化学防護被覆
【課題】本発明は、大量の水蒸気を透過することができる一方、有毒または有害化学物質の通過に対しても、高い湿度条件においてさえ高度に制限することができる選択透過性防護被覆を提供する。
【解決手段】本発明の材料は、実際の使用シナリオにおいて遭遇の可能性がある広い範囲の応用に適した防護衣服及びアクセサリーを作成するための基礎を提供する。その最も広い態様において、本発明の防護用水蒸気透過性被覆はポリアミンポリマーのシートからなり、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であって、該アミン−酸成分の酸性種は6.4より小さいpKaを有する。
【解決手段】本発明の材料は、実際の使用シナリオにおいて遭遇の可能性がある広い範囲の応用に適した防護衣服及びアクセサリーを作成するための基礎を提供する。その最も広い態様において、本発明の防護用水蒸気透過性被覆はポリアミンポリマーのシートからなり、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であって、該アミン−酸成分の酸性種は6.4より小さいpKaを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は化学防護被覆に関する。更に詳しくは、本発明は人または内容物を蒸気、エアロゾル、または微粒子の形態の有毒または有害な化学物質から防護するのに使用することが出来る材料及び商品に関する。本発明によって提供された化学防護被覆は、衣類、テント、寝袋、及び類似品のような応用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
化学防護被覆は、外部環境に存在する有害なレベルの化学物質がその使用者または着用者または該材料の内容物に到達するのを防護することを意図する。化学防護衣服は、周囲の環境が個人を有害または有毒化学物質に曝す潜在的な危険を与える可能性が在る時に着用される。歴史的に防護衣類に使用される材料は、防護と快適性とを取引交換せねばならなかった。即ち比較的多くの防護を提供する材料は受け容れ難いほど快適性が欠け、また満足な快適性の在る材料は受け入れ得る防護を提供しなかった。
【0003】
例えば本技術で知られている一つのアプローチは、着用者と危険な環境との間に一般に“非透過性”材料と称される物を介在させることである。このタイプの適当な材料は有害化学物質に対する低い透過性を示し、且つ然も衣服または他の衣料品に使用されるのに十分な柔軟性を有するであろう。このアプローチの例は有害化学物質に対するバリアーとしてブチルゴムを利用する手袋であろう。
【0004】
このような材料はそのような薬剤の通過を著しく制限することによって有害化学物質からの適当な防護を提供することができるけれども、これらの材料はまた特徴として水蒸気の通過を阻止する。水蒸気の透過を大きく阻止する材料は非通気性と名付けられる。非通気性材料は人々の防護被覆として用いられる時、通常汗の蒸発によって行なわれる人体の熱発散プロセスを妨げる。水蒸気の著しい透過、または通気性が無い場合、このような材料を長く使用することは着用者の耐え難い不快及び死さえも招くことになり得る。不快は最初は防護被覆内に溜まる着用者によって生じる高レベルの水分に基因するであろうが、次いで蒸発冷却の欠如のために着用者に熱ストレスが与えられることになる。これは熱射病になり遂には死に到る。このようにこれらのタイプの材料は満足な防護を提供することができるが、一方快適性は不満足である。この非通気性防護被覆材の問題となる特性は、極めて短い時間の使用または限られた被覆面積より多くに対してはそれらの材料を不適性なものにする。反対にかなりの水蒸気透過速度を有する多くの被覆材、例えば多くの織物または不織ポリオレフィン材は、有害または有毒化学物質に対して望ましいレベルの防護を提供しないであろう。即ちこれらのタイプの材料は満足な快適性を提供することができるが、防護は不満足である。
【0005】
防護と快適性の間の交換をより都合のよい関係で対処するために種々の努力がなされてきた。
【0006】
本技術でよく知られている一つのそのような努力は、ブルハー、ブルハー、及びドルイターによる米国特許第4510193号に記述されたように、着用者と汚染環境との間に介在される吸着材の使用を含む。
【0007】
吸着化学防護システムは危険な液体及び蒸気を吸着剤中に吸着させ、このようにしてこのシステムが防護を意図するところにそれらが達するのを禁ずることによって作用する。吸着剤の制限特性は、それらが有する化学物質吸着容量に限界があることである。吸着剤の第二の制限特性は、防護が必要でない化学種までもそれらは差別無く吸着し、このようにしてそれらが防護の提供を意図した化学物質の利用できる吸着容量を減少させることである。
【0008】
吸着システムの限り有る容量及び無差別吸着特性は、それらの使用期間及び貯蔵寿命を制限する。吸着システムは暴露されると大気中に存在する種々の化学蒸気汚染物質を吸着し始め、このようにして時間が経つとその利用できる容量を次第に減少させる。これがその使用期間を制限する。このプロセスは、吸着システムが長期間シールされた包装中に置かれる時にも生じ得る。これがそのような材料の貯蔵寿命を制限する。
【0009】
その上限り有る容量及び無差別吸着特性は、十分なレベルの防護を行ない持続させるために化学防護被覆内に比較的大量の吸着要素を組み入れることを必要とする。これは熱及び水分の移動に対する高い抵抗を有し、且つ着用者に好ましくない生理的ストレスを与える厚くて重いバリアーシステムをもたらす。このように吸着システムもまた防護と快適性間の交換によって制限を受ける。
【0010】
その上嵩や重量の増加もまた包装、貯蔵、取り扱い、及びこれらの材料の輸送に対して望ましくない特性である。
【0011】
満足な快適性と防護を提供する化学防護被覆を創造する更に好ましいアプローチは、選択的透過材の使用に頼るものである。選択的透過能の有る材料は特別の化学種に対して顕著な選択的透過能を示す。このアプローチは、望ましい化学種の透過を促進する一方、望ましくない化学種の通過を制限する防護被覆の創造を可能にする。特に化学防護衣料品にとって、選択的透過材が有毒または有害蒸気に対比し水蒸気に対して選択的透過能を有することは望ましいであろう。即ち水蒸気に対する透過能が有毒または有害蒸気に対する透過能よりも十分に大きいということである。これは快適である一方同時に高度に防護的である防護被服に対する基礎を提供する。
【0012】
選択的透過材の防護機能は化学物質の吸着に依存しないので、それらは吸着システムに固有の制限に束縛されることは無い。十分な持続的な防護を提供するために著しい量と厚さの十分な材料に頼る吸着システムと違って、これらの制限の無い選択的透過材は極めて薄く且つ軽量に作ることが出来る。このことが嵩が遥かに少なく且つより軽量の防護衣服並びにアクセサリーの創造を容易にする。
【0013】
使用される防護被覆材のタイプの如何に拘わらず、防護被覆材は使用に際して異なったしばしば変化する湿度及び温度条件に曝される可能性がある。例えば防護衣料品の着用者は、着用者に与えられる生理的ストレスに依存して防護被覆の内部に変化する量の熱及び水分を発生させる。防護被覆の内部では、条件は気候条件のような自然の動機、または乗物または人口構造物内で見出されるであろうような人により影響される条件のために変化するであろう。このように防護被覆はその使用中に広い範囲の条件に曝されるであろうことが期待されるべきであり、このことはどの防護被覆材の設計及び応用に際しても考慮されなければならない。
【0014】
これらの条件は選択的透過材の性能に影響を及ぼす。好ましい量の高い水蒸気透過性を有する選択的透過材は一般に親水性ポリマーである。そのようなものとしてその水分量はそれを取り巻く相対湿度によって影響される。そのような選択的透過材の周囲の相対湿度が変化すると、選択的透過材中の水分レベルもまた変化するであろう。一般にこれらの材料は、高い相対湿度では多くの化学蒸気に対して比較的透過能が大きく、反対に低い相対湿度では多くの化学蒸気に対する透過能は比較的小さい。それゆえこのような材料が化学防護被覆の応用に用いられる時は、使用中に期待される相対湿度の広い範囲にわたってのこれらの材料の防護特性を考慮することが重要である。特に高い湿度条件における有毒または有害化学物質の透過を考慮することが重要である。穏やかな相対湿度条件で化学蒸気の透過に対して高い抵抗が有ったとしても、高い相対湿度条件での性能を代表するものではない可能性がある。
【0015】
考慮している応用に対しては、有毒または有害化学蒸気に対する透過能を減少すること、特に高い相対湿度において水蒸気の透過の望ましくない減少なしにそれを行なうことが望ましいであろう。同様に特に高い相対湿度において有毒または有害化学蒸気にたいする透過能の望ましくない増加なしに水蒸気の透過を増大させることが望ましいであろう。このように保護被覆において最も有用であるためには、選択的透過材は良好な通気性を提供すると共に、特に高い相対湿度の困難な条件において危険な化学物質に対して低い透過能を提供しなければならない。その上そのような材料の通気性をその防護性能を著しく減少させること無く改良し、且つその防護性能をその通気性を著しく減少させること無く改良することが望ましい。
【0016】
多くの選択的透過材が、これらの応用における一般的使用のために調査されてきた。これらはウルリッヒバウマイスターによるものでアクゾノベルエヌブイ社に譲渡された米国特許第5743775号に記述されたようなセルロースをベースとしたポリマーを使用した各種のフイルム、並びにロイドスチーブンホワイトによるものでダブリュアールグレース社に譲渡された米国特許第5824405号に詳述されたような多孔質ポリアミドを含む。良好な通気性及び危険化学物質に対する良好な抵抗は、ヒューイエスウーによる米国特許第5391426号に記述されたようなポリアルキレンイミン防護材を使用するいくつかの条件の下に達成が可能であることもまた教示されてきた。併しながらこれらの材料の各々の化学物質透過特性は、使用中に遭遇するであろう広い範囲の条件を代表しない比較的低い相対湿度の下で評価されている。これらの材料の性能は、特に高い相対湿度においては、防護と快適性間のその妥協によって制限されるであろう。
【発明の概要】
【0017】
驚くべきことにここに教示されたように、ポリアミンポリマーをベースとした選択的透過性化学防護被覆の性能は、ポリアミンポリマー内にアミン−酸成分を組み入れることによって著しく且つ予想外に高められ得ることが発見された。計らずもその水蒸気透過速度は、特に高い相対湿度において防護の質における対比しての交換なしに著しく改善され得ることが発見された。更に特に高い相対湿度条件における有毒または有害化学物質に対する抵抗が、水蒸気透過における対比しての交換なしに著しく改善され得ることが発見された。そして最も驚くべきことに、高い相対湿度条件においてさえ水蒸気透過速度と有毒または有害化学物質に対する抵抗の両方が同時に改善されて、防護の改善と共に快適性の改善を同時に提供することが出来る選択的透過材をもたらし得るという理想が達成可能であることが発見された。
【0018】
従って広い条件範囲にわたって防護と共に高度の通気性を示す軽量且つ柔軟な選択的透過材を提供することが本発明の一つの目的である。高い湿度条件においてさえ、大量の水蒸気を透過することが出来る一方でまた有毒または有害化学蒸気の通過を十分に制限することが出来る、選択的透過能を有する防護被覆を提供することが本発明の一つの目的である。本発明の化学防護被覆は、水蒸気の透過を通して汗の大量の蒸発を可能にするその能力のために快適である化学防護衣料品に使用が可能であり、現実の使用のシナリオにおいて遭遇の可能性がある広い範囲の応用に適する。
【0019】
この発明の化学防護性で水蒸気透過能のある被覆は、その最も広い態様においてポリアミンポリマーの選択的透過シートから成り、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有する。この材料は実験を通して、2000g/(m2・日)より大きい水蒸気透過速度及び0.02cm/秒より小さいビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する化学防護被覆が得られるように選択且つ調節される。
【0020】
一つの態様において、アミン−酸成分を有するポリアミンポリマーは選択的透過性複合材の一部であり、ここでポリアミンポリマーは、開放小孔基材、閉鎖小孔基材、または無小孔基材であることが出来る水蒸気透過性基材の表面上に本質的に存在する実質的連続層を形成する。
【0021】
本発明の更なる実施態様において、アミン酸−成分を有するポリアミンポリマーは開放小孔基材を有する選択透過性複合シートの一部であり、ここではポリアミンポリマーの少なくとも一部が基材の中に存在する。
【0022】
本発明のもう一つの態様において、化学防護被覆は二つの水蒸気透過性開放小孔ポリテトラフルオロエチレン基材、及びポリアルキレンイミン含有ポリアミンポリマーでアミン−酸成分が特にH2SO4を含みポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%であるポリアミンポリマーから成る。これらの材料は選択透過性複合シートを形成するように作られ、ここでポリアミンポリマーは基材間に存在する実質的連続層を形成し、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が各基材内に存在する。
【0023】
本発明は衣服、手袋、履物、及び類似品のような衣料品として、またはそれらの内部において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】開放小孔延伸膨張PTFE基材を有するポリアミンポリマー複合材の赤外スペクトルの例を示す。
【図2】硫酸の添加によってアミン−酸成分を組み入れた後の図1と同じ材料の赤外スペクトルの例を示す。
【図3】ポリアミンポリマーシートの実施態様を描写する。
【図4】無小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図5】閉鎖小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図6】開放小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図7】開放小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートのもう一つの実施態様を描写する。
【図8】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在する。
【図9】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在する。
【図10】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの全部が開放小孔基材中に存在し、部分的にそれを充填する。
【図11】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材中に存在し、それを部分的に充填する。
【図12】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図13】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図14】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図15】ポリアミンポリマーが二つの開放小孔基材の間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が基材中に存在するが、夫々の基材中には一部ずつ存在する。
【図16】ポリアミンポリマーが二つの開放小孔基材の間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部分が基材の夫々の中に存在する。
【図17】ポリアミンポリマーが開放小孔基材と無小孔基材との間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材と共に存在する。
【図18】ポリアミンポリマーが開放小孔基材と無小孔基材との間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材と共に存在する。
【図19】織物層を組み入れた多層積層体の実施態様を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の化学防護被覆は重要な特徴を有し、即ち、ポリアミンポリマーはそのアミンの少なくとも10%をアミン−酸成分として有し、その含まれる酸性種が6.4より小さいpKaを有する。このポリアミンポリマーは化学防護被覆での使用に適した選択的透過シートに形成することが可能である。
【0026】
本発明の実施態様は更にポリアミンポリマーの支持及び保護を与えることができる1個以上の水蒸気透過性基材を組み入れる。これらの実施態様は多孔質基材の使用のみならず、本質的に小孔の無い水蒸気透過基材の使用を含む。多孔質基材は開放小孔基材のみならず閉鎖小孔基材を含み、この発明はポリアミンポリマーの少なくとも一部がそのような開放小孔基材の小孔を少なくとも部分的に充たすように作ることができる実施態様を含む。
【0027】
化学防護被覆は有毒または有害化学物質の通過を実質的に制限する材料または物品を意味し、それらの有害化学物質とそれが防護を意図するものとの間に介在されることを意図する。本発明の化学防護被覆は、特に人、動物、及び植物の防護を意図する。このような材料または物品は、例えばフイルム、裏張り、積層体、毛布、テント、寝袋、サック、履物、手袋、衣服、及び類似品の形態であることが出来る。
【0028】
好ましい化学防護被覆は柔軟であるだろう。柔軟であるということは自由に破損無く曲げるのに十分しなやかであることを意味する。柔軟な材料は化学防護衣料品のような応用に使用するのに潜在的に適性が有るであろう。比較的好ましい柔軟な化学防護被覆は、ハンドル−オ−メーターの測定によって指示されるように、1000より少ない風合いを有し、評価の後に破壊または著しい破損のような明らかな損傷を有しないであろう。最も好ましい柔軟な化学防護被覆は250より少ない風合いを有し、評価の後の破壊または他の著しい破損のような明らかな損傷を有しないであろう。
【0029】
選択的透過性とは、好ましくない化学透過物に比較して、好ましい化学透過物に対して著しく異なった透過性を有することを意味する。好ましい透過物、例えば水蒸気に対する透過性は、好ましくない透過物、例えば有毒または有害化学蒸気に対する透過性に比較して高くなければならない。有用な選択的透過材は、有毒または有害化学蒸気に対する透過性に対して少なくとも5〜10倍大きい水蒸気に対する透過性を有するであろう。50〜100倍の相違または更に500〜1000倍の相違を有する選択的透過材は更に有用である。
【0030】
ポリアミンポリマーは複数のアミンを有するポリマーを意味する。本発明のポリアミン内のアミンのかなりの部分はアミン−酸成分の形態である。
【0031】
アミン−酸成分とは、塩基性であるアミングループと酸グループ間の反応から生じる生成物を意味する。アミン−酸成分は、その生成物がアミングループと酸グループとが相互に一緒にされる時生じるであろう物であるように、いくつかの化学または物理工程の結果の産物であり得よう。このような工程は、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられよう。即ち、ポリアミンポリマーに添加された遊離酸類(例えば硫酸の組み入れ)、または他の反応の結果の生成物または副生成物(例えばアミンのアルキル化とHClの生成をもたらすアミンのクロロアルキル化合物との反応)、またはポリアミンポリマー内における酸性官能価の共有結合付加(例えばそのビニールグループを通してのアクリル酸のポリアミンポリマーに対する反応)等である。
【0032】
酸性種とは、1個以上の酸性官能価を有する分子または化学化合物を意味する。
【0033】
基材とは、選択的透過複合シートを形成する多くの被覆及び積層技術の任意のものによってポリアミンポリマーと組み合わされるシート用材料を意味する。本基材は水蒸気透過性であるであろう。
【0034】
水蒸気透過性とは、少なくとも500g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有することを意味する。
【0035】
複合シートとは、層対層の接触または含浸で、一方が他方上及びまたは他方内に完全にまたは部分的に行なわれるものを有する2個以上の材料の実質的に平面状の結合物を意味する。
【0036】
単一または複数の基材は、ポリアミンポリマーに対する保護及び支持を提供する。単一または複数の基材は、摩損、引き裂き、または突き刺しからのような物理的保護を提供し、またシステムの性能に害または他の悪影響を与える可能性が有る化学物質、特に液体からの保護を提供することが出来る。基材は開放小孔材、閉鎖小孔材、または本質的に小孔の無い材料であることが出来る。
【0037】
開放小孔とは、材料が連続的で相互に連結した小孔、空間、空洞、またはその厚さを少なくとも部分的に貫通する通路を有し、それらは開放していて少なくとも材料の一方の側から接近可能であることを意味する。この接近は開放小孔基材の場合に重要で、ここではポリアミンポリマーの少なくとも一部を基材の小孔内に少なくとも部分的に置くことが望ましい。
【0038】
開放小孔基材はそのような開放していて接近可能な小孔、空間、空洞、または通路を有する任意の適当に多孔質の材料であることができ、例えば織物、不織布、または編物等の布帛、または多孔質ポリマーフイルムが挙げられる。適当な開放小孔ポリマーフイルムには、限定することなく、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、セルロース類、及び類似物の開放小孔フイルムが挙げられる。好ましくは開放小孔基材は、米国特許第4187390号または米国特許第3953566号に教示されているような、小孔を形成する小繊維によって相互に連結された結節から成る延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0039】
または基材は本質的に閉鎖小孔材であることができ、閉鎖気泡発砲体または閉塞された表面を有する多孔質フイルムのようなものがあり、これらの内部は多孔質であるが材料の外部から小孔部に対する著しい開口または接近の可能性を有しない。好ましい水蒸気透過性閉鎖小孔材は、ポリエーテルポリエステル類またはポリエーテルポリウレタン類のようなポリエーテルポリマーから成る。或は基材は本質的に小孔の無い材料、即ち目立った多孔性を有しない一般に連続的一体式の材料である。好ましいこのタイプの水蒸気透過性基材は、セルロース類、ポリエーテルポリエステル類、及びポリエーテルポリウレタン類のシートまたはフイルムのような材料である。
更に単一または複数の基材は、複合シートの性質を高める被覆を有することができる。例えば水蒸気透過基材はポリアミンポリマーと基材間の結合を改良しより強いまたはより耐久性の複合材を創る被覆を有することが出来る。或は、例えば水蒸気透過基材は、オイルまたは他の潜在的汚染物質のような物質からポリアミンポリマーを追加的に保護する被覆を有することができる。特に開放小孔基材は米国特許第5539072号に記述されたような被覆膜を使用することが出来る。
【0040】
ポリアミンポリマーは、少なくとも1.0ミリ当量/gのアミン、好ましくは少なくとも2.5ミリ当量/gのアミン、更に好ましくは少なくとも6.5ミリ当量/gのアミンを有する。
【0041】
ポリアミンポリマーのアミンは、アミンが実質的に塩基性で、一般に12より小さいpKbを有し、酸性種と反応する可能性があれば広い範囲の種類のものであり得る。従ってアミド及びイミドのような窒素含有化学物質グループは、それらは実質的に塩基性ではないので排除されるであろうことが理解される。
【0042】
本発明のポリアミンポリマーのそのような塩基性アミンは、例えば第1、第2、または第3アミン、またはそれらの任意の組合せであることが出来、アリル(aryl)、アルキル、アリル(allyl)、またはアルケングループのような種々の他のグループに結合することが出来る。ポリアミンポリマーのアミンはまた二重結合によって炭素原子に結合したイミンであることが出来る。
【0043】
ポリアミンポリマーは種々の物質及びそれらの組合せからのアミンを有することが出来る。ポリアミンポリマーのアミンは、アミングループが直接アルキルグループに結合している繰り返し単位を含むポリアルキルアミン類からのものであることが好ましい。ポリアルキルアミン類はポリビニルアミンのような物質から選ぶことが出来、またより好ましくはポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンのようなポリアルキレンイミン類から選ぶことが出来る。ポリエチレンイミンが最も好ましく、しばしば環状モノマーのエチレンイミン(アジリジン)から生成される繰り返し単位構造(−NR1R2−CH2−CH2−)nを有する。繰り返し単位の数nは任意の正の整数であることが出来、またR1及びR2は夫々水素またはエチルグループを通して結合した記述の繰り返し単位であることが出来る。
【0044】
アミン−酸成分の酸性種はプロトンを与える酸性種であり、6.4より小さいpKaを有する。大気中の二酸化炭素が水分と共に相互反応し、6.4のpKaを有するカルボン酸を形成するであろうことがよく知られている。更にカルボン酸は比較的弱酸であるがアミンと反応すること、及びこの反応は温度及び周囲のCO2や水分濃度によって駆動される過渡現象及び反転現象に依存することがよく知られている。比較的強い酸は概して比較的弱い酸に取って代わることも知られている。これらの理由のために、この発明のアミン−酸成分の酸性種はカルボン酸のものより強い解離定数、即ち6.4より小さいpKaを有する。5以下のpKaを有する酸性種が更に好ましく、また2.5以下のpKaを有する酸性種が最も好ましい。
【0045】
ポリアミンポリマーに対する燐酸の添加によるようなポリアミンポリマーの一部として組み入れられる遊離酸に対しては、pKaは明らかに推測される。例えば燐酸は2.1のpKaを有する酸性種である。多塩基酸である燐酸はまた7.2及び12.7のpkaを有する。ポリアミンポリマーから切り離すことが出来ない酸性種、例えばポリアミンポリマー内に共有結合で束縛されている酸性種に対しては、その酸性種はその種の酸性グループを代表するpKaを有するものと認識されている。例えば若しもカルボン酸が共有結合でポリアミンポリマー内に束縛されたとすると、そのような得られる酸性種のpKaは同様のカルボン酸グループを代表するものであることが判っており、従って3.0〜5.0のpKaを有するであろう。
【0046】
ポリアミンポリマーのアミン−酸成分の酸性種は多塩基の酸性種であることが好ましいであろう。多塩基の酸性種は、例えば硫酸、亜硫酸、燐酸、蓚酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、及びフマル酸が挙げられる。酸性種はまた一塩基であることができる。一塩基の酸性種は例えば塩酸、ピルビン酸、酢酸、及び蟻酸が挙げられる。酸性種はまたポリアクリル酸のようなポリマーであることができる。酸性種はまた、グリオキシル酸のアルデヒドへの反応から得られるもののように、ポリアミンポリマー中に共有結合で束縛されることができる。単一タイプの酸性種を使用することができるが、または二つ以上のタイプの酸性種の組み合わせも使用可能である。
【0047】
好ましい実施態様において、アミン−酸成分は硫酸をポリアミンポリマー中に組み入れることによって作られる。
【0048】
ポリアミンポリマー中のアミン−酸成分の量及び性質は、化学量論的に最もよく決定できる。即ちポリアミンポリマー中のアミン及びポリアミンポリマー中の酸性種は、ポリアミンポリマーの成分及び組成の知識によって理想的に見分けられる。このようにして得られるアミン−酸成分のタイプ及び量は、ポリアミンポリマーを形成するために使用された成分及び反応の理解を通して理想的に決定される。
【0049】
または、ポリアミンポリマーはいくつかの分析技術によって特徴ずけることができ、限定するものではないが、これらの技術には抽出、元素分析、滴定、クロマトグラフィー、質量分光法、赤外線分光法、及び電気誘導カップルプラズマ(ICP)分析が挙げられる。
【0050】
図1は開放小孔延伸膨張PTFE基材を有するポリアミンポリマー複合シートの赤外スペクトルを示す。図2は、硫酸の付加によりアミン−酸成分を組み入れた後の同じ物質を示し、本発明の一つの実施態様を示すものである。
【0051】
多くの例において、強塩基溶液、例えば0.1ノルマルの水酸化ナトリウムの水溶液と接触させることによって、ポリアミンポリマーから酸性種を抽出することができる。次いで抽出剤を有する溶液は公知の技術によって分析され、酸性種のタイプと量を決定することができる。これらの技術として例えばイオンクロマトグラフィー及び化学元素分析が挙げられる。
【0052】
好ましい物質においてはポリアミンポリマー中のアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であろう。公知の滴定法を、アミン−酸成分であるポリアミンポリマー中のアミンの百分率を決定するために、分析技術として使用することができる。全体のアミンの当量は、ポリアミンポリマーをpH=11の水溶液と接触させ、その中で平衡させ、次いでポリアミンポリマーを含む溶液をpH=3まで滴定することによって決定することができる。アミン−酸成分でないアミンの当量は、その材料を純水中で平衡させ、次いでpH=3まで滴定することによって決定することができる。要した酸当量がアミン−酸成分でないアミン当量を示す。全体のアミン当量とアミン−酸成分でないアミン当量との差がアミン−酸成分であるアミンの当量と考えることができる。次いでアミン−酸成分であるアミンの百分率を、アミン−酸当量の全体のアミン当量に対する割合から決定することができる。より好ましい材料ではポリアミンポリマーのアミンの少なくとも40%がアミン−酸成分である。
【0053】
ポリアミンポリマーは架橋されているのが好ましい。不溶性ポリマーの網状構造を作る架橋は、この技術分野で公知の任意の種々の方法によって行なうことができる。一つの方法はポリアミンポリマー中のアミン官能価によって架橋することである。そのようなものとして適した架橋剤は、例えばポリエポキシド類、多塩基エステル類、アルデヒド類、及びアルキルハロゲン化物類から選ぶことができる。好ましい実施態様において、ポリアミンは少なくとも部分的にエポキシド結合によって架橋されている。
【0054】
ポリアミンポリマーは選択的透過性シートまたは層を形成するようにされるが、ある実施態様では、該シートまたは層は少なくとも一つの水蒸気透過基材を有する複合シートの一部であることができる。選択的透過性シートまたは層は実質的に連続体であり、従ってその厚さを貫通する大量の空気流に対して抵抗を有し、該選択的透過性シートを貫通する空気流に対するガーレイ空気抵抗は5秒よりも大きい。
【0055】
ポリアミンポリマーと基材との複合シートにおいて、ポリアミンポリマーは水蒸気透過基材の上または中に部分的にまたは全体に被覆され、または他の方法で該基材に直接取付けられる。ポリアミンポリマーは1〜1000μmの厚さ、より好ましくは5〜100μmの厚さを有するように成形される。基材は概して約0.005mm〜2.0mmの厚さ、好ましくは約0.01mm〜0.1mmの厚さである。
【0056】
好ましい基材は少なくとも4000g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有し、より好ましい基材は少なくとも20000g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有する。
【0057】
基材とポリアミンポリマーとの複合シートは一巻きの基材シートを適当なニップロールに供給することによって調製することができ、ここでポリアミンポリマー構成物の混合物が部分的にまたは全体的に基材と接触され、次いでニップを通過させることによって基材に圧し付けられる。或は開放小孔基材であれば、構成物は小孔に対して圧し付けられ、また望まれれば小孔内に圧し込まれる。アミン含有構成物に加えて混合物はまた架橋剤、酸性種、及びまたは可塑剤、充填剤、及び類似物のような構成物を含む追加の加工助剤及び性能助剤を含むことができる。このブレンドの基材に対する塗布率は、どれだけ多くの被覆または層が必要かに依存する。若し適すれば、積層体を加熱することによって架橋が開始し行なわれる。
【0058】
ブレンドはまた流延、吹き付け、押出し等、または実質的に連続のシートまたはフイルムまたは層による二次成形または被覆といった本技術分野で公知の任意の手段によって適用が可能である。
【0059】
次いで酸性種が組み入れられ、或は更にポリアミンポリマーの一部として一体化される。これを都合よく行なうことができる方法は、ポリアミンポリマーを酸性水溶液と必要な時間接触させることである。これは適すれば酸性種がポリアミンポリマーのアミンと反応する導管を提供する溶液で、単一基材または複数基材を飽和または充填することによって容易に行なうことができる。
【0060】
ポリアミンポリマーと単一または複数基材はいろいろな形状に配置することができ、それらの例は図3〜18に図解される。これに加えて布帛のような材料の追加層を防護被覆の一部として一体化する積層体を作り、性能を更に防護または増大させ、さもなくば防護被覆を意図する応用での使用に一層適したものとすることがしばしば有用である。この一つの例が図19に図解される。
【0061】
図3に示すように、ポリアミンポリマー20は独立フイルムに成形することができ、または図4〜14に示すように水蒸気透過基材との複合シートに組み入れることができる。図4、図5、及び図6は、ポリアミンポリマーが無小孔基材21、閉鎖小孔基材22、及び解放小孔基材23の夫々の表面上に本質的に存在する複合シートを描画する。図7はもう一つの実施態様を示し、ここではポリアミンポリマー20が本質的に開放小孔基材23の表面上に存在する。
【0062】
開放小孔基材に対しては、図8〜19に示すようにポリアミンポリマーの少なくとも一部は基材の空間を部分的または全体的に充填するようにすることができる。図8及び図9は夫々、ポリアミンポリマー20の一部が部分的に開放小孔基材23を充填する複合基材を描写する。図11及び図12はポリアミンポリマー20の殆ど全部が開放小孔基材23中に包含され、開放小孔基材を部分的に充填する複合シートを描写する。図12は殆ど全体がポリアミンポリマー20によって大体充填される開放小孔基材23を描写する。図13及び図14は夫々ポリアミンポリマー20の一部によって大体充填される開放小孔基材23の実施態様を描写する。
【0063】
若し望むならば、図15〜19に示すように第二の基材を追加することができる。図15及び図16は夫々ポリアミンポリマー20が開放小孔基材23及び23aの間に含まれる複合シートの実施態様を描写する。図15は開放小孔基材23および23aが殆ど互いに接触するようにされ、その結果ポリアミンポリマー20が完全に夫々の基材内の一部に存在する実施態様を描写する。図16はポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材23および23aの夫々に存在するが、基材はそれらの中に存在しない或る厚さのポリアミンポリマーによって切り離される実施態様を描写する。図17及び図18は夫々、ポリアミンポリマー20が開放小孔基材23及び無小孔基材21の間に包含され、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が開放小孔基材内に存在する複合シートの実施態様を描写する。図17はポリアミンポリマー20の殆ど全てが開放小孔基材23内に存在する実施態様を描写し、また図18はポリアミンポリマー20の一部だけが開放小孔基材23内に存在する実施態様を描写する。各描写における無小孔基材の代わりに閉鎖小孔基材または開放小孔基材もまた置き換えて考えることができることは明らかである。
【0064】
このようにしてポリアミンポリマーを水蒸気透過性基材に塗布または被覆させ殆どその表面上に存在させることができることが判る。或は開放小孔基材の場合、ポリアミンポリマーを単一または複数の基材内にその厚さ方向に吸収させ、それもごく僅かまたはポリアミンポリマーが基材内の空間をその厚さ方向に大体充填するようにすることができる。ポリアミンポリマーをそのような開放小孔基材内に完全に存在させることも、またはポリアミンポリマーの一部だけをその中に存在させることもできる。
【0065】
ポリアミンポリマーと水蒸気透過基材のこれらの描写は代表的なものであるが本発明の可能性のある全ての実施態様を示すものではないことは理解される。ポリアミンポリマー、水蒸気透過基材、並びにそれらの複合シートの多層並びに組合せが可能であることが想像される。
【0066】
述べたように、ポリアミンポリマー及びポリアミンポリマーと基材の複合シートを含む積層体に、追加層の材料を組み入れることがしばしば望ましい。これには例えば種々の織物、フェルト、ポリマーのフイルムまたは膜、スクリム、皮革等を挙げることが出来る。
【0067】
ここで使用される積層体は、適当な任意の手段で一緒に集成し、それによって集成体が個々の層が部分的に果すことを全体として遂行するように設計される、同じまたは異なる材料の多層として説明される。
【0068】
積層体の作成に適した手段には、限定されるものではないが、接着剤の分離パターンまたは点接着のような不連続接着で層を集成すること、縫合または他の固定のような機械的取付け、溶融可能なウエブ及び熱可塑性スクリム、積層体の種々の構成材の上または内部への部分的または全体的の直接塗布、またはさもなくば互いに共に機能させることを目的とするような方法で種々の構成材を層にすること等が挙げられる。
【0069】
ポリアミンポリマーを追加の布帛層及び水蒸気透過性基材と共に一体化する積層構造を図19に描写する。この構造においてポリアミンポリマー20は開放小孔基材23及び23aの間に含まれる。この複合材は不連続的に塗布した接着剤24及び24aによって表面布帛25及び支持布帛25aに夫々積層される。接着剤は水分硬化型ポリウレタンのような水分硬化型接着剤であるのが好ましい。接着剤は不連続の点として示されているが、格子、線などの形状であってもよい。接着剤はそれが水蒸気透過性であれば連続的に塗布してもよい。表面布帛は最外層で、一般に自然要素に曝される。それは任意の織物であることが出来るが、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、アクリル、綿、羊毛等で作られた織物が好ましい。それはまた疎水性及び/または疎油性にするように処理することが出来る。支持材は内層で例えば編物、織物または不織布であることができる。布帛は難燃性を賦与するような適当な物質で追加処理することが可能である。
【0070】
勿論布帛または水蒸気透過ポリマー層のような一つ以上の追加層と基材及びポリアミンポリマー層とを組合せる他の積層体の配置が考えられる。
【実施例】
【0071】
基材を有するポリアミンポリマー:処理A
水平に向き合った幅30”、直径8”の2本の反対方向に回転するロールを、1インチの線当り90ポンドの圧で互いに圧し付けた。一本のロールはクロムでもう一本のロールはゴム被覆であった。クロムのロールは60℃に加熱された。公称0.04mmの厚さで75%〜80%の気孔率を有する開放小孔延伸膨張PTFE膜を、ポリマー成分の混合物を導入した谷を形成するロール間のニップに、各ロールの上を通って連続的に供給した。
【0072】
特定されるポリアミンポリマー層の構成成分を、ハンドドリルに取りつけた小さな混合用ブレードを用いて一緒に混合した。次いで混合物を直ちにニップ中に導入した。その混合物は膜の間及び内部に絞り入れられ、次いで赤外線加熱オーブン中に供給され、ここでそれらは凡そ100℃で30秒間加熱されて硬化された。
基材を有するポリアミンポリマー:処理B
このプロセスは“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”と同様であるが、ポリマー成分の十分な混合を確実にするために動的ピンミキサーを使用する。ニューヨークのバズフ社のLupasol PR8515ポリエチレンイミンと、ニューヨークのチバスペシャルティケミカルズ社のAraldite GY285ビスフェノールFエポキシの特定の割合の混合物を連続的に混合室に導入し、ここでこれらの成分はモーター駆動のピンミキサーでブレンドされる。このブレンドは流液口から2本のロールの間のニップに分配され、これらのロールの夫々を通って“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”で記述したように開放小孔延伸膨張PTFEの連続膜が供給される。2部から成るポリマー系の各成分は70℃に予熱される。利用した2本のロールは幅72”で直径10”であった。クロムロールは70℃に加熱され、一方ゴム被覆ロールは25℃に加熱された。ニップ圧は1インチの線当り95ポンドに設定された。ニップを出た複合材は赤外線加熱オーブンに供給され、フイルム温度130℃、滞在時間約45秒でポリマーが硬化された。
アミン−酸成分の組み入れ:処理A
“基材を有するポリアミンポリマー:処理B”で作られた複合シートの8”×12”の試料を切り出した。1リットルの酸水溶液を調製したが、それは説明されるであろう。試料をイソプロピルアルコール(IPA)中に浸し、これによって架橋されたポリエチレンイミンポリマーを囲む開放小孔PTFEが濡らされて充填され、酸性水溶液の酸性種がポリアミンポリマーのアミンに到達する導管が提供された。次いで直ちに試料を酸水溶液中に浸漬し、20分間放置した。次いで試料を取り出して少なくとも24時間空気乾燥し、次いで約32℃、100%の相対湿度で一晩調湿した。
アミン−酸成分の組み入れ:処理B
“基材を有するポリアミンポリマー:処理B”によって作られた85”×11”の試料を切り出し、次いで100〜110℃で1時間真空下で乾燥した。次いで試料をシール遮断が可能な9”×12”の袋の中に入れた。10gのIPAの全量を袋に加えて袋をシールし、袋の中のIPAを手で廻し試料の両側がIPAで浸されるようにした。次いでこの袋に、以下に詳しく述べる規定量の酸を含む20gの水の溶液を加えた。袋をシールし、その袋をその内容物と共に振ったり廻したりして、10分間にわたりその内容物を手で絶えず混合した。次いで試料を取り出して紙タオルで乾かし、15分間実験室のフード内に吊り下げた。試料は次いで真空下に100〜110℃で1時間乾燥した。次いで試料は空気中で約32℃、100%RHにて一晩調湿された。
アミン−酸成分の組み入れ:処理C
試料を直径8”の刺繍用の輪に固定した。集成体の凹んだ側に規定量のIPAを加え、集成体をあちらこちらに傾けて輪の中の試料の全面積が浸るようにした。直ちに重量ベースで2%の硫酸水溶液の規定量を加えた。試料を4分間あちらこちらに傾けて輪の中の試料の全面積がその溶液で処理されるようにした。次いで過剰分を輪から流し出して試料を取り出し、次いで実験室のフード内に吊るして一晩乾燥させた。次いで試料は空気中で約32℃、100%RHにて調湿された。
水蒸気透過速度試験
水蒸気透過速度は(WVTRs)、米国特許第4862730号に記載の方法を使用し、塩として酢酸カリウムを、また水蒸気透過膜に開放小孔延伸膨張PTFEを用いて決定した。これらの膜は公称75%〜80%の気孔率を有し、厚さは約0.04mmであった。周囲を50%の相対湿度で23℃に維持した。水浴は23℃に維持された。
ビス−2−クロロエチルに対する透過性試験
化学物質透過試験及び分析は次のものから改作されたものであり、それらは(1)米国陸軍の試験及び評価指令、試験処理方法8‐2‐501(1997年3月)に要約されたプロトコールである“空気透過性並びに半透過性物質吸収剤/反応剤容量試験(蒸気薬品チャレンジ/蒸気透過)”並びに(2)化学薬品に対する防護衣類システム評価の実験室的方法、CRDC−SP−84010(1984年6月)である。試験はメリーランド州、ゲイサースバーグのジェオメットテクノロジー社で完成された。試験装置及び実験条件の説明は次の通りである。
【0073】
この透過性は一連の試験用小室から成る装置を使用して決定され、それらの小室の中にフイルムまたは積層体試料が置かれる。更に全体の集成体は外部の部屋の中に置かれ、その部屋の温度は32℃に制御される。各小室は普通小室の頂部及び底部と名付けられた上部と下部の区画から成る。両方の半分の小室に入り口と出口が備えられ、小室を貫通し試料表面を横切る気体流の吹付けを与えることを可能にする。これらの気体流の温度は32℃に制御される。これらの気体流の相対湿度は更に詳述する特別の値に制御される。公称0.33μg/cm3の“2CES”と呼ぶビス−2−クロロエチルスルフィド(化学構造Cl−CH2CH2−S−CH2CH2−Cl)を頂部の空気流に導入し、頂部小室を貫通し試験試料を横切って流され試料にチャレンジする。底部の空洞には清浄な空気流が流される。試料を貫通して透過した2CESの蒸気は底部の空気流に流れ込み、下流で固体吸着剤及び液体衝突によって捕捉される。
【0074】
2CESのチャレンジに曝された面積は10cm2である。小室は試料を確実に取り付け、小室からまたは小室の半分の間の漏れを防ぐために十分なリング、プレート、クランプ、及びシールを備える。小室の集成体は全て試験に先立って加圧して洩れ試験をされる。小室の設計は化学薬品に対する防護衣類システム評価の実験室的方法、CRDC−SP−84010の図2.7に記述されたものの拡大変形されたものである。
【0075】
外部の部屋の中の小室内への試料の取り付けが終ると、全ての試料は32℃、相対湿度50%で2時間調湿される。2時間の最初の調湿を終えた後直ちに2CESチャレンジを開始する。分析のための透過した2CESの蒐集に先立って2時間運転して2CESチャレンジに対する暴露下に平衡を確立させる。この平衡期間に次いで分析のための透過2CESの蒐集を開始し、規定の相対湿度と温度の条件下に3時間の間隔で継続する。分析のための3時間の終りに薬剤検知媒体を除去する。固体吸着剤及び衝突器からの液体は、上記の参考資料に記述された比色/蛍光技術によって分析される。透過データは各3時間の試験時間における各試料に対してμg/cm2の単位で報告される。これからμg/cm2/秒で示されたの2CES透過速度または流速が得られる。次いで透過性がチャレンジ濃度に対するこの流速の比によって求められ、cm/秒の単位で報告される。この試験の識別能力及び検出下限は2.79E−05cm/秒であった。
ガーレイ空気抵抗試験
これらの材料を通しての空気流抵抗はダブリュ.アンド エル.イー.ガーレイ アンド サンズ社によって製造されたガーレイデンソメーター(ASTM D726−58)によって評価されたが、これは標準圧円筒、100cm3の空気、及び1平方インチの大きさのオリフィスを使用する。結果は、試料を横切る4.88インチの水の圧力差で、試験材料の1平方インチを通して100cm3の空気が通過するのに要する秒で表わした時間で報告される。
柔軟性:ハンドル−オ−メーター
材料の曲げ易さ及び破壊に対する感受性が、ペンシルバニア州のトゥイング−アルバート インストルメント社によって製造されたハンドル−オ−メーター、モデルNo.211−5を使用して評価された。この装置は平らな壇上の細長い開口を通して試料を無理に曲げ、要した作用力を測定するものである。ここでの評価には1000gの角材を使用し、試料は65%の相対湿度、23℃の条件で試験された。細長い孔は0.25インチの間隔に設定された。使用した試料は長さ3インチ、幅1インチで、試料の長さが細孔を垂直に横切って配向し、細孔の一方の側の上に1インチ出るようにして試験した。結果または風合いは、細穴を通った1インチの幅の試料を押し曲げるのに要する最高の作用力として報告される。試料はその側面の夫々について別の場所で試験し、平均値を求め、その材料の風合いを代表させる。配向方向によって物理的性質が著しく異なる可能性がある材料(例えば織布帛)に対しては、最初のものから90度回転させて追加の試料を取って評価し、その結果を平均してその材料の風合いを得る。
実施例1
重量ベースで55%のLupasol PR8515ポリエチレンイミン及び45%のAraldite GY285エポキシの混合物で“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”を使用して試料を作った。被覆量は約18g/m2であった。次いでこの試料の一部を重量ベースで1%の硫酸水溶液を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理A”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0076】
【表1】
【0077】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において1.80倍の増加を、また80%の相対湿度での2CES透過性において6.67倍の減少を示した。これは高い相対湿度においても改良された通気性と共に改良された両方の防護が達せられた例である。50%の相対湿度では2CESに対する透過性は試料の両方共検出の下限或はそれより下であった。
実施例2
重量ベースで65%のポリエチレンイミン及び35%のエポキシの混合物を用い“基材を有するポリアミンポリマ−:処理B”によって試料を作った。被覆量は凡そ16g/m2であった。次いでこの材料の一部を0.59gの85%燐酸水溶液を用いて、“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0078】
【表2】
【0079】
燐酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料はアミン−酸成分の無い試料の水蒸気透過速度の約70%を保持し、一方2CES透過性をアミン−酸成分の無い試料の1.5%より少ない値まで減少させた。これは高い相対湿度においてさえ防護における極めて大きな改良を示し、一方通気性の犠牲の程度は極めて低い例である。50%の相対湿度での2CESに対する透過性は、両方の試料に対して検出の下限以下であった。
実施例3
56gのペンタエチレンヘキサミンの混合物を40gのジメチルフタレートと組合せたが、これらの化学製品は何れもウィスコンシン州のアルドリッチケミカル社から入手した。混合物を約60℃で4時間攪拌した。この組成物を“基材を有するポリアミンポリマ−:処理A”で使用したが、ここで組成物の40gをニューヨーク州のシェルケミカル社から入手した28gのHeloxy68ネオペンチルジグリシジルエーテルと混合した。被覆量は凡そ39g/m2であった。次いでこの材料の一部を6gのIPA及び12gの重量ベースで2%の硫酸水溶液を用いて、“アミン−酸成分の組み入れ:処理C”によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0080】
【表3】
【0081】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において2.24倍の増加を、80%の相対湿度での2CESに対する透過性において2.34倍の減少を示した。これは改良された通気性と同時に改良された防護を示すもう一つの例である。50%の相対湿度での2CESに対する透過性は、両方の試料に対して検出の下限以下であった。
実施例4
重量ベースで50%のオランダのデーエスエムファインケミカルズ社から入手したAstramol(AM)16ポリプロピレンイミン及び50%のAraldite GY285 Bisphenol Fエポキシの混合物を用い、“基材を有するポリアミンポリマ−:処理A”を使用して試料を作成した。被覆量は凡そ23g/m2であった。次いで1.1oz/yd2のポリエステルトリコットニット及び3.0oz/yd2のナイロン平織布帛をエッチ.ビー.ヒュラー社からのRapidex(商標)反応性ホットメルト接着剤HL−9588−Xを使用して不連続の点パターンで材料の相対する側面に取り付けた。接着剤のニット側の被覆は面積で約44%で、接着剤の織布帛側の被覆は面積で凡そ30%であった。この積層体の一部を9gのIPA及び16gの重量ベースで2%の硫酸水溶液を用いて、積層体のニット側を通して“アミン−酸成分の組み入れ:処理C”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0082】
【表4】
【0083】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、水蒸気透過速度において4.60倍の増加を示した。両方の試料とも80%の相対湿度で比較的低い2CES透過性を示したが、アミン−酸性分を有する試料はアミン−酸成分の無い試料に対して、2CESに対する透過性において1.5倍の増加を示したに過ぎなかった。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は、両方の試料とも検出の下限以下であった。
実施例5
重量ベースで55%のポリエチレンイミン及び45%のエポキシの混合物を用い、“基材を有するポリアミンポリマ−:処理B”を使用して試料を作成した。被覆量は約8g/m2であった。次いでこの材料の一部を0.17gの硫酸を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって改変した。この材料の第二の部分を0.26gの硫酸を用いて同じ処理によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0084】
【表5】
【0085】
これらの試料は硫酸改変のレベルの増加と共に水蒸気透過速度が増加することを示したが、2CESに対する透過性の増加は比較的少ないことを示した。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は各試料とも検出の下限以下であった。
実施例6
アミン−酸成分の組み入れの無い実施例5からの材料の試料を0.34gのクエン酸を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0086】
【表6】
【0087】
クエン酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において1.26倍の増加を示し、80%の相対湿度での2CES透過性において1.67倍の減少を示した。
実施例7
ペンシルバニア州のエア プロダクツ アンド ケミカルズ社、工業化学薬品部門からの、分子量が30000〜60000、固形分が25%と表示された20gのポリ(ビニルアミン)遊離塩基を、重量ベースで25%の硫酸水溶液の8g、硫酸アルミニウム水和物(アルドリッチ社から入手)の25%水溶液の1g、及び0.5gのトリス(2、3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(アルドリッチ社から入手)と手で混合した。十分に混合した後、ミリケン社から入手の平方ヤードあたり3.2オンスの、微細デニール繊維ナイロン平織布帛上に、混合物を20ミルの流延バーを使用して流延した。平滑で均一な被膜が得られるようにバーを数回布帛基材を横切って押し引きした。次いでこれを150℃の加熱空気対流オーブン中で15分間硬化させた。次いで試料を凡そ32℃、100%相対湿度で一晩調湿した。被膜は凡そ140g/m2であった。測定された水蒸気透過速度は15406g/(m2・日)、2CESに対する透過性は80%の相対湿度で8.37E−05cm/秒であリ、極めて良好な防護と通気性を示した。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は検出の下限以下であった。
実施例8
重量ベースで55%のLupasol PR8515ポリエチレンイミン及び45%のAraldite GY285 ビスフェノール F エポキシの混合物を用い、”基材を有するポリアミンポリマー:処理A”を使用して試料を作成した。被膜量は凡そ18g/m2であった。次いでこの材料を重量ベースで0.75%の塩酸水溶液を用いて、”アミン−酸成分の組み入れ:処理A”によって改変した。求められた水蒸気透過速度は27109g/(m2・日)であり、著しく高い通気性を示した。求められた80%の相対湿度での2CESに対する透過性は5.86E−03cm/秒であった。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は検出の下限以下であった。
【0088】
実施例の全ての試料の風合いは250より少なく、ハンドル−オ−メーターによる風合いの評価後に破損または明らかな損傷を受けることはなかった。加えて全ての試料は5秒より著しく大きなガーレイ値を有していた。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は化学防護被覆に関する。更に詳しくは、本発明は人または内容物を蒸気、エアロゾル、または微粒子の形態の有毒または有害な化学物質から防護するのに使用することが出来る材料及び商品に関する。本発明によって提供された化学防護被覆は、衣類、テント、寝袋、及び類似品のような応用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
化学防護被覆は、外部環境に存在する有害なレベルの化学物質がその使用者または着用者または該材料の内容物に到達するのを防護することを意図する。化学防護衣服は、周囲の環境が個人を有害または有毒化学物質に曝す潜在的な危険を与える可能性が在る時に着用される。歴史的に防護衣類に使用される材料は、防護と快適性とを取引交換せねばならなかった。即ち比較的多くの防護を提供する材料は受け容れ難いほど快適性が欠け、また満足な快適性の在る材料は受け入れ得る防護を提供しなかった。
【0003】
例えば本技術で知られている一つのアプローチは、着用者と危険な環境との間に一般に“非透過性”材料と称される物を介在させることである。このタイプの適当な材料は有害化学物質に対する低い透過性を示し、且つ然も衣服または他の衣料品に使用されるのに十分な柔軟性を有するであろう。このアプローチの例は有害化学物質に対するバリアーとしてブチルゴムを利用する手袋であろう。
【0004】
このような材料はそのような薬剤の通過を著しく制限することによって有害化学物質からの適当な防護を提供することができるけれども、これらの材料はまた特徴として水蒸気の通過を阻止する。水蒸気の透過を大きく阻止する材料は非通気性と名付けられる。非通気性材料は人々の防護被覆として用いられる時、通常汗の蒸発によって行なわれる人体の熱発散プロセスを妨げる。水蒸気の著しい透過、または通気性が無い場合、このような材料を長く使用することは着用者の耐え難い不快及び死さえも招くことになり得る。不快は最初は防護被覆内に溜まる着用者によって生じる高レベルの水分に基因するであろうが、次いで蒸発冷却の欠如のために着用者に熱ストレスが与えられることになる。これは熱射病になり遂には死に到る。このようにこれらのタイプの材料は満足な防護を提供することができるが、一方快適性は不満足である。この非通気性防護被覆材の問題となる特性は、極めて短い時間の使用または限られた被覆面積より多くに対してはそれらの材料を不適性なものにする。反対にかなりの水蒸気透過速度を有する多くの被覆材、例えば多くの織物または不織ポリオレフィン材は、有害または有毒化学物質に対して望ましいレベルの防護を提供しないであろう。即ちこれらのタイプの材料は満足な快適性を提供することができるが、防護は不満足である。
【0005】
防護と快適性の間の交換をより都合のよい関係で対処するために種々の努力がなされてきた。
【0006】
本技術でよく知られている一つのそのような努力は、ブルハー、ブルハー、及びドルイターによる米国特許第4510193号に記述されたように、着用者と汚染環境との間に介在される吸着材の使用を含む。
【0007】
吸着化学防護システムは危険な液体及び蒸気を吸着剤中に吸着させ、このようにしてこのシステムが防護を意図するところにそれらが達するのを禁ずることによって作用する。吸着剤の制限特性は、それらが有する化学物質吸着容量に限界があることである。吸着剤の第二の制限特性は、防護が必要でない化学種までもそれらは差別無く吸着し、このようにしてそれらが防護の提供を意図した化学物質の利用できる吸着容量を減少させることである。
【0008】
吸着システムの限り有る容量及び無差別吸着特性は、それらの使用期間及び貯蔵寿命を制限する。吸着システムは暴露されると大気中に存在する種々の化学蒸気汚染物質を吸着し始め、このようにして時間が経つとその利用できる容量を次第に減少させる。これがその使用期間を制限する。このプロセスは、吸着システムが長期間シールされた包装中に置かれる時にも生じ得る。これがそのような材料の貯蔵寿命を制限する。
【0009】
その上限り有る容量及び無差別吸着特性は、十分なレベルの防護を行ない持続させるために化学防護被覆内に比較的大量の吸着要素を組み入れることを必要とする。これは熱及び水分の移動に対する高い抵抗を有し、且つ着用者に好ましくない生理的ストレスを与える厚くて重いバリアーシステムをもたらす。このように吸着システムもまた防護と快適性間の交換によって制限を受ける。
【0010】
その上嵩や重量の増加もまた包装、貯蔵、取り扱い、及びこれらの材料の輸送に対して望ましくない特性である。
【0011】
満足な快適性と防護を提供する化学防護被覆を創造する更に好ましいアプローチは、選択的透過材の使用に頼るものである。選択的透過能の有る材料は特別の化学種に対して顕著な選択的透過能を示す。このアプローチは、望ましい化学種の透過を促進する一方、望ましくない化学種の通過を制限する防護被覆の創造を可能にする。特に化学防護衣料品にとって、選択的透過材が有毒または有害蒸気に対比し水蒸気に対して選択的透過能を有することは望ましいであろう。即ち水蒸気に対する透過能が有毒または有害蒸気に対する透過能よりも十分に大きいということである。これは快適である一方同時に高度に防護的である防護被服に対する基礎を提供する。
【0012】
選択的透過材の防護機能は化学物質の吸着に依存しないので、それらは吸着システムに固有の制限に束縛されることは無い。十分な持続的な防護を提供するために著しい量と厚さの十分な材料に頼る吸着システムと違って、これらの制限の無い選択的透過材は極めて薄く且つ軽量に作ることが出来る。このことが嵩が遥かに少なく且つより軽量の防護衣服並びにアクセサリーの創造を容易にする。
【0013】
使用される防護被覆材のタイプの如何に拘わらず、防護被覆材は使用に際して異なったしばしば変化する湿度及び温度条件に曝される可能性がある。例えば防護衣料品の着用者は、着用者に与えられる生理的ストレスに依存して防護被覆の内部に変化する量の熱及び水分を発生させる。防護被覆の内部では、条件は気候条件のような自然の動機、または乗物または人口構造物内で見出されるであろうような人により影響される条件のために変化するであろう。このように防護被覆はその使用中に広い範囲の条件に曝されるであろうことが期待されるべきであり、このことはどの防護被覆材の設計及び応用に際しても考慮されなければならない。
【0014】
これらの条件は選択的透過材の性能に影響を及ぼす。好ましい量の高い水蒸気透過性を有する選択的透過材は一般に親水性ポリマーである。そのようなものとしてその水分量はそれを取り巻く相対湿度によって影響される。そのような選択的透過材の周囲の相対湿度が変化すると、選択的透過材中の水分レベルもまた変化するであろう。一般にこれらの材料は、高い相対湿度では多くの化学蒸気に対して比較的透過能が大きく、反対に低い相対湿度では多くの化学蒸気に対する透過能は比較的小さい。それゆえこのような材料が化学防護被覆の応用に用いられる時は、使用中に期待される相対湿度の広い範囲にわたってのこれらの材料の防護特性を考慮することが重要である。特に高い湿度条件における有毒または有害化学物質の透過を考慮することが重要である。穏やかな相対湿度条件で化学蒸気の透過に対して高い抵抗が有ったとしても、高い相対湿度条件での性能を代表するものではない可能性がある。
【0015】
考慮している応用に対しては、有毒または有害化学蒸気に対する透過能を減少すること、特に高い相対湿度において水蒸気の透過の望ましくない減少なしにそれを行なうことが望ましいであろう。同様に特に高い相対湿度において有毒または有害化学蒸気にたいする透過能の望ましくない増加なしに水蒸気の透過を増大させることが望ましいであろう。このように保護被覆において最も有用であるためには、選択的透過材は良好な通気性を提供すると共に、特に高い相対湿度の困難な条件において危険な化学物質に対して低い透過能を提供しなければならない。その上そのような材料の通気性をその防護性能を著しく減少させること無く改良し、且つその防護性能をその通気性を著しく減少させること無く改良することが望ましい。
【0016】
多くの選択的透過材が、これらの応用における一般的使用のために調査されてきた。これらはウルリッヒバウマイスターによるものでアクゾノベルエヌブイ社に譲渡された米国特許第5743775号に記述されたようなセルロースをベースとしたポリマーを使用した各種のフイルム、並びにロイドスチーブンホワイトによるものでダブリュアールグレース社に譲渡された米国特許第5824405号に詳述されたような多孔質ポリアミドを含む。良好な通気性及び危険化学物質に対する良好な抵抗は、ヒューイエスウーによる米国特許第5391426号に記述されたようなポリアルキレンイミン防護材を使用するいくつかの条件の下に達成が可能であることもまた教示されてきた。併しながらこれらの材料の各々の化学物質透過特性は、使用中に遭遇するであろう広い範囲の条件を代表しない比較的低い相対湿度の下で評価されている。これらの材料の性能は、特に高い相対湿度においては、防護と快適性間のその妥協によって制限されるであろう。
【発明の概要】
【0017】
驚くべきことにここに教示されたように、ポリアミンポリマーをベースとした選択的透過性化学防護被覆の性能は、ポリアミンポリマー内にアミン−酸成分を組み入れることによって著しく且つ予想外に高められ得ることが発見された。計らずもその水蒸気透過速度は、特に高い相対湿度において防護の質における対比しての交換なしに著しく改善され得ることが発見された。更に特に高い相対湿度条件における有毒または有害化学物質に対する抵抗が、水蒸気透過における対比しての交換なしに著しく改善され得ることが発見された。そして最も驚くべきことに、高い相対湿度条件においてさえ水蒸気透過速度と有毒または有害化学物質に対する抵抗の両方が同時に改善されて、防護の改善と共に快適性の改善を同時に提供することが出来る選択的透過材をもたらし得るという理想が達成可能であることが発見された。
【0018】
従って広い条件範囲にわたって防護と共に高度の通気性を示す軽量且つ柔軟な選択的透過材を提供することが本発明の一つの目的である。高い湿度条件においてさえ、大量の水蒸気を透過することが出来る一方でまた有毒または有害化学蒸気の通過を十分に制限することが出来る、選択的透過能を有する防護被覆を提供することが本発明の一つの目的である。本発明の化学防護被覆は、水蒸気の透過を通して汗の大量の蒸発を可能にするその能力のために快適である化学防護衣料品に使用が可能であり、現実の使用のシナリオにおいて遭遇の可能性がある広い範囲の応用に適する。
【0019】
この発明の化学防護性で水蒸気透過能のある被覆は、その最も広い態様においてポリアミンポリマーの選択的透過シートから成り、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有する。この材料は実験を通して、2000g/(m2・日)より大きい水蒸気透過速度及び0.02cm/秒より小さいビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する化学防護被覆が得られるように選択且つ調節される。
【0020】
一つの態様において、アミン−酸成分を有するポリアミンポリマーは選択的透過性複合材の一部であり、ここでポリアミンポリマーは、開放小孔基材、閉鎖小孔基材、または無小孔基材であることが出来る水蒸気透過性基材の表面上に本質的に存在する実質的連続層を形成する。
【0021】
本発明の更なる実施態様において、アミン酸−成分を有するポリアミンポリマーは開放小孔基材を有する選択透過性複合シートの一部であり、ここではポリアミンポリマーの少なくとも一部が基材の中に存在する。
【0022】
本発明のもう一つの態様において、化学防護被覆は二つの水蒸気透過性開放小孔ポリテトラフルオロエチレン基材、及びポリアルキレンイミン含有ポリアミンポリマーでアミン−酸成分が特にH2SO4を含みポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%であるポリアミンポリマーから成る。これらの材料は選択透過性複合シートを形成するように作られ、ここでポリアミンポリマーは基材間に存在する実質的連続層を形成し、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が各基材内に存在する。
【0023】
本発明は衣服、手袋、履物、及び類似品のような衣料品として、またはそれらの内部において特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】開放小孔延伸膨張PTFE基材を有するポリアミンポリマー複合材の赤外スペクトルの例を示す。
【図2】硫酸の添加によってアミン−酸成分を組み入れた後の図1と同じ材料の赤外スペクトルの例を示す。
【図3】ポリアミンポリマーシートの実施態様を描写する。
【図4】無小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図5】閉鎖小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図6】開放小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートの実施態様を描写する。
【図7】開放小孔基材上のポリアミンポリマー複合シートのもう一つの実施態様を描写する。
【図8】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在する。
【図9】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在する。
【図10】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの全部が開放小孔基材中に存在し、部分的にそれを充填する。
【図11】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材中に存在し、それを部分的に充填する。
【図12】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図13】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図14】ポリアミンポリマーと開放小孔基材との複合シートのもう一つの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材中に存在し、その空間の殆どを充填する。
【図15】ポリアミンポリマーが二つの開放小孔基材の間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が基材中に存在するが、夫々の基材中には一部ずつ存在する。
【図16】ポリアミンポリマーが二つの開放小孔基材の間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部分が基材の夫々の中に存在する。
【図17】ポリアミンポリマーが開放小孔基材と無小孔基材との間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの殆ど全部が開放小孔基材と共に存在する。
【図18】ポリアミンポリマーが開放小孔基材と無小孔基材との間に在る複合シートの実施態様を描写し、ここではポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材と共に存在する。
【図19】織物層を組み入れた多層積層体の実施態様を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の化学防護被覆は重要な特徴を有し、即ち、ポリアミンポリマーはそのアミンの少なくとも10%をアミン−酸成分として有し、その含まれる酸性種が6.4より小さいpKaを有する。このポリアミンポリマーは化学防護被覆での使用に適した選択的透過シートに形成することが可能である。
【0026】
本発明の実施態様は更にポリアミンポリマーの支持及び保護を与えることができる1個以上の水蒸気透過性基材を組み入れる。これらの実施態様は多孔質基材の使用のみならず、本質的に小孔の無い水蒸気透過基材の使用を含む。多孔質基材は開放小孔基材のみならず閉鎖小孔基材を含み、この発明はポリアミンポリマーの少なくとも一部がそのような開放小孔基材の小孔を少なくとも部分的に充たすように作ることができる実施態様を含む。
【0027】
化学防護被覆は有毒または有害化学物質の通過を実質的に制限する材料または物品を意味し、それらの有害化学物質とそれが防護を意図するものとの間に介在されることを意図する。本発明の化学防護被覆は、特に人、動物、及び植物の防護を意図する。このような材料または物品は、例えばフイルム、裏張り、積層体、毛布、テント、寝袋、サック、履物、手袋、衣服、及び類似品の形態であることが出来る。
【0028】
好ましい化学防護被覆は柔軟であるだろう。柔軟であるということは自由に破損無く曲げるのに十分しなやかであることを意味する。柔軟な材料は化学防護衣料品のような応用に使用するのに潜在的に適性が有るであろう。比較的好ましい柔軟な化学防護被覆は、ハンドル−オ−メーターの測定によって指示されるように、1000より少ない風合いを有し、評価の後に破壊または著しい破損のような明らかな損傷を有しないであろう。最も好ましい柔軟な化学防護被覆は250より少ない風合いを有し、評価の後の破壊または他の著しい破損のような明らかな損傷を有しないであろう。
【0029】
選択的透過性とは、好ましくない化学透過物に比較して、好ましい化学透過物に対して著しく異なった透過性を有することを意味する。好ましい透過物、例えば水蒸気に対する透過性は、好ましくない透過物、例えば有毒または有害化学蒸気に対する透過性に比較して高くなければならない。有用な選択的透過材は、有毒または有害化学蒸気に対する透過性に対して少なくとも5〜10倍大きい水蒸気に対する透過性を有するであろう。50〜100倍の相違または更に500〜1000倍の相違を有する選択的透過材は更に有用である。
【0030】
ポリアミンポリマーは複数のアミンを有するポリマーを意味する。本発明のポリアミン内のアミンのかなりの部分はアミン−酸成分の形態である。
【0031】
アミン−酸成分とは、塩基性であるアミングループと酸グループ間の反応から生じる生成物を意味する。アミン−酸成分は、その生成物がアミングループと酸グループとが相互に一緒にされる時生じるであろう物であるように、いくつかの化学または物理工程の結果の産物であり得よう。このような工程は、これらに限定されるものではないが、次のものが挙げられよう。即ち、ポリアミンポリマーに添加された遊離酸類(例えば硫酸の組み入れ)、または他の反応の結果の生成物または副生成物(例えばアミンのアルキル化とHClの生成をもたらすアミンのクロロアルキル化合物との反応)、またはポリアミンポリマー内における酸性官能価の共有結合付加(例えばそのビニールグループを通してのアクリル酸のポリアミンポリマーに対する反応)等である。
【0032】
酸性種とは、1個以上の酸性官能価を有する分子または化学化合物を意味する。
【0033】
基材とは、選択的透過複合シートを形成する多くの被覆及び積層技術の任意のものによってポリアミンポリマーと組み合わされるシート用材料を意味する。本基材は水蒸気透過性であるであろう。
【0034】
水蒸気透過性とは、少なくとも500g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有することを意味する。
【0035】
複合シートとは、層対層の接触または含浸で、一方が他方上及びまたは他方内に完全にまたは部分的に行なわれるものを有する2個以上の材料の実質的に平面状の結合物を意味する。
【0036】
単一または複数の基材は、ポリアミンポリマーに対する保護及び支持を提供する。単一または複数の基材は、摩損、引き裂き、または突き刺しからのような物理的保護を提供し、またシステムの性能に害または他の悪影響を与える可能性が有る化学物質、特に液体からの保護を提供することが出来る。基材は開放小孔材、閉鎖小孔材、または本質的に小孔の無い材料であることが出来る。
【0037】
開放小孔とは、材料が連続的で相互に連結した小孔、空間、空洞、またはその厚さを少なくとも部分的に貫通する通路を有し、それらは開放していて少なくとも材料の一方の側から接近可能であることを意味する。この接近は開放小孔基材の場合に重要で、ここではポリアミンポリマーの少なくとも一部を基材の小孔内に少なくとも部分的に置くことが望ましい。
【0038】
開放小孔基材はそのような開放していて接近可能な小孔、空間、空洞、または通路を有する任意の適当に多孔質の材料であることができ、例えば織物、不織布、または編物等の布帛、または多孔質ポリマーフイルムが挙げられる。適当な開放小孔ポリマーフイルムには、限定することなく、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、セルロース類、及び類似物の開放小孔フイルムが挙げられる。好ましくは開放小孔基材は、米国特許第4187390号または米国特許第3953566号に教示されているような、小孔を形成する小繊維によって相互に連結された結節から成る延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
【0039】
または基材は本質的に閉鎖小孔材であることができ、閉鎖気泡発砲体または閉塞された表面を有する多孔質フイルムのようなものがあり、これらの内部は多孔質であるが材料の外部から小孔部に対する著しい開口または接近の可能性を有しない。好ましい水蒸気透過性閉鎖小孔材は、ポリエーテルポリエステル類またはポリエーテルポリウレタン類のようなポリエーテルポリマーから成る。或は基材は本質的に小孔の無い材料、即ち目立った多孔性を有しない一般に連続的一体式の材料である。好ましいこのタイプの水蒸気透過性基材は、セルロース類、ポリエーテルポリエステル類、及びポリエーテルポリウレタン類のシートまたはフイルムのような材料である。
更に単一または複数の基材は、複合シートの性質を高める被覆を有することができる。例えば水蒸気透過基材はポリアミンポリマーと基材間の結合を改良しより強いまたはより耐久性の複合材を創る被覆を有することが出来る。或は、例えば水蒸気透過基材は、オイルまたは他の潜在的汚染物質のような物質からポリアミンポリマーを追加的に保護する被覆を有することができる。特に開放小孔基材は米国特許第5539072号に記述されたような被覆膜を使用することが出来る。
【0040】
ポリアミンポリマーは、少なくとも1.0ミリ当量/gのアミン、好ましくは少なくとも2.5ミリ当量/gのアミン、更に好ましくは少なくとも6.5ミリ当量/gのアミンを有する。
【0041】
ポリアミンポリマーのアミンは、アミンが実質的に塩基性で、一般に12より小さいpKbを有し、酸性種と反応する可能性があれば広い範囲の種類のものであり得る。従ってアミド及びイミドのような窒素含有化学物質グループは、それらは実質的に塩基性ではないので排除されるであろうことが理解される。
【0042】
本発明のポリアミンポリマーのそのような塩基性アミンは、例えば第1、第2、または第3アミン、またはそれらの任意の組合せであることが出来、アリル(aryl)、アルキル、アリル(allyl)、またはアルケングループのような種々の他のグループに結合することが出来る。ポリアミンポリマーのアミンはまた二重結合によって炭素原子に結合したイミンであることが出来る。
【0043】
ポリアミンポリマーは種々の物質及びそれらの組合せからのアミンを有することが出来る。ポリアミンポリマーのアミンは、アミングループが直接アルキルグループに結合している繰り返し単位を含むポリアルキルアミン類からのものであることが好ましい。ポリアルキルアミン類はポリビニルアミンのような物質から選ぶことが出来、またより好ましくはポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンのようなポリアルキレンイミン類から選ぶことが出来る。ポリエチレンイミンが最も好ましく、しばしば環状モノマーのエチレンイミン(アジリジン)から生成される繰り返し単位構造(−NR1R2−CH2−CH2−)nを有する。繰り返し単位の数nは任意の正の整数であることが出来、またR1及びR2は夫々水素またはエチルグループを通して結合した記述の繰り返し単位であることが出来る。
【0044】
アミン−酸成分の酸性種はプロトンを与える酸性種であり、6.4より小さいpKaを有する。大気中の二酸化炭素が水分と共に相互反応し、6.4のpKaを有するカルボン酸を形成するであろうことがよく知られている。更にカルボン酸は比較的弱酸であるがアミンと反応すること、及びこの反応は温度及び周囲のCO2や水分濃度によって駆動される過渡現象及び反転現象に依存することがよく知られている。比較的強い酸は概して比較的弱い酸に取って代わることも知られている。これらの理由のために、この発明のアミン−酸成分の酸性種はカルボン酸のものより強い解離定数、即ち6.4より小さいpKaを有する。5以下のpKaを有する酸性種が更に好ましく、また2.5以下のpKaを有する酸性種が最も好ましい。
【0045】
ポリアミンポリマーに対する燐酸の添加によるようなポリアミンポリマーの一部として組み入れられる遊離酸に対しては、pKaは明らかに推測される。例えば燐酸は2.1のpKaを有する酸性種である。多塩基酸である燐酸はまた7.2及び12.7のpkaを有する。ポリアミンポリマーから切り離すことが出来ない酸性種、例えばポリアミンポリマー内に共有結合で束縛されている酸性種に対しては、その酸性種はその種の酸性グループを代表するpKaを有するものと認識されている。例えば若しもカルボン酸が共有結合でポリアミンポリマー内に束縛されたとすると、そのような得られる酸性種のpKaは同様のカルボン酸グループを代表するものであることが判っており、従って3.0〜5.0のpKaを有するであろう。
【0046】
ポリアミンポリマーのアミン−酸成分の酸性種は多塩基の酸性種であることが好ましいであろう。多塩基の酸性種は、例えば硫酸、亜硫酸、燐酸、蓚酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、及びフマル酸が挙げられる。酸性種はまた一塩基であることができる。一塩基の酸性種は例えば塩酸、ピルビン酸、酢酸、及び蟻酸が挙げられる。酸性種はまたポリアクリル酸のようなポリマーであることができる。酸性種はまた、グリオキシル酸のアルデヒドへの反応から得られるもののように、ポリアミンポリマー中に共有結合で束縛されることができる。単一タイプの酸性種を使用することができるが、または二つ以上のタイプの酸性種の組み合わせも使用可能である。
【0047】
好ましい実施態様において、アミン−酸成分は硫酸をポリアミンポリマー中に組み入れることによって作られる。
【0048】
ポリアミンポリマー中のアミン−酸成分の量及び性質は、化学量論的に最もよく決定できる。即ちポリアミンポリマー中のアミン及びポリアミンポリマー中の酸性種は、ポリアミンポリマーの成分及び組成の知識によって理想的に見分けられる。このようにして得られるアミン−酸成分のタイプ及び量は、ポリアミンポリマーを形成するために使用された成分及び反応の理解を通して理想的に決定される。
【0049】
または、ポリアミンポリマーはいくつかの分析技術によって特徴ずけることができ、限定するものではないが、これらの技術には抽出、元素分析、滴定、クロマトグラフィー、質量分光法、赤外線分光法、及び電気誘導カップルプラズマ(ICP)分析が挙げられる。
【0050】
図1は開放小孔延伸膨張PTFE基材を有するポリアミンポリマー複合シートの赤外スペクトルを示す。図2は、硫酸の付加によりアミン−酸成分を組み入れた後の同じ物質を示し、本発明の一つの実施態様を示すものである。
【0051】
多くの例において、強塩基溶液、例えば0.1ノルマルの水酸化ナトリウムの水溶液と接触させることによって、ポリアミンポリマーから酸性種を抽出することができる。次いで抽出剤を有する溶液は公知の技術によって分析され、酸性種のタイプと量を決定することができる。これらの技術として例えばイオンクロマトグラフィー及び化学元素分析が挙げられる。
【0052】
好ましい物質においてはポリアミンポリマー中のアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であろう。公知の滴定法を、アミン−酸成分であるポリアミンポリマー中のアミンの百分率を決定するために、分析技術として使用することができる。全体のアミンの当量は、ポリアミンポリマーをpH=11の水溶液と接触させ、その中で平衡させ、次いでポリアミンポリマーを含む溶液をpH=3まで滴定することによって決定することができる。アミン−酸成分でないアミンの当量は、その材料を純水中で平衡させ、次いでpH=3まで滴定することによって決定することができる。要した酸当量がアミン−酸成分でないアミン当量を示す。全体のアミン当量とアミン−酸成分でないアミン当量との差がアミン−酸成分であるアミンの当量と考えることができる。次いでアミン−酸成分であるアミンの百分率を、アミン−酸当量の全体のアミン当量に対する割合から決定することができる。より好ましい材料ではポリアミンポリマーのアミンの少なくとも40%がアミン−酸成分である。
【0053】
ポリアミンポリマーは架橋されているのが好ましい。不溶性ポリマーの網状構造を作る架橋は、この技術分野で公知の任意の種々の方法によって行なうことができる。一つの方法はポリアミンポリマー中のアミン官能価によって架橋することである。そのようなものとして適した架橋剤は、例えばポリエポキシド類、多塩基エステル類、アルデヒド類、及びアルキルハロゲン化物類から選ぶことができる。好ましい実施態様において、ポリアミンは少なくとも部分的にエポキシド結合によって架橋されている。
【0054】
ポリアミンポリマーは選択的透過性シートまたは層を形成するようにされるが、ある実施態様では、該シートまたは層は少なくとも一つの水蒸気透過基材を有する複合シートの一部であることができる。選択的透過性シートまたは層は実質的に連続体であり、従ってその厚さを貫通する大量の空気流に対して抵抗を有し、該選択的透過性シートを貫通する空気流に対するガーレイ空気抵抗は5秒よりも大きい。
【0055】
ポリアミンポリマーと基材との複合シートにおいて、ポリアミンポリマーは水蒸気透過基材の上または中に部分的にまたは全体に被覆され、または他の方法で該基材に直接取付けられる。ポリアミンポリマーは1〜1000μmの厚さ、より好ましくは5〜100μmの厚さを有するように成形される。基材は概して約0.005mm〜2.0mmの厚さ、好ましくは約0.01mm〜0.1mmの厚さである。
【0056】
好ましい基材は少なくとも4000g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有し、より好ましい基材は少なくとも20000g/(m2・日)の水蒸気透過速度を有する。
【0057】
基材とポリアミンポリマーとの複合シートは一巻きの基材シートを適当なニップロールに供給することによって調製することができ、ここでポリアミンポリマー構成物の混合物が部分的にまたは全体的に基材と接触され、次いでニップを通過させることによって基材に圧し付けられる。或は開放小孔基材であれば、構成物は小孔に対して圧し付けられ、また望まれれば小孔内に圧し込まれる。アミン含有構成物に加えて混合物はまた架橋剤、酸性種、及びまたは可塑剤、充填剤、及び類似物のような構成物を含む追加の加工助剤及び性能助剤を含むことができる。このブレンドの基材に対する塗布率は、どれだけ多くの被覆または層が必要かに依存する。若し適すれば、積層体を加熱することによって架橋が開始し行なわれる。
【0058】
ブレンドはまた流延、吹き付け、押出し等、または実質的に連続のシートまたはフイルムまたは層による二次成形または被覆といった本技術分野で公知の任意の手段によって適用が可能である。
【0059】
次いで酸性種が組み入れられ、或は更にポリアミンポリマーの一部として一体化される。これを都合よく行なうことができる方法は、ポリアミンポリマーを酸性水溶液と必要な時間接触させることである。これは適すれば酸性種がポリアミンポリマーのアミンと反応する導管を提供する溶液で、単一基材または複数基材を飽和または充填することによって容易に行なうことができる。
【0060】
ポリアミンポリマーと単一または複数基材はいろいろな形状に配置することができ、それらの例は図3〜18に図解される。これに加えて布帛のような材料の追加層を防護被覆の一部として一体化する積層体を作り、性能を更に防護または増大させ、さもなくば防護被覆を意図する応用での使用に一層適したものとすることがしばしば有用である。この一つの例が図19に図解される。
【0061】
図3に示すように、ポリアミンポリマー20は独立フイルムに成形することができ、または図4〜14に示すように水蒸気透過基材との複合シートに組み入れることができる。図4、図5、及び図6は、ポリアミンポリマーが無小孔基材21、閉鎖小孔基材22、及び解放小孔基材23の夫々の表面上に本質的に存在する複合シートを描画する。図7はもう一つの実施態様を示し、ここではポリアミンポリマー20が本質的に開放小孔基材23の表面上に存在する。
【0062】
開放小孔基材に対しては、図8〜19に示すようにポリアミンポリマーの少なくとも一部は基材の空間を部分的または全体的に充填するようにすることができる。図8及び図9は夫々、ポリアミンポリマー20の一部が部分的に開放小孔基材23を充填する複合基材を描写する。図11及び図12はポリアミンポリマー20の殆ど全部が開放小孔基材23中に包含され、開放小孔基材を部分的に充填する複合シートを描写する。図12は殆ど全体がポリアミンポリマー20によって大体充填される開放小孔基材23を描写する。図13及び図14は夫々ポリアミンポリマー20の一部によって大体充填される開放小孔基材23の実施態様を描写する。
【0063】
若し望むならば、図15〜19に示すように第二の基材を追加することができる。図15及び図16は夫々ポリアミンポリマー20が開放小孔基材23及び23aの間に含まれる複合シートの実施態様を描写する。図15は開放小孔基材23および23aが殆ど互いに接触するようにされ、その結果ポリアミンポリマー20が完全に夫々の基材内の一部に存在する実施態様を描写する。図16はポリアミンポリマーの一部が開放小孔基材23および23aの夫々に存在するが、基材はそれらの中に存在しない或る厚さのポリアミンポリマーによって切り離される実施態様を描写する。図17及び図18は夫々、ポリアミンポリマー20が開放小孔基材23及び無小孔基材21の間に包含され、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が開放小孔基材内に存在する複合シートの実施態様を描写する。図17はポリアミンポリマー20の殆ど全てが開放小孔基材23内に存在する実施態様を描写し、また図18はポリアミンポリマー20の一部だけが開放小孔基材23内に存在する実施態様を描写する。各描写における無小孔基材の代わりに閉鎖小孔基材または開放小孔基材もまた置き換えて考えることができることは明らかである。
【0064】
このようにしてポリアミンポリマーを水蒸気透過性基材に塗布または被覆させ殆どその表面上に存在させることができることが判る。或は開放小孔基材の場合、ポリアミンポリマーを単一または複数の基材内にその厚さ方向に吸収させ、それもごく僅かまたはポリアミンポリマーが基材内の空間をその厚さ方向に大体充填するようにすることができる。ポリアミンポリマーをそのような開放小孔基材内に完全に存在させることも、またはポリアミンポリマーの一部だけをその中に存在させることもできる。
【0065】
ポリアミンポリマーと水蒸気透過基材のこれらの描写は代表的なものであるが本発明の可能性のある全ての実施態様を示すものではないことは理解される。ポリアミンポリマー、水蒸気透過基材、並びにそれらの複合シートの多層並びに組合せが可能であることが想像される。
【0066】
述べたように、ポリアミンポリマー及びポリアミンポリマーと基材の複合シートを含む積層体に、追加層の材料を組み入れることがしばしば望ましい。これには例えば種々の織物、フェルト、ポリマーのフイルムまたは膜、スクリム、皮革等を挙げることが出来る。
【0067】
ここで使用される積層体は、適当な任意の手段で一緒に集成し、それによって集成体が個々の層が部分的に果すことを全体として遂行するように設計される、同じまたは異なる材料の多層として説明される。
【0068】
積層体の作成に適した手段には、限定されるものではないが、接着剤の分離パターンまたは点接着のような不連続接着で層を集成すること、縫合または他の固定のような機械的取付け、溶融可能なウエブ及び熱可塑性スクリム、積層体の種々の構成材の上または内部への部分的または全体的の直接塗布、またはさもなくば互いに共に機能させることを目的とするような方法で種々の構成材を層にすること等が挙げられる。
【0069】
ポリアミンポリマーを追加の布帛層及び水蒸気透過性基材と共に一体化する積層構造を図19に描写する。この構造においてポリアミンポリマー20は開放小孔基材23及び23aの間に含まれる。この複合材は不連続的に塗布した接着剤24及び24aによって表面布帛25及び支持布帛25aに夫々積層される。接着剤は水分硬化型ポリウレタンのような水分硬化型接着剤であるのが好ましい。接着剤は不連続の点として示されているが、格子、線などの形状であってもよい。接着剤はそれが水蒸気透過性であれば連続的に塗布してもよい。表面布帛は最外層で、一般に自然要素に曝される。それは任意の織物であることが出来るが、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、アクリル、綿、羊毛等で作られた織物が好ましい。それはまた疎水性及び/または疎油性にするように処理することが出来る。支持材は内層で例えば編物、織物または不織布であることができる。布帛は難燃性を賦与するような適当な物質で追加処理することが可能である。
【0070】
勿論布帛または水蒸気透過ポリマー層のような一つ以上の追加層と基材及びポリアミンポリマー層とを組合せる他の積層体の配置が考えられる。
【実施例】
【0071】
基材を有するポリアミンポリマー:処理A
水平に向き合った幅30”、直径8”の2本の反対方向に回転するロールを、1インチの線当り90ポンドの圧で互いに圧し付けた。一本のロールはクロムでもう一本のロールはゴム被覆であった。クロムのロールは60℃に加熱された。公称0.04mmの厚さで75%〜80%の気孔率を有する開放小孔延伸膨張PTFE膜を、ポリマー成分の混合物を導入した谷を形成するロール間のニップに、各ロールの上を通って連続的に供給した。
【0072】
特定されるポリアミンポリマー層の構成成分を、ハンドドリルに取りつけた小さな混合用ブレードを用いて一緒に混合した。次いで混合物を直ちにニップ中に導入した。その混合物は膜の間及び内部に絞り入れられ、次いで赤外線加熱オーブン中に供給され、ここでそれらは凡そ100℃で30秒間加熱されて硬化された。
基材を有するポリアミンポリマー:処理B
このプロセスは“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”と同様であるが、ポリマー成分の十分な混合を確実にするために動的ピンミキサーを使用する。ニューヨークのバズフ社のLupasol PR8515ポリエチレンイミンと、ニューヨークのチバスペシャルティケミカルズ社のAraldite GY285ビスフェノールFエポキシの特定の割合の混合物を連続的に混合室に導入し、ここでこれらの成分はモーター駆動のピンミキサーでブレンドされる。このブレンドは流液口から2本のロールの間のニップに分配され、これらのロールの夫々を通って“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”で記述したように開放小孔延伸膨張PTFEの連続膜が供給される。2部から成るポリマー系の各成分は70℃に予熱される。利用した2本のロールは幅72”で直径10”であった。クロムロールは70℃に加熱され、一方ゴム被覆ロールは25℃に加熱された。ニップ圧は1インチの線当り95ポンドに設定された。ニップを出た複合材は赤外線加熱オーブンに供給され、フイルム温度130℃、滞在時間約45秒でポリマーが硬化された。
アミン−酸成分の組み入れ:処理A
“基材を有するポリアミンポリマー:処理B”で作られた複合シートの8”×12”の試料を切り出した。1リットルの酸水溶液を調製したが、それは説明されるであろう。試料をイソプロピルアルコール(IPA)中に浸し、これによって架橋されたポリエチレンイミンポリマーを囲む開放小孔PTFEが濡らされて充填され、酸性水溶液の酸性種がポリアミンポリマーのアミンに到達する導管が提供された。次いで直ちに試料を酸水溶液中に浸漬し、20分間放置した。次いで試料を取り出して少なくとも24時間空気乾燥し、次いで約32℃、100%の相対湿度で一晩調湿した。
アミン−酸成分の組み入れ:処理B
“基材を有するポリアミンポリマー:処理B”によって作られた85”×11”の試料を切り出し、次いで100〜110℃で1時間真空下で乾燥した。次いで試料をシール遮断が可能な9”×12”の袋の中に入れた。10gのIPAの全量を袋に加えて袋をシールし、袋の中のIPAを手で廻し試料の両側がIPAで浸されるようにした。次いでこの袋に、以下に詳しく述べる規定量の酸を含む20gの水の溶液を加えた。袋をシールし、その袋をその内容物と共に振ったり廻したりして、10分間にわたりその内容物を手で絶えず混合した。次いで試料を取り出して紙タオルで乾かし、15分間実験室のフード内に吊り下げた。試料は次いで真空下に100〜110℃で1時間乾燥した。次いで試料は空気中で約32℃、100%RHにて一晩調湿された。
アミン−酸成分の組み入れ:処理C
試料を直径8”の刺繍用の輪に固定した。集成体の凹んだ側に規定量のIPAを加え、集成体をあちらこちらに傾けて輪の中の試料の全面積が浸るようにした。直ちに重量ベースで2%の硫酸水溶液の規定量を加えた。試料を4分間あちらこちらに傾けて輪の中の試料の全面積がその溶液で処理されるようにした。次いで過剰分を輪から流し出して試料を取り出し、次いで実験室のフード内に吊るして一晩乾燥させた。次いで試料は空気中で約32℃、100%RHにて調湿された。
水蒸気透過速度試験
水蒸気透過速度は(WVTRs)、米国特許第4862730号に記載の方法を使用し、塩として酢酸カリウムを、また水蒸気透過膜に開放小孔延伸膨張PTFEを用いて決定した。これらの膜は公称75%〜80%の気孔率を有し、厚さは約0.04mmであった。周囲を50%の相対湿度で23℃に維持した。水浴は23℃に維持された。
ビス−2−クロロエチルに対する透過性試験
化学物質透過試験及び分析は次のものから改作されたものであり、それらは(1)米国陸軍の試験及び評価指令、試験処理方法8‐2‐501(1997年3月)に要約されたプロトコールである“空気透過性並びに半透過性物質吸収剤/反応剤容量試験(蒸気薬品チャレンジ/蒸気透過)”並びに(2)化学薬品に対する防護衣類システム評価の実験室的方法、CRDC−SP−84010(1984年6月)である。試験はメリーランド州、ゲイサースバーグのジェオメットテクノロジー社で完成された。試験装置及び実験条件の説明は次の通りである。
【0073】
この透過性は一連の試験用小室から成る装置を使用して決定され、それらの小室の中にフイルムまたは積層体試料が置かれる。更に全体の集成体は外部の部屋の中に置かれ、その部屋の温度は32℃に制御される。各小室は普通小室の頂部及び底部と名付けられた上部と下部の区画から成る。両方の半分の小室に入り口と出口が備えられ、小室を貫通し試料表面を横切る気体流の吹付けを与えることを可能にする。これらの気体流の温度は32℃に制御される。これらの気体流の相対湿度は更に詳述する特別の値に制御される。公称0.33μg/cm3の“2CES”と呼ぶビス−2−クロロエチルスルフィド(化学構造Cl−CH2CH2−S−CH2CH2−Cl)を頂部の空気流に導入し、頂部小室を貫通し試験試料を横切って流され試料にチャレンジする。底部の空洞には清浄な空気流が流される。試料を貫通して透過した2CESの蒸気は底部の空気流に流れ込み、下流で固体吸着剤及び液体衝突によって捕捉される。
【0074】
2CESのチャレンジに曝された面積は10cm2である。小室は試料を確実に取り付け、小室からまたは小室の半分の間の漏れを防ぐために十分なリング、プレート、クランプ、及びシールを備える。小室の集成体は全て試験に先立って加圧して洩れ試験をされる。小室の設計は化学薬品に対する防護衣類システム評価の実験室的方法、CRDC−SP−84010の図2.7に記述されたものの拡大変形されたものである。
【0075】
外部の部屋の中の小室内への試料の取り付けが終ると、全ての試料は32℃、相対湿度50%で2時間調湿される。2時間の最初の調湿を終えた後直ちに2CESチャレンジを開始する。分析のための透過した2CESの蒐集に先立って2時間運転して2CESチャレンジに対する暴露下に平衡を確立させる。この平衡期間に次いで分析のための透過2CESの蒐集を開始し、規定の相対湿度と温度の条件下に3時間の間隔で継続する。分析のための3時間の終りに薬剤検知媒体を除去する。固体吸着剤及び衝突器からの液体は、上記の参考資料に記述された比色/蛍光技術によって分析される。透過データは各3時間の試験時間における各試料に対してμg/cm2の単位で報告される。これからμg/cm2/秒で示されたの2CES透過速度または流速が得られる。次いで透過性がチャレンジ濃度に対するこの流速の比によって求められ、cm/秒の単位で報告される。この試験の識別能力及び検出下限は2.79E−05cm/秒であった。
ガーレイ空気抵抗試験
これらの材料を通しての空気流抵抗はダブリュ.アンド エル.イー.ガーレイ アンド サンズ社によって製造されたガーレイデンソメーター(ASTM D726−58)によって評価されたが、これは標準圧円筒、100cm3の空気、及び1平方インチの大きさのオリフィスを使用する。結果は、試料を横切る4.88インチの水の圧力差で、試験材料の1平方インチを通して100cm3の空気が通過するのに要する秒で表わした時間で報告される。
柔軟性:ハンドル−オ−メーター
材料の曲げ易さ及び破壊に対する感受性が、ペンシルバニア州のトゥイング−アルバート インストルメント社によって製造されたハンドル−オ−メーター、モデルNo.211−5を使用して評価された。この装置は平らな壇上の細長い開口を通して試料を無理に曲げ、要した作用力を測定するものである。ここでの評価には1000gの角材を使用し、試料は65%の相対湿度、23℃の条件で試験された。細長い孔は0.25インチの間隔に設定された。使用した試料は長さ3インチ、幅1インチで、試料の長さが細孔を垂直に横切って配向し、細孔の一方の側の上に1インチ出るようにして試験した。結果または風合いは、細穴を通った1インチの幅の試料を押し曲げるのに要する最高の作用力として報告される。試料はその側面の夫々について別の場所で試験し、平均値を求め、その材料の風合いを代表させる。配向方向によって物理的性質が著しく異なる可能性がある材料(例えば織布帛)に対しては、最初のものから90度回転させて追加の試料を取って評価し、その結果を平均してその材料の風合いを得る。
実施例1
重量ベースで55%のLupasol PR8515ポリエチレンイミン及び45%のAraldite GY285エポキシの混合物で“基材を有するポリアミンポリマー:処理A”を使用して試料を作った。被覆量は約18g/m2であった。次いでこの試料の一部を重量ベースで1%の硫酸水溶液を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理A”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0076】
【表1】
【0077】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において1.80倍の増加を、また80%の相対湿度での2CES透過性において6.67倍の減少を示した。これは高い相対湿度においても改良された通気性と共に改良された両方の防護が達せられた例である。50%の相対湿度では2CESに対する透過性は試料の両方共検出の下限或はそれより下であった。
実施例2
重量ベースで65%のポリエチレンイミン及び35%のエポキシの混合物を用い“基材を有するポリアミンポリマ−:処理B”によって試料を作った。被覆量は凡そ16g/m2であった。次いでこの材料の一部を0.59gの85%燐酸水溶液を用いて、“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0078】
【表2】
【0079】
燐酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料はアミン−酸成分の無い試料の水蒸気透過速度の約70%を保持し、一方2CES透過性をアミン−酸成分の無い試料の1.5%より少ない値まで減少させた。これは高い相対湿度においてさえ防護における極めて大きな改良を示し、一方通気性の犠牲の程度は極めて低い例である。50%の相対湿度での2CESに対する透過性は、両方の試料に対して検出の下限以下であった。
実施例3
56gのペンタエチレンヘキサミンの混合物を40gのジメチルフタレートと組合せたが、これらの化学製品は何れもウィスコンシン州のアルドリッチケミカル社から入手した。混合物を約60℃で4時間攪拌した。この組成物を“基材を有するポリアミンポリマ−:処理A”で使用したが、ここで組成物の40gをニューヨーク州のシェルケミカル社から入手した28gのHeloxy68ネオペンチルジグリシジルエーテルと混合した。被覆量は凡そ39g/m2であった。次いでこの材料の一部を6gのIPA及び12gの重量ベースで2%の硫酸水溶液を用いて、“アミン−酸成分の組み入れ:処理C”によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0080】
【表3】
【0081】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において2.24倍の増加を、80%の相対湿度での2CESに対する透過性において2.34倍の減少を示した。これは改良された通気性と同時に改良された防護を示すもう一つの例である。50%の相対湿度での2CESに対する透過性は、両方の試料に対して検出の下限以下であった。
実施例4
重量ベースで50%のオランダのデーエスエムファインケミカルズ社から入手したAstramol(AM)16ポリプロピレンイミン及び50%のAraldite GY285 Bisphenol Fエポキシの混合物を用い、“基材を有するポリアミンポリマ−:処理A”を使用して試料を作成した。被覆量は凡そ23g/m2であった。次いで1.1oz/yd2のポリエステルトリコットニット及び3.0oz/yd2のナイロン平織布帛をエッチ.ビー.ヒュラー社からのRapidex(商標)反応性ホットメルト接着剤HL−9588−Xを使用して不連続の点パターンで材料の相対する側面に取り付けた。接着剤のニット側の被覆は面積で約44%で、接着剤の織布帛側の被覆は面積で凡そ30%であった。この積層体の一部を9gのIPA及び16gの重量ベースで2%の硫酸水溶液を用いて、積層体のニット側を通して“アミン−酸成分の組み入れ:処理C”によって処理した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0082】
【表4】
【0083】
硫酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、水蒸気透過速度において4.60倍の増加を示した。両方の試料とも80%の相対湿度で比較的低い2CES透過性を示したが、アミン−酸性分を有する試料はアミン−酸成分の無い試料に対して、2CESに対する透過性において1.5倍の増加を示したに過ぎなかった。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は、両方の試料とも検出の下限以下であった。
実施例5
重量ベースで55%のポリエチレンイミン及び45%のエポキシの混合物を用い、“基材を有するポリアミンポリマ−:処理B”を使用して試料を作成した。被覆量は約8g/m2であった。次いでこの材料の一部を0.17gの硫酸を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって改変した。この材料の第二の部分を0.26gの硫酸を用いて同じ処理によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0084】
【表5】
【0085】
これらの試料は硫酸改変のレベルの増加と共に水蒸気透過速度が増加することを示したが、2CESに対する透過性の増加は比較的少ないことを示した。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は各試料とも検出の下限以下であった。
実施例6
アミン−酸成分の組み入れの無い実施例5からの材料の試料を0.34gのクエン酸を用いて“アミン−酸成分の組み入れ:処理B”によって改変した。水蒸気透過速度及び2CES透過性を評価した。
【0086】
【表6】
【0087】
クエン酸から得られたアミン−酸性分を組み入れた試料は、アミン−酸成分の無い試料に対して、水蒸気透過速度において1.26倍の増加を示し、80%の相対湿度での2CES透過性において1.67倍の減少を示した。
実施例7
ペンシルバニア州のエア プロダクツ アンド ケミカルズ社、工業化学薬品部門からの、分子量が30000〜60000、固形分が25%と表示された20gのポリ(ビニルアミン)遊離塩基を、重量ベースで25%の硫酸水溶液の8g、硫酸アルミニウム水和物(アルドリッチ社から入手)の25%水溶液の1g、及び0.5gのトリス(2、3−エポキシプロピル)イソシアヌレート(アルドリッチ社から入手)と手で混合した。十分に混合した後、ミリケン社から入手の平方ヤードあたり3.2オンスの、微細デニール繊維ナイロン平織布帛上に、混合物を20ミルの流延バーを使用して流延した。平滑で均一な被膜が得られるようにバーを数回布帛基材を横切って押し引きした。次いでこれを150℃の加熱空気対流オーブン中で15分間硬化させた。次いで試料を凡そ32℃、100%相対湿度で一晩調湿した。被膜は凡そ140g/m2であった。測定された水蒸気透過速度は15406g/(m2・日)、2CESに対する透過性は80%の相対湿度で8.37E−05cm/秒であリ、極めて良好な防護と通気性を示した。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は検出の下限以下であった。
実施例8
重量ベースで55%のLupasol PR8515ポリエチレンイミン及び45%のAraldite GY285 ビスフェノール F エポキシの混合物を用い、”基材を有するポリアミンポリマー:処理A”を使用して試料を作成した。被膜量は凡そ18g/m2であった。次いでこの材料を重量ベースで0.75%の塩酸水溶液を用いて、”アミン−酸成分の組み入れ:処理A”によって改変した。求められた水蒸気透過速度は27109g/(m2・日)であり、著しく高い通気性を示した。求められた80%の相対湿度での2CESに対する透過性は5.86E−03cm/秒であった。50%の相対湿度における2CESに対する透過性は検出の下限以下であった。
【0088】
実施例の全ての試料の風合いは250より少なく、ハンドル−オ−メーターによる風合いの評価後に破損または明らかな損傷を受けることはなかった。加えて全ての試料は5秒より著しく大きなガーレイ値を有していた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンポリマーを有する選択的透過性シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、化学防護被覆。
【請求項2】
少なくとも一つの水蒸気透過性基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該ポリアミンポリマーが事実上該基材の表面上に在る実質的連続層を形成する、化学防護被覆。
【請求項3】
少なくとも一つの水蒸気透過性開放小孔基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該ポリアミンポリマーが実質的連続層を形成し、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が該開放小孔基材内に在る、化学防護被覆。
【請求項4】
防護被覆が少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項2に記載の防護被覆。
【請求項5】
防護被覆が少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項3に記載の防護被覆。
【請求項6】
ポリアミンポリマーが少なくとも6.5ミリ当量/グラムのアミンを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項7】
防護被覆が柔軟であり、風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに1000以下の風合いを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項8】
ポリアミンポリマーがポリアルキルアミンから成る、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項9】
ポリアミンポリマーがポリアルキレンイミンから成る、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項10】
ポリアミンポリマーシートが5〜100μmの厚さを有する、請求項1に記載の防護被覆。
【請求項11】
複合シートのポリアミン部材が5〜100μmの厚さを有する、請求項4または5に記載の防護被覆。
【請求項12】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.002cm/秒以下である、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項13】
水蒸気透過速度が少なくとも4000g/(m2・日)である、請求項12に記載の防護被覆。
【請求項14】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.0002cm/秒以下である、請求項13に記載の防護被覆。
【請求項15】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であり、該成分の酸性種が5.0以下のpKaを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項16】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項17】
基材が開放小孔基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項18】
基材が閉鎖小孔基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項19】
基材が実質的に気孔のない基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項20】
開放小孔基材が延伸膨張PTFEである、請求項5に記載の防護被覆。
【請求項21】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項7に記載の防護被覆。
【請求項22】
請求項7に記載の防護被覆から成る衣料品。
【請求項23】
請求項21に記載の積層体から成る衣料品。
【請求項24】
2個の水蒸気透過性開放小孔延伸膨張PTFE基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る柔軟な化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種がH2SO4であり、該ポリアミンポリマーがポリアルキレンイミンからなり、且つ該基材間に在る実質的連続層を形成してポリアミンポリマーの少なくとも一部が各基材中に存在し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、柔軟な化学防護被覆。
【請求項25】
防護被覆が少なくとも4000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.002cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項26】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.0002cm/秒以下である、請求項25に記載の防護被覆。
【請求項27】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項28】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項29】
架橋がエポキシ結合から成る、請求項28に記載の防護被覆。
【請求項30】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分である、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項31】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも40%がアミン−酸成分である、請求項30に記載の防護被覆。
【請求項32】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項33】
風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに250以下の風合いを有する、請求項24または32に記載の防護被覆。
【請求項34】
請求項33に記載の防護被覆から成る衣料品。
【請求項35】
少なくとも一つの水蒸気透過性開放小孔基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る柔軟な化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が5以下のpKaを有し、該ポリアミンポリマーが実質的連続層を形成してポリアミンポリマーの少なくとも一部が該開放小孔基材中に存在し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.002cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、柔軟な化学防護被覆。
【請求項36】
ポリアミンポリマーが少なくとも6.5ミリ当量/グラムのアミンを有し、ポリアルキレンイミンから成る、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項37】
アミン−酸成分が多塩基である酸性種を含む、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項38】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項39】
選択的透過性複合シートが開放小孔基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれ一部が夫々の基材の中に在る、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項40】
選択的透過性複合シートが閉鎖小孔基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれる、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項41】
選択的透過性複合シートが事実上小孔の無い基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれる、請求項39に記載の防護被覆。
【請求項42】
開放小孔基材が開放小孔延伸膨張PTFEである、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項43】
第二の開放小孔基材が開放小孔延伸膨張PTFEである、請求項39に記載の防護被覆。
【請求項44】
第二の基材がポリエーテルポリマーから成る、請求項40または41に記載の防護被覆。
【請求項45】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項46】
風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに1000以下の風合いを有する、請求項35または45に記載の防護被覆。
【請求項47】
請求項46に記載の防護被覆から成る衣料品。
【請求項1】
ポリアミンポリマーを有する選択的透過性シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、化学防護被覆。
【請求項2】
少なくとも一つの水蒸気透過性基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該ポリアミンポリマーが事実上該基材の表面上に在る実質的連続層を形成する、化学防護被覆。
【請求項3】
少なくとも一つの水蒸気透過性開放小孔基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が6.4より小さいpKaを有し、該ポリアミンポリマーが実質的連続層を形成し、ポリアミンポリマーの少なくとも一部が該開放小孔基材内に在る、化学防護被覆。
【請求項4】
防護被覆が少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項2に記載の防護被覆。
【請求項5】
防護被覆が少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項3に記載の防護被覆。
【請求項6】
ポリアミンポリマーが少なくとも6.5ミリ当量/グラムのアミンを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項7】
防護被覆が柔軟であり、風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに1000以下の風合いを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項8】
ポリアミンポリマーがポリアルキルアミンから成る、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項9】
ポリアミンポリマーがポリアルキレンイミンから成る、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項10】
ポリアミンポリマーシートが5〜100μmの厚さを有する、請求項1に記載の防護被覆。
【請求項11】
複合シートのポリアミン部材が5〜100μmの厚さを有する、請求項4または5に記載の防護被覆。
【請求項12】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.002cm/秒以下である、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項13】
水蒸気透過速度が少なくとも4000g/(m2・日)である、請求項12に記載の防護被覆。
【請求項14】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.0002cm/秒以下である、請求項13に記載の防護被覆。
【請求項15】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であり、該成分の酸性種が5.0以下のpKaを有する、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項16】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項1または4または5に記載の防護被覆。
【請求項17】
基材が開放小孔基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項18】
基材が閉鎖小孔基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項19】
基材が実質的に気孔のない基材である、請求項4に記載の防護被覆。
【請求項20】
開放小孔基材が延伸膨張PTFEである、請求項5に記載の防護被覆。
【請求項21】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項7に記載の防護被覆。
【請求項22】
請求項7に記載の防護被覆から成る衣料品。
【請求項23】
請求項21に記載の積層体から成る衣料品。
【請求項24】
2個の水蒸気透過性開放小孔延伸膨張PTFE基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る柔軟な化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも10%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種がH2SO4であり、該ポリアミンポリマーがポリアルキレンイミンからなり、且つ該基材間に在る実質的連続層を形成してポリアミンポリマーの少なくとも一部が各基材中に存在し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.02cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、柔軟な化学防護被覆。
【請求項25】
防護被覆が少なくとも4000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.002cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項26】
ビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性が相対湿度80%で0.0002cm/秒以下である、請求項25に記載の防護被覆。
【請求項27】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項28】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項29】
架橋がエポキシ結合から成る、請求項28に記載の防護被覆。
【請求項30】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分である、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項31】
ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも40%がアミン−酸成分である、請求項30に記載の防護被覆。
【請求項32】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項24に記載の防護被覆。
【請求項33】
風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに250以下の風合いを有する、請求項24または32に記載の防護被覆。
【請求項34】
請求項33に記載の防護被覆から成る衣料品。
【請求項35】
少なくとも一つの水蒸気透過性開放小孔基材及びポリアミンポリマーを有する選択的透過性複合シートから成る柔軟な化学防護被覆であって、ポリアミンポリマーのアミンの少なくとも25%がアミン−酸成分であり、該アミン−酸成分の酸性種が5以下のpKaを有し、該ポリアミンポリマーが実質的連続層を形成してポリアミンポリマーの少なくとも一部が該開放小孔基材中に存在し、該化学防護被覆は少なくとも2000g/(m2・日)の水蒸気透過速度及び80%の相対湿度での0.002cm/秒以下のビス−2−クロロエチルスルフィドに対する透過性を有する、柔軟な化学防護被覆。
【請求項36】
ポリアミンポリマーが少なくとも6.5ミリ当量/グラムのアミンを有し、ポリアルキレンイミンから成る、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項37】
アミン−酸成分が多塩基である酸性種を含む、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項38】
ポリアミンポリマーが架橋している、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項39】
選択的透過性複合シートが開放小孔基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれ一部が夫々の基材の中に在る、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項40】
選択的透過性複合シートが閉鎖小孔基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれる、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項41】
選択的透過性複合シートが事実上小孔の無い基材である第二の水蒸気透過性基材を有し、ポリアミンポリマーが2個の基材の間に含まれる、請求項39に記載の防護被覆。
【請求項42】
開放小孔基材が開放小孔延伸膨張PTFEである、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項43】
第二の開放小孔基材が開放小孔延伸膨張PTFEである、請求項39に記載の防護被覆。
【請求項44】
第二の基材がポリエーテルポリマーから成る、請求項40または41に記載の防護被覆。
【請求項45】
防護被覆が少なくとも一層の布帛を含む積層体である、請求項35に記載の防護被覆。
【請求項46】
風合い評価の後に何ら著しい損傷なしに1000以下の風合いを有する、請求項35または45に記載の防護被覆。
【請求項47】
請求項46に記載の防護被覆から成る衣料品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−245867(P2011−245867A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−166564(P2011−166564)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2001−543219(P2001−543219)の分割
【原出願日】平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166564(P2011−166564)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2001−543219(P2001−543219)の分割
【原出願日】平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
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