説明

化粧料容器

【課題】繊細な化粧を施すことができると共に塗布感を向上できる化粧料容器を提供する。
【解決手段】容器本体1内の化粧料Aを排出するための排出路2eを覆う弾性体3を、皮膚に直接押し当てるか又は塗布部4を介して間接的に押し当てることで、弾性体3に設けたスパイラル状のスリット3aを通し流出した化粧料Aを皮膚へ塗布可能とする。このとき、弾性体3を、その内外面が外側へ膨らむ半球形状とすることで、塗布部が平坦又は外側に多少膨らむ形状である場合に比して、丸みを帯びている分、塗布面の接触面積を小さくできる。また、この半球形状の弾性体3を、皮膚に直接押し当てるか又は塗布部4を介して間接的に押し当てると、スパイラル状のスリット3aによって、弾性体3が皮膚の凹凸形状に倣い容易に追従して大きく撓み変形し、皮膚に対する塗布面の当たりが最適となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔等の皮膚に粉末化粧料を施すときに使用される化粧料容器として、粉末化粧料を収容する容器本体と、この容器本体を覆うように装着され容器本体内の粉末化粧料を塗布するための塗布部と、を備え、使用者が、塗布部の外側の塗布面を顔等に軽く叩き付け押し当てるようにすることで、塗布部に設けた開口を通して粉末化粧料を皮膚に付けていく化粧料容器が広く知られている。以下の特許文献1には、塗布部が外側に多少膨らみ塗布面の全面に上記開口を多数有する化粧料容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2008/007832A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記化粧料容器にあっては、繊細な化粧がし難いと共に、塗布感(タッチ感;使用感)が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、繊細な化粧を施すことができると共に、塗布感を向上できる化粧料容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明者は鋭意研究した結果、塗布部が平坦又は外側に多少膨らむ形状の場合に繊細な化粧がし難いのは、皮膚にほぼ塗布面全体が接触する(接触面積が大きい)ことが原因であることを見出し、また、塗布部が平坦又は外側に多少膨らむ形状の場合に塗布感が悪いのは、塗布面が皮膚の凹凸形状に良好に追従できず皮膚に対する当たりが強くなるのが原因であることを見出した。そして、さらなる研究により、以下の構成とすれば、繊細な化粧を施すことができると共に、塗布感を向上できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明による化粧料容器は、化粧料を収容する容器本体と、容器本体に収容された化粧料を排出するための排出路と、排出路を覆いその内外面が外側へ膨らみ半球形状を成す弾性体と、弾性体に設けられ化粧料の外部への流出を可能とするスパイラル状のスリットと、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような化粧料容器によれば、容器本体内の化粧料を排出するための排出路を覆う弾性体が、皮膚に直接押し当てられるか又は塗布部を介して間接的に押し当てられると、弾性体に設けられたスパイラル状のスリットを通して化粧料が流出可能とされ、当該化粧料が皮膚へ塗布可能とされる。このとき、弾性体は、その内外面が外側へ膨らむ半球形状のため、塗布部が平坦又は外側に多少膨らむ形状である場合に比して、丸みを帯びている分、塗布面の接触面積を小さくでき、繊細な化粧を施すことができる。また、この半球形状の弾性体は、皮膚に直接押し当てられるか又は塗布部を介して間接的に押し当てられると、スパイラル状のスリットによって、皮膚の凹凸形状に倣い容易に追従して大きく撓み変形可能であり、従って、皮膚に対する塗布面の当たりが最適とされ、塗布感を向上できる。また、弾性体に設けられたスパイラル状のスリットを通して化粧料が流出するため、中央孔のみから化粧料が流出する場合や多孔から化粧料が流出する場合に比して(従来技術に比して)、化粧料を広い範囲で満遍無く塗布できる。
【0009】
ここで、上記作用を効果的に奏するスパイラル状のスリットの構成としては、具体的には、弾性体の略中央から同方向に旋回する第1スリット及び第2スリットを備える構成が挙げられる。そして、このような2個のスリットにより、弾性体が一層良好に撓み、皮膚の凹凸形状に対する追従性が一層確保される。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、繊細な化粧を施すことができると共に、塗布感を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る化粧料容器を示す外観図であり、キャップを装着した状態を示す斜視図である。
【図2】図1からキャップを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す化粧料容器の縦断面図である。
【図4】図3中の弾性体を示す斜視図である。
【図5】図4に示す弾性体の平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る化粧料容器の弾性体を示す斜視図である。
【図7】図6に示す弾性体の平面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る化粧料容器の弾性体を示す斜視図である。
【図9】図8に示す弾性体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による化粧料容器の好適な実施形態について図1〜図9を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1〜図5は、本発明の第1実施形態を、図6及び図7は、本発明の第2実施形態を、図8及び図9は、本発明の第3実施形態を各々示すものであり、先ず、図1〜図5に示す第1実施形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る化粧料容器を示す外観図であり、キャップを装着した状態を示す斜視図、図2は、図1からキャップを取り外した状態を示す斜視図、図3は、図1に示す化粧料容器の縦断面図、図4は、図3中の弾性体を示す斜視図、図5は、図4に示す弾性体の平面図であり、本実施形態の化粧料容器100は、使用者により粉末化粧料Aを顔等の皮膚に施すときに用いられるものである。
【0015】
図1〜図3に示すように、化粧料容器100は、粉末化粧料Aを収容する容器本体1と、この容器本体1の上部に配置されその筒孔が容器本体1内と連通する中筒2と、この中筒2を覆うように装着された弾性体3と、この弾性体3を覆うように装着された塗布部としての多孔質材4と、容器本体1に対して装着されこれにより中筒2を容器本体1に装着する継ぎ具5と、この継ぎ具5に着脱可能に装着されたキャップ6と、を具備して成る。
【0016】
容器本体1は、有底円筒状に構成されて、図3に示すように、内部に粉末化粧料Aを収容するものであり、その上部に、下部より薄肉で上方に円筒状に突出する突部1aを備える。この突部1aの内周面には、周方向に沿って凹凸が密に並設されるローレット1bが、継ぎ具5を軸線周り回転方向に係合するためのものとして設けられると共に、突部1aの外周面には、円環状の突部1cが、継ぎ具5を軸線方向に係合するためのものとして設けられている。
【0017】
中筒2は、上部2a及び下部2bが大径に構成されると共に、これらの間の中間部2cが小径に構成されている。凹形状を逆さにした形状を成す下部2bは、その底部に、容器本体1の突部1aより内側部分に載置されると共に、継ぎ具5により押圧されるための円環状の鍔部2dを有する。また、凹形状を成す上部2aは、その下部に、弾性体3の下端面を載置するための円環状の鍔部2fを有し、上部2aの外周面には、円環状の突部2gが、弾性体3を軸線方向に係合するためのものとして設けられている。このような下部2b、中間部2c及び上部2aは、容器本体1内の粉末化粧料Aを上方の多孔質材4へ向かって排出するための排出路2eを構成し、特に上部2aは、多孔質材4から流出せずに戻った粉末化粧料Aが溜まる粉溜まりを構成する。
【0018】
継ぎ具5は、上部に円筒部5aと、下部に内側円筒部5b及び外側円筒部5cを備えている。下部の内側円筒部5bの外周面には、周方向に沿って、容器本体1のローレット1bに軸線周り回転方向に係合するための突条5dが複数設けられていると共に、下部の外側円筒部5cの内周面には、容器本体1の円環状の突部1cに軸線方向に係合するための円環状の凹部5eが設けられている。また、上部の円筒部5aの外周面には、キャップ6を装着するための雄螺子5fが設けられている。
【0019】
そして、中筒2は、その下部2bの鍔部2dが、容器本体1の突部1aより内側部分に載置され、この状態で、継ぎ具5が上方から被せられ、継ぎ具5の突条5dと容器本体1のローレット1bとが軸線周り回転方向に係合すると共に、継ぎ具5の凹部5eと容器本体1の突部1cとが軸線方向に係合することにより、継ぎ具5が容器本体1に対して離脱不能に装着されている。また、これにより、中筒2が、容器本体1と継ぎ具5との間に挟まれ容器本体1に対して離脱不能とされている。
【0020】
弾性体3は、図3〜図5に示すように、その内外面が外側へ膨らみ半球形状を成す構成とされ、ここでは、POMより形成され弾性変形可能とされている。この弾性体3の半球形状の下部の内周面には、中筒2の突部2gに軸線方向に係合するための円環状の凹部3dが設けられている。
【0021】
ここで、特に本実施形態の弾性体3には、粉末化粧料Aの外部への流出を可能とするためのスパイラル状のスリット3aが設けられている。このスパイラル状のスリット3aは、ここでは、弾性体3の略中央から同方向(図示時計回り)に旋回する第1スリット3b及び第2スリット3cを備え、これらの第1スリット3b及び第2スリット3cの中央側の基端同士が、弾性体3の略中央において連通する構成とされている。
【0022】
そして、弾性体3は、その半球形状の下部が、中筒2の上部2aに外挿されると共に、その半球形状の下端面が、中筒2の鍔部2fに載置された状態で、その凹部3dが、中筒2の突部2gに軸線方向に係合することにより、中筒2に対して離脱不能に装着されている。
【0023】
多孔質材4は、図3に示すように、弾性体3のスパイラル状のスリット3aを通して流出する粉末化粧料Aを、皮膚に適量で塗布感良く塗布するためのものであり、ここでは、発泡ウレタンスポンジに植毛を施したものとされている。なお、多孔質材4は、粉末化粧料Aを通過可能とする多孔質材であれば、例えば、NBR等から成るパフ等としても良い。この多孔質材4は、弾性体3とほぼ同様に、その内外面が外側へ膨らみ半球形状を成す構成とされ、弾性体3に密着するように構成されている。そして、多孔質材4は、その半球形状の下部が、弾性体3の半球形状の下部の外周面及び中筒2の鍔部2fの外周面と、継ぎ具5の上部の円筒部5aの内周面との間に挟持されることで、容器本体1側に装着されている。
【0024】
キャップ6は、上部が閉じられた円筒形状の蓋であり、その内周面に、継ぎ具5の雄螺子5fに螺合する雌螺子6aを有し、この雌螺子6aと継ぎ具5の雄螺子5fとが螺合することにより、容器本体1側に装着されている。
【0025】
このように構成された化粧料容器100にあっては、使用者によりキャップ6が取り外され、多孔質材4を顔等の皮膚に軽く叩き付け押し当てるようにすると、容器本体1内の粉末化粧料Aは排出路2eを通って弾性体3に向かい、また、上部2aの粉溜まりに溜まっていた粉末化粧料Aも弾性体3に向かい、弾性体3に設けられたスパイラル状のスリット3aを通して粉末化粧料Aが流出し、多孔質材4により粉末化粧料Aが皮膚へ塗布される。
【0026】
このとき、弾性体3は、その内外面が外側へ膨らむ半球形状のため、塗布部が平坦又は外側に多少膨らむ形状である場合に比して、丸みを帯びている分、塗布面(多孔質材4の表面)の接触面積を小さくでき、繊細な化粧を施すことができる。また、この半球形状の弾性体3は、皮膚に多孔質材4を介して間接的に押し当てられると、スパイラル状のスリット3aによって、皮膚の凹凸形状に倣い容易に追従して大きく撓み変形し、従って、皮膚に対する塗布面の当たりが最適とされ、塗布感を向上できる。また、弾性体3に設けられたスパイラル状のスリット3aを通して粉末化粧料Aが流出するため、中央孔のみから粉末化粧料が流出する場合や多孔から粉末化粧料が流出する場合に比して(従来技術に比して)、粉末化粧料Aを広い範囲で満遍無く塗布できる。
【0027】
また、本実施形態によれば、スパイラル状のスリット3aが、弾性体3の略中央から同方向に旋回する第1スリット3b及び第2スリット3cを備える構成のため、このような2個のスリット3b,3cにより、弾性体3が一層良好に撓み、皮膚の凹凸形状に対する追従性が一層確保される。
【0028】
ここで、粉末化粧料を収容する容器本体と、この容器本体を覆うようにその上部に装着されると共に、容器本体に収容された粉末化粧料を使用すべく外部へ流出させるための開口を備えた蓋部と、を備え、容器本体内の粉末化粧料のバージン性を保つため、容器本体内に粉末化粧料を密封するための中蓋を有する化粧料容器にあっては、使用者が蓋部、中蓋を取り外し再度蓋部を容器本体に装着する際に装着が不完全で隙間が生じ当該隙間から粉末化粧料が漏出する虞があり、また、化粧料容器の輸送の際に、蓋部が緩み中蓋が外れて粉末化粧料が漏出する虞もあるが、本実施形態によれば、容器本体1に装着される部分となる継ぎ具5が、当該容器本体1に対して離脱不能に装着されているため、粉末化粧料Aの漏出が確実に防止されている。
【0029】
なお、スパイラル状のスリット3b,3cは、その対向して渦を巻く側面同士が、平面視において曲面を有する構成とされているが、その一部に角部を有する構成とした場合には、塗布の際に弾性体が押圧されると、当該角部が捩れて軸線方向に迫り出して立ってしまい、塗布感が悪く好ましくない。
【0030】
因みに、弾性体3の形状を、本実施形態のように、その内外面が外側へ膨らむ半球形状としても、これに化粧料流出用の多孔を設けた場合には、スパイラル状のスリットを設けた本実施形態に比して、撓みの度合いが低く、塗布感はあまり良くない。
【0031】
図6は、本発明の第2実施形態に係る化粧料容器の弾性体を示す斜視図、図7は、図6に示す弾性体の平面図、図8は、本発明の第3実施形態に係る化粧料容器の弾性体を示す斜視図、図9は、図8に示す弾性体の平面図である。
【0032】
図6及び図7に示す第2実施形態の弾性体13にあっては、そのスパイラル状のスリット13aが、同方向に旋回する第1スリット13b及び第2スリット13cを有している点は、第1実施形態と同様であるが、その中央側の基端同士が、弾性体13の略中央において連通しない構成とされ、また、図8及び図9に示す第3実施形態の弾性体23にあっては、そのスパイラル状のスリット23aが、蚊取り線香のような1個のスパイラル状のスリットとされている。
【0033】
このように構成された第2実施形態、第3実施形態にあっても、第1実施形態とほぼ同様な作用・効果を奏するというのはいうまでもない。因みに、スパイラル状のスリットの個数は、上記のように1個又は2個が好ましいが、3個以上とすることもできる。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、弾性体3,13,23に対して多孔質材4を塗布部として被覆し、皮膚に弾性体3,13,23を多孔質材4を介して間接的に押し当てるようにしているが、このような多孔質材4を設けずに、皮膚に弾性体3,13,23を直接押し当てる構成であっても良い。
【0035】
また、スパイラル状のスリット3a,13a,23aは、弾性体3,13,23の半球形状を維持できれば、その外周側の末端が外部と連通し外部開放とされていても良い。
【0036】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、化粧料を粉末化粧料Aとしているが、液状化粧料や、軟質状、ゼリー状等の化粧料に対しても適用可能である。また、このように、液状化粧料や、軟質状、ゼリー状等の化粧料とした場合には、化粧料容器を、チューブやソフトボトル等のスクイーズ式の化粧料容器とすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1…容器本体、2e…排出路、3…弾性体、3a…スパイラル状のスリット、3b…第1スリット、3c…第2スリット、100…化粧料容器、A…化粧料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する容器本体と、
前記容器本体に収容された前記化粧料を排出するための排出路と、
前記排出路を覆いその内外面が外側へ膨らみ半球形状を成す弾性体と、
前記弾性体に設けられ前記化粧料の外部への流出を可能とするスパイラル状のスリットと、を備えた化粧料容器。
【請求項2】
前記スパイラル状のスリットは、前記弾性体の略中央から同方向に旋回する第1スリット及び第2スリットであることを特徴とする請求項1記載の化粧料容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−19815(P2011−19815A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169026(P2009−169026)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】