説明

化粧品材料及びその製造方法

【課題】紫外線や環境ホルモンに対する人体の保護機能に優れ、安全性も極めて高く、したがって、機能性と安全性を両立させることができる化粧品材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線、特に紫外線UV−B(315〜280nm)を効果的に遮蔽することができる核酸を主成分とする粒子状のゲル状物質、更にはゲル状物質に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなる金属化合物粒子を分散してなる複合体を化粧品原料として提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品材料及びその製造方法に関し、特に、紫外線や環境ホルモンに対する人体の保護機能に優れ、安全性も極めて高く、よって、機能性と安全性を両立させることができる化粧品材料、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の変化によりオゾン層が破壊されつつあるために、低波長領域の紫外線が地表にまで到達することによる生体への影響が懸念されている。
紫外線は、波長によりUV−A(400〜315nm)、UV−B(315〜280nm)、UV−C(280nm未満)の3つの波長帯域に分類される。これらの紫外線のうちオゾン層破壊が特に問題となるのは、紫外線UV−Bである。
近年においては、この紫外線UV−Bの強度が変動した場合の生物に対する影響についての研究が進み、例えば、植物では光合成が抑制され、動物では日焼けが増す等が指摘されている。また、この紫外線UV−Bの波長帯域は核酸の吸収波長帯と重なるために、この核酸に所定の強度以上の紫外線を照射した場合、核酸が変異する等の甚大な被害を蒙る可能性があることが懸念されている。
【0003】
そこで、このような紫外線による被害を防ぐ目的で、紫外線を遮蔽する様々な日焼け止め化粧品が提案され、実用に供されている。これらの日焼け止め化粧品は、紫外線を吸収あるいは反射する材料を含有しているもので、紫外線吸収材料や紫外線反射材料として現在最も多く使用されているものは、有機系の紫外線吸収剤や無機材料微粒子である(特許文献1、2)。
一方、化粧品の皮膚透過性は、皮膚の構造と関連付けて理解されており、化粧品の材料を微細化した場合、この微細な材料が皮膚から吸収され易くなることが指摘されている(非特許文献1)。
【0004】
皮膚を構成する角質層は、角質細胞間脂質と称される脂質により構造的に支えられている。また、経皮吸収は、皮膚表面に塗付された物質が角質層を経て真皮の中にある毛細血管に入ったり、皮下組織に浸透したりする現象である。これらの点によれば、物質の大きさが細胞間の間隙程度の大きさである40nm〜60nmより小さくなると、皮膚透過性が急に高まると考えられている。また、細胞を結合している脂質成分に溶解し易い材料は、皮膚透過性が高いと考えられている。
【特許文献1】特開平8−53568号公報
【特許文献2】特開平9−208927号公報
【非特許文献1】ティンクル.S.S.、「スキン アズ ア ルート オブ イクスポウジャ アンド センズィティゼーション イン クロニック ベリリウム ディズィーズ」、インヴァイアロンメンタル ヘルス パスペクティヴズ、2003年、第111号、p.1202−1208(Tinkle, S. S., "Skin as a Route of Exposure and Sensitization in Chronic Beryllium Disease", Environmental Health Perspectives, 2003, No.111, p.1202-1208)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の化粧品では、紫外線吸収材料や紫外線反射材料として有機系の紫外線吸収剤や無機材料微粒子が用いられているために、これらの材料の中には、人体に吸収されることが好ましくないものもあり、したがって、より安全な紫外線遮蔽材料の開発が望まれている。
また、近年、環境ホルモンと呼ばれる内分泌撹乱物質による人体への影響が懸念されている。この環境ホルモンは「生体の恒常性、生殖、発生あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、結合、そしてそのホルモン作用そのもの、あるいはクリアランス、などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質」と定義されており、特に問題になっている脅威は、生殖や発育への影響であり、この環境ホルモンから人体を守る対策が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、紫外線や環境ホルモンに対する人体の保護機能に優れ、安全性も極めて高く、したがって、機能性と安全性を両立させることができる化粧品材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、化粧品材料について改良すべく鋭意検討を行った結果、核酸を成分とするゲル状物質を含有することとすれば、核酸を成分とするゲル状物質が、紫外線、特に紫外線UV−B(315〜280nm)を効果的に遮蔽することができ、さらに、環境ホルモンを取り込むことで、環境ホルモンから人体を保護することができ、しかも、核酸自体が生体を構成する物質であることから、生体に対する適合性に富み、安全性も高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の化粧品材料は、核酸を成分とするゲル状物質を含有してなることを特徴とする。
【0009】
前記ゲル状物質中に金属化合物粒子を分散してなる複合体としたことが好ましい。
前記金属化合物粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなることが好ましい。
前記ゲル状物質の大きさは、20nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
前記ゲル状物質は極性溶媒を含むことが好ましい。
【0010】
前記金属化合物は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記金属酸化物は、紫外線遮蔽機能を有することが好ましい。
紫外線遮蔽機能を有する前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記ゲル状物質の含有率は、1質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の化粧品材料の製造方法は、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする溶液作製工程と、この溶液に、加熱処理、ゲル化剤添加のいずれか一方または双方を施して核酸を成分とするゲル状物質を生成するゲル状物質生成工程とを有することを特徴とする。
【0012】
前記溶液作製工程は、前記溶液に金属化合物粒子を分散させて分散液とする工程であることが好ましい。
前記金属化合物粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧品材料によれば、核酸を成分とするゲル状物質を含有したので、紫外線、特に紫外線UV−Bを効果的に遮蔽することができる。また、ゲル状物質中の核酸が環境ホルモンを取り込むことで、環境ホルモンから人体を保護することができる。さらに、核酸自体が生体を構成する物質であるから、生体に対する適合性に富んだものとすることができ、安全性も高めることができる。
さらに、このゲル状物質中に金属化合物粒子を分散して複合体とすれば、紫外線UV−Bを含む広い波長帯域の紫外線に対する紫外線遮蔽性能を高めることができる。
以上により、化粧品としての機能性と安全性を両立させた化粧品材料を安価に提供することができる。
【0014】
本発明の化粧品材料の製造方法によれば、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする溶液作製工程と、この溶液に、加熱処理、ゲル化剤添加のいずれか一方または双方を施して核酸を成分とするゲル状物質を生成するゲル状物質生成工程とを有するので、紫外線、特に紫外線UV−Bを効果的に遮蔽することができ、環境ホルモンから人体を保護することができ、生体に対する適合性に富んだものとすることができ、安全性も高めることができる化粧品材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の化粧品材料及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1実施形態の化粧品材料の断面構造を示す模式図であり、図において、1は化粧品材料の成分である核酸を成分とする粒子状のゲル状物質である。
【0017】
本実施形態の化粧品材料は、化粧品の基材中に、核酸を成分とするゲル状物質1を1質量%以上かつ90質量%以下、好ましくは3質量%以上かつ80質量%以下含有した化粧品材料である。
この化粧品材料では、核酸を成分とするゲル状物質1の含有率を上記の範囲内としたことにより、ゲル状物質に含まれる核酸に由来する紫外線遮蔽機能と、ゲル状物質1の有する機械的強度を両立させることができる。
【0018】
このゲル状物質1の大きさ、すなわち平均粒子径は20nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
特に、ゲル状物質1の平均粒子径を細胞間の間隙程度の大きさである40nm〜60nm以上とすれば、皮膚透過性が抑制し易くなるので好ましい。
また、ゲル状物質1の平均粒子径が100μm以下が好ましい理由は、化粧品としての美観を有する皮膜が形成し易いからである。
なお、ゲル状物質1が板状体あるいは柱状体の場合、最も長い一辺の長さの平均値をもってゲル状物質1の大きさと定義する。
【0019】
ここで、ゲル状物質1とは、架橋構造を有する物質のことであり、生体を維持する上で必要不可欠な物質である核酸を成分とするゲル状の物質である。
核酸の種類としては、特に制限はなく、デオキシリボ核酸(DNA)、あるいはリボ核酸(RNA)が挙げられ、これらは、1種類のみの単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0020】
この核酸は、リン酸と結合するペントース(デオキシリボースまたはリボース)の種類によりDNAかRNAかが決定され、このDNAあるいはRNAは、ペントース(デオキシリボースまたはリボース)と結合する塩基の種類によりヌクレオチドの構造単位が決定され、この塩基の種類の異なる複数種のヌクレオチドの配列によりその基本的な構造が決定される。
【0021】
これらの塩基の構造式を下記に示す。なお、構造式中のRは、アルキル基または水素原子を示している。
なお、ここで用いられる核酸の種類、すなわちヌクレオチドの構造単位及びその配列に特に制限はない。
ただし、核酸の紫外線吸収特性は核酸を構成している塩基の種類により異なるので、塩基の種類を変えて核酸の紫外線吸収特性を変化させてもよい。
【0022】
【化1】

【0023】
ここでゲル状物質の成分を核酸とした理由を説明する。
まず第1に、核酸の紫外線吸収スペクトルがオゾン層により吸収される紫外線のスペクトルと類似しているために、紫外線、特に紫外線UV−Bを効果的に遮蔽することができるからである。
図2は、オゾン層及びDNAそれぞれの紫外線の吸収断面積を示す図であり、DNAの吸収断面積がオゾン層のそれに類似しており、特に紫外線UV−B(315〜280nm)を遮蔽する目的に適していることが分かる。
【0024】
第2に、核酸が可視光線を吸収しないために、可視光線に対して透明な紫外線遮蔽材料を作製することができるからである。
第3に、核酸が環境ホルモンを取り込み易いために、人体を環境ホルモンから保護することができるからである。
第4に、核酸自体が生体を構成する物質であるから、生体に対する適合性に富み、したがって、安全性も高めることができるからである。
【0025】
ゲル状物質の成分である核酸を作製する方法については、特に制限は無いが、例えば、天然物として産出する材料を用いれば、化学合成品と比べて簡単な方法で作製することが可能であるので、製造する方法としては好ましい。この具体的な方法については、後述する実施例により詳細に説明する。なお、天然物として産出する材料としては、例えば、魚類の白子等から抽出する核酸が挙げられる。
【0026】
このゲル状物質は、上述したゲル状物質を単独、または2種以上を組み合わせ、あるいはその一部として含有することが好ましい。その理由は、これらのゲル状物質が生体を構成するものであるから、より生体に対する適合性に富んでおり、しかも安全性の高い化粧品材料を作製する目的に適しているからである。
【0027】
このゲル状物質は、極性溶媒を含有することが好ましい。脂質が極性溶媒に溶解し難い性質を利用して、セラミドなどの細胞を結合している脂質成分に対する溶解性を抑制するためである。極性溶媒のなかでも、水は生体を構成する物質であるから、極性溶媒として最も好ましい。
その理由は、水は典型的な親水性物質でありかつ非脂溶性であるために、経皮吸収され難いからである。また、ゲル状物質が水を含有していることが好ましい理由は、肌に対する保湿効果が期待されるからである。
なお、化粧品材料としての取り扱う上での利便性、及びその他の理由から、乾燥状態で販売および保存して用いることもできる。
【0028】
「ゲル状物質の製造方法」
本実施形態の化粧品材料の製造方法は、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする溶液作製工程と、この溶液に、加熱処理、ゲル化剤添加のいずれか一方または双方を施して核酸を成分とするゲル状物質を生成するゲル状物質生成工程とを有する方法である。
この方法では、生成されたゲル状物質の機械的強度を高めるために、紫外線等の放射線を照射することもできる。
【0029】
まず、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする。
この核酸またはその前駆体の具体的な例としては、魚類の精巣、哺乳類や鳥類の胸腺から得られるDNAが挙げられる。
魚類の精巣から得られるDNAとしては、サケの白子(精巣)由来のDNAや大腸菌由来のDNAが、DNAゲルの材料として品質およびコストの面から好ましい。
また、哺乳類や鳥類の胸腺から得られるDNAとしては、ニワトリやウシ、ブタの胸腺から得られるDNA、あるいは合成のオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドが挙げられ、DNAゲルの材料として好ましいものである。
一方、RNAの例としては、酵母由来のRNAが挙げられる。
【0030】
溶媒としては、例えば、水や有機溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類、フェノール類、エステル類、ケトン類、グリコール類、芳香族化合物等が挙げられる。
【0031】
これらの前駆体は、補助成分として合成高分子を含有してもよい。このような合成高分子の具体的な例としては、(ポリ)ビニルアルコール、(ポリ)グリコール、(ポリ)エチレングリコールジアクレート、(ポリ)ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、(ポリ)アクリルアミド、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)アクリロニトリル、(ポリ)エチレンイミン、エトキシル化(ポリ)エチレンイミン、エトキシル化(ポリ)アリルアミン、ポリペプチド、及びこれらのモノマー、オリゴマー、マクロマー、コポリマー、あるいはその他の誘導体を含めた種々のポリマー等が挙げられる。なお、人体に対して無害な界面活性剤を含有してもよい。
【0032】
上記の溶液を20℃〜30℃に加熱、またはゲル化剤を100mM〜1M添加した後に撹拌・混合し、微粒子状に凝固させる。
また、上記の溶液を100mM〜1Mのゲル化剤水溶液に滴下または混合することにより、1mm以上の大きさのゲル状物質を作製することができる。このゲル状物質は、フードプロセッサ等で微粒子化することも可能である。
この場合、W/Oエマルションを生成してからゲル状物質を作製してもよい。
ゲル化剤としては、塩化カルシウム、塩化アルミニウム等の多価カチオンが挙げられる。これらのゲル化剤は、1種類のみ用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
この方法により、目的とするゲル状物質を容易かつ低コストにて作製することができる。
【0033】
このゲル状物質1の形状に特に制限はないが、その形状を制御することによって一定の効果が得られることが期待される。
すなわち、球状の場合には、化粧料の伸びおよび滑りを一層改善する効果がある。また、板状の場合には、透明性と粒子による被覆性能を高めることができる。
【0034】
「第2の実施形態」
図3は、本発明の第2実施形態の化粧品材料の断面構造を示す模式図であり、図において、11は化粧品材料の成分である粒子状の複合体であり、紫外線遮蔽材料である金属化合物粒子12を核酸を成分とするゲル状物質13中に分散した構成である。
【0035】
本実施形態の化粧品材料は、化粧品の基材中に複合体11を1質量%以上かつ90質量%以下、好ましくは3質量%以上かつ80質量%以下含有した化粧品材料である。
この化粧品材料では、複合体11の含有率を上記の範囲内としたことにより、金属化合物粒子12及び核酸を成分とするゲル状物質13に由来する紫外線遮蔽機能と、複合体11としての機械的強度を両立させることができる。
【0036】
この複合体11の大きさ、すなわち平均粒子径は、20nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
特に、複合体11の平均粒子径を細胞間の間隙程度の大きさ40nm〜60nm以上とすれば、皮膚透過性が抑制し易くなるので好ましい。
また、複合体11の平均粒子径が100μm以下が好ましい理由は、化粧品としての美観を有する皮膜が形成し易いからである。
なお、複合体11が板状体あるいは柱状体の場合、最も長い一辺の長さの平均値をもって複合体11の大きさと定義する。
【0037】
金属化合物粒子12は、紫外線、特に紫外線UV−Aを効果的に遮蔽することができる金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましい。
金属酸化物としては、紫外線UV−Aの波長帯域に吸収帯を有しかつ安全性が高い金属酸化物が好適である。このような金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。その理由は、これらの酸化物が人体に有害な紫外線UV−Aを遮蔽する性質を有しているので、核酸を成分とするゲル状物質13と組み合わせることにより、効果的な紫外線遮蔽材料となるからである。
【0038】
一般に、金属化合物の多くは紫外線UV−A及びUV−Bの波長帯域に属する紫外線を遮蔽する目的に適しているが、可視光線を吸収ないし散乱することがあり、したがって、金属化合物を大量に含む化粧品材料を皮膚に塗布した場合に、透明感が損なわれた塗膜となり、美観を損なうことがある。このような場合、透明性を保つために金属化合物の使用量を制限する必要があり、紫外線遮蔽性の観点からは好ましくない場合がある。
【0039】
一方、本発明においては、核酸を成分とするゲル状物質13が紫外線UV−Bの波長帯域に属する紫外線遮蔽性能を有するので、透明性を保つために金属化合物粒子12の含有率を少なくした場合であっても、危険な紫外線UV−Bの波長帯域に属する紫外線を遮蔽する性能を高めることができる。
【0040】
この金属化合物粒子12を核酸を成分とするゲル状物質13中に分散させた場合の二次粒子径(分散粒子径)は、可視光線に対する透明性を確保するためには、300nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下である。
その理由は、金属化合物粒子12の粒子径が300nmを超えると、透明性が著しく損なわれ、化粧品として美観に優れたものが得られないからである。
ここで、金属化合物粒子12の二次粒子径(分散粒子径)が300nm以下のときに透明性が高くなる理由は、屈折率の異なるゲル状物質13中における分散粒子の散乱現象及びナノ粒子の自由電子の働きによるものと考えられる。
【0041】
そこで、金属酸化物として酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を選択し、この金属化合物粒子12の化粧品材料11中の分散粒子径を100μm以下、より好ましくは30nm以下とすれば、化粧品材料11が透明性および紫外線遮蔽機能を有するものとなる。
この他に好ましい金属酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化鉄(ベンガラ、鉄黒等)、酸化ジルコニウム等、通常の化粧料原料として用いられるものが挙げられる。
金属窒化物としては、窒化ホウ素等が挙げられ、また、金属炭化物としては、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0042】
この金属化合物粒子12は、図4に示すように、その表面に、人体に対して安全性が高くかつ化粧品材料に適している物質、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種からなる被覆層21が形成されていることが好ましい。ここで、酸化アルミニウム/酸化ケイ素とは、酸化アルミニウムを5質量%以上かつ95質量%以下含み、残部が酸化ケイ素及び不可避不純物からなる酸化アルミニウムと酸化ケイ素の混晶のことである。
【0043】
ここで、被覆層21を構成する物質として、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれかとした理由は、これらの物質が金属化合物粒子12からの金属イオンの溶出を防止するとともに、ゲル状物質13及び金属化合物粒子1に対する親和性を高めて分散されやすくするためである.
【0044】
この被覆層21の厚みは、金属化合物粒子12の表面を十分に覆うことを考慮すると、0.2nm以上かつ30nm以下が好ましく、より好ましくは0.3nm以上かつ10nm以下である。
ここで、被覆層21の厚みを上記の範囲に限定した理由は、厚みが0.2nm未満であると、被覆効果を得ることが難しいからであり、一方、厚みが30nmを超えると、粒子径が大きくなり、光の散乱により光学特性が損なわれるからである。
【0045】
核酸を成分とするゲル状物質13は、架橋構造を有する物質のことであり、生体を維持する上で必要不可欠な物質である核酸を成分とするゲル状の物質である。
この核酸を成分とするゲル状物質13は、第1実施形態の核酸を成分とするゲル状物質と全く同様であるから、説明を省略する。
【0046】
この複合体11における金属化合物粒子12の含有率は、複合体11全体量に対して0.5質量%以上かつ90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以上かつ88質量%以下である。
その理由は、金属化合物粒子12の含有率が0.5質量%未満では、金属化合物粒子12の複合体11中に占める含有量が少なすぎてしまい、この金属化合物粒子12が有する機能を十分に発揮させることが難しくなり、したがって、複合体11の配合設計が極めて難しくなるからであり、一方、金属化合物粒子12の含有率が90質量%を超えると、金属化合物粒子12の量が多すぎてしまい、複合体11の機械的強度を確保することが難しくなるからである。
【0047】
この複合体11における金属化合物粒子12の含有率を上記の範囲とすることで、紫外線UV−A及びUV−Bの波長帯域に属する紫外線遮蔽性能を効果的に発現し、特に危険な紫外線UV−Bの波長帯域に属する紫外線を遮蔽する性能を高めることができる。
【0048】
この複合体11は、水を含有していることが好ましい。その理由は、水が典型的な親水性物質であり、しかも非脂溶性であるために、経皮吸収され難いからである。また、水を含有していることが好ましい他の理由は、肌に対する保湿効果が期待されるからである。もちろん、製品を取り扱う利便上、あるいはその他の理由から、乾燥状態で販売および保存して用いることもできる。
【0049】
この複合体11の形状に特に制限はないが、その形状を制御することにより一定の効果が得られることが期待される。例えば、球状の場合、化粧料の伸び、および滑りを一層改善する効果がある。また、板状の場合、透明性と粒子による被覆性能を高めることができる。
【0050】
「化粧品材料の製造方法」
本実施形態の化粧品材料の製造方法は、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させた溶液に金属化合物粒子を分散させて分散液とする工程と、この分散液に、加熱処理、ゲル化剤添加のいずれか一方または双方を施して核酸を成分とするゲル状物質を生成するゲル状物質生成工程とを有する方法である。
【0051】
まず、核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする。
この核酸またはその前駆体の具体的な例としては、魚類の精巣、哺乳類や鳥類の胸腺から得られるDNAが挙げられる。
魚類の精巣から得られるDNAとしては、サケの白子(精巣)由来のDNAや大腸菌由来のDNAが、DNAゲルの材料として品質およびコストの面から好ましい。
また、哺乳類や鳥類の胸腺から得られるDNAとしては、ニワトリやウシ、ブタの胸腺から得られるDNA、あるいは合成のオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドが挙げられ、DNAゲルの材料として好ましいものである。
一方、RNAの例としては、酵母由来のRNAが挙げられる。
【0052】
溶媒としては、例えば、水や有機溶媒が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類、フェノール類、エステル類、ケトン類、グリコール類、芳香族化合物等が挙げられる。
【0053】
次いで、この溶液に金属化合物粒子12を分散させて分散液とする。
この分散液では、ゲル状物質13中における金属化合物粒子12の二次粒子径(分散粒子径)を300nm以下、より好ましくは100nm以下に制御するためには、出発原料である金属化合物粒子の一次粒子径を100nm以下に制御する必要がある。
この金属化合物粒子12としては、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子及び金属炭化物粒子の群から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましく、金属酸化物粒子としては、例えば、紫外線遮蔽材料として優れた酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0054】
このような金属化合物粒子12は、例えば、特開平2−311314号公報に記載された「超微粒酸化亜鉛の製造方法」に準じて作製することができる。
この方法では、亜鉛の酸性塩と酢酸アンモニウムの混合溶液に硫化水素を通じ、得られた沈殿物から可溶塩を除去し、次いで、この沈殿物を非水溶媒に分散した後、これをオートクレーブにて250〜400℃にて加熱してガス分を除去し、その後、得られた乾燥粉を500〜800℃にて加熱処理することにより、酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0055】
この方法を準用することにより、酸化アルミニウム、酸化セリウム等の金属酸化物は、金属の酸性塩と酢酸アンモニウムの混合溶液に硫化水素を通じ、得られた沈殿物から可溶塩を除去し、次いで、この沈殿物を非水系溶媒に分散した後、これをオートクレーブにて250〜400℃にて加熱してガス分を除去し、その後、得られた乾粉を500〜800℃にて加熱処理することにより、得ることができる。
また、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子についても上記の方法を準用することにより、得ることができる。
以上により、一次粒子径が100nm以下、好ましくは10nm以下の金属化合物粒子12を得ることができる。
【0056】
なお、この金属化合物粒子12の表面に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種からなる被覆層を形成する場合、この金属化合物粒子12を、アミノシラン、メルカプトシラン、グリシドキシシラン、メタクリロキシシラン等のシランカップリング剤を用いて表面修飾し、その後、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸アルカリ溶液あるいは金属アルコキシド溶液中に浸漬し、金属化合物粒子12表面に被覆層を形成する方法が採られる。
【0057】
上記のシランカップリング剤としては、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β―アミノエチル)−γ―アミノプロピルメトキシシラン、N−(β―アミノエチル)−γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルジメトキシシラン等を例示することができる。
【0058】
被覆層が酸化ケイ素の場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子12をシリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンプロポキシド等のシリコンアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子12の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてシリコンアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子12の表面に酸化ケイ素からなる被覆層が形成される。
【0059】
被覆層が酸化アルミニウムの場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子12をアルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子12の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてアルミニウムアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子12の表面に酸化アルミニウムからなる被覆層が形成される。
【0060】
被覆層が酸化アルミニウム/酸化ケイ素の場合、シランカップリング剤により表面修飾した金属化合物粒子12を、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシド、及びシリコンメトキシド、シリコンエトキシド、シリコンプロポキシド等のシリコンアルコキシドを含む溶液中に浸漬することにより、金属化合物粒子12の表面にあるシランカップリング剤のシラノール基(−SiOH)上にてアルミニウムアルコキシド及びシリコンアルコキシドの加水分解反応や縮重合反応が行われ、この金属化合物粒子12の表面に酸化アルミニウム/酸化ケイ素の混晶からなる被覆層が形成される。
この被覆層の厚みは、被覆層を形成する際の溶液の温度及び浸漬の時間を制御することにより、所望の厚みに制御することが可能である。
【0061】
次いで、上記の分散液を20℃〜30℃に加熱、またはゲル化剤を100mM〜1M添加した後に撹拌・混合し、微粒子状に凝固させ、複合体11とする。
ゲル化剤としては、塩化カルシウム、塩化アルミニウム等が挙げられる。これらのゲル化剤は、1種類のみ用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
この方法により、目的とする複合体11を容易かつ低コストにて作製することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
(ゲル状物質の作製)
デオキシリボ核酸(DNA:分子量660万、10kbp、サケ由来)を15vol%のエタノール水溶液に溶解して1質量%のDNA水溶液を作製した。
次いで、このDNA溶液0.5mLとシクロヘキサン20mLをホモジナイザーカップに入れ、18000rpmにて10分間ホモジナイズし、シクロヘキサン中にDNAを乳化しW/Oエマルションとした。
次いで、このW/Oエマルションに、30vol%のエタノール水溶液に塩化カルシウムを溶解して得られた0.1モル塩化カルシウム溶液を加え、撹拌・混合してゲル化した。
【0064】
(ゲル状物質の確認)
得られた試料を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、平均粒子径が約1μmのゲル状物質が生成していることが確認された。
(環境ホルモンモデル物質の吸着性試験)
得られた試料をモデル発がん物質であるアクリジンオレンジ水溶液中に浸漬し、上澄み液の色の変化から吸着性を確認した。
ここでは、上澄み液がアクリジンオレンジを起源とする黄色から無色透明へ変化するとともに、試料がアクリジンオレンジにより染色されて黄色へ変化した場合に、「吸着能力あり」と判定した。
その結果、この試料は吸着能力があることが分かった。
【0065】
(実施例2)
(シリカ被覆酸化亜鉛微粒子の調製)
上記の「超微粒酸化亜鉛の製造方法」に準じて、平均一次粒子径が10nmの酸化亜鉛微粒子を作製した。次いで、この酸化亜鉛微粒子340gを、12質量%のケイ酸ナトリウム水溶液60gと水1Lとの混合物に投入して懸濁させ、ホモミキサーを用いて8000rpmにて30分間攪拌し、分散液を得た。
【0066】
次いで、この分散液を加温して70℃とし、20質量%の濃塩酸及び12質量%のケイ酸ナトリウム水溶液を、酸化亜鉛微粒子の表面における被覆量がシリカ換算で5質量%となるように徐々に滴下した。この間、酸化亜鉛微粒子が溶解しないよう常にpHを8以上に保持し、ケイ酸ナトリウム水溶液の滴下終了時にはpHを8とした。
この状態を1時間保持して熟成した後、さらに20質量%の濃塩酸をpHが7を下回らないよう注意しながら滴下した。pHが7で安定したところで塩酸の滴下を終了し、さらに1時間70℃にて熟成を行った。
次いで、この熟成物をロータリーフィルターを用いて、洗浄液の伝導度が80μS/cm以下となるまで濾過洗浄し、得られたスラリーをスプレイドライヤーを用いて乾燥し、シリカ被覆酸化亜鉛微粒子(平均粒径:15nm)を得た。
【0067】
(ゲル状の複合体の調製)
デオキシリボ核酸(DNA:分子量660万、10kbp、サケ由来)及び上記のシリカ被覆酸化亜鉛微粒子を15vol%のエタノール水溶液に溶解し、DNAを1質量%及びシリカ被覆酸化亜鉛微粒子を5質量%含む分散液を作製した。
次いで、この分散液0.5mLとシクロヘキサン20mLをホモジナイザーカップに入れ、18000rpmにて10分間ホモジナイズし、シクロヘキサン中にDNAを乳化しW/Oエマルションとした。
次いで、このW/Oエマルションに、30vol%のエタノール水溶液に塩化カルシウムを溶解して得られた0.1モル塩化カルシウム溶液を加え、撹拌・混合してゲル化した。
【0068】
(ゲル状の複合体の形状及び微粒子の確認)
得られたゲル状の複合体1質量部を純水99質量部と混合して1質量%の分散液とし、この分散液に顕微鏡用グリッドを浸漬した後、室温乾燥し、観察用サンプルを得た。このサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、ゲル状の複合体の生成の有無、複合体の形状、複合体内部の酸化亜鉛微粒子の確認、を行った。
その結果、平均粒子径が約100μmの球状のゲル状物質が確認された。また、このゲル状物質の内部に分散粒子径が10nm〜50nmのシリカ被覆酸化亜鉛微粒子が分散していることが確認された。
【0069】
(酸化亜鉛微粒子の溶出試験)
ゲル状の複合体1質量部を純水99質量部(または所定の金属塩溶液99質量部)と混合して1質量%の分散液とし、この分散液を7930型冷却遠心機(久保田製作所社製)を用いて1000rpmにて10分間遠心操作を行い、上澄みを採取した。
この上澄みの粒度分布をレーザードップラー型粒度分布計(DLS, Leeds Northrup Microtrac UPA instrument)を用いて測定した。
ここでは、粒子径が50μm以下の粒子が観測された場合を「溶出あり」と判定した。
その結果、このゲル状の複合体では、酸化亜鉛微粒子の溶出がないことが分かった。
【0070】
(環境ホルモンモデル物質の吸着性試験)
ゲル状の複合体の環境ホルモンモデル物質の吸着性試験を、実施例1に準じて行ったところ、ゲル状の複合体は吸着能力があることが分かった。
【0071】
(実施例3)
実施例1のゲル状物質を用いて化粧用クリームの一種である日焼け止めクリームを作製し、紫外線遮蔽効果及び透明性を評価した。
(日焼け止めクリームの調製)
実施例1のゲル状物質20質量部とカオリン2質量部とをブレンダーで混合し、この粉末状の混合物を、精製水60質量部にプロピレングリコール4質量部を加えて65℃に加熱したプロピレングリコール水溶液に加えてホモミキサーで分散して加熱溶解し、その後65℃にて30分間保持し水相とした。
【0072】
一方、セチルアルコール1質量部と、ワセリン9質量部と、流動パラフィン1質量部と、シリコーン油1質量部と、グリセリンモノステアリン酸エステル1質量部と、セチルアルコールエーテル1質量部とを、ホモミキサーで混合して加熱溶解し、その後65℃にて30分間保持し油相とした。
次いで、上記の水相に上記の油相を加え、ホモミキサーで均一に乳化、分散させ、その後、これを室温まで冷却させつつ撹拌することで、実施例3の日焼け止めクリームを得た。
【0073】
(日焼け止めクリームの紫外線遮蔽効果)
この日焼け止めクリーム3gを10cm角の石英ガラス板上に塗布し、この塗布膜の紫外線吸収スペクトルを分光光度計により測定した。その結果、この塗布膜には紫外線UV−Bに対して紫外線遮蔽効果があることが確認された。
また、目視により、極めて透明性が高いことが確認された。
【0074】
(実施例4)
実施例1のゲル状物質を実施例2のゲル状の複合体に替えた他は、実施例3に準じて実施例4の日焼け止めクリームを得た。
この日焼け止めクリームの紫外線遮蔽効果を実施例3に準じて評価したところ、紫外線遮蔽効果があることが確認された。
また、目視により、極めて透明性が高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の化粧品材料は、核酸を成分とするゲル状物質、さらには、この核酸を成分とするゲル状物質中に金属化合物粒子を分散してなる複合体を含有したことにより、材料としての適正な大きさと、紫外線遮蔽効果とを維持することができ、その結果、化粧品としての機能性と安全性を両立させた化粧品材料を安価に提供することができるものであるから、上述した日焼け止めクリームはもちろんのこと、紫外線遮蔽効果を必要とする化粧品材料として広く利用が可能であり、その工業的価値は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態の化粧品材料の断面構造を示す模式図である。
【図2】オゾン層及びDNAそれぞれの紫外線の吸収断面積を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態の化粧品材料の断面構造を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態の金属化合物粒子の表面を被覆した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1 ゲル状物質
11 複合体
12 金属化合物粒子
13 ゲル状物質
21 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を成分とするゲル状物質を含有してなることを特徴とする化粧品材料。
【請求項2】
前記ゲル状物質中に金属化合物粒子を分散してなる複合体としたことを特徴とする請求項1記載の化粧品材料。
【請求項3】
前記金属化合物粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなることを特徴とする請求項2記載の化粧品材料。
【請求項4】
前記ゲル状物質の大きさは、20nm以上かつ100μm以下であることを特徴とする請求項1、2または3記載の化粧品材料。
【請求項5】
前記ゲル状物質は極性溶媒を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の化粧品材料。
【請求項6】
前記金属化合物は、金属酸化物、金属窒化物及び金属炭化物の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項2または3記載の化粧品材料。
【請求項7】
前記金属酸化物は、紫外線遮蔽機能を有することを特徴とする請求項6記載の化粧品材料。
【請求項8】
紫外線遮蔽機能を有する前記金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化セリウムの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項7記載の化粧品材料。
【請求項9】
前記ゲル状物質の含有率は、1質量%以上かつ90質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の化粧品材料。
【請求項10】
核酸またはその前駆体を溶媒中に溶解または分散させて溶液とする溶液作製工程と、この溶液に、加熱処理、ゲル化剤添加のいずれか一方または双方を施して核酸を成分とするゲル状物質を生成するゲル状物質生成工程とを有することを特徴とする化粧品材料の製造方法。
【請求項11】
前記溶液作製工程は、前記溶液に金属化合物粒子を分散させて分散液とする工程であることを特徴とする請求項10記載の化粧品材料の製造方法。
【請求項12】
前記金属化合物粒子は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化アルミニウム/酸化ケイ素のいずれか1種により被覆してなることを特徴とする請求項11記載の化粧品材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−280548(P2009−280548A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136721(P2008−136721)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】