説明

医用画像データにおける注目点の自動検出装置

【課題】医用画像データにおける注目点、即ち病変の存在の可能性がある位置の自動検出をする際の、病変の見落としを減じ得る自動検出装置を提供する。
【解決手段】画像データの記憶装置3、画像データによって捕捉される1つ又は複数の解剖学的領域を決定するための決定モジュール2、特定の解剖学的領域における特定の注目点を自動的に検出するためのアプリケーション14〜21を含む複数の異なる検査モジュール4、一次アプリケーションを始動させ得る入力ユニット5、決定モジュール2によって決定された解剖学的領域に基づいて別のアプリケーション14〜21を選択しバックにおいて実行する制御ユニット1、及び一次アプリケーションの結果及びバックにおいて実行されたアプリケーション14〜21により自動的に検出された付加の注目点についての情報が表示される出力ユニット6を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の身身体領域の医用画像データにおける注目点、例えば画像上で病変の存在の可能性がある位置を自動的に検出するための装置であって、画像データの記憶のための記憶装置、画像データにおける特定の注目点の自動検出のためのアプリケーションを始動させ得る入力ユニット、及びアプリケーションの結果が表示される出力ユニットを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像生成は、種々の診断上の問題提起の際、患者における診断を支援するために使用される。記録された画像データにおいては、診断上関連する注目点は経験あるユーザによっては識別され得るものの、まだ経験のないユーザの場合にはそのような注目点が必ずしも最適でない画質に基づいて見落とされる危険性がある。この問題点を減少させるため、記録された画像データにおける注目点を自動的に検出することができる装置は知られている。この装置は通例、画像データのためのメモリを有するデータ処理ステーションを含み、このステーション上でユーザによってCADアプリケーション(CAD:Computer Aided Detectionコンピュータ支援検出)が始動せしめられ得る。例えば、解剖学的領域の胸、肺、大腸における障害の自動検出のためのアプリケーションが知られている。別の既知の適用領域は、肝臓、骨及び脳に関係する。
【0003】
評価すべき画像データの存在に応じて、相応のアプリケーションが、自動的に又はユーザの入力によって始動される。種々の診断上の問題提起に対して、種々のアプリケーションを有する種々の検査モジュールを利用することができ、例えば肺診断においては肺結節の自動検出のためのアプリケーション、又は乳房診断においては乳房結節の自動検出のためのアプリケーションを利用することができる。診断上の画像生成の際に共に撮影された他の解剖学的領域又は他の診断上の問題提起は、自動検出の際には考慮されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、医用画像データにおける注目点の自動検出のための装置において、医用画像データにおける識別されない注目点の確率をさらに減ずることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は特許請求の範囲の請求項1による装置によって解決される。その装置の有利な構成は、請求項2以下に記載されており、また以下の説明及び実施例から読み取ることができる。
【0006】
患者の身体領域の医用画像データにおける自動検出のための本装置は、知られているように、画像データの記憶のための記憶装置、原因となる診断上の問題提起に相応する解剖学的目標領域における特定の注目点検出のための一次アプリケーションを始動させるための入力ユニット、及び一次アプリケーションの結果をユーザに表示する出力ユニットを含む。診断上の問題提起に関連する解剖学的領域(本発明では目標領域ともいう)は、その際当然画像データによって含まれていなければならない。一次アプリケーションは、特に、目標領域における診断上の問題提起に相応する注目点の検出のために形成されている。それに代えて、入力ユニットを介してユーザにより診断上の問題提起が選ばれ、その問題提起に基づいて自動的に適切な一次アプリケーションが始動されるようにすることもできる。
【0007】
本装置はさらに複数の検査モジュールを含み、これらのモジュールはそれぞれ特定の解剖学的領域における特定の注目点の自動検出のための少なくとも1つのアプリケーションを含む。本装置はなかんずく、画像データによって捕捉される1つ又は複数の解剖学的領域の決定のための決定モジュール及び制御ユニットが存在することに特徴があり、この制御ユニットは決定モジュールによって決定された少なくとも解剖学的領域に基づいて別のアプリケーションを自動的に選択しバックにおいて実行し、その別のアプリケーションは画像データによって捕捉された解剖学的領域における注目点検出のために適したものである。決定モジュールによる1つ又は複数の解剖学的領域の決定は、パターン認識を用いた画像データの自動的評価を介して行われ、その際好ましくは決定モジュールに1つ又は複数の入力インタフェースを介して導かれる付加のデータが考慮される。バックにおいて実行されたアプリケーションにより自動的に検出された付加の注目点についての情報は、同様に出力ユニット上に表示される。
【0008】
従って本発明によれば、ユーザによってあらかじめ設定される問題提起に無関係に、装置において使用可能な注目点検出のための、そして保存された画像データに適用し得るすべてのアプリケーションが起動され実行される。そうして例えば、画像データにおいて大腸の検査の際同様に腹部も自動的に注目点について従って場合によっては別の検査結果が熟考され得る。ユーザはさらに通常の方法で一次の診断上の問題提起を選択するか、所属の一次アプリケーションを始動する。制御ユニットによって選択された別のアプリケーションが、ユーザによって通例気付かれることなくバックにおいて進行する。この別のアプリケーションによって画像データにおけるある注目点が検出されたときのみ、可能な有効な検査結果に関する指示がユーザに伝達される。ユーザはそれから存在する画像データセットに対し別の検査を始動させるか、又は場合によっては同じ又は別の画像生成方法によって別の測定をすることができる。
【0009】
制御ユニットによる別のアプリケーションの自動選択に対しては、どの解剖学的領域が画像データによって捕捉されたかということについての知識が必要である。この解剖学的領域の決定は決定モジュールによって行われる。画像データの自動的評価を介してのこの決定の際、決定モジュールに1つ又は複数の相応の入力インタフェースを介して導かれる付加の情報が考慮され得る。その際、ユーザのパラメータ入力又は別の情報、例えば他の画像生成法の画像データでそれから解剖学的領域を決定し得るデータ、が問題になり得る。
【0010】
従って本発明によれば、使用された医用画像生成によって捕捉された解剖学的領域に基づく注目点の自動検出が、使用された一次の診断上の問題提起に無関係に行われる。注目点としては、例えば障害、狭窄、動脈瘤、塞栓症、肺実質病、骨粗鬆症又は解剖学的変化が対象となり得る。本装置を使用することによって、通例診断上の問題提起と関連する注目点に特に注目するユーザにとって利用し得る医用画像データにおける見抜けない注目点の危険性が減ぜられる。しばしば診断上の問題提起の外側にある解剖学的領域、特に解剖学的目標領域の外側の領域をも含む記録された画像データは、その結果最適にその情報内容において利用され得る。ユーザは自動的に診断上の問題提起の外側で場合によっては注目すべき検査結果についての指示を得る。同じことはもちろん診断上の問題提起と関連する解剖学的目標領域における注目点とは別の検出についても当て嵌まる。
【0011】
別のアプリケーションは一次アプリケーションと同時に進行する必要はない。このことは特に、ユーザが一次アプリケーションを遅れた時点になって始めて開始するときに認められる。この場合、別のアプリケーションは制御ユニットによって、画像データを得た後既に開始され実行されることが可能であり、その結果ユーザには一次アプリケーションの開始時に既に可能な検査結果が別のアプリケーションから表示され得る。別のアプリケーションのうち、複数又はすべてが同時に、即ち並列に、又は順次にも実行され得る。ここでアプリケーションに依存して、任意の組合せが可能である。もちろん、できるだけ多くの検査モジュール及び従って種々の注目点の自動検出のための及び種々の解剖学的領域における注目点の自動検出のための又はそのいずれか一方のためのできるだけ多くの種々のアプリケーションが装置において利用し得るのが有利である。検査モジュールの数が多ければ多いほど、記録された画像データの可能な注目点についての評価はよくなる。その際特に、解剖学的領域の胸、肺、大腸、肝臓における、骨における、また脳における注目点の自動検出のためのアプリケーションが有利である。さらに、血管における自動検出、例えば閉塞、動脈瘤及び血管奇形の発見のためのアプリケーションが存在するのが好ましい。このことは、腎結石、胆石及び膀胱結石についても当て嵌まる。専門家がたやすくアクセス可能な適切なアプリケーションないしアルゴリズムの例は、例えば、ウイリ、エイ、カレンダ(Willi A.Kalender)著「コンピュータ断層撮影(Computertomographie)」Publicis MCD Werbeagentur、ミュンヘン、2000年、ISBN 3-89578-082-0、エリオット、ケイ、フィッシュマン(Elliot K.Fishman)、アール、ブルック ジェフリ(R.Brooke Jeffrey)著「スパイラルCT(Spiral CT)」Raven Press、ニューヨーク、1995年、アール、フェリックス(R.Felix)、エム、ランガ(M.Langer)著「CTにおける進歩II(Advances in CT II)」Springer、ベルリン、1992年、ISBN 3-540-55402-5、エッチ、ポッキーザ(H.Pokieser)、ジー、レヒナ(G.Lechner)著「CTにおける進歩III(Advances in CT III)」Springer、ベルリン、1994年、ISBN 3-540-58198-7、又はジー、ピー、クレスティン(G.P.Krestin)、ジー、エム、グラーザ(G.M.Glazer)著「CTにおける進歩IV(Advances in CT IV)」Springer、ベルリン、1998年、ISBN 3-540-64348-6において明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明装置を実施例に基づき図面について模範的な例として説明する。
【実施例】
【0013】
図はこのような装置に対する一例を示すもので、制御ユニット1、1つ又は複数の決定モジュール2、画像データの記憶のための記憶ユニット3、複数の検査モジュール4、ユーザに対する入力ユニット5及び出力ユニットとしてのモニター6を含んでいる。検査モジュール4のうち、この例では、障害の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール14、塞栓の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール15、狭窄の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール16、肺実質病の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール17、骨粗鬆症の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール18、動脈瘤の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール19及び解剖学的奇形の検出のための1つ又は複数のアプリケーションを有する検査モジュール20が認められる。符号21によって、別のアプリケーションを有する検査モジュール、場合によっては異なる身体領域又は器官に特定化されたモジュールが暗示されている。
【0014】
医用画像データ、例えばコンピュータ断層撮影装置によるCT画像データの記録後、画像データは装置の記憶ユニット3に保存される。次いで第1のステップにおいて、1つ又は複数の決定モジュール2によって、保存された画像データによって捕捉されている1つ又は複数の解剖学的領域が決定される。このために、パターン認識法12に加えて、例えばユーザのパラメータ入力10、コンピュータ断層撮影装置により作成されたトポグラム11、又は他の画像生成法、例えば画像データによって捕捉される解剖学的領域を指し示すテレビカメラ8の情報又はナビゲーション・システム9の情報が決定モジュール2において使用され得る。パターン認識法は必要な情報を保存された画像データ3そのものから引き出すことができる。符号13は、解剖学的領域の決定が決定モジュール2に導かれる別の情報に基づいても行ない得ることを示す。
【0015】
決定モジュールによって見つけ出された解剖学的領域に依存して、制御ユニット1を介して適切なアプリケーションないしアルゴリズムが選択される。この選択に対しては、付加的に、特にコンピュータ断層撮影の場合には、スキャンパラメータ7が考慮され得る。その際、画像データが造影剤あり又はなしで記録されたかどうか、或いは例えば使用された線量が特定の注目点の検出のための有効な評価を全体として許容するものかどうか、ということを示すパラメータが問題となり得る。さらに、スキャンパラメータはアプリケーションないしアルゴリズムそのものを制御することもでき、その結果スキャンパラメータは選択されたアプリケーションに制御ユニットによって自由に使用され得る。
【0016】
この場合以下の例が示すように、完全に異なるアプリケーションないしアルゴリズムが記録された画像データに順次適用され得る。胸領域及び上腹部の造影剤によるCTからの画像データの場合、以下の適用が生じる。即ち、肺結節の探索、腹部器官(肝臓、腎臓、膵臓)の結節の探索、脊柱及び背における骨転移の探索、大動脈瘤の探索、心臓冠状血管の狭窄の探索、肺実質の変化の探索、肺(動脈)塞栓症及び脊柱の骨学的変化の探索がそれである。さらにまた、例えば心臓隔膜及び心室の測定も可能である。これらの方法はバックにおいて、即ち一次アプリケーションに並列に活動し、この例では肺結節の探索である。可能な有効な検査結果の場合には、ユーザは出力ユニット6を介して情報を提供され、その結果ユーザは相応して別の措置を導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例の系統図である。
【符号の説明】
【0018】
1 制御ユニット
2 決定モジュール
3 記憶ユニット
4 検査モジュール
5 入力ユニット
6 モニター
7 スキャンパラメータ
8 テレビカメラ
9 ナビゲーション・システム
10 パラメータ入力
11 トポグラム
12 パターン認識法
13 決定モジュール
14 検査モジュール
15 検査モジュール
16 検査モジュール
17 検査モジュール
18 検査モジュール
19 検査モジュール
20 検査モジュール
21 検査モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の身体領域の医用画像データ、特にCT画像データ、における注目点を自動検出するための装置において、
画像データを記憶するための記憶装置(3)、
画像データによって捕捉される1つ又は複数の解剖学的領域をパターン認識により画像データから決定するためのユニット(12)を含む少なくとも1つの決定モジュール(2)、
特定の解剖学的領域における特定の注目点を自動検出するためのそれぞれ少なくとも1つのアプリケーション(14〜21)を含む複数の異なる検査モジュール(4)、
アプリケーション(14〜21)の1つを一次アプリケーションとして始動させ得る入力ユニット(5)、
決定モジュール(2)によって決定された少なくとも解剖学的領域に基づいて、画像データによって捕捉された解剖学的領域における注目点の検出に適する別のアプリケーション(14〜21)を選択しバックにおいて実行する制御ユニット(1)、
一次アプリケーションの結果及びバックにおいて実行されたアプリケーション(14〜21)により自動的に検出された付加の注目点についての情報が表示される出力ユニット(6)
を含むことを特徴とする医用画像データにおける注目点自動検出装置。
【請求項2】
決定モジュール(2)が、決定モジュール(2)に1つ又は複数の入力インタフェースを介して導かれ得る付加のデータから1つ又は複数の解剖学的領域を決定するための別のユニット(8〜11、13)を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
制御ユニット(1)が、画像データについての付加情報、特に撮像パラメータ(7)を、アプリケーションの選択の際考慮するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
検査モジュール(4)が、障害、塞栓、狭窄、肺実質病、骨粗鬆症、動脈瘤、解剖学的奇形の任意の1つ又は任意の組合せの自動検出のための少なくともアプリケーション(14〜20)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−44508(P2007−44508A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209462(P2006−209462)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】