動して基板に出入りできるように、ホルダをその定位置に押し戻すことである。
【0087】
低容量フルスペクトルキュベットアダプタ
本発明の一実施形態により、図25に示されるような低容量フルスペクトルキュベットアダプタ91を、従来の分光光度計の超ミクロキュベットとして、キャピラリーキュベット92または反応ユニットと共に使用することができる。アダプタは、貫通チャネル96内にV溝93と、ばね95を有するレバー94を備える。キャピラリーキュベットの位置決め本体(position body)97をV溝とレバーでチャネル内に固定することができる。このようにして、アダプタが分光光度計のキュベットホルダの中に入れられるとき、光がキャピラリーチューブを通って一端から他端に長手方向に進むように、キャピラリーチューブ98を位置決めする。キャピラリーの長さを変化させることまたは試料の装填量を調整することによって光路の長さを変えることができる。キャピラリーキュベットは、両端が開放しているため、フルスペクトル検出に好適である。
【0088】
B.使用方法
本発明により、実験を実施する方法は、a)前述のように毛管作用で、定量の液体を底部開放構造の中を通して自動的に吸収し、反応チャンバ内に保持するように構成されたデバイスである前記反応ユニットを提供する工程;b)試料、試薬およびバッファなどを反応チャンバにおよび/または反応チャンバから定量的に移送する工程;c)分光法、光学濃度、蛍光、ルミネセンス、電位、電気伝導率、pH、および温度などの信号を検出する工程を含む。異なる用途に基づいて、幾つかの工程を1回または数回繰り返す必要がある場合がある。
【0089】
定量の液体を反応ユニットにまたは反応ユニットから移送することを、以下の方法で実施することができる。
【0090】
反応チャンバを定量的に完全に装填するためには、底部開放構造(9)が液面下にくるまで反応ユニットを単に下げるだけでよい。液体は毛管作用で反応チャンバ(3)に自然に流入し、反応チャンバと非毛管現象ゾーンの寸法および/または幾何学的形態および/または表面特性が毛管現象が弱まるほど十分異なるため、液体の前面が反応チャンバと非毛管現象ゾーン(2)の間の位置に到達すると流入を停止する。反応ユニットへの液体の流入量は、反応チャンバの容量に等しく、底部開放構造が液面を離れるとき、この量の液体が反応チャンバ内に入っている。
【0091】
寸法、幾何学的形態、表面特性、および反応チャンバの材料に応じて、反応チャンバを完全に装填するために、反応チャンバの表面を液体で予め濡らして液体の薄層を形成する必要がある場合があることが分かった。液体の装填中、機械的振動プロセスを導入することにより反応チャンバの部分的な充填を克服することができる。例えば、予め濡らすことが不完全であるため、疎水性材料、例えば、ポリスチレンで製造された反応チャンバを完全に充填できないことがある。従って、機械的振動を使用して液体を反応チャンバに流入させ、液体が通過する表面を濡らすことができる。毛細管力により液体は最終的に反応チャンバを充填する。また、ガラスなどの親水性材料で製造された完全に乾燥した反応チャンバを限られた時間で完全に装填するために、機械的振動プロセスが極めて重要となり得る。
【0092】
定量的な部分的装填は、底部開放構造を非濡れ性の表面またはウェル上の所望の量の液体に接触させることによって実施され、それは反応チャンバを完全に充填するには十分ではない。更に、液体の総量が反応チャンバの容量を越えないとき、前記の定量的な部分的装填手順を繰り返すことによって、幾つかの定量的な部分的装填を行うことができる。
【0093】
或いは、完全にまたは部分的に装填するために、非毛管現象ゾーン(上部装填)または反応チャンバに定量の液体を加えることもできる。更に、反応チャンバには乾燥試薬が入っていてもよい。そのため、多数の部分的装填工程なしに、試料を反応チャンバに導入した直後に反応を開始することができる。
【0094】
水溶液では、例えば、ろ紙などの、反応チャンバよりはるかに強い毛管現象を有する乾燥したまたは濡れた吸収性材料の表面に反応ユニットの開放構造(9)を直接接触させることにより、毛管作用で反応チャンバ内の液体を全量、空にすることができる。或いは、気圧を変化させて液体を非毛管現象ゾーンに入れること、および、例えば、ピペットなどのデバイスで吸い取ることによって液体を除去することができる。また、真空、遠心分離、または加圧空気で液体を反応ユニットから追い出すこともできる。
【0095】
空気圧を変化させて液体を非毛管現象ゾーンに入れること、およびリザーバから所望の量を吸い取ること、または、例えばピペットなどの液体移送デバイスで反応チャンバから定量を直接吸い取ることにより、反応ユニットから定量的な部分量の液体を除去することができる。或いは、スポッティングにより液体を濡れ性の表面に移送することによって定量の液体を反応ユニットから除去することができる。表面材料の所望の濡れ性を選択することによって、各スポッティングの移送量を調整することができる。
【0096】
第1の液体を第2の液体で完全に且つ定量的に交換することが可能である。反応ユニットの底部開口部(5)が第2の液体の表面に接触するとき、反応チャンバの少なくとも1倍の容量を有する非毛管現象ゾーン(2)に第2の液体を加えることができる。第2の液体は、第1の液体を反応チャンバから押し出し、古いものを交換する。
【0097】
第1の液体を部分的に且つ定量的に交換するために、反応ユニットの底部開口部が第1の液体の表面に接触するとき、第2の液体を所望の量、非毛管現象ゾーンに加えることができる。第2の液体は、第1の液体を同量、反応チャンバから押し出す。
【0098】
反応チャンバ内で液体を混合するため、反応ユニットの開放構造に空気圧の変動を加えることができる。空気圧の変動は、反応ユニット内の液体を振動させる。例えば、液体はまず非毛管現象ゾーンの方に移動した後、その元の位置に戻る。或いは、また、液体を混合するために、交流電場を印加して、電極を含む反応ユニット内で分子を前後に移動させることもできる。超小型超音波デバイスを含む反応ユニットを使用して、液体を混合することもできる。更に、前記の目的にも機械振動混合機または音波発生装置を使用することができる。
【0099】
反応チャンバの信号を記録するために、多数の検出デバイス(例えば、分光光度計、蛍光分光光度計、CCDカメラ、および電気メータなど)を使用することができる。電極および光ファイバなどのような組み込みデバイスは、信号の検出を容易にし得る。
【0100】
別の実施形態では、ハイスループット実験を実施する方法は、a)前述のように毛管作用で、定量の液体を底部開放構造の中を通して自動的に吸収し、反応チャンバ内に保持するように構成された複数の反応ユニットを有するマルチユニットプレートを提供する工程;b)試料、試薬およびバッファなどを反応チャンバにおよび/または反応チャンバから、液体リザーバプレート、廃液パッド、および任意に液体移送ガイドなどの他のデバイスで定量的に移送する工程;c)分光法、光学濃度、蛍光、ルミネセンス、電位、電気伝導率、pH、および温度などの信号を検出する工程、を含む。異なる用途に基づいて、幾つかの工程を1回または数回繰り返す必要がある場合がある。
【0101】
マルチユニットプレートと液体リザーバプレートまたは廃液パッドとの間の側壁スタンド上の案内構造を補助として用いて、または、このような構造が使用可能でない場合は、液体移送ガイドを使用して、反応ユニットを液体リザーバプレートの対応するウェルまたは溝に浸漬することによって液体を反応ユニットに正しい方向で装填すること、または、反応ユニットの底部を廃液パッドの表面と接触させることによって反応ユニットから液体を除去することが毛管作用で非常に容易になり得る。反応、分析、またはアッセイのために、上記手順または幾つかの部分的装填を繰り返して、試料および異なる試薬を容易に定量的に反応ユニットの中に導入することができる。
【0102】
溝プレートは、幾つかの試料で多重検出を行うのに好ましい。例えば、縦列フォーマットのプレートの各溝付きウェルには各患者からの試料が入っており、横列フォーマットのプレートの各溝付きウェルは、各特定の検体用の試薬を有する。従って、各縦列の反応ユニットには同じ試料が装填され、その後、試料は横列方向の各特定の試薬と反応することができる。このようにして、各試料で同時に幾つかの結果を得ることができる。
【0103】
プレートリーダー、CCDカメラ、または他の多くの検出デバイスを使用して、マルチユニットプレートから信号を読み取ることができる。
【0104】
別の実施形態では、サンプリング、移送、希釈、抽出、および貯蔵を実施する方法は、a)前述のように毛管作用で、定量の液体を底部開放構造の中を通して自動的に吸収し、反応チャンバ内に保持するように構成された1つまたは複数の反応ユニットを有するデバイスを提供する工程;b)任意に液体リザーバプレートおよび液体移送ガイドなどの他のデバイスで反応チャンバに液体試料を定量的に吸収する工程;c)液体移送のためにまたは希釈のために、表面または膜上にまたはウェルプレートの中に分注または導入する工程、を含む。
【0105】
反応ユニットはまた、毛管現象で定量的に液体を操作するデバイスであるため、反応ユニットは、反応ユニットおよび液体リザーバプレートの特徴および様々な変形により、サンプリング、移送、希釈、および貯蔵をはるかに容易にする。例えば、反応ユニット開放構造を試料に浸漬することによって、定量の試料の吸収を簡単に行うことができる。次いで、希釈または貯蔵または他の目的のため、試料を直接接触により表面に分注するかまたは遠心分離によりウェルの中に導入することができる。開放反応チャンバでは、希釈のためまたは抽出のため、単にウェル内で反応ユニットを攪拌すればよい場合がある。また、任意に封止膜またはキャップを用いて反応ユニットを試料の貯蔵に直接使用してもよい。
【0106】
C.可能な用途
本発明は、一実施形態により、少量アッセイに使用され、毛管作用により液体移送手順を容易にし、且つ反応を促進することができ、生物学的、生化学的、化学的、または物理学的分析、反応、およびアッセイの実験に使用され得る、ハイスループットのための並行および/または複数実験のプラットホームを提供する。本発明はまた、生物試料、生化学試料または化学試料のサンプリング、貯蔵、移送、抽出、および希釈のためのデバイスおよび方法も提供する。
【0107】
多数の分析、反応、およびアッセイがあるが、それらは基本的に2つのタイプ:均質と不均質に分けられる。均質なものは、反応成分の溶液を連続的にまたは予め混合して吸収するだけで、反応ユニットで実施できる。不均質なものは、反応成分を異なる相に含む。例えば、固相アッセイでは、反応成分の1つを反応チャンバの表面に固定化してもよい。固定化された反応成分は、通常、反応溶液中の他の標的成分と相互作用する。幾つかの反応成分が反応チャンバ内に一緒に存在する場合、幾つかの反応成分によって信号が発生し、当該技術分野で既知の検出方法の1つで検出することができる。開放された反応チャンバ内の試薬は、別の相の他の試薬と接触する表面積がより大きいため、開放された反応ユニットは、2相が例えば液体と液体、または液体と気体である幾つかの不均質反応に好ましい。
【0108】
免疫学的検定の実施にマルチユニットプレートを使用することができる。例えば、ELISAでは、タンパク質試料を反応ユニットに装填する。一晩4℃または数時間37℃にインキュベートすると、物理的相互作用により反応チャンバの表面にタンパク質を固定化することができる。或いは、タンパク質のアミン部分に結合するヒドロキシスクシンイミド基などの化学反応によりタンパク質を固定化することができる。数回洗浄することにより非結合タンパク質を除去した後、例えば、粉乳溶液を使用して、タンパク質を更に吸収できる領域をブロッキングする。次いで、粉乳溶液に代わって酵素標識された検出抗体を使用し、それは反応チャンバの表面の標的タンパク質に結合する。反応チャンバを数回洗浄することによって遊離しているものを完全に除去した後、結合した酵素標識された検出抗体で発色するように基質溶液を装填する。マイクロウェルプレートリーダーは、基質または生成物の最大吸収を有する波長で光学濃度を読み取る。
【0109】
また、エレクトロルミネセンス法を用いたサンドイッチ法ELISAを、電極を含む反応ユニットで実施することができ、作動電極はストレプトアビジンでコーティングされている。対応する試薬または試料を連続的に装填および除去し、間に洗浄することにより、試料中の検体は、ビオチン化捕獲抗体とルテニウム標識検出抗体の間に挟まれる。トリプロピルアミン(TPA)の存在下で電位を印加すると、ストレプトアビジンに結合した免疫複合体は、光電子増倍管(PMT’s)リーダーで捕えることができる電気化学ルミネセンス信号を発生させる。
【0110】
蛍光偏光(FP)は、生物学的相互作用の研究のための周知の方法であり、新薬となり得る標的のハイスループットスクリーニング(HTS)に使用されることが多い。スクリーニングを実施するために、それをマルチユニットプレートに容易に適応させることができる。例えば、受容体をめぐって試験化合物と競合するCyDye標識された配位子を使用して、反応ユニットでFPアッセイを実施することができる。CyDye標識された配位子が受容体に結合すると、受容体の回転が遅くなるため、PF値は増大する。試験化合物が、CyDye標識された配位子の同じ結合部位で受容体に結合できるとき、試験化合物は、結合部位をめぐってCyDye標識された配位子と競合し、CyDye標識された配位子と受容体の複合体の形成が少なくなるため、PF値の低下を引き起こす。従って、CyDye標識された配位子、受容体、および試験化合物をマルチユニットプレートに装填した後、蛍光偏光リーダーを使用することによって測定されるプレートの各反応ユニットのPL値は、試験化合物の受容体への結合能力を反映する。
【0111】
合成は複数の装填工程、空にする工程、および洗浄工程を含むため、それは固相合成法を用いた少量のペプチドまたはオリゴヌクレオチドの合成にも理想的なデバイスである。リザーバプレートに関連して所望の試薬の装填順序を規定することにより、各アドレス付けされた反応ユニット内でペプチドまたはオリゴヌクレオチドの長さおよび配列を容易に調整することができる。或いは、反応チャンバに小さいビーズを導入し、合成のためにより大きい表面積を提供してもよい。
【0112】
本デバイスは、液体の操作が容易であるため、頻繁に起こる着色化合物の結果に対する干渉をなくすために、化合物のスクリーニングのための固相酵素アッセイに使用され得る。固相酵素アッセイの手順は、1)物理的相互作用または化学反応により反応チャンバの表面に酵素を固定化すること、2)非結合酵素を洗い流すこと、3)反応チャンバに化合物を導入し、酵素化合物複合体を形成すること、4)遊離化合物を洗い流すこと、5)反応チャンバに基質を装填して反応させること、および6)マイクロウェルリーダーなどのデバイスを使用して酵素活性を分析することである。化合物が酵素に結合し、酵素を阻害できるとき、酵素活性は低下する。
【0113】
また、質量分析法を使用した化合物のスクリーニングに本デバイスを使用することもできる。手順は、1)物理的相互作用または化学反応により反応チャンバの表面に標的タンパク質を固定化すること、2)非結合タンパク質を洗い流すこと、3)化合物を反応チャンバに導入し、タンパク質−化合物複合体を形成すること、4)遊離化合物を洗い流すこと、5)化学的または物理的処理によりタンパク質−化合物複合体から化合物を遊離させること、6)遊離した化合物を質量分析方で分析すること、である。
【0114】
また、デバイスの上部装填特徴を使用して自動化し、同じ溶液をデバイスに、およびデバイスから数回移送しなければならない洗浄工程などの手順を簡単にすることもできる。底部接触装填の代わりに、例えば、マルチチャネルチュービングポンプなどの液体操作デバイスで洗浄用バッファを非毛管現象ゾーンに連続的に導入し、幾つかの量の洗浄用バッファを毛管現象反応チャンバに通流させることにより、非結合検体または化合物をデバイスから洗い流すことができる。
【0115】
本発明の実施形態の詳細な説明を使用して本発明を記載してきたが、それらは例として提供され、本発明の範囲を限定することが意図されていない。記載した実施形態は異なる特徴を含み、その全てが本発明の全ての実施形態に必要とされるわけではない。本発明の幾つかの実施形態は、特徴、または特徴の可能な組み合わせの幾つかしか使用しない。記載されている本発明の実施形態の変形、および、記載されている実施形態に示されている特徴の異なる組み合わせを含む本発明の実施形態が当業者に分かる。有用性はこれらの例および実施形態によって限定されるものではなく、冒頭の特許請求の範囲も含むものである。
【0116】
特定の実施形態に関して本発明を記載してきたが、他の多くの変形および変更並びに他の用途は当業者に明らかである。従って、本発明は本明細書の具体的な開示によって限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】反応ユニットおよびその使用方法の図である。
【図2】反応チャンバの斜視図である。
【図3】U形の非毛管現象ゾーンを有する反応チャンバの斜視図である。
【図4】U形の非毛管現象ゾーンを有する反応チャンバの上面図である。
【図5】U形の非毛管現象ゾーンを有する反応チャンバの断面図である。
【図6】開放された反応チャンバを有する反応ユニットの斜視図である。
【図7】閉鎖された反応チャンバを有する反応ユニットの斜視図である。
【図8】円錐形の反応チャンバを有する反応ユニットの斜視図である。
【図9】U形の反応チャンバを有する反応ユニットの斜視図である。
【図10】組み込みレンズを含む反応ユニットの斜視図である。
【図11】組み込みレンズを含む反応ユニットの上面図である。
【図12】組み込みレンズを含む反応ユニットの断面図である。
【図13】2つの例の断面図を有する多重検出のための反応ユニットの図である。
【図14】自動的に移送する低容量手動ピペットの図である。
【図15】マルチユニットプレートの斜視図である。
【図16】マルチユニットプレートの上面図である。
【図17】マルチユニットプレートの断面図である。
【図18】ピストンとシリンダのシステムを有する液体移送アレイの図である。
【図19】膜を基板にするシステムを有する液体移送アレイの図である。
【図20】縦列フォーマットの溝ウェルを有するリザーバプレートの図である。
【図21】横列および格子のフォーマットの溝を有するリザーバプレートの上面図である。
【図22】廃液パッドの図である。
【図23】リザーバ溝および廃液パッドストリップを有する洗浄プレートの上面図である。
【図24】液体移送ガイドの図である。
【図25】低容量フルスペクトルキュベットアダプタおよびキュベットの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学的、生化学的、生物学的、物理学的分析、反応、およびアッセイの実験を実施する方法であって、次のプロセス工程:
a)定量の液体を反応ユニットの反応チャンバに装填する、または、反応チャンバの毛管力を使用することによって定量の液体を吸収し、反応ユニットの反応チャンバに入れる工程と、
b)前記反応チャンバの毛管力で前記量の液体を前記反応ユニットの前記反応チャンバ内に保持する工程と、
c)前記反応チャンバ内で前記液体に関する操作を実施する工程と、
d)必要に応じて、前記工程の少なくとも1つを繰り返す工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記操作が、より高い毛管力を使用することによって液体を分注することである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記より高い毛管力が吸収性材料によって提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記操作が、次のプロセス工程:遠心分離、正の空気圧、真空、スポッティング、ピペットの群の少なくとも1つを使用することにより、前記反応チャンバから液体を分注することである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記反応チャンバの毛管力を使用することによって定量の液体を吸収し反応ユニットの反応チャンバに入れるとき、空気が自由に通ることを可能にする通気構造を備えるピペットで前記液体が分注される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記操作が反応チャンバ内の前記液体を分析することである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記分析が、次のプロセス工程:光学濃度、蛍光、ルミネセンス、電位、電気伝導率、pH、温度の群の少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応ユニット内の分析中、光線が前記液体試料だけを通過する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記操作が、次のプロセス工程:分子相互作用、複合体形成、複合体解離、化学反応および生物反応の群の少なくとも1つである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記操作が、開放構造により反応チャンバ内の少なくとも1つの物質を別の液体と交換することである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応チャンバを有する反応ユニットのアレイを使用して並行試験を実施する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応ユニットが、第1のチャネルを有する少なくとも1つの反応チャンバを備え、前記第1のチャネルの直径は、前記第1のチャネルをある一定の長さまで充填する毛管力を提供する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記定量の液体を吸収するとき、機械的振動を加えて吸収を促進する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記定量の液体の吸収が、粗い表面、狭窄する間隙などの、ある一定量の液体を前記反応チャンバの側面に引き付ける構造によって補助される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応ユニットが、毛管力で定量の液体を吸収するのに好適な管状の形状を有する反応チャンバと、前記反応チャンバによって吸収される前記定量の液体を規定する規定ゾーンの役割をする隣接する第2のチャンバとを備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法に使用される反応ユニット。
【請求項16】
反応チャンバが液体を吸収および放出する下開口部を備え、前記第2のチャンバが通気のための上開口部を備える、請求項15に記載の反応ユニット。
【請求項17】
前記反応チャンバと前記第2のチャンバが互いに同軸に、または互いにある一定の角度で配置されている、請求項15または16に記載の反応ユニット。
【請求項18】
前記反応チャンバが回転対称であり、円筒状または円錐状または放物線状の形状を有する内部側面を有する、請求項15〜17のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項19】
前記反応チャンバが、前記液体を引き付ける前記毛管力に影響を及ぼす正方形、長方形、三角形、丸、円形、楕円形、星形の断面、または組み合わせを有する、請求項15〜18のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項20】
前記反応チャンバの前記内面が、表面積を増加させる粗い表面構造を有する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項21】
反応チャンバと前記第2のチャンバが、移行領域によって画定されている、請求項15または19に記載の反応ユニット。
【請求項22】
前記反応ユニットが、非毛管現象ゾーンに開口している前記毛管現象反応チャンバを有し、前記反応チャンバを充填するとき、液体は前記毛管作用により非毛管現象ゾーンを充填せず、非毛管現象ゾーンは、前記反応チャンバにまたは前記反応チャンバから液体が移動するとき、空気が通過することを少なくとも可能にする開放構造、および/または、前記毛管作用で前記液体が中を通って前記反応チャンバにまたは前記反応チャンバから流れることができる底部構造を有する、請求項15〜21のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項23】
前記反応ユニットが、次の手段:電極、光ファイバ、超音波デバイス、温度計の群から少なくとも1つを含む、請求項15〜22のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項24】
前記反応ユニットが、少なくとも1つの横列と少なくとも1つの縦列を有するアレイに配置された複数の反応チャンバを備える、請求項15〜23のいずれか一項に記載の反応ユニット。
【請求項25】
前記反応チャンバが、異なる量の液体を吸収するのに好適な異なるサイズを有する、請求項24に記載の反応ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a)】
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【図21b)】
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【図22a)】
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【図22b)】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2009−535635(P2009−535635A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508529(P2009−508529)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001132
【国際公開番号】WO2007/125407
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508309337)エヌツェーエル ニュー コンセプト ラブ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】