説明

化粧板およびその製造方法

【課題】 そりを生じにくく、平滑性、意匠性および生産性に優れた化粧板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 略四角形状の無機質抄造板11を基材とし、その少なくとも片面には含浸シーラーが施されており、該片面上に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13および印刷面を有する化粧紙14がこの順で積層され、化粧紙14の印刷面とは反対側の面が、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13と接しているとともに、化粧紙14の抄紙方向が無機質抄造板11の抄造方向と一致している化粧板1であって、無機質抄造板11の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面17と前記片面とは反対面の一部18とが、化粧紙14およびウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13によって被覆されている化粧板1およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、そりを生じにくく、平滑性、意匠性および生産性に優れた化粧板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流し台、ガスコンロ等のキッチン周りに用いられる無機質系化粧板としては、けい酸カルシウム板、石綿スレート板、セメントスレート板等の無機質系基材に、絵柄模様が形成された化粧紙を、ウレタン系接着剤あるいはエマルジョン系接着剤を介して貼りあわせることにより製造されていた。
しかしウレタン系接着剤は、殆どの場合多くの有機溶剤を含み、地球環境問題、揮発性有機化合物(以下、VOCと記す:Volatile Organic Compounds)問題への関心の高まりから、敬遠されつつある。また、エマルジョン系接着剤を用いた化粧板は耐火性、耐熱性が悪いという問題点がある。
さらに、ウレタン系接着剤、エマルジョン系接着剤は、ともに初期の接着強度を発現するのに時間がかかるため、接着剤の塗布直後に次の加工工程に移ることができず、また締結養生などの措置が必要であり工程が複雑になるという問題点がある。さらにまた、接着剤が硬化する際の体積収縮が大きく、接着剤層の厚さ方向に凸凹を生じるため、得られる化粧板は平滑性、鏡面性が損なわれるという問題点もある。
【0003】
下記特許文献1には、無機質系基材の面に、シーラー層、熱硬化性樹脂層、絵柄印刷した化粧紙、硬化性樹脂層を順に設け、化粧紙の一方のジアリルフタレート樹脂からなる硬化性樹脂含浸層を形成した面と、無機質系基材上に設けた熱硬化性樹脂層とを合わせて、熱圧プレスにより熱硬化性樹脂層を硬化させ一体化した無機質系化粧板が開示されている。しかしながらこの方法では、耐火性、耐摩耗性等は満足のいくものであるが、熱圧プレスにおいて化粧板を長時間保持しなくてはならないため、生産性が低いという問題点があった。また、一般的に、無機質系基材は多孔質であるので、湿度の変化等による水分の変化に伴ってその寸法が伸び縮みする。従って、その片面(以下、表面と記す)に塗装を施しあるいは化粧紙を接着した化粧層を設けると、化粧層を設けた表面においては水分の出入りは生じず、化粧層を設けていないもう一方の面(以下、裏面と記す)からのみ水分の出入りを生じるので、化粧板にそりを生じやすいという問題点がある。化粧板がそっていると施工しにくいばかりでなく、仕上げにおける外観が劣悪となり平滑性と意匠性に優れた化粧層を形成した化粧板であっても、その効果を施工後に発揮することができない。なお無機質系基材の表面および裏面に化粧層を設ければそりの発生を防止することができるが、化粧層は通常は可燃性であるから、無機質系基材を使用しているにもかかわらず不燃性に乏しい化粧板しか得ることができない。またコスト高となる等の問題があり望ましくない。そこで、通常は無機質系基材の裏面にもシーラー層を設けることにより、そりの発生を緩和させる方法が用いられている。しかしこのような方法を施したとしても、無機質系基材として抄造法によって製造された無機質抄造板を使用し、その片面上に化粧紙を接着した構成の化粧板においては、いまだに大きなそりが発生しやすいという問題があった。その理由は次のように推定される。すなわち、無機質抄造板は、原料の繊維(繊維は、抄造法で無機質板を製造するときの必須原料である)が抄造方向に平行に配向するとともに、この抄造方向が無機質板の長手方向となる。したがって、無機質抄造板の長手方向は繊維によって補強されやすいが、幅方向は繊維補強がされにくいため、水分の吸放湿に伴う寸法変化率は、無機質抄造板の長手方向よりも幅方向のほうが大きくなり、幅方向にそりを生じやすくなる。一方、化粧紙の土台となる紙(原紙)も通常は抄造法によって製造されるので、繊維が抄造方向に配向し抄造方向と直交する方向に変形しやすい傾向がある。そして化粧紙の貼りあわせ工程では、無機質抄造板の長手方向をラインの進行方向とし、ロールに巻かれた化粧紙を引き出しながら、ライン上で無機質抄造板に貼りあわせているが、一般的にロールからの紙の引き出し方向は紙の抄造方向であるので、結果として無機質抄造板の抄造方向と化粧紙の抄造方向が一致することになる。従って、得られた化粧板は、無機質抄造板および化粧紙ともに幅方向に変形しやすくなり、塗装を施した場合と比較して、特に幅方向のそりが大きくなるものと考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−198282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、基材として抄造法によって製造された無機質抄造板を使用し、その少なくとも片面上に化粧紙を貼りあわせた構成の化粧板において、そりを生じにくく、平滑性、意匠性および生産性に優れた化粧板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、略四角形状の無機質抄造板を基材とし、前記基材の少なくとも片面には含浸シーラーが施されており、前記含浸シーラーが施された前記基材の片面上に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層および印刷面を有する化粧紙がこの順で積層され、前記化粧紙の印刷面とは反対側の面が、前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層と接しているとともに、前記化粧紙の抄紙方向が前記基材の抄造方向と一致している化粧板であって、前記基材の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面と前記片面とは反対面の一部とが、前記化粧紙および前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層によって被覆されていることを特徴とする化粧板である。
請求項2の発明は、前記基材と前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層との間に、下地紫外線硬化型樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の化粧板である。
請求項3の発明は、前記化粧紙の印刷面上に、プライマー層および透明または半透明硬化樹脂からなるクリアー層がこの順に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の化粧板である。
請求項4の発明は、前記反対面の一部の、前記化粧紙および前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層によって被覆されている端面からの長さが、5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板である。
請求項5の発明は、基材として少なくとも片面に含浸シーラーが施された略四角形状の無機質抄造板と、印刷面を有する化粧紙とを用意し、前記化粧紙の印刷面とは反対側の面に、液体状のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を加熱しながら塗布してウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を形成し、続いて、前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を介して、前記化粧紙と、前記基材の片面、前記基材の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面および前記片面とは反対面の一部とを、前記化粧紙の抄紙方向と前記基材の抄造方向とが一致するように貼りあわせることを特徴とする化粧板の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による化粧板は、基材である無機質抄造板の抄造方向と、化粧紙の抄造方向が一致しているにもかかわらず、基材の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面、および基材の裏面の一部を化粧紙で被覆しウレタン系反応性ホットメルト接着剤によりそれらの面に接着しているので、そりが大幅に低減される。また、本発明に使用されるウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、加熱溶融させた状態で塗布するが、オープンタイム(固化してタックフリーとなるまでの時間)が短く、固化することで瞬間的に初期の接着強度を発現するため、締結養生の必要もないため、生産性が高まるとともに製造工程も複雑化することがない。またウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、空気中の湿気、あるいは基材である無機質抄造板中の水分で硬化し、架橋して網目構造を形成するため、耐熱性に優れた化粧板を提供でき、さらにウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、硬化する際の体積収縮が少なく、そりを生じにくく、平滑性、意匠性に優れた化粧板を得ることができるとともに、平滑で意匠性に優れた外観を損なうことなく施工できる化粧板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の化粧板の一例を説明するための図であり、図1(a)は平面図であり、(b)はA−A’線の断面図である。図1において、本発明の化粧板1は、含浸シーラー処理が施された無機質抄造板11上に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13および印刷面を有する化粧紙14がこの順で積層され、化粧紙の印刷面とは反対側の面が、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13と接している。更に、化粧紙14は、無機質抄造板11の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面17、および無機質抄造板11の裏面の一部18を長さLでもって被覆するとともにウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13によってこれらの面に接着されている。また、無機質抄造板11の表面とウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13との間に、下地紫外線硬化型樹脂層12を設けること、また化粧紙14の印刷面上に、プライマー層15および透明または半透明硬化樹脂からなるクリアー層16をさらに積層することが好ましい。また、図1の態様では、化粧板としての意匠性、あるいは角欠け防止を勘案して、無機質抄造板11の表面の抄造方向に平行な二辺の端面の上部(化粧紙を接着する面側の角部)に、アール面取り19を行っている。なおこれとは別に図2に示すように、無機質抄造板11の表面の抄造方向に平行な二辺の端面の上部(化粧紙を接着する面側の角部)にC面取り19’を行ってもよい。なお、説明のために下地UV層12、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13、化粧紙14、プライマー層15、クリアー層16の図1におけるサイズは、実際の製品よりも拡大されている。
【0009】
(無機質抄造板)
本発明における無機質抄造板11としては、繊維材料、マトリックス成分およびその他の充填材を含む公知の抄造板であることができ、例えば、けい酸カルシウム板、繊維強化セメント板、スラグ石膏板、石膏抄造板等が挙げられる。抄造法は、繊維材料の二次元配向性に優れるので、薄くて高強度の無機質板を得ることができる製造法である。
けい酸カルシウム板としては、石灰質原料、珪酸質原料および繊維原料を必須原料とし必要に応じて各種添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形して、さらに必要に応じて加圧成形後、オートクレーブ養生により硬化させることにより製造されたもの、あるいは、石灰質原料と珪酸質原料に水を加えて混合したスラリー状原料をオートクレーブ処理してけい酸カルシウム結晶が凝してなる二次粒子を形成し、これに繊維原料と必要に応じてその他添加材とを原料として添加して混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、乾燥硬化させることにより製造されたものが挙げられる。
繊維強化セメント板としては、繊維材料、水硬性セメントを必須原料とし必要に応じて各種添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形後、常温下、高温高湿度下(スチーム)、あるいはオートクレーブによる養生で硬化させ、必要に応じて二次養生を行うことによって得られるものが例示される。
スラグ石膏板としては、スラグ、石膏、スラグと石膏との反応を開始させる刺激剤、繊維材料および無機充填剤を混合し、スラリーを形成させ、このスラリーを抄造法により板状に成形し、必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られるものが例示される。
石膏抄造板としては、半水石膏やII型無水石膏等の水和性石膏、繊維材料、水和性石膏の硬化調整剤、必要に応じてその他の添加材を原料として用い、これらの原料に水を加えて混合分散したスラリーを抄造法により板状に成形し、さらに必要に応じて加圧成形し、養生硬化し、乾燥することによって得られるものが挙げられる。
上記の各種の無機質抄造板において、化粧板としての加工のし易さ、寸法変化を小さくするという観点からすると、けい酸カルシウム板が好適である。
なお、繊維材料としては特に制限されないが、例えば化学パルプ、木質パルプ、セルロースパルプ、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維、鋼繊維(スチール線繊維)、アモルファス金属繊維等の金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維(カーボンファイバー)、ロックウール繊維、ウィスカー等の無機繊維などが挙げられる。
無機質抄造板11の板厚、寸法等はとくに制限されず、用途等を勘案して適宜決定すればよい。
また、無機質抄造板11の表面(化粧層を設ける面)、或いは裏面は化粧板としての表面平滑性、鏡面性の向上を目的として研磨してあっても良い。化粧板の研磨は公知の方法によって行うことができるが、化粧板としての仕上りを勘案すると、無機質抄造板11の表面はプラテン式研磨機で#80〜#400の研磨紙を用いて実施することが好ましい。
【0010】
(含浸シーラー処理)
無機質抄造板11には、含浸シーラー処理が施される。基板である無機質抄造板11の表面(化粧層を設ける面)に含浸シーラー処理を施すことにより、基材中の空隙部の空気をシーラーで置換、充填されるため、表面が強化(補強)され、無機質抄造板11の直上の構成層との密着性も向上する。また無機質抄造板11がアルカリ性である場合には、そのアルカリ成分の溶出も防止される。
なお、無機質抄造板11の裏面側にも含浸シーラー処理を行ってもよい。これにより、化粧板製造時におけるそり防止、得られた化粧板におけるそり防止、施工時における被着体(すて貼り下地)−接着剤−化粧板の接着力の向上が図れる。
含浸シーラー処理は公知のシーラーを用いて行うことができ、例えば湿気硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂を用い、無機質抄造板の表面に塗布し硬化させること等により行われる。含浸シーラーは基材である無機質抄造板11への含浸性が良く、高不揮発分であり、且つ、基材中の水分と反応して三次元架橋し、耐水性能等が良いポリイソシアネート又は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物である遊離イソシアネート基を有するプレポリマー及び溶剤を主成分とする湿気硬化型ウレタン系のものが好適である。また、化粧板としての黄変が問題となる場合には、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)等の脂肪族イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)等の脂環族イソシアネートを使用することが好ましい。なお、昨今のVOC対策の観点から溶剤を含んでいない無溶剤シーラーを使用することもできる。
シーラーの塗布量は、例えば10〜100g/m2であり、含浸シーラーの塗装は、公知のロールコーター、スプレー等の方法で行うことができ、また、粘度、塗装後の乾燥条件は、使用する含浸シーラー種類、塗装方法を勘案して適宜決めることができる。
【0011】
(下地紫外線硬化型樹脂層)
本発明では、含浸シーラーが施された無機質抄造板11とウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13との間に、下地紫外線硬化型樹脂層(以下、下地UV層という)12を設けるのが好ましい。下地UV層12は、無機質抄造板11の微小凹凸を塗膜で吸収して、得られる化粧板の表面平滑性、及び鏡面性向上が図られるとともに、無機質抄造板11の表層部分の剥離破壊も防止される。
下地UV層12の形成に使用する塗料には作業性の良い、固形分が多く、塗料が硬化した後に体積収縮が少ない活性エネルギー線硬化型塗料の中でも、特に設備的に比較的適用し易い紫外線硬化型塗料が好適である。本発明における紫外線硬化型塗料は、紫外線重合性化合物、光重合開始剤、体質顔料を必須成分とし、必要に応じて溶剤、着色顔料、各種添加剤を配合したものであり、例えばウレタン樹脂系塗料等を例示することができる。また、下地UV層12はナチュラルリバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、リバースロールコーター等の公知の塗装方法にて塗装し、紫外線を照射することで硬化させた後、ベルトサンダー等公知の研磨方法により該下地UV層12表面を研磨することで得られる。なお、下地UV層12の塗装は上記塗装方法の一つ以上を組み合わせても良い。また、下地UV層12の形成に使用する塗料としては塗装目的が異なる一種類以上の塗料を塗装することもできる。即ち、含浸シーラーが施された無機質抄造板11の表面の穴埋めを目的とした目止め塗料、硬化後に研磨代の形成を目的としたサンジング塗料等を化粧板としての仕上がり外観、および塗膜性能を勘案して適宜塗り重ねすることができる。一種類以上の塗装目的が異なる上記紫外線硬化型塗料を塗り重ねることで下地UV層を形成する場合においては、各塗料を硬化させることなく、所謂ウエットオンウエット方式で塗装し終えた後に紫外線を照射して硬化させても良いが、各塗料を塗装する毎に紫外線を照射し、硬化させた塗膜の上に次の塗装目的である塗料を積層し、全ての塗料を塗装し終えた後に完全に塗料を硬化させるのに必要なエネルギー量の紫外線を照射する所謂セミキュアー方式の方が、得られる化粧板の表面平滑性、鏡面性向上が図れるため好適である。下地UV層12の塗料の塗布量は、例えば10〜200g/m2である。
また、上記紫外線硬化型塗料の塗装後の研磨は、研磨後の下地UV層の表面平滑性向上、ひいては得られる化粧板の表面平滑性、鏡面性向上を図るため、プラテン式研磨機を使用して、#100〜#400の研磨紙で実施することが好ましい。
【0012】
(ポリウレタン反応性ホットメルト層)
本発明におけるウレタン系反応性ホットメルト層13は、化粧紙14と基材である含浸シーラーが施された無機質抄造板11、あるいは化粧紙14と含浸シーラーが施された無機質抄造板11上に設けた下地UV層12を接着させる糊の役割を担っている。ウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、イソシアネート基末端にNCO基を持つウレタンプレポリマーを成分として含有する反応性ホットメルト接着剤であり、溶剤を全く含有していない無溶剤型接着剤である。そのため、乾燥工程は必要なく、一般的な溶剤系接着剤や水系接着剤と比べてエネルギー消費量が少なく、且つ接着ラインの省スペース化が可能である。また、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、常温では固体であるが、加熱溶融が可能であり、貼りあわせた後に瞬間的に初期強度が発現するため、締結養生やホットプレス等による加熱加圧養生等を必要とすることなく、次の工程に移ることが可能であるため高速化による生産性の向上を図ることができる。
更に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、貼りあわせ直後に初期強度を発現した後、末端のNCO基が空気中の湿気、あるいは基材である無機質抄造板11中の水分と反応し、硬化している。その際、二酸化炭素を発生して、末端がアミノ基となり、さらにそのアミノ基が別のNCO基と反応することによって尿素結合を生成する。更に、尿素結合は他のNCO基と反応することでビウレット結合を生成する。この様な反応過程を経て、湿気硬化反応が進行し、三次元の網目構造を形成することにより、従来のホットメルト接着剤の欠点であった耐熱性を大幅に向上させたものである。
ウレタン系反応性ホットメルト接着剤の塗布量は、例えば10g〜100g/m2である。
ウレタン系反応性ホットメルト接着剤で使用可能なポリオール成分としては、例えば、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、又はこれらの混合物若しくは共重合物等が挙げられる。更に、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、多価アルコール等、又はこれらの混合物若しくは共重合物が挙げられる。
また、ポリイソシアネート成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンイソシアネートなどの脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、加熱時の蒸気圧が低いジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。
本実施形態で使用されるウレタン系反応性ホットメルト接着剤としては、100〜130℃で溶融し、粘度が1000〜30000mPa・sのものが好ましく、その中でも特に初期接着力に優れることからポリエステルポリオールタイプのウレタン系反応性ホットメルト接着剤が好適である。特に、かかるウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、ポリエステルポリオールにポリエーテルポリオールやその他のポリオール、例えばアクリルポリオールを併用して得られるものが好適である。
なお、ポリウレタン反応性ホットメルトは市販されているものも利用することができ、例えば大日本インキ化学工業(株)製、タイホースFH−100が挙げられる。
【0013】
(化粧紙)
化粧紙14は、原紙を土台とし、原紙を印刷に適する様に公知のキャレンダー加工等で表面性(印刷インキのしみ込みを押さえるため密度を高める)を向上させ、そのキャレンダー加工を施した面に印刷が設けられる。原紙としては、坪量30〜120g/m2、の建材用チタン紙、建材用薄葉紙、プリント用紙、純白紙、晒または未晒のクラフト紙、いわゆる合成樹脂等を混合して抄造した混抄紙、チタン紙をラテックス等の樹脂で含浸した含浸チタン紙、ラテックス等をコーティングした含浸コートチタン紙等が使用される。
中でも好ましくは坪量60〜80g/m2の含浸チタン紙、含浸コートチタン紙であり、その中でも、含浸チタン紙は紙間強度が高いだけでなく、紙間に存在する気泡が少なく、化粧紙14上にクリアー層16を設けた場合に、紙間から気泡が抜け出ることによる発泡、泡かみ等の塗装不良も防止されると言う理由から更に好ましい。
化粧紙14の片面に設けられる印刷面は、例えば全面的に印刷を施したベタインキ層の上に意匠を目的とした抽象柄、石目柄、木目柄、幾何学柄等任意の絵柄模様が印刷形成された面である。絵柄模様の印刷方式は特定されるものではなく、公知の印刷方式によって形成することができ、グラビヤ印刷方式、インクジェット印刷方式等を例示することができるが、生産性が高い連続印刷が可能で色・濃度変化が自在に変化させることができ、且つ、隠蔽性が高いと言う理由から、公知のグラビヤ印刷方式で実施されるのが好ましい。なお、化粧板として耐熱性が要求される場合には、ベタインキ層、絵柄模様印刷層を形成するインキに耐熱インキを使用することが好ましい。
また後述のクリアー層16を設ける場合は、印刷面上にポリエステルポリオール樹脂やセルロース樹脂等を主成分とする公知のリコート剤を塗布するのが好ましい。リコート剤は、印刷で施した絵柄模様を保護し、化粧紙上の印刷インキの濃淡によるクリアー層16のしみ込みムラを改善し、プライマー層15塗装時の濡れ性を均一にしてプライマー層15の平滑性向上を目的として使用される。
印刷面上への上記リコート剤の塗布方法は特定されるものではなく、公知の印刷方式により絵柄模様を形成後に、絵柄模様の印刷と同一の印刷方式で連続して設けることもできる。また、印刷による絵柄形成後に、スプレー、ロールコーター等公知の塗装方法によって設けることもできる。
【0014】
(プライマー層)
プライマー層15は、クリアー層16の塗装直前に化粧紙14上に設けることで、化粧紙14とクリアー層16との濡れ性を向上させ、仮に化粧紙14上にクリアー層16を設けるまでのインターバルが長期間であった場合においても化粧紙14とクリアー層16との密着性を良好にするために設けられる。プライマー層15は、例えばポリエステルポリオールを主成分に硬化剤としてイソシアネートを添加するタイプの塗料であり、例えば大日本インキ化学工業(株)製、商品名バーノックD−210−80と硬化剤として商品名バーノックND−981が利用できる。
プライマー層15の塗布量は0.1〜1.0g/m2が好適である。1.0g/m2を超えると上記プライマー層15直上にクリアー層16を設けた際に、得られた化粧板の表面が縮み、鏡面性が著しく低下するため好ましくなく、0.1g/m2未満では安定して塗装が出来ないため不適である。
【0015】
(クリアー層)
クリアー層16は、透明または半透明硬化樹脂層からなる。透明または半透明とは、全光線透過率が40%以上、より好ましくは50%以上の硬化樹脂層を意味する。全光線透過率はヘイズメーター等を用いて従来公知の方法で測定することができる。また、透明または半透明硬化樹脂層とは、化粧層の保護層としての役割を果たすとともに、印刷絵柄模様に更なる深み感・立体感、鏡面性を付与するものである。
透明または半透明硬化樹脂層形成用塗料は、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、等の熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等からなる無色透明樹脂または着色顔料を含ませた半透明樹脂を用いることができる。半透明樹脂は着色顔料を添加したものを使用してもよい。
透明または半透明硬化樹脂層形成用塗料の塗布方法は、ロールコーター法、フローコーター法がとくに好ましいが、その他スプレー法、転写法、シート接着法等の既存の方法を用いてよい。また、透明または半透明硬化樹脂層の厚さはとくに制限されないが、50〜100μmである。
【0016】
上述の通り、一般的に、無機質抄造板は多孔質であるので、湿度の変化等による水分の変化に伴ってその寸法が伸び縮みする。従って、その表面に化粧紙を接着した化粧層を設けると、化粧層を設けた表面においては水分の出入りは生じず、化粧層を設けていない裏面からのみ水分の出入りを生じるので、化粧板にそりを生じやすい。また、基材となる無機質抄造板に直接塗装、印刷等を施してなる化粧板に比べて、本発明の様な化粧紙を貼りあわせてなる化粧板は、無機質抄造板の抄造方向と化粧紙の抄造方向が一致していることから、幅方向に変形しやすく、また化粧紙を接着した面側に引っ張り応力が作用するため、化粧面を上に向けた状態で四周部が浮く、所謂凹そりが助長され、大きくなる傾向にある。
上記問題点に対して、本発明では図1に示したように、基材である無機質抄造板11の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面17および裏面の一部18を、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13を介して、化粧紙14を巻き込むようにして被覆することで、前記無機質抄造板11上に化粧紙14を貼りあわせた後のそり、および化粧紙14にクリアー層16まで設けた化粧板としてのそりが低減でき、目視による外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性を損なうことなく、また突き合わせ部の不陸や浮きの様な問題生じることなく施工可能となる。
なお、被覆する端面からの長さL(以下、巻き込み代という)は、無機質抄造板11の裏面における四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面から15mm以下が好ましい。さらに好ましくは5〜10mmである。巻き込み代が5mm未満の場合、前記無機質抄造板11上に化粧紙14を貼りあわせた後のそり、および化粧紙14にクリアー層16まで設けた化粧板としてのそりの低減効果は、巻き込み代が小さくなるにつれて低下する傾向がある。また、巻き込み代が15mmを超える場合、化粧板としての有機分が増加し不燃性に悪影響を及ぼし、さらには昨今内装化粧板の施工方式として一般的に行われているTM工法では、接着力の安定性と言う見地から化粧板の裏面に巻き込んだ化粧紙を外した内側に両面テープを敷設するため、施工で突き合わせる抄造方向に平行な二辺で不陸や浮きを生じやすくなるため好ましくない。
なおTM工法とは、両面粘着テープと各種接着剤とを併用し、主に屋内の壁や天井のすて貼り下地に化粧板を接着する工法であり、化粧板の裏面に両面粘着テープと接着剤とを付け、両面粘着テープの接着力によりすて貼り下地と化粧板とを固定し、接着剤の硬化で二次接着力を持たせるものである。
また、化粧板のそりは、4mm以下にすることができれば、実用上問題はないが、2mm以下であれば、なお好ましい。
【0017】
(本発明の化粧板の製造方法)
本発明の化粧板1は、前記の含浸シーラーが施された無機質抄造板11と、印刷面を有する化粧紙14とを用意し、化粧紙14の印刷面とは反対側の面に、液体状のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を加熱しながら塗布してウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13を形成し、続いて、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13を介して、化粧紙14と、無機質抄造板11の表面、無機質抄造板11の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面17および裏面の一部18とを、化粧紙14の抄紙方向と無機質抄造板11の抄造方向とが一致するように貼りあわせることを特徴としている。なお、無機質抄造板11とウレタン系反応性ホットメルト接着剤層13との間に、下地紫外線硬化型樹脂層12を、また化粧紙14の印刷面上に、プライマー層15およびクリアー層16をさらに積層してもよいことは前述のとおりである。
化粧紙14の抄紙方向と無機質抄造板11の抄造方向は、顕微鏡観察することにより簡単に見分けることができる。化粧紙の土台となる原紙は、周知のように、パルプを叩解し、サイズ剤などの各種紙料を、紙の坪量等を勘案して適宜添加し、長網式や円網式で抄き上げ、脱水工程や乾燥工程を経ることによって製造される。このような抄紙工程中において、移動方向(抄紙方向)に沿って繊維材料が配向する。同様に、無機質抄造板においても、繊維材料を含む原料スラリーを前記の抄造装置において抄造するが、この場合も、移動方向(抄造方向)に沿って繊維材料が配向する。これらの繊維材料の配向方向を同じ方向にして化粧紙14と無機質抄造板11とを積層した場合に、化粧紙14の抄紙方向と無機質抄造板11の抄造方向とが一致すると本発明では定義する。なお、抄造法に固有な現象として、得られる製品の抄造方向に微小な厚みムラが生じるが、化粧紙14の抄紙方向と無機質抄造板11の抄造方向を一致させないで両者を貼りあわせた場合は、化粧板に格子模様の歪みを生じ著しく鏡面性を損ね、好ましくない。
【0018】
図3は、本発明の製造方法を実施するための装置の一例を説明するための図である。
このような製造装置20は、印刷面を有する化粧紙14を巻き回したロール201、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤の塗布装置202、化粧紙加熱装置203、無機質抄造板の含浸シーラー処理面に化粧紙を貼りあわせるための加熱加圧ローラー207から主に構成されている。
まず、ロール201から化粧紙14を巻き出す。このとき化粧紙14の幅は、無機質抄造板の幅よりも広く設定しておくのが好ましい。続いて、巻き出した化粧紙14を搬送ロール204に到達させる。同時に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤205を加熱溶融し、加熱された加熱ロール2021および2022間に供給し、搬送ロール204と加熱ロール2023との間で、化粧紙14の印刷面とは反対側の面に、液体状のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を加熱しながら塗布し、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を形成する。続いて、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を化粧紙加熱装置203によって加熱しながら、搬送ロール206を経て、図示しない搬送装置により矢印30方向に移動してくる無機質抄造板11の含浸シーラー処理面に貼りあわせ、加熱加圧ロール207によって両者を圧締する。なお、加熱ロール2021,2022,2023の加熱、加熱加圧ロール207の加熱は、例えばスチームを用いるなどの手段により、また化粧紙加熱装置203の熱源は、赤外線加熱器などの手段により可能である。
無機質抄造板11の表面に化粧紙を貼りあわせた後、続いてその抄造方向に平行な二辺の端面および裏面の一部に化粧紙を連続的に接着するのが好ましい。当該接着は、図4に示すような装置を用いて行うことができる。前記のように、化粧紙14の幅は、無機質抄造板11の幅よりも広く設定することができる。このことは、無機質抄造板11の中心と化粧紙14の中心を合わせて、無機質抄造板11の表面に化粧紙を貼りあわせたときに、所望の巻き込み代が得られることを意味する。無機質抄造板11の表面に化粧紙を貼りあわせた後は、加熱加圧ロール207の下流で、無機質抄造板11の裏面401、端面402および表面403のそれぞれに化粧紙が圧締されるように、異なる角度に調整した複数の圧締ロール41を設置し、図示しない搬送装置で矢印42方向に無機質抄造板11を送りながら、例えばロール表面を加熱しながら圧締を行う。これにより、無機質抄造板11の抄造方向に平行な二辺の端面および裏面の一部への、化粧紙の連続的な接着が完了する。1枚の化粧紙14を、無機質抄造板11の表面から端面、そして裏面に接着することで、無機質抄造板11に張力(テンション)が付与され、そりを一層防止することができ好ましい。
その後、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層は、冷却によって液相から固相に変化し(固化)、迅速に初期強度を発現する。当該初期強度は、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤のオープンタイム(タックフリーとなるまでの時間)と相関関係があり、オープンタイムの長いウレタン系反応性ホットメルト接着剤は初期強度が低い傾向にある。したがって、オープンタイムの短いものを使用するのが好ましい。初期強度が発現した後、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤の末端NCO基が空気中の水分(湿気)、あるいは被着体に含まれている水分と反応し、硬化が進行する。ウレタン系反応性ホットメルト接着剤は、短時間で固化し迅速に初期強度を発現することで、長時間の圧締などの必要がないため優れた生産性を提供できるとともに、硬化過程での体積収縮が少ないために極めて良好な平滑性を得ることが可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
無機質抄造板として(株)エーアンドエー愛知製の見掛け密度0.8g/cm3のけい酸カルシウム板(商品名ハイラック)を使用した。サイズは、幅910mm、長さ1820mm、厚さ6.0mmであった。上記けい酸カルシウム板の表面(化粧層を設ける面)は#100の研磨紙で、また裏面は#40の研磨紙を用いてそれぞれ研磨処理している。続いて、けい酸カルシウム板の両面に、湿気硬化型ウレタン系樹脂(コニシ(株)製、商品名KU663)からなる含浸シーラーをロールコーターで50g/m2塗装して含浸シーラー処理を行った後、抄造方向に平行な二辺の表面側の端面(化粧紙を接着する面側の角部)に、2Rの面取りを施した。
上記とは別に、ラテックスを含浸した坪量60g/m2の、チタン含浸紙((株)興人製、商品名GF60)の片面に、顔料とビヒクルを主とした印刷インキでベタインキ層と、その上に石目柄をグラビヤ印刷法で印刷し印刷面を形成し、化粧紙を製造した。化粧紙の印刷面上には、リコート剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名バーノックD−550)を4g/m2で塗装した。
【0021】
次に、図3および図4に示した製造装置を使用して、本発明の化粧板を調製した。
すなわち、前記の印刷面を有する化粧紙を巻き回したロール201を装置20にセットし、それぞれの加熱ロールを加熱した後、ロール201から化粧紙14を巻き出し、搬送ロール204に到達させた。同時に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤205(大日本インキ化学工業(株)製、商品名タイホースFH−100)を110℃で加熱溶融し、105℃に加熱された加熱ロール2021および2022間に供給し、搬送ロール204と105℃に加熱された加熱ロール2023との間で、化粧紙14の印刷面とは反対側の面に、液体状のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を塗布し、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を形成した。ウレタン系反応性ホットメルト接着剤の塗布量は40g/m2であった。続いて、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を化粧紙加熱装置203によって60℃に加熱しながら、搬送ロール206を経て、搬送装置により矢印30方向に移動してくる前記のけい酸カルシウム板の含浸シーラー処理面に、化粧紙14の抄紙方向とけい酸カルシウム板の抄造方向とが一致するように両者を貼りあわせ、上下ロールのクリアランスを5.7mmに設定した加熱加圧ロール207によって8m/minの速度で搬送しながら、60℃で圧締した。圧締時間が10秒でも、初期強度が発現したことが確認された。なお、化粧紙14は、下記の巻き込み代が得られるように幅寸法を予め設定しておいた。
けい酸カルシウム板の表面に化粧紙を貼りあわせた後、けい酸カルシウム板の抄造方向に平行な二辺の端面および裏面の一部に化粧紙を連続的に接着し、圧締した。この圧締には、図4に示すような装置を用いた。すなわち、無機質抄造板11の裏面401、端面402および表面403のそれぞれに化粧紙が圧締されるように、異なる角度に調整した複数の圧締ロール41を加熱加圧ロール207の下流に設置し、図示しない搬送装置で矢印42方向に無機質抄造板11を送りながら、ロール表面温度60℃として圧締を行った。裏面への化粧紙の巻き込み代は10mmとした。
得られた化粧板を室温で3分静置し、化粧紙14の表面に、主剤が大日本インキ化学工業(株)製、商品名バーノックD−210−80と硬化剤として商品名バーノックND−981としたイソシアネート樹脂塗料を4g/m2で塗装しプライマー層を形成し、さらにプライマー層の表面に全光線透過率95%のアクリル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名アクリディック55−129)と硬化剤(商品名バーノックND−981)からなるクリアー層をロールコーターを用いて厚さ50μmとして形成した。
かかる後、目視による外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行った。いずれも良好な結果を得た。また、得られた化粧板を鋼鉄製の定盤上に化粧面を上向きにして静置し、定盤と垂直にJIS1級の鋼製150mm直尺をたてて、化粧板の四隅部について定盤表面と化粧板裏面までの距離を読みとることで、そりを測定した。
四隅部のそりは0であった。
【0022】
(実施例2)
けい酸カルシウム板の片面に、アクリルウレタン樹脂塗料(大日本インキ化学工業社製、商品名ポリメディックHV−7)を、リバースロールコーターを用いて150g/m2塗装し、500mJ/cm2の条件で紫外線を照射し硬化させた後、#220の研磨紙を取り付けたプラテン式のベルトサンダーによって研磨し、下地UV層を形成し、その上にウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を介して化粧紙を貼りあわせたこと以外は、実施例1を繰り返した。かかる後、目視による外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行った。いずれも良好な結果を得た。また、得られた化粧板を鋼鉄製の定盤上に化粧面を上向きにして静置し、定盤と垂直にJIS1級の鋼製150mm直尺をたてて、化粧板の四隅部について定盤表面と化粧板裏面までの距離を読みとることで、そりを測定した。4カ所でのそりの最大値は0.5mmであり、両面テープと変性シリコーン接着剤を用いたTM工法で、問題なく施工できた。
【0023】
(実施例3)
クリアー層として、紫外線硬化型ウレタン樹脂塗料(大日本インキ化学工業社製、商品名ポリメディック007全艶CFC)を、フローコーターを用いて85g/m2塗装し、60℃雰囲気下で3分間セッティングした後に、420mJ/cm2の条件で紫外線を照射し硬化させたこと以外は、実施例1を繰り返した。かかる後、目視による外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行った。いずれも良好な結果を得た。また、得られた化粧板を鋼鉄製の定盤上に化粧面を上向きにして静置し、定盤と垂直にJIS1級の鋼製150mm直尺をたてて、化粧板の四隅部について定盤表面と化粧板裏面までの距離を読みとることで、そりを測定した。4カ所でのそりの最大値は1.5mmであり、両面テープと変性シリコーン接着剤を用いたTM工法で、問題なく施工できた。
【0024】
(比較例1)
実施例1において、けい酸カルシウム板の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面および裏面側の一部に化粧板を被覆・接着しなかったこと以外は、実施例1を繰り返した
かかる後、得られた化粧板を鋼鉄製の定盤上に化粧面を上向きにして静置し、定盤と垂直にJIS1級の鋼製150mm直尺をたてて、化粧板の四隅部について定盤表面と化粧板裏面までの距離を読みとることで、そりを測定した。4カ所でのそりの最大値は6.0mmであった。外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行ったところ、化粧板がそっているため鏡面性が低いものであった。
また、化粧板が凹状に大きくそっているため、TM工法での施工では、化粧板端部が下地から浮き上がる等の問題が発生した。
【0025】
(比較例2)
実施例1において、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤に替えて、変性酢酸ビニルエマルジョン接着剤用いたこと以外は、実施例1を繰り返した。化粧紙とけい酸カルシウム板との貼り合わせ後の圧締時間が10秒では、初期強度が発現しなかったことから、圧締時間を10分に延長した。かかる後、目視による外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行ったところ、化粧紙貼り付けからの時間経過とともに表面が縮み、鏡面性が悪化した。また、化粧紙貼り付け直後は四端部のそりの最大値が0mmであったが、240時間後にはそりの最大値が5.5mmにまで増加した。
【0026】
(実施例4)
実施例1において、けい酸カルシウム板裏面への化粧紙の巻き込み代を3mmとしたこと以外は、実施例1を繰り返した。かかる後、そりを測定した結果4mmであった。
外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行ったところ、化粧板としての鏡面性は、実施例1よりもやや劣ってはいるものの、TM工法による施工以外の場合には、実用上特に問題はなかった。
【0027】
(参考例)
けい酸カルシウム板の含浸シーラー処理面にウレタン系のベース塗料を120g/m2塗装し、その後、スクリーン印刷による2版印刷で絵柄模様を付与した後、クリアー層として、紫外線硬化型ウレタン樹脂塗料(大日本インキ化学工業社製、商品名ポリメディック007全艶CFC)を、フローコーターを用いて85g/m2塗装し、60℃雰囲気下で3分間セッティングした後に、420mJ/cm2の条件で紫外線を照射し硬化させて化粧板を得た。かかる後、得られた化粧板を鋼鉄製の定盤上に化粧面を上向きにして静置し、定盤と垂直にJIS1級の鋼製150mm直尺をたてて、化粧板の四隅部について定盤表面と化粧板裏面までの距離を読みとることで、そりを測定した。4カ所でのそりの最大値は2.5mmであった。外観観察での、立体感、深み感、鏡面性に基づく意匠性の評価を行ったところ、実施例のような化粧紙を貼りあわせることによって得た化粧板より鏡面性が低いことが分かった。印刷層のインキの厚みが厚いためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、基材として抄造法によって製造された無機質抄造板を使用し、その少なくとも片面上に化粧紙を貼りあわせた構成の化粧板において、そりを生じにくく、平滑性、意匠性および生産性に優れた化粧板およびその製造方法を提供することができる。本発明の化粧板は、意匠性を損なうことなく施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の化粧板の一例を説明するための断面図である。
【図2】本発明の化粧板の別の例を説明するための断面図である。
【図3】本発明の製造方法を実施するための装置の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の製造方法を実施するための装置の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 化粧板
11 無機質抄造板
12 下地UV層
13 ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層
14 化粧紙
15 プライマー層
16 クリアー層
17 端面
18 裏面の一部
19 アール面取り
19’ C面取り
20 製造装置
41 圧締ロール
202 ウレタン系反応性ホットメルト接着剤の塗布装置
203 化粧紙加熱装置
2021,2022,2023 加熱ロール
207 加熱加圧ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形状の無機質抄造板を基材とし、前記基材の少なくとも片面には含浸シーラーが施されており、前記含浸シーラーが施された前記基材の片面上に、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層および印刷面を有する化粧紙がこの順で積層され、前記化粧紙の印刷面とは反対側の面が、前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層と接しているとともに、前記化粧紙の抄紙方向が前記基材の抄造方向と一致している化粧板であって、前記基材の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面と前記片面とは反対面の一部とが、前記化粧紙および前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層によって被覆されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記基材と前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層との間に、下地紫外線硬化型樹脂層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記化粧紙の印刷面上に、プライマー層および透明または半透明硬化樹脂からなるクリアー層がこの順に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の化粧板。
【請求項4】
前記反対面の一部の、前記化粧紙および前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層によって被覆されている端面からの長さが、5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板。
【請求項5】
基材として少なくとも片面に含浸シーラーが施された略四角形状の無機質抄造板と、印刷面を有する化粧紙とを用意し、前記化粧紙の印刷面とは反対側の面に、液体状のウレタン系反応性ホットメルト接着剤を加熱しながら塗布してウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を形成し、続いて、前記ウレタン系反応性ホットメルト接着剤層を介して、前記化粧紙と、前記基材の片面、前記基材の四辺のうち抄造方向に平行な二辺の端面および前記片面とは反対面の一部とを、前記化粧紙の抄紙方向と前記基材の抄造方向とが一致するように貼りあわせることを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−168255(P2006−168255A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365962(P2004−365962)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】