説明

化粧材

【課題】表面の艶状態の差により凹凸を立体的に表現した化粧材において、油分が染み込んで残存してしまうことがない化粧材を提供する。
【解決手段】化粧材1は、基材2と、基材2の上層側を覆い耐油性インキよって形成されたベタ印刷層3と、ベタ印刷層3よりも上層側に設けられ、凹部または凸部の表現領域9に対応した絵柄模様5と、絵柄模様5及び絵柄模様5の下層を覆い、硬化型樹脂とイソシアネート樹脂との混合樹脂にシリカ粒子が含有された第一の艶調整層6と、絵柄模様5の直上を除くとともに、絵柄模様5の輪郭の近傍で艶状態に段階的な階調を与える階調領域8aを有して第一の艶調整層6上に異なる艶状態で設けられ、シリカ粒子を含有する第二の艶調整層7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の内外装や建具、家具等の表面化粧等に使用するための化粧材に関する。より詳しくは、例えば木目柄の場合、表面の艶の差で導管部等の凹凸を立体的に表現した化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノックダウン方式の組み立て家具、住宅建材、家具などに使われてきた化粧材に凹凸形状を表現させる場合、化粧材の表面に現実に形成させる代わりに、凹部又は凸部として表現したい部分の表面の艶状態を互いに異ならせることにより、人間の目の錯覚を利用して視覚的に凹凸の立体感を表現する手法がある。この手法によれば、現実には凹凸形状は存在しなくても、人間の目には、相対的に艶の高い部分は凸部、艶の低い部分は凹部として認識される。
【0003】
上記の手法は、具体的には、例えば、凹み模様を含む適宜模様が印刷された基材の印刷面の全面に、艶状態が調整された透明または半透明の合成樹脂塗料で形成された艶調整層を形成した後、該艶調整層の表面の前記凹み模様または凸模様に対応する部分を除く部分に、艶の異なる透明または半透明の電離放射線硬化型樹脂層を形成するというものである。ここで、艶調整層及び電離放射線硬化型樹脂層には、艶調整や耐擦傷性向上を目的としてシリカ粒子が含有されている。
【0004】
この手法によれば、特殊な薬剤等を必要とすることなく、艶の異なる艶調整層と電離放射線硬化型樹脂層とを設けるだけで、如何なる基材に対しても、容易に立体的な凹凸感を付与することができる。しかも、艶の異なる塗料層の形成は、絵柄模様の形成に引き続きグラビア印刷法等の慣用の印刷法で行うことができるので、特殊設備は一切不要で生産能率も高く、絵柄模様との同調も容易である。また、塗料層の厚みは、表現しようとする凹凸の高低差と比較すれば遥かに薄くて済むので、樹脂の使用量を節減できる他、可撓性の面でも有利であり、折り曲げ加工適性に優れた化粧材を容易に実現できる。また、化粧材の表面に余り大きな凹凸がないので、凹部に汚染物が溜まることもないという利点もある。
【0005】
係る多くの利点に鑑み、この手法を採用した化粧材は、既に大量に使用されているが、高級感の点ではまだ現実に凹凸を形成する手法を凌ぐには至っていないのが実情である。その理由について考察するに、例えば機械エンボス法によれば、天然木の導管等の凹凸形状を、その断面形状まで含めて忠実に再現することが可能である。これに対し、艶の異なる2種類の塗料を使用したこの手法では、表面の艶の段階は2種類であるから、表現できる凹凸の段階も2種類となる。従って、天然木の導管等の様に、深さ(高さ)が連続的に変化した斜面部のある凹凸形状を表現することができないという問題点がある。
【0006】
そこで、深さ(高さ)が連続的に変化した斜面部のある凹凸形状を表現する艶調整層を設けることによって、天然木の導管等の様に、深さ(高さ)が連続的に変化した斜面部のある凹凸形状を表現する化粧材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3629964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の化粧材において、艶調整や耐擦傷性向上を目的としてシリカ粒子を含有させると、パラフィンオイルやバターなどの油分が染み込みやすくなってしまう問題があった。染み込んでしまった油分は、表層付近までであれば吸い出すか、拭き取ることで処理することが可能であるが、基材にまで染み込んでしまうとシミとして残存して除去することが困難となり、層間剥離の原因となり、また、意匠上問題となってしまう。
【0008】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、表面の艶状態の差により凹凸を立体的に表現した化粧材において、油分が染み込んで残存してしまうことがない化粧材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の化粧材は、基材と、該基材の上層側を覆い耐油性インキよって形成されたベタ印刷層と、該ベタ印刷層よりも上層側に設けられ、凹部または凸部の表現領域に対応した絵柄模様と、該絵柄模様及び該絵柄模様の下層を覆い、硬化性樹脂とイソシアネート樹脂との混合樹脂にシリカ粒子が含有された第一の艶調整層と、前記絵柄模様の直上を除くとともに、該絵柄模様の輪郭の近傍で艶状態に段階的な階調を与える階調領域を有して前記第一の艶調整層上に異なる艶状態で設けられ、シリカ粒子を含有する第二の艶調整層とを備えることを特徴としている。
【0010】
この発明に係る化粧材によれば、含有するシリカ粒子によって異なる艶状態に調整された第一の艶調整層と第二の艶調整層との二層によって凹凸が表現され、さらに、階調領域によって艶状態に段階的な階調が与えられる。ここで、油分が第二の艶調整層及び第一の艶調整層に染み込んでしまったとしても、絵柄模様の下層側で基材を覆うベタ印刷層が耐油性インキで形成されていることで、基材まで染み込んでしまうことを防ぐことができる。
【0011】
また、上記の化粧材において、前記ベタ印刷層を形成する耐油性インキは、重量平均分子量が10000以上80000以下のアクリルポリオール樹脂をバインダー樹脂とし、顔料が10重量%以上75重量%以下として含有されていることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、ベタ印刷層を上記のような耐油性インキによって形成することで、油分の基材までの染み込みを効果的に防止することができる。
【0012】
さらに、上記の化粧材において、前記ベタ印刷層を形成する耐油性インキに含まれるアクリルポリオール樹脂は、水酸基価を4.0mg・KOH/g以上30.0mg・KOH/g以下の範囲で有していることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、耐油性インキが水酸基価を4.0mg・KOH/g以上有していることで、耐油性をより効果的に発現させることができ、また、30.0mg・KOH/g以下としていることで、顔料の分散を好適なものとすることができる。
【0013】
また、上記の化粧材において、前記第一の艶調整層上で前記絵柄模様の直上に設けられ、耐油性インキで形成された表面模様を備えることがより好ましいとされている。
この発明に係る化粧材によれば、表面模様が設けられていることで、階調領域によって与えられる凹凸とは独立して、色彩模様として視覚される意匠を与えることができる。また、表面模様が油性インキで形成されていることで、第二の艶調整層が除かれた範囲について油分の染み込みを防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化粧材によれば、基材を耐油性インキで形成されたベタ印刷層で覆うことで、表面の艶状態の差により凹凸を立体的に効果的に表現しつつ、油が基材が染み込んで残存してしまうことを防止し、意匠性の低下、層間剥離を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明に係る実施形態を示している。図1に示すように、本実施形態に係る化粧材1は、基材2と、基材2上を覆うベタ印刷層3と、ベタ印刷層3上に設けられた下地模様層4と、下地模様層4上に設けられ、凹部または凸部の表現領域9に対応した絵柄模様5と、下地模様層4及び絵柄模様5を覆い、艶状態を調整する第一の艶調整層6と、第一の艶調整層6上に異なる艶状態で設けられた第二の艶調整層7とを備える。以下に、各構成の詳細について説明する。
【0016】
基材2としては、通常化粧材の原紙として用いられるものであれば、特に限定されることなく任意に用いることができる。具体的には、例えば、坪量23〜100g/m程度の薄葉紙、樹脂混抄紙、チタン紙、樹脂含浸紙、難燃紙、無機質紙等の紙類や、天然繊維又は合成繊維からなる織布又は不織布、ホモ又はランダムポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、共重合ポリエステル樹脂、アモルファス状態の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレン樹脂、メチルメタアクリレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、繊維素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂系基材、木材単板、突板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板等の木質系基材、石膏板、セメント板、珪酸カルシウム板、陶磁器板等の無機質系基材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属系基材等、又はそれらの複合体、積層体等、従来公知の任意の材料が使用可能であり、その形状も、例えばフィルム状またはシート状、板状、異型成型体等、一切制限はない。
【0017】
ベタ印刷層3は、耐油性インキで形成されている。より詳しくは、ベタ印刷層3を形成する耐油性インキに用いる樹脂としては、低水酸基価である2液硬化型ウレタン系樹脂や2液硬化型アクリル樹脂などを使用することが可能であり、重量平均分子量が10000以上80000以下のアクリルポリオール樹脂をバインダー樹脂とし、顔料を10重量%以上75重量%以下として含有してなるものが好ましい。さらに、このような耐油性インキとしては、水酸基価を4.0mg・KOH/g以上30.0mg・KOH/g以下の範囲で有していることがより好ましい。水酸基価を4.0mg・KOH/g以上有していることで、耐油性をより効果的に発現させることができ、また、水酸基価を30.0mg・KOH/g以下で有していることで、顔料の分散を好適なものとすることができる。なお、基材2とベタ印刷層3との間には、シーラー層を設けるものとしても良い。
【0018】
下地模様層4及び絵柄模様5は、油性インキであれば特に制限はないが、一般的には、適当なビヒクル(マトリックス)と共に、染料又は顔料等の着色剤を適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング材が使用される。
【0019】
このような着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、黄鉛、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料等、またはこれらの2種以上の混合物等を使用することができる。
【0020】
ビヒクルとしては、例えば油性の硝化綿樹脂、2液ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素系樹脂、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、またはそれらの混合物、共重合体等を使用することができる。
【0021】
溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、水等、又はそれらの混合物等を使用することができる。
【0022】
その他、必要に応じて体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種添加剤等が適宜使用される。
【0023】
例えば木目柄の場合には周知の様に、下地ベタ、木目模様、導管模様等に分版して印刷するのが普通である。このうち、下地ベタ及び木目模様は、本発明の化粧材1においては下地模様層4として設けられ、導管模様は、凹部又は凸部の表現領域に対応する絵柄模様5として設けられる。勿論、本発明において下地模様層4は木目柄に限定されるものではなく、石目柄、抽象柄等にも適宜適用可能である。
【0024】
下地模様層4及び絵柄模様5は、一般的には、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の適宜の印刷方法によって形成される。しかしこれに限定されるものではなく、例えば前述した下地ベタは、ロールコート法やナイフコート法、ダイコート法等のコーティング方法によって形成されても良い。また、その他の模様も、従来公知の任意の画像形成方法によって形成することができる。
【0025】
第一の艶調整層6は、前述した下地模様層4及び絵柄模様5の構成材料として挙げたものと同様の印刷インキ又はコーティング剤等により構成される。但し、第一の艶調整層6は、少なくとも下地模様層4及び絵柄模様5を透視可能な透明性または半透明性を備えている必要があるので、これを形成する印刷インキ又はコーティング剤等としては、染料又は顔料等の着色剤を全く含有しないか、必要とされる透明性を損なわない程度に少量のみ含有するものを使用する必要がある。
【0026】
また、第一の艶調整層6は、後述するように凹部又は凸部の表現領域9において化粧材1の最表面層を構成するものであるから、化粧材1として必要な耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を有するべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成される。具体的には、硬化性樹脂と、イソシアネート樹脂との混合樹脂にシリカ粒子を含有して形成される。硬化性樹脂としては、、例えばメラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また、シリカ粒子は耐擦傷性向上及び艶消しの作用を有しており、艶調整剤として所定量含有させることで、第一の艶調整層6の艶状態が調整されている。シリカ粒子の含有量としては、PWC(pigmet weight content:顔料質量濃度)で、20%以上50%以下であることが好ましい。なお、艶調整剤としては、さらにアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を添加することもできる。ここで、電離放射線とは、一般に物質に電離作用を及ぼす放射線をいい、X線、γ線、β線(電子線)、短波長紫外線を含むが、本発明では、光開始剤による紫外線硬化型樹脂も使用できるので、電離作用を及ぼすことのない長波長紫外線も含む。
【0027】
また、第二の艶調整層7は、第一の艶調整層6上において、絵柄模様5の直上を除くとともに、絵柄模様5の輪郭の近傍で艶状態に段階的な階調を与える階調領域8aを有していて、絵柄模様5の直上で第一の艶調整層6が露出する領域8bと階調領域8aとで凹部または凸部として視覚的に表現する表現領域9を形成している。階調領域8aは、艶状態が連続的に又は段階的に変化するように構成されている。即ち、凹部又は凸部の表現領域9の輪郭から内部へ進むに従い、当該表現領域9の表面の艶状態に近い艶状態から、当該表現領域9に対応する絵柄模様5の近傍以外の部分における艶状態に至るようになっている。
【0028】
より具体的に説明すると、凹部又は凸部の表現領域9を凹部として表現しようとする場合、第二の艶調整層7は当該表現領域9の表面より高い艶を有する様に設計される。しかも、当該表現領域9の輪郭の近傍において、当該表現領域9の輪郭から離れて第二の艶調整層7の形成部分の内部に進むに従って、第二の艶調整層7の艶が徐々に高くなる様に、階調を設けて形成される。
【0029】
一方、凹部又は凸部の表現領域9を凸部として表現しようとする場合には、第二の艶調整層7は当該表現領域9の表面より低い艶を有する様に設計される。しかも、当該表現領域9の輪郭の近傍において、当該表現領域9の輪郭から離れて第二の艶調整層7の形成部分の内部に進むに従って、第二の艶調整層7の艶が徐々に低くなる様に、階調を設けて形成される。グラビア印刷法の版を使う場合は、焼付け時にフィルムを使う腐食法のポーショル法(フィルムの伸縮により多段位置合わせのずれが生じやすい)やヘリオグラッショ法に加えてレーザー製版を使うと版のセルのボリューム(体積)が多く、多段腐食しても位置がずれにくいのでより見当精度のよい階調表現ができる。
【0030】
なお、凹部又は凸部の表現領域9に対応する絵柄模様5の輪郭は、当該階段状の表現領域9の輪郭と正確に一致している必要性は必ずしもなく、当該階段状の表現領域9の輪郭よりも多少内側又は外側にずれていても良い。寧ろ、両者の輪郭を積極的に僅かにずらすことによって、見掛け上の凹凸感を適宜調整することもできる。また、当該階段状の表現領域9内で両者の輪郭のずれの方向や距離を変化させることによって、見掛け上の凹凸感に場所による変化を与えることもできる。
【0031】
そして、このような第二の艶調整層7としては、化粧材の最表面層を構成するものであるから、化粧材として必要な耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を有するべく、第一の艶調整層6と同様に硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。具体的には、印刷中の経時で増粘する心配のない電離放射線硬化性モノマーが好適に使用される。この樹脂は、印刷中の常温の塗液状態では硬化反応が進行しないので増粘することがない。一方、電離放射線を照射した後には硬化反応が急速に進行し、完全硬化するので、印刷物を巻き取ったり積み重ねたりしても、乾燥不良によるブロッキングを発生する心配もない等の利点がある。
【0032】
電離放射線硬化性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物を用いることができ、それらには単官能モノマー、二官能モノマーおよび三官能以上の多官能モノマーが含まれる。通常、モノマーは親水性を有しない非親水性のものであり、例えば、−CHO基、−OH基および−COOH基のいずれも持たない。
【0033】
具体的には、エチレン性不飽和二重結合を有する単官能モノマーとしては、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、例えば、ステアリル(メタ)アクリレートとは、ステアリルアクリレート及び/又はステアリルメタアクリレートであることを示す(以下、同様。)。
【0034】
二官能モノマーとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(水素化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(水素化)プロピレングリコール変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
多官能モノマーとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化性モノマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート等のモノマーが、粘度が低いので塗工後の表面が平滑になりやすく、下地模様層4等への投錨効果も向上するので望ましい。
【0037】
また、凹部又は凸部の表現領域9に対応する絵柄模様5を凹部として表現しようとする場合、第二の艶調整層7の艶を第一の艶調整層6の艶よりも高くするように調整する必要がある。一方、凹部又は凸部の表現領域9に対応する絵柄模様5を凸部として表現しようとする場合には、第二の艶調整層7の艶を第一の艶調整層6の艶よりも低くするように調整する必要がある。また、第二の艶調整層7は、最表面を形成するため、耐擦傷性を確保する必要がある。そこで、第二の艶調整層7の艶状態を適宜調整し、また、耐擦傷性向上の為に、第一の艶調整層6同様に、シリカ粒子が含有されている。シリカ粒子の含有量としては、第一の艶調整層6同様にPWCで20%以上50%以下であることが好ましいが、第一の艶調整層6の艶状態と異なるように含有量が調整されている。なお、艶調整剤としては、第一の艶調整層6同様にアルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等をさらに添加してもよい。
【0038】
また、第二の艶調整層7には、シリコーンオイルが添加されていることがより好ましい。これは、汚染防止剤として第二の艶調整層7表面の汚れが付着するのを防止したり、付着した汚れを各種洗剤、溶剤でふき取りやすくしたりするためである。シリコーンオイルは、電離放射線硬化性モノマーから構成されるマトリックス樹脂内に組み込まれる。シリコーンオイルとしては、無変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイルを用いることができる。
【0039】
第二の艶調整層7に設けられる階調は、深さ(高さ)の連続的な変化の表現を目的とする場合であっても、艶状態の変化としては、図1に示すように、段階的な階調であるほうが、視覚的に得られる凹凸の立体感の面では有利である場合が多い。特に、例えば木材の導管溝等の様に、凹凸の寸法が非常に微細であるのにかかわらず、連続的な階調では調子感に乏しく、天然の導管溝の断面形状の有する立体感を十分に表現できない場合が多いので、段階的な階調とすることが好ましい。
【0040】
ここで、第二の艶調整層7の艶状態に階調を設ける方法としては、例えば、グラビア印刷法が用いられ、所望の階調が得られるようにグラビア印刷版の版深又は面積率を変更させながら行う。その他にも、一般的なオフセット印刷法、スクリーン印刷法、静電印刷法、インクジェット法等の印刷方法も適宜用いられる。
【0041】
なお、上記階調は、第二の艶調整層7を構成する樹脂の塗布量の変化による階調に限定されるものではなく、網点等の面積率の変化によって階調を表現することもできる(図示せず)し、塗布量の変化と面積率の変化とを併用することもできる(図示せず)。
【0042】
但し、一般に、印刷版の設計上は網点状であっても、印刷時の樹脂の流動により多少とも連続化するのが普通であるから、これらの差は必ずしも本質的なものではない。以下、簡単のため、図面の上では図1に示した様な段階型の図で説明するが、これは上述した種々の階調表現技法を全て包含するものである。
【0043】
ところで、凹部又は凸部の表現領域9を凹部として表現しようとする場合、凹部又は凸部の表現領域9の表面は、艶の低い状態となっていなければならない。その為には、図1に示す例の如く、凹部又は凸部の表現領域9に対応する下地模様層4が、当該表現領域9において表面に露出している場合、該下地模様層4を形成するための印刷インキ等に適宜艶調整剤等を添加し、艶の低い状態に調整しておく必要がある。逆に、凹部又は凸部の表現領域9を凸部として表現しようとする場合には、該表現領域9に対応する絵柄模様5を形成するための印刷インキとして、印刷後の表面の艶の高い印刷インキを使用する必要がある。
【0044】
ここで、凹部又は凸部の表現領域9と、該表現領域9に対応する下地模様層4との位置関係について再度言及する。凹部の底面又は凸部の頂面のみが、他の部分と異なる色彩を有する凹部又は凸部を表現しようとする場合、下地模様層4は前記領域9と同一の輪郭を持って形成する必要がある。一方、凹部又は凸部の輪郭の斜面部にも底面又は頂面と同一の色彩を有する凹部又は凸部を表現しようとする場合、下地模様層4は、第二の艶調整層7が前記領域9の外側の階調を有する領域の輪郭にまで及ぶ領域に形成されることが好ましい。例えば、天然木材の断面の導管溝の模倣を目的とする場合には、後者の構成が推奨される。
【0045】
また、凹部又は凸部の輪郭の斜面部において色彩が連続的に変化する状態を表現しようとする場合には、前記領域9の輪郭の近傍の第二の艶調整層7が階調を有する領域において、前記下地模様層4の色彩に階調を設ければ良い。或いは、前記下地模様層4の輪郭を、第二の艶調整層が階調を有する領域の内外の輪郭の中間に位置させることによっても、視覚的に近似した表現効果を達成することができる。その他、以上の各種の表現技法を位置により組み合わせて採用することにより、位置により凹凸感が変化した複雑な凹凸形状を表現することも可能である。
【0046】
なお、図2に示す化粧材10のように、凹部又は凸部の表現領域9に対応する絵柄模様5の直上において、第一の艶調整層6上に耐油性インキで形成された表面模様11を設けるものとしても良い。表面模様11を形成する耐油性インキとしては、ベタ印刷層3を形成する耐油性インキと同様である。このように表面模様11を設けることで、階調領域8aによって与えられる凹凸とは独立して、色彩模様として視覚される意匠を与えることができる。また、表面模様11が耐油性インキで形成されていることで、第二の艶調整層7が除かれた範囲について油分の染み込みを防ぐことができる。
【0047】
図1または図2に示すような本願発明の化粧材1、10の具体的な適用例としては、既に述べた様に、天然木材の導管溝の表現が、最も代表的なものである。導管溝は物理的には凹部であるから、一般的には導管模様部分の表面の艶を低くし、該導管模様部分を除く表面に艶の高い第二の艶調整層7を設けた構成が採用される。しかし、ある種の針葉樹材の様に、木肌の色調が淡く、導管溝部分が浮き上がって見える樹種の表現には、上記とは艶の高低を逆転させた方が、実物感が出る場合もある。また、係る艶の高低の逆転により、既成の概念には囚われずに独自の新規な導管表現が得られる場合もある。
【0048】
そして、化粧材1、10によれば、表面に第二の艶調整層7を艶状態に階調を有するように設けられているので、天然木の導管等の様に、深さ(高さ)が連続的に変化した凹凸形状を表現することができる。さらに、第二の艶調整層7を艶の高い層とし、絵柄模様5を覆うように艶の低い第一の艶調整層6を設けることによって、より明確に艶による凹凸形状の表現をはっきりとさせることができる。さらに、この第一の艶調整層6により第二の艶調整層7を構成する樹脂の硬化時に発生する応力を緩和させることができ、絵柄模様5や下地模様層4の剥がれ等を抑えることができる。そのため、全面の下地模様層4と部分的に設けた凹部または凸部を表現した絵柄模様5とによって得られた、より立体的に優れた意匠を好適に維持することができる。また、耐油性インキで形成されたベタ印刷層3で基材2を覆っていることで、シリカ粒子によって艶が調整された第二の艶調整層7及び第一の艶調整層6に油分が染み込んでしまっても、基材2まで染み込んで残存してしまうことを防止し、意匠性の低下、層間剥離を防止することができる。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、凹部又は凸部の表現領域9の近傍以外の部分における第二の艶調整層7の艶状態が一定であることを暗黙の裡に想定している。しかし、例えば天然木材における春材部と秋材部との艶差や、切断面と木目方向との角度による艶差等の表現を目的として、第二の艶調整層7の艶状態に木目模様と同調した変化を持たせることもできる。この様にすると、前述した導管溝部の形状の忠実な表現と相俟って、天然木材により近い、極めて意匠性に優れた化粧材を得ることができる。
【0050】
次に、以下に示す実施例1、2に基づいて、上記第1、第2の実施形態の各化粧紙1、10の詳細について説明する。
【実施例1】
【0051】
以下に示す工程により、図1に示す化粧材1を作製した。
すなわち、基材2として坪量50g/m2の含浸紙(興人株式会社製GFR−506)を用い、この表面に、耐油性インキによるベタ印刷層3として、2液硬化型アクリル樹脂(アクリルポリオール樹脂(平均分子量50000、水酸基価8.3mgKOH/g)をバインダー樹脂として、顔料を45.0%含有)100重量部とイソシアネート硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製:「G−28N」)5重量部からなる樹脂を、乾燥後の塗布量が2g/mとなるように塗工した。
【0052】
乾燥後、この表面に、油性硝化綿樹脂系グラビア印刷インキ(東洋インキ製造株式会社製「PCNT、PCRNT 各色」)を使用して、下地模様層4として、前面に1色を印刷し、さらに木目柄を印刷した。次に、凹部または凸部表現領域に対応した絵柄模様5として、これに同調した導管柄(柄版線数150線)を印刷した。
【0053】
そして、下地模様層4及び絵柄模様5を覆うように、第一の艶調整層6として、イソシアネート硬化剤を添加し、また、シリカ粉末をPCWで30.0%添加して艶を低く調整した紫外線硬化型樹脂(東洋インキ製造株式会社製:「YU660ハイマット」」100重量部と、硬化剤(東洋インキ製造株式会社製:「UR130Bワニス」)12重量部とを、乾燥後の塗布量が5g/mとなるように塗工した。
【0054】
次に、第二の艶調整層7として、シリカ粉末の添加量の違いによって艶が高くなるように調整した紫外線硬化型樹脂(東洋インキ製造株式会社製:「YU656UVグロス」50重量部と「YU656UVマット」50重量部)を、導管柄層の輪郭の近傍に階調を設けて(線数100線)、導管柄部分を除く表面に、乾燥後の塗布量が2g/mに印刷し、空気雰囲気中で紫外線照射を、高圧水源灯80W/cmと120W/cmの2灯をランプ中心から化粧紙までの距離240mm、ライン速度50m/分として照射し、紫外線硬化型樹脂を硬化させて巻き取り、本発明の化粧材1を得た。なお、巻き取り時にブロッキングを起こすことはなかった。
【実施例2】
【0055】
実施例1と同様の耐油性インキにより表面模様11を設けた以外は実施例1と同様にして化粧材を得た。巻き取り時にブロッキングを起こすことはなかった。
【0056】
<比較例1>
実施例1の耐油性インキによるベタ印刷層3が無い他は、実施例1と同じ構成の化粧材を作製した。
【0057】
このようにして得た実施例1、2及び比較例1の化粧材のそれぞれについて、木質基材に尿素樹脂接着剤にて積層させた後、パラフィンオイル(Paraffin Oil 294365H BDH chemical,Poole,UK.)を滴下して時計皿被覆を24時間行った。この後、パラフィンオイルを滴下した範囲を目視確認したが、実施例1、2の化粧材1、10では、パラフィンオイルの染み込みは無かった。一方、比較例1の化粧材では、パラフィンオイルの染み込みが目立った。これは、比較例1の化粧材については、耐油性インキで形成されたベタ印刷層を有しておらず、表面から基材まで油分が染み込んで残存してしまったからだと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の化粧材は、特に表面艶の差により凹凸を立体的に表現したものであって、建築物の内外層や建具、家具等の表面化粧等に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の第1の実施形態の化粧材の断面図である。
【図2】この発明の第2の実施形態の化粧材の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1、10 化粧材
2 基材
3 ベタ印刷層
5 絵柄模様
6 第一の艶調整層
7 第二の艶調整層
8a 階調領域
9 表現領域
11 表面模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材の上層側を覆い耐油性インキよって形成されたベタ印刷層と、
該ベタ印刷層よりも上層側に設けられ、凹部または凸部の表現領域に対応した絵柄模様と、
該絵柄模様及び該絵柄模様の下層を覆い、硬化性樹脂とイソシアネート樹脂との混合樹脂にシリカ粒子が含有された第一の艶調整層と、
前記絵柄模様の直上を除くとともに、該絵柄模様の輪郭の近傍で艶状態に段階的な階調を与える階調領域を有して前記第一の艶調整層上に異なる艶状態で設けられ、シリカ粒子を含有する第二の艶調整層とを備えることを特徴とする化粧材。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧材において、
前記ベタ印刷層を形成する耐油性インキは、重量平均分子量が10000以上80000以下のアクリルポリオール樹脂をバインダー樹脂とし、顔料が10重量%以上75重量%以下として含有されていることを特徴とする化粧材
【請求項3】
請求項2に記載の化粧材において、
前記ベタ印刷層を形成する耐油性インキに含まれるアクリルポリオール樹脂は、水酸基価を4.0mg・KOH/g以上30.0mg・KOH/g以下の範囲で有していることを特徴とする化粧材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の化粧材において、
前記第一の艶調整層上で前記絵柄模様の直上に設けられ、耐油性インキで形成された表面模様を備えることを特徴とする化粧材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−254237(P2008−254237A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96366(P2007−96366)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】