説明

医用画像処理装置及び医用画像診断装置

【課題】腹部の臓器の位置合わせを容易にすること。
【解決手段】被検体を時系列に撮像することによって得られた時系列の画像データから基準画像データを選択する選択部と、前記時系列の画像データのそれぞれを第1の基準を有する第1の領域と、第2の基準を有する第2の領域とに分割する領域分割部と、前記基準画像データの前記第1の領域と、前記基準画像データ以外の前記第1の領域と、の間の位置合わせを実行する位置合わせ部と、前記位置合わせ後の各第1の領域と前記各第2の領域とを、時系列を対応させて結合させる領域結合部と、を具備する医用画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置及び医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、3次元(3D)画像データセット、すなわちボリューム画像データセットが、コンピュータ支援断層撮影法(CT)、磁気共鳴(MR)、超音波及び陽電子放射型断層撮影法(PET)を含む、当該分野でモダリティと呼ばれる種々の技術によって収集される。
【0003】
長年の間、時系列の3次元画像を利用した腹部の臓器における灌流測定が研究されている。コンピュータ断層撮像装置を用いた上記灌流測定はDynamic Contrast Enhanced CT(DCE−CT)と呼ばれ、磁気共鳴イメージング装置を用いた上記灌流測定はDynamic Contrast Enhanced MRI(DCE−MRI)と呼ばれることがある。DCE−CTを例に上記灌流測定を説明すると、例えば以下の手順で実行される。
【0004】
まず、被検体に造影剤がボーラス注入され、例えば10枚から25枚のCTスキャンが数秒間隔で実行され血管構造や臓器等に関するCT値が測定される。上記CTスキャンによって得られたCT画像を用いて、造影前のCT値を考慮することでCT値を造影濃度に変換する。また、各位置における造影濃度を時間に対してプロットすることで、被検体内の任意の位置に関する時間―造影濃度曲線を取得することができる。
【0005】
図16は、時間―造影濃度曲線の一例を示す図である。象徴的に示した各透視2D画像から導かれる矢印で示されるように、曲線上の各点は、被検体内における同じ位置からの造影剤濃度を示す。
【0006】
初期のコンピュータ断層撮像装置に関する研究は、時系列の2Dスライス画像を取得するものが通常であった。しかし、より最近では、マルチスライススキャナの出現により、時系列のボリューム画像が迅速に取得できるようになった。近年では、1回のガントリ回転で16cmまでの体軸方向の範囲(axial extent)をもつ高分解能CT画像を取得することができる320スライスCTスキャナが開発されている。これにより、曝射される総X線量を比較的小さくしながら、腎臓又は肝臓などを含む臓器全体の多数の連続的な画像を取得することが可能になった。
【0007】
画像を取得する際において被検体が全体を通して全く移動せず、体内で臓器の位置が全く変化しない場合には、目的となる関心領域の位置を1回のスキャンで同定できる。また、同定された関心領域の位置は、他の全てのスキャンに自動的に活用可能である。これにより、時間−造影濃度曲線の結果を生成するのに必要とされる時間が大幅に削減される。しかし、現実には、呼吸により誘発される臓器の位置の変化により、画像に位置ずれが生じる。
【0008】
被検体内の臓器の動き及び臓器の変形を減らすために現在、2つの方法が知られている。1つの方法では、被検体は、透視中にわたって息をこらえるように医師等から指示される。しかし、被検体は、病人、高齢者、あるいはその両方であることが多いため、透視撮像中に息をこらえ続けることは困難である。そのため、被検体は息を止め続けることができず、透視撮像中の或る時点(例えば息をこらえるのが不可能になった時点等)で呼吸を開始し、腹部の臓器について体軸方向の大きな動き及び臓器の形状の変形(しばしば30mmよりも大きい)を生じさせる。もう一つの方法では、被検体に規則的に且つ浅く呼吸をすることを求める。この場合、先の透視撮像中全体を通じて息をこらえる方法より腹部の臓器の動き又は臓器の変形が小さい。 不十分であるが他のアプローチとして、単純に、大きな臓器の動き及び臓器の変形が存在するボリューム画像を識別し無視する方法もある。自動ボリューム位置合わせを採用すれば、より良好なアプローチが提供される。自動位置合わせは、ほぼ20年にわたってDCE−CTにおいて、またDCE−MRIの関連する分野で広く用いられており、今では、幾つかの製造業者からそれらの時間に対する造影濃度を分析する機能の一部として入手可能である。
【0009】
呼吸により誘発される被検体腹部の臓器の動き(すなわち、時間の経過とともに発生する臓器の呼吸に伴う位置の変化)は、やや複雑な形で腹部に影響を及ぼす。簡単に言えば、腹部の臓器(肝臓、腎臓、脾臓、膵臓など)は、呼吸によって誘発される横隔膜の上下の動きによって位置が変化し、ほぼ体軸(アキシャル)方向(Z)に動く傾向がある。被検体の深い呼吸によって、冠状(コロナル)方向(Y)のより小さい臓器の動きと、通常は矢状(サジタル)方向(X)の最も小さい臓器の動きを伴って、30mm以上の全体的な体軸方向(Z)の臓器の変位が引き起こされる。一般に、臓器が異なれば臓器の位置変化量及び臓器の変形の程度も異なる。通常の腹臥位にある被検体では、椎骨と後方の腹壁はほぼ位置変化及び臓器の変形がない。一方、被検体の前方の腹壁は、大抵、矢状方向に動く傾向がある。内部臓器の体軸方向の位置変化及び臓器の変形と、比較的位置変化がなく或いは変形が起こらない脊椎及び腹壁とは、所々で事実上不連続な境界を有するため、臓器は、腹壁の内面に沿って「スライド」するように見える。最後に、臓器は、それら自体剛体ではなく、臓器全体の運動に加えて、形状が微妙に変化することがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】William R. Crum, Derek L. G. Hill and David J. Hawkes. (2002). Information Theoretic Similarity Measures in Non-rigid Registration. Information Processing in Medical Imaging, 2732, 378-387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
目的は、腹部の臓器の位置合わせを容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、被検体を撮像した時系列の画像データから基準画像データを選択する選択部と、前記時系列の画像データに含まれる被検体領域を、第1の基準で抽出される第1の領域と、第2の基準で抽出される第2の領域とに分割する領域分割部と、前記基準画像データの前記第1の領域と、前記基準画像データ以外の前記第1の領域と、の間の位置合わせを実行する位置合わせ部と、前記位置合わせ後の各第1の領域と前記各第2の領域とを、時系列を対応させて結合させる領域結合部と、を具備するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る医用画像診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係り、図1の画像処理部の構成をより詳細に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置の外観図を示す図である。
【図4】本実施形態に係り、画像処理部が有する機能を有し、画像データを処理するためのコンピュータを概略的に示す図である。
【図5】本実施形態に係り、より詳細な図4のコンピュータの機能部のうちの幾つかを概略的に示す図である。
【図6】本実施形態に係る画像処理において実行されるステップの流れを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係り、「腹腔領域」と「腹壁領域」との分割方法において実行さされるステップの流れを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係るモルフォロジカル処理についての概念図である。
【図9】本実施形態に係り、腹部のボリュームデータをレンダリングすることにより得られた投影画像の一例を示す図である。
【図10】本実施形態に係り、時系列に取得されたボリュームデータが腹壁に関して分割された後でレンダリングされた投影画像の一例を示す図である。
【図11】本実施形態に係るワープフィールドを用いた画像の位置合わせの一例を示した図である。
【図12】本実施形態に係るワープフィールドを用いた画像の位置合わせの他の例を示した図である。
【図13】本実施形態に係り、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割される前のボリュームデータに対するパターンマッチングについて説明するための図である。
【図14】本実施形態に係り、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割されたボリュームデータに対するパターンマッチングについて説明するための図である。
【図15】本実施形態に係るコンピュータネットワークの一例を示す図である。
【図16】従来からの、時間に対する造影濃度を表すグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像診断装置を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。なお、本実施形態に係る医用画像診断装置とは、本実施形態において説明される画像処理機能を備えたX線コンピュータ断層撮像装置、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置のいずれであってもよい。また、本実施形態において後述される画像処理機能は、ワークステーションに代表される医用画像処理装置によって実現するようにしてもよい。以下の説明に置いては、説明を具体的にするため、医用画像診断装置がX線コンピュータ断層撮像装置である場合を例とする。
【0015】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置1の構成を示す図である。図1に示されるように、X線コンピュータ断層撮像装置1は、スリップリング2、X線管球3、架台駆動部4、回転フレーム5、2次元検出器システム6、データ収集部(DAS)7、非接触データ伝送部8、前処理部9、高電圧発生部10、ホストコントローラ11、記憶部12、表示部13、入力部14、再構成部15、システム制御部16、ネットワーク通信部17、画像処理部18、を具備する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置1の構成を示した図である。図1に示されているように、X線コンピュータ断層撮像装置1は架台(ガントリ)を有する。
【0017】
スリップリング2は、X線管球3を連続回転させるためのものである。スリップリング2は、導体金属でできており、ブラシを介してX線管球3へ電力を供給する。
【0018】
架台は、円環又は円板状の回転フレーム5を回転可能に支持する。
【0019】
X線管球3は、高電圧発生部10からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。
【0020】
架台駆動部4は、ホストコントローラ11の制御に従って、天板保持機構を駆動可能である。
【0021】
回転フレーム5には、撮像領域中に天板に配置された被検体を挟んで対向するようにX線管球3と、2次元検出器システム6とが取り付けられている。ここで、説明のため、回転フレーム5の回転軸をZ軸、X線管球3の焦点と2次元検出器システム6の中心とを結ぶ撮像中心軸をY軸、YZ軸に直交する軸をX軸と規定する。撮像時には、典型的には、被検体Pは、体軸がZ軸に略一致するように撮像領域内に設置される。このXYZ座標系は、Z軸を回転中心とする回転座標系を構成する。
【0022】
2次元検出器システム6は、マルチスライス型の場合、チャンネル方向(X軸)に複数のチャンネルを有する検出素子の列をスライス方向(Z軸)に複数配列したものである。2次元アレイ型の場合、2次元検出器システム6は、チャンネル方向(X軸)とスライス方向(Z軸)との両方向に関して緻密に分布される複数のX線検出素子を有する。
【0023】
2次元検出器システム6には、データ収集部7(DAS;data acquisition system)が接続される。
【0024】
データ収集部7は、2次元検出器システム6の各チャンネルの電流信号を電圧に変換し、増幅し、デジタル信号に変換する。データ収集部7で収集されたデータ(純生データ)は、光や磁気を使った非接触型又はスリップリング型の非接触データ伝送部8を経由して、前処理部9に送られる。
【0025】
前処理部9は、画像再構成の前に行うデータ処理を行う。すなわち、前処理部9は、純生データに対してチャンネル間の感度不均一を補正し、画像再構成に先立って、生データに変換する。データの対数を計算し、リファレンス検出器のデータを用いてX線の強度のばらつきを補正する(リファレンス補正)。また、必要に応じてビームハードニング補正、体動補正を行う。
【0026】
高電圧発生部10は、ホストコントローラ11からの指示情報に従って、スリップリング2を介してX線管球3に高電圧を印加する。
【0027】
ホストコントローラ11は、図示しないCPU(central processing unit)及びメモリを含んでいる。ホストコントローラ11は、入力装置からの指示に従って、高電圧発生部10及び架台駆動部4等の動作を制御する。高電圧発生部10の制御を行うことにより、回転フレーム5が一定の角速度で連続回転し、X線管球3から連続的又は一定角度毎にX線が発生される。
【0028】
記憶部12は、ネットワーク通信部17から転送されたデータ、再構成部15によって発生されたボリュームデータなどを被検体Pごとに記憶する。
【0029】
表示部13は、投影処理部185で投影処理された投影画像を表示する。
【0030】
入力部14は、ユーザーから各種指示、情報入力を受け付けるためのマウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを有する。
【0031】
再構成部15は、前処理部9により補正を受けたデータ(投影データ、生データ)に基づいて、撮像時刻の異なる複数のボリュームデータファイル(時系列ボリュームデータファイル)を発生する。
【0032】
システム制御部16は、X線コンピュータ断層撮像装置1の中枢として機能する。具体的には、システム制御部16によりX線コンピュータ断層撮像装置1全体のハード制御が行われる。
【0033】
ネットワーク通信部17は、各規定に応じた通信制御を行う。ネットワーク通信部17は、電話回線等の電気的通信回線を通じてPACS(医用画像通信保管システム)等に接続することができる機能を有している。
【0034】
画像処理部18は、図2に示す様に、プログラム部181、選択部182、領域分割部183、位置合わせ部184、投影処理部185、領域結合部186を具備する。
【0035】
プログラム部181は、後述する本実施形態に係る画像処理を実施するためのプログラムを有する。このプログラムは、ユーザーが入力部14からプログラム実行のためのコマンドを入力することにより、実行される。
【0036】
選択部182は、撮像によって得られた時系列のボリュームデータから、入力部14からの入力に応答して或いは自動的に、基準時刻に対応するボリュームデータを選択する。なお、基準時刻とは、関心領域内の血管が造影剤によって造影され始める前における任意の時刻である。基準時刻は、関心領域内の輝度値の変化等に基づいて装置が自動的に、或いはユーザーによる入力部14からのマニュアル操作によって選択される。
【0037】
領域分割部183は、時系列に取得されたボリュームデータのそれぞれを後述する第1の基準を有する第1の領域と第2の基準を有する第2の領域とに分割する。
【0038】
領域分割部183は、時系列のボリュームデータのそれぞれを第1の基準を有する第1の領域と、第2の基準を有する第2の領域とに分割する。ここで、第1の基準とは、例えば呼吸等によって位置や形状が時間的に変化する変化量が所定の基準値以上であること判定するための基準であり、第1の領域とは、第1の基準を満たす領域である。また、第一の基準の別の例としては、例えば、骨などの部位をセグメンテーションなどにより抽出し、これとは独立して移動変形することを判定基準としても良い。第1の領域の典型例としては、腹腔領域等を挙げることができる。また、第2の基準とは、例えば呼吸等によって位置や形状が時間的に変化する変化量が所定の基準値以下であること判定するための基準であり、第2の領域とは、第2の基準を満たす領域である。また、第2の基準の別の例としては、例えば、骨などの部位をセグメンテーション等により抽出し、その移動と関連して移動変形することを判定基準としても良い。第2の領域の典型例としては、腹壁領域、脊椎等を挙げることができる。
【0039】
領域分割部93で分割された第1の領域と第2の領域に関するデータは記憶部12に記憶される。
【0040】
なお、基準ボリュームデータとは、前述した基準時刻で撮像されたボリュームデータである。
【0041】
位置合わせ部184は、基準ボリュームデータの第1の領域と、基準ボリュームデータ以外のボリュームデータの第1の領域とを位置合わせ(レジストレーション)する。
【0042】
また、位置合わせ部184は、基準ボリュームデータの第2の領域と、基準ボリュームデータ以外のボリュームデータの第2の領域と、を位置合わせ(レジストレーション)する。
【0043】
尚、位置合わせとは、被検体の呼吸により変位及び変形が生じることにより基準ボリュームデータ以外のボリュームデータのある特定のボクセルの位置が、基準ボリュームデータのその特定のボクセルの位置から変動した場合、例えば、第1の領域について、基準ボリュームデータ以外のボリュームデータのそのボクセルの位置を基準ボリュームデータのそのボクセルの位置に対応させることを言う。位置合わせでは、各ボクセルについて上記位置合わせを行う。
【0044】
なお、第2の領域についての位置合わせは必ずしも行わなくても良く、第1の領域についてのみ位置合わせを行うとしても良い。
【0045】
投影処理部185は、再構成部15で得られたボリュームデータをレンダリングすることにより、投影画像を取得する。レンダリングとは、3次元の図形データを画面に表示する2次元画像に表現することである。レンダリングは、3次元から2次元への座標変換、見えない部分を消去する陰面消去、立体感を出すための陰影処理からなる。なお、レンダリングとしては、ボリュームレンダリングやサーフェスレンダリング、ボリュームレンダリング、及びサーフェスレンダリングでもよい。さらに、投影処理部185は、MIP(Maximum Intensity Projection)、MPR(Multi Planar Reconstruction)処理等を行う。
【0046】
図3は、汎用スキャナ19、特に、被検体21の腹部領域のボリュームデータを得るためのコンピュータ断層撮像装置(CT)の外観図である。被検体の腹部が、スキャナ19の円形開口部20内に位置付けられる。被検体の腹部を含む一連の画像スライスが撮影される。撮像で得られた画像データは、スキャナ19から導出され、例えば、2次元の512×512のサイズの画像を1000枚取得する。取得された画像には、撮像対象となる被検体の腹部領域の断面が表現される。この取得されたスライス画像は、再構成部15で組み合わされることにより、ボリュームデータが生成される。
【0047】
ボリュームデータは、ボクセルの集まりである。ボクセル値は、X線の透過係数を反映した値を有し、X線の透過の程度を表す。したがって、ボリュームデータは、撮像対象の立体的な表現である。ユーザーは、入力部14を操作することにより、投影方向を選択する。ボリュームデータは、ユーザーにより選択された投影方向に基づいて、投影画像(典型的にはコンピュータモニタ上に)を表示できる。
【0048】
他のモダリティ(例えば、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、PET、超音波診断装置等)は、それぞれ画像分解能(すなわちボクセルサイズ)が異なっている。撮像されたボリュームデータのサイズは、モダリティの性能にさらに依存することになる。しかし、以下の説明では、ボリュームデータを、x軸、y軸、及びz軸によって定義される規則的なデカルト格子上に配列された512×512×320の16ビットのボクセルを備えるものとして説明する。ボクセルは、各軸に沿って0.5mmだけ離間されているとする。これは、腎臓、肝臓、腸、脾臓、又は膵臓のような注目の腹部の臓器を包含するために、25cm×25cm×16cmのボリュームサイズに対応する。再構成部15により、ボリュームデータの面は、水平面、矢状面、及び冠状面となるように位置合わせされる。xy軸は水平面内にあり、xz軸は冠状面内にあり、yz軸は矢状面内にある。
【0049】
図4は、画像処理部18等が有する機能を有し、投影画像を生成するためにボリュームデータの処理を行うように構成された汎用コンピュータシステム30を概略的に示す図である。汎用コンピュータ30は、X線コンピュータ断層撮像装置1内に設けられるとしても良いし、ワークステーション等であっても良い。
【0050】
コンピュータ30は、中央処理装置(CPU)22と、読出し専用メモリ(ROM)23と、ランダムアクセスメモリ(RAM)24と、GFX25と、ハードディスクドライブ26と、ディスプレイドライバー27と、ディスプレイ13と、キーボード14及びマウス14を備えるユーザー入力/出力(IO)回路28とを具備する。これらのデバイスは、共通のバス29を介して接続される。
【0051】
汎用コンピュータ30はまた、共通のバス29を介して接続されるグラフィックスカード36を有する。この例において、グラフィックスカードは、ATI Technologies Inc.Ontario Canadaによって製造されたRadeon X800XT visual processing unit(ビジュアル処理装置)である。グラフィックスカードは、グラフィックス処理装置(GPU)と、GPU(GPUメモリ)に緊密に結合されたランダムアクセスメモリ(図5には図示せず)とを具備する。
【0052】
CPU22は、ROM23、RAM24、又はハードディスクドライブ26内に格納されたプログラム命令を実行し、RAM24又はハードディスクドライブ26内に格納することができるボリュームデータのボクセルと関連する信号値を処理することができる。RAM24とハードディスクドライブ26は、集合的に、システムメモリと呼ばれる。GPUもまたプログラム命令を実行し、CPUから送信されたボリュームデータを処理することができる。
【0053】
図5は、図4に示されたコンピュータシステムの機能部のうちの幾つかの構成要素を概略的に示す図である。RAM24とハードディスクドライブ26は、集合的に、システムメモリ28として示される。スキャナ19から得られたボリュームデータは、システムメモリに格納される。
【0054】
バス接続部42a〜42dが個別に図5に概略的に示される。第1のバス接続部42aは、システムメモリ28とCPU21との間を接続する。第2のバス接続部42bは、CPU21とグラフィックスカード36との間を接続する。第3のバス接続部42cは、グラフィックスカード36とディスプレイ13との間を接続する。第4のバス接続部42dは、ユーザI/O27とCPU21との間を接続する。CPU21は、CPUキャッシュ37を具備する。グラフィックスカード36は、GPU34とGPUメモリ35とを具備する。GPU34は、加速されたグラフィックス処理インターフェース31、GPUキャッシュI/Oコントローラ29、処理エンジン33、及びディスプレイI/Oコントローラ32を提供するための回路を具備する。処理エンジン33は、時系列に撮像されたボリュームデータを処理し、且つこうした時系列に撮像されたボリュームデータを用いた投影処理を実行するために最適なプログラムが備えられる。
【0055】
ユーザーは、例えば従来技術を用いてディスプレイ13上に表示される選択肢のメニューを入力部14(キーボードとマウス)を用いて入力することによりパラメータを設定する。
【0056】
本実施形態に係る画像処理は、肝臓、いずれかの腎臓、脾臓、又は膵臓のような腹部の内部臓器等を対象とする時間に対する造影濃度の測定精度に大きく関わる。CTスキャンすることにより得られた生データを再構成することによりボリューム画像を得、そのボリューム画像をレンダリングすることにより画像が得られる。X線画像のコントラストを明瞭にするために、通常、血液は、周囲組織よりも高いX線阻止能を有する造影剤で造影される。造影剤が関心領域内に流入するには、所定の時間を要する。このため、造影剤を用いた撮像プロセスにおいては、一定以上の時間が経過した後でないと、関心領域を対象として撮影される画像は造影剤の影響を受けない。この造影剤の影響が経時的に取得される画像列の途中で現れるように、撮像プロセスの初期段階の間に造影剤がボーラス投与される。造影剤としては、通常、ヨウ素が用いられる。
【0057】
以下の説明は、時系列に撮像された多数のボリュームデータが、適切なCTスキャナ19を用いて被検体から短い時間間隔で撮影され、且つシステムメモリ28に格納されるものとして説明する。こうした時系列に撮像されたボリュームデータは、4Dデータと呼ばれることもある。また、この様に3次元デカルト座標上に配置されたボリュームデータを時系列に取得する撮像手法は、4D動的造影CT(DCE−CT)と呼ばれることもある。2011年に開発された典型的なDCE−CTでは、数10枚のCTスキャン像、例えば約30枚のスキャン画像が数秒間隔で取得される。該当する血管構造と臓器が各スキャンで識別され、それらのCT値が測定される。列内の最初のスキャンは、造影剤の注入前に、又は少なくとも造影剤が注目の臓器に到達する前に行われる。これにより、高い阻止能の造影剤を用いることなく、位置合わせのための適切な基準ボリュームデータが取得できる。造影剤が注目の臓器内の血管に存在するスキャンでは、造影前のCT値を考慮することで、ハンスフィールドユニット(HU)のCT密度を造影剤濃度に変換することができる。各関心領域内における特定の部位における連続する濃度が時間に対してプロットされ、次いで、その部位に関するCT−造影濃度曲線が取得できる。
【0058】
本実施形態に係る4D―DCE−CTデータは、以下のように収集される。すなわち、本実施形態に係る画像処理方法は、時系列の低線量CTスキャンを各々備える22個のデータセットに(時系列のボリュームデータ)対して実行される。スキャンの数は10から30の範囲内であり、平均して16スキャンである。
【0059】
造影剤のボーラス注入後に、320検出器列CTスキャナ(Aquilion ONE、Toshiba Medical Systems 登録商標)を用いて時系列の512×512×320ボリューム画像が取得される。X線管球3の設定は、透視撮像中全体にわたって管電圧80kV、管電流210mAである。時系列は、3秒間隔で10回スキャン、その後、10秒の休止期間、次いで、7秒間隔で3回スキャン、その後、10秒の第2の休止期間、次いで再び7秒間隔でさらに3回スキャンである。スライス内のピクセル間隔は、撮像ごとに若干変化するが、典型的には約0.65mmであり、スライス間隔は0.5mmである。CT再構成後に、各ボリューム画像の有効なサブセットは、高さ約11cmの中央円筒と、円筒の半径からボリュームの体軸方向末端における点まで先細になる円錐領域と、で構成され、16cmの全高である。有効なサブセットの外部にあるピクセルは、それらを有効なCT値を有するものから区別するために、「パディング」値が割り当てられる。
【0060】
画像は、低いX線線量を用いて生成される。その結果、再構成後に非常にノイズの多いものである。ノイズは、以下の方法によって推定される。画像の各画素は、最初にX方向に1ピクセルだけシフトされる。原画像の各画素値と1ピクセルだけシフトされた画像の各画素値との差分をとる(以下、差分された画像を差分画像と記載する。)。差分画像の各画素値をルート2で割ることにより、差分画像の標準偏差である、付加的な「ホワイト」ノイズが取得される。「ホワイト」ノイズは、ノイズ標準偏差の推定値であると仮定する。ほとんどの事例において、70ハンスフィールドユニット(HU)程度のノイズ標準偏差値が観察される。比較のため、腎臓とその隣接する脂肪バックグラウンドとの間の強度差は、造影剤なしのスキャンにおいては130HU付近である、すなわち、信号対ノイズ比は非常に低く、2対1程度である。
【0061】
有効な関心領域(ROI;円筒+2円錐、上述)の外部にある「パディング」ピクセルは、後述する臓器の位置合わせに対して影響を与えない。時系列のボリュームデータは、スキャンに存在する腹部のすべてを含み、且つ周囲空気とCTスキャナテーブルとが除外された腹部領域を表す。この時系列のボリュームデータは、閾値処理し、最も広い連結成分を選択し、2値画像の組合せにより数学的形態の算出を単純化することによって自動的に特定される。腹部領域の外部にあるピクセルはまた、後に詳述される位置合わせエンジンによって後述する画像処理から除外される。
【0062】
本実施形態において、腹部の内部臓器(例えば肝臓、腎臓)に対する時間―造影濃度測定を行うためには、以下詳述する画像処理方法は必須である。その画像処理方法は、投影画像の基準ボリュームデータ以外の第1の領域を、基準ボリュームデータの第1の領域の位置に位置合わせをするのというものである。また、必要な場合には、本実施形態に係る画像処理は、基準ボリュームデータ以外の第2の領域の位置を基準ボリュームデータの第2の領域の位置に位置合わせを行うというものである。
【0063】
しかし、時系列に取得された全ボリュームデータの全てについて非剛体位置合わせ(ボリュームデータ上の対象物同士の位置合わせを行うとともに、対象物同士のひずみを補正するもの。)を適用する全ボリューム非剛体位置合わせは、必ずあらゆる状況において良好に働くわけではない。
【0064】
上述したように被検体が撮像プロセス中に息をこらえている間は、以下に詳述する基準ボリュームデータ以外の第1の領域の位置を基準ボリュームデータの第2の領域の位置への位置合わせが上手くいく。しかし、被検体によっては、撮像プロセス中にわたって息をこらえるのが不可能である。その場合、基準ボリュームデータ以外の例えば、第1の領域の位置を、基準ボリュームデータの位置へ位置合わせを行うことにより、アーチファクトが生ずる。被検体が撮像プロセス中にわたって息をこらえる方法とは別の方法として、被検体が撮像プロセス中にわたって浅い息をする方法も存在する。ここでは、腹部の臓器の移動はあまり顕著ではない。しかし、この場合においても、後に詳述するように例えば第1の領域の変形を考慮した位置合わせ処理である、基準ボリュームデータ以外のボリュームデータの第1の領域を基準ボリュームデータの第1の領域の位置へ位置合わせする処理を行うことにより、投影画像にアーチファクトが依然として見られる。
【0065】
本実施形態における主な根本的技術的課題は以下の2つである。
【0066】
第1に、被検体の呼吸により、内部臓器は主として上−下(体軸)方向に大きく移動し(幾つかの事例では30mmよりも大きく移動)、脊椎、胸郭、骨盤、及び腹壁は、主として前−後(前額)方向に、腹部の臓器より少なく移動する傾向がある。
【0067】
第2に、CTスキャンができるだけ低線量で行われることにより、結果として、非常に高いノイズレベル(150HUよりも大きいノイズ標準偏差が観察されている)を有する画像が取得される。高いレベルの画像ノイズは、後述する腹部の臓器の非剛体位置合わせ性能を劣化させることが知られている。
【0068】
以下、基準ボリュームデータの腹部内の対象物の位置に、基準ボリュームデータ以外の腹部内の対応する対象物の位置を合わせる画像処理方法を説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理において実行されるステップの流れを示したフローチャートである。S11)ロード:時系列で撮像されたボリュームデータである4D画像データセット(時系列のボリュームデータ)が、例えばX線コンピュータ断層撮像装置1の記憶部12、或いは被検体の画像の遠隔中央ファイル記憶装置から、コンピュータ上のメモリにロードされる。
【0069】
S12)分割:領域分割部183により、時系列の全ボリュームデータは、腹部を第1の領域(ここでは「腹腔領域」とする)と第2の領域(ここでは、腹壁+胸郭、骨盤、及び脊椎の隣接する骨格特徴からなる「腹壁領域」とする)との2つの領域に分割するためにコンピュータに内蔵されたプログラムによって画像処理される。これは画像解析によって全自動でなされる。
【0070】
S13)位置合わせ:位置合わせ部184により、時系列における基準ボリュームデータ以外のボリュームデータ上の「腹腔領域」の位置が、基準ボリュームデータの「腹腔領域」に位置合わせされる。同様に、位置合わせ部184により、時系列における基準ボリュームデータ以外の「腹壁領域」位置が、基準ボリュームデータの「腹壁領域」位置に位置合わせされる。「腹腔領域」と「腹壁領域」とそれぞれにおいて剛体位置合わせが用いられる。なお、S13において、剛体位置合わせの後、非剛体位置合わせが適用される場合もある。
【0071】
なお、剛体位置合わせとは、対象物同士のひずみの補正は行うことになしに、ボリュームデータ上の対象物同士の位置と位置とを合わせる処理を言う。剛体位置合わせにおいては、一方、非剛体位置合わせとは、ボリュームデータ上の対象物同士の位置合わせとともに対象物同士の歪みも補正する処理を言う。
【0072】
上述の剛体位置合わせ及び非剛体位置合わせの結果、例えば、基準ボリュームデータ以外の対象物の位置が、基準ボリュームデータの対象物の位置に一致する。
【0073】
S14)「腹腔領域」と「腹壁領域」との結合(merge, join or combine):時系列に取得されたボリュームデータを用いて、領域結合部186により、基準ボリュームデータ以外の腹腔領域の位置が基準ボリュームデータの腹腔領域の位置に位置合わせされたボリュームデータ(第一のボリュームデータ)と、基準ボリュームデータ以外の腹壁領域の位置が基準ボリュームデータの腹壁領域の位置に位置合わせされたボリュームデータ(第二のボリュームデータ)と、を結合させる(以下、結合されたボリュームデータを結合ボリュームデータとして説明する。)。また、「腹壁領域」については、被検体の呼吸に伴って腹部の部分領域(例えば臓器等)が移動しないため、位置合わせを行わず、「腹腔領域」だけで位置合わせを行うとしても良い。その場合、「腹壁領域」については、特定の時刻のボリュームデータをユーザーが選択又は装置が自動で選択し、選択された「腹壁領域」を表すボリュームデータと、位置合わせされた「腹腔領域」を表すボリュームデータと、を結合させて結合ボリュームデータを取得するとしても良い。
【0074】
S15)記憶/表示:記憶部12に組み合わされた位置合わせ済みの4D画像データセットが記憶される。また、表示部13により、位置合わせされたボリュームデータの投影画像が表示される。
【0075】
プログラムにより腹部の領域を「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割する方法(すなわち、ステップS12において用いられる方法)を以下、図7を参照しながらより詳細に説明する。被検体の腹部が如何なる造影剤をも含有しなかったときに得られた基準ボリュームデータを選択する。このステップにおいて、骨格が強度閾値処理によって腹部の残りの領域から分離される(S21)。
【0076】
腹部に関して骨以外の他の組織から骨を区分するために150HU程度の閾値をボリューム全体に適用する(S22)。
【0077】
脊椎を分離するために幾つかの数学的形態の算出を適用する。これらは当業者にとって慣用される従来技術であり、より詳細な脊髄分離方法については後述する(S23)。
【0078】
以下でより詳細に説明されるように、他の数学的形態の算出を用いて、胸郭、骨盤骨を含む第1のシェル状の領域を特定する。(スキャンされたボリュームの体軸方向の位置に依存する)(S24)。
【0079】
空気バックグラウンドからすべての組織を分離するために−600HU程度の第2の閾値をボリューム全体に適用する(S25)。
【0080】
以下でより詳細に説明されるように、幾つかの数学的形態の算出を適用することによって、第2のシェル状の領域を特定する。第2のシェル状の領域は、以下、「腹壁領域」と呼ぶ、皮膚、皮下脂肪、及び他の外部組織を備える(S26)。
【0081】
脊椎を分離するための数学的形態の算出の適切なシーケンスは以下の通りである。
【0082】
図8は、本実施形態に適用されるモルフォロジカル処理を概念的に示す図である。モルフォロジカル処理を適用することにより、連結された領域70と72とが独立した領域に分離される。また、モルフォロジカル処理により独立した領域それぞれを膨張、縮小させることができる。なお、「膨張」とは、特定の領域を大きくする処理のことを指す(図8の後半の処理参照)。「縮小」とは、「膨張」とは反対に、ある領域が縮小することを指す。
【0083】
・閾値により抽出された領域を慣用される従来技術であるモルフォロジカルプロセスによって、球形の構造要素を膨張(ダイレート)させ、椎骨を結合し且つあらゆる中空の骨を埋めるためにあらゆる内部の穴を埋める(穴埋め(fill))。なお、「穴埋め」とは、ある領域内に点在して存在するある領域以外の部分領域(空洞の領域)を埋めることを指す。
【0084】
・モルフォロジカルプロセスによって結果として得られた領域を5mmの球形の領域に縮小(エロード)させる。これにより脊椎から胸郭が分離される。
【0085】
・モルフォロジカルプロセスによって、前のステップの結果における最も大きい連結成分を見出し、これを5mmの球形の構造要素に膨張する。この結果、脊椎が僅かに平滑化される。
【0086】
・脊椎の各2D体軸方向スライスをその埋められた最小包含凸多角形によって置き換える。この結果、脊椎領域のより平滑な領域がもたらされる。この結果を「脊椎領域マスク」と呼ぶ。本実施形態に記載の「構造要素」、「膨張」、「縮小」、「オープニング」、「クロージング」、及び「穴埋め(fill)」は、モルフォロジカル処理の際に用いられる用語である。なお、「クロージング」とは、「オープニング」の対義語であり、二つの領域を結合させる場合に用いられる用語である(図8参照)。
【0087】
これらの用語は、標準的な「数学的形態」の用語及び「数学的形態」の算出である。テキストブックであるSerra J.Image Analysis and Mathematical Morphology、1982、ISBN 0126372403は、本実施形態に係る画像処理に適用される数学的形態の算出の詳細を提供する。ここに記載された数学的形態の算出方法が導入される。
【0088】
以下、上述した第1のシェル状の領域、第2のシェル状の領域の抽出方法を詳述する。
【0089】
第1のシェル状の領域(胸郭及び骨盤骨)を抽出するのに用いられる数学的形態の算出は、以下のように実施することができる。
【0090】
・前述の第1の膨張ステップにおいて見出された、閾値よりも上のCT値を有するクリーンアップ済み領域をとり、1mmの球形の構造要素を用いてモルフォロジカルオープニング処理を行う。なお、「オープニング」とは、二つの連結された領域70、領域72を分離する処理のことを指す(図8参照)。
【0091】
・上記で見出された脊椎領域を差し引く。結果として、胸郭、骨盤の領域を含む。
【0092】
・胸郭、骨盤の領域に半径5mm、長さ(体軸方向に)40mmの円筒形の構造要素をずらし重ねする。これは、胸郭、骨盤を体軸方向に「垂下」するシェル状の「骨カーテン領域」に変換する。
【0093】
・骨カーテン領域と脊椎領域との和集合をとる。これは、通常は腹腔ではなく腹壁の一部として含まれるべき骨領域を表す単一連結成分を含む。これは、以下では「骨マスク」と呼ばれる。
【0094】
第2のシェル状の領域(皮膚、皮下脂肪、及び他の外部組織)を見出すのに用いられる数学的形態の算出は、1つの例において以下の通りである。
【0095】
・閾値よりも上のCT値を有する領域の最も広い連結成分を見出す。
【0096】
・各体軸方向スライスを、埋められた最小包含凸多角形によって置き換える。これは、腸、肺の下部などにおける空隙を埋め、その結果、「腹部全体を表すマスク」が得られる。
【0097】
・スキャナテーブル並びに周囲空気を含む体外の領域、「腹部全体を表す領域」の補集合をとる。この領域を25mmだけ膨張させる。その結果、この領域は体内に25mm延びる。結果として得られる領域は、このとき、体外の25mmのシェル+外部バックグラウンドのすべてを備え、「腹壁シェル」として知られている。(寸法の選択は所望どおりに変化されてもよいことが理解されよう。)
・骨領域と腹壁シェルとの和集合をとる。この和集合をとった結果として「腹壁+胸郭、骨盤、及び脊椎の隣接する骨格特徴」を表す領域が得られる。和集合演算された骨マスクと腹壁シェル(マスク)を画像ボリューム全体から差し引く。結果として「腹腔」マスクが得られる。腹壁と腹腔には、このとき、交わりがなく、共にボリューム全体を構成する。
【0098】
次に、腹壁に加えて隣接する骨格特徴と腹腔とが、それらの共通の境界に15mm幅のスペースを広げることによって互いが分離される。詳細には、これは以下のようにして実現できる。「腹腔領域」は、最初に15mmの球形の構造要素を用いてオープニングされる。これにより、腹壁への小さな結合領域を除去することによってその境界を平滑化する。次いで、腹腔を15mmだけ膨張させ、次いでこれを上記で見出された腹部マスクから差し引くことによって、最終的な腹壁及び骨マスクが構築される。
【0099】
結果は、平滑面を備えた15mm幅のスペースによって分離された2つの領域である。第1の領域は、ほとんどすべての腹部の内部臓器(肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、胆嚢、腸)を備える。この領域の臓器は、被検体の呼吸に伴って横隔膜が体軸方向に動き、その横隔膜の動きに応じて臓器の位置が大きく移動するとともに、臓器が変形しやすい。この複数の臓器(部分領域)を含む領域を「腹腔領域」と呼び以下説明する。第2の領域は、脊椎、胸郭、存在する場合には骨盤、骨格と皮膚との間のすべてのもの、及び残りの腹壁のほとんど(例えば骨を含まない前壁)を収容する。この領域に存在する骨、脊髄などの部位(部分領域)は、被検体の呼吸で位置がほとんど変化しない。この第2の領域を「腹壁領域」として以下説明する。
【0100】
図9は、造影剤の存在なしにCTスキャンによって撮影された被検体の腹部のボリュームが投影処理された投影画像である。
【0101】
図10は、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割した後のボリュームデータを、「腹壁領域」のみをマスクして投影処理することにより得られた「腹腔領域」のみを表す投影画像である。
【0102】
領域分割の後に、行われる画像処理ステップとしては、「腹腔領域」と「腹壁領域」2つの領域に分割された各時刻におけるボリュームデータを対象とし、それぞれのボリュームデータに含まれる臓器の位置が実質的に同じ位置となるように、腹腔領域に対応するデータと腹壁領域に対応するデータとを位置合わせする。当該位置合わせが行われた後、各領域に対応する二つのボリュームデータが結合される。
【0103】
位置合わせは、(「腹腔領域」及び「腹壁領域」)の2つの領域を対象として、基準ボリュームデータ以外のボリュームデータ系列に対して実行される。基準ボリュームデータとは異なり、造影剤が関心領域に到達している時点の画像ボリューム(以下、「ターゲット」ボリュームと記載する。)の第1の領域及び第2の領域の位置と、基準ボリュームデータの第1の領域及び第2の領域の位置とが位置合わせされる。位置合わせは、変位を考慮に入れるために最初に「剛体」位置合わせを備える。また、任意選択でターゲットと基準ボリュームデータとの間のあらゆる僅かな回転を考慮に入れるために回転を備える。剛体位置合わせの後、軟組織の歪みに適応するために非剛体位置合わせを備える。一般に、位置合わせプロセスは、基準ボリュームデータとワープ処理(変形処理)されたターゲット又はフローティング(floating)ボリュームデータとの間の類似度測度を最大にしようとするものである。ワープ処理には、図11及び図12に示されるようなワープフィールドが用いられる。
【0104】
なお、ワープフィールドを端的に言えば、物体の2D形状、位置がどのように変動し得るかを表すものである。ワープフィールドの各ボクセルに対して長さと大きさを持つベクトル量のベクトルが設定される。本実施形態に係るこのベクトルは、特定のボクセルに対して、その特定のボクセルの位置から基準ボリュームデータの対応するボクセルの位置に戻す効果を有する。そのため、マクロ的な視点で見れば、ワープフィールドを用いた位置合わせを適用することにより、例えば基準ボリュームデータ以外のボリュームデータの「腹腔領域」の位置及び形状が基準ボリュームデータの位置及び形状に一致する。なお、2つのデータを統合する場合、境界領域においてデータが連続性を保つように(ワープフィールドによるデータの変動がなめらかになるように)ワープフィールドを定義することが好ましい。
【0105】
類似度測度は、例えば、相互情報量(MI)又は正規化相互情報量(NMI)であってもよい。類似度測度の解説は、論文、例えばCrum W.R.、Hill D.L.G.、Hawkes D.J.、(2003)、Information theoretic similarity measures in non−rigid registration、IPMI−2003、pp.378〜387の文献中のどこかで見出すことができる。ここに記載された技術内容の全体が本実施形態に係る画像処理に組み入れられる。位置合わせコードは、現代のマルチコアPC上での迅速な実行のために最適化された。
【0106】
2つの「腹腔領域」及び「腹壁領域」領域それぞれの位置合わせをするために「腹腔領域」と「腹壁領域」それぞれに対して2つのワープフィールドが適用される。
【0107】
図11は、「腹腔領域」と「腹壁領域」との2つの領域それぞれについてワープフィールドを適用し、ボリュームデータでの「腹腔領域」及び「腹壁領域」の位置合わせについての概念図である。まず、上述したように、腹部を表す画像が、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割される。
【0108】
「腹腔領域」について、基準ボリュームデータ以外の全ボリュームデータの「腹腔領域」の位置を基準ボリュームデータの「腹腔領域」の位置に位置合わせをするために、ワープフィールド1が用いられる。同様に、「腹壁領域」について、基準ボリュームデータ以外の全ボリュームデータの「腹壁領域」の位置を基準ボリュームデータの「腹壁領域」の位置に位置合わせをするために、ワープフィールド2が用いられる。また、2つのワープフィールドを1つの単一ワープフィールドに結合させることもできる。しかし、単一ワープフィールドを用いて位置及び形状を合わせることにより、ギャップ、引裂き(tear)、折り重なり(fold)、及び閉塞(occlusion)のようなアーチファクトの生じる画像が出力されることがある。
【0109】
代わりに、縮小された領域上に画定されたワープフィールドのサブセットが一貫する(すなわち、ギャップ、引裂き、折り重なり、又は閉塞がない)まで2つのマスクを縮小し、次いで、縮小された領域中に一貫した方法で2つのワープフィールドを適用するとしても良い。
【0110】
これを実施する1つの具体的な方法は、前に言及した15mmギャップである、2つの領域の間のギャップに、2つのワープフィールドの距離−変換−加重伝播を適用することである。
【0111】
図12は、図11とは異なり、2つのワープフィールドを結合させ、1つのワープフィールドを得てから画像の位置合わせを行う処理を模式的に示した図である。上述した方法を用いて、腹部の領域が、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割される。次に、「腹腔領域」の位置合わせのためのワープフィールド1を発生させる。同様に、「腹壁領域」の位置合わせのためのワープフィールド2を発生させる。2つの発生されたワープフィールド1及びワープフィールド2を1つに結合させ、ワープフィールド3を発生させる。1つに結合されたワープフィールド3を用いて、基準ボリュームデータ以外の全ボリュームデータの「腹腔領域」の位置及び歪みが、基準ボリュームデータの「腹腔領域」の位置及び歪みに一致させる。同様に、必要な場合には、基準ボリュームデータ以外の全ボリュームデータの「腹壁領域」の位置及び歪みが、基準ボリュームデータの「腹壁領域」の位置及び歪みに一致する。非剛体位置合わせを適用する前に剛体位置合わせステップから2つのマスク上で得られたワープフィールドを結合し、次いで、結合された1つのワープフィールドを用いて(seeded)非剛体位置合わせをボリューム全体に適用するとしても良い。腹腔の臓器の位置合わせが背骨等の腹部の残りの領域と「ブレンド(blended)」されるこの手法は、以下の2つの論文、すなわち、
・Zhuang X.、Hawkes D.J.、Crum W.R.、Boubertakh R.、Uribe S.、Atkinson D.、Batchelor P.、Schaeffter T.、Razavi R.、Hill D.L.G.、(2008)、Robust registration between cardiac MRI images and atlas for segmentation propagation、SPIE Medical Imaging、vol.6914、pp.7、
・Park H.、Bland P.H.、Meyer C.R.、Construction of an Abdominal Probabilistic Atlas and its Application in Segmentation、IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING、VOL.22、NO.4、2003年4月、pp.483〜492、
で説明された手法を用いて組み入れることができる。
【0112】
図13は、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割される前のボリュームデータに対するパターンマッチングについて説明するための図である。ここで、ワープフィールドを用いた画素毎のパターンマッチングを適用する領域が図13の点線43で示されるように「腹腔領域」と「腹壁領域」とにまたがっている場合、パターンマッチングが上手くいかないため「腹腔領域」及び「腹壁領域」の位置及び形状合わせが上手くいかない。
【0113】
図14は、本実施形態に係り、「腹腔領域」と「腹壁領域」とに分割された後のボリュームデータに対するパターンマッチングについて説明するための図である。上述した方法により、「腹腔領域」の臓器40と「腹壁領域」の臓器42とが上述した領域分割方法によって領域分割される。領域分割された場合、ワープフィールドを用いた画素毎のパターンマッチングが適用される領域が図14の点線43で示されるように、「腹腔領域」と「腹壁領域」とで別々になるため、腹部の臓器の位置合わせが上手くいく。
【0114】
本技術分野に属する知識及び技能を有する者は、2つのワープフィールドを結合するための技術に精通しており、そのため、結合するために前述の方法又は幾つかの他の代替的方法のいずれかを用いることができる。
【0115】
本実施形態に係る画像処理方法は、さらに上記で言及された22個のデータセットに対して十分に実施されており、各々は腹部の平均約18回の連続するCTスキャンを備える。本明細書に記載の方法は、病院環境内で用いることができる。この場合、本実施形態に係る画像処理方法は、独立型のソフトウェアアプリケーション、又は画像保存通信システム(PACS)と一体化することができる。PACSは、各種の画像診断機器によって得られる画像をデジタルで保管・通信・表示・読影できるシステムである。例えば、画像は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)形式で格納されてもよい。各画像は、同じくアーカイブに格納される被検体の氏名及び生年月日のような関連する被検体情報を有する。アーカイブは、病院施設の至る所でユーザーが必要な場合に被検体データにアクセスし且つ処理することができるように、多数のワークステーションを備えたコンピュータネットワークに接続される。加えて、施設から遠いユーザーがインターネット上でアーカイブにアクセスすることを許可されてもよい。
【0116】
本実施形態との関連で複数の画像ボリュームデータセットは、PACSアーカイブに格納することができる。本実施形態に係るボリュームデータセットのうちのユーザーによって選択されたボリュームデータセットは、コンピュータネットワークを介してアーカイブに接続されたワークステーション上で提供される。放射線科医、立会い医、又は研究員のようなユーザーは、これにより、本発明を具体化する方法を用いて、ワークステーションからあらゆるボリュームデータセットにアクセスし、動画又は注目の特定の段階における心臓等の特徴を表す静止画像を生成し、且つ表示することができる。
【0117】
図15は、本実施形態に係るコンピュータネットワークを示す。ネットワーク150は、病院152内のローカルエリアネットワークを備える。病院152は、ローカルエリアネットワークを介して、関連する記憶デバイス158を有する病院のコンピュータサーバー156へのアクセスを可能とする多数のワークステーション154が備え付けてある。PACSアーカイブは、ワークステーション154のいずれかからアーカイブにおけるデータにアクセスすることができるように記憶デバイス158上に格納される。ワークステーション154は、グラフィックスカード及び本実施形態記載の方法をコンピュータで実行するためのソフトウェアへのアクセスが可能である。ソフトウェアは、1つのワークステーション154若しくは各ワークステーション154に格納されてもよい。又、必要とされるときにネットワーク150上でワークステーション154にダウンロードされてもよい。また、端末として動作するワークステーション154によりコンピュータサーバ上で実行されるように設計されても良い。例えば、ワークステーション154は、所望の画像データセットを定義するユーザー入力を受信し、システム内のどこかでボリュームレンダリングが行われる間に、結果として得られた画像を表示するように構成されてもよい。また、多数の医療撮像デバイス160、162、164、166が病院のコンピュータサーバ156に接続される。
【0118】
デバイス160、162、164、166で収集された画像データは、記憶デバイス156上のPACSアーカイブの中に直接格納することができる。したがって、医学的な緊急事態の場合に迅速な診断を可能とするために、対応するボリュームデータが記録された直後に被検体の画像をレンダリングし、閲覧することができる。ローカルエリアネットワークは、PACSアーカイブへのリモートアクセスを可能にする、病院のインターネットサーバー170によって、インターネット168に接続される。これは、例えば被検体が移動される場合に、又は外部での研究が行われることを可能にするために、データのリモートアクセスと病院の間でのデータの転送のために役立つ。
【0119】
本実施形態において、データキャリア上に又はメモリ内に格納するためのコンピュータプログラムコードを採用するコンピュータ実装は、コンピュータシステムのCPU及びGPUの動作を制御するのに用いることができる。コンピュータプログラムは、適切なキャリア媒体、例えば、ソリッドステートメモリ、磁気ディスク、光ディスク、又は光磁気ディスク、或いはテープベースの媒体のような記憶媒体上に供給することができる。代替的に、コンピュータプログラムは、伝送媒体、例えば電話、無線、又は光チャネルのようなキャリアを伴う媒体上に供給することができる。
【0120】
方法を実施するための機械可読命令を搭載したコンピュータプログラム製品が開示される。
【0121】
方法を実施するための機械可読命令がロードされ且つこれを実行するために動作可能なコンピュータが開示される。
【0122】
コンピュータプログラム製品が開示される。前述の方法を実施するための機械可読命令を搭載したコンピュータプログラム製品の例は、図4の大容量記憶デバイスHDD26、図4のROM23、図4のRAM24、及び図5のシステムメモリ28、並びに図15のサーバ156又は170である。コンピュータプログラム製品の他の形態は、CD又はDVDのような回転するディスクベースの記憶デバイス、或いはUSBフラッシュメモリデバイスを含む。
【0123】
前述の方法を実施するための機械可読命令がロードされ且つこれを実行するために動作可能なコンピュータの例は、医療撮像デバイス160、162、164、又は166を備えた端末154若しくはコンピュータの1つ又は複数と組み合わされた、図4のコンピュータ、図5のコンピュータ、及び個々の要素、例えば端末154、又は図15に示されたコンピュータネットワークシステムの集合的な多数の要素、例えばサーバ156又は170である。
【0124】
前述の方法を実施するための機械可読命令を搭載したコンピュータプログラム製品の例は、図4の大容量記憶デバイスHDD26、図4のROM23、図4のRAM24、及び図5のシステムメモリ28、並びに図15のサーバ156又は170である。コンピュータプログラム製品の他の形態は、CD又はDVDのような回転するディスクベースの記憶デバイス、或いはUSBフラッシュメモリデバイスを含む。
【0125】
本発明の実施形態は、ボリュームレンダリング用途における構成要素として本実施形態に記載の方法及び関連するコンピュータプログラムを組み入れるとしても良い。
【0126】
コンピュータ支援断層撮影法(CT)スキャナによって収集された3Dボリュームデータを参照して方法が説明されているが、多様な画像取り込みデバイス及び多様なオブジェクトから得られた他の3D及び4D又はより高次元のデータセットの撮像に、より一般に適用可能である。
【0127】
なお、本実施形態をコンピュータ断層撮像装置1として説明したが、これに限られず、例えば、磁気共鳴(MR)スキャナ、特にDCE−MRI、超音波スキャナ、及び陽電子放射型断層撮影法(PET)システムによって収集されたボリュームデータに適用されてもよい。
【0128】
ボリュームデータは、一般に大きく、0.5ギガバイトから8ギガバイトまでの間のサイズは珍しくない。例えば、ボリュームデータは、約1ギガバイトのデータに対応する1024×1024×320の16ビットのボクセルを備えてもよい。このボリュームデータを用いて、1024×1024の16ビットのピクセルを備える画像がレンダリングされてもよい。
【0129】
要約すれば、本実施形態に係る画像処理方法は、「腹壁領域」からの「腹腔領域」の分離と、これに続く、2つのサブボリュームの個別の位置合わせを含む。
【0130】
より詳細には、本実施形態に係る画像処理方法は以下の方法からなる。
【0131】
(a)例えば、GPUメモリ35、システムメモリ28、HDD26、病院のコンピュータサーバー156、又はその関連する記憶デバイス158のようなメモリデバイスから被検体の腹部の少なくとも一部の臓器を含むボリュームデータが時系列で撮影されることにより取得された複数のボリュームデータを備える4D画像データセットにアクセスする。
【0132】
(b)例えばCPU22又はGPU29のようなプロセッサ上で走る命令によりボリュームデータのうちの1つを基準ボリュームデータとして選択する。
【0133】
(c)例えばCPU22又はGPU29のようなプロセッサ上で走る命令により基準ボリュームデータを腹壁内部の「腹腔領域」と、腹壁及び外的に隣接する解剖学的特徴を含む腹腔以外の「腹壁領域」との2つの領域に分割する。
【0134】
(d)例えばCPU22又はGPU29のようなプロセッサ上で走る命令によりターゲットボリュームデータの「腹腔領域」それぞれの臓器の位置を、第1のワープフィールドを用いて、基準ボリュームデータの「腹腔領域」の臓器の位置に位置合わせを行う。
【0135】
(e)例えばCPU22又はGPU29のようなプロセッサ上で走る命令により「腹壁領域」の各臓器の位置を第2のワープフィールドを用いて、基準画像データの「腹壁領域」の各臓器の位置に位置合わせを行う。
【0136】
(f)位置合わせされた「腹腔領域」を表すボリュームデータと「腹壁領域」を表すボリュームデータとを結合させる。
【0137】
(g)「腹腔領域」を表すサブボリュームデータと「腹壁領域」を表すサブボリュームデータとを分割し、分割された「腹腔領域」と「腹壁領域」とそれぞれに対してワープフィールドを適用することにより、それぞれ2つの領域を表すサブボリュームデータで位置合わせが行われ、位置合わせ後の2つの領域を表すサブボリュームデータを結合させる方法を上記に詳述した。幾つかの実施形態において、4D画像データセットは、造影剤が被検体に導入された状態で取得される。透視撮像期間中の途中から、造影剤によって影響されるボクセルを有する時系列のボリュームデータが取得される。また、基準ボリュームデータは、そのボクセルが造影剤の影響を受けない。腹部を「腹腔領域」と「腹壁領域」とに装置が自動で分割し、分割された「腹腔領域」と「腹壁領域」それぞれに対して画像上の腹部の臓器の位置合わせを行う。「腹腔領域」は、被検体の呼吸に伴い横隔膜が体軸方向に大きく動くため、臓器の位置が体軸方向に沿って大きく変化する。一方、「腹壁領域」は、被検体の呼吸にほとんど関係せず、位置が変化しない。このように、臓器の位置が移動しやすい領域と、臓器の位置が移動しにくい領域に分割し、それぞれの領域毎に上述の画像処理を行うことにより、従来技術では困難であった臓器の位置合わせが容易となり、精度の良い位置合わせを行う医用画像診断装置1を提供することができる。これにより、アーチファクトが低減された画像を提供することができる。また、精度の高い位置合わせされた画像データを取得することにより、精度の高い灌流測定結果を取得することができる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1…医用画像診断装置、2…スリップリング、3…X線管球、4…架台駆動部、5…回転フレーム、6…2次元検出器システム、7…データ収集部(DAS)、8…非接触データ伝送部、9…前処理部、10…高電圧発生部、11…ホストコントローラー、12…記憶部、13…表示部、14…入力部、15…再構成部、16…システム制御部、17…ネットワーク通信部、18…画像処理部、181…プログラム部、182…選択部、183…領域分割部、184…位置合わせ部、185…投影処理部、19…CTスキャナ、20…円形開口部、21…被検体、22…CPU、23…ROM、24…RAM、25…GFX、26…HDD、27…ディスプレードライバー、28…ユーザーI/O、29…バス、30…画像処理装置、31…グラフィックス処理インターフェース、32…DISP.I/O、33…処理エンジン、34…GPU、35…GPUメモリー、36…グラフィックスカード、37…CPUキャッシュ、40…臓器、41…領域分割線、42…「腹腔」領域、43…パターンマッチング対象領域、70…第一の連結領域、72…第二の連結領域、150…ネットワーク、152…病院、154…ワークステーション、156…コンピュータサーバー、158…記憶デバイス、160…医療撮像デバイス、162…医用撮像デバイス、164…医療撮像デバイス、166…医療撮像デバイス、168…インターネット、170…インターネットサーバー、181…プログラム部、182…選択部、183…領域分割部、184…位置合わせ部、185…投影処理部、186…領域結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像した時系列の画像データから基準画像データを選択する選択部と、
前記時系列の画像データに含まれる被検体領域を、第1の基準で抽出される第1の領域と、第2の基準で抽出される第2の領域とに分割する領域分割部と、
前記基準画像データの前記第1の領域と、前記基準画像データ以外の前記第1の領域と、の間の位置合わせを実行する位置合わせ部と、
前記位置合わせ後の各第1の領域と前記各第2の領域とを、時系列を対応させて結合させる領域結合部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
前記位置合わせ部は、前記基準画像データの前記第2の領域と、前記基準画像データ以外の前記第2の領域と、の間の位置合わせを実行し、
前記領域結合部は、前記位置合わせ後の各第1の領域と前記位置合わせ後の各第2の領域とを、時系列を対応させて結合させること、
を特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記領域分割部は、第1の領域の位置変化量及び第2の領域の位置変化量に関する第1の基準値と、第1の領域の形状の変化量及び第2の領域の形状の変化量に関する第2の基準値とのうち少なくとも一方の基準値に基づいて、前記時系列の画像データのそれぞれを前記第1の領域と、前記第2の領域と、に分割することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の領域は、腹腔領域を有し、
前記第2の領域は、腹壁領域を有すること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の領域は、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、胆嚢、腸、肺臓、心臓のうち少なくとも1つを有し、
前記第2の領域は、脊椎、胸椎、肋骨、胸骨、骨盤、腹部の骨格のうち少なくとも1つを有すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記位置合わせ部は、前記基準画像データの前記第1の領域の位置及び形状と、前記基準画像データ以外の前記時系列の画像データの前記第1の領域の位置及び形状と、の位置、形状合わせを行うための第1のワープフィールドを発生させ、前記基準画像データの前記第2の領域内の位置及び形状と、前記基準画像データ以外の前記時系列の画像データの位置及び形状と、の第2の位置、形状合わせを行うための第2のワープフィールドを発生させ、
前記発生された第1のワープフィールドを用いて、前記基準画像データの前記第1の領域と、前記基準データ以外の前記時系列の画像データの前記第1の領域と、の第1の位置及び形状合わせと、前記発生された第2のワープフィールドを用いて、前記基準画像データの前記第2の領域と、前記基準データ以外の前記時系列の画像データの前記第2の領域と、の第2の位置及び形状合わせとのうち少なくとも第1の位置及び形状合わせを行うこと、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記位置合わせ部は、前記基準画像データの前記第1の領域の位置及び形状と、前記基準画像データ以外の前記時系列の画像データの前記第1の領域の位置及び形状と、の第1の位置、形状合わせを行うための第1のワープフィールドを発生させ、前記基準画像データの前記第2の領域内の位置及び形状と、前記基準画像データ以外の前記時系列の画像データの位置及び形状と、の第2の位置、形状合わせを行うための第2のワープフィールドを発生させ、
前記第1のワープフィールドと前記第2のワープフィールドとを結合させた第3のワープフィールドを発生させ、
前記発生された第3のワープフィールドを用いて、前記基準画像データの前記第1の領域と第2の領域とを合わせた領域と、前記基準データ以外の前記時系列の画像データの前記第1の領域と前記第2の領域とを合わせた領域と、の位置及び形状合わせを行うこと、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記結合された時系列の画像データに対して投影処理を行い、投影処理された時系列の画像を表示する表示部と、
をさらに具備する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記領域結合部は、前記位置合わせ後の各第1の領域のそれぞれに、前記時系列のうち特定の時刻に対応する前記第2の領域を結合することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画像データを撮像する撮像部と、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
を備えることを特徴とする医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−179359(P2012−179359A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42481(P2012−42481)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】