説明

化学線により活性化可能な基を有するポリエステル、その製造方法およびその使用

1.少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のカルボン酸(i)またはカルボン酸(i)の少なくとも1種のエステル(i)とを、あるいは
2.少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)とを
エステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素および/または有機体の存在下で反応させることにより製造することができる、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステル、その製造方法およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線により活性化可能な基を有する新規のポリエステルに関する。本発明はさらに、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルの新規の製造方法に関する。本発明はさらに、新規の、化学線により硬化可能な新規の組成物としての、またはその製造のための新規のポリエステルの使用に関する。本発明はさらに、被覆、コーティング、接着層および封止を製造するため、ならびに成形部材および自立フィルムを製造するための、化学線により硬化可能な新規の組成物の、被覆材料、接着剤、シーラントとしての使用に関する。
【0002】
少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルは久しい以前から公知である。該ポリエステルは化学線により硬化可能な組成物を製造するために使用され、該組成物は被覆材料、接着剤およびシーラントとして被覆、コーティング、接着層および封止を製造するため、ならびに成形部材および自立フィルムを製造するために使用される。
【0003】
ポリエステルは、ヒドロキシル基含有ポリエステルと、化学線により活性化可能な結合を有するカルボン酸またはカルボン酸エステル、たとえばアクリル酸またはアクリル酸エステルとの、あるいは側位および/または末端位のカルボン酸基またはカルボン酸エステル基を有するポリエステルと、化学線により活性化可能な結合を有するヒドロキシル基含有化合物、たとえばヒドロキシエチルアクリレートとのポリマー類似の反応により製造することができる。
【0004】
少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルは、その有利な適用技術的な特性に基づいてしばしば化学線により硬化可能な組成物の製造のために使用される。しかし前記のポリマー類似の反応によるその製造には問題がある。というのは、ヒドロキシル基含有ポリエステルと、カルボン酸またはカルボン酸エステルとを直接反応させることがポリエステル分解につながりうるからである。同様にカルボン酸基またはカルボン酸エステル基を有するポリエステルと、ヒドロキシル基含有化合物、たとえばヒドロキシエチルアクリレートとの反応は、分子量の減少につながりうる。生じるポリエステルはこの場合、化学線により硬化可能な組成物の製造のために使用することはできない。というのも、これらは適用者の要求をもはや満足しないからである。
【0005】
欧州特許出願EP0999299A1から、エステル交換またはエステル化を触媒する酵素の存在下での、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル化によるか、またはポリオキシアルキレングリコールによる(メタ)アクリル酸エステルのエステル交換によるポリオキシアルキレンからの(メタ)アクリル酸エステルの製造が公知である。
【0006】
欧州特許出願EP0999230A1から、エステル交換またはエステル化を触媒する酵素の存在下での、ヒドロキシ官能性シロキサンおよび/またはポリオキシアルキレン変性されたシロキサンからの、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル化によるか、またはヒドロキシ官能性シロキサンおよび/またはポリオキシアルキレン変性されたシロキサンによる(メタ)アクリル酸エステルのエステル交換による(メタ)アクリル酸エステルの製造が公知である。
【0007】
欧州特許出願EP1035153A1から、エステル交換またはエステル化を触媒する酵素の存在下での、カーボネート基を有する、線状ポリエステルにより変性されたシロキサンからの、アクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル化によるか、またはカーボネート基を有する、線状ポリエステルにより変性されたシロキサンおよび/またはポリオキシアルキレン変性されたシロキサンによる(メタ)アクリル酸エステルのエステル交換による(メタ)アクリル酸エステルの製造が公知である。
【0008】
Th. Laiot、M. BrigodiotおよびE.Marechalによる論文Polymer Bulletin、第26巻、第55〜62頁、1991から、リポザイムにより触媒される、アリルアルコールを用いたオリゴ(メチルアクリレート)のエステル交換が公知である。この場合、末端位のエステル基のみが反応する。
【0009】
この反応を、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルの製造に転用することができるのかどうか、そしてできる場合にはどの程度できるのかについては知られていない。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有し、従来技術の欠点をもはや有しておらず、保護的な、および安全技術的に有利な方法を用いて製造することができ、その際、ポリエステルの損傷、特に分子量の減少を生じない、新規のポリエステルを見いだすという課題に基づいている。さらに新規のポリエステルは有利には低い粘度を有しているべきである。
【0011】
新規のポリエステルは特に化学線により硬化可能な組成物として、またはその製造のために適切であるべきである。化学線により硬化可能な新規の組成物は、高い固体含有率を有し、かつ特に被覆材料、接着剤およびシーラントとして被覆、コーティング、接着層および封止を製造するため、ならびに成形部材および自立フィルムを製造するために適切であるべきである。
【0012】
これに応じて、
1.少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のカルボン酸(i)またはカルボン酸(i)の少なくとも1種のエステル(i)とを、あるいは
2.少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)とを
エステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素および/または有機体の存在下で反応させる
ことにより製造することができる、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルが判明した。
【0013】
以下では少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有する新規のポリエステルを「本発明によるポリエステル」とよぶ。
【0014】
さらに、
1.少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のカルボン酸(i)またはカルボン酸(i)の少なくとも1種のエステル(i)とを、あるいは
2.少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)とを
触媒の存在下で反応させることにより、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルを製造するための新規の方法において、該触媒がエステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素および/またはエステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の有機体であることを特徴とする方法が判明した。
【0015】
以下では少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステルを製造するための新規の方法を「本発明による方法」とよぶ。
【0016】
その他の本発明の対象は詳細な説明から明らかになる。
【0017】
従来技術を鑑みると、本発明の基礎となっていた課題を、本発明によるポリエステルおよび本発明による方法により解決することができたということは意外であり、かつ当業者が予測できるものではなかった。
【0018】
特に本発明によるポリエステルは製造方法により条件付けられる損傷、特に分子量の減少を生じていなかった。
【0019】
本発明による方法は特に保護的な、および安全技術的に特に有利な方法で本発明によるポリエステルを提供した。この場合、ポリエステルの損傷、特に分子量の減少を生じなかった。さらに本発明による方法により、そのつどの使用目的のために要求される本発明によるポリエステルの特性プロファイルを優れて再現することができた。
【0020】
新規のポリエステルは特に化学線により硬化可能な組成物として、またはその製造のために著しく好適である。化学線により硬化可能な新規の組成物は特に被覆材料として、接着剤、接着剤およびシーラントとして、被覆、コーティング、接着層および封止を製造するために、ならびに成形部材および自立フィルムを製造するために適切である。
【0021】
本発明による被覆、コーティング、接着層、封止、成形部材およびフィルムは優れた適用技術的な特性を有していた。
【0022】
本発明による生成物はオリゴマーもしくはポリマーのポリエステルである。
【0023】
オリゴマーは一般に2〜15のモノマー構成要素を有する。ポリマーは一般に10以上のモノマー構成要素を有する(Roemppオンライン、2002、"Oligomere"、"Polymere"も参照のこと)。
【0024】
少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有する本発明によるポリエステル。有利にはこれは少なくとも2つの、この種の側位および/または末端位の基を有する。
【0025】
本発明の範囲で化学線とは電磁線、たとえば近赤外線(NIR)、可視光、UV線、X線およびガンマ線、特にUV線、および粒子線、たとえば電子線、プロトン線、アルファ線、ベータ線および中性子線、特に電子線であると理解される。
【0026】
本発明による方法の第一の変法により得られる本発明によるポリエステルの場合、化学線により活性化可能な基は、化学線により活性化可能な基から見て、カルボニルオキシ基−C(O)−O−によりオリゴマーもしくはポリマーの主鎖に結合している。
【0027】
本発明による方法の第二の変法により得られる本発明によるポリエステルの場合、化学線により活性化可能な基は、主鎖から見てカルボニルオキシ基−C(O)−O−によりオリゴマーもしくはポリマーの主鎖に結合している。
【0028】
化学線により活性化可能な基は、少なくとも1つ、特に1つの、化学線により活性化可能な結合を有する。これは、化学線による照射の際に反応性になり、かつこのような種類のその他の活性化された結合と、ラジカルおよび/またはイオンのメカニズムにより進行する重合反応および/または架橋反応をする結合であると理解される。適切な結合の例は炭素−水素の単結合または炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−窒素、炭素−リンもしくは炭素−ケイ素の単結合もしくは二重結合または炭素−炭素の三重結合である。これらの中で炭素−炭素の二重結合および三重結合が有利であり、従って本発明により有利に使用される。特に有利であるのは、炭素−炭素の二重結合であり、従って該結合が特に有利に使用される。以下では略して「二重結合」とよぶ。
【0029】
有利には該二重結合は一般式Iの基中に含有されている:
【0030】
【化1】

【0031】
一般式I中で変項は次の意味を有する:
Rはオレフィン系炭素原子と、カルボニルオキシ基の炭素原子との間の結合電子対または結合する有機基、有利には結合電子対、および
、RおよびRは水素原子であるか、または有機基、
その際、基R、R、RおよびRの少なくとも2つは相互に環状に結合していてもよい。
【0032】
適切な結合する有機基Rの例は、アルキレン基、シクロアルキレン基および/またはアリーレン基を含むか、またはこれらの基からなる。好適なアルキレン基は炭素原子を1個、または2〜6個の炭素原子を有する。好適なシクロアルキレン基は4〜10個、特に6個の炭素原子を有する。好適なアリーレン基は6〜10個、特に6個の炭素原子を有する。
【0033】
適切な有機基R、RおよびRの例は、アルキル基、シクロアルキル基および/またはアリール基を含むか、またはこれらの基からなる。好適なアルキル基は炭素原子を1個、または2〜6個の炭素原子を有する。好適なシクロアルキル基は4〜10個、特に6個の炭素原子を有する。好適なアリール基は6〜10個、特に6個の炭素原子を有する。
【0034】
有機基R、R、RおよびRは置換されているか、または非置換であってよい。しかし置換基は本発明による方法の実施を妨げるか、および/または化学線による基の活性化を妨げてはならない。有利には有機基R、R、RおよびRは非置換である。
【0035】
一般式Iの特に好適な基のための例は、ビニル基、1−メチルビニル基、1−エチルビニル基、プロペン−1−イル基、スチリル基、シクロヘキセニル基、エンドメチレンシクロヘキシル基、ノルボルネニル基およびジシクロペンタジエニル基、特にビニル基である。
【0036】
従って化学線により活性化可能な特に有利な基は(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、シクロヘキセンカルボキシレート基、エンドメチレンシクロヘキサンカルボキシレート基、ノルボルネンカルボキシレート基およびジシクロペンタジエンカルボキシレート基、しかし特に(メタ)アクリレート基、とりわけアクリレート基である。これらは本発明による方法の第一の変法により得られる本発明によるポリエステルの場合、オリゴマーもしくはポリマーの主鎖と直接結合している(一般式IのR=オレフィン系炭素原子とカルボニルオキシ基の炭素原子との間の結合電子対)。本発明による方法の第二の変法により得られる本発明によるポリエステルの場合、これは結合する有機基およびオキシカルボニル基−O−C(O)−によりポリエステルの主鎖に結合している。
【0037】
本発明によるポリエステルはポリマー類似の反応により製造することができる。
【0038】
本発明による方法の第一の変法によれば、少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基、有利には少なくとも2つおよび特に少なくとも3つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)を、少なくとも1つ、特に1つの前記の、化学線により活性化可能な結合を有する少なくとも1種のカルボン酸(i)または少なくとも1種のカルボン酸(i)のエステル(i)と反応させる。
【0039】
本発明による方法の第二の変法によれば、少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基、有利には少なくとも2つおよび特に少なくとも3つの側位および/または末端位のカルボン酸基、または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基、有利には少なくとも2つおよび特に少なくとも3つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)を、少なくとも1つ、特に1つの、前記の、化学線により活性化可能な結合を有する少なくとも1種、特に1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)と反応させる。
【0040】
本発明によるポリエステルにとって、ならびに本発明による方法にとって重要なことは、触媒として、エステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種、特に1種の酵素、および/またはエステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の、特に1種の有機体の存在下に反応を実施することである。
【0041】
酵素としてヒドロラーゼ[EC3.x.x.x]、特にエステラーゼ[EC3.1.x.x]およびプロテアーゼ[EC3.4.x.x]を使用する。カルボキシルエステルヒドロラーゼ[EC3.1.1.x]が有利である。特に有利にはヒドロラーゼとしてリパーゼを使用する。特にアクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、ブルホルデリアsp.、カンジダsp.、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、シュードモナスsp.、リゾープスsp.、サーモマイセスsp.またはブタ膵臓からのリパーゼを使用する。酵素およびその機能はたとえばRoemppオンライン、2002、"Hydrolasen"、"Lipasen"および"Proteasen"に記載されている。これらは固定されていても固定されていなくてもよい。
【0042】
有機体として、ヒドロラーゼ[EC3.x.x.x]、有利にはエステラーゼ[EC3.1.x.x]またはプロテアーゼ[EC3.4.x.x]、特に有利にはカルボキシエステルヒドロラーゼ[EC.3.1.1.x]およびとりわけリパーゼによりエステル交換またはエステル化を触媒するすべての天然由来の、または遺伝子工学的に改変された微生物、単細胞生物または細胞が考えられる。ヒドロラーゼを含むすべての当業者に公知の有機体を使用することができる。有利にはヒドロラーゼとしてリパーゼを含む有機体を使用する。
【0043】
特にアクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、ブルホルデリアsp.、カンジダsp.、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、シュードモナスsp.、リゾープスsp.、サーモマイセスsp.またはブタ膵臓からの細胞を使用する。これらは本来は酵素を発現しないか、または不十分な強度で発現するものであって、改変後にはじめて十分に高い酵素活性および生産性を有する、改変されていない有機体自体または遺伝子工学的に改変された有機体であってもよい。さらに有機体は遺伝子工学的な改変により反応条件および/または培養条件に適合させることができる。
【0044】
酵素および/または有機体の使用量は広い範囲で変更することができ、かつ個々の事例の要求に応じて、特に出発生成物の反応性および酵素もしくは有機体の触媒作用および選択性ならびに選択される条件に応じて調整される。
【0045】
そのつど出発生成物の全量に対して、有利には0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜16質量%、特に有利には0.2〜14質量%、とりわけ有利には0.3〜12質量%、殊に0.5〜10質量%の量で酵素を使用する。
【0046】
本発明による方法は異なったポリエステル(i)または(ii)を用いて実施することができる。適切なポリエステルの例およびその製造はたとえばドイツ特許出願DE4204518A1、第4頁、第43行目から第5頁、第2行目に記載されている。
【0047】
種々のカルボン酸(i)またはカルボン酸エステル(ii)およびヒドロキシル基含有化合物(ii)を本発明による方法で使用することができる。重要なことは、これらの化合物が少なくとも1つ、特に1つの、化学線により活性化可能な結合を有していることである。有利にはカルボン酸(i)またはカルボン酸エステル(ii)およびヒドロキシル基含有化合物(ii)を、一般式II:
【0048】
【化2】

[式中、変項R、R、RおよびRは上記の意味を有し、かつ変項Rは、
1.カルボン酸(i)の場合、水素原子を表し、かつカルボン酸エステル(i)の場合、ヒドロキシル基を有していない単結合の有機基を表し、かつ
2.ヒドロキシル基含有化合物(ii)の場合、ヒドロキシル基含有の、単結合の有機基を表す]の化合物からなる群から選択する。
【0049】
有利には単結合の有機基Rは、
1.カルボン酸エステル(i)の場合、ヒドロキシル基を有していないアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基、および
2.ヒドロキシル基含有化合物(ii)の場合、ヒドロキシル基含有の、特に第一ヒドロキシル基を有するアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基
を有するか、またはこれらの基からなる。
【0050】
適切なアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の例は前記のものである。有利にはアルキル基Rを使用する。特に有利にはヒドロキシル基を有していないアルキル基Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基または2−エチルヘキシル基、特にメチル基であり、かつヒドロキシル基含有アルキル基Rはヒドロキシエチル基、2−および3−ヒドロキシプロピル基または4−ヒドロキシブチル基、特に4−ヒドロキシブチル基である。
【0051】
有利にはカルボン酸(i)は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンカルボン酸、エンドメチレンシクロヘキサンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸およびジシクロペンタジエンカルボン酸、特にアクリル酸からなる群から選択される。
【0052】
有利にはカルボン酸エステル(i)は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンカルボン酸、エンドメチレンシクロヘキサンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸およびジシクロペンタジエンカルボン酸、特にアクリル酸のヒドロキシル基を有していないエステルからなる群から選択される。
【0053】
有利にはヒドロキシル基含有化合物(ii)は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンカルボン酸、エンドメチレンシクロヘキサンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸およびジシクロペンタジエンカルボン酸、特にアクリル酸のヒドロキシル基含有エステルからなる群から選択される。
【0054】
特にカルボン酸(i)はアクリル酸であり、カルボン酸エステル(i)はメチルアクリレートであり、かつヒドロキシル基含有化合物(ii)は4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0055】
ポリエステル(i)対カルボン酸またはカルボン酸エステル(i)のモル比ならびにポリエステル(ii)対ヒドロキシル基含有化合物(ii)のモル比は極めて広い範囲で変化することができ、かつ個々の事例の要求、特にポリエステル(i)および(ii)中の反応性の官能基の数、反応性官能基の反応の所望の程度および意図される適用に応じて調整される。従って当業者はそのつど適切なモル比は自身の一般的な専門知識に基づいて、場合によりいくつかの方向付け試験により容易に確認することができる。
【0056】
本発明による方法の反応は単相でも多相でも、水性および/または有機性の反応媒体中で実施することができる。その際、出発生成物は溶解しているか、懸濁しているか、または乳化して存在していてよい。反応は溶剤を添加して、または添加しないで実施することができる。有利には、反応に関して不活性な溶剤を使用する。有利には通例の、および公知の有機、特に非プロトン性の無極性溶剤を使用する。さらに過剰のカルボン酸(i)またはカルボン酸エステル(i)またはヒドロキシル基含有化合物(ii)を反応媒体として使用することができる。特に有利には反応を塊状で、つまり有機溶剤の非存在下で、または少量の存在下で実施する。
【0057】
本発明による方法は種々の温度で実施することができる。温度範囲の選択は個々の事例の要求に応じて、特に出発生成物の反応性およびその熱安定性に応じて、ならびに酵素および/または有機体の触媒効果および選択性およびこれらの熱安定性に応じて調整される。有利には本発明による方法を0〜100℃、好ましくは10〜80℃、特に有利には15〜75℃およびとりわけ20〜70℃で実施する。
【0058】
反応の時間もまた広い範囲で変化することができ、かつ同様に個々の事例の要求に応じて、特に出発生成物の反応性および酵素および/または有機体の触媒効果および選択性に応じて調整される。有利にはこの時間は1時間〜1週間、有利には2時間〜5日間、特に有利には3時間〜4日間、およびとりわけ4時間〜3日間である。
【0059】
本発明による方法はすべての出発生成物を適切な反応容器中に装入する回分式の運転法で、または個々の、もしくはすべての出発生成物を反応の過程で反応媒体に計量供給する半回分式で実施することができる。
【0060】
本発明による方法の第一および第二の変法による反応の場合、水または少なくとも1種の、特に1種のヒドロキシル基含有化合物、たとえばメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールが形成される。形成するヒドロキシル基含有化合物もしくは水を形成の間に、または形成の直後に反応混合物から除去することが推奨される。その際、すべての通例かつ公知の方法、たとえば真空蒸留または共沸蒸留、透析蒸発または不活性ガスの導通を適用することができる。
【0061】
この場合に重要なことは、出発生成物、触媒および最終生成物を熱により損傷しないことである。反応混合物に、ヒドロキシル基含有化合物および/または水を吸収する物質を添加することもできる。しかしこれらの物質は、たとえば酵素および/または有機体の触媒作用を低減するか、および/または自身の触媒作用を発揮することによって本発明による方法の妨げとなってはならない。適切な吸収物質の例は、相応する孔径を有する分子ふるいである(Roemppオンライン、2002、"Molekularsiebe"および"Zeolithe"も参照のこと)。
【0062】
生じる本発明によるポリエステルは種々の使用目的に供給することができる。このために反応混合物から該ポリエステルを物質として単離するか、または直接溶液中で使用することができる。有利には化学線により硬化可能な新規の組成物として、またはその製造のために使用する。以下では化学線により硬化可能な新規の組成物を「本発明による組成物」とよぶ。
【0063】
本発明による組成物は化学線により硬化可能な組成物を含有するすべての通例かつ公知の成分、たとえば本発明によるポリエステルとは異なる付加的な放射線硬化性バインダー、放射線硬化性の反応性希釈剤および光重合開始剤を含有していてよい。さらに通例かつ公知の助剤および添加剤、たとえば触媒、可塑剤、光安定剤、カップリング剤(粘着性付与剤)、スリップ剤、レベリング剤、重合防止剤、つや消し剤、ナノ粒子および塗膜形成助剤を含有していてもよい。
【0064】
化学線または熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な組成物の適切な、通例かつ公知の成分の例はたとえばドイツ特許DE19709467C1、第4頁、第30行目〜第6頁、第30行目またはドイツ特許出願DE19947523A1から公知である。
【0065】
本発明による組成物がさらに熱硬化性である、つまりデュアル・キュア硬化性である場合、該組成物は有利にはさらに通例かつ公知の、付加的になお化学線により活性化可能な基を有していてもよい熱硬化性バインダーおよび架橋剤、および/または熱硬化性の反応性希釈剤も含有し、ならびにこのことはたとえばドイツ特許出願DE198187735A1およびDE19920799A1または欧州特許出願EP0928800A1に記載されている。
【0066】
本発明による組成物の製造は有利には前記の成分を適切な混合装置、たとえば攪拌反応器、攪拌ミル、押出機、混練機、ウルトラツラックス、インライン溶解機、スタチック・ミキサー、マイクロミキサー、歯車式分散装置、放圧ノズルおよび/またはマイクロ流動化装置中で混合することにより行う。この場合、有利には本発明による組成物の早すぎる架橋を防止するために、λ<550nmの波長の光を排除して、または光を完全に排除して作業する。
【0067】
本発明による組成物は種々の形で存在していてよい。従って通例の、有機溶剤を含有する組成物、水性組成物、ほぼもしくは完全に溶剤および/または水を含有していない液状の組成物(100%系)、ほぼもしくは完全に溶剤および水を含有していない固体の粉末またはほぼもしくは完全に溶剤を含有していない粉末懸濁液(粉末スラリー)であってよい。さらに該組成物は、その中でバインダーおよび架橋剤が一緒に存在する一成分系であっても、バインダーおよび架橋剤が適用の直前まで相互に別々に存在している二成分系または多成分系であってもよい。
【0068】
本発明による組成物は、化学線により硬化可能な組成物、特に被覆、コーティング、成形部材および自立フィルムを製造するために使用される。
【0069】
本発明による成形部材およびフィルムを製造するために、本発明による組成物は通例かつ公知の一時的もしくは永久的な支持体上に適用される。有利には本発明によるフィルムおよび成形部材を製造するために通例かつ公知の一時的な支持体、たとえば容易に除去することができ、本発明によるフィルムおよび成形部材を損なうことがない金属およびプラスチックのベルトまたは金属、ガラス、プラスチック、木材もしくはセラミックからなる中空成形体を使用する。
【0070】
本発明による組成物を被覆、接着層および封止の製造のために使用する場合、永久的な支持体、たとえば航空機、船舶、鉄道車両、筋力で運転される車両および自動車を含む輸送手段およびこれらの部材、屋内および屋外領域における建築物およびその一部、ドア、窓および家具ならびに工業用の塗装の範囲でガラス中空成形体、コイル、コンテナ、包装容器、工業用の小部品、たとえばナット、ボルトまたはホイールキャップ、光学的な部材、電気工学的な部材、たとえばコイルを含む巻成体および電動機の固定子および回転子、機械的部材および家庭用機器、暖房用ボイラーおよびラジエータを含むホワイトウェアのための部材を使用する。本発明によるフィルムおよび成形部材は同様に支持体として使用することもできる。
【0071】
方法的に液状の本発明による組成物の適用は特異性はなく、すべての通例および公知の適用方法、たとえば射出、噴霧、ナイフ塗布、刷毛塗り、流し塗り、浸漬、散布またはロール塗布を行うことができる。
【0072】
粉末状の本発明による組成物の適用もまた方法的に特異性はなく、たとえばBASF Coatings AG社の企業誌”Pulverlacke fuer industrielle Anwendungen(工業的な適用のための粉体塗料)”、2000年1月号または”Coatings Partner、Pulverlacke Spezial(被覆のパートナー、粉体塗料特別号)”、1/2000またはRoempp Laxikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、第187および188頁、”Elktrostatisches Pulverspruehen(静電粉末噴霧)”、”Elektrostatisches Wirbelbadverfahren(静電噴霧)”および”Elektrostatisches pruehen(静電流動床法)”から公知であるような、通例かつ公知の流動層法により行う。
【0073】
適用の際に、本発明による組成物の早すぎる架橋を回避するために、化学線を排除して作業することが推奨される。
【0074】
有利には適用した本発明による組成物を紫外線により硬化させる。有利には照射の際に100〜6000、有利には200〜3000、好ましくは300〜2000および特に有利には500〜1800mJcm−2の線量を使用し、その際、1700mJcm−2未満の範囲がとりわけ有利である。
【0075】
その際、線強度は幅広く変化することができる。これは特に一方では線量に、および他方では照射時間に合わせて調整する。照射時間は規定の線量の場合、照射装置中でのベルト速度または支持体の前進速度に応じて調節し、またその逆である。
【0076】
紫外線のための線源として、すべての通例かつ公知のUVランプを使用することができる。フラッシュランプもまた考えられる。有利にはUVランプとして水銀灯、有利には水銀低圧−、−中圧−および−高圧放電ランプ、特に水銀中圧放電ランプを使用する。特に有利には変更されていない水銀灯と、適切なフィルターまたは変更された、特にドープされた水銀灯を使用する。
【0077】
有利にはたとえばR.Stephen Davidson、”Exploring the Science、Technology and Applications of U.V. and E.B.Curing(UVおよびEB硬化の科学、技術および適用の調査)”、Sita Technology Ltd. London、1999年、第I章、”An Overview(概観)”、第16頁、図10および工学士Peter Klamann、”eltosch System−Kompetenz、UV−Technik、Leitfaden fuer Anwender(eltoschシステム−能力、UV技術、適用者のための手引き)”、第2頁、1998年10月に記載されているような、ガリウムドープされた、および/または鉄ドープされた、特に鉄ドープされた水銀灯を使用する。
【0078】
適切なフラッシュランプの例はVISIT社のフラッシュランプである。
【0079】
適用された本発明による組成物からのUVランプの距離は意外にも幅広く変更することができ、従って極めて良好に個別の事例の要求に合わせて調節することができる。有利にはこの距離は2〜200、好ましくは5〜100、特に有利には10〜50およびとりわけ15〜30cmである。さらにこの配置は支持体の性質および方法パラメータに適合させることができる。たとえば自動車の車体に考えられるような複雑な形状の支持体の場合、直接の放射線が到達しない範囲(陰領域)、たとえば中空、溝およびその他の構造により条件付けられるアンダーカットを、中空または端部の照射のための自動的な移動装置と結合したポイント照射、小面積照射またはラウンド照射により硬化させることができる。
【0080】
照射は酸素が低減した雰囲気下で実施することができる。「酸素が低減した」とは、該雰囲気の酸素の含有率が、空気の酸素含有率(20.95体積%)より少ないことを意味する。該雰囲気は根本においては酸素不含であってもよい、つまり不活性ガスであってもよい。しかしこれは酸素による阻害作用がないことにより放射線硬化の著しい促進をもたらすことができ、このことにより本発明による硬化した組成物中に不均一性および応力が生じる可能性がある。従って雰囲気の酸素含有率はゼロ体積%まで低下させないことが有利である。
【0081】
適用された、デュアル・キュア硬化性の本発明による組成物の場合、熱硬化はたとえば気体状の、液状の、および/または固体の、熱い媒体、たとえば熱い空気、加熱したオイルまたは加熱したローラを用いて、またはマイクロ波照射、赤外光および/または近赤外光(NIR)により行うことができる。有利には加熱を換気炉中で、またはIRおよび/またはNIRランプによる照射により行う。化学線による硬化の場合のように、熱硬化もまた段階的に行うことができる。有利には熱硬化を室温から200℃までの温度で行う。
【0082】
熱硬化も、化学線による硬化も段階的に実施することができる。その際、これらを前後して(連続的に)、または同時に行うことができる。本発明によれば連続的な硬化が有利であり、かつ従って有利に使用される。この場合、熱硬化を化学線による硬化の後に実施することが特に有利である。
【0083】
得られる本発明によるフィルム、成形部材、被覆、接着層および封止は、航空機、船舶、鉄道車両、筋力で運転される車両および自動車を含む輸送手段、およびその部材、屋内および屋外領域での建築材料およびその部材、ドア、窓および家具ならびにガラス中空体、コイル、コンテナ、包装容器、工業用の小部材、たとえばナット、ボルトまたはホイールキャップ、光学部材、電気工学部材、たとえばコイルを含む巻成体、および電動機の固定子および回転子、機械的な部材および家庭用機器、暖房用ボイラーおよびラジエータを含むホワイトウェアの部材の工業用のコーティングの範囲で、被覆、接着、封止、覆いおよび包装のために著しく適切である。
【0084】
しかし被覆材料としての本発明による組成物は特に、有利にサーフェイサー、プライマー、ベースコートおよびトップコートまたはクリアコートとして、有利にはトップコートまたはクリアコートとして、特に着色および/または効果を与える、導電性の、磁気遮蔽の、または蛍光性の多層コーティング、特殊な着色および/または効果を与える多層コーティングを製造するためのクリアコートとして使用される。多層コーティングの製造のために、通例かつ公知のウェット・オン・ウェット法および塗料構成を適用することができる。
【0085】
得られる本発明によるクリアコーティングは多層コーティングの最外層であり、これが本質的に視覚的な全体の印象(外観)を決定し、かつ着色および/または効果を与える層を機械的および/または化学的な損傷および放射線による損傷から保護する。従ってクリアコーティングでは、硬度、耐引掻性、化学薬品安定性および黄変に対する安定性が特に著しく顕著である。しかし本発明によるクリアコーティングはわずかな黄変を有するのみである。本発明によるクリアコーティングは耐引掻性が高く、かつスクラッチの後に極めてわずかな光沢の損失を有するのみである。同時にこれは高い硬度を有する。最後に本発明によるクリアコーティングは特に高い耐薬品性を有し、かつ極めて強固に、着色および/または効果を与える層の上に付着する。
【0086】
従って、本発明による被覆により被覆されているか、および/または含浸されている、本発明による接着層により接着されている、本発明による封止により封止されている、および/または本発明によるフィルムおよび/または成形部材により覆われているか、または包装されている本発明による支持体は、優れた長期間使用特性および特に長い寿命を有する。
【0087】
実施例
例1
アクリレート基を有するポリエステルの製造
ポリエステルの製造のために適切な反応器中で、無水フタル酸1050.9質量部、ネオペンチルグリコール452.2質量部、ヘキサンジオール228.4質量部およびトリメチロールプロパン289.8質量部を秤量し、かつ連続的に180mgKOH/gのヒドロキシル価になるまで縮合させた。引き続きポリエステルを反応器から排出した。
【0088】
反応容器中でポリエステル200質量部、メチルイソブチルケトン30質量部、メチルアクリレート140質量部、メチルヒドロキノリン0.028質量部、Novozym (R) 435(Novozym社(デンマーク)のリパーゼ)16質量部および分子ふるい5Å100質量部を相互に混合し、かつ40℃で24時間撹拌した。引き続き分子ふるいから濾別し、かつ少量のメチルアクリレートで洗浄した。過剰のメチルアクリレートおよび4−メトキシフェノールを40℃で真空蒸留により濾液から除去した。残留する、アクリレート基を有するポリエスエルは、65mgKOH/gのヒドロキシル価を有しており、これは64%の反応率に相応した。
【0089】
アクリレート基を有するポリエステルはUV線硬化性の組成物の製造のために著しく適切であった。
【0090】
例2
UV線および熱により硬化可能なデュアル・キュア・クリアコートおよび該コートからの着色を与える多層コーティングの製造
デュアル・キュア・クリアコートを製造するためにまず、ヒドロキシル基を有するポリアクリレート樹脂を製造した。このために、撹拌機、還流冷却器およびオイル加熱を備えた、重合のために適切なスチール製反応器中に、Solventnaphtha (R) 810質量部を装入し、かつ140℃の重合温度に加熱した。引き続き4.75時間で、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート148.2質量部およびSolventnaphtha (R) 111質量部からなる混合物を計量供給した。開始剤混合物の供給の開始15分後に、4時間の間にスチレン185質量部、エチルヘキシルアクリレート862質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート500質量部、ヒドロキシブチルアクリレート278質量部およびアクリル酸28質量部からなる混合物を計量供給した。重合の終了後に該溶液をSolventnaphtha(R)で固体含有率65質量%に調節した。ポリアクリレート樹脂は175mgKOH/gのヒドロキシル価を有していた。
【0091】
デュアル・キュア・クリアコートを製造するために、さらにヒドロキシル基を有するポリアクリレート樹脂35質量部、例1からのアクリレート基を有するポリエステル30質量部、Aerosil (R)のペースト2.9質量部、Irgacure(R)(市販の光重合開始剤)1質量部、Lucirin(R)TPO(BASF社の市販の光重合開始剤)0.5質量部、Byk(R)358(Byk Chemie社の市販の塗料添加剤)0.8質量部、Tinuvin(R)292 1質量部およびTinuvin(R)400(いずれもCiba Specialty Chemicals社の市販の光保護剤)1質量部ならびにブチルアセテート22.8質量部から塗料原液を製造した。
【0092】
さらにイソシアナトアクリレートRoskydal(R)UA VPLS 2337(ベース:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソシアネート基の含有率:12質量%)64質量部、イソシアナトアクリレートRoskydal (R)UA VP FWO 303−77(ベース:イソホロンジイソシアネートの三量体、ブチルアセテート中70.5%、粘度:1500mPas、イソシアネート基の含有率:6.7質量%)16質量部およびDesmodur(R) N3300(ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体をベースとするイソシアネート)11.5質量部(全ての3つの製品はBayer AG社から)ならびにブチルアセテート8質量部から硬化剤溶液を製造した。
【0093】
塗料原液および硬化剤を95:36.5の質量比で混合し、このことによりデュアル・キュア・クリアコートが得られた。
【0094】
多層コーティングを製造するためにスチール板を順次、陰極析出し、かつ170℃で20分間焼き付けた、乾燥膜厚18〜22μmの電着コーティングにより被覆した。引き続き該スチール板を、通常、プラスチック支持体のために使用される、BASF Coatings社の市販の2成分の水性サーフェイサーにより被覆した。得られるサーフェイサー層を90℃で30分間焼き付けて35〜40μmの乾燥膜厚が生じた。その後、BASF Coatings社の市販の黒色の水性ベースコートを12〜15μmの膜厚で適用し、その後、得られる水性ベースコート層を80℃で10分間、フラッシュオフした。引き続き、デュアル・キュア・クリアコートを40〜45μmの膜厚で重力送り式のカップタイプガン(Fliessbecherpistole)により空気を用いて十文字に適用した。水性ベースコート層およびクリアコート層の硬化を室温で5分間、80℃で10分間、次いで1500mJ/cmの線量のUV光での照射により、および最後に140℃で20分間行った。
【0095】
多層コーティングは極めて優れており、かつ89.7のDIN67530による光沢(20゜)を有していた。さらに該クリアコーティングは表面障害を有しておらず、ベースコーティング上での付着性が高く、硬質で、柔軟性があり、耐引掻性で、耐候性および耐薬品性があり、黄変に対して安定しており、かつトリのフンに対して抵抗性であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のカルボン酸(i)またはカルボン酸(i)の少なくとも1種のエステル(i)とを、あるいは
2.少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)とを
エステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素および/または有機体の存在下で反応させる
ことにより製造することができる、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有するポリエステル。
【請求項2】
酵素がヒドロラーゼ[EC3.x.x.x]の群から選択されている、請求項1記載のポリエステル。
【請求項3】
ヒドロラーゼ[EC3.x.x.x]が、エステラーゼ[EC3.1.x.x]およびプロテアーゼ[EC3.4.x.x]である、請求項2記載のポリエステル。
【請求項4】
ヒドロラーゼがカルボキシルエステルヒドロラーゼ[EC3.1.1.x]である、請求項3記載のポリエステル。
【請求項5】
ヒドロラーゼがリパーゼである、請求項4記載のポリエステル。
【請求項6】
リパーゼがアクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、ブルホルデリアsp.、カンジダsp.、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、シュードモナスsp.、リゾープスsp.、サーモマイセスsp.またはブタ膵臓から得られる、請求項5記載のポリエステル。
【請求項7】
有機体が、エステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素を含む、天然由来であるか、または遺伝子工学的に改変された微生物、単細胞の生物または細胞である、請求項1から6までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項8】
有機体が、アクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、ブルホルデリアsp.、カンジダsp.、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、シュードモナスsp.、リゾープスsp.、サーモマイセスsp.およびブタ膵臓からの細胞からなる群から選択されている、請求項7記載のポリエステル。
【請求項9】
カルボン酸(i)、カルボン酸エステル(i)およびヒドロキシル基含有化合物(ii)がそれぞれ、化学線により活性化可能な結合を1つ有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項10】
化学線により活性化可能な結合が、炭素−炭素の二重結合および/または三重結合である、請求項1から9までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項11】
化学線により活性化可能な結合が炭素−炭素の二重結合である、請求項10記載のポリエステル。
【請求項12】
カルボン酸(i)がモノカルボン酸であり、かつヒドロキシル基含有化合物(ii)が第一ヒドロキシル基を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項13】
化学線により活性化可能な結合が、一般式I:
【化1】

[式中、変項は次の意味を有する:
Rはオレフィン系炭素原子と、カルボニルオキシ基の炭素原子との間の結合電子対および結合する有機基であり、かつ
、RおよびRは水素原子であるか、または有機基であり、
その際、基R、R、RおよびRの少なくとも2つは相互に環状に結合していてもよい]の基中に含まれている、請求項10から12までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項14】
カルボン酸エステル(i)およびヒドロキシル基含有化合物(ii)が、一般式II:
【化2】

[式中、変項R、R、RおよびRは上記の意味を有し、かつ変項Rは、
1.カルボン酸(i)の場合、水素原子を表し、かつカルボン酸エステル(i)の場合、ヒドロキシル基を有していない単結合の有機基を表し、ならびに
2.ヒドロキシル基含有化合物(ii)の場合、ヒドロキシル基含有の、単結合の有機基を表す]の化合物からなる群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載のポリエステル。
【請求項15】
単結合の有機基Rは、
1.カルボン酸エステル(i)の場合、ヒドロキシル基を有していないアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基、および
2.ヒドロキシル基含有化合物(ii)の場合、ヒドロキシル基含有のアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの基
を有するか、またはこれらの基からなる、請求項14記載のポリエステル。
【請求項16】
カルボン酸(i)がアクリル酸、カルボン酸エステル(i)がメタクリレートおよびヒドロキシル基含有化合物(ii)が4−ヒドロキシブチルアクリレートである、請求項14または15記載のポリエステル。
【請求項17】
1.少なくとも1つの側位および/または末端位のヒドロキシル基を有するポリエステル(i)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のカルボン酸(i)またはカルボン酸(i)の少なくとも1種のエステル(i)とを、あるいは
2.少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸基または少なくとも1つの側位および/または末端位のカルボン酸エステル基を有するポリエステル(ii)と、化学線により活性化可能な結合を少なくとも1つ有する少なくとも1種のヒドロキシル基含有化合物(ii)とを
触媒の存在下で反応させることにより、少なくとも1つの側位および/または末端位の、化学線により活性化可能な基を有する、請求項1から18までのいずれか1項記載のポリエステルを製造する方法において、該触媒がエステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の酵素および/またはエステル交換もしくはエステル化を触媒する少なくとも1種の有機体であることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載のポリエステルを製造する方法。
【請求項18】
ポリエステル(i)および(ii)をエステル化する際に生じる水または生じるヒドロキシル基含有化合物を、その形成の際に、または形成の直後に反応混合物から除去する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
化学線により、または熱および化学線により(デュアル・キュア)硬化可能な組成物としての、またはその製造のための、請求項1から16までのいずれか1項記載のポリエステルおよび請求項17または18記載の方法により製造されるポリエステルの使用。
【請求項21】
硬化性組成物と共に被覆材料、接着剤またはシーラントとして被覆、コーティング、接着層および封止を製造するため、ならびに成形部材および自立フィルムを製造するために使用する、請求項21記載の使用。

【公表番号】特表2006−520191(P2006−520191A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501583(P2006−501583)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000541
【国際公開番号】WO2004/069897
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】