説明

化粧板の製造方法

【課題】合板の表面に木質繊維板が貼着一体化され、その木質繊維板の表面にシート状化粧材が貼着された化粧板を、反りやねじれ等の変形を生じることなく、また化粧板表面に上記浮き出し現象が生じるのを確実に防止して、生産性良く製造する。
【解決手段】厚さが4mm以下で気乾比重が0.6以上でかつ0.9以下である木質繊維板1の表面にシート状化粧材4を接着して化粧木質繊維板5を形成する。この化粧木質繊維板5の裏面に反応性ホットメルト樹脂接着剤11を塗布した後、直ちに、化粧木質繊維板5の裏面と合板10の表面とを積層し、この積層物をロールプレス装置17で押圧して接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等建築物の床材や壁材等に用いるのに好適な化粧板の製造方法に関し、特に、反り、ねじれ等の変形を生じることがなく、また基材である合板に抜け節等の欠点がある場合にも、このような欠点が化粧板表面に浮き出すことのない化粧板を、生産性良く製造することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のあるように、合板の表面に硬度の高いMDF等の木質繊維板を貼着した木質複合板はよく知られている。この木質複合板は、通常、合板の表面に尿素樹脂接着剤や尿素−メラミン樹脂接着剤等の水系接着剤を塗布し、この上に木質繊維板を積層した後、ホットプレス装置を用いて熱圧し、接着一体化して製造されている。
【0003】
しかし、この方法では、熱圧時に接着剤中の水分が合板の表面層や木質繊維板の裏面層に移行して膨張するとともに、熱圧時の熱によって木質繊維板表面層の水分が蒸発して収縮する結果、得られる木質複合板にその表面側を凹とする凹反りやねじれ等の変形を生じることがあった。
【0004】
このため、特許文献1のものでは、表裏の単板の繊維方向を長手方向とし、表面側単板の厚さを裏面側単板の厚さより厚くなるように設定する等の複雑な単板構成の工夫によって、熱圧時の凹反りやねじれ等の変形を防止するようにしている。しかしながら、この方法では、木質複合板の構成が極めて限定され、応用性に乏しく生産性も悪くなる。また、ホットプレス装置等の大掛りな生産設備を必要とし、さらにバッチ的処理のため生産性が良くなかった。
【0005】
ところで、合板を構成する単板としては、従来、早材及び晩材の密度差が小さく均質で、しかも抜け節等の欠点のないラワン材等の南洋産広葉樹が使用されていた。しかし、近年の木材資源の枯渇化と地球環境保護の観点から、南洋産広葉樹の入手が困難となり、これに代わって、カラマツ、エゾマツ等早晩材の硬度差が明瞭な針葉樹材や、ラジアータパイン、トドマツ等抜け節の多い針葉樹材、或いは気乾比重が0.5未満の軽質な植林木等からなる単板で構成される合板を、木質複合板の基板として使いこなすことが必要となってきている。
【0006】
そこで、例えば特許文献2に記載のあるように、早材と晩材の硬度差が大きい針葉樹単板や、抜け節等の欠点のある単板、或いは軽質で強度の低い植林木単板を用いて製造した合板の表面に木質繊維板を貼着した木質複合板を基板とし、その表面に突板や印刷化粧シートを貼着して化粧板を製造することが提案されている。
【特許文献1】特開2006−192817号公報
【特許文献2】特開2002−187103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献2に示されているように化粧板を製造しようとした場合には、硬い晩材部の跡や抜け節の跡等の欠点部が化粧面に浮き出す現象を生じ、化粧板の外観が著しく損なわれるという問題を有していた。
【0008】
この問題について詳細に説明する。図3は、単板の抜け節が化粧板の化粧面に浮き出す現象を示している。図3(a)に示すように、抜け節部22を持つ単板21aと他の単板21a,21aとを積層した合板21の表面に接着剤を介して木質繊維板23を載置積層した後、図3(b)に示すように、この積層物をホットプレスによって熱圧して木質複合板25に形成すると、この熱圧によって抜け節部22上部の木質繊維板23が加圧されて下方の抜け節部22に押し出されたように変形する。その後、この熱圧状態を解除して放置すると、図3(c)に示すように、抜け節部22に起因する変形が元に戻ろうとして、木質複合板25の表面に僅かな膨らみ26(図では強調して示している)が生じる。そして、図3(d)に示すように、この木質複合板25の表面に、突板や合成樹脂化粧シートからなるシート状化粧材27を貼着して化粧板28を形成した場合に、上記僅かな膨らみ26が抜け節部22の跡として化粧面に浮き出して、化粧板28の外観が著しく損なわれることとなる。
【0009】
また、図4は早材と硬度差のある晩材部が化粧板の化粧面に浮き出す現象を示している。図4(a)に示すように、硬質な晩材部分29及び軟質な早材部分30を有する単板21aと他の単板21a,21aとを積層した合板21の表面に接着剤を介して木質繊維板23を載置積層した後、図4(b)に示すように、この積層物をホットプレスによって熱圧して木質複合板25を形成すると、この熱圧によって晩材部分29に較べ早材部分30が強く圧縮された状態となる。その後、図4(c)に示すように、熱圧状態を解除して放置した場合、晩材部分29の上部の強く圧縮された木質繊維板23の部分が元に戻ろうとして、晩材部分29の形状に沿って木質複合板25の表面に木目状の僅かな膨らみ26(図では強調して示している)が生じる。そして、図4(d)に示すように、この木質複合板25の表面に、突板や合成樹脂化粧シートからなるシート状化粧材27を貼着して化粧板28にすると、上記僅かな膨らみ26が晩材部分29の跡として化粧面に浮き出して、化粧板28の外観を著しく損なう状態となる。
【0010】
このような化粧面への浮き出し現象の発生を防止するため、木質複合板25の表面に生じた僅かな膨らみ26を研削して表面を平滑にしてから、シート状化粧材27を貼着して化粧板に形成することも考えられる。
【0011】
しかし、その場合、個々の膨らみ26のそれぞれの程度に合わせて研削することはできないので、可能性のある最大の膨らみ26を想定して過剰に研削することが必要となり、化粧板28の歩留まりや生産性が非常に悪くなる。
【0012】
また、この研削によって折角の木質繊維板表面の硬質部分が削除されてしまう結果、得られる木質複合板25の表面の硬度が不十分になるという問題を有する。
【0013】
さらには、上記表面を研削により平滑にした後の木質複合板25であっても、その表面に突板等のシート状化粧材27を貼着して化粧板28に形成する際に、通常行われているように、水系尿素メラミン樹脂を用いてホットプレスにより熱圧接着すると、この熱圧接着時にも、上記抜け節の跡や硬い晩板部の跡が化粧面に現出することがある。
【0014】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、合板の表面に木質繊維板が貼着一体化され、その木質繊維板の表面にシート状化粧材が貼着された化粧板を、反りやねじれ等の変形を生じることなく、また、化粧板表面に上記浮き出し現象が生じるのを確実に防止しながら、生産性良く製造できる化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、木質繊維板と合板とを積層して化粧板を製造する方法であって、厚さが4mm以下、気乾比重が0.6以上でかつ0.9以下(0.6〜0.9)である上記木質繊維板の表面にシート状化粧材を接着して化粧木質繊維板を形成し、この化粧木質繊維板の裏面又は上記合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布した後、直ちに、上記化粧木質繊維板の裏面と合板の表面とを積層し、この積層物をロールプレス装置で押圧して接着することを特徴とする。
【0016】
この発明では、化粧木質繊維板と合板とが水分を含まない反応性ホットメルト樹脂接着剤により連続的なロールプレス装置で押圧されて接着されるので、接着剤中の水分の影響も押圧時の熱の影響も受けることがなく、従って反りやねじれ等の変形がなく、また、合板を構成する単板の晩材部や節の跡が化粧面に浮き上がる現象を確実に防止できる化粧板が得られるとともに、その化粧板を連続的に生産性良く製造することができる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の化粧板の製造方法において、上記木質繊維板の表面に熱硬化性樹脂接着剤を塗布した後、この接着剤塗布面にシート状化粧材を載置して熱圧接着することにより化粧木質繊維板を形成することを特徴とする。
【0018】
この発明では、木質繊維板とシート状化粧材とが熱硬化性樹脂接着剤を用いて熱圧接着されて化粧木質繊維板が形成されるので、シート状化粧材が突板等の場合であっても木質繊維板の表面にシート状化粧材を確実に接着することができる。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2の化粧板の製造方法において、熱圧接着後の化粧木質繊維板を複数枚加圧状態に堆積して(積み重ねて)反りを矯正することを特徴とする。
【0020】
この発明では、熱圧接着後の化粧木質繊維板を複数枚加圧状態に堆積して反りを矯正しているので、その化粧木質繊維板に対する次工程のホットメルト樹脂接着剤の塗布と、ロールプレス装置による合板との接着を連続的に良好に行うことができる。なんとなれば、熱圧接着後の化粧木質繊維板には反りが生じるが、本発明のように合板と化粧木質繊維板とをホットメルト樹脂接着剤を用いてロールプレス装置によって短時間で良好に接着するには、事前に化粧木質繊維板の反りを矯正しておくことが好ましいからである。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1つの化粧板の製造方法において、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布する直前に、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面を予備加熱することを特徴とする。
【0022】
この発明では、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布する直前に、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面を予備加熱するので、ロールプレス装置で接着するときの反応性ホットメルト樹脂接着剤の溶融状態を良好に維持することができ、化粧板の生産性を一層層向上させることができる
【発明の効果】
【0023】
以上のように、請求項1の発明によれば、予めシート状化粧材を木質繊維板表面に接着した化粧木質繊維板と合板とを、水分を含まない反応性ホットメルト樹脂接着剤を用いて連続的なロールプレス装置で押圧して接着することにより、反りやねじれ等の変形がなく、また、合板を構成する単板の晩材部や節の跡が化粧面に浮き上がる現象が確実に防止された化粧板を連続的に生産性良く製造することができる。
【0024】
請求項2の発明によると、木質繊維板とシート状化粧材とを熱硬化性樹脂接着剤を用いて熱圧接着して化粧木質繊維板に形成することにより、請求項1の発明の効果に加えて、シート状化粧材が突板等の場合であっても木質繊維板の表面にシート状化粧材を確実に接着することができる。
【0025】
請求項3の発明によると、熱圧接着後の化粧木質繊維板を複数枚加圧状態に堆積して反りを矯正することにより、請求項2の発明の効果に加えて、化粧木質繊維板へのホットメルト樹脂接着剤の塗布と、ロールプレス装置による化粧木質繊維板と合板との接着を連続的に良好に行うことができる。
【0026】
請求項4の発明によると、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布する直前に、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面を予備加熱することにより、ロールプレス装置で接着するときの反応性ホットメルト樹脂接着剤の溶融状態を良好に維持することができ、化粧板の生産性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
図1及び図2は本発明の実施形態に係る化粧板の製造方法を示す。図1は化粧木質繊維板の製造工程を示し、図2は、その化粧木質繊維板と合板とを複合して化粧板Aを製造する工程を示す。
【0029】
(化粧木質繊維板の製造工程)
まず、図1により、化粧木質繊維板の製造工程を説明する。図1(a)に示すように、木質繊維板1を用意する。この木質繊維板1は、厚さが0.7〜4.0mm、気乾比重が0.6〜0.9(0.6以上でかつ0.9以下)、含水率が4〜10重量%(4重量%以上でかつ10重量%以下)程度のものを好適に用いることができる。
【0030】
木質繊維板1の厚さは0.7mm未満となると、得られる化粧板Aの表面硬度が不十分となって好ましくなく、また4.0mmを超えると、化粧板Aに反り等の変形が生じ易くなるので好ましくない。特に合板10(図2(d)参照)を構成する単板10aとして植林木のように軽質で硬度が低い木材、或いは抜け節等の欠点の多い木材を用いた場合でも、化粧板Aに良好な表面硬度を付与でき、かつ反り等の変形を防止できるという観点から、木質繊維板1の厚さは1.0〜3.0mmであるのが最も好ましい。
【0031】
また、この木質繊維板1として、厚さが2mm未満の薄いものを経済的にかつ安定して製造するのは難しいので、例えば1.5mm厚さのものを用いる場合には、3.0mm厚さの木質繊維板1をその厚み方向で2分割したものを用いればよい。
【0032】
さらに、木質繊維板1の比重が0.6未満となると、硬度が低くなって表面に傷が付き易くなるので好ましくなく、また0.9を超えると、加工性が悪くコストも高くなるので好ましくない。
【0033】
また、木質繊維板1の含水率は、4重量%未満にするためには、木質繊維板1を事前に過乾燥状態に乾燥する工程が必要となって好ましくなく、10重量%を超えると、水分を放散して収縮し易くなるので好ましくない。木質繊維板1と合板10の収縮挙動から、通常、木質繊維板1の含水率は、合板10の含水率よりも低くなるようにしておくのが、化粧板Aに反りやねじれが生じるのを防止する上で好ましい。
【0034】
そして、製造工程では、図1(a)に示すように、このような木質繊維板1の表面に、メラミン樹脂接着剤、尿素−メラミン樹脂接着剤、尿素樹脂接着剤等の水系熱硬化性樹脂接着剤2を塗布する。
【0035】
次いで、図1(b)に示すように、この木質繊維板1の接着剤2の塗布面上にシート状化粧材4を載置した後、ホットプレス装置6によりその定盤6a,6a間で熱圧する。
【0036】
このことで、図1(c)に示すように、木質繊維板1の表面にシート状化粧材4が強固に接着された化粧木質繊維板5を形成する。このようにして熱圧接着された化粧木質繊維板5には、化粧材4(表面)が凹状となる凹反りが生じている。
【0037】
ここにおいて、上記シート状化粧材4としては、印刷化粧紙、樹脂含浸印刷化粧紙、合成樹脂印刷化粧シート、或いは0.2〜0.6mm程度の厚さの薄い突板等を用いることができる。
【0038】
尚、上記ホットプレス装置6による熱圧条件は特に限定されるものではないが、例えば接着剤2として水系メラミン樹脂接着剤を用いる場合には、温度110〜120℃、圧力0.5〜0.8MPaで熱圧接着することができる。
【0039】
また、上記木質繊維板1とシート状化粧材4との接着は、上記の方法に限らず他の方法により行うこともできる。例えば、接着剤2として酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン、水性ビニルウレタン樹脂等を用い、平盤プレスで冷圧して接着することもできる。また、木質繊維板1の表面にPUR等の反応性ホットメルト樹脂接着剤を用い、シート状化粧材4をロールプレスにより接着することもできる。さらに、シート状化粧材4が合成樹脂印刷化粧シートである場合には、上記エマルジョン接着剤や水性接着剤を塗布した後、熱圧ロール等により熱圧プレスすることにより接着することもできる。
【0040】
次に、図1(d)に示すように、上記熱圧接着により得られた多数枚の化粧木質繊維板5,5,…を腹合わせ状態になるように上下のプレス板7,7間に積層する。この腹合わせ状態に積層するとは、1枚の化粧木質繊維板5を反りの湾曲凹側が上側(湾曲凸側が下側)になるように置き、その上に他の1枚の化粧木質繊維板5を反りの湾曲凹側が下側(湾曲凸側が上側)になるように載置し、これら1対の化粧木質繊維板5,5を1組として複数組に積み上げるもので、各組の上下両側の化粧木質繊維板5,5同士は反りの湾曲凹側となっている周縁部(端部)で当接し、上下に隣接する2組のうち上側の組の下側化粧木質繊維板5と、下側の組の上側化粧木質繊維板5とは反りの湾曲凸側となっている中間部で当接する。
【0041】
そして、この多数枚の化粧木質繊維板5,5,…の積層物の上(上側プレス板7上)に重量物8を載置する等して、化粧木質繊維板5を加圧状態に堆積し(積み重ね)、この加圧状態の堆積によって、上記熱圧接着により生じた化粧木質繊維板5の反りを矯正する。
【0042】
このことで、図1(e)に示すように、反りが矯正された化粧木質繊維板5を得ることができる。
【0043】
(化粧板の製造工程)
次に、このようにして得られた化粧木質繊維板5を合板10と接着して化粧板Aを製造する工程を図2により説明する。図2(a)に示すように、上記反りを矯正した化粧木質繊維板5を、その木質繊維板1の裏面が上側になる姿勢にしてコンベア13上に載置し、そのコンベア13の作動により予備加熱装置14内に搬入して裏面側の温度が30〜40℃程度となるように加温する。
【0044】
次いで、上記加温した化粧木質繊維板5をコンベア13で搬送しながら、図2(b)に示すように、専用のホットメルト樹脂接着剤塗布装置15より、その化粧木質繊維板5の裏面に、反応性ホットメルト樹脂接着剤である湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト樹脂接着剤11(以下、ホットメルト樹脂接着剤と略称する)を60〜120g/m程度の割合で塗布する。
【0045】
上記ホットメルト樹脂接着剤塗布装置15は、例えばコンベア13よりも上側に位置しかつ互いに外周面で当接して逆方向に回転する2つのロール15a,15bと、コンベア13よりも下側に、上記ロール15aとの間にコンベア13上の化粧木質繊維板5を挟むように位置するロール15cとを備えたもので、コンベア13上側の図で左側の一方のロール15aは、外周面がコンベア13上の化粧木質繊維板5に僅かな隙間をあけて位置するように配置されており、両ロール15a,15bの外周面当接部の上側空間にホットメルト樹脂接着剤11を溜め、このホットメルト樹脂接着剤11をロール15a,15bの回転によって一方のロール15a外周面に沿って化粧木質繊維板5上に供給し塗布するものである。
【0046】
このとき、上記コンベア13上の化粧木質繊維板5の裏面は、予め上記予備加熱装置により加温されているので、ホットメルト樹脂接着剤11を塗布しても、その接着剤11が急激に冷やされてその可使時間が短くなることはなく、後工程のロールプレス装置17により接着するまで溶融状態を良好に保つことができ、そのロールプレス装置17による接着を良好に行うことができる。
【0047】
ここで用いるホットメルト樹脂接着剤11としては、JIS Z 0208の条件Bによる試験での防湿性能が10〜25g/m・24hで、通常のホットメルト樹脂接着剤11の防湿性能(100〜120g/m・24h)よりも数倍程度高いものが好ましく、化粧板Aの反り等に対する耐変形性をさらに向上させることもできる。
【0048】
次いで、上記ホットメルト樹脂接着剤11の塗布後、直ちに、つまり塗布されたホットメルト樹脂接着剤11が可使状態(溶融状態)にあるうちに、図2(c)に示すように、そのホットメルト樹脂接着剤11が塗布された化粧木質繊維板5の裏面(ホットメルト樹脂接着剤11)上に、合板10をその表面が下向きとなるようにして積層載置し、かつロールプレス装置17,17により押圧することで、その合板10の表面に化粧木質繊維板5を接着する。このことで、図2(d)に示すような化粧板Aを形成する。
【0049】
上記合板10としては、その厚さが3〜15mmのものを用いることができる。合板10の厚さが3mm未満となると、曲げ強度等の強度が弱くなるので好ましくなく、また15mmを超えると、重量が重くなるとともにコストも高くなるので好ましくない。
【0050】
合板10や化粧木質繊維板5の厚さは化粧板Aの用途によって種々に設定することができ、例えば住宅の床材として用いる場合には、合板10の厚さを9.0〜9.5mmとし、化粧木質繊維板5の厚さを2.5〜3mmの厚さとして、全体の化粧板Aの厚さを12mm程度となるように設定するのが、強度的性質等の性能上、及びコスト上の観点から望ましい。
【0051】
また、合板10の含水率は特に限定されるものではないが、通常8〜14重量%程度のものを用いることができる。この含水率が8重量%未満となると、使用状態で湿気を吸収して膨張し易くなり、また14重量%を超えると、湿気を放散して収縮し易くなるためである。そして、接着する化粧木質繊維板5の含水率を合板10の含水率よりも低くすることによって、化粧木質繊維板5と合板10との膨張、収縮の釣り合いを良好に保ち、化粧板Aに反りやねじれが発生するのを抑制することができる。
【0052】
また、合板10の構成に用いる単板10a(図2(d)参照)としては、特に限定されずに種々のものを用いることができる。特に本発明においては、抜け節等の欠点が多い木材、早晩材の硬度差の大きな木材、軽質で硬度のない木材、反りやねじれを生じ易い未利用木材等、従来はその使用範囲が限定されていた針葉樹材や早生植林木、例えば国産トドマツ、カラマツ、エゾマツ、ラジアータパイン、北洋カラマツ、ポプラ、アカシアハイブリッド、アカシアマンギュウーム、ファルカタ、ユーカリ、ゴム等の樹種からなる木材を、合板10を構成する全ての単板10aとして、或いは合板10の一部を構成する単板10aとして用いることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、合板10として、図2(d)に示すように、表裏の単板10a,10aと中芯単板10aとの木材繊維の方向が化粧板Aの長手方向に略平行であり、表裏単板10a,10aと中芯単板10aとの間にある2枚の添芯単板10a,10aの木材繊維の方向が化粧板Aの長手方向に略直交方向となる5プライ合板を例示している。しかし、合板10の単板構成はこれに限らず、3プライから7プライ程度の種々の単板構成の合板10を用いることができる。また、裏面に防湿層や補強層を設けた合板10を用いることもできる。
【0054】
上記ロールプレス装置17,17による押圧は、冷圧によって行うことが経済的で望ましいが、熱圧によって行うこともできる。
【0055】
また、ロールプレス装置17による押圧条件は、特に限定されるものではないが、例えば上側のロール17aがゴムロールである場合には、1.5〜2.3MPaで少し面圧がかかるように押圧し、送り速度5〜40m/分で搬送して行うことができる。
【0056】
また、各ロールプレス装置17としては、上下1対のロール17a,17bを備え、その上側ロール17aが面圧のかかるゴムロールからなり、下側ロール17bが金属ロールからなるものを好適に用いることができる。また、図2(c)に示す例では、上下1対のロール17a,17bを有する2基のロールプレス装置17,17を示しているが、このような2基に限らず、1基或いは3基以上の複数基を設置することができる。
【0057】
また、このようなロールプレス装置17を複数として、それら複数基のロールプレス装置17,17,…の上下ロール17a,17bの間隔を搬送方向下流側に向かって徐々に狭くなるように配列することで、徐々に加圧力が強くなるようにしておくこともできる。さらには、このような連続的に加圧力が強くなる複数基のロールにベルトを架けたベルトプレス装置を用いることもできる。
【0058】
また、上記のように化粧木質繊維板5の裏面を加温し、ホットメルト樹脂接着剤11を塗布するのに代え、逆に合板10の表面を加温し、この表面にホットメルト樹脂接着剤11を塗布した後、この上に化粧木質繊維板5を積層載置し、ロールプレス装置17で押圧することもできる。
【0059】
その場合に用いられるホットメルト樹脂接着剤11は、通常用いられる水系メラミン樹脂接着剤等とは異なって水分が含まれていないので、合板10と化粧木質繊維板5とを接着複合化するときに、接着剤11中の水分が合板10の表面や化粧木質繊維板5の裏面に浸透することがなく、化粧板Aに形成したときに、接着剤中の水分に起因する反りの発生を抑えることができる。
【0060】
(実施形態の効果)
本実施形態では、上記のように、化粧木質繊維板5の裏面を加温する工程からロールプレス装置17により押圧して接着する工程まで、コンベア13で搬送しながら、連続的に生産するできるので、生産性が良い。
【0061】
また、本実施形態では、木質繊維板1の表面にシート状化粧材4を水系の接着剤2を介してホットプレス装置6で熱圧接着して得られた化粧木質繊維板5に反りが生じていても、予め、その反りのある化粧木質繊維板5を腹合わせ状態に多数枚堆積して反りを矯正しているので、化粧木質繊維板5に対し、後工程であるホットメルト樹脂接着剤11の塗布やロールプレス装置17による合板10との積層接着化を連続的に極めて生産性よく行うことができる。
【0062】
そして、この化粧木質繊維板5と合板10とを、水を含まないホットメルト樹脂接着剤11により、ロールプレス装置17の冷圧によって接着しているので、水分と熱の両方の影響を受けずに連続的に短時間で化粧板Aを形成することができ、反りやねじれ等の変形のない化粧板Aを生産性よく製造することができる。
【0063】
また、合板10と化粧木質繊維板5とを、水分を含まないホットメルト樹脂接着剤11を用いてロールプレス装置17により押圧し接着一体化しているので、合板10を構成する単板10aに、トドマツ単板等のように比較的軽質で、早材と晩材との硬さの差を有し、かつ抜け節のあるような針葉樹植林木を用いた場合でも、その単板10aの晩材の跡や抜け節の跡が、化粧板Aの表面に僅かな膨らみとなって浮き出してくることはない。
【実施例】
【0064】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。厚さ2.7mm、幅3尺、長さ6尺のサイズで、気乾比重0.79、含水率6重量%の木質繊維板の表面に、水性の尿素メラミン樹脂接着剤をロールコーターにより塗布した。
【0065】
次いで、この木質繊維板の接着剤塗布面上に厚さ0.25mmで幅1尺、長さ3尺、含水率55重量%のウェットな突板シート3枚を幅方向に並べて積層載置し、これをホットプレス装置の定盤間に挿入し、温度110〜120℃、圧力0.7〜0.8MPaで60秒間熱圧して化粧木質繊維板を製造した。得られた化粧木質繊維板は、表面側が凹となる凹反りを生じていた。
【0066】
次に、この化粧木質繊維板を複数枚腹合わせ状態(図1(d)参照)に積層堆積し、上から重石(重量物)を載せて加圧状態で48〜144時間養生し、含水率が5重量%で、フラットに矯正された化粧木質繊維板を得た。
【0067】
次に、このフラットに矯正された化粧木質繊維板を、裏面側を上に向けてコンベア上に載置し、予備加熱装置により裏面の温度が30〜40℃程度になるように加温した。
【0068】
次に、このコンベア上に載置した化粧木質繊維板を送り速度30m/分の速度で連続して搬送しながら、この化粧木質繊維板の裏面が上記加温状態にあるうちに直ちに、約120℃の温度に加熱されて溶融状態にある湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂接着剤をホットメルトロールコーター(ホットメルト樹脂接着剤塗布装置)により固形分換算で80g/mの割合となるように塗布した。
【0069】
さらに、30m/分の速度で連続して搬送しながら、上記ホットメルト樹脂接着剤の塗布後、直ちに、この化粧木質繊維板のホットメルト樹脂接着剤塗布面上に合板を、その表面側が下側に向くように積層載置した。合板は、表裏及び中芯の3枚の単板の木材繊維の方向が略長手方向となり、この表裏の単板と中芯の単板の間の2枚の添芯単板の木材繊維の方向が略幅方向となるように積層接着された、厚さ9mm、含水率11重量%のトドマツ5プライ合板である。
【0070】
さらに、30m/分の速度で連続して搬送することで、積層載置後、直ちに、この積層物を、上側が径1000mmのゴムロールからなる一方、下側が径1000mm以上の鉄ロールからなる2対のロールプレス装置(両ロールプレス装置間の間隔は2m以内に近接させてある)の上下ロール間を連続的に通過させて線圧2MPaの圧力で押圧し、合板の表面に化粧木質繊維板を接着した。
【0071】
上記ホットメルト樹脂接着剤を塗布してから、ロールプレス装置でプレスするまでの時間は、60秒から200秒までの間(湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤のオープンタイム内)に管理した。
【0072】
こうして得られた化粧板は、反りやねじれ等の変形がなく、トドマツ単板の晩材の跡や抜け節の跡が化粧板表面に膨らみとなって浮き出していなかった。尚、この化粧板は、上下反転させて堆積し、鋸で幅方向に3分割した後、四周の実加工と表面の塗装とを行い、厚さ12mm、幅303mm、長さ910mmの化粧床板に形成した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、表面の木質繊維板に化粧シート材が貼着された化粧板を反りやねじれ等の変形を生じることなく、化粧板表面に合板の単板における晩材や抜け節の跡による浮き出し現象が生じることなく製造できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、化粧木質繊維板の製造工程を示す図である。
【図2】図2は、化粧木質繊維板と合板とを複合して化粧板を製造する工程を示す図である。
【図3】図3は、従来例で単板の抜け節が化粧板の化粧面に浮き出す現象を示す説明図である。
【図4】図4は、従来例で晩材部が化粧板の化粧面に浮き出す現象を示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
A 化粧板
1 木質繊維板
4 シート状化粧材
5 化粧木質繊維板
10 合板
10a 単板
11 湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト樹脂接着剤
14 予備加熱装置
15 ホットメルト樹脂接着剤塗布装置
17 ロールプレス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維板と合板とを積層して化粧板を製造する方法であって、
厚さが4mm以下、気乾比重が0.6以上でかつ0.9以下である上記木質繊維板の表面にシート状化粧材を接着して化粧木質繊維板を形成し、
この化粧木質繊維板の裏面又は上記合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布した後、直ちに、上記化粧木質繊維板の裏面と合板の表面とを積層し、
この積層物をロールプレス装置で押圧して接着することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項2】
請求項1の化粧板の製造方法において、
木質繊維板の表面に熱硬化性樹脂接着剤を塗布した後、この接着剤塗布面にシート状化粧材を載置して熱圧接着することにより化粧木質繊維板を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項3】
請求項2の化粧板の製造方法において、
熱圧接着後の化粧木質繊維板を複数枚加圧状態に堆積して反りを矯正することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの化粧板の製造方法において、
化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面に反応性ホットメルト樹脂接着剤を塗布する直前に、化粧木質繊維板の裏面又は合板の表面を予備加熱することを特徴とする化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−274269(P2009−274269A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126069(P2008−126069)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【出願人】(000157256)丸玉産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】