説明

化粧料

本発明は、吸湿性、対水洗保湿性等に優れた化粧料を提供することを目的とする。本発明は、パパイヤ由来の酵素を含む、非洗浄用化粧料;ならびに、パパイヤ由来の酵素と2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体の一つとして含む重合体とを含む化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、パパイヤ由来の酵素、及び適宜、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、2−MPCと記載する)の重合体、及び/又は細胞間脂質を含む化粧料、特にパパイヤ由来の酵素を含む、非洗浄用の化粧料に関するものである。
【背景技術】
細胞膜を構成するホスファチジルコリンの極性基と同一の構造をもつ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成単位とする水溶性ポリマー(2−MPCP;以下、2−MPCPと呼ぶ)は、ヒアルロン酸と比較しても高い吸湿性・保湿性があり、塗布後に水洗いしても吸湿性・保湿能が保たれることが知られている。
しかし、角質層の外表部にある皮脂膜の表面は、絶えず古い細胞が老廃物として排出されるほか、汗腺からも老廃物が排出されるため、2−MPCPの効果の持続性には問題がある。
また、パパイヤ酵素を含有する化粧料は従来より知られているが、これらはいずれも塗布後に水洗するなど、洗浄により塗布した化粧料を除去することを前提に作られているものばかりであり、その効用も、パパイヤ酵素の活性を生かして老廃物を除去するためのものである。
【特許文献1】 特許第2832119号公報
【特許文献2】 特許第2931703号公報
【特許文献3】 特許第2992415号公報
【特許文献4】 特許第2992416号公報
【特許文献5】 特許第2870727号公報
【特許文献6】 特許第3426436号公報
【特許文献7】 特許第3397956号公報
【特許文献8】 特開平11−043428号広報
【特許文献9】 特開2003−155213号広報
【非特許文献1】 高分子論文集 Vol.35、pp.423−427、1978
【発明の開示】
本発明は、吸湿性・保湿性について持続性のある化粧料を提供することを課題としている。
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の化粧料は、以下のごとく構成されている。
即ち本発明の化粧料は、2−MPCを単量体の一つとして含む重合体(2−MPCP)と、パパイヤ由来の酵素とを含有することを特徴としている。
本発明の化粧料において前記パパイヤ由来の酵素は、パパイン及び/又はキモパパインとすることができる。本発明の化粧料中に占めるパパイヤ由来の酵素量としては、使用するパパイヤ酵素の力価や、製造しようとする化粧料の用途に応じて変動すべきものであるが、概して最終製品の状態で0.01重量%以上、5.0重量%以下である。0.01重量%未満では、一般に十分な酵素作用を得ることが出来ないと考えられ、一方、5.0重量%以上では酵素の作用が過剰で皮膚への負担が大きくなり肌荒れ等の逆効果を呈すると考えられる。
また本発明の化粧料においては、前記重合体(2−MPCP)が、2−MPCのみからなることとすることもできる。更には前記単量体は、2−MPCと、疎水性単量体から選ばれる一種または二種以上の単量体との組合せとすることもできるし、或いは、前記単量体は、2−MPCと、親水性単量体から選ばれる一種または二種以上の単量体との組合せとすることもできる。
上記の化粧料において前記疎水性単量体は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、及びアクリルアミドからなる群とすることができ、また前記親水性単量体は、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルメチルスルホキシド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジンからなる群とすることができる。
本発明の化粧料においては、更に細胞間脂質を含めることができる。細胞間脂質としては、セラミドを用いることができる。
セラミドとしては、天然のセラミドのみならず、化粧料に使用される合成セラミドをあげることができ、その使用量としては、本発明の化粧料中に、0.001〜30重量%の範囲において含めることができる。
本発明の化粧料においては、前記重合体(2−MPCP)の分子量が5000以上であることが好ましく、また、前記重合体の含有量が化粧料の全重量に対して0.001〜10重量%であることが好ましい。
本発明の化粧料においては、重合体(2−MPCP)中、2−MPC単量体と他の単量体の重量比が3:97〜45:55であることが好ましい。
本発明においては、パパイヤ由来の酵素を含む、非洗浄用化粧料が提供される。この非洗浄用化粧料においては、パパイヤ由来の酵素を、パパイン及び/又はキモパパインとすることができる。この非洗浄用化粧料においては、更に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体の一つとして含む重合体及び/又は細胞間脂質を含めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の化粧料は、2−MPCを単量体の一つとして含む重合体(2−MPCP)と、パパイヤ由来の酵素とを含有するものである。
本発明において重合体の合成に使用する、2−MPC単量体は、特許文献1中の化学式1に記載されるものであり、2−MPCは、例えば2−ブロモエチルホスホリルジクロリドと2−ヒドロキシエチルホスホリルジクリドと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて2−メタクリロイルオキシエチル−2’−ブロモエチルリン酸を得、更にこれをトリメチルアミンとメタノール溶媒中で反応させて得ることができる(非特許文献1参照)。
2−MPCのみからなるホモ重合体は特許文献1に開示されるものである。
また本発明の重合体の合成には、2−MPCとともに、疎水性単量体及び/又は親水性単量体を単量体として使用することができる。疎水性単量体としては、2−MPCとビニル重合により共重合体を形成するものであればよく、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのような、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノエチレン性モノマー、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、及びアクリルアミドからなる群より選択される一種又は二種以上のものとすることができ、特にはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、及びスチレンが好ましい。
また、親水性単量体としては例えば、非イオン性のものとしてはアクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルメチルスルホキシドが挙げられ、イオン性のものとしてはアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジンを挙げることができる。重合体の合成には、これらからなる群より選択される一種又は二種以上を単量体として使用することができるが、非イオン性のものが好ましい。
重合体(2−MPCP)の合成には、2−MPCのみ;2−MPC及び疎水性単量体;2−MPC及び親水性単量体;並びに2−MPC、疎水性単量体、及び親水性単量体;の何れかとすることができる。
重合体(2−MPCP)の合成については、ホモ重合体及び共重合体の場合共に常法に従えばよく、2−MPC、並びに適宜疎水性単量体及び/又は親水性単量体が溶解する溶媒中で、重合開始剤の存在下、単量体同士を反応させて得ることができる。或いは、市販のものを利用することもできる。
共重合体の合成例としては、例えば特許文献2乃至4に記載されるものを挙げることができる。
本発明の化粧料に使用するパパイヤ由来の酵素としては、パパイヤ由来の蛋白質分解酵素及び/又は脂肪分解酵素を使用することができ、具体的にはパパイヤの果実の抽出物を使用することができる。より具体的にはパパイン及び/又はキモパパインを含有するものである。
パパイヤ由来の酵素としては、パパイヤ果実から直接抽出したものを利用することもできるが、例えば天野エンザイム株式会社よりパパインW40の名称で販売されるものを利用することができる。酵素の活性を上げるため、本発明の化粧料においては、化粧料として適切な範囲内で、システインやグルタチオン等の還元剤を適切な濃度において配合することも可能である。
本発明の化粧料においては、更に細胞間脂質を含むことができる。細胞間脂質の例として、例えば植物由来、動物由来、又はこれらを模倣して合成されたセラミド若しくはセレブロシド、コレステロール若しくはコレステロール脂肪酸エステル等を挙げることができるが、中でもセラミドが好ましい。細胞間脂質の含有量は、本発明の化粧料の全重量に対して好ましくは0.001〜10重量%である。含有量が0.001%よりも少ないと効果は十分でなく、10%を越えてもその増量分に見合った効果は期待できない。セラミドを含む化粧料としては、例えば特許文献6及び7を挙げることができる。
本発明の化粧料において使用する重合体の分子量は、使用目的に応じて調整することが可能であるが、感触面、ゲル化能、皮膜形成能等を良好にするためには、5000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。
本発明の化粧料中において使用する重合体が、共重合体である場合には、2−MPC単量体と、その他の単量体の合計との構成比は、3:97乃至45:55の範囲であることが好ましい。3:97よりも小さいと、水分保持脳や接着作用の点で不十分となり好ましくない。
本発明の化粧料においては、重合体の含有量が化粧料の全重量に対して0.001乃至10重量%の範囲内であることが好ましく、更には0.01乃至3重量%の範囲内であることがより好ましい。
本発明の化粧料は、吸湿性、使用感、保護効果などに優れる非洗浄用の化粧料とすることができる。より具体的には化粧水、乳液、クリーム、口紅、ファウンデーション、等の形態の皮膚化粧料としたり、或いはヘアートニック、ヘアークリーム、ヘアーローション等の形態の毛髪化粧料としたりすることができる。ここで「非洗浄用」とは、化粧料の適用後にすぐには当該化粧料を適用部位から、水洗などにより除去することがないことを意味し、洗顔料や、そのほか、長時間皮膚に塗布しておくことが好ましくないものを排除するものである。
本発明の化粧料には、必要に応じて本発明の化粧料本来の効果を抑制しない範囲内において、種々の粉体、含量、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、ビタミン剤、防腐剤、香料などを配合することも可能である。
【実施例】
2−MPCP(化粧品表示名ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、パパイヤ由来の酵素であるパパイン酵素(化粧品表示名パパイン)、セラミド3(化粧品表示名も同じ、種別許可成分名称はN−ステアロイルフィトスフィンゴシン)の有無により合計8種類のサンプルを調整した。ここで、有無の区別は、それぞれ重量%で1.00%を加えるかどうかで行った。サンプル化粧水は常法で生成した。5名の女性パネルにサンプルを適用して、保湿試験(塗布後120分経過後)、及び官能特性(使用感)のデータを採取した。サンプル化粧水の配合割合と実験結果を下表に示す。

なお、保湿試験は株式会社アミックグループ製水分測定機(SKICOS401)により水分量を測定し、水分量の単位はmgHO/cmである。官能試験は、○:良、△:普通、×:不良を各々示す。このデータを三元配置で分散分析した結果、パネル5以外においてパパイン酵素、2−MPCP、セラミド3の保湿性に対する寄与は、5%以下の危険率で有意であることがわかった。たとえばパネル1については、それぞれの効果の有意性を判定するためのF値を、それぞれ、F(パパイン酵素)、F(2−MPCP)、F(セラミド3)とした場合、これらの値はそれぞれ、12.3、10.8、9.5である。これらはいずれも、自由度が1と4のF分布におけるF値(0.05)=7.71を上回っている。次に、パネルの5人のデータを繰り返し数として、二元配置の分散分析を行った。3つの組合せのどの2つを因子としても、すべての場合において、分散比は5%棄却域に入っていて、三つの因子すべてについて、有無の違いの効果が有意水準5%で認められた。また、サンプル3(2−MPCP単独)とサンプル5(2−MPCPとパパインの組合せ)及び、サンプル4(セラミド3単独)とサンプル6(セラミド3とパパインの組合せ)を比較すると、パパイン酵素の添加により、それぞれの組合せについて、20%ほど保水性が上昇している場合が多い。さらに、2−MPCP、セラミド3が含まれている化粧水(サンプル7)に、パパイン酵素を加えると、さらに保水性が上昇した(サンプル8の欄参照)。
【産業上の利用可能性】
本発明の化粧料においては、パパイヤ由来の酵素を含めることにより、従来の化粧料と比較してより良好な保湿性、皮脂膜親和性を示す。従って本発明の化粧料は、吸湿効果、肌荒れ改善効果等が望まれる者に適用する化粧料として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体の一つとして含む重合体と、パパイヤ由来の酵素とを含有する化粧料。
【請求項2】
前記パパイヤ由来の酵素が、パパイン及び/又はキモパパインである請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記重合体が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのみからなる重合体である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項4】
前記重合体が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、及びアクリルアミドからなる群より選択される一種または二種以上の疎水性単量体との組合せである重量体;又は
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、アクリルアミド、ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、2−メタクリロイルオキシエチルメチルスルホキシド、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジンからなる群より選択される一種又は二種以上の親水性単量体との組合せである重量体;
のいずれかである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
更に細胞間脂質を含む請求項1に記載の化粧料。
【請求項6】
前記細胞間脂質が、セラミドである請求項5に記載の化粧料。
【請求項7】
前記重合体の分子量が5000以上である請求項1に記載の化粧料。
【請求項8】
前記重合体の含有量が化粧料の全重量に対して0.001〜10重量%である請求項1に記載の化粧料。
【請求項9】
前記重合体中、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単量体と他の単量体の重量比が3:97〜45:55である請求項4に記載の化粧料。
【請求項10】
パパイヤ由来の酵素を含む、非洗浄用化粧料。
【請求項11】
前記パパイヤ由来の酵素が、パパイン及び/又はキモパパインである、請求項10に記載の非洗浄用化粧料。
【請求項12】
更に2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを単量体の一つとして含む重合体を含む、請求項10に記載の非洗浄用化粧料。
【請求項13】
更にセラミドを含む、請求項10に記載の非洗浄用化粧料。

【国際公開番号】WO2005/034886
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514679(P2005−514679)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015334
【国際出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【出願人】(302003532)
【Fターム(参考)】