説明

化粧料及びその製造方法

【課題】 乳化等の操作をすることなく簡易な装置で、コエンザイムQ10の添加されていることが目視確認できるコエンザイムQ10を含有する化粧料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コエンザイムQ10を親水性を有するバインダーにて顆粒化し、前記顆粒を含水せしめて含水膨潤ゲルにし、水性媒体化粧基材と混合することによりコエンザイムQ10顆粒の黄色球状の含水膨潤ゲルが安定浮遊した化粧料が得られる。含水膨潤ゲルは指先で押すと極めて容易に潰れ、顔等に違和感なく使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を含有する化粧料及びその製造方法に関する。詳細には、コエンザイムQ10を含有することができ、長期間保存してもコエンザイムQ10を含む含水膨潤ゲルが沈殿、析出または浮上しない等、安定性に優れた水性化粧料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの側鎖のイソプレン単位が10の高等動物に存在するユビキノン類( 構造式C5 99 04 、分子量863.4 )であり、ユビデカレノンまたは補酵素Q10として知られる補酵素Qの1種である。その物性としては、橙黄色結晶、融点約49℃の脂溶性物質として知られている。コエンザイムQ10は、補酵素として生物活性をもつだけでなく、酸素利用効率を改善させる作用を有するビタミン様作用物質として知られている。コエンザイムQ10はミトコンドリア中のアデノシン三リン酸の生産に必須とされており、免疫機能を向上させることが報告されている。疲労回復、エネルギー賦活、生体内活性酸素に対する抗酸化等に使用されている。さらに、皮膚外用剤としての老化防止に対する有効性も期待されている。このようにコエンザイムQ10は高い生理活性を有し、且つ生体内に存在する安全性の高い物質と考えられている(特許文献1参照)。このためコエンザイムQ10を含む化粧料が開発されており、化粧水、乳液、クリーム等の形態で提供され、この化粧料に含有されるコエンザイムQ10の作用により、肌の老化を防ぐ効果を有する。
【0003】
従来、コエンザイムQ10を含有する化粧料は、一般に、コエンザイムQ10と、界面活性剤等の乳化剤や分散剤を溶解した水性媒体とを撹拌混合し、その後ホモジナイザー等を用いて均一に乳化することにより製造されている。この際、必要に応じて、その他の化粧料素材(油性成分、保湿剤、増粘剤、防腐剤、香料など)が配合される。ここで、油性成分が多くなるとクリームとなり、水が多くなると乳液や化粧水となる。(特許文献2参照)。
【0004】
これ等の従来の製造方法で得られる化粧料は、コエンザイムQ10の微細粒子(平均粒径0.01μm〜数十μm)が水性媒体中に分散されたものである。安定性や均一性の面では十分であるが製法上乳化剤、分散剤を加えなくてはならない。
【0005】
さらに、コエンザイムQ10が有効成分であるにもかかわらず、このコエンザイムQ10成分が目視では確認できず訴求性が弱いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−196781号公報
【特許文献2】特開2000−212066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、皮膚へのコエンザイムQ10の吸収性が改善されコエンザイムQ10の有する本来の効果を十分に引き出すことができ、特別成分を含有していることが目視確認できるコエンザイムQ10を含有する化粧料及びその製造方法であってホジナイザー等の装置を要しない製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の目的を達成するために、有効成分であるコエンザイムQ10の性状について種々検討を行ったところ、顆粒状のコエンザイムQ10を長時間水中で膨潤させて得られる含水膨潤ゲル状粒子が水性媒体中で安定に存在しうることを発見し、上記目的が達成されることを見出した。
【0009】
すなわち、請求項1記載の発明は、コエンザイムQ10を含む含水膨潤ゲルが水性媒体中に分散されていることを特徴とする化粧料である。
【0010】
請求項2記載の発明は、含水膨潤ゲルの平均粒径が0.1〜6mmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料である。
【0011】
請求項3記載の発明は、含水膨潤ゲルが常温で5日間放置しても沈降しないことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料。
【0012】
請求項4記載の発明は、粘度が5000mPa・s(5000cP)以上であることを特徴とする請求項1乃至3記載の化粧料である。
【0013】
請求項5記載の発明は、コエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法において、コエンザイムQ10を水膨潤性を有するバインダーにて顆粒化し、前記顆粒を含水せしめて含水膨潤ゲルにし、水性媒体化粧基材と混合することを特徴とするコエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法である。
【0014】
請求項6記載の発明は、顆粒を吸水させて含水膨潤ゲルにする工程において、顆粒を水溶液中に撹拌放置し、含水膨潤ゲルの比重が水溶液比重と略同等になるまで十分吸水させることを特徴とする請求項5に記載の化粧料の製造方法である。
【0015】
請求項7記載の発明は、含水膨潤ゲルの平均粒径が0.1〜6mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の化粧料の製造方法である。
【0016】
以下本発明を詳細に説明する。コエンザイムQ10は、融点49℃の親油性の常温では比重が1より大きい固体であり、エーテルなどに対しては高い溶解性を示すが、水には難溶性である。よってそのまま粉末又は顆粒を水に投じると比重が1より小さいため水面上に浮く。しかし顆粒は比重が1より大きいため底に沈み溶けない。従来、コエンザイムQ10としては粉末状のものが汎用されているが、上記理由のため本発明においては、粉末状の汎用品ではなく、顆粒状のコエンザイムQ10を用いる。
【0017】
コエンザイムQ10を顆粒にするには、人体に無害で親油性を有しかつ親水性を有する水膨潤性のバインダーを用いることが好ましい。そのようなバインダー用原料としてはラクトース、セルロース、トコフェロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、これらを、親油性、親水性、吸油率、膨潤率等を考慮し適宜配合することで調製することができる。顆粒の製造方法としては一般的方法を用いることができる。バインダーは膨潤して無色透明になるものが好ましい。また含水膨潤時に比重が1に近いものが化粧料に調製しやすく好ましい。また含水膨潤時に容易に潰れる程柔らかくなるものであることが好ましい。さらに含水膨潤させる時に水相が濁らないものが好ましい。化粧料の美観を損なうからである。
【0018】
顆粒の大きさは小さ過ぎると膨潤しても、膨潤した体積が増大するが倍率には限度があるので、膨潤しても膨潤ゲルを視認することができないため好ましくなく、大きすぎると潰れにくかったり、潰れても肌に塗る場合に違和感を生じたりする事があるので平均粒径が0.05〜3mmであるのが好ましく、より好ましくは、0.3〜2mmで有り、更に好ましくは0.5〜0.9mmである。顆粒の形状は球状、回転楕円体状、米粒状、カプセル状その他形状であってもよいが、膨潤ゲルの美観上球形またはこれに準じる縦横比が1:0.5内のものが好ましい。このような顆粒状コエンザイムQ10は、例えば、Induchem AG社(スイス国)から商品名「Unispheres Q−10」として市販されている。
【0019】
本発明においては、まず、上記顆粒状コエンザイムQ10を、吸水させて含水膨潤ゲルを調製する。吸水させる方法は限定されないが、吸水初期に顆粒同士が固まってしまわないようにすることが好ましい。このため、撹拌羽根付きの容器に精製水のような水を適量入れ、これに上記顆粒状のコエンザイムQ10を適量加えて撹拌にて初期合体を防いだ後放置し膨潤させることが好ましい。なお、撹拌の際、水には水溶性の増粘剤を加えるのが好ましい。顆粒状コエンザイムQ10は水底に沈み徐々に吸水しコエンザイムQ10の有する黄色のほぼ球状の含水膨潤ゲルとなる。この場合十分に吸水させることが好ましい。化粧料とした場合に沈降せず安定な化粧料とするのに好適だからである。顆粒用バインダーの種類等に適合させて吸水条件を調整することができる。
【0020】
この十分吸水させた含水膨潤ゲルを化粧料の基材となる水性媒体中に加えた場合に含水膨潤ゲルと水性媒体との比重差による重力あるいは浮力に粘性抵抗が勝れば含水膨潤ゲルは沈降することも浮上することもなく浮遊するようになる。このため膨潤ゲルの比重は水性媒体の比重と粘度で定まる一定の範囲内であることが好ましく、水性媒体と比重が等しければ粘度は低くてもよい。よってこの場合顆粒の吸水は水性媒体との比重差が、粘性抵抗を考慮した範囲内に入るように十分に吸水させることが好ましく、水性媒体の比重と等しくなるまで吸水させることがより好ましい。
【0021】
この場合に基材である水性媒体中に均一に分散させることが好ましい。均一であれば、使用時に化粧料の容器を振る必要がなく、コエンザイムQ10が一定の割合で含有されるので安全であり、容器中の化粧料の使用初期時も終了時も成分が一定に保たれるからである。但し含水膨潤ゲルを水性媒体中に混ぜる場合、攪拌時に大きな剪断力を与えると含水膨潤ゲルが破損するおそれがあるので注意を要する。水性媒体に他の成分を配合するために強い攪拌を要する場合には先に強く攪拌して調製しておきその後含水膨潤ゲルを加えて均一分散させることが好ましい。水性媒体の粘度が低くなりすぎると、含水膨潤ゲルが長期間において底に沈むことがあるので、水性媒体の粘度は5000mPa・s(5000cP)以上であるのが好ましい。したがって水性媒体を必要な場合には増粘してもよい。
【0022】
含水膨潤ゲルを水性媒体中に混ぜる場合、撹拌温度が約40℃を超えると、水性媒体の透明性が低下し濁りが生じるので40℃以下とするのが好ましい。撹拌時間が5時間を超えると、透明性が低下し濁りが生じるので5時間以下とするのが好ましい。このようにしてコエンザイムQ10の含水膨潤ゲルが浮遊した化粧料を得ることができる。
【0023】
化粧料とするには上記以外に目的に応じて各種化粧料素材が添加される。化粧料素材は特に限定されず、薬事法により許容され、化粧水、乳液、クリーム等の化粧料に用いられている材料が使用される。
【0024】
界面活性剤が、油性成分を均一分散させて配合するために使用されてもよく、皮膚への影響の少なさやコエンザイムQ10など他の成分との相互作用の少なさから、非イオン系の界面活性剤を用いるのが好ましい。
【0025】
このような非イオン系の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、多価アルコール脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類などが挙げられる。これらの界面活性剤は、含水膨潤ゲル状粒子や油性成分の分散を安定して保持するために、HLB値が9〜20のものを用いるのが好ましい。
【0026】
界面活性剤の配合量は、油性成分を安定して均一に分散可能な範囲で適宜決定すればよく、好ましくは油性成分100重量部に対して5〜200重量部の範囲である。5重量部を下回ると油性成分を安定した状態で水性媒体中に分散、保持することが難しくなり、200重量部を上回ると過剰となり皮膚への悪影響が懸念される。
【0027】
また、コエンザイムQ10の含水膨潤ゲル状粒子の分散(ダマをなくす)には、水溶性の分散剤も使用できる。このような水溶性の分散剤としては、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、デキストリン、カルメロースナトリウム、D−マンニット、プルラン、コーンファイバー、デンプングラーガム、ペクチン等の植物由来の水溶性多糖類並びにポリビニルピロリドン、メチルセルローズなどの合成高分子物質が挙げられる。
【0028】
各種化粧料素材としては、油性成分、保湿剤、増粘剤、抗酸化剤、防腐剤、抗菌剤、香料、色材、PH調整剤、繊維粉等が用いられる。ここで、油性成分が多くなるとクリームとなり、水が多くなると乳液や化粧水となる。
【0029】
油性成分としては、通常、コエンザイムQ10が溶解する液状の油性成分が使用される。例えば、ホホバ油、オリーブ油、アボガド油、亜麻仁油、ククイナッツ油、グレープシード油、サフラワー油、マカデミアナッツ油等の植物油、馬油、ミンク油、卵黄脂肪油等の動物油脂、流動パラフィン、高級アルコール(セタノール)、ラノリン、スクワレン、スクワラン、油溶性ビタミン等が挙げられる。これ等の油性成分は、一般に、水100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲で配合されるのが好ましい。
【0030】
保湿剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビット、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノ酸、コラーゲン、ピロリドンカルボン酸、各種動植物エキス、NMF(天然保湿因子)等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルローズナトリウム、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、クイーンシードガム、ヒドロキシプロピルセルローズ、アラビアゴム、トラガントゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
抗酸化剤(トコフェロール、BHT、BHAなど)、美肌、細胞復活を目的とする各種動植物エキス薬効成分のほか、繊維紛(セルロース繊維粉、ポリアミド繊維紛など)、紫外線防止剤(メトキシケイ皮酸オクチル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)、防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸モノエタノールアミンなど)、抗菌剤(ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、ヒノキチオールなど)、PH調整剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、その他コウジ酸(美白剤)、コラーゲン、ホルモン剤、プラセンタ、ビタミン剤等が挙げられる。
【0032】
こうして、コエンザイムQ10の含水膨潤ゲル状粒子が水性媒体中に分散されてなる本発明の化粧料が得られる。ここで、油性成分が多くなると化粧クリームとなり、水が多くなると化粧乳液や化粧水となる。具体的化粧料としてはクレンジングクリーム、洗顔ジェル、パック、マッサージクリーム、美容液、保湿クリーム等が挙げられる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の化粧料は、コエンザイムQ10の含水膨潤ゲル(平均粒径が0.1〜6mm)が水性媒体中に分散されており、この化粧料を片方の手ひらにとり、もう一方の手の指先で伸ばすと、コエンザイムQ10の含水膨潤ゲル状粒子は簡単に潰れる。それゆえ、この化粧料を顔などの皮膚に塗り広げると、指先で簡単に潰れて顔に違和感がない。そして、含水膨潤ゲル状粒子が潰れる際に、含水膨潤ゲル状粒子の中の水分が放出され、その水分の作用によりコエンザイムQ10の本来の特性(肌荒れ改善、保湿効果、美肌効果)が最大限に引き出され、含水膨潤ゲル状粒子が潤いの膜となって肌を包み込み、肌内部の潤いを外に逃がさないようにしながら、紫外線など外側からの刺激が入り込まないようにしっかりガードできる。
【0034】
また、本発明の化粧料は、コエンザイムQ10特有の黄色の平均粒径が0.1〜6mmの含水膨潤ゲルが浮遊している。このコエンザイムQ10は、肌荒れ改善、保湿効果、美肌効果の面で著効を有するとの心理的イメージがあり、含水膨潤ゲル状粒子が目視可能なことからコエンザイムQ10が含有されていることが確認できるため、商品価値が向上するという効果を有する。本発明の化粧料は、基礎化粧品等(化粧水、乳液、クリーム、クレンジング)として好適に使用される。
【0035】
また、本発明の化粧料は、コエンザイムQ10特有の黄色の含水膨潤ゲルが均一に分散して安定して浮遊しているので毎回振る必要が無く、使用毎に手にたらす化粧料中のコエンザイムQ10の含有量が一定で、容器中の化粧料の使用開始時も終了時も一定含有率で使用できる。
【0036】
さらに、本発明の化粧料の製造方法によれば、コエンザイムQ10の顆粒を吸水させることで容易に含水膨潤ゲルとすることができ、この含水膨潤ゲルと化粧料基材となる水性媒体とを、単に攪拌混合するだけで得られ、ホモジナイザー等の乳化装置を使用する必要がなく、簡単な装置で化粧料を製造することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。なお、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
(コエンザイムQ10顆粒を含水膨潤ゲルにする条件の検討)
コエンザイムQ10顆粒として、顆粒状コエンザイムQ10(Induchem AG社製(スイス国)商品名「Unispheres Q−10」)(嵩比重0.7〜0.9、粒径 >0.9mm:max 10%、 >0.5mm:min 70% バインダーはラクトース50重量%以上、セルロース10〜25重量%、トコフェロール1〜5重量%、その他ヒドロキシプロピルメチルセルロース等にて1重量%のコエンザイムQ10を顆粒化したものであって真比重>1.26)を用いた。
【0039】
Unispheres Q−10を含水膨潤ゲル化する条件を以下、時間、温度、粘度の要件につき水準を変えて実験した。水温を各水準にした条件で1リットルビーカーに精製水1000gにUnispheres Q−10を100粒と、増粘剤カルボキシビニルポリマー(商品名カルボマー)2gを加え30分攪拌後放置し、2時間半後の水相の濁りを観察した。図1参照。40℃を超えると濁りが強く透明度が低下した。
【0040】
水温を25℃、40℃、50℃の3水準とし攪拌時間を5時間まで振り上記と同様に実験を行った。図2参照。40℃を超えると攪拌時間の影響を受け水相が濁り透明度が低下する。
【0041】
常温下攪拌後吸水させたUnispheres Q−10を精製水に投じて攪拌放置し水中に浮遊している含水膨潤ゲルの個数を数えた。図3参照。吸水時間が4日より短いと含水膨潤ゲルが沈降する。
【0042】
常温下攪拌後5日放置して得られた含水膨潤ゲルを精製水に投じてカルボマーの添加量を変えて攪拌し粘度条件を変えて、放置し含水膨潤ゲルの浮遊安定性を観察した。図4参照。粘度が低いと含水膨潤ゲルが沈降するが5000mP・s以上であれば沈降せず安定であった。
(コエンザイムQ10顆粒からの含水膨潤ゲルの調製)
【0043】
上記予備検討より含水膨潤ゲルの調製条件を以下に定め含水膨潤ゲルを調製した。常温下、精製水1000gに対しUnispheres Q−10顆粒100個とカルボマー2gを加え30分攪拌後5日間放置し含水膨潤ゲルを得た。Unispheres Q−10顆粒は水を吸収して、平均粒径1〜2mmの黄色球状の膨潤ゲルとなっていた。
【0044】
(コエンザイムQ10を含有する化粧料の製造)
精製水48重量部、含水膨潤ゲル3重量部、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(界面活性剤)1重量部、流動パラフィン(油性成分)48重量部となるように配合し、25℃の温度で2時間撹拌混合した。この場合上記含水膨潤ゲルが破損しないようゆるやかな条件下攪拌した。
【0045】
こうして、コエンザイムQ10の平均粒径1〜2mmの含水膨潤ゲルが水性媒体中に均一に分散されてなる透明な化粧料(美容液)が得られた。目視によれば膨潤率は3〜4倍程度と推測された。水性媒体は無色透明で濁っていなかった。ガラス壜中で常温で放置したが、5日後、1月後、2月後においても目視観察によれば含水膨潤ゲルは底に沈降するものがなく、水性媒体の液界面に浮上するものもなく安定であり、含水膨潤ゲル及び化粧料の外観及び使用感に変化はなかった。図5参照
(比較例1)
【0046】
実施例1においてUnispheres Q−10を予め吸水させて含水膨潤ゲルにしてから加える代わりに、顆粒のままポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(界面活性剤)1重量部、流動パラフィン(油性成分)48重量部を加え、25℃の温度で2時間撹拌混合して化粧料を製造した。この場合、得られた化粧料は油層の下の水層が濁っており、又顆粒状コエンザイムQ10が沈降しており、不均一な分散状態であった。
(比較例2)
【0047】
実施例1において顆粒状コエンザイムQ10(Induchem AG社製(スイス国)商品名「Unispheres Q−10」)3重量部に換えて、粉末状のコエンザイムQ10の0.03重量部を用い、それ以外は実施例1と同様の操作を行いコエンザイムQ10入り化粧料を製造した。この場合、得られた化粧料は濁り、化粧料の中で粉末状コエンザイムQ10の粒子が不均一に分散した化粧料が得られた。
【0048】
上記実施例1で得られた化粧料を掌に少量たらした。化粧料中の黄色の含水膨潤ゲル粒は、他の手の指先で押すと容易に潰れ混ざり合い粒の形状は完全に喪失する。これを顔に塗っても異物感はなく均一に展ばすことができる。一方比較例1では含水膨潤ゲルが底に沈んでおり、比較例2では黄色粉体が容器の底に沈んでいた。この沈殿をとりだし同様に指で圧すと比較例1の場合は容易に潰れこれを顔に塗っても違和感がなく均一に展ばすことができるが、比較例2の場合は粉体様のざらざら感があった。
【実施例2】
【0049】
表1の左欄に1〜15の番号を付して示す化粧料材料を用いて、下記に示す方法により化粧料(美容液、乳液、クリームおよびパック)を製造した。なお、化粧料材料15には、前記実施例1に示す方法で得られたコエンザイムQ10の含水膨潤ゲルを用いた。
【0050】
(美容液)
4を3で膨潤させる、これを3−1とする。1の中に2、3−1、5を加えよく混合する、これを1−1とする。3の一部に10、12、13を加温して溶解し1−1に投入する、これを1−2とする。1−2の中へ15を投入し6を混合する。15が均一になるまでよく混合する。こうして、美容液を得た。
【0051】
(乳液)
7に8、9、10、11,12、13、14を投入し80℃に加温する、これを7−1とする。1に2、3を投入し80℃に加温しさらに7−1を投入する。これをホモミキサーで粒子が3μm以下になるまで処理する、これを1−2とする。3の一部で膨潤した4と5を一部の1で溶解させ1−2に投入する、これを45℃まで冷却したあと6を加え、35℃になるまでプロペラでゆっくり撹拌する。こうして、乳液を得た。
【0052】
(クリーム)
乳液と同様にしてクリームを得た。ただし、12は使用しなかった。
【0053】
(パック)
乳液と同様にしてパックを得た。
【0054】
上記の方法で得られた美容液、乳液、クリーム、パックのいずれの化粧料も、化粧料中中にコエンザイムQ10の黄色球状膨潤ゲルが安定して浮遊しており、使用感も優れていた。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】含水膨潤ゲル化工程における水温の影響を示す図である。
【図2】含水膨潤ゲル化工程における水温と攪拌時間の影響を示す図である。
【図3】含水膨潤ゲル化工程における浸漬放置時間の影響を示す図である。浮遊している個数を示す。
【図4】含水膨潤ゲルを水性化粧基材に安定浮遊させるための水性化粧基材の粘度の影響を示す図である。浮遊している個数を示す。
【図5】含水膨潤ゲル入り化粧料がガラス壜中に収納されているところを表す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10を含む含水膨潤ゲルが水性媒体中に分散されていることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
含水膨潤ゲルの平均粒径が0.1〜6mmであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
含水膨潤ゲルが常温で5日間放置しても沈降しないことを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料。
【請求項4】
粘度が5000mPa・s(5000cP)以上であることを特徴とする請求項1乃至3記載の化粧料。
【請求項5】
コエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法において、コエンザイムQ10を水膨潤性を有するバインダーにて顆粒化し、前記顆粒を含水せしめて含水膨潤ゲルにし、水性媒体化粧基材と混合することを特徴とするコエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法。
【請求項6】
顆粒を吸水させて含水膨潤ゲルにする工程において、顆粒を水溶液中に撹拌放置し、含水膨潤ゲルの比重が水溶液比重と略同等になるまで十分吸水させることを特徴とする請求項5に記載の化粧料の製造方法。
【請求項7】
含水膨潤ゲルの平均粒径が0.1〜6mmであることを特徴とする請求項5又は6に記載の化粧料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10をラクトース、セルロース、トコフェロール及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを成分として用いた水膨潤性を有するバインダーにて顆粒化し、前記顆粒を含水せしめて含水膨潤ゲルにし、水性媒体化粧基材と混合することによって得られる、コエンザイムQ10を含む平均粒径が0.1〜6mmの含水膨潤ゲルが水性媒体中に分散されていることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
コエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法において、コエンザイムQ10をラクトース、セルロース、トコフェロール及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを成分として用いた水膨潤性を有するバインダーにて顆粒化し、前記顆粒を含水せしめて含水膨潤ゲルにし、水性媒体化粧基材と混合することを特徴とするコエンザイムQ10を含有する化粧料の製造方法。
【請求項3】
顆粒を吸水させて含水膨潤ゲルにする工程において、顆粒を水溶液中に撹拌放置し、含水膨潤ゲルの比重が水溶液比重と同等になるまで吸水させることを特徴とする請求項に記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
含水膨潤ゲルの平均粒径が0.1〜6mmであることを特徴とする請求項又はに記載の化粧料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−232777(P2006−232777A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52954(P2005−52954)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【特許番号】特許第3770559号(P3770559)
【特許公報発行日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(505072971)株式会社ジュリア・オージェなんかい (2)
【Fターム(参考)】