説明

化粧板

【課題】基材に表面化粧印刷紙を接着し化粧板として用いるとき、表面化粧印刷紙がしっかりと基材に接着してラミネートするとともに、紙間強度が向上し、意匠性にも優れた化粧板を少ない工程で、安価に提供する。
【解決手段】基材4の表面に接着剤3を介して表面化粧印刷された印刷紙1をラミネートしてなる化粧板Aにおいて、上記基材4表面に接着される印刷紙1の接着面12から印刷紙1の表面11にかけて径が狭くなる円錐状の微小孔2を形成するとともに、上記微小孔2に接着剤3を充填してなる化粧板A。上記表面化粧印刷には無地のベタ塗り印刷も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は化粧板に関するものであり、詳しくは、基材の表面に様々な模様が印刷されたシート状の化粧紙を貼り合わせてなる化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅やオフィス等の内装用には床材、壁材、天井材等様々な種類の建材が使用されている。通常、それらの建材は、基材の表面に模様が印刷された化粧シートを貼り合わせてその意匠性が高められている。一般的に上記化粧シートとしては、合成樹脂製、布製、紙製等のシートをベースとし、これらのベースシートの表面に、無地を含んで種々の意匠が印刷されて用いられる。
【0003】
例えば、上記内装用の床材は、一般的に合成樹脂フィルム、強力紙、不織布等の表面に木目模様調等のデザインを印刷し、得られた木目模様調等の表面を有する化粧シートを、合板等の木質基材に貼着、複合して床材としてフローリングに用いられる。
【0004】
上記した床材用以外にも、花柄、幾何模様、コルク模様、塗り壁調等、種々の意匠が表面に印刷された合成樹脂製、布製、紙製等の各種シートが壁紙として用いられる。そして、上記のようにデザインされた壁紙を、コンクリート躯体、石膏ボード、合板等、壁面を構成する基材に直接、接着剤等で貼着することによって室内の装飾性は顕著に向上される。
【0005】
しかしながら、壁紙として表面化粧された合成樹脂製シートを用いたとき、合成樹脂には、ホルムアルデヒドなど、いわゆる「シックハウス症候群」を引き起こす室内有害ガスを発生する化学物質を含む場合があり、また施工当初に特有の不快な臭気を発するため、人によっては頭痛等の症状を訴えることがある。
【0006】
そこで、上記問題を解決するため、特開2003−278099号公報には叩解されたパルプと、必要により珪藻土と、該珪藻土とパルプの間の結合強度を高める添加剤、無機質材料、フタロシアニン化合物を含み、抄紙された壁紙原紙の裏面に基材が積層され、該原紙表面に(印刷模様)およびエンボスが付与され、表面に耐汚染表面層が被覆され、該表面層上から微細な孔が多数形成されたことを特徴とする壁紙が開示されている。
【0007】
そして、上記壁紙の耐汚染性樹脂表面には小孔を開けてあるため、前記小孔からホルムアルデヒドや悪臭成分が入り、珪藻土により吸着され、さらに、吸着された成分がフタロシアニン化合物により、分解されるので上記壁紙に吸着したホルムアルデヒドを再放出することが少ないとの効果が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−278099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記技術においては、表面化粧シートは、コンクリート躯体等、壁面に貼着して壁紙として用いられるが、壁紙以外にも他の基材と表面化粧シートとを複合させて床材や屋内のパーティション、天井材等内装用として用いられることが多い。
【0010】
このとき、表面化粧シートとして上記合成樹脂製のものを用いた場合、前記したように、室内有害ガスの発生等の問題があり、この問題を排除するため、内装用の表面化粧シートとしては合成樹脂製シートに替えて、布製や紙製の化粧シートを用いることが多くなっている。
【0011】
しかしながら、紙製の化粧シートを合板等の基材に接着し、化粧板として使用するとき、使用期間中に接着された化粧シートの紙層の中で紙間に剥離が生じたり、表層の紙層が剥落するという問題がある。
【0012】
また、上記した基材に接着剤を塗布して化粧紙を接着する際、接着剤が化粧紙の裏面から内部に浸透しにくく、エアを噛んだ状態となり、膨れ等が生じ、表面が均一な化粧板を得ることが困難であるという問題もある。
【0013】
本願発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材に表面化粧印刷紙を接着し化粧板として用いるとき、表面化粧印刷紙がしっかりと基材に接着してラミネートできるとともに、紙間強度が向上し、意匠性にも優れた化粧板を安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る化粧板は、基材の表面に接着剤を介して表面化粧印刷された印刷紙をラミネートしてなる化粧板において、上記基材表面に接着される印刷紙の接着面から印刷紙の表面にかけて径が狭くなる円錐状の微小孔(下が大径で上になるに従って小径となる台形状微小孔を含む)を形成するとともに、上記微小孔に接着剤を充填してなることを特徴とする。
【0015】
上記基材としては、コンクリート躯体、モルタル仕上げ壁、石膏ボード等の無機系基材、あるいは無垢の板、合板、床板用厚手合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、木質プラスチックボード(WPB)等種々の木質基材をあげることができる。ここで、上記基材の接着面は、接着剤との接着性の面から粗面であることが好ましく、無垢の板等、木質系基材が好ましく用いられる。中でも合板、厚手の合板が強度に優れていることや、入手が容易であり、また接着剤との接着性も良好であることから好適に用いられる。
【0016】
上記基材の表面に化粧印刷紙を接着するために用いられる接着材としては、例えば、SBR系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤等、ロールコータやスプレッター等で塗布できる公知のエマルジョン系接着剤が用いられる。上記した接着剤は好ましくは、加熱、加圧下で基材に接着される。
【0017】
さらに、加熱によって接着剤成分そのものが硬化して接着剤層を形成する熱硬化性樹脂からなる熱硬化型接着剤を用いてもよい。例えば、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂の単独あるいは、これらの2種類以上の混合系樹脂からなる熱硬化型接着剤をロールコータ等で塗布し、その後加熱硬化させることによって基材の表面に化粧印刷紙を接着させてもよい。
【0018】
上記化粧印刷紙の裏面から印刷紙の表面にかけて径が狭くなる円錐状ないしは円錐台状の微小孔は、化粧印刷紙の裏面、すなわち基材との接着面から表面にかけて穿たれる。この微小孔の穿孔は、例えば、多数の円錐形の針が植設された針ロールに化粧印刷紙の裏面を通すこと等によって行われる。
【0019】
上記表面に化粧印刷される印刷原紙としては、特に限定されず、易接着性で紙層の強度の大きい薄葉紙、クラフト紙、和紙等があげられ、また薄葉紙状の不織布も用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願請求項1記載の発明にかかる化粧板においては、コンクリート躯体、モルタル仕上げ壁、石膏ボード等の無機系基材、あるいは無垢の板、合板、厚手の合板等の木質基材の表面に接着される印刷紙の裏面すなわち接着面から、表面すなわち印刷面に向けて径が狭くなる無数の円錐状ないしは円錐台状の微小孔が形成されているため、接着剤が微小孔の裏面に塗工されると同時に、微小孔内に溜まった空気は表面の透孔から上方に抜け、微小孔内を接着剤で円滑に充填することができる。
【0021】
上記のようにして、開口部に溜まった空気は容易に抜けるため、基材と印刷紙とはしっかりと接着して、印刷紙面に膨れ等のない意匠性に優れた化粧板とすることができる。
【0022】
また、接着剤は微小孔に充填されて印刷紙の紙層の内部に浸透するため、接着工程を終了した後には印刷紙が基材にしっかりと接着した化粧板を得ることができる。このように、接着剤が紙層の内部に浸透し固化しているため、紙間強度が大きくなって、紙間に剥離が生じたり、表層の紙層が剥落するという問題を防ぎ、耐久性のある化粧板を得ることができる。
【0023】
加えて、上記印刷紙の裏面から、表面に向けての微小孔形成は略円錐形の針を多数植設した針ローラー等によって行われるため、微小孔形成工程後に引き続いて接着工程を行うことが可能であり、少ない工程でコスト的に有利に化粧板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)本願発明に係る表面化粧印刷された印刷紙の表面を示す表面図。(b)上記印刷紙の断面を模式的に示す断面図。(c)上記印刷紙の裏面を模式的に示す裏面図。
【図2】(a)上記表面化粧印刷された印刷紙を基材としての厚手合板に接着、ラミネートした本願発明に係る化粧板の断面を模式的に示す断面図。(b)本願発明に係る化粧板を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本願発明に係る化粧板の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、基材として厚手の合板を用い、その表面に化粧印刷された印刷紙を接着、ラミネートし、化粧板としての床材を得る形態について述べる。
【0026】
図1(a)は、本願発明に係る化粧印刷された印刷紙1の表面を示す表面図である。図1(a)に示すように、上記印刷紙1の表面11にはスギ、ケヤキ等、天然木の木目模様が印刷されている。印刷用紙としては、目付量が20g/m2〜70g/m2である通常の紙が用いられ、公知の方法、例えばグラビア印刷等によって上記木目模様が印刷される。
【0027】
図1(b)は、上記印刷紙1の断面を模式的に示す断面図である。図1(b)に示すように、上記印刷紙1の裏面すなわち後記する基材との接着面12から、その表面11すなわち印刷面に向けて径が狭くなる円錐状の微小孔2が無数に形成されている。上記微小孔2自体の形状は、円錐形ないしは円錐台形であるが、印刷紙1の表面11部分は透孔21とされている。
【0028】
図1(c)は、上記印刷紙1の裏面すなわち接着面12を模式的に示す裏面図である。上記したように、印刷紙1の接着面12には無数の微小孔2が形成され、その開口部22の孔径dは0.05mm〜0.5mmに調整されている。ここで上記微小孔2は接着工程の直前に、多数の円錐形の針が植設された針ロールに化粧印刷紙の裏面を通すことによって形成される。
【0029】
図2(a)は上記表面化粧印刷された印刷紙1を、基材4としての厚手合板に接着、ラミネートした本願発明に係る化粧板Aの断面を模式的に示す断面図である。図2(a)に示す接着剤3としては、例えば、SBR系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、メラミン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤等の各種接着剤が用いられる。
【0030】
通常、上記接着剤3はロールコータやスプレッター等で基材4の表面に塗布された後、基材4と印刷紙1とが接着される。前記したように、印刷紙1の接着面12には開口部22が形成され、この開口部22から表面11側の透孔21に向けて径が狭くなる円錐状の微小孔2が無数に形成されているため、印刷紙1がロール等によって基材4に装着されるとき、その接着剤3は微小孔2の接着面12側の開口部22から該円錐状の微小孔2に充填される。
【0031】
このとき、接着剤3の充填と同時に、微小孔2内の空気は表面11側に穿孔された透孔21から抜け、接着剤3はエアを噛むことなくスムースに微小孔2に充填されていく。このようにして接着剤3は、印刷紙1の紙層の中に浸透するため、接着工程終了後には紙間強度が大きく向上する。また、この接着工程は、通常、加熱、加圧下に行われるため、印刷紙1と基材4としての厚手合板とはしっかりと接着させることができる。
【0032】
図2(b)は本願発明に係る化粧板Aを示す外観斜視図である。上記化粧板Aは床材として用いられるが、通常、化粧板Aの表面、すなわち印刷紙1の表面11は保護塗装され、外部からの衝撃、耐キャスター性、耐候性等の向上が図られている。
【0033】
例えば、透明な樹脂層を形成する熱硬化性樹脂からなる塗料を上記印刷紙1の表面11に塗布して加熱、硬化させる。上記熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型アクリル樹脂等があげられ、これを単独あるいは、2種類以上の混合系で用いられる。さらに、例えば、ハウスダストや花粉アレルゲン等各種アレルゲンの活動を抑制する特殊加工剤、耐摩耗剤等の表面特性付与剤を塗布してもよい。
【0034】
本実施形態においては、上記印刷紙1として表面に木目模様が印刷された紙が用いられたが、着色用塗料がベタ塗りされた無地の印刷紙でもよい。さらに、このベタ塗り印刷した印刷紙の表面を様々にデザインされた表面化粧シート、例えば模様が印刷された透明PETフィルム、不織布等でラミネートしてもよい。
【0035】
なお、上記した実施形態は、基材として厚手の合板を用いた例について述べたが、合板に限られず、パーティクルボードや中密度繊維板(MDF)等の木質基材、あるいは石膏ボード等の無機系基材を用いてもよい。
【0036】
また、その用途は床材のみに限定されるものではなく、内装用壁材や天井材、間仕切り壁材用としても使用可能である。このように本願発明に係る化粧板は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0037】
A 本願発明に係る化粧板
1 印刷紙
11 表面
12 接着面
2 微小孔
21 透孔
22 開口部
3 接着剤
4 基材
d 開口部の孔径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に接着剤を介して表面化粧印刷された印刷紙をラミネートしてなる化粧板において、上記基材表面に接着される印刷紙の接着面から印刷紙の表面にかけて径が狭くなる円錐状の微小孔(下が大径で上になるに従って小径となる台形状微小孔を含む)を形成するとともに、上記微小孔に接着剤を充填してなる化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−245627(P2012−245627A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116655(P2011−116655)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】