説明

化粧料

【課題】美しい仕上がりや、透明感、フィット感、形状変化の効果を与えるだけでなく、汗をすばやく吸収しかつ吸収した汗を放湿することにより、肌の快適性や化粧効果の持続性を向上させる化粧料を提供する。
【解決手段】繊維を含む化粧料において、該繊維を特定の有機スルホン酸金属塩を共重合した、ポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる弾性繊維とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルエステルポリマーからなる弾性繊維を含有する化粧料に関する。詳細には、本発明は、マスカラ、ファンデデーション、アイブロー、マニキュアなどの化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション等の化粧料には、化粧効果を高めたり、滑らかな使用感を与えたりするために繊維が配合されている。また、マスカラ等の化粧料には、まつ毛をカールさせるキャッチアップ効果やまつ毛を長く見せるロングラッシュ効果、ボリュームアップ効果を得るために繊維が使用されている(特許文献1〜3参照)。
しかしながら、この場合でも化粧料の塗布後の仕上がりにおいて、特に変化のないものであった。
【0003】
一方、かかる化粧料においては、吸湿性の高い物質としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、シリカゲル、活性炭、ゼオライト等の物質があった。しかしながら、ヒトに使用する場合には、放湿性が少なかったり、潮解性があるものは皮膚刺激性や肌がべたついたりするという問題があった。
これに対して、特許文献4には、べたつきや汗うきを抑える方法として、アルギン酸カルシウム球状粉末配合皮膚外用剤とすることにより、発汗時の汗を吸収し皮膚のべたつきや汗うきを抑える制汗剤が提案されている。しかしながら、汗を吸収しべたつきを抑えるものの放湿性に劣るものであった。
【0004】
また、特許文献5には、表面処理した海綿繊維破砕物を含有した化粧料が提案されているが、帯電防止効果に優れ油分となじみがよいものの吸放湿性は満足のいくものではなかった。
さらに、特許文献6および7には、大豆蛋白質で顔料の表面を被覆してなる吸湿保湿性顔料や、ガラクトマンナン由来の吸放湿素材を用いた制汗剤が提案されているが、吸放湿性が不充分であり、さらに吸放湿性に優れたものが望まれていた。
その他、特許文献8には、アクリル系共重合体、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、コットン及びポリエステルの粉体を用いる方法も考案されているが、十分な吸湿性を得ることは難しい。
【0005】
【特許文献1】特開昭57−158714号公報
【特許文献2】特開平7−196440号公報
【特許文献3】特開平3−179323号公報
【特許文献4】特開平6−107519号公報
【特許文献5】特開平6−107520号公報
【特許文献6】特開平9−302260号公報
【特許文献7】特開2002−249421号公報
【特許文献8】特開2005−104889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記を背景になされたもので、その目的は、美しい仕上がりや、透明感、フィット感、形状変化の効果を与えるだけでなく、汗をすばやく吸収しかつ吸収した汗を放湿することにより、肌の快適性や化粧効果の持続性を向上させる化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの研究によれば、上記課題は、繊維が含有されている化粧料であって、該繊維がポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる弾性繊維であることを特徴する化粧料によって達成できることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の化粧料は、繊維が含有されている化粧料であって、該繊維がポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる弾性繊維であることが肝要である。さらに本発明においては、上記弾性繊維が、35℃95%RHでの吸湿率が5%以上、吸水伸長率が10%以上であることが好ましい。これにより、化粧料全般において、美しい仕上がりや、透明感、フィット感、形状変化の効果を与えるだけでなく、汗をすばやく吸収しかつ吸収した汗を放湿することにより、肌の快適性や化粧効果の持続性を向上させる化粧料を提供することができる。
【0009】
ハードセグメントであるポリブチレンテレフタレートは、ブチレンテレフタレート単位を少なくとも70モル%以上含有することが好ましい。ブチレンテレフタレートの含有率は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0010】
上記ポリブチレンテレフタレートには、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で他の成分が共重合されていてもよい。他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、例えばナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸成分を挙げることができる。さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸、のような三官能性以上のポリカルボン酸を共重合成分として用いても良い。また、ジオール成分では、例えばトリメチレングリコール、エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコールのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール成分を挙げることができる。さらに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。
【0011】
一方、ソフトセグメントであるポリオキシエチレングリコールは、オキシエチレングリコール単位を少なくとも70モル%以上含有することが好ましい。オキシエチレングリコールの含有量は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。上記ポリオキシエチレングリコールには、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、例えば、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリンなどが共重合されていてもよい。
上記ポリオキシエチレングリコールの数平均分子量としては、400〜8000が好ましく、なかでも1000〜6000が特に好ましい。
【0012】
本発明においては、ハードセグメント:ソフトセグメントの重量比率は、70:30〜30:70の範囲にあることが好ましく、より好ましくは60:40〜40:60の範囲である。ハードセグメントの重量比率が70%を超えると、弾性繊維の伸度が低くなり、高ストレッチ用途に使用することが難しくなり、吸湿性が低下する傾向にある。また、ハードセグメントの重量比率が30%未満であると、ポリブチレンテレフタレート結晶部の割合が低くなるため強度が低下する傾向にある。
【0013】
前述した高い吸湿率及び吸水伸長率は、上記ポリエーテルエステルエラストマーに、下記一般式(1)で表される有機スルホン酸金属塩を共重合し、かつ弾性繊維の固有粘度を0.9以上とすることで、より容易に得ることができる。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1は芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または炭素数10以下の脂肪族炭化水素基である。特に好ましいR1は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、とりわけベンゼン環である。M1はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、jは1または2である。なかでもM1がアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム)であり、かつjが1であるものが好ましい。X1はエステル形成性官能基を示し、X2はX1と同一もしくは異なるエステル形成性官能基を示すかあるいは水素原子を示すが、エステル形成性官能基であるのが好ましい。エステル形成性官能基としてはポリエーテルエステルの主鎖または末端に反応して結合する基であればよく具体的には下記の基を挙げることができる。
【0016】
上記一般式(1)で表わされる有機スルホン酸金属塩の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸リチウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸ナトウリム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸リチウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシスフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,5−ビス(ヒドロエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−ナトリウムスルホコハク酸などをあげることができる。上記有機スルホン酸金属塩は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0017】
本発明においては、下記一般式(2)で表される有機スルホン酸金属塩を共重合させることが、ポリエーテルエステルエラストマーの固有粘度を容易に0.9以上とすることができる点、さらに得られる弾性繊維の吸湿率および吸水伸長率を格段に高くできる点で好ましい。我々の研究によれば、かかる有機スルホン酸金属塩を共重合させることにより、吸水伸長率20%以上といった極めて高い水準を達成でき、より快適性に優れた布帛が容易に得られることがわかった。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、R2は芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基であり、前述した一般式(1)におけるR1の定義と同じであり、M2はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、前述した一般式(1)におけるM1の定義と同じある。かかる有機スルホン酸金属塩の好ましい具体例としては、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸リチウム等が例示される。
【0020】
上記有機スルホン酸金属塩の共重合量は、あまり多すぎると弾性繊維の融点が低下して耐熱性、耐候(光)性、耐薬品性などが低下する傾向にあるため、ポリエーテルエステルエラストマーを構成する全酸成分を基準として0.1〜20モル%の範囲とするのが好ましい。逆に、上記共重合量が少なすぎても、吸湿率および吸水伸長率が低下する傾向にあり、0.5〜15モル%の範囲とするのがより好ましい。
【0021】
本発明に用いるポリエーテルエステルエラストマーは、たとえば、テレフタル酸ジメチル、テトラメチレングリコールおよびポリオキシエチレングリコールとを含む原料を、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応させ、ビス(ω−ヒドロキシブチル)テレフタレート及び/またはオリゴマーを形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下にて溶融重縮合を行うことにより得ることができる。
上記のエステル交換触媒としては、ナトリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛、マンガン等の金属化合物を使用するのが好ましい。
【0022】
重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、錫化合物を使用するのが好ましい。触媒の使用量は、エステル交換反応、重縮合反応を進行させるために必要な量であるならば特に限定されるものではなく、また、複数の触媒を併用することも可能である。
【0023】
また、上記ポリエーテルエステルには、後述するヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物が添加されていることが、溶融紡糸時のポリマーの固有粘度の低下を抑制するだけでなく、得られた該弾性繊維の熱劣化、酸化劣化、光劣化などが抑制する効果をも有しており、より好ましい。
【0024】
なお、弾性繊維の固有粘度を0.9以上にする方法としては、ポリエーテルエステルエラストマーを固相重合する方法やポリエステルエーテルエラストマーの合成段階や溶融紡糸段階で鎖延長剤を使用する方法なども採用することができる。この際に使用する鎖延長剤の好ましい具体例としては、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)などのオキサゾリン化合物やN,N’−テレフタロイルビスカプロラクタムなどを挙げることができる。
【0025】
前述したように、弾性繊維が以上に述べたポリエーテルエステルエラストマーからなることに加え、弾性繊維の固有粘度が0.9以上であることが好ましい。上記の固有粘度が0.9以上では、極めて高い吸湿率および吸水伸長率を実現することができ、快適性に優れた布帛を容易に得ることができる。一方で、固有粘度があまり大きくなり過ぎると製糸性が低下するだけでなく、製造コストが高くなる。このため、固有粘度は0.9〜1.2の範囲にあることがより好ましい。
【0026】
上記弾性繊維においては、破断伸度を400%以上とすることが、吸湿性を5%以上、吸水伸長率を10%以上とすることができる点で好ましい。上記破断伸度としては、400〜900%の範囲がより好ましく、さらに好ましくは400〜800%の範囲である。
また、弾性繊維の沸水収縮率を10%以上とすることが、吸湿性を5%以上、吸水伸長率を10%以上とする上でより好ましい。
【0027】
一方、有機スルホン酸金属塩を実質的に共重合していないポリエーテルエステルからなる弾性繊維であっても、35℃95%RHの吸湿率が5%以上、吸水伸長率が10%以上の弾性繊維とすることができる。
すなわち、弾性繊維が示差走査型熱量計により得られるDSC曲線で2つの結晶融解ピークを有し、低温側の結晶融解ピーク高さHm1と高温側の結晶融解ピーク高さHm2との比Hm1/Hm2が0.6〜1.2の範囲であり、かつ破断伸度が400%以上であるものは、上記のような高い吸湿率および吸水伸長率を容易に達成できる。
【0028】
ポリエーテルエステルの、ハードセグメント:ソフトセグメントの比率が、重量を基準として30:70〜70:30であることが好ましいことは前にも述べたが、ハードセグメントの比率を70重量%以下とすることは、Hm1/Hm2の比率を1.2以下とする上で好ましい。
【0029】
上記のように、Hm1/Hm2が0.6〜1.2の範囲にあるものが、高い吸湿率や吸水伸長率を示す理由としては以下のことが考えられる。2つの結晶融解ピークは、サイズが大きく異なる2つのタイプの結晶が存在することによるものと考えられ、低温側のピークがサイズの小さな結晶の融解温度ピーク、高温側のピークがサイズの大きな結晶の融解温度ピークであると推される。このことは、繊維の横断面を原子間力顕微鏡により硬軟を走査し、硬部を結晶性のハードセグメント、軟部をソフトセグメントに帰属させて考えることでほぼ確認されている。また、ポリエーテルエステルは、ソフトセグメントを構成するポリオキシエチレングリコールが水分子を収着し抱水することで吸湿性が発現しているものと考えられる。以上のことから、Hm1/Hm2が1.2以下では、サイズの小さな結晶の数が少なく、ハードセグメントを拘束する結晶架橋点数も少ないことから、ソフトセグメントの膨潤が妨げられず、十分に抱水でき、吸湿率および吸水伸長が著しく向上するためと考えられる。一方、Hm1/Hm2が0.6以上では、結晶架橋点数の低下しすぎず、繊維の伸長弾性が高く維持され、繊維物性として実用的なレベルにある。Hm1/Hm2のより好ましい範囲は0.8〜1.2である。
【0030】
また、2つの結晶融解ピークの温度Tm1及びTm2が200℃以上であることが好ましく、十分な耐熱性を維持できる。一方、結晶融解ピーク温度Tm1及びTm2が225℃以下であることが好ましく、繊維の弾性を高くすることができる。これは、Tm1及びTm2がかかる関係にあるものは、結晶のサイズが大きくなり過ぎず、結晶架橋点数が低下し過ぎないためと考えられる。
【0031】
さらに、前述したように弾性繊維の破断伸度は400%以上とすることが好ましく、より好ましくは500〜1000%の範囲、さらに好ましくは600〜900%の範囲である。破断伸度が400%以上において、より高い吸湿率や吸水伸張率を達成できる。
本発明においては、繊維の繊度は特に限定されないが、好ましくは1.1〜11.1dtex、より好ましくは1.1〜5.5dtexである。また、上記繊維は、異型断面繊維であってもよく、中空を有する繊維であっても良い。
【0032】
また、上記繊維には、必要に応じて、微細孔形成剤、変色防止剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、吸湿剤、抗菌剤などが含まれていても良い。また、該繊維は染色を施したものであってよい。
上記繊維の繊維長としては、用途によっても異なるが、好ましくは0.01〜50mm、より好ましくは0.01〜10mm、さらに好ましくは0.01〜5mmである。
また、上記繊維は、化粧料中に、好ましくは0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは、0.3〜20重量%の範囲で含有させることができる。
【0033】
化粧料として具体的には、肌用の製品(ファンデーション)、頬またはアイシャドーのためのメイクアップ製品、リップ製品、コンシーラー、頬紅、マスカラ、アイライナー、まゆ毛のためのメイクアップ製品、リップまたはアイ・ペンシル、爪用製品、体用のメイクアップ製品、髪のためのメイクアップ製品(ヘア・マスカラまたはヘア・スプレー)などをあげることができる。これらの化粧料は、ケラチン物質に付与するためのように使用することができるか、ケラチン物質の上に既に堆積しているメイクアップの上に、例えば、メイクアップを改質するために使用することができる(化粧料を、通常トップ・コートと称されるトップ製品として付与する)。
【0034】
化粧料は、付け爪、付けまつ毛、人工頭髪、かつら、皮膚または唇に付着しているパステルまたはパッチ(つけボクロタイプのもの)などのメイクアップ・アクセサリ(支持体)の上に付与することもできる。この際、繊維は、親水性媒体または親油性媒体に含有させ、化粧料とすることができる。
【0035】
上記化粧料、あるいはそのベース(下地用)化粧料および/またはトップ化粧料には、水または、水とアルコールなどの親水性有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノールまたはn−プロパノールなどの2〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級モノアルコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオールとの混合物を含んでよい。また、親水性相は、親水性であるCエーテルおよびC〜Cアルデヒドを含有してもよい。水または、水と親水性有機溶剤との混合物は、本発明による化粧料あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のうち少なくとも一方中に、化粧料の全重量に対して、0〜90重量%(特に、0.1〜90重量%)、好ましくは0〜60重量%(特に、0.1〜60重量%)の範囲の量で含有してよい。
【0036】
化粧料あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のいずれかには、特に、室温(通常は25℃)で液体である脂肪物質および/またはろうなどの室温で固体である脂肪物質、ペースト状脂肪物質、ゴムおよびこれらの混合物からなる脂肪相を含んでいてもよい。さらに、この脂肪相は、親油性有機溶剤を含有してよい。
【0037】
上記化粧料で使用することができる、一般にオイルと称される室温で液体である脂肪物質として、ペルヒドロスクアレンなどの動物由来の炭化水素油、ヘプタン酸またはオクタン酸のトリグリセリドなどの4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸の液体トリグリセリドまたはヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ゴマ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油およびアボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油、シアバターなどの植物性炭化水素油、パラフィン油およびその誘導体、石油ゼリー、ポリデセン、パーリーム(parleam)などの水素化ポリイソブテンなどの鉱物または合成由来の直鎖または分枝鎖炭化水素、例えば、パーセリン油(Purcellin oil)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−オクチルドデシル、エルカ酸2−オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの、特には脂肪酸の合成エステルおよびエーテル、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪族アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールなどのポリオールエステル、およびペンタエリトリトールエステル、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールなどの12〜26個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、部分的に炭化水素−および/またはシリコーンベースのフッ素化オイル、フェニルトリメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ポリメチルフェニルシロキサンなどの場合によってフェニル基を有するシクロメチコン(cyclomethicone)、ジメチコンなどの揮発性か、あるいは、直鎖または環式で、室温で液体またはペースト状であるポリメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンオイル、および、これらの混合物を挙げることができる。
【0038】
これらのオイルは、化粧料の全重量に対して、0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜85重量%の範囲で含有してもよい。
化粧料、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のいずれかは、1種または複数の化粧品的に許容される有機溶剤を含有してもよい(許容しうる許容性、毒性および感触)。これらの溶剤は、化粧料の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%の範囲で含有してよい。
【0039】
本発明の化粧料中で使用することができる溶剤として、酢酸メチル、エチル、ブチル、アミル、2−メトキシエチルまたはイソプロピルなどの酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、5〜10個の炭素原子を有するアルデヒド、少なくとも3個の炭素原子を有するエーテル、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0040】
さらに、本発明の化粧料あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のいずれかには、ゴムまたはろうなどの、室温で固体またはペースト状の脂肪物質を含んでよい。ろうは、炭化水素ベース、フッ素化物ベースおよび/またはシリコーンベースであってよく、植物、鉱物、動物または合成由来であってよい。特に、ろうは、25℃より高い、さらに好ましくは、45℃より高い融点を有するものが好ましい。
【0041】
本発明で使用できる「ろう」としては、蜜蝋、カルナウバろうまたはカンデリラろう、パラフィン、微結晶ろう、セレシンろうまたはオゾケライト、ポリエチレンまたはフィッシャー−トロプシュろう、16から45個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシジメチコーンなどのシリコーンろうなどの合成ろうを挙げることができる。
【0042】
ゴムは通常、高分子量のポリジメチルシロキサン(PDMS)またはセルロースゴムまたは多糖類であり、ペースト状の物質は通常、ラノリンおよびその誘導体またはPDMSなどの炭化水素化合物である。
固体物質の性質および品質は、所望の機械的特性および手触りに左右される。これらは化粧料の全重量に対して、0〜50重量%、好ましくは1〜30重量%のろうを含有すればよい。
さらに、化粧料、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のいずれかは、被膜形成ポリマーを含有してもよい。本発明において、「被膜形成ポリマー」とは、単独で、または被膜形成助剤の存在下で、連続的かつ付着性の被膜を支持体、特に、ケラチン物質上に被膜をつくるポリマーをいう。
【0043】
被膜形成ポリマーは、ビニルポリマー、重縮合物またはポリマーまたは天然由来から選択することができる。被膜形成ポリマーとして特に、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、セルロースポリマーを挙げることができる。被膜形成ポリマーは、溶解するか、化粧料の生理学的に許容される媒体中に固体粒子の形で分散させることができる。
被膜形成ポリマーは、本発明による化粧料あるいはベースおよび/またはトップ化粧料のいずれかに、化粧料の全重量に対して、0.01〜60重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
被膜形成ポリマーを、被膜形成助剤と組み合わせることができる。このような被膜形成剤は、公知の化合物から選択することができ、特に、可塑剤および融合助剤から選択することができる。
【0044】
化粧料、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料の一方は、特に、懸濁液、分散液、溶液、ゲル、特に水中油型(O/W)または油中水型(W/O)のエマルション、または多重(W/O/Wまたはポリオール/O/WまたはO/W/O)エマルションの形、クリーム、ペースト、フォーム、特にイオン性または非イオン性脂質中のベシクルの分散液、2相または多相ローション、スプレー、パウダー、ペースト、特に軟性ペースト(特に、円錐/平面幾何での測定の10分後に、200s−1のせん断速度で、0.1から40Pa.s程度の25℃での動的粘度を有するペースト)の形状であってもよい。化粧料は、有機、特に無水の連続相を含んでいてもよい。
上記の化粧料、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料の一方はさらに、ビタミン、増粘剤(特に、場合によって改質されている粘土)、微量元素、皮膚軟化剤、金属イオン封鎖剤、香料、アルカリ化剤または酸性化剤、防腐剤、紫外線遮断剤またはこれらの混合物などの化粧品で一般的に使用される成分を含有していてもよい。
【0045】
化粧料、特にベースおよびトップ化粧料は、化粧品または皮膚科学分野で通常使用される調製方法により、得ることができる。
上記化粧料中には、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料中に着色剤を含有していてもよい。付加的な着色剤は、顔料、真珠箔剤、着色剤およびこれらの混合物から選択することができる。ここで、顔料とは、白色か、着色されていて、無機または有機で、生理食塩水中に不溶性で、化粧料の着色を目的とする何らかの形の粒子をいう。また、真珠箔剤とは、特に、一定の軟体動物によりその殻で生産されるか、合成される何らかの形の虹色粒子をいう。
【0046】
顔料は、化粧料中に、特にベースおよび/またはトップ化粧料中に、化粧料の重量に対して、0から15重量%(特に、0.01重量%から15重量%)、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有させることが好ましい。
顔料は、白色であるか、着色されており、無機および/または有機であってよい。無機顔料のうち、場合によって表面処理されている二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色または赤色)、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、鉄ブルー、アルミニウム粉末および銅粉末などの金属粉末を挙げることができる。
有機顔料のうち、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料およびカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムをベースとするラッカーを挙げることができる。
【0047】
真珠箔剤は、化粧料中に、特にベースおよび/またはトップ化粧料中に、化粧料の全重量に対して、0〜25重量%(特に、0.01〜25重量%)、好ましくは0.01〜15重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有されていてもよい。
真珠箔顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの真珠箔顔料、酸化鉄でコーティングされた雲母-チタン、特に鉄ブルーまたは酸化クロムでコーティングされた雲母-チタン、前記のタイプの有機顔料でコーティングされた雲母-チタンなどの着色真珠箔顔料およびオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠箔顔料から選択することができる。
【0048】
着色剤は、水溶性または脂溶性着色剤または着色ポリマーから選択される着色物質であってもよい。着色物質は、化粧料中に、特にベースおよび/またはトップ化粧料中に、化粧料の全重量に対して、0〜6重量%(特に、0.01〜6重量%)、好ましくは0.01〜3重量%の範囲で含有させてもよい。
脂溶性着色剤は例えば、ダイズ油、スダンブラウン、DC Yellow 11、DC orange 5、キノリンイエロー、スダンレッドIII(CTFA名称、D & C red 17)、ルテイン、キニザリングリーン(CTFA名称、DC green 6)、Alizurolpurple SS(CTFA名称、DC violet No.2)、リコピン、ベータカロチン、ビキシン、カプサンチン(capsantein)などのカロテノイド誘導体および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
水溶性着色剤のうち、例えば、Aleurites Moluccana Willd、Alkanna Tinctoria Tausch、Areca Catechu L.、Arrabidaea Chica E.およびB.、Bixa Orellana L(annatto)、Butea Monosperma Lam、Caesalpina Echinata Lam、Caesalpina Sappan L.、Calophyllum Inophyllum L.、Carthamus Tinctorius L.、Cassia Alata L.、Chrozophora Tinctoria L.、Crocus Sativus L.、Curcuma Longa L.、Diospyros Gilletii de Wild、Eclipta Prostrata L.、Gardenia Erubescens Stapf.およびHutch.、Gardenia Terniflora Schum.およびThonn.、Genipa Americana L.、Genipa Brasiliensis L.、Guibourtia Demeusei(Harms)J.Leon、Haematoxylon Campechianum L.、Helianthus annuus、Humiria Balsamifera(Aubl.)St-Hi1.、Isatis Tinctoria L.、Mercurialis perenis、Monascus purpureus、Monascus ruber、Monascus pilosus、Morus Nigra L.、Picramnia Spruceana、Pterocarpus Erinaceus Poir.、Pterocarpus Soyauxii Taub.、Rocella Tinctoria L.、Rothmannia Whitfieldii(Lindl.)Dand.、Schlegelia Violacea(Aubl.)Griseb.、Simira Tinctoria Aublet、Stereospermum Kunthianum Cham.、Symphonia Globulifera L.、Terminalia Catappa L.、Sorgho、Aronia melanocarpaなどの着色剤植物の抽出物、Impatiens Balsaminaとも称されるLawsonia Inermis L.に由来するローソン(lawsone)を含むナフトキノン、赤色木材の抽出物、ビート液、フクシンの二ナトリウム塩、赤色果実の抽出物などのアントシアニン、ジヒドロキシアセトン、イサチンなどのモノ-またはポリカルボニル誘導体、アロキサン、ニンヒドリン、グリセルアルデヒド、メソ酒石酸アルデヒド、4,5-ピラゾリンジオン誘導体およびこれらの混合物を挙げることができ、これらの皮膚用着色剤を、直接着色剤またはインドール誘導体および/またはこれらの混合物と組み合わせてもよい。
【0050】
着色剤は、着色ポリマー、即ち少なくとも1種の有機着色基を含むポリマーであってもよい。着色ポリマーは通常、ポリマーの全重量に対して、10重量%未満の着色物質を含有する。
着色ポリマーは、どのような化学的性質を有してもよく、特に、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート、セルロースまたはキトサンポリマーなどの天然由来のポリマーまたはこれらの混合物であり、好ましくは、ポリエステルまたはポリウレタンポリマーである。
着色ポリマーは、着色基を有してよく、特に、共有結合により、ポリマー鎖上でグラフトされていてもよい。
特に、着色ポリマーは、そのうちの少なくとも1種が有機着色モノマーである少なくとも2種の異なるモノマーをベースとするコポリマーであってよい。
【0051】
着色ポリマーのモノマーは、アントラキノン、メチン、ビスメチン、アザメチン、アリリデン(arylidene)、3H−ジベンゾ[7,i-j]イソキノリン、2,5-ジアリールアミノテレフタル酸およびそのエステル、フタロイルフェノチアジン、フタロイルフェノキサジン、フタロイルアクリドン、アントラピリミジン、アントラピラゾール、フタロシアニン、キノフタロン、インドフェノール、ペリノン、ニトロアリールアミン、ベンゾジフラン、2H-1-ベンゾピラン-2-オン、キノフタロン、ペリレン、キナクリドン、トリフェノジオキサジン、フルオリジン(fluoridine)、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、チオキサントロン(thioxanthrone)、ベンゾアントロン、インダントロン、インジゴ、チオインジゴ、キサンテン、アクリジン、アジン、オキサジンから選択することができる。
着色ポリマーは、本発明による化粧料中に、特に、ベースおよび/またはトップ化粧料中に、化粧料の全重量に対して、0〜50重量%(特に、0.01〜50重量%)、好ましくは0.5〜25重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【0052】
本発明による化粧料には、さらに充填剤を含有してもよい。充填剤との表現は、無色または白色で、無機または合成で、化粧料が製造される温度に無関係に化粧料の媒体中に不溶性である、何らかの形の粒子を意味すると理解すべきである。これらの充填剤は、化粧料のレオロジーまたは手触りを改質するためにも役立つ。
【0053】
充填剤は、無機または有機であり、結晶形に関わらず、血小板形、球形または長円形の何らかの形であってよい(例えば、シート形、立方形、六方晶形、斜方晶形など)。タルク、雲母、シリカ、カオリン、ポリアミドの粉末、ポリ-β-アラニンの粉末およびポリエチレンの粉末、テトラフルオロエチレンポリマーの粉末、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、塩化ポリビニリデン/アクリロニトリル系ポリマー中空マイクロスフェア、アクリル酸コポリマーおよびシリコーン樹脂のマイクロビーズ、エラストマーポリオルガノシロキサンの粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびヒドロカーボネート、ヒドロキシアパタイト、シリカの中空マイクロスフェア、ガラスまたはセラミックマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、マグネシウムまたはリチウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0054】
充填剤は、化粧料、特にベースおよび/またはトップ化粧料の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0.01〜50重量%、さらに好ましくは0.02〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
上記化粧料、あるいはベースおよび/またはトップ化粧料は、前記のような顔料および/または真珠箔剤および/または充填剤を含む粒子相を含んでよく、これらは、化粧料の全重量に対して、0〜98重量%(特に、0.01〜98重量%)、好ましくは0.01〜30重量%から、さらに好ましくは0.02〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【0055】
本発明による化粧料には、アクリル系共重合体、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、コットン及びポリエステルから選ばれる粉体を、1種単独又は2種以上を適且組み合わせて用いることができる。
アクリル系共重合体とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体の共重合体をいう。アクリル酸、メタクリル酸の誘導体としては、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル等が含まれる。
【0056】
粉体の粒子径は1〜200μmであり、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜50μmである。粒子径が1μm未満だと皮膚上に塗布した際に伸びが悪かったり、エアゾール製剤の場合には吸入した時にムセる場合がある。一方、200μmを超えるとザラザラした感触となる。粉体の形状は、滑らかで伸びが良くなる点から、球状、特に真球状のものが好ましい。
粉体の配合量は、組成物中0.01〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。配合量が少なすぎると吸湿、放湿効果が得られない場合があり、多すぎると使用感が悪くなる場合がある。
【0057】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、特に化粧料組成物に含まれる
制汗剤、殺菌剤、消臭剤といった他の成分を含むことができる。
本発明に使用される制汗剤としては、クロロヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、アルミニウムハイドロキシクロライド、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β−ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。制汗剤を配合する場合、組成物中5〜30質量%配合することが好ましい。
【0058】
本発明に使用される殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、3,4,4−トリクロロカルバニリド(T.C.C)、トリエチルサイトレート(T.E.C)、塩化ベンゾトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、ハロカルバン、ヒノキチオール、ジンクピリチオン、ピロクトンオラミン、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、サリチル酸、ヘキサクロロフェン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、銀担持ゼオライト、銀担持シリカ等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。殺菌剤を配合する場合、組成物中0.1〜5質量%配合することが好ましい。
【0059】
本発明に使用される消臭剤としては、酸化亜鉛、酸化亜鉛複合粉末、活性炭、ユーカリエキスや緑茶抽出物等の植物抽出物、マグネシアシリカ、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。消臭剤を配合する場合、組成物中1〜10質量%配合することが好ましい。
【0060】
その他に、粉末成分、水溶性成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子化合物、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の組成物は、汗をすばやく吸収しかつ吸収した汗を放湿することにより、肌の快適性を向上させる。また、一度吸収した汗を放出できることから汗の吸収力が持続し、容器に充填した場合にも目詰まりがなく、汗と臭いを抑制し、塗布時のムセがないという特徴を有するものである。従って、ボディパウダー、ファンデーションといった化粧料や、制汗・消臭剤に好適である。
【0062】
本発明の組成物は、目的とする剤型に応じて常法により製造することができる。本発明の剤型は、特に限定されず、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、粉体等いずれの剤型をもとることができる。
本発明の容器は特に限定されないが、エアゾール缶、フィルム積層チューブ、アルミ積層チューブ、アルミ積層包装体、プラスチックボトル等を用いることができる。
本発明の組成物は、その調製方法、使用方法が特に制限されるものではなく、各剤型の常法に準じて調製することができ、各製剤の常法により常用量を通常の方法で使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各物性は下記の方法より測定した。
【0064】
(1)吸湿率
試料を所定の条件に調節した恒温恒湿室中に24時間調湿し、絶乾試料の重量と調湿試料の重量から次式により吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(調湿試料の重量−絶乾試料の重量)×100/絶乾試料の重量
【0065】
(2)吸水伸長率・吸湿伸長率
繊維をかせ取りし、無緊張下にて30分間沸水処理後、20℃65%RHで風乾・調湿した後に非接触の160℃環境下で無緊張下にて2分間乾熱処理した糸を20℃65%RHの環境下に24時間放置し、これに0.88×10−3cN/dtexの荷重を掛けて測定した糸の長さを「乾燥時の糸の長さ」とし、その後この糸を20℃に調節された軟化水中に1分間浸漬後、水中から引き上げ、繊維表面に残存している水分を20℃65%RHで風乾させた濾紙で挟み、水平な台の上に置いて1.5g/cmの重しを乗せ2秒間放置して繊維表面の余分な水分を拭き取った後、10秒後に0.88×10−3cN/dtexの荷重を掛けて測定した長さを「吸水時の糸の長さ」とし、下記の式により吸水伸長率を計算した。測定は全て20℃65%RHの環境下で行った。
吸水伸長率=(吸水時の糸の長さ−乾燥時の糸の長さ)÷乾燥時の糸の長さ×100%
【0066】
また上記と同様にして「乾燥時の糸の長さ」を測定し、その後この測定をした糸を35℃95%RHに調節された恒温恒湿室内で24時間調湿後、恒温恒湿室内で0.88×10−3cN/dtexの荷重を掛けて測定した長さを「吸湿時の糸の長さ」とし、下記の式により吸湿伸長率を計算した。
吸湿伸長率=(吸湿時の糸の長さ−乾燥時の糸の長さ)÷乾燥時の糸の長さ×100%
【0067】
(3)破断強度・破断伸度
20℃65%RHに調湿された恒温恒湿室内にて、東洋ボールドウィン社製テンシロンRTM−100引張試験機を用い、引張テストをすることにより測定した。
【0068】
(4)結晶融解ピーク温度Tm1、Tm2
示差走査型熱量計(TA Instrument社2920型DSC)を用い、窒素気流下20℃/分の昇温速度で走査して測定した。そして、2つの結晶融解ピークのうち、低温側のピーク温度をTm1、高温側のピーク温度をTm2とした。
【0069】
(5)結晶融解ピーク高さの比Hm1/Hm2
上記の2つの結晶融解ピークのうち、低温側(ピーク温度Tm1側)及び高温側(ピーク温度Tm2側)の、ベースラインからの結晶融解ピークトップまでの高さを測定し、それぞれHm1、Hm2とし、その比Hm1/Hm2を求めた。
【0070】
(6)固有粘度
フェノールと四塩化エタン1:1混合触媒中20℃で測定。
【0071】
(7)繊度
JIS L1090−5−3の方法で測定。
【0072】
(8)強度、伸度
JIS L1090−5−5−1の方法で測定。
【0073】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100重量部、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの40重量%エチレングリコール溶液23重量部(全酸成分に対して5.0モル%)、ポリオキシエチレングリコール(数平均分子量4000)113.4重量部、1,4−ブタンジオール73.5重量部(全酸成分の1.4モル倍)および触媒としてテトラブチルチタネート0.4重量部を反応槽に仕込み、内温200℃でエステル交換反応を行った。理論量の約80%のメタノールが留出した時点で前述したヒンダードフェノール系化合物0.4重量部を添加した後、昇温、減圧による重縮合反応を開始した。重縮合反応は約30分かけて30mmHgとし、さらに30分かけて3mmHgとし、以後1mmHgの真空下で内温250℃にて200分間反応を行い、その時点でヒンダードフェノール系化合物1重量部と、ヒンダードアミン系化合物2重量部を添加し、その後さらに20分間1mmHg以下の真空下、250℃で20分間反応した。生成したポリエーテルエステルエラストマーの固有粘度は1.10であり、ポリブチレンテレフタレート(ハードセグメント)/ポリオキシエチレングリコール(ソフトセグメント)の重量比率は50/50であった。 得られたポリエーテルエステルエラストマーを230℃で溶融し、紡糸口金より吐出量3.05g/分で押出した。この際、口金直下から9cmを保温した。この溶融ポリマーに口金下3mの位置で、30℃における粘度が1×10−5/sのポリジメチルシロキサン100%からなる油剤を繊維重量を基準として3.0重量%付与し、ゴデットローラで510m/分で引取り、さらに750m(巻取ドラフト1.47)で巻き取って44デシテックス/1フィラメントのポリエーテルエステル弾性繊維を得た。得られたポリエーテルエステル弾性繊維の強度は0.6cN/dtex、伸度は570%、沸水収縮率は20.8%、35℃95%RHでの吸湿率は30%、吸水伸長率は25%であった。さらに上記ポリエーテルエステル弾性繊維を0.3mmにカットした。
【0074】
以下の組成のルース・フェース・パウダーを調製した。
ナイロン−12粉末 30g、
上記で得られたポリエーテルエステル弾性繊維 10g、
酸化鉄 3.5g、
シリコーン結合剤 3g、
タルク 全体を100gとする量
このパウダーを、顔につけたところ、フィット感や化粧保持効果が優れていた。
【0075】
[実施例2]
次の組成を有するマスカラを調製した。
カルボキシメチルセルロース 15g、
ラポナイト(Laponite) 0.2g、
実施例1で得られたポリエーテルエステル弾性繊維繊維 10g、
フクシンの二ナトリウム塩 0.05g、
水 全体を100gとする量
このマスカラをまつげにつけたところ、フィット感やボリューム感に優れ、しかもカールアップ効果やロングラッシュ効果が得られた。
【0076】
[実施例3]
次の組成を有するマニキュア液を調製した。
ニトロセルロース 17.1g、
N−エチル−o,p−トルエンスルホンアミド 5.4g、
クエン酸トリブチルアセチル 5.4g、
実施例1で得られたポリエーテルエステル弾性繊維繊維 10g、
DC Red 34 0.025g、
ヘクトライト 1.0g、
イソプロピルアルコール 7.2g、
酢酸エチル、酢酸ブチル 全体を100gとする量
このマニキュア液を爪に直接つけると、フィット感や透明感があり、爪の補強効果があった。
【0077】
[比較例1]
実施例1で得られたポリエーテルエステル弾性繊維の変わりに、ナイロン繊維を用いた以外は、実施例1と同様にルース・フェース・パウダーを調整した。
このルース・フェース・パウダーを塗布したところ、フィット感や化粧効果の持続性が乏しかった。
【0078】
[比較例2]
実施例1で得られたポリエーテルエステル弾性繊維の変わりに、ナイロン繊維を用いた以外は、実施例2と同様にマスカラを調整した。
このマスカラを塗布したところ、フィット感や化粧効果の持続性が乏しく、ボリューム感やカールアップ効果やロングラッシュ効果を十分に得ることができなかった。
【0079】
[比較例3]
実施例1で得られたポリエーテルエステル弾性繊維の変わりに、ナイロン繊維を用いた以外は、実施例3と同様にマニキュア液を調整した。
このマニキュア液を塗布したところ、フィット感に乏しく、化粧効果の持続性や補強効果が乏しかった。
【0080】
[実施例4]
ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを49.8重量部、ソフトセグメントとして分子量4000のポリオキシエチレングリコール50.2重量部からなるポリエーテルエステルを、230℃で溶融し、紡糸口金より吐出量3.05g/分で溶融押出した。この際、口金直下から9cmを保温した。この溶融ポリマーに口金下3mの位置で、30℃における粘度が1×10−5/sのポリジメチルシロキサン100%からなる油剤を繊維重量を基準として3.0重量%付与し、ゴデットローラで705m/分で引取り、さらに750m/分(巻取ドラフト1.06)で捲取って、40デニール/1フィラメントのポリエーテルエステル弾性繊維を得た。得られたポリエーテルエステル弾性繊維のTm1は204℃、Tm2は217℃、強度は0.7cN/dtex、伸度は810%、20℃65%RHでの吸湿率は2.8%、35℃95%RHでの吸湿率は22.9%、吸水伸長率は17.6%、吸湿伸長率は12.9%であった。さらに、上記ポリエーテルエステル弾性繊維を0.3mmにカットし、実施例1と同様にしてルース・フェース・パウダーを調製した。このパウダーを、顔につけたところ、実施例1と同様にフィット感や化粧保持効果が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の化粧料は、美しい仕上がりや、透明感、フィット感、形状変化の効果を与えるだけでなく、化粧料全般において、汗をすばやく吸収しかつ吸収した汗を放湿することにより、肌の快適性や化粧効果の持続性を向上させる化粧料を提供することができる。このため、本発明は、繊維を含有する化粧料に関する。詳細には、本発明は、マスカラ、ファンデデーション、アイブロー、マニキュアをはじめ各種化粧用途に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維が含有されている化粧料であって、該繊維がポリブチレンテレフタレートをハードセグメントとしポリオキシエチレングリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーからなる弾性繊維であることを特徴する化粧料。
【請求項2】
弾性繊維の35℃95%RHでの吸湿率が5%以上であり、吸水伸長率が10%以上である請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
ポリエーテルエステルエラストマーに下記一般式(1)で表される有機スルホン酸金属塩が共重合されており、かつ、弾性繊維の固有粘度が0.9以上である、請求項1または2に記載の化粧料。
【化1】

(式中、R1は芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、X1はエステル形成性官能基、X2はX1と同一もしくは異なるエステル形成性官能基あるいは水素原子、M1はアルカリ金属またはアルカリ土類金属、jは1または2を示す。)
【請求項4】
弾性繊維の沸水収縮率が10%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料。
【請求項5】
有機スルホン酸金属塩が、下記一般式(2)で表される化合物である、請求項3または4に記載の化粧料。
【化2】

(式中、R2は芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、M2はアルカリ金属またはアルカリ土類金塩を示す。)
【請求項6】
有機スルホン酸金属塩の共重合量が、ポリエーテルエステルエラストマーを構成する酸成分を基準として0.1〜20モル%の範囲である、請求項3〜5もいずれかに記載の化粧料。
【請求項7】
弾性繊維が示差走査型熱量計により得られるDSC曲線で2つの結晶融解ピークを有し、低温側の結晶融解ピーク高さHm1と高温側の結晶融解ピーク高さHm2との比Hm1/Hm2が0.6〜1.2の範囲であり、破断伸度が400%以上である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項8】
2つの結晶融解ピークの、低温側の結晶融解ピーク温度Tm1と高温側の結晶融解ピーク温度Tm2が、下記式を満足する、請求項7に記載の化粧料。
200℃≦Tm1<Tm2≦225℃
【請求項9】
ハードセグメント:ソフトセグメントの比率が、重量を基準として30:70〜70:30の範囲である、請求項1、3、7のいずれかに記載の化粧料。

【公開番号】特開2008−69124(P2008−69124A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250817(P2006−250817)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】