説明

化学的に改質されたヒドロキシスチレンポリマー樹脂及び光活性レジスト組成物中でのそれらの使用

【構成】 式(I)または(II):
【化1】


(式中、xは2〜300の整数である)を有するヒドロキシスチレン部分と、式(III):
【化2】


(式中、R1及びR2は1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボン酸基から成る群から独立に選ばれ、そしてR3及びR4は水素、1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボキシル基から成る群から独立に選ばれる)を有するモノメチロール化フェノール性化合物との、ヒドロキシスチレン部分対モノメチロール化フェノール性化合物のモル比が約1:10〜約10:1である縮合反応によって製造されるアルカリ可溶性バインダー樹脂。
【効果】 このアルカリ可溶性バインダー樹脂は、狭い分子量分布を有し、未露光部分と露光部分との溶解速度の明瞭な区別などのフォトレジスト組成物としてのすぐれた特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】本発明は、選ばれた化学的に改質されたヒドロキシスチレンポリマー樹脂及び光活性レジスト組成物中でのそれらの使用に関する。
【0002】
【発明の背景】フォトレジスト組成物は、小型化された電子構成要素の製造、例えば集積回路及び印刷された配線基板電気回路構成要素の製造のためのマイクロリソグラフィープロセスにおいて使用される。一般的には、これらの方法においては、フォトレジスト組成物の薄いコーティングまたはフィルムが、まず、基体材料、例えば集積回路を製造するために使用されるシリコンウェーハーまたは印刷された配線基板のアルミニウム若しくは銅プレートに付与される。次に、コートされた基体をベークさせて、フォトレジスト組成物中のすべての溶媒を蒸発させそして基体の上にコーティングを固定する。次に、基体のベークされたコートされた表面を放射線の像状露光にかける。この放射線露光は、コートされた表面の露光された領域における化学的変換を引き起こす。可視光、紫外(UV)光、電子ビーム及びX線放射エネルギーが、マイクロリソグラフィープロセスにおいて今日普通に使用される放射線のタイプである。この像状露光の後で、コートされた基体を現像液によって処理して、基体のコートされた表面の放射線に露光されたまたは露光されなかった領域のどちらかを溶解しそして除去する。ある場合には、潜在的な像化ステップの後でそして現像ステップの前に、像化されたコートされた基体をベークすることが望ましいかもしれない。このベークステップは、普通は露光後ベークと呼ばれそして解像度を増すために使用される。
【0003】2つのタイプのフォトレジスト組成物、即ちネガ型及びポジ型組成物がある。ネガ型フォトレジスト組成物が放射線に像状露光される時には、レジスト組成物の放射線に露光された領域は現像液に対して可溶性が少なくなり(例えば、橋かけ反応が起きる)、一方フォトレジストコーティングの露光されなかった領域は現像液に対して比較的可溶性で留まる。かくして、露光されたネガ型レジストの現像液による処理は、レジストコーティングの露光されなかった領域の除去及びフォトレジストコーティング中のネガ像の生成を引き起こし、そしてそれによって、その上にフォトレジスト組成物が堆積されている下に横たわる基体表面の所望の部分を暴露させる。他方、ポジ型フォトレジスト組成物が放射線に像状露光される時には、レジスト組成物の放射線に露光された領域が現像液に対して一層可溶性になり(例えば転位反応が起きる)、一方露光されなかった領域は現像液に対して比較的不溶性で留まる。かくして、露光されたポジ型レジストの現像液による処理は、レジストコーティングの露光された領域の除去及びフォトレジストコーティング中のポジ像の生成を引き起こす。再び、下に横たわる基体表面の所望の部分が暴露される。
【0004】この現像操作の後で、今や部分的に脱保護された基体を、基体エッチング剤溶液またはプラズマガス等によって処理して良い。このエッチング剤溶液またはプラズマガスは、現像の間にフォトレジストコーティングが除去された場所の基体の部分をエッチングする。フォトレジストコーティングがまだ留まっている場所の基体の領域は保護されそして、かくして、放射線の像状露光のために使用されるフォトマスクに対応するエッチングされたパターンが基体材料中に生成される。後で、フォトレジストコーティングの残留領域をストリッピング操作の間に除去して、きれいなエッチングされた基体表面を残しても良い。幾つかの場合には、現像ステップの後でそしてエッチングステップの前に、残留レジスト層を加熱処理して、下に横たわる基体へのその接着及びエッチング溶液に対するその抵抗を増すことが望ましい。
【0005】ポジ型フォトレジストは、適切なアルカリ可溶性バインダー樹脂(例えば、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂)を、光またはエネルギーソースへ露光した後にアルカリ性水性現像液中で不溶性から可溶性に転換する光活性化合物(PAC)とブレンドすることによって一般的には製造される。ポジ型レジストのために今日用いられる最も普通の種類のPACは、ポリヒドロキシ化合物のキノンジアジドエステルである。ポジ型樹脂のために今日使用される典型的なノボラック樹脂は、アルデヒドソース(例えば、ホルムアルデヒド)と縮合されるo−クレゾール、m−クレゾール及びp−クレゾールの種々の混合物から製造される。キシレノールとこのようなo−、m−及びp−クレゾール混合物との組み合わせもまた、ノボラック樹脂を製造する際に使用される。m−クレゾールとp−クレゾールとの混合物から製造されるノボラックは、ポジフォトレジストのためのバインダー樹脂として特に一般的である。それらは、キノンジアジドエステル増感剤と共に良好なリソグラフィー性能を与える。しかしながら、このようなノボラック樹脂の1つの欠陥は、それらの比較的広い分子量分布である。
【0006】比較して、その他のタイプのアルカリ可溶性ポリマーもまた、フォトレジストのためのバインダー樹脂として考えられた。例えば、ヒドロキシスチレンポリマー、加水分解されたスチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイミドコポリマー及びスチレン誘導体のその他のポリマーが、リソグラフィー性能に関してテストされた。これらのポリマーはいずれも、リソグラフィープロセスにおいて使用されるアルカリ現像液中へのそれらの極端に高い溶解度のために、商業的フォトレジストにおいては単独では有用ではない。しかしながら、それらは、ノボラックと比較してより狭い分子量分布を有するという利点を有し、これは、結果としてアルカリ現像液中のポリマーの溶解のより鋭い切り替わりをもたらす。
【0007】過去において、ポリ(ヒドロキシスチレン)は種々のやり方で改質された〔R. W. Rupp及びB. N. Shah, Celanese AdvancedTechnologyによって刊行されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)のInformation Bulletin参照〕。特にポリ(ヒドロキシスチレン)ポリマーのアルカリ溶解速度を減らすために、ヘキストAGの研究スタッフは、このようなポリマーの特にフェノール環の上のヒドロキシ基に対してオルト位置でのアルキル化を調べた(EP 307〜752、1989;Proc.SPIE Vol.1262,Advances in Resist Technology and Processing VII,391〜400,1990)。しかしながら、日立の研究グループによれば、生成したポリマーはまだ、従来のノボラックポリマーと比較して、キノンジアジドエステル光活性増感剤による溶解抑制の乏しい特性を有する(1991年7月15〜18日に日本の金沢で開催された4th Micro Process ConferenceのProc.A−7−3参照)。
【0008】本発明は、所定の狭い分子量分布を有するポリマー樹脂を得るために、ポリ(ヒドロキシスチレン)ポリマーのアルカリ可溶性特性と共にクレゾールノボラック化学の利点を得るやり方を提供する。本発明のこれらのバインダー樹脂は、(1)キノンジアジドエステル増感剤によるバインダー樹脂の良好な溶解抑制、(2)露光された及び露光されなかった領域の間の溶解速度における良好な区別、(3)フォトイメージが実質的に垂直な壁をなしていること、並びに(4)スカムを生じないことの利点を有する。
【0009】
【発明の概要】従って、本発明は、式(I)または(II):
【化5】


(式中、xは2〜300の整数である)を有するヒドロキシスチレン部分と、式(III):
【化6】


(式中、R1及びR2は1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボン酸基から成る群から独立に選ばれ、そしてR3及びR4は水素、1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボキシル基から成る群から独立に選ばれる)を有するモノメチロール化フェノール性化合物との、ヒドロキシスチレン部分対モノメチロール化フェノール性化合物のモル比が約1:10〜約10:1である縮合反応によって製造されるアルカリ可溶性バインダー樹脂に関する。
【0010】更にまた、本発明は、A.光活性化合物、及びB.上で述べたような、アルカリ可溶性バインダー樹脂を含む、溶媒中に溶解されたポジ型フォトレジストとして有用な放射線感受性組成物であって、光活性化合物が放射線感受性組成物の固体の約5〜約40重量%を構成し、そしてアルカリ可溶性バインダー樹脂が放射線感受性組成物中の固体の約95〜約60重量%を構成する放射線感受性組成物に関する。
【0011】式(I)の化合物を、上で述べたように、式(III)の化合物と反応させる場合には、生成したオリゴマーをそれ自体でまたは他のコモノマーと更に重合させて、その分子量を増加させそしてかくしてより良いリソグラフィー性能を得ることが好ましい。
【0012】
【発明の詳述】式(I)のヒドロキシスチレン部分は、商業的に入手できる物質である。好ましい式(I)のヒドロキシスチレン部分は、p−ヒドロキシスチレンである。式(II)のポリ(ヒドロキシスチレン)ポリマーは、商業的に入手できる物質である。好ましい式(II)のポリ(ヒドロキシスチレン)ポリマーは、nが約10〜100であるポリ(p−ヒドロキシスチレン)である。ポリ(ヒドロキシスチレン)の好ましい分子量は、3,000〜30,000、さらに好ましくは5,000〜8,000である。
【0013】式(III)のモノメチロール化フェノール性化合物前駆体は、6の位置が未置換の対応するフェノールをアルカリ性媒体の存在下でホルムアルデヒドと反応させることによって製造される。適切なアルカリ性媒体は、水酸化ナトリウムまたは水酸化テトラメチルアンモニウムの水性溶液を含む。2及び4の位置の置換基は小さくなければならない。何故ならば、かさ張った置換基は、生成ポリマーを変形した構造に導き、キノンジアジドエステルによる溶解抑制の効果が小さくなるかもしれないからである。1〜2の炭素原子を有する低級アルキル基及び1〜2の炭素原子を有する低級アルコキシ基が、R1及びR2にとっては好ましい。メチル基が、R1及びR2にとってはもっとも好ましい。水素基が、R3及びR4の両方にとっては好ましい。かくして、2,4−ジメチル−6−メチロールフェノールが、もっとも好ましいモノメチロール化フェノール性化合物である。このモノメチロール化反応は、好ましくは、以後の二量化または重合を完全に回避するように制御されるべきである。これを行うためには、大過剰のホルムアルデヒドを2,4−置換フェノール性化合物と反応させるべきであり、そして反応温度は好ましくは約70〜80℃を越えないようにすべきである。このメチロール化反応のための反応時間は好ましくは1〜3時間である。
【0014】ヒドロキシスチレン前駆体(I)またはポリ(ヒドロキシスチレン)前駆体(II)、特にポリ(p−ヒドロキシスチレン)を、約40〜80℃の高められた温度で酸触媒の存在下で式(III)のモノメチロール化フェノール性化合物と反応させて良い。好ましい酸性触媒は、シュウ酸またはHClである。好ましくは、これらの反応は、反応性前駆体の両方を溶解する有機溶媒中で実施される。1つの好ましい溶媒は、1−メトキシ−2−プロパノールである。式(I)のヒドロキシスチレン部分対モノメチロール化前駆体(III)の好ましいモル比は、約1:1〜約1:3、もっとも好ましくは約1:2である。ポリ(ヒドロキシスチレン)前駆体(II)対モノメチロール化前駆体(III)の各々の繰り返し単位の好ましいモル比はまた、約1:1〜約1:3、もっとも好ましくは約1:2である。反応時間は、かなり変化して良く、好ましくは約4〜約24時間である。各々の反応に関する反応生成物は、任意の慣用の手段によって回収して良い。回収手段例えば再結晶または再沈殿が適切な回収方法である。
【0015】モノメチロール化前駆体によって改質されたヒドロキシスチレンモノマーは、式(IV):
【化7】


の三量体オリゴマーを生成する。
【0016】オリゴマー(IV)は、ビニル重合のための任意の方法例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合及びプラズマ重合等によって更に重合させることができる。しかしながら、立体障害及び、オリゴマーの上に結合した反応性フェノール性ヒドロキシ基による連鎖停止のために、重合は起こり難いであろう。特に、オリゴマーのビニル基の上の成長するポリマー連鎖基の、同じ分子の上の反応性ヒドロキシ基による連鎖停止反応を回避するために、カチオン重合が推奨されるであろう。このカチオン重合においては、所望の分子量、分子量分布、及び改善された溶解抑制にとって適切な微細構造を有するポリマーを製造するために、以下の重合開始剤が使用されて良い。かくして、この重合のための推奨される開始剤は、BF3−Et2O、AlCl3、TiCl4、SnCl4、H2SO4、H3PO4、CF3COOH、及びその他のルイス酸またはプロトン酸である。この重合のためのその他の反応条件は、ヒドロキシスチレン誘導体のカチオン重合のために以前に刊行された方法と類似である:日本特許第46,021,213号(1971)または米国特許第4,032,513号(1989)を参照せよ。
【0017】オリゴマー(IV)をその他のコモノマーと共重合させる場合には、以下のビニルモノマーが有用である:アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、及び極性基を含むその他のモノマー。
【0018】本発明の上で議論した樹脂を光活性化合物と混合して、ポジ型フォトレジストとして有用である放射線感受性混合物を製造することができる。光活性化合物(時々“増感剤”と呼ばれる)の1つの好ましい種類は、o−キノンジアジド化合物、特に6までのまたはもっと多くのエステル化のためのサイトを含んで良い、ポリヒドロキシフェノール、アルキル−ポリヒドロキシフェノール及びアリール−ポリヒドロキシフェノール等から誘導されたエステルである。もっとも好ましいo−キノンジアジドエステルは、o−ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸及びo−ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸から誘導される。
【0019】特定の例は、レソルシノール1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル;ピロガロール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、(ポリ)ヒドロキシフェニルアルキルケトンまたは(ポリ)ヒドロキシフェニルアリールケトンの1,2−キノンジアジドスルホン酸エステル例えば2,4−ジヒドロキシフェニルプロピルケトン1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4−ジヒドロキシフェニルヘキシルケトン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシフェニルヘキシルケトン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2′,3,4′,6′−ペンタヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、及び2,3,3′,4,4′,5′−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル;ビス[(ポリ)−ヒドロキシフェニル]アルカンの1,2−キノンジアジドスルホン酸エステル例えばビス(p−ヒドロキシフェニル)−メタン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン1,2−ナフトキノンジアジド−−スルホン酸エステル、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン1,2−ナフトキノンジアジド−スルホン酸エステル、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン1,2−ナフトキノンジアジド−スルホン酸エステル、2,6−ビス−[(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル及び2,6−ビス−[(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルを含む。上で例示された1,2−キノンジアジド化合物の外に、J.Kosar,“Light−Sensitive Systems”,339〜352(1965),John Wiley & Sons(New York)中で、またはS.DeForest,“Photoresist”,50,(1975),MacGraw−Hill,Inc.(New York)中で述べられた1,2−キノンジアジド化合物もまた使用することができる。加えて、これらの物質は、2以上の組み合わせで使用しても良い。更に、特定のポリヒドロキシフェノール、アルキル−ポリヒドロキシフェノール及びアリールポリヒドロキシフェノール等の上に存在する全部ではないエステル化サイトがo−キノンジアジドと結合した時に形成される物質の混合物を、ポジ型フォトレジストにおいて効果的に利用することもできる。
【0020】上で述べたすべての1,2−キノンジアジド化合物の中で、少なくとも2のヒドロキシ基、即ち、約2〜6のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−及びヘキサ−エステルがもっとも好ましい。
【0021】これらのもっとも好ましい1,2−ナフトキノン−5−ジアジド化合物の中には、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,6−ビス−[(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル及び2,6−ビス−[(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)メチル]−4−メチルフェノール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルがある。これらの1,2−キノンジアジド化合物は、単独でまたは2以上の組み合わせで使用して良い。
【0022】別の好ましい1,2−ナフトキノン−5−ジアジド化合物は、フェノール1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル及びビス[4−(2,6−ジメチルフェノール)]−4−カテホールメタン1,2−ナフトキノン−5−ジアジドスルホン酸エステルである。
【0023】放射線感受性混合物中の増感剤化合物の割合は、放射線感受性混合物の固体または不揮発性物(例えば非溶媒)含量の好ましくは約5〜約40%、さらに好ましくは約10%〜約25重量%の範囲で良い。放射線感受性混合物中の本発明の全バインダー樹脂の割合は、放射線感受性混合物の固体または不揮発性物(例えば、溶媒を含まない)含量の好ましくは約60〜約95%、更に好ましくは約75〜約90%の範囲で良い。
【0024】これらの放射線感受性混合物はまた、慣用のフォトレジスト組成物成分例えば他の樹脂、溶媒、活性線及びコントラスト増進染料、アンチ−ストライエーション剤、可塑剤並びに速度増進剤等を含んで良い。これらの付加的な成分は、溶液が基体の上にコートされる前に、バインダー樹脂及び増感剤溶液に添加して良い。
【0025】上で述べた本発明の樹脂の外に、その他のバインダー樹脂を添加しても良い。その例は、フォトレジスト技術において普通に使用されるフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂及びポリ(ヒドロキシスチレン)樹脂を含む。これらの必要に応じた樹脂を製造するためのホルムアルデヒドの代わりに、ハロアセトアルデヒド及びその他のアルデヒドソースを使用しても良い。その他のバインダー樹脂が存在する場合には、それらは本発明のバインダー樹脂の一部と置き換わるであろう。かくして、放射線感受性組成物中のバインダー樹脂の全量は、放射線感受性組成物の全不揮発性固体含量の約60〜約95重量%であろう。
【0026】樹脂及び増感剤は、基体へのそれらの付与を容易にするために一または複数の溶媒中に一般には溶解される。既知のフォトレジスト溶媒の例は、メトキシアセトキシプロパン、エチルセロソルブアセテート、n−ブチルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジグリム、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチル3−エトキシプロピオネート、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、キシレン、またはこれらの混合物及び類似物を含む。好ましい溶媒は、乳酸エチル単独またはエチル3−エトキシプロピオネートとの組み合わせである。溶媒の好ましい量は、合わせた樹脂及び増感剤重量を基にして約50〜約500重量%またはそれ以上、さらに好ましくは約100〜約400重量%で良い。
【0027】活性線染料は、基体を去る光の後方散乱を抑制することによって高度に反射性の表面上に増加した解像度を与えるのを助ける。この後方散乱は、殊に基体の地勢の上での光学的ノッチングの望ましくない効果を引き起こす。活性線染料の例は、約400〜460nmで光エネルギーを吸収する染料〔例えば、Fat Brown B(C.I.No.12010);Fat Brown RR(C.I.No.11285);2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(C.I.No.75480)及びキノリン Yellow A(C.I.No.47000)]並びに約300〜340nmで光エネルギーを吸収する染料[例えば2,5−ジフェニルオキサゾール(PPO−Chem.Abs.Reg.No.92−71−7)及び2−(4−ビフェニル)−6−フェニル−ベンズオキサゾール(PBBO−Chem.Abs.Reg.No.17064−47−0)〕を含む。活性線染料の量は、樹脂及び増感剤の合わせた重量を基にして10重量%までのレベルで良い。
【0028】コントラスト染料は、現像された像の可視性を増進しそして製造の間のパターンアライメントを容易にする。本発明の放射線感受性混合物と一緒に使用して良いコントラスト染料添加剤の例は、樹脂及び増感剤の合わせた重量を基にして10重量%までのレベルのSolvent Red 24(C.I.No.26105)、Basic Fuchsin(C.I.No.42514)、OilBlue N(C.I.No.61555)及びCalco Red A(C.I.No.26125)を含む。
【0029】抗筋剤は、フォトレジストコーティングまたはフィルムを均一な厚さに水平化する。抗筋剤は、樹脂及び増感剤の合わせた重量を基にして5重量%までのレベルで使用して良い。抗筋剤の1つの適切な種類は、非イオン性シリコン改質されたポリマーである。例えば、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール及びジノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含む非イオン界面活性剤もまた、この目的のために使用して良い。
【0030】可塑剤は、フォトレジスト組成物のコーティング及び接着特性を改善し、そして基体の上への、滑らかでそして均一な厚さのものであるフォトレジストの薄いコーティングまたはフィルムの付与を一層良く可能にする。使用して良い可塑剤は、例えば、樹脂及び増感剤の合わせた重量を基にして10重量%までのレベルのリン酸トリ−(B−クロロエチル)−エステル、ステアリン酸、ジカムホル(dicamphor)、ポリプロピレン、アセタール樹脂、フェノキシ樹脂及びアルキル樹脂を含む。
【0031】速度増進剤は、露光された及び露光されなかった領域の両方においてフォトレジストコーティングの溶解度を増す傾向があり、そしてそれ故、それらは、ある程度のコントラストが犠牲にされても現像速度が最も重要と考えられる応用において使用される。即ち、ポジレジストにおいては、フォトレジストコーティングの露光された領域は現像液によって一層速く溶解されるであろうけれども、速度増進剤はまた、露光されなかった領域からフォトレジストコーティングの一層多い損失を引き起こすであろう。使用して良い速度増進剤は、例えば、樹脂及び増感剤の合わせた重量を基にして20%までの重量レベルでのピクリン酸、ニコチン酸またはニトロ桂皮酸を含む。その他の既知の速度増進剤は、ポリヒドロキシ化合物例えばレソルシノール、フロログルシノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3′,4′,5′−ヘキサヒドロキシ−ベンゾフェノン及びアセトンピロガロール縮合樹脂等を含む。好ましい速度増進剤は、2,6−ビス[(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メチレン]−4−メチルフェノール及び1−[1′−メチル−1′−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]4−[1′,1′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル](フェノール、4,4′−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス−またはTRISP−PAとしても知られている)を含む。(この後者の化合物はCAS No.110726−28−8を有する)。
【0032】製造された放射線感受性レジスト混合物は、フォトレジスト技術において使用される任意の慣用の方法、例えば浸漬、噴霧、旋回(whirling)及びスピンコーティングによって基体に付与することができる。スピンコーティングの時には、例えば、レジスト混合物は、スピン装置のタイプ及び利用されるスピン速度及びスピンプロセスのために許される時間の長さに依存して所望の厚さのコーティングを与えるために固体含量のパーセントに関して調節することができる。適切な基体は、シリコン、アルミニウムまたはポリマー状樹脂、二酸化ケイ素、ドープされた二酸化ケイ素、シリコン樹脂、ガリウムヒ素、窒化ケイ素、タンタル、銅、ポリシリコン、セラミック及びアルミニウム/銅混合物を含む。
【0033】上で述べた手順によって製造されたフォトレジストコーティングは、マイクロプロセッサー及びその他の小型化された集積回路構成要素の製造において利用されるような熱的に成長されたケイ素/二酸化ケイ素コートされたウェーハーへの適用に特に適切である。アルミニウム/酸化アルミニウムウェーハーも同様に使用することができる。基体はまた、種々のポリマー状樹脂殊に透明なポリマー例えばポリエステル及びポリオレフィンから成って良い。
【0034】レジスト溶液が基体の上にコートされた後で、コートされた基体は、実質的にすべての溶媒が蒸発してしまいそして均一な光感受性コーティングだけが基体の上に留まるまで、約70〜125℃でベークされる。
【0035】次にコートされた基体は、適切なマスク、ネガ、ステンシル及び型板等の使用によって製造された任意の所望の露光パターンで放射線、殊に紫外線に露光させることができる。フォトレジストコートされた基体を処理する際に現在使用されている慣用の像化方法または装置は、本発明に関して用いることができる。ある場合には、ソフトベーク温度より約10℃高い温度での露光後ベークを、像の品質及び解像度を増進するために使用する。
【0036】露光されたレジストコートされた基体は、次に、水性アルカリ性現像液中で現像される。この溶液は、好ましくは、例えば、窒素ガス撹拌によって撹拌される。水性アルカリ性現像液の例は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン、塩素、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム及びメタケイ酸ナトリウム等の水性溶液を含む。本発明のための好ましい現像液は、アルカリ金属水酸化物、リン酸塩若しくはケイ酸塩、またはこれらの混合物、または水酸化テトラメチルアンモニウムのいずれかの水性溶液である。代わりの現像技術例えば噴霧現像またはパドル現像、またはこれらの組み合わせもまた、使用して良い。
【0037】基体は、すべてのレジストコーティングが露光された領域から溶解してしまうまで、現像液中に留められる。通常は、約10秒〜約3分の現像時間が用いられる。
【0038】現像液中でのコートされたそして像化されたウェーハーの選択的溶解の後で、それらを、好ましくは、脱イオン水リンスにかけて、現像液またはコーティングのすべての残留する望ましくない部分を完全に除去しそしてさらなる現像を停止させる。このリンス操作(これは、現像プロセスの一部である)には、過剰の水を除去するための濾過された空気によるブロー乾燥が続いて良い。次に、現像後熱処理またはベークが、コーティングの接着並びにエッチング溶液及びその他の物質に対する化学的抵抗を増すために用いられて良い。現像後熱処理は、コーティングの熱変形温度より下でのコーティング及び基体のベーキングから成って良い。
【0039】産業上の応用においては、特にケイ素/二酸化ケイ素タイプの基体の上のミクロ回路装置の製造においては、現像された基体は、次に、緩衝されたフッ化水素酸エッチング溶液またはプラズマガスエッチングによって処理して良い。後で、フォトレジストコーティングの残留する領域を、慣用のフォトレジストストリッピング操作によってエッチングされた基体表面から除去して良い。
【0040】
【実施例】本発明を、以下の実施例によってさらに詳細に説明する。すべての部及びパーセントは、明瞭に特記しない限り、重量による。
【0041】参照例 11モルの2,4−ジメチルフェノール及び25%の水酸化テトラメチルアンモニウム水性溶液(1.25モルの水酸化イオン)を、撹拌機、コンデンサー及び温度計を備えた1リットルの三ッ口丸底フラスコに仕込んだ。この反応混合物を機械的に撹拌しながら60℃まで加熱して溶解させた。次に、37%のホルマリン(4.0モルのホルムアルデヒド)を、10〜15分でゆっくりと添加した。反応混合物を最初の1時間70℃に加熱し、そして次に温度は45℃に下がり、そして45℃で2〜3時間反応混合物を撹拌して保持した。29%の水酸化アンモニウム(1.5モル)をゆっくりと添加して、温度を最高の50℃に到達せしめた。反応溶液を室温に冷却しそして1.25モルの氷酢酸を添加して生成物を沈殿させた。収率は65%でありそして生成物の純度は96%であった。
【0042】実施例 1〜3日本の丸善石油化学株式会社で製造された7,000の平均分子量を有するポリ(p−ヒドロキシスチレン)の1モルを、このポリマーを溶解させるための最小量の溶媒、即ち1−メトキシ−2−プロパノール及び濃HCl(仕込まれるモノメチロール化前駆体の1/10モル)と共に、コンデンサー、温度計及び機械的撹拌機を備えた三ッ口丸底フラスコ中に入れた。種々のモル数(表1参照)の参照例1のモノメチロール化前駆体を最小量の同じ溶媒中に溶解させ、そして反応温度を45℃未満に保持しながら反応混合物にゆっくりと添加した。次に、反応溶液を2〜3時間40〜45℃で維持した。次に、この溶液をオイルバス中で200℃まで加熱して溶媒を除去した。
【0043】このようにして改質されたポリ(p−ヒドロキシスチレン)のアルカリ溶解速度は、妥当に減少され、そしてこれらのポリマーの溶解抑制は、表1中に示すように、改質されなかったポリ(ヒドロキシスチレン)の溶解抑制と比較して上で述べた化学的改質によってずっと増加された。
【0044】
【表1】


【0045】本発明を、その特定の実施態様に関連して上で説明してきたけれども、本明細書中で開示された本発明の概念から逸脱すること無く、多くの変化、改変及び変更を為すことができることは明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内に入るすべてのこのような変化、改変及び変更を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 式(I)または(II):
【化1】


(式中、xは2〜300の整数である)を有するヒドロキシスチレン部分と、式(III):
【化2】


(式中、R1及びR2は1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボン酸基から成る群から独立に選ばれ、そしてR3及びR4は水素、1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボキシル基から成る群から独立に選ばれる)を有するモノメチロール化フェノール性化合物との、ヒドロキシスチレン部分対モノメチロール化フェノール性化合物のモル比が約1:10〜約10:1である縮合反応によって製造されるアルカリ可溶性バインダー樹脂。
【請求項2】 ヒドロキシスチレンがポリ(p−ヒドロキシスチレン)である請求項1記載のアルカリ可溶性ノボラックバインダー樹脂。
【請求項3】 メチロール化フェノール性化合物が2,4−ジメチル−6−メチロールフェノールである請求項1記載のアルカリ可溶性ノボラックバインダー樹脂。
【請求項4】 (a) 光活性化合物、及び(b) 式(I)または(II):
【化3】


(式中、xは2〜300の整数である)を有するヒドロキシスチレン部分と、式(III):
【化4】


(式中、R1及びR2は1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボン酸基から成る群から独立に選ばれ、そしてR3及びR4は水素、1〜4の炭素原子を有する低級アルキル基、1〜4の炭素原子を有する低級アルコキシ基、アミノ基及びカルボキシル基から成る群から独立に選ばれる)を有するモノメチロール化フェノール性化合物との、ヒドロキシスチレン部分対モノメチロール化フェノール性化合物のモル比が約1:10〜約10:1である縮合反応によって製造されるアルカリ可溶性バインダー樹脂よりなることを特徴とする、溶媒中に溶解された放射線感受性組成物であって、光活性化合物が放射線感受性組成物の固体の約5〜約40重量%を構成し、そしてアルカリ可溶性ノボラック樹脂が放射線感受性組成物中の固体の約95〜約60重量%を構成する放射線感受性組成物。

【公開番号】特開平6−116329
【公開日】平成6年(1994)4月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−105319
【出願日】平成5年(1993)5月6日
【出願人】(592188748)オー・シー・ジー・マイクロエレクトロニツク・マテリアルズ・インコーポレイテツド (3)
【氏名又は名称原語表記】OCG MICROELECTRONIC MATERIALS,INCORPORATED