説明

化粧料

【課題】皮膚に塗布したときに皮膚の水分との反応による発熱を伴う化粧料において、良好な温感を与えるとともに、製品の経時安定性を改善した化粧料を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C)を含有することを特徴とする。
(A)水と混合したときに発熱する無機物を1重量%〜40重量%
(B)多価アルコールを40重量%〜約99重量%
(C)アルコールのゲル化又は固化剤を0.1重量%〜20重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚に塗布したときに皮膚の水分との反応による発熱を伴う化粧料において、良好な温感を与えるとともに、製品の経時安定性に優れる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
パック用化粧料やマッサージ用化粧料において使用時に温感を付与することは単に心地よくするだけでなく、血管を膨張させ血流を良くしたり、所望の薬剤の活性を高めることで間接的に効果の促進や補助が期待できるため、種々の組成物が提示されている。
【0003】
それらの多くは特定の無機物や有機化合物の溶解熱や水和熱を利用したもので、例えば無機物の場合では一〜三価金属イオンの硫酸塩、炭酸塩、塩化物、酸化物及びリン酸塩の他ゼオライト等を配合している。
【0004】
また、有機化合物の場合はポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールやアルキルグリセリド等が配合されているが、これらのみでは発熱量が低いため、更に無機物との併用も提示されている。
【0005】
例えばゼオライトとポリオキシアルキレングリコールを組み合わせたもの(特許文献1)、ゼオライトと平均重合度200〜1000のポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールに難溶性の親水性高分子化合物を配合したもの(特許文献2)等が挙げられるが、これらは保存中に分離等の形状変化を伴い、またゼオライトの吸着活性が高いため、配合処方によっては保存中に水分や他の配合成分と徐々に反応し、1〜2ヵ月後には発熱効果が低下することもあった。
【0006】
このためゼオライトを使用せず、例えばナトリウムのリン酸塩を主剤に用いて硫酸マグネシウムのような他の無機塩及び保湿剤や高分子化合物との組み合わせが提示されている(特許文献3)が、発熱の効果が低く、さらに分離等の形状変化についても解決し得なかった。
【0007】
従って、平均分子量600以下のポリエチレングリコールと無機塩の粒体と体質顔料を配合し、使用時に振とうして粉体を再分散させて用いるローション(特許文献4)や、無機塩・無機酸化物と油分を含む1剤と多価アルコールを含む2剤を使用時に混合する(特許文献5)タイプの化粧料等の形態を取らざるを得ず、化粧料としての使用性が悪かった。
【0008】
以上のように、これらの組成物においてはその発熱効果と製品の経時安定性及び化粧料としての使用性の全てを同時に満たすものが得られなかった。
【0009】
【特許文献1】 特開2001−151637号公報
【特許文献2】 特開平6−100411号公報
【特許文献3】 特開平6−336414号公報
【特許文献4】 特開2001−122722号公報
【特許文献5】 特開平11−279031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、皮膚に塗布したときに皮膚の水分との反応による発熱を伴う化粧料において、良好な温感を与えるとともに、製品の経時安定性を改善した化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有し、水と混合したときに発熱する実質的に非水系の化粧料を提供する。
(A)水と混合したときに発熱する無機物を1重量%〜40重量%
(B)多価アルコールを40重量%〜約99重量%
(C)アルコールのゲル化又は固化剤を0.1重量%〜20重量%
【発明の効果】
【0012】
本発明による化粧料は、皮膚に塗布したときに良好な温感を与えるとともに、製品としての経時安定性に優れた化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる水と混合したときに発熱する無機物は、溶解又は水和時に発熱を伴う無機物であれば特に限定されないが、一〜三価金属イオンの無機化合物が挙げられる。具体的には一価のナトリウム及びカリウム、二価のマグネシウム及びカルシウム、三価のアルミニウム等の硫酸塩、炭酸塩、塩化物、酸化物及びリン酸塩等で、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて所望の温感を得る。
【0014】
これらのうちマグネシウム及びカルシウムのそれぞれ、硫酸塩、炭酸塩、塩化物及び酸化物が発熱量及び発熱のコントロール性の理由で好ましく、無水硫酸マグネシウムがより好ましい。なおこれらの配合量は、所望の温感の程度にもよるが、通常1重量%〜40重量%が好ましく、特に10重量%〜30重量%がより好ましい。1重量%未満であると温感が得られず、40重量%を超えると化粧料としての使用性が悪くなり、また製剤化も難しくなる。
【0015】
なお、これらの無機物は皮膚に塗付する際の使用性を鑑みて、粉体である事が好ましく、更に100メッシュ以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いる多価アルコールとしては特に限定されないが、例えば1,3−ブチングリコール、1,2−ペンタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて使用する。
【0017】
本発明における多価アルコールの配合目的としては、それ自体が水と混和した時に発熱を伴うため、無機物の発熱の補佐的役割の他、皮膚に塗布するための良好な粘稠液、ペースト又はゲルとするための基剤及び全量を100とするための調整に用いらる。従ってその配合量は40重量%〜約99重量%となるのが好ましい。又このため経済性及び安全性の面から、上記多価アルコールのうち、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0018】
ここで皮膚に塗布するための良好な粘稠液、ペースト及びゲル状の製剤とするには常温で固体のものと液体のものを混合すれば比較的容易に所望の物性を得ることができる。上記多価アルコールのうち25℃において固体のものとして平均重合度が20(平均分子量が約950)以上のポリエチレングリコールが挙げられる。これと25℃において液体である平均重合度が12(平均分子量が約600)以下のポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等と混合することにより所望の物性を得ることができる。
【0019】
平均重合度が20以上のポリエチレングリコールとしては、PEG1000(平均重合度約20)、2000(同約40)、4000S(同約75)、6000S(同約150)、20000(同約350)(以上、三洋化成工業社製)等が入手可能である。
【0020】
本発明に用いるアルコールのゲル化又は固化剤として特許第3535197号公報記載の「平均重合度2以上のグリセリンの縮合物と、炭素数18〜28の直鎖状飽和脂肪酸と、炭素数20〜28の脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物」が挙げられる。特に有用なものとして(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10(POLYGLYCERYL−10 BEHENATE/EICOSADIOATE、別名:デカグリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸縮合物)がアイメークアップ用化粧料、口紅、ボールペン用油性インキ等に使用されている。具体的に入手可能な市販品してはノムコートHK−P(日清オイリオ社製)が挙げられる。
【0021】
このものの配合量としては0.1重量%〜20重量%が好ましく、0.5重量%〜10重量%がより好ましい。0.1重量%未満では効果を発揮せず、20重量%を超えて配合しても効果はあまり変わらずかえって不経済となる。
【0022】
本発明には更に多価アルコールに可溶の親水性ポリマーを配合することができる。これによりアルコールのゲル化又は固化剤を減量することができるので、経済的である。この多価アルコールに可溶の親水性ポリマーとしては、カルボキシビニルポリマー及びポリビニルピロリドンが好ましい。このうち溶解性の良いカルボキシビニルポリマーがより好ましい。その配合量は0.01重量%〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.1重量%〜1重量%である。0.01重量%より少ないと効果を発揮せず、3重量%を超えて配合しても、効果はあまり変わらない。
【0023】
カルボキシポリマーとしては、BF Goodrich社製のCARBOPOL940、同941、同ULTREZ−10、住友精化社製のAqupecHV−505、同HV−504、同HV−501E等があり、所望の物性に合わせて1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明における化粧料には、目的の効果が損なわれない範囲で通常の化粧料に用いられる任意の成分を配合することができる。例えば、溶剤、油剤、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、増粘剤、着色剤、着香剤、抗炎症剤、血行促進剤、細胞賦活剤、美白剤、角質軟化剤、収斂剤等が挙げられるが、水分を含まないよう注意する必要がある。水分を全く含まないものが理想的であるが、上記成分に水分が含まれる場合等は、化粧料中水分含有量としては0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満とするよう留意する。
【0025】
本発明における化粧料は、皮膚に塗布することにより皮膚の水分と反応して発熱し、良好な温感を与える。また、適用する直前又は適用と同時に水、温水又は水分を含む他の化粧料等を併用すると、発熱を促進させることができる。
【0026】
本発明における化粧料は、皮膚に塗布しやすいように粘稠液、ペースト又はゲル状とするのが好ましいが、無機物を安定的に多価アルコール中に分散させるためには、ペースト又はゲル状とするのがより好ましい。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、配合量は重量%とし、nは平均重合度を表すものとする。
【0028】
実施例及び比較例を表1及び表2に示した。なお、実施例及び比較例における各成分は、以下の原料を用いた。
硫酸マグネシウム(無水):
赤穂化成社製「MG−OK−100」(100Mesh)
塩化カルシウム(無水):和光純薬社製(粒状を粉砕して使用)
ゼオライト:東ソー社製「ゼオラムA−4(100Mesh)」
リン酸ナトリウム(無水):和光純薬社製(〜100Mesh)
ポリエチレングリコール(n=8):三洋化成工業社製「PEG400」
ポリエチレングリコール(n=40):同社製「PEG2000」
ポリエチレングリコール(n=350):同社製「PEG20000」
ジプロピレングリコール:昭和電工社製
プロピレングリコール:旭電化工業社製「アデカピージー」
1,3−ブチレングリコール:ダイセル社製
グリセリン:ミヨシ油脂社製「日本薬局方濃グリセリン」
(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10:
日清オイリオ社製「ノムコートHK−P」
カルボキシビニルポリマー:住友精化社製「AqupecHV−501E」
ポリビニルピロリドン:ISPジャパン社製「PVP K−30」
メチルパラベン:クラリアントジャパン社製
プロピルパラベン:同社製
【0029】
次に実施例及び比較例における評価方法を示す。
発熱効果:予め25℃に調整した試料10gに対して、同じく25℃の純水3gを加えて撹拌混合し、1分後中心部の温度を測定する。
保存試験:各試料180gを容量220mLの無色透明ガラス瓶に入れ、密栓して45℃の恒温槽に1ヶ保存した後、目視により分離等め外見を評価し、同時に再度発熱効果を評価する。
【0030】
なお、保存試験についての評価基準は以下に基づくものとする。
○・・・分離等の外見変化がほとんど見られない。
△・・・分離等の外見変化がわずかに見られる。
×・・・分離等の外見変化がかなり見られる。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
実施例2〜4は、実施例1に対して硫酸マグネシウム(無水)の量を変えたものであるが、いずれも許容範囲内の発熱効果と優れた保存安定性を示した。
【0034】
実施例5は平均重合度が20以上のポリエチレングリコールを(べヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10に置き換えたもので、液性以外は実施例1とほぼ同等であった。
【0035】
実施例6及び7は、実施例1に対して25℃において液体である多価アルコールの配合比率を変えたものであり、いずれも許容範囲内の発熱効果と優れた保存安定性を示した。
【0036】
実施例8及び9は、実施例1に対して親水性ポリマーの量又は種類を変えたものであり、いずれも実施例1と同様の結果であった。
【0037】
実施例10は、実施例1に対して親水性ポリマーを含まず、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10を増量したもので、実施例1と同様の結果であった。
【0038】
実施例11は、実施例1に対して硫酸マグネシウム(無水)を塩化カルシウム(無水)に置き換えたもので、若干発熱効果が劣るものの良好な結果を得た。
【0039】
比較例1は、実施例1に対して(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10を含まず、保存試験において固層と液層の分離が発生し、保存安定性が悪かった。
【0040】
比較例2は、実施例1に対して硫酸マグネシウム(無水)をゼオライトに置き換えたもので、保存試験において固層と液層の分離が著しく、また保存試験後の発熱効果も低下が見られた。
【0041】
比較例3は、実施例1に対して硫酸マグネシウム(無水)をリン酸ナトリウム(無水)に置き換えたもので、良好な発熱効果が得られなかった。
【0042】
以上のように、実施例1〜11に示す各化粧料はいずれも良好な発熱効果及び保存安定性を示す優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有し、水と混合したときに発熱する実質的に非水系の化粧料。
(A)水と混合したときに発熱する無機物を1重量%〜40重量%
(B)多価アルコールを40重量%〜約99重量%
(C)アルコールのゲル化又は固化剤を0.1重量%〜20重量%
【請求項2】
更に成分(D)として、成分(B)に可溶の親水性ポリマーを0.01重量%〜5重量%含有する請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
成分(A)の水と混合したときに発熱する無機物が、マグネシウム及びカルシウムのそれぞれ、硫酸塩、炭酸塩、塩化物及び酸化物から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は請求項2に記載の化粧料。
【請求項4】
成分(B)の多価アルコールがポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜請求項3に記載の化粧料。
【請求項5】
成分(C)のアルコールのゲル化又は固化剤が、平均重合度2以上のグリセリンの縮合物と、炭素数18〜28の直鎖状飽和脂肪酸と、炭素数20〜28の脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物である請求項1〜請求項4に記載の化粧料。
【請求項6】
成分(D)の成分(B)に可溶の親水性ポリマーが、カルボキシビニルポリマーである請求項1〜請求項5に記載の化粧料。
【請求項7】
成分(A)の水と混合したときに発熱する無機物が、無水硫酸マグネシウムである請求項1〜請求項6に記載の化粧料。
【請求項8】
成分(B)の多価アルコールが25℃において固体のものと、液体のものを組み合わせてなる請求項1〜請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
成分(B)の多価アルコールのうち、25℃において固体のものが、平均重合度20以上のポリエチレングリコールで、かつ25℃において液体のものが、平均重重合度12未満のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜請求項8に記載の化粧料。
【請求項10】
成分(C)のアルコールのゲル化又は固化剤が、(ベヘン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル−10である請求項1〜請求項9に記載の化粧料。

【公開番号】特開2006−219465(P2006−219465A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66267(P2005−66267)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(397031304)エステートケミカル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】