説明

化粧用パフおよび凹部形成方法

【課題】化粧水含浸時における所望の離水性を確保しながら、一方の面に複数の凹部を有する化粧用パフを提供する。
【解決手段】平坦な外周面110Aを有するとともに、熱を発生する第1のロール110と、外周面120Aに複数の突部121が形成された第2のロール120を対向させて配置する。そして、化粧用パフ170を構成する、パルプを含むエアレイド不織布シート160の他方の面170Bを、第1のロール110の外周面110Aに半周以上接触させた状態で、第1のロール110と第2のロール120を回転させて、エアレイド不織布シート160の一方の面160Aに複数の凹部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、化粧等に使用される化粧用パフを構築する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、含浸させる化粧水の量を知らせる目安表示付き化粧綿および目安表示付き化粧綿の製造装置が記載されている。特許文献1に記載されている目安表示付き化粧綿の製造装置は、図14に示されているように、第1のロール510と、第2のロール520と、第3のロール530を有している。第1のロール510は、凹型511が形成されている外周面あるいは平坦な外周面を有している。また、第2のロール520は、突型521が形成されている外周面を有しているとともに、加熱機能を備えている。化粧綿を構成する帯状の綿素材560は、第1のロール510と第3のロール530によって送られる。また、第1のロール510と第2のロールによって表面が加工される。図15に、表面が加工された綿素材550の断面が示されている。例えば、第2のロール520の突型521と第1のロール510の凹型511によって、綿素材550の一方の面550Aに凹部551が形成され、他方の面550Bに突部552が形成される。あるいは、第2のロール520の突型521と第1のロール510の平坦な外周面によって、綿素材550の一方の面550Aに凹部551が形成される。この凹部551は、化粧綿に化粧水を含浸させる際に、適量の化粧水を判断するための目安表示として用いられる。
【特許文献1】実用新案登録第3081297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、見栄えや高級感を出すために、表面に装飾図柄(例えば、記号、文字、幾何学模様、キャラクター)を表示した化粧用パフの開発が要望されている。化粧用パフの表面に装飾図柄を表示する方法としては、装飾図柄に対応させて、化粧用パフの表面に複数の突部あるいは凹部を形成する方法(一般的には、「エンボス加工方法」と呼ばれている)を用いることができる。
化粧用パフの表面に凹部を形成する方法として、例えば、特許文献1に記載されている方法を用いることができる。しかしながら、特許文献1に記載されている方法を用いた場合、化粧用パフの表面に凹部が強固に形成されるため、化粧用パフに化粧水等を含浸させて使用する際の離水性がよくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、化粧水等の含浸時における所望の離水性を確保しながら、表面に複数の凹部を有する化粧用パフを得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1発明の化粧用パフは、公知のエアレイド法によって製造されるエアレイド不織布シートにより構成される。エアレイド不織布シートは、パルプ繊維を含んでいる。このエアレイド不織布シートは、対向する面のうちの一方の面に複数の凹部が形成されている。凹部は、エアレイド不織布シートの一方の面全体に形成してもよいし、一方の面の一部の領域に形成してもよい。エアレイド不織布シートの一方の面の所定の領域に凹部が形成されると、当該所定の領域の面が凹凸面となる。この場合、凹部の形状、大きさおよび配置位置等を適宜設定することにより、エアレイド不織布シートの一方の面に装飾図柄を表示することができ、化粧用パフの見栄えや高級感等を高めることができる。
化粧用パフは、化粧水を含浸させた状態で使用されることが多い。ここで、凹部が強固に形成されていると、化粧水を含浸させた状態で使用する際に所望の離水性を得ることができない。特に、化粧水を含浸させた後の1回目の離水量(放水量)が多くなる。化粧水が含浸されている状態におけるシートの離水性は、ウェット状態のシートの厚さの回復度合いを示すウェット時加重後回復率を用いて評価することができる。ウェット時加重後回復率は、所定の大きさのシート評価片に所定量の試験液を含浸させ、このシート評価片に所定の力(「荷重」ともいう)を印加した時(加重時)の厚さと、当該所定の力の印加を解除した時の厚さによって算出される。本発明では、一方の面に凹部が形成されたエアレイド不織布のウェット時加重後回復率が7%以上に設定されている。これにより、化粧水が含浸されていない状態では、エアレイド不織布シートの一方の面に形成された凹部によって装飾図柄が表示される。一方、化粧水が含浸されると、凹部が小さくなり、所望の離水性が確保される。なお、ウェット時加重後回復率の上限値は、化粧用パフとして好適に使用可能な値に設定される。ウェット時加重後回復率は、化粧用パフを構成するエアレイド不織布シートの素材や凹部形成方法等によって設定される。
なお、エアレイド不織布シートに含まれるパルプ繊維は、単位長さ当たりの繊維重量が0.20mg/m以上であるのが好ましい。この場合、平均ポアサイズ(空隙部分の径)が100μm以上となって強固な骨格構造を得ることができ、ウェット時加重後回復率、一括離水率、分割離水率を高めることができる。
【0005】
第1発明の他の形態では、エアレイド不織布シートは、疎水性を有する疎水性合成繊維を含んでいる。「疎水性合成繊維」としては、典型的には、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET)、ポリエチレン繊維(PP)、ナイロン繊維のうちの1または複数を用いることができる。疎水性を有する疎水性合成繊維を含むエアレイド不織布シートを用いることにより、より容易に所望の離水性を確保することができる。
なお、疎水性合成繊維を10〜50重量%の割合で含むエアレイド不織布シートを用いるのが好ましい。これにより、エアレイド不織布シートのウェット時加重後回復率、一括離水率、分割離水率を高めることができる。
【0006】
第1発明の更に他の形態では。エアレイド不織布シートは、レーヨン繊維からなる外層部を有している。レーヨン繊維からなる外層部は、外層部のうちの少なくとも一方に設けられていればよい。これにより、肌触りが滑らかになる。
【0007】
第2発明の化粧用パフは、公知のエアレイド法によって製造される1つのエアレイド不織布シートにより構成される。エアレイド不織布シートは、好適には、パルプ繊維あるいはパルプ繊維と疎水性合成繊維を含む。
1つのエアレイド不織布シートは、折り返し線を挟んで一方側に第1のエアレイド不織布シート、他方側に第2のエアレイド不織布シートを有している。そして、この1つのエアレイド不織布シートが折り返し線に沿って折り返されて、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートが重ねられている。また、重ねられている第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されている。凹部は、面全体に形成してもよいし、面の一部の領域に形成してもよい。凹部の形状、大きさおよび配置位置等を適宜設定することにより、凹部が形成された面に装飾図柄を表示することができる。これにより、化粧用パフの見栄えや高級感等を高めることができる。
本発明では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートが重ねられた状態で使用することができる。このため、凹部が形成されていない他方のエアレイド不織布シート(第1のエアレイド不織布シートあるいは第2のエアレイド不織布シート)の対向する面のうち、一方のエアレイド不織布シート(第2のエアレイド不織布シートあるいは第1のエアレイド不織布シート)と対向する側の面と反対側の面を使用してパッティング等を行うことができる。この場合、他方のエアレイド不織布シートに化粧水が含浸されるため、一方のエアレイド不織布シートに形成されている凹部による化粧用パフの離水性への影響は少ない。第1および第2のエアレイド不織布シートとしては、所望のウェット時加重後回復率、一括離水率、分割離水率を有するエアレイド不織布シートを用いるのが好ましい。
【0008】
第2発明の他の形態では、1つのエアレイド不織布シートは、折り返し線に沿って形成された複数の穴を有している。穴は、典型的には、ミシン目加工によって形成される。本形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを、穴が形成されている折り返し線に沿って切り離すことができる。穴の形状、間隔等は、必要な時に第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを折り返し線に沿って容易に切り離すことができるように選択される。
本形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを重ねた使用形態、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを折り返し線に沿って切り離した使用形態で使用することができる。
【0009】
第2発明のさらに他の形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートは、折り返し線から設定距離以上離れた箇所で接合されている。「設定距離」としては、典型的には、折り返し線と接合部によって、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートの間に、人差し指あるいは人差し指と中指が挿入可能な指挿入空間が形成される距離が選択される。接合部は、折り返し線から設定距離以上離れていればよく、接合箇所や接合形状等は適宜選択することができる。接合部は、典型的には、折り返し線に平行(略平行を含む)に形成される。また、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを強固に接合してもよいし、剥離可能に接合してもよい。また、接合部は、連続して形成されてもよいし、互いに離れた箇所に形成されてもよい。
本形態では、指挿入空間に指を挿入した状態で使用することができるため、取り扱いが容易となり、短時間でパッティングを行うことができる。特に、本発明では、指挿入空間の両端部が開口している。これにより、指挿入空間に指を容易に挿入することができるため、取り扱いが一層容易となる。
【0010】
第2発明のさらに他の形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートは、折り返し線から設定距離以上離れた箇所で剥離可能に接合されている。剥離可能に接合に接合する方法としては、種々の方法を用いることができるが、好適には、熱エンボス加工方法が用いられる。第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを、熱エンボス加工方法を用いて剥離可能に接合した場合、エンボス加工部分が接合されるため、熱圧着等によって接合する場合に比べて、化粧水等の浸透による接合力の低下を抑制することができる。これにより、接合部が剥がれるのを防止することができる。熱エンボス加工方法を用いる場合、エンボス加工形状は、接合力や、視覚効果等に応じて適宜選択される。
本形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートの間に指挿入空間が形成されている使用形態、折り返し線に沿って切り離しあるいは接合部の箇所で剥離して第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを広げた使用形態、折り返し線に沿って切り離すとともに接合部の箇所で剥離して第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを分離した使用形態で使用することができる。
【0011】
第3発明は、公知のエアレイド法によって製造される第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートにより構成される。第1および第2のエアレイド不織布シートは、好適には、パルプ繊維あるいはパルプ繊維と疎水性合成繊維を含む。
第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートは、重ねられた状態で、一方向に沿った第1の接合箇所で接合されている。「方向に沿って」という記載は、典型的には、「方向に平行(略平行を含む)である」ことを意味する。そして、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されている。凹部は、面全体に形成してもよいし、面の一部の領域に形成してもよい。凹部の形状、大きさおよび配置位置等を適宜設定することにより、凹部が形成された面に装飾図柄を表示することができる。これにより、化粧用パフの見栄えや高級感等を高めることができる。
本発明では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートが重ねられた状態で使用することができる。このため、凹部が形成されていない他方のエアレイド不織布シート(第1のエアレイド不織布シートあるいは第2のエアレイド不織布シート)の対向する面のうち、一方のエアレイド不織布シート(第2のエアレイド不織布シートあるいは第1のエアレイド不織布シート)と対向する側の面と反対側の面を使用してパッティング等を行うことができる。この場合、他方のエアレイド不織布シートに化粧水が含浸されるため、一方のエアレイド不織布シートに形成されている凹部による化粧用パフの離水性への影響は少ない。第1および第2のエアレイド不織布シートとしては、所望のウェット時加重後回復率、一括離水率、分割離水率を有するエアレイド不織布シートを用いるのが好ましい。
【0012】
第3発明の他の形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートは、第1の接合箇所で剥離可能に接合されている。剥離可能に接合する方法としては、種々の方法を用いることができるが、好適には、熱エンボス加工方法が用いられる。
本形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを重ねた使用形態、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを接合部の箇所で剥離して切り離した使用形態で使用することができる。
【0013】
第3発明のさらに他の形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートは、さらに、第1の接合箇所から、一方向に交差する方向に設定距離以上離れている第2の接合箇所で、剥離可能に接合されている。「設定距離」としては、典型的には、第1および第2の接合部によって、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートの間に、人差し指あるいは人差し指と中指が挿入可能な指挿入空間が形成される距離が選択される。接合部は、折り返し線から設定距離以上離れていればよく、接合箇所や接合形状等は適宜選択することができる。接合部は、典型的には、一方向に平行(略平行を含む)に形成される。
本形態では、第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートの間に指挿入空間が形成されている使用形態、第1および第2の接合部の一方の箇所で剥離して第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを広げた使用形態、第1および第2の接合部の箇所で剥離して第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを分離した使用形態で使用することができる。
【0014】
化粧水が含浸されている状態におけるシートの離水性は、ウェット状態のシートの厚さの回復度合いを示すウェット時加重後回復率を用いて評価することができる。ウェット時加重後回復率は、所定の大きさのシート評価片に所定量の試験液を含浸させ、このシート評価片に、所定の力(「荷重」ともいう)を印加した時の厚さと、当該所定の力の印加を解除した時の厚さによって算出される。
第2発明および第3発明のさらに他の形態では、第1および第2のエアレイド不織布シートのウェット時加重後回復率が7%以上に設定されている。
なお、第1および第2のエアレイド不織布シートとして、単位長さ当たりの繊維重量が0.20g/m以上であるパルプ繊維あるいは10〜50重量%の割合の疎水性合成繊維の少なくとも一方を含むエアレイド不織布シートを用いるのが好ましい。また、平坦な外周面を有するとともに、熱を発生する第1のロールと、外周側に複数の突部が形成された第2のロールを用いて、一方のエアレイド不織布シートの一方の面に凹部を形成するのが好ましい。
ウェット時加重後回復率が7%以上である第1および第2のエアレイド不織布シートを用いることにより、化粧用パフに見栄えや高級感を持たせながら、化粧用パフを構成する第1および第2のエアレイド不織布シートそれぞれの、ウェット時における所望の離水性を確保することができる。
【0015】
第4発明は、不織布シートの対向する面のうちの一方の面に複数の凹部を形成する凹部形成方法である。
本発明は、平坦な外周面を有するとともに、熱を発生する第1のロールと、外周側に複数の突部が形成されている第2のロールを備えている。第1のロールと第2のロールは、第1のロールの外周面と第2のロールの突部の間の最短距離が、不織布シートの厚さより短くなるように配置される。典型的には、第1のロールの軸方向と第2のロールの軸方向が平行(略平行を含む)になるように配置される。そして、不織布シートの対向する面のうちの他方の面を、第1のロールの外周面の設定領域に亘って接触させた状態で第1のロールと第2のロールを回転させ、不織布シートの一方の面に複数の凹部を形成する。設定領域は、不織布シートの一方の面が第2のロールの突部に当接する当接領域と、当接領域に対して第1のロールの回転方向の一方方向に沿った前領域と、当接領域に対して第1のロールの回転方向の他方方向に沿った後領域を含んでいる。これにより、不織布シートは、前領域において第1のロールにより加熱(余熱)された後、当接領域において、第1のロールにより加熱されながら、第1のロールの外周面と第2のロールの突部によって一方の面に凹部が形成され、その後、後領域において第1のロールにより加熱される。したがって、不織布シートの一方の面に、骨格構造を破壊することなく凹部を形成することができる。なお、不織布シートの一方の面の一部の領域に凹部を形成する場合には、不織布シートの一方の面に対する第2のロールの突部の当接および非当接を制御する制御装置が設けられる。例えば、第2のロールの位置を制御する制御装置が設けられる。
本発明の凹部形成方法を用いることにより、一方の面に複数の凹部が形成されているとともに、ウェット時加重後回復率が7%以上である不織布シートを製造することができる。
不織布シートとしては、単位長さ当たりの繊維重量が0.20g/m以上であるパルプ繊維あるいは10〜50重量%の割合の疎水性合成繊維の少なくとも一方を含むエアレイド不織布シートを用いるのが好ましい。
【0016】
第4発明の他の形態では、設定領域は、第1のロールの回転方向に沿った半周以上の領域として設定され、当接領域は、設定領域の、第1のロールの回転方向に沿った中央に配置されている。本形態では、不織布シートの一方の面に第2のロールの突部を当接させる前および当接した後において、不織布シートを十分に加熱することができる。したがって、一方の面に複数の凹部が形成されているとともに、ウェット時加重後回復率が7%以上であるエアレイド不織布シートをより容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いることにより、化粧水等を含浸させて使用する際における所望の離水性を確保しながら、表面に複数の凹部を有する化粧用パフを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
本実施の形態の化粧用パフを構成するエアレイド不織布シート10の一方の面に複数の凹部を形成する凹部形成装置の第1の実施の形態を、図1および2に示す。なお、図1は、第1の実施の形態の凹部形成装置100の正面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。本実施の形態の化粧用パフは、化粧水等を含浸させた状態、粉体、クリーム、ジェル等を付着させた状態あるいはそのままで、使用者の顔面に押し当てて使用する化粧用具である。
本実施の形態の凹部形成装置100は、エアレイド不織布シート10の対向する面のうち一方の面10Aに、装飾図柄を表示させるための複数の凹部を形成する。シートの面に装飾図柄を表示させるための凹部あるいは突部は、一般的には、「エンボス」と呼ばれる。
本実施の形態で用いるエアレイド不織布シート10は、公知のエアレイド法によって製造される。エアレイド不織布シート10は、図3に示されているように、内層部11と、内層部11の両面に設けられた外層部12A、12Bにより構成されている。外層部12A、12Bは、典型的には、レーヨン、コットン、シルク、パルプ等のうちの少なくとも1つの繊維によって構成される。また、内層部11は、典型的には、パルプ繊維とポリエチレンテレフタレート繊維によって構成される。なお、内層部11は、ポリエチレンテレフタレート繊維を含まず、パルプ繊維によって構成してもよい。また、外層部12A、12Bを内層部11と同様の繊維によって構成することもできる。ポリエチレンテレフタレートが、本発明の「疎水性合成繊維」に対応する。
【0019】
図1に示されているように、本実施の形態の凹部形成装置100は、第1のロール110と第2のロール120を有している。第1のロール110としては、外周面110Aが平坦(フラット)なロールが用いられる。また、第1のロール110として、熱を発生可能な加熱ロールが用いられる。例えば、加熱装置を有するロールが用いられる。第2のロール120としては、外周側に複数の加工用突部121および加工用凹部122が形成されたロールが用いられる。例えば、外周面120Aに複数の加工用凹部122が形成されたロールが用いられる。この場合には、外周面120Aが加工用突部121の先端部となる。なお、図1および図2では、第2のロール120の外周側の全領域に加工用突部121および加工用凹部122が形成されているが、一部に形成することもできる。加工用突部121および加工用凹部122の配設箇所は、所望の装飾図柄に応じて適宜設定される。第1のロール110の外周面110Aおよび第2のロール120の外周面120A(加工用突部121の先端部を含む仮想外周面)は、軸方向に交差する(直交する)方向から見て、円形形状を有している。また、第1のロール110および第2のロール120は、電動機等の駆動装置(図示省略)によって駆動される。
第1のロール110と第2のロール120は、第1のロール110の軸方向と第2のロール120の軸方向が平行(略平行を含む)となるように配置される。また、第1のロール110と第2のロール120は、第1のロール110の外周面110Aと第2のロール120の加工用突部121の先端部(図1では、第2のロール120の外周面120A)との間の最小間隔が、エアレイド不織布シート10の厚さ以下となるように配置される。すなわち、エアレイド不織布シート10が第1のロール110と第2のロール120の間を通過する時に、エアレイド不織布シート10が第1のロール110の外周面110Aと第2のロール120の加工用突部121の先端部によって押圧されるように、第1のロール1110と第2のロール120が配置される。
【0020】
また、エアレイド不織布シート10は、面10B(対向する面のうちの他方の面)が第1のロール110の外周面110Aに、外周面110Aの周方向(回転方向)に沿った設定領域111に亘って接触するように配置される。例えば、エアレイド不織布シート10の移動をガイドするガイドロール131および132を設ける。ここで、エアレイド不織布シート10の面10Bと第1のロール110の外周面110Aが接触する設定領域111は、エアレイド不織布シート10の面10A(対向する面のうちの一方の面)が第2のロール120の加工用突部121の先端部と当接する当接領域111bと、当接領域111bに対して第1のロール110の外周面110Aの周方向に沿った一方の方向側の前領域111aと他方の方向側の後領域111cを有している。本実施の形態では、設定領域111は、第1のロール110の外周面110Aの半周以上の領域に設定されている。そして、設定領域111の、第1のロール1110の外周面110Aの周方向に沿った中央の箇所(略中央の箇所を含む)に当接領域111bが配置されている。なお、設定領域111、前領域111a、当接領域111bおよび後領域111cの範囲や、設定領域111における前領域111a、当接領域111bおよび後領域111cの配置位置等は、エアレイド不織布シート10の面10Aに表示する装飾図柄、エアレイド不織布シート10の材料や厚さ等に応じて適宜設定することができる。
そして、エアレイド不織布シート10の面10Bを第1のロール110の外周面110Aの設定領域111に接触させた状態で、第1のロール110と第2のロール120を、互いに逆方向(例えば、図2に矢印で示されている方向)に回転させる。この時、エアレイド不織布シート10は、まず、前領域111aにおいて、第1のロール110によって加熱(余熱)される。その後、当接領域111bにおいて、第1のロール110の外周面110Aと第2のロール120の加工用突部121の先端部によって押圧されることにより、加熱されながら凹部が形成される。その後、後領域111cにおいて、第1のロール110によって加熱される。
なお、エアレイド不織布シート10の面10Bに間歇的に凹部を形成する場合には、エアレイド不織布シート10の面10Aに対する第2のロール120の加工用突部121の先端部の当接および非当接を制御する制御装置が設けられる。例えば、エアレイド不織布シート10の面10Aに凹部を形成する場合には、第2のロール120を当接位置に移動させ、凹部を形成しない場合には、第2のロール120を待機位置に移動させる制御装置が設けられる。
【0021】
本実施の形態の凹部形成装置100によって一方の面10Aに凹部が形成されたエアレイド不織布シート10により構成される化粧用パフ200を図4および図5に示す。図4および図5に示されている化粧用パフ200は、一方の面10Aに凹部が形成されたエアレイド不織布シート10をそのまま化粧用パフとして用いたものである。なお、図4は、化粧用パフ200の平面図であり、図5は、図4のV−V線断面図である。
化粧用パフ200(詳しくは、凹部が形成されたエアレイド不織布シート10)は、一方の面200Aに複数の凹部250が形成されている。これにより、不織布シート200の一方の面200A側には、複数の凹部250によって装飾図柄260が表示される。
【0022】
図14に示されている従来装置では、第1のロール510の凹型511(あるいは平坦な外周面)と第2のロール520の突型521が綿素材550に当接する当接領域においてのみ、綿素材550が第2のロール520によって加熱される。このため、凹部551が形成された後直ちに綿素材550が冷却され、凹部551が復元してしまう。したがって、従来装置では、第2のロール520の突型521を綿素材550に強く押し付け、綿素材550の骨格構造を破壊して凹部572Aが復元しないようにする必要がある。この場合、綿素材550の骨格構造が破壊されることにより、ウェット時加重後回復率(詳しくは後述する)が悪くなり、化粧水を含浸させた状態において所望の離水性を得ることができない。特に、化粧水を含浸させた後の1回目のパッティング時における離水量が多い。
【0023】
本実施の形態では、第1のロール110として、平坦な外周面110Aを有しているとともに、熱を発生可能なロール(加熱ロール)を用いている。また、第2のロール120の加工用突部121がエアレイド不織布シート10に当接する当接領域の前後の前領域および後領域において、エアレイド不織布シート10を第1のロール110の外周面110Aに接触させている。すなわち、エアレイド不織布10を前領域110aにおいて加熱(予熱)した後、当接領域111bにおいてエアレイド不織布10の一方の面10Aに凹部250を形成し、凹部250を形成した後、後領域111cにおいて更にエアレイド不織布シート10を加熱している。これにより、エアレイド不織布シート10の骨格構造を破壊することなく、エアレイド不織布シート10の一方の面10Aに凹部250を形成することができる。したがって、凹部250が形成されたエアレイド不織布シート10のウェット時加重後回復率が高くなり、化粧水を含浸させた状態において所望の離水性を得ることができる。また、パルプを多く含むエアレイド不織布シート10を用いており、これによっても凹部250を容易に形成することができる。
本実施の形態の凹部形成装置100を用いて、一方の面10Aに凹部250が形成されたエアレイド不織布シート10により構成される化粧用パフ200に化粧水を含浸させた状態を図6に示す。本実施の形態の化粧用パフ200を構成するエアレイド不織布シート10の骨格構造が破壊されていないため、図6に示されているように、含浸した化粧水50によって、凹部250が小さくなる(典型的には、凹部250の深さが浅くなり、凹部250によって構成される装飾図柄の判別が困難となる)。したがって、凹部250による離水性の悪化を防止することができる。
【0024】
なお、エアレイド不織布シート10の面10Aに、第1のロール110の外周面110Aと第2のロール120の加工用突部121によって凹部250を形成する場合には、エアレイド不織布シート10を予備加熱する必要がある。本実施の形態では、第1のロール110として、平坦な外周面110Aを有しているとともに、熱を発生可能なロール(加熱ロール)を用い、且つ、第2のロール120の加工用突部121がエアレイド不織布シート10に当接する当接領域111bの前後の前領域111aおよび後領域111cに亘って、エアレイド不織布シート10を第1のロール110の外周面110Aに接触させている。すなわち、第2のロール120の加工用突部121がエアレイド不織布シート10の面10Aに当接して凹部250が形成される前に、エアレイド不織布シート10は第1のロール110によって加熱される。このため、本実施の形態では、エアレイド不織布シート10に凹部250を形成する前の加熱および凹部250を形成した後の加熱を、第1のロール110により行うことができ、凹部形成装置100の構成を簡略化することができる。
【0025】
図1および図2に示した凹部形成装置100では、エアレイド不織布シート10を第1のロール110の外周面110Aの設定領域111に亘って接触させることにより凹部形成前の加熱(予熱)を行ったが、凹部250の形成処理を高速で行うためには、凹部形成前の加熱(予熱)を十分に行う必要がある。このような場合には、凹部250を形成する前にエアレイド不織布シート10を更に加熱する加熱装置を設ける。
例えば、図7に示されている、第2の実施の形態の凹部形成装置100のように、第1のロール110より上流側(エアレイド不織布シート10が送られてくる側)に、熱風供給装置140を設ける。熱風供給装置140は、エアレイド不織布シート10に熱風を供給することによって、エアレイド不織布シート10を加熱(予熱)する。
あるいは、図8に示されている、第3の実施の形態の凹部形成装置100のように、第1のロール110より上流側に、加熱ロール151、152を設ける。加熱ロール151、152は、外周面に接触した状態でエアレイド不織布シート10を送る際に、エアレイド不織布シート10を加熱(予熱)する。
【0026】
第1の実施の形態の化粧パフ200は、一方の面10Aに凹部250が形成されたエアレイド不織布シート10をそのまま用いたが、化粧用パフの形状および構成は、適宜設定することができる。
第2の実施の形態の化粧用パフ300を図9および図10に示す。第2の実施の形態の化粧用パフ300は、1つのエアレイド不織布シートを折り返すことによって重ねられた第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートにより構成されている。図9は、本実施の形態の化粧用パフ300を構成するエアレイド不織布シートを開いた状態を示し、図10は、エアレイド不織布シートを折り返し線300hに沿って折り返した状態を示している。なお、以下では、化粧用シート300を構成するエアレイド不織布シートを「エアレイド不織布シート300」という。
本実施の形態の化粧用パフ300を構成する1つのエアレイド不織布シート300は、図9に示されているように、長さM1の縁部300a、300cと長さL1の縁部300b、300dを有する方形に形成されている。また、エアレイド不織布シート300は、折り返し線300hの一方側に第1のエアレイド不織布シート310、他方側に第2のエアレイド不織布シート320を有している。第1のエアレイド不織布シート310は、長さM1の縁部30a、300hと長さL2の縁部300b1、300d2を有する方形に形成されている。第2のエアレイド不織布シート320は、長さM1の縁部300c、300hと長さL3(L3>L2)の縁部300b2、300d1を有する方形に形成されている。また、折り返し線300hに沿って複数の穴300Hが形成されている。穴300hは、典型的には、ミシン目加工によって形成される。穴300Hの形状、大きさ、配設位置等は、必要な時に、折り返し線300hに沿って第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を切り離すことができるように設定される。また、第1のエアレイド不織布シート310には、一方の面300Aに、前述した凹部形成装置100によって複数の凹部350が形成されている。この凹部350によって、一方の面300A側に装飾図柄360が表示される。
【0027】
次に、図10に示されているように、1つのエアレイド不織布シート300を折り返し線300hに沿って折り返し、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を重ねる。この時、第1のエアレイド不織布シート310の一方の面300Aに形成されている凹部350が外側に配置されるように、すなわち、一方の面300Aが外側に配置され、他方の面300Bが内側に配置されるように折り返す。この構成が、本発明の「第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されている」構成に対応する。
ここで、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300b1、300d2の長さL2は、第2のエアレイド不織布シート320の縁部300b2、300d1の長さL3より短く設定されている(L3>L2)。このため、1つのエアレイド不織布シート300を折り返し線300hに沿って折り返し、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を重ねた場合、第1エアレイド不織布シート310の縁部300aは、第2のエアレイド不織布シート320の縁部300cより折り返し線20h側に、距離n1(=L3−L2)だけ離れた箇所に配置される。距離n1の値は、適宜設定される。
なお、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300aは、「第1のエアレイド不織布シートの、折り返し線と対向する側の縁部」であり、第2のエアレイド不織布シート320の縁部300cは、「第2のエアレイド不織布シートの、折り返し線と対向する側の縁部」である。また、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300b1と300d2は、「第1のエアレイド不織布シートの、折り返し線の両端部から、折り返し線と交差する方向に延びている縁部」であり、第2のエアレイド不織布シート320の縁部300b2と300d1は、「第2のエアレイド不織布シートの、折り返し線の両端部から、折り返し線と交差する方向に延びている縁部」である。
【0028】
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320は、重ねられた状態で、折り返し線300hから設定距離L4離れた箇所で剥離可能に接合される。この時、接合部370が、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300aおよび第2のエアレイド不織布シート320の縁部300cから離れた箇所に形成されるように接合される。本実施の形態では、[L3>L2]であるため、接合部370は、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300aから折り返し線300hの方向に距離n2離れた箇所に形成される。これにより、第1のエアレイド不織布シート部310の縁部300aおよび第2のエアレイド不織布シート320の縁部300cと接合部370の間の部分が接合されていないため、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300a側の部分および第2のエアレイド不織布シート320の縁部300c側の部分を指で容易に掴むことができる。したがって、第1のエアレイド不織布シート310の縁部300a側の部分および第2のエアレイド不織布シート320の縁部300c側の部分を引き離す方向に容易に引っ張ることができ、第1のエアレイド不織布シート310および第2のエアレイド不織布シート320を接合部370の箇所で容易に剥離することができる。なお、n1、n2の値は、適宜設定することができる。
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を剥離可能に接合する方法としては、種々の接合方法を用いることができる。好適には、熱エンボス加工方法やホットメルト接着方法が用いられる。熱エンボス加工方法は、熱を加えながらエンボス加工を行う方法である。この場合、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320は、凹凸状のエンボス部分で熱圧着される。熱エンボス加工によって接合した場合、化粧水等が接合部に浸透し難くなるため、接合部の接合力の低下を抑制することができる。
【0029】
この場合、折り返し線300hと接合部370によって、第1のエアレイド不織布シート310と第2エアレイド不織布のシート320の間に、両端が開口し、少なくとも1本の指が挿入可能な指挿入空間が折り返し線300hに沿って形成されるように接合される。ここで、折り返し線300hと平行であり、接合部370を通る線のうち、折り返し線300hに最も近い線380によって、指挿入空間の間隔が決定される。本明細書では、指挿入空間の中心線に平行(略平行を含む)であり、接合部を通る線のうち、指挿入空間の中心線に最も近い線を「接合線」という。本実施の形態では、図10に示されている線380が「接合線」に対応する。なお、本実施の形態では、指挿入空間の中心線は、折り返し線300hが延びている方向に平行(略平行を含む)である。本実施の形態では、接合線380と折り返し線300との間の距離L4が、設定距離以上となるように接合部370が形成されている。設定距離としては、例えば、人差し指または人差し指と中指が挿入可能な挿入空間が形成される距離が用いられる。
本実施の形態では、指挿入空間の方向(指挿入空間の中心線の方向)、すなわち、折り返し線300hの方向(折り返し線300hが延びている方向)が、本発明の「一方向」に対応する。また、指挿入空間の方向と交差する(直交する)方向、すなわち、折り返し線300hの方向と交差する(直交する)方向が、本発明の「一方向と交差する方向」に対応する。折り返し線300hの方向は、例えば、折り返し線300hの両端を結ぶ線の方向である。
また、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320は、折り返し線300hの方向に沿って、互いに離れている箇所で剥離可能に接合されている。すなわち、接合部370は、折り返し線300hの方向に沿って、互いに離れている箇所に形成されている。なお、本明細書では、「方向に沿って」という記載は、典型的には、「方向に平行(略平行を含む)である」ことを意味する。これにより、端側(縁部300b1、300b2側あるいは縁部300d1、300d2側)の接合部が剥がれても、当該端側の接合部に隣接する接合部が連動して剥がれるのを防止することができる。
【0030】
次に、本実施の形態の化粧用パフ300の使用方法を説明する。本実施の形態の化粧用パフ300は、以下の使用形態1〜5で使用することができる、
[使用形態1]
第1のエアレイド不織布シート部310と第2のエアレイド不織布シート320が重ねられた状態で使用する。
[使用形態2]
折り返し線300hと接合部370によって、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320の間に形成されている指挿入空間に指(例えば、人差し指と中指)を挿入した状態で使用する。
[使用形態3]
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を穴300Hに沿って(穴300Hが形成されている折り返し線300hに沿って)切り離し、接合線370の箇所で広げた状態で使用する。
[使用形態4]
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を接合部370の箇所で剥離し、折り返し線300hの箇所で広げた状態で使用する。
[使用形態5]
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を、折り返し線300hに沿って切り離すとともに、接合部370の箇所で剥離し、分離した状態で使用する。
【0031】
なお、第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を重ねただけの状態(接合しない)で使用することもできる。
凹部350の配設箇所は適宜選択することができる。例えば、第1のエアレイド不織布310の面300A側および第2のエアレイド不織布シート320の面300A側に形成することもできる。
第1のエアレイド不織布シート310と第2のエアレイド不織布シート320を、接合部370で強固に接合してもよい。
【0032】
第3の実施の形態の化粧用パフ400を図11に示す。第3の実施の形態の化粧用パフ400は、重ねられた第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420により構成されている。図11は、本実施の形態の化粧用パフ400を構成する第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を示す図である。
本実施の形態の化粧用パフ400は、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420により構成されている。第1のエアレイド不織布シート410は、長さM1の縁部410a、410cと長さL2の縁部410b、410dを有する方形に形成されている。第2のエアレイド不織布シート420は、長さM1の縁部420a、420cと長さL3(L3>L2)の縁部420b、420dを有する方形に形成されている。また、本実施の形態では、第1のエアレイド不織布シート410の一方の面410Aに、前述した凹部形成装置100によって複数の凹部450が形成されている。この凹部450によって、第1のエアレイド不織布シート410の一方の面410A側に装飾図柄460が表示される。
【0033】
第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420は、第1のエアレイド不織布シート410の他方の面410Bと第2のエアレイド不織布シート420の他方の面420Bが対向するように、すなわち、第1のエアレイド不織布シート410の一方の面410Aと第2のエアレイド不織布シート420の一方の綿420Aが外側に配置されるように重ねられる。この構成が、本発明の「第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されている」構成に対応する。
この場合、例えば、対応する、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410cと第2のエアレイド不織布シート420の縁部420cが対峙する(対向する)ように重ねられる。ここで、第1のエアレイド不織布シート410の、縁部420cと交差する(直交する)縁部420bおよび420dの長さL2は、第2のエアレイド不織布シート420の、縁部420cに交差する(直交する)縁部420bおよび420dの長さL3より短い(L2<L3)。このため、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410aは、第2のエアレイド不織布シート420の縁部420aより縁部410c(あるいは420c)側に、距離n1(=L3−L2)だけ離れた箇所に配置される。距離n1の値は、適宜設定される。
そして、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420は、少なくとも1本の指が挿入可能な指挿入空間が形成されるように、設定距離離れた第1の接合箇所と第2の接合箇所で剥離可能に接合される。例えば、指挿入空間の方向(指挿入空間の中心線の延びる方向)に交差する方向に設定距離以上離れた第1の箇所と第2の接合箇所に、指挿入空間の方向に沿って第1の接合部470Aと第2の接合部470Bが形成される。この時、指挿入空間の中心線に平行(略平行を含む)であり、第1の接合部470Aを通る線のうち、指挿入空間の中心線に最も近い線、すなわち、接合線480Aと、指挿入空間の中心線に平行(略平行を含む)であり、第2の接合部470Bを通る線のうち、指挿入空間の中心線に最も近い線、すなわち、接合線480Bとの間の距離L4が設定距離以上となるように、第1の接合部470Aと第2の接合部470Bが形成される。設定距離としては、例えば、人差し指または人差し指と中指が挿入可能な挿入空間が形成される距離が用いられる。本実施の形態では、指挿入空間の中心線の方向が、本発明の「一方向」に対応する。また、指挿入空間の中心線と交差する(直交する)方向が、本発明の「一方向と交差する方向」に対応する。
【0034】
また、本実施の形態では、第2の接合部470Aは、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410aおよび第2のエアレイド不織布シート420の縁部420aから離れた箇所に形成されている。本実施の形態では、[L3>L2]に設定されているため、第2の接合部470bは、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410aから距離n2離れた箇所に形成されている。n2の値は適宜設定することができる。これにより、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410a側の部分および第2のエアレイド不織布シート420の縁部420a側の部分を指で容易に掴むことができるため、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を第2の接合部470Bの箇所で容易に剥離することができる。
また、本実施の形態では、第1の接合部470Aが、第1のエアレイド不織布シート410の縁部410cおよび第2のエアレイド不織布シート420の縁部420cの近傍に形成されている。これにより、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を第2の接合部470Bの箇所で剥離して広げた場合、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420の総面積に近い面積を得ることができる。
また、本実施の形態では、第1の接合部470Aおよび第2の接合部470Bは、指挿入空間の方向に沿って、互いに離れている箇所に形成されている。これにより、端側(縁部410b、420b側あるいは縁部410d、420d側)の接合部が剥がれても、当該端側の接合部に隣接する接合部が連動して剥がれるのを防止することができる。
【0035】
本実施の形態の化粧用パフ400は、以下の使用形態を選択することができる。
[使用形態1]
第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420が重ねられた状態で使用する。
[使用形態2]
指挿入空間に指(例えば、人差し指と中指)を挿入した状態で使用する。
[使用形態3]
第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を第2の接合部470Bの箇所で剥離し、第1の接合部470Aの箇所で広げた状態で使用する。
[使用形態4]
第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を第1の接合部470Aの箇所で剥離し、第2の接合部480Bの箇所で広げた状態で使用する。
[使用形態5]
第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を第1の接合部470Aおよび第2の接合部470Bの箇所で剥離し、分離した状態で使用する。
【0036】
なお、第1のエアレイド不織布シート410と第2のエアレイド不織布シート420を、第1の接合部470Aと第2の接合部470Bのうちの一方でのみ強固にあるいは剥離可能に接合してもよいし、双方で強固に接合してもよいし、一方で強固に接合し、他方で剥離可能に接合してもよい。
【0037】
本発明の化粧用パフを構成する、一方の面に凹部が形成されたエアレイド不織布シートの実施例1、2と比較例1〜4について、化粧水等を含浸した(保水した)状態で使用者の肌をパッティングする際におけるウェット時加重後回復率および分割離水率(化粧水等の放出量)を測定した。測定結果は、図12に示されている。「ウェット時加重後回復率」は、ウェット状態の評価片に所定の力を印加した後、所定の力の印加を解除した場合における、評価片の厚さの回復度合いを示す。「分割離水率」は、ウェット状態の評価片に所定の力を複数回に分けて印加した場合における、評価片から離水(放水)される水分量(離水度合い)を示す。
【0038】
(実施例1)
実施例1は、パルプ繊維を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維とレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10の一方の面に、図1および2に示した凹部形成装置100を用いて凹部250を形成し、実施例1の評価片とした。
(実施例2)
実施例2は、パルプ繊維とポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10の一方の面に、図1および2に示した凹部形成装置100を用いて凹部250を形成し、実施例2の評価片とした。
(比較例1)
比較例1は、実施例1と同様の、パルプ繊維を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維とレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10を比較例1の評価片とした。比較例1の評価片は、凹部が形成されていない。
(比較例2)
比較例2は、実施例2と同様の、パルプ繊維とポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10を比較例2の評価片とした。比較例2の評価片は、凹部が形成されていない。
(比較例3)
比較例3は、実施例1と同様の、パルプ繊維を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維とレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10の両面に、図14に示した従来装置500を用いて凹部551および突部552を形成し、比較例3の評価片とした。
(比較例4)
比較例4は、実施例2と同様の、パルプ繊維とポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。そして、このエアレイド不織布シート10の両面に、図14に示した従来装置500を用いて凹部551および突部552を形成し、比較例4の評価片とした。
【0039】
ウェット時加重後回復率と分割離水率は、以下の方法で測定した。
(ウェット時加重後回復率)
小型測厚器(大栄科学精器製作所製、型式:CR−10A)を用いて、寸法が[50mm×50mm]のウェット状態(2mlの試験液が含浸されている状態)の各評価片に対して、プレッサーフート(1cm(φ11.28mm))により第1の圧力(1.96kPa(20gf/cm))及び第2の圧力(3.92kPa(40gf/cm))を印加し、厚さを測定した。そして、第1の圧力印加時における厚さの測定値をDa、第2の圧力印加時における厚さの測定値をDb、再度第1の圧力を印加した時の厚さの測定値をDcとし、式[(Dc−Db)/Db×100]を用いてウェット時加重後回復率(%)を算出した。
【0040】
(分割離水率)
寸法が[50mm×50mm]のウェット状態(2mlの試験液が含浸されている状態)の各評価片に、寸法が[50mm×50mm]のろ紙を重ね合わせた後、所定圧力[34.6kgf/cm]を3段階に分けて印加した。そして、それぞれの圧力印加後に、各評価片からろ紙に離水した水分量を算出した。
具体的には、第1のステップでは、試験液の重量Wdと、ろ紙10枚の重量Weを予め測定し、ウェット状態の各評価片の上に、このろ紙10枚(重量We)を重ねた。次に、このろ紙の上から所定圧力[34.6kgf/cm]を5秒間印加した後、ろ紙10枚の重量Wfを測定した。そして、式[(Wf−We)/Wd×100]を用いて1回目の離水率(%)を算出した。
第1のステップに続く第2のステップでは、新たなろ紙10枚の重量Wgを測定するとともに、このろ紙10枚(重量Wg)を第1のステップで得た各評価片の上に重ねた。次に、このろ紙の上から所定圧力[34.6kgf/cm]を5秒間印加した後、ろ紙10枚の重量Whを測定した。そして、式[(Wh−Wg)/Wd×100]を用いて2回目の離水率(%)を算出した。
第2のステップに続く第3のステップでは、新たなろ紙10枚の重量Wiを測定するとともに、このろ紙10枚(重量Wi)を第2のステップで得た各評価片の上に重ねた。次に、このろ紙の上から所定圧力[34.6kgf/cm]を5秒間印加した後、ろ紙10枚の重量Wjを測定した。そして、式[(Wj−Wi)/Wd×100]を用いて3回目の離水率(%)を算出した。
【0041】
図12に示されている実施例1、2と比較例1〜4の測定結果から、以下のように評価される。
(ウェット時加重後回復率の評価結果)
実施例1および実施例2のウェット時加重後回復率は、凹部が形成されていない比較例1および比較例2と同様に、いずれも7%以上である。一方、比較例3および比較例4のウェット時加重後回復率は、いずれも7%を下回っている。これにより、実施例1および実施例2は、凹部が形成されていない比較例1および2と略同じウェット時加重後回復性能を有し、また、比較例3および比較例4に比べてウェット時加重後回復性能が優れていることが確認された。したがって、例えば、化粧水を含浸した化粧用パフを使用してパッティングを行う場合に、化粧水の十分な放出量を確保することができる。また、化粧水の放出性が良いため、化粧水を無駄にせず経済的である。
(分割離水率の評価結果)
実施例1および実施例2の(1回目+2回目)離水率は、比較例1および比較例2と同様に、いずれも85%以上であり、実施例1および実施例2の(1回目+2回目+3回目)離水率は、比較例1および比較例2と同様に、いずれも90%以上である。また、比較例3および比較例4の(1回目+2回目)離水率は、いずれも85%以上であり、比較例3および比較例4の(1回目+2回目+3回目)離水率は、いずれも90%以上である。
しかしながら、実施例1および実施例2の1回目離水率が、凹部が形成されていない比較例1および比較例2と同様に、70%を下回っているのに対し、比較例3および比較例4の1回目離水率は、80%以上である。これにより、実施例1および実施例2は、比較例3および比較例4に比べて、1回目離水率が優れていることが確認された。すなわち、実施例1および実施例2は、比較例3および比較例4に比べて、凹部が形成されていない比較例1および比較例2と同様に、分割離水性能が優れていることが確認された。これにより、例えば、化粧水を含浸した化粧用パフを使用して複数回にわけてパッティングを行う場合に、化粧水の放出量が確保された状態を継続することが可能となる。パッティングを複数回に分けて行い、化粧水を重ねつけすることにより、肌水分量を増加させることができる。
このように、ウェット時加重後回復率が7%以上であると、エアレイド不織布を構成する繊維と繊維の間の空間の径(ポアサイズ)が、ウェット加重後も変化し難くなる。その結果、1回目離水率を80%以下に設定することができる。
【0042】
ところで、一方の面に凹部が形成されたエアレイド不織布によって化粧用パフを構成する場合、凹部の形成方法やエアレイド不織布シートの構成(素材や配合比率)が、化粧水等を含浸した状態における化粧用パフの離水性に影響する。本発明の実施例3〜9と比較例5、6について、ウェット時加重後回復率、一括離水率および分割離水率を測定した。測定結果は、図13に示されている。
「一括離水率」は、ウェット状態の評価片に所定の力を印加した場合における、評価片から一度に離水される水分量(離水度合い)を示す。
【0043】
(実施例3)
実施例3は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維とレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、バインダー(典型的には、スチレン・ブタジエンゴム)が、12.5重量パーセントの混合比率で含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例3の評価片とした。
【0044】
(実施例4)
実施例4は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:10:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率12.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例4の評価片とした。
【0045】
(実施例5)
実施例5は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[73:20:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率12.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例5の評価片とした。
【0046】
(実施例6)
実施例6は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率12.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例6の評価片とした。
【0047】
(実施例7)
実施例7は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率7.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例7の評価片とした。
【0048】
(実施例8)
実施例8は、繊維径が中程度のパルプ繊維(パルプ繊維長:2.58mm、パルプ繊維重量:0.20mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率15.0重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例8の評価片とした。
【0049】
(実施例9)
実施例9は、繊維径が相対的に太いパルプ繊維(パルプ繊維長:2.77mm、パルプ繊維重量:0.24mg/m)およびポリエチレンテレフタレート繊維(2.2dt×5mm)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維およびレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[63:30:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率12.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例9の評価片とした。
【0050】
(比較例5)
比較例5は、繊維径が相対的に細いパルプ繊維(パルプ繊維長:2.42mm、パルプ繊維重量:0.17mg/m)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)により構成されるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率を10.0重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を比較例5の評価片とした。
【0051】
(比較例6)
比較例6は、繊維径が相対的に細いパルプ繊維(パルプ繊維長:2.42mm、パルプ繊維重量:0.17mg/m)を含む内層部11(目付:およそ60g/m)と、レーヨン繊維(1.7dt×29mm)を含む外層部12A、12Bにより構成され、パルプ繊維とレーヨン繊維の混合比率(重量パーセント)が[93:7]であるエアレイド不織布シート10を用いた。また、実施例1と同様のバインダーが、混合比率を12.5重量パーセントで含まれている。そして、このエアレイド不織布シート10を実施例8の評価片とした。
【0052】
なお、ウェット時加重後回復率および分割離水率は、前述した方法で測定し、一括離水率は、以下の方法で測定した。
(一括離水率)
寸法が50×50mmのウェット状態(2mlの試験液が含浸されている状態)の各評価片に、寸法が50×50mmのろ紙を重ねた後、所定圧力(17.5kgf/cm)を印加する。そして、各評価片からろ紙に離水した水分量を算出した。具体的には、試験液の重量Waと、ろ紙10枚の重量Wbを予め測定し、ウェット状態の各評価片の上に、このろ紙10枚(重量Wb)を重ねた。次に、ろ紙の上から前記所定圧力(17.5kgf/cm)を15秒間印加した後、のろ紙10枚の重量Wcを測定した。そして、[(Wc−Wb)/Wa×100]で示される式によって一括離水率(%)を算出した。
【0053】
図13に示されている実施例3〜9と比較例5、64の測定結果から、以下のように評価される。
(ウェット時加重後回復率の評価結果)
実施例3〜9の各試験片のウェット時加重後回復率は、いずれも7%以上であり、比較例5、6のウェット時加重後回復率は、いずれも7%未満である。すなわち、実施例3〜9は、比較例5、6に比べて、ウェット時加重後回復性能が優れていることが確認された。これにより、例えば、化粧水を含浸させた化粧用パフを使用してパッティングを行う場合に、化粧水の十分な放出量を確保することができる。また、化粧水の放出性が良いため、化粧水を無駄にせず経済的である。
(一括離水率の評価結果)
実施例3〜9の一括離水率は、いずれも75%以上であり、比較例5、6の一括離水率は、いずれも75%未満である。すなわち、実施例3〜9は、比較例5、6に比べて、一括離水性能が優れていることが確認された。これにより、例えば、化粧水を含浸させた化粧パフを使用してパッティングを行う場合に、軽い力でパッティングを行っても化粧水の十分な放出量を確保することができる。言い換えれば、肌に負担をかけるような強い力でパッティングを行う必要がない。
(分割離水率の評価結果)
実施例3〜9の(1回目+2回目)離水率は、いずれも85%以上であり、(1回目+2回目+3回目)離水率は、いずれも90%以上である。また、比較例5、6は、(1回目+2回目)離水率が、85%未満であり、(1回目+2回目+3回目)離水率が、90%未満である。すなわち、実施例3〜9は、比較例5、6に比べて、分割での離水性能が優れていることが確認された。これにより、例えば化粧水を含浸させた化粧パフを使用して複数回にわけてパッティングを行う場合に、化粧水の放出量が確保された状態を継続することが可能となる。パッティングを複数回にわけて行い化粧水を重ねつけすることで、肌水分量を増加させることができる。
【0054】
以上のように、実施例3〜9に相当するエアレイド不織布シートを使用することによって、化粧水を含浸させた化粧用パフを使用者の肌にパッティングする際に、パッティング力に応じて化粧水の放出量を適正化することができる。
具体的には、実施例3〜9に相当するエアレイド不織布シートは、いずれも、単位長さ当たりの繊維重量が0.20mg/m以上であるパルプ繊維を含んでいる。このようなパルプ繊維は、平均ポアサイズ(繊維間の空隙部分の径)が100μm以上であり、骨格構造が強いため、ウェット時加重後回復率、一括離水率および分割離水率を高めることができる。これにより、繊維と繊維との間の空間部分に保水している化粧水を徐々に外層部に吐き出すことができる。
また、実施例4〜8に相当するエアレイド不織布シートは、いずれも、ポリエチレンテレフタレート繊維を10〜50重量%の割合で含んでいる。これにより、ウェット時加重後回復率、一括離水率および分割離水率を更に高めることができる。したがって、繊維と繊維との間の空間部分に保水している化粧水を徐々に外層部に吐き出す効果を更に高めることができる。
また、実施例3〜9に相当するエアレイド不織布シートは、レーヨン繊維を含む外層部12A、12Bを有している。これにより、化粧用パフ使用時の肌触りが滑らかになる。なお、外層部12A、12Bのうちのいずれか一方の外層部をレーヨン繊維によって構成することもできる。
【0055】
なお、エアレイド不織布シートには、バインダーが含まれる。バインダーとしては、典型的には、スチレン・ブタジエンゴムが用いられる。また、エアレイド不織布シートに含まれるバインダーの混合比率は、5〜15重量パーセントに設定するのが好ましい。バインダーの混合比率が5重量パーセントを下回ると、ウェット時加重後回復率が低くなり、また、1回目の離水量が多くなる。一方、バインダーの混合比率が15重量パーセントを上回ると、素材が硬くなり、化粧用パフに適さないものとなる。
また、エアレイド不織布シートは、疎水性合成繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維が含まれているのが好ましい。ポリエチレンテレフタレート繊維の含有比率は、10〜50重量パーセントに設定するのが好ましい。ポリエチレンテレフタレート繊維の含有比率が50重量パーセントを上回ると、吸水した化粧水の殆どが1回目のパッティングで放出される。さらに、ポリエチレンテレフタレート繊維の量が増えることで、コストが高くなる。なお、他の疎水性合成繊維を、ポリエチレンテレフタレート繊維に代えて用いてもよいし、あるいは、ポリエチレンテレフタレート繊維に加えることもできる。他の疎水性合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維(PET)、ポリプロピレン繊維(PP)、ポリエチレン繊維(PE)、ナイロン繊維を用いることができる。
このような構成の少なくとも1つを備えるエアレイド不織布シートの一方の面に、前述した凹部形成装置100を用いて凹部を形成することにより、化粧水含浸時における所望の離水性を確保しながら、一方の面に複数の凹部が形成された化粧用パフをより容易に得ることができる。
【0056】
以上のように、本実施の形態の化粧用パフは、一方の面に複数の凹部が形成されたエアレイド不織布シートのウェット時加重後回復率が7%以上に設定されている。これにより、この一方の面に複数の凹部が形成されたエアレイド不織布シートにより化粧用パフに化粧水が含浸されていない場合には、一方の面に形成された複数の凹部によって、装飾図柄を表示することができる。一方、化粧用パフに化粧水が含浸された場合には、一方の面に形成された凹部が小さくなるため、離水性(特に、1回目の離水性)を悪化させることがなく、複数回使用することができる。したがって、化粧水含浸時における所望の離水性を確保しながら、一方の面に形成された複数の凹部によって装飾図柄を表示することができる。
また、本実施の形態の凹部形成装置あるいは凹部形成方法では、平坦な外周面を有するとともに、加熱機能を有する第1のロールと、外周に加工用突部を有する第2のロールを用いている。そして、化粧用パフを構成するエアフレイド不織布を、第1のロールの外周面に、当接領域の両側に配置されている前領域および後領域を含む設定領域に亘って接触させている。これにより、骨格構造を破壊することなく、エアフレイド不織布シートの一方の面に複数の凹部を形成することができる。すなわち、化粧水含浸時における所望の離水性を確保しながら、一方の面に複数の凹部が形成されたエアレイド不織布シート、さらには、このようなエアレイド不織布シートにより構成される化粧用パフを得ることができる。特に、本実施の形態の凹部形成装置あるいは凹部形成方法では、第1のローラによって、凹部が形成される前におけるエアフレイド不織布シートの過熱(予熱)および凹部が形成された後におけるエアフレイド不織布の加熱を行うことができるため、構成を簡略化することができる。
【0057】
なお、一方の面に凹部が形成された第1のエアレイド不織布シートと、両面に凹部が形成されていない第2のエアレイド不織布シートを重ねて化粧用パフを構成する場合には、第2のエアレイド不織布シートに化粧水を含浸させ、第2のエアレイド不織布を使用してパッティングを行うことができる。この場合には、第1のエアレイド不織布シートに形成されている凹部による離水性に対する影響を考慮する必要がない。すなわち、凹部が形成されていない状態で所望のウェット時加重後回復率、一括離水率および分割離水率を有するエアレイド不織布シートを用いることができる。この場合でも、一方のエアレイド不織布シートに形成されている凹部による離水性の悪化を防止することができる。
また、一方のエアレイド不織布シートの一方の面(他方のエアレイド不織布シートと対抗する側の面と反対側の面)に凹部を形成したが、他方のエアレイド不織布シートの一方の面(一方のエアレイド不織布シートと対抗する側の面と反対側の面)に凹部を形成してもよい。
また、前述した実施の形態で説明した各構成は、単独であるいは適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】凹部形成装置の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】化粧用パフを構成するエアレイド不織布シートを示す図である。
【図4】化粧用パフの第1の実施の形態を示す図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】第1の実施の形態の化粧用パフに化粧水を含浸させた状態を示す図である。
【図7】凹部形成装置の第2の実施の形態を示す図である。
【図8】凹部形成装置の第3の実施の形態を示す図である。
【図9】化粧用パフの第2の実施の形態を示す図である。
【図10】化粧用パフの第2の実施の形態の他の使用形態を示す図である。
【図11】化粧用パフの第3の実施の形態を示す図である。
【図12】本発明の化粧用パフを構成するエアレイド不織布の実施例1、2と比較例1〜4の測定結果を示す図である。
【図13】本発明の化粧用パフを構成するエアレイド不織布シートの実施例3〜8と比較例5、6の測定結果を示す図である。
【図14】従来の化粧用パフの製造装置を示す図である。
【図15】従来の化粧用パフを示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 エアレイド不織布シート
100 凹部形成装置
110 第1のロール
120 第2のロール
121 加工用突部
122 加工用凹部
131、132 ガイドロール
140 熱風供給装置(加熱装置)
151、152 加熱ロール(加熱装置)
10A 面(一方の面)
10B 面(他方の面)
11 内層部
12A、12B 外層部
200、300、400 化粧用パフ
200A、300A、410A、420A 面(一方の面)
200B、300B、410B、420B 面(他方の面)
250、350、450 凹部
260、360、460 装飾図柄
300h 折り返し線
300H 穴(ミシン目)
310、410 第1のエアフレイド不織布シート
320、420 第2のエアフレイド不織布シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧用パフであって、
パルプ繊維を含むエアレイド不織布シートを備え、
前記エアレイド不織布シートは、対向する面のうちの一方の面に複数の凹部が形成されているとともに、ウェット時加重後回復率が7%以上であることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧用パフであって、前記エアレイド不織布シートは、疎水性合成繊維を含んでいることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧用パフであって、前記エアレイド不織布シートは、レーヨン繊維からなる外層部を有していることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項4】
化粧用パフであって、
パルプ繊維を含み、折り返し線を挟んで一方側に第1のエアレイド不織布シート、他方側に第2のエアレイド不織布シートを有する1つのエアレイド不織布シートを備え、
前記1つのエアレイド不織布シートが前記折り返し線に沿って折り返されて、前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートが重ねられており、
前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項5】
請求項4に記載の化粧用パフであって、前記1つのエアレイド不織布シートは、前記折り返し線に沿って形成された複数の穴を有することを特徴とする化粧用パフ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の化粧用パフであって、
前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートは、前記折り返し線から設定距離以上離れた箇所で接合されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項7】
請求項6に記載の化粧用パフであって、前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートは、前記折り返し線から設定距離以上離れた箇所で剥離可能に接合されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項8】
化粧用パフであって、
パルプ繊維を含む第1のエアレイド不織布シートと第2のエアレイド不織布シートを備え、
前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートは、重ねられた状態で、一方向に沿った第1の接合箇所で接合されており、
前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートのうちの一方は、他方と対向する側の面と反対側の面に複数の凹部が形成されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項9】
請求項8に記載の化粧用パフであって、前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートは、前記第1の接合箇所で剥離可能に接合されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項10】
請求項9に記載の化粧用パフであって、前記第1のエアレイド不織布シートと前記第2のエアレイド不織布シートは、さらに、前記第1の接合箇所から、前記一方向に交差する方向に設定距離以上離れている第2の接合箇所で、剥離可能に接合されていることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれか1項に記載の化粧用パフであって、前記第1のエアレイド不織布シートおよび前記第2のエアレイド不織布シートは、ウェット時加重後回復率が7%以上であることを特徴とする化粧用パフ。
【請求項12】
不織布シートの対向する面のうちの一方の面に複数の凹部を形成する凹部形成方法であって、
平坦な外周面を有するとともに、熱を発生する第1のロールと、外周側に複数の突部が形成されている第2のロールを、前記第1のロールの外周面と前記第2のロールの突部の間の最短距離が、不織布シートの厚さより短くなるように配置し、
前記不織布シートの対向する面のうちの他方の面を、一方の面が前記第2のロールの突部と当接する当接領域と、当該当接領域に対して前記第1のロールの回転方向に沿った前領域と後領域を含む設定領域に亘って前記第1のロールの外周面に接触させた状態で、前記第1のロールおよび前記第2のロールを回転させる
ことを特徴とする凹部形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の凹部形成方法であって、前記設定領域は、前記第1のロールの回転方向に沿った半周以上の領域として設定され、前記当接領域は、前記設定領域の、前記第1のロールの回転方向に沿った中央に配置されていることを特徴とする凹部形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−148750(P2010−148750A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331578(P2008−331578)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】