説明

化粧シート

【課題】表面にエンボス加工を施した場合でも熱による光沢変化やエンボス戻りが発生せず、表面の耐溶剤性、耐候性を有し、かつ各層間の密着性にも優れた化粧シートを提供すること。
【解決手段】透明熱可塑性樹脂層が3層以上からなり、透明熱可塑性樹脂層の最上層がフッ化ビニリデン系樹脂からなり、透明熱可塑性樹脂層の中間層がフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の混合樹脂からなり、透明熱可塑性樹脂層の最下層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、車両内装、住設機器や家電製品等の表面化粧等に使用するための化粧シートに関するものであり、特に、例えば玄関引き戸、窓枠、テラス、車庫、アルミ支柱堀等、耐候性や耐水性が必要とされる外装建築部材の表面化粧用として好適な高耐候性の化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の様な各種用途に使用するための化粧シートとしては従来、ポリ塩化ビニル樹脂からなるものが用いられていたが、近年の環境への意識への高まりから敬遠されがちになり、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基材シートの表面に絵柄の印刷を施した着色熱可塑性樹脂層上に、単層あるいは複層の透明なアクリル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層を積層してなる、複層構成の化粧シートが用いられるようになってきた。
【0003】
しかし、前記透明熱可塑性樹脂層にアクリル系樹脂を用いると、表面にエンボス加工を施した場合、熱による光沢変化、エンボス戻りが発生しやすく、又、有機溶剤等により白化、溶解等が発生するなど耐溶剤性の問題があった。一方、透明熱可塑性樹脂層に耐候性を考慮してフッ素系樹脂を用いる場合も考えられたが、着色熱可塑性樹脂層との密着性が充分なものが得られなかった。
【特許文献1】特開2000−326451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、表面にエンボス加工を施した場合でも熱による光沢変化やエンボス戻りが発生せず、表面の耐溶剤性、耐候性を有し、かつ各層間の密着性にも優れた化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、少なくとも着色熱可塑性樹脂層上に透明熱可塑性樹脂層を有する化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂層が3層以上からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の最上層がフッ化ビニリデン系樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の中間層がフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の混合樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の最下層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする化粧シートである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明により、透明熱可塑性樹脂層の最上層の樹脂にフッ化ビニリデン系樹脂を用いることにより表面耐熱性、耐溶剤性を向上させ、中間層の樹脂にフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の混合樹脂を用いることにより、最上層のフッ化ビニリデン系樹脂、及び最下層のアクリル系樹脂との密着性を向上させ、最下層の樹脂にアクリル系樹脂を用いることにより、着色熱可塑性樹脂層との密着性を向上させることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の化粧シートを図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。透明熱可塑性樹脂層10は最上層側から、透明熱可塑性樹脂層の最上層1、透明熱可塑性樹脂層の中間層2、透明熱可塑性樹脂層の最下層3となり、着色熱可塑性樹脂層20はヒートシール層4、絵柄インキ層5、基材シート6、プライマー層7など適宜の構成をとることが可能である。
【0008】
本発明における透明熱可塑性樹脂層の最上層1にはフッ化ビニリデン系樹脂を用いる。具体的にはフッ化ビニリデンの単独重合体若しくはフッ化ビニリデンと共重合可能な単量体との共重合体が使用可能である。共重合可能な単量体としては例えば4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニルなどがある。透明熱可塑性樹脂層の最上層1の厚みは、透明熱可塑性樹脂表面層10の総厚に対して5%〜15%となるのが性能、コストの点で好適である。
【0009】
本発明における透明熱可塑性樹脂層の中間層2にはアクリル系樹脂とフッ化ビニリデン系樹脂の混合樹脂を用いる。具体的にはフッ化ビニリデン樹脂の含有量がアクリル樹脂との合計量中5重量%以上50重量%以下が好適である。フッ化ビニリデン系樹脂の含有量が5重量%未満では前記透明熱可塑性樹脂層の最上層1との層間接着性が下がり、また50重量%を越えると後述する透明熱可塑性樹脂層の最下層3との接着が困難となる。さらに、公知の紫外線吸収剤、光安定剤を適宜添加しても良い。
【0010】
本発明における透明熱可塑性樹脂層の最下層3には、アクリル系樹脂を用いる。具体的にはメタクリル酸メチルの単独重合体若しくはメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体が使用可能である。共重合可能な単量体としては炭素数2〜4のメタクリル酸エステル、アクリル酸ブチルをはじめとする炭素数1〜8のアクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、他のエチレン性不飽和モノマー等がある。また、これら単独重合体や共重合体を合わせて使用することも可能であるし、例えばアクリル系ゴムなどをブレンドすることも可能である。また、公知の紫外線吸収剤、光安定剤を添加しても良い。
【0011】
透明熱可塑性樹脂層10を製造するには、3台以上の押出機を使用したマルチマニホールドダイやフィードブロックを用いた共押出法の他、1台の押出機でどちらかの層を製造しこれに順次押出ラミネートなどにより積層することが可能である。
【0012】
透明熱可塑性樹脂層10の総厚としては、15μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上で120μm以下のものを好適に使用することができる。また、前記最上層1、中間層2、最下層3の比率は任意に選択できるが、製造の安定性から各々の層が5μm以上であることが好ましい。
【0013】
着色熱可塑性樹脂層20において適宜設けるヒートシール層4は、透明熱可塑性樹脂層10と後述する基材シート6の接着性を向上させる目的で設ける。用いるヒートシール剤としてはとしては、アクリル−ポリエステル−塩化酢酸ビニル系樹脂が使用可能である。
【0014】
絵柄インキ層5としては、常用の印刷インキを使用してグラビア印刷等の常用の印刷法により形成すればよい。但し、印刷インキに含まれる顔料、バインダーとしては、耐候性の良いものを選定するのが好適である。また、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性処方を施しても良い。
【0015】
基材シート6としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル(具体的には1、4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂)等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6、6−ナイロン、6、10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、スチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。
【0016】
着色熱可塑性樹脂層20において適宜設けるプライマー層7は、着色熱可塑性樹脂層20と各種化粧板基板とを貼りあわせる際の接着性向上の為に設ける。例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から基材シート6を構成する熱可塑性樹脂に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層7に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層7の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できると共に、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【実施例1】
【0017】
基材シート6として、ランダム重合ポリプロピレン樹脂にヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化鉄(顔料)を含有した厚さ90μmのフィルム(リケンテクノス(株)製「リベストTPO」)を用いた。この基材シート6の表面に、絵柄インキ層5としてバインダー樹脂がポリエステルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を3重量%配合からなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ製造(株)製)を使用してグラビア印刷法により絵柄を印刷した。
【0018】
この絵柄インキ層5の上に、ヒートシール層4としてアクリル−ポリエステル−塩酢ビ系熱接着性樹脂(アクリル/ポリエステル/塩酢ビ=30/30/30)をグラビアコート法により乾燥後の塗布量1.5g/mとなるように塗工し形成した。
プライマー層7としてバインダー樹脂がポリエステルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を3重量%配合からなる2液硬化型ウレタン樹脂系プライマー(東洋インキ製造(株)製)を使用してグラビア印刷法によりプライマーを塗工し、着色熱可塑性樹脂層20を作製した。
【0019】
透明熱可塑性樹脂層10の最上層1として、ポリフッ化ビニリデン樹脂(エルフ・アトケム・ジャパン社製「KYNAR720」)を厚み5μmとし、透明熱可塑性樹脂層10の中間層2としてとして、ポリフッ化ビニリデン樹脂30重量%、ポリメチルメタクリレート樹脂(クラレ社製「GR−F5」)70重量%を混合した樹脂を厚み5μmとし、透明熱可塑性樹脂層10の最下層3として、ポリメチルメタクリレート樹脂99重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量%配合、ヒンダードアミン系光安定剤0.5重量%に配合し厚み40μmとして、この3層をマルチマニホールドダイを用いた共押出法にて積層し、透明熱可塑性樹脂層10を作製した。
【0020】
着色熱可塑性樹脂層20と透明熱可塑性樹脂層10を熱ラミネート法により貼り合わせ、化粧シートを作製した。
【0021】
<比較例1>
透明熱可塑性樹脂層10をアクリル樹脂の単層樹脂シート(三菱レイヨン(株)製「HBS001」厚み50μm)にした以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0022】
<比較例2>
透明熱可塑性樹脂層10を2層構成とし、最上層として、ポリフッ化ビニリデン樹脂を厚み5μm、内側層をポリメチルメタクリレート樹脂99重量%、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5重量%配合、ヒンダードアミン系光安定剤0.5重量%に配合し、この2層をマルチマニホールドダイを用いた共押出法にて積層し、透明熱可塑性樹脂層10を作製した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0023】
<性能比較>
以上のように作製した実施例1および比較例1、比較例2の化粧シートについて、厚み1.5mmのアルミ板に隙間間隔70μmのアプリケーターにて2液ウレタン樹脂接着剤(乾燥後の塗布量約30μm)を塗工して直径125mm幅200mmのハンドゴムローラーにて積層して24時間室内放置して養生して化粧材を得て試験片とした。
【0024】
<性能試験>
ダイプラウィンテス製メタルウェザーによる耐候性試験を実施した。試験条件は、照度65mW/cm、ブラックパネル温度53℃、LIGHT照射時条件(53℃/70%RH/20時間)、DEW結露条件(30℃/98%RH/4時間)、LIGHTの後に30秒シャワーの1サイクル24時間である。21サイクル(504時間)実施し、表面状態を観察した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の化粧シートは特に玄関引き戸、窓枠、テラス、車庫、アルミ支柱堀等、耐候性や耐水性が必要とされる外装建築部材の表面化粧用として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1…透明熱可塑性樹脂層の最上層
2…透明熱可塑性樹脂層の中間層
3…透明熱可塑性樹脂層の最下層
4…ヒートシール層
5…絵柄インキ層
6…基材シート
7…プライマー層
10…透明熱可塑性樹脂層
20…着色熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色熱可塑性樹脂層上に透明熱可塑性樹脂層を有する化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂層が3層以上からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の最上層がフッ化ビニリデン系樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の中間層がフッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の混合樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層の最下層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする化粧シート。


【図1】
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【公開番号】特開2010−82826(P2010−82826A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251363(P2008−251363)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】