説明

化粧料用顔料およびそれを含有する化粧料

【課題】皮膚へのツキの良さと滑らかな感触の両方の特性を有する化粧料用顔料とその化粧料用顔料を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】炭素数1〜26のアルキル基を有するアルキルアルコキシシランと、酸性アミノ酸のN−アシル体金属塩とによって表面被覆処理された化粧料顔料を作製する。その化粧料顔料を配合した化粧料は十分な撥水性を保持するとともに、化粧料への配合分散状態が良好であり、塗布時の使用感に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、もしくはサンスクリーン化粧料に配合される化粧料用顔料と、その化粧料用顔料を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、もしくはサンスクリーン化粧料に撥水性を付与するために、アルキルアルコキシシラン、アルキルアルコキシチタネート、長鎖アルキル基を有するアミノ酸やシリコン等で表面処理された顔料を配合することが行われている。
【0003】
しかしながら、上記従来の表面処理技術においては、撥水性を同様に得ることができるが、表面処理粉体の感触が異なっている。例えばアルキルアルコキシシランを用いて表面処理を行ったものでは、皮膚へのツキが良くなるものの、滑らかさが良くないという問題点がある。また、長鎖アルキル基を有するアミノ酸を用いて表面処理を行ったものでは、滑らかな感触が得られるものの、サラサラ感が強くなり、皮膚へのツキが良くならないという問題点がある。このように従来のものでは、皮膚へのツキが良くて、しかも滑らかな感触を持つという両方の特性を持つ撥水性を有する化粧料用顔料は得られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、皮膚へのツキの良さと滑らかな感触の両方の特性を有する化粧料用顔料とその化粧料用顔料を含有する化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、下記一般式(1)に示されるアルキルアルコキシシランと、下記一般式(2)に示されるN−アシルアミノ酸金属塩とを同時に、または連続的に顔料に表面被覆処理することにより、上述の課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。要するに、第1発明による化粧料用顔料は、
顔料に、下記一般式(1)にて示されるアルキルアルコキシシランと、下記一般式(2)にて示されるN−アシルアミノ酸金属塩とを表面被覆処理してなることを特徴とするものである。
【化3】

【化4】

【0006】
また、第2発明による化粧料は、第1発明の化粧料用顔料を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
前記各発明によれば、十分な撥水性を保持するとともに、一般式(1)に示されるアルキルアルコキシシランの持つ皮膚へのツキの良さと、一般式(2)に示されるN−アシルアミノ酸金属塩の持つ滑らかな感触の両方を有する化粧料用顔料を得ることができる。また、化粧料への配合分散状態が良好であり、塗布時の使用感に優れた化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明による化粧料用顔料およびそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0009】
本発明の化粧料用顔料は、表面被覆処理剤を、適当な溶媒もしくは種々の混合溶媒に溶解または分散させ、その溶液を顔料と攪拌混合した後、溶剤を除去することにより得られる。この場合、2種の表面被覆処理剤を同時に表面処理したり、あるいはどちらか一方ずつ連続して表面処理したりすることができる。
【0010】
本発明で用いられる溶剤としては、水、アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等)、極性溶剤(アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等)等が挙げられる。
【0011】
また、本発明で用いられる顔料としては、無機顔料、有機顔料もしくは樹脂粉体顔料がある。ここで、無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化クロム、ケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン被覆雲母等が挙げられる。また、有機顔料としては、リソールルビンB、レーキレッドC、リソールレッド、ローダミンB、ヘリンドンピンクCN、パーマネントレッド、ベンジジンオレンジG、フタロシアニンブルー、セルロースパウダー等が挙げられる。また、樹脂粉体顔料としては、ナイロンパウダー、アクリルパウダー、シリコンパウダー等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いられる上記一般式(1)に示されるアルキルアルコキシシランの顔料に対する被覆量は、顔料粒子径によって異なるが、0.05〜25質量%とするのが好適である。0.05質量%未満であると、本来の撥水性を十分に得ることができない上、皮膚へのツキも向上しない。また、25質量%を超えると、被覆処理材同士の反応等により感触が悪くなる懸念がある。
【0013】
また、上記一般式(2)に示されるN−アシルアミノ酸金属塩の顔料に対する被覆量は、顔料粒子径によって異なるが、0.05〜20質量%とするのが好適である。ただし、アルキルアルコキシシランで処理された顔料の特性を損なわない範囲で処理されることが重要である。
【0014】
本発明で用いられる上記一般式(1)に示されるアルキルアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
また、上記一般式(2)に示されるN−アシルアミノ酸金属塩としては、N−ヘキサノイルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−オレイリルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−ラウロイルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−ミリストイルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−パルミトイルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−ステアロイルアスパラギン酸(グルタミン酸)、N−リノレノイルアスパラギン酸(グルタミン酸)等のナトリウム塩およびカリウム塩等が挙げられる。なお、上記N−ヘキサノイルアスパラギン酸(グルタミン酸)等の表記は、N−ヘキサノイルアスパラギン酸とN−ヘキサノイルグルタミン酸の両方を併記したものとする。
【実施例】
【0016】
次に、本発明による化粧料用顔料およびそれを含有する化粧料の具体的実施例および比較例について説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
高速撹拌混合機に酸化チタン2kgを入れ、酸化チタンに対して1.5%のオクチルトリエトキシシラン(デグサ社製:DYNASYLAN OCTEO)と、0.5%のN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製:アミソフトHS−11)を質量比30/70のイオン交換水/イソプロピルアルコール混合液500gに加熱溶解させた混合液を高速撹拌混合機に入れ、十分に攪拌した。次いで、この攪拌状態を維持したまま混合機を加熱し、槽内を減圧してイオン交換水とイソプロピルアルコールを除去した。この後、粉体を取り出し、130℃で熱乾燥後粉砕を行い、目的とする表面被覆処理酸化チタンを得た。
同様な方法で、赤酸化鉄、黄酸化鉄および黒酸化鉄を用いて、目的とする表面被覆処理顔料を得た。
【0018】
(実施例2)
高速撹拌混合機にセリサイト2kgを入れ、セリサイトに対して1%のオクチルトリエトキシシラン(デグサ社製:DYNASYLAN OCTEO)と、1%のN−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム(味の素(株)製:アミソフトHS−11)を質量比30/70のイオン交換水/イソプロピルアルコール混合液500gに加熱溶解させた混合液を高速撹拌混合機に入れ、十分に攪拌した。次いで、この攪拌状態を維持したまま混合機を加熱し、槽内を減圧してイオン交換水とイソプロピルアルコールを除去した。この後、粉体を取り出し、130℃で熱乾燥後粉砕を行い、目的とする表面被覆処理セリサイトを得た。
同様な方法で、タルクおよびマイカを用いて、目的とする表面被覆処理顔料を得た。
【0019】
(比較例1)
高速撹拌混合機に酸化チタン2kgを入れ、酸化チタンに対して2%のオクチルトリエトキシシラン(テグサ社製:DYNASYLAN OCTEO)をイソプロピルアルコール混合液500gに溶解させたイソプロピルアルコール溶液を高速撹拌混合機に入れ、十分に攪拌した。次いで、この攪拌状態を維持したまま混合機を加熱し、槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。この後、粉体を取り出し、130℃で熱乾燥後粉砕を行い、目的とする表面被覆処理酸化チタンを得た。
同様な方法で、赤酸化鉄、黄酸化鉄および黒酸化鉄を用いて、目的とする表面被覆処理顔料を得た。
【0020】
(比較例2)
高速撹拌混合機にセリサイト2kgを入れ、セリサイトに対して2%のオクチルトリエトキシシラン(デグサ社製:DYNASYLAN OCTEO)をイソプロピルアルコール混合液500gに溶解させたイソプロピルアルコール溶液を高速撹拌混合機に入れ、十分に攪拌した。次いで、この攪拌状態を維持したまま混合機を加熱し、槽内を減圧してイソプロピルアルコールを除去した。この後、粉体を取り出し、130℃で熱乾燥後粉砕を行い、目的とする表面被覆処理セリサイトを得た。
同様な方法で、タルクおよびマイカを用いて、目的とする表面被覆処理顔料を得た。
【0021】
前述の実施例1,2および比較例1,2で得られた表面処理粉体について、水を用いて接触角を測定するとともに、感触評価を調査した。その結果が表1に示されている。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果から明らかなように、実施例1および実施例2の表面処理粉体では、比較例1および比較例2の表面処理粉体と比べて同程度の撥水性を有している上、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムによる滑らかさが加味されていることがわかる。
【0024】
(配合実施例)
実施例1および実施例2で得られた表面処理粉体を用いて以下の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
まず、パウダーベースを以下の配合にて調製した。
<パウダーベース配合>
表面処理セリサイト 35.0
表面処理タルク 25.0
表面処理マイカ 20.0
表面処理酸化チタン 10.0
表面処理黄酸化鉄 4.0
表面処理ベンガラ 1.2
表面処理黒酸化鉄 0.8
ナイロンパウダー 4.0
合計 100.0
次に、バインダーベースを以下の配合にて調製した。
<バインダーベース配合>
ジメチルポリシロキサン(6CS) 30.0
ジメチルポリシロキサン(10000CS) 25.0
精製ラノリン 9.0
エステル油 36.0
合計 100.0
前記パウダーベースおよびバインダーベースをそれぞれ88%および12%になるようにミキサーで混合しパウダーファンデーションを得た。
【0025】
(配合比較例)
前記比較例1および比較例2で得られた表面処理粉体を用いて配合実施例と同様にしてパウダーファンデーションを得た。
【0026】
配合実施例および配合比較例のパウダーファンデーションにおける分散状態、分散安定性、撥水性、塗布時の感触について評価した。その評価結果が表2に示されている。
【0027】
【表2】

【0028】
表2から明らかなように、実施例1および実施例2の顔料からなる配合実施例のパウダーファンデーションは、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウムのアルキル基が導入されたことによって、塗布時の滑らかさが向上し、分散も良好で、撥水性も良好であった。これに対して、比較例1および比較例2の顔料からなる配合比較例のパウダーファンデーションは、撥水性および分散状態が良好であったが、配合実施例に比べて塗布時の滑らかさがなかった。
【0029】
以上のことから、本実施例の化粧料用顔料およびその顔料を配合した化粧料によれば、撥水性を十分に保持するとともに、化粧料への配合分散状態が良好であり、塗布時の使用感に優れていると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料に、下記一般式(1)にて示されるアルキルアルコキシシランと、下記一般式(2)にて示されるN−アシルアミノ酸金属塩とを表面被覆処理してなることを特徴とする化粧料用顔料。
【化1】

【化2】

【請求項2】
請求項1に記載の化粧料用顔料を含有してなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2009−137907(P2009−137907A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317886(P2007−317886)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】