説明

医用画像撮影支援装置、医用画像撮影支援システムおよび医用画像撮影支援システムのサーバー

【課題】医用画像撮影装置が用いられる場合に、従来よりも分かり易い形式で撮影条件の設定を支援する技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る医用画像撮影支援装置は、医用画像撮影装置が用いられた過去の撮影の撮影条件情報を記憶している記憶部と、前記記憶部から前記撮影条件情報を取得して、前記撮影条件情報を撮影条件のパラメータ毎に統計的な情報にして表示する統計表示部とを備える。この統計的な情報の表示により、撮影条件の各パラメータの適正値の範囲が一目で分かると共に、どの程度の値だとあまり用いられない極端な値となるおそれがあるかも一目で分かる。この結果、従来よりも分かり易い形式で撮影条件の設定を支援することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像撮影支援装置、医用画像撮影支援システムおよび医用画像撮影支援システムのサーバーに関する。特に本発明は、X線CT装置やMRI装置などの医用画像撮影装置を用いる場合に、撮影プロトコルの設定を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮影装置を用いて被検体を撮影する場合、撮影プロトコルを設定する必要がある。ここで、「撮影プロトコル」とは、医用画像撮影装置により被検体を撮影するに際しての、患者情報以外の撮影条件であるものとする。患者情報とは、身長、体重、体型、年齢、症状等の被検体である患者に関する情報である。即ち、撮影条件は患者情報と撮影プロトコルとで構成され、撮影プロトコルとは、例えばMRI装置を用いる場合には、スライス枚数、繰り返し時間、フリップ角といった情報である。
【0003】
X線CT装置やMRI装置などの医用画像撮影装置では、設定すべき撮影プロトコルのパラメータ数が多い。従って、経験の少ない医師にとっては、どのパラメータをどう変えれば画像がどう変わるかという情報が分かりにくい。このため、撮影プロトコルの決定に際しては、例えば、症例別または用途別に予め所定の条件に設定された撮影プロトコルのパラメータセットを選択後、最適な医用画像を得るためにパラメータの値(または条件)を手動で調整するといったことが行われている。
【0004】
特許文献1は、撮影プロトコルの設定を支援するため、以下の方法を開示している。具体的には、撮影条件を主撮影条件と副撮影条件とに分け、入力された撮影条件と主撮影条件が一致する過去の医用画像を検索し、検索した医用画像とは副撮影条件を変えた医用画像を表示している。
【0005】
また、特許文献2は、撮影時期を変えた同一患者の複数の医用画像における間隔変化を求め易くすることで病理変化を検出し易くするために、以下の方法を開示している。具体的には、既に撮影された医用画像の撮影プロトコルと、その医用画像とをセットで記憶するようにしている。これにより、これから撮影する際の撮影プロトコルを決定するに際して、同一患者の過去の医用画像と、その撮影時に用いられた撮影プロトコルとを検索可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−66216号公報
【特許文献2】特開2008−136867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の従来技術は、同一患者の撮影に関して撮影プロトコルを決定する上で参考にすることができても、異なる患者の撮影に関してはあまり参考にならないと考えられる。
【0008】
特許文献1の従来技術で表示される副撮影条件のみを変えた医用画像は、撮影プロトコルの決定に際して参考になる。しかし、経験の少ない医師にとっては、それだけでは十分とは限らず、さらに分かり易い形式で撮影プロトコルの設定を支援する技術が要望されていた。特に、X線CT装置等を用いる撮影では患者が被曝するため、撮影プロトコルの一部のパラメータに設定ミスがあったために再度撮影するような事態をできる限り回避することが望まれる。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされてものであり、医用画像撮影装置が用いられる場合に、従来よりも分かり易い形式で撮影プロトコルの設定を支援する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る医用画像撮影支援装置は、上記目的を達成するため、医用画像撮影装置が用いられた過去の撮影の撮影条件情報を記憶している記憶部と、記憶部から撮影条件情報を取得して、撮影条件情報を撮影条件のパラメータ毎に統計的な情報にして表示する統計表示部とを備えるものである。
【0011】
本発明に係る医用画像撮影支援システムのサーバーは、上記目的を達成するため、少なくとも1つの医用画像撮影装置に接続され、医用画像撮影装置が用いられた撮影の撮影条件情報を医用画像撮影装置から取得して記憶し、医用画像撮影装置毎に且つ撮影条件のパラメータ毎に過去の撮影条件情報の統計的な情報を作成し、統計的な情報をこれに対応する医用画像撮影装置に送信するものである。
【0012】
本発明に係る医用画像撮影支援システムは、上記目的を達成するため、少なくとも1つの医用画像撮影装置に接続され、医用画像撮影装置が用いられた撮影の撮影条件情報を医用画像撮影装置から取得して記憶し、医用画像撮影装置毎に且つ撮影条件のパラメータ毎に過去の撮影条件情報の統計的な情報を作成し、統計的な情報をこれに対応する医用画像撮影装置に送信するサーバーと、医用画像撮影装置に送信された統計的な情報を取得して表示する表示部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、医用画像撮影装置が用いられる場合に、従来よりも分かり易い形式で撮影プロトコルの設定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態における医用画像撮影支援システムのブロック図。
【図2】図1のMRI装置の表示デバイスに表示される撮影プロトコルのパラメータの設定変更用入力ボックスの表示例を示す説明図。
【図3】第1の実施形態の医用画像撮影支援システムにおけるデータの送受信および統計情報の表示の処理の流れを示すフローチャート。
【図4】MRI装置の表示デバイスに表示される撮影プロトコルのパラメータの設定変更用入力ボックスの別の表示例を示す説明図。
【図5】第2の実施形態の医用画像撮影支援システムにおけるデータの送受信および統計情報等の表示の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における医用画像撮影支援システム10のブロック図である。
【0017】
図1に示すように、医用画像撮影支援システム10は、パラメータ情報管理モジュール20と、MRI装置(Magnetic Resonance Imaging Device)30と、X線CT装置40とをLANケーブル50により互いに接続した構成である。なお、実際には例えば多数の医療画像撮影装置がLANケーブルによりパラメータ情報管理モジュール20に接続されるが、ここでは煩雑となるので、MRI装置30およびX線CT装置40のみを示した。
【0018】
パラメータ情報管理モジュール20は、各医療画像撮影装置(本実施形態ではMRI装置30およびX線CT装置40)が使用したパラメータ情報を保存し、要求された統計情報を各医療画像撮影装置に送信するものであり、サーバーとして機能する。このパラメータ情報管理モジュール20は、パラメータ情報管理部22と、パラメータ統計情報提供部24と、パラメータ保存部26とを備える。
【0019】
パラメータ保存部26には、初期値として設定するためのパラメータ設定の典型データや、各医療画像撮影装置が用いられた過去の撮影の撮影条件のデータ等が保存されている。各医療画像撮影装置によって撮影が行われる都度、パラメータ情報管理部22には、その医療画像撮影装置から撮影の際の患者情報および撮影プロトコルが転送され、パラメータ情報管理部22は、転送された患者情報および撮影プロトコルをパラメータ保存部26に入力し、情報を保存させる。
【0020】
MRI装置30は、パラメータ情報入力/表示モジュール32と、入力デバイス34と、表示デバイス36と、MRI画像撮影機構38とを備える。パラメータ情報入力/表示モジュール32は、パラメータ情報管理モジュール20に対して統計情報の提供を要求し、送信された統計情報を表示デバイス36に表示させる。ここで、統計情報とは、医用画像撮影装置毎に、且つ、撮影条件のパラメータ毎に、過去の撮影で用いられた撮影条件の値または条件を統計的に表した情報である。ここでの「統計的に表した」とは、例えば、頻度(過去の撮影で用いられた割合や回数)として表すことであり、詳細は後述の図2で説明する。また、パラメータ情報入力/表示モジュール32は、MRI装置30により撮影が行われる都度、MRI画像撮影機構38により用いられた撮影プロトコルの各パラメータの値または条件と、患者情報とをパラメータ情報管理部22に送信する。
【0021】
X線CT装置40は、パラメータ情報入力/表示モジュール42と、入力デバイス44と、表示デバイス46と、X線CT画像撮影機構48とを備える。パラメータ情報入力/表示モジュール42は、パラメータ情報管理モジュール20に対して統計情報の提供を要求し、送信された統計情報を表示デバイス46に表示させる。また、パラメータ情報入力/表示モジュール42は、X線CT装置42により撮影が行われる都度、X線CT画像撮影機構48により用いられた撮影プロトコルの各パラメータの値または条件と、患者情報とをパラメータ情報管理部22に送信する。
【0022】
以上の構成において、パラメータ情報管理モジュール20と、各医用画像撮影装置内のパラメータ情報入力/表示モジュール32、42および表示デバイス36、46とが、医用画像撮影支援装置として機能する。
【0023】
図2は、MRI装置30の表示デバイス36に表示される撮影プロトコルのパラメータの設定変更用入力ボックス60a、60b、60c、60d、60e、60f、60g、60hの表示例を示す。
【0024】
図2において、設定変更用入力ボックス60aは繰り返し時間(TR)用の設定変更用入力ボックスである。同様に、設定変更用入力ボックス60bはスライス枚数(Slice No.)、設定変更用入力ボックス60cはスライスの厚さ(Slice Thick)、設定変更用入力ボックス60dは励起回数(NAQ)、設定変更用入力ボックス60eは位相エンコード方向のマトリクス数(PE Matrix)、設定変更用入力ボックス60fは位相エンコード方向の撮影スライスの幅(PE FOV)、設定変更用入力ボックス60gは折り返しアーチファクトの防止処理に使う係数(PE No Wrap)、設定変更用入力ボックス60hはフリップ角(Imaging Flip Angle)、をそれぞれ設定するためのものである。
【0025】
各設定変更用入力ボックス60a〜60h内において、右にいくほどそのパラメータの設定数値が大きくなり、下側には、統計情報が太い実線の曲線としてそれぞれグラフ表示されている。この太い実線の曲線が下に落ちている箇所の値ほど、過去の撮影で多く使われた値であることを示す。また、統計情報を示す曲線は、パラメータの設定可能な全ての値の範囲に亘って示される。
【0026】
また、各設定変更用入力ボックス60a〜60h内の曲線近傍には、各パラメータの値を選択するためのカーソル64a、64b、64c、64d、64e、64f、64g、64h(先端の尖った五角形として示した)が表示され、操作者は、この画面上で撮影プロトコルのパラメータの値(または条件)をそれぞれ設定できる。即ち、各パラメータは、カーソル64a〜64hの現在位置の値に設定され、カーソル64a〜64hの現在位置の値は、図2に示すように各曲線の上方に数字として表示される。
【0027】
図3は、MRI装置30により撮影が行われる場合における、医用画像撮影支援システム10内のデータの送受信および統計情報の表示の処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3に示すステップ番号に従って、図1および図2を参照しながら、第1の実施形態の医用画像撮影支援システム10における処理の流れを説明する。
【0028】
[ステップS1]まず、MRI装置30の入力デバイス34(図1参照)に対して、患者情報(氏名、性別、身長、体重、体型、年齢、症状等)の入力と、用いる撮影プロトコルのパラメータの選択とが操作者により行われる。
【0029】
[ステップS2]パラメータ情報入力/表示モジュール32は、入力された患者情報と、選択された撮影プロトコルとをパラメータ統計情報提供部24に送信すると共に、パラメータ統計情報提供部24に対して統計情報の送信を要求する。
【0030】
[ステップS3]パラメータ統計情報提供部24は、MRI装置32が過去に用いた撮影条件をパラメータ保存部26から読み出し、読み出したデータと、患者情報とに基づいて統計情報を作成する。
【0031】
ここでの統計情報は、ステップS1で入力された患者情報と一定の類似範囲にある患者に対しては、ステップS1で選択された撮影プロトコルの各パラメータとして、いくつの値(或いはいかなる条件)がそれぞれ過去に何回用いられたかを示すデータである。ここでの「一定の類似範囲にある患者」とは、例えば、症状が同じであり、身長差が10cm以内であり、体重差が±10%以内にある患者といった意味である。この「類似範囲」については、撮影の目的に応じて予め適切に設定しておいてもよいし、どの程度を類似範囲内とするかを入力デバイス34を介して操作者が選択可能な構成としてもよい。なお、患者情報を考慮せずに(即ち、過去に撮影された全患者を対象として)、選択された撮影プロトコルの各パラメータに対し、いくつの値(或いはいかなる条件)がそれぞれ過去に何回用いられたかに基づいて統計情報を作成してもよい。
【0032】
ここで、図1に示す本実施形態の構成では同一機能の医用画像撮影装置は存在しないが、例えばMRI装置が複数ある場合、本実施形態では、同一機種において過去に用いられた撮影条件のみを統計情報の作成に用いるものとする。機種の違いによって、撮影プロトコルのパラメータを同じ値または条件に設定しても、撮影後の医用画像が異なることが考えられるからである。
【0033】
[ステップS4]パラメータ統計情報提供部24は、作成した統計情報をパラメータ情報入力/表示モジュール32に送信する。
【0034】
[ステップS5]パラメータ情報入力/表示モジュール32は、選択された撮影プロトコルに応じたパラメータの初期値を設定する。ここでの初期値とは、例えば、症例別または用途別に予め所定の条件に設定された撮影プロトコルのパラメータの値であり、ステップS1で入力された患者情報に最も近いものが選択される。
【0035】
また、パラメータ情報入力/表示モジュール32は、撮影プロトコルのパラメータ毎に設定変更用入力ボックス60a〜60hを表示デバイス36に表示させ、設定変更用入力ボックス60a〜60h内に統計情報を表示させる(図2参照)。表示開始の時点において、パラメータ情報入力/表示モジュール32は、前記の初期値の位置にカーソル64a〜64hをそれぞれ表示させ、カーソル64a〜64hによりそれぞれ示される値が「現在のパラメータ値」として統計情報の曲線の上方に表示される。
【0036】
そして、操作者は、入力デバイス34を介して表示デバイス36上のカーソル(64a〜64hのいずれか)を移動させることで、各パラメータの値を変更できる。本実施形態では一例として、操作者が設定した値が、統計情報において最も頻度の高い箇所から一定値以上離れている場合、「よく使われる値とは大分離れた値ですが、構いませんか?」といった確認ウィンドウを表示する。これにより、頻度の低い値に設定されようとしていることを操作者に対して確認する。
【0037】
[ステップS6]設定変更用入力ボックス60a〜60hが表示された状態において、撮影プロトコルのパラメータの値(または条件)が入力デバイス34を介して操作者により決定される。
【0038】
[ステップS7]パラメータ情報入力/表示モジュール32は、前のステップ(S6)で決定された撮影プロトコルと、はじめのステップ(S1)で入力された患者情報とをMRI画像撮影機構38に入力する。そして、入力された撮影条件に基づいて、MRI画像撮影機構38により撮影が行われる。
【0039】
[ステップS8]パラメータ情報入力/表示モジュール32は、ステップS7において行われた撮影の撮影条件をパラメータ情報管理部22に送信する。
【0040】
[ステップS9]パラメータ保存部26は、同一機種の医用画像撮影装置毎に分けて、ステップS8においてパラメータ情報管理部22に送信された撮影条件を保存する。
【0041】
以上が本実施形態の医用画像撮影支援システム10におけるデータの送受信および統計情報の表示処理の流れの説明である。なお、X線CT装置40等の他の医用画像撮影装置による撮影が行われる場合も、データの送受信および統計情報の表示処理の流れは上記の医用画像撮影支援システム10と同様であるので、説明を省略する。
【0042】
このように第1の実施形態では、撮影プロトコルの各パラメータ毎に、設定可能な全ての値の範囲に亘って、過去の撮影で用いられた頻度をグラフとして表示する。このため、パラメータの適正値の範囲が一目で分かると共に、どの程度の値だとあまり用いられない極端な値となるおそれがあるかも一目で分かる。従って、統計情報が撮影プロトコルの設定の目安となるため、非常に分かり易い形式で撮影プロトコルのパラメータの値(または条件)の設定を支援することができる。
【0043】
さらに、操作者が設定したパラメータの値が統計情報において最も頻度の高い箇所から一定値以上離れている場合、確認ウィンドウを表示する(ステップS5)。これにより操作者は、頻度の低い値に設定されようとしていることを確認できるので、極端な値に設定されるおそれが少なくなる。換言すれば、操作者は、設定変更用入力ボックス60a〜60h上でカーソル64a〜64hを移動させながら、確認ウィンドウが表示されない値の範囲を見ることで、どの程度が一般的に用いられる値であるかといった情報を収集できる。
【0044】
なお、第1の実施形態では、操作者が設定した撮影プロトコルのパラメータの値が、統計情報において最も頻度の高い箇所から一定値以上離れていた場合、確認ウィンドウを表示する例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。確認ウィンドウではなく、エラーメッセージを表示する、警告音を発する等の手段に代えてもよい。或いは、最も頻度の高い箇所から離れた値ほど、その位置までのカーソルの動き方を遅くすることで、頻度の低い値に設定されようとしていることを操作者に対して確認するようにしてもよい。
【0045】
また、統計情報については、図2のように曲線の下がり方で頻度を表すのではなく、白黒(無彩色)の濃淡差によって表示してもよい。
【0046】
図4は、MRI装置30の表示デバイス36に表示される撮影プロトコルのパラメータの設定変更用入力ボックス(66a〜66h)の別の表示例を示す。図4において、設定変更用入力ボックス66aは繰り返し時間、設定変更用入力ボックス66bはスライス枚数、設定変更用入力ボックス66cはスライスの厚さ、設定変更用入力ボックス66dは励起回数、設定変更用入力ボックス66eは位相エンコード方向のマトリクス数、設定変更用入力ボックス66fは位相エンコード方向の撮影スライスの幅、設定変更用入力ボックス66gは折り返しアーチファクトの防止処理に使う係数、設定変更用入力ボックス66hはフリップ角、をそれぞれ設定するためのものである。
【0047】
図4の表示例では、各設定変更用入力ボックス66a〜66hの下側において右側ほどパラメータの値が大きい点は図2と同様であるが、その部分の色が白いほど過去の撮影において多く用いられた値であることを示す。反対に、その部分の色が黒いほど、過去の撮影において用いられていない値であることを示す。或いは、図4の表示例のように白黒(無彩色)の濃淡差で頻度を示すのではなく、よく用いられた値ほど赤く表示して、頻度の低い値ほど青く表示する等の有彩色の色の違いによって頻度を表す形式であってもよい。
【0048】
また、ステップS3において、同一機種において過去に用いられた撮影条件のみを統計情報の作成に用いる例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。異なる機種間においては、参考表示として、別の機種において過去に用いられた撮影プロトコルに基づいて作成した統計情報を当該別の機種名と共に参考表示として表示させる構成としてもよい。或いは、統計情報の作成に用いる過去の撮影条件のデータ範囲を、操作している医用画像撮影装置1台のみ、または、その病院内の同機種全体のように選択可能にしてもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の医用画像撮影支援システム10は、図1に示した第1の実施形態のものと構成的には同様であるが、一部の機能のみが異なるので、第1の実施形態との違いのみを説明する。第2の実施形態の主な特徴は、医用画像撮影装置を操作する者の熟練度に関する情報を取得し、この熟練度に応じて統計情報を表示すべきか否かを判定し、必要と判定した場合には統計情報を表示する点にある。
【0050】
そこで第2の実施形態では、医用画像撮影装置毎に例えばランクに分けて、各操作者(例えば医師)の熟練度に関する情報を予めパラメータ情報管理モジュール20に対して登録しておく。この熟練度に関する情報は、例えば、統計情報の表示を必要としない熟練者をランクAとし、ある程度の経験があるが、熟練者ほどではないので、念のため統計情報を表示した方がよい操作者をランクBとし、経験が少なく統計情報を表示した方がよい操作者をランクCとするものである。
【0051】
従って、例えば、脳外科が専門の医師Xは、MRI装置に関してはランクA、X線CT装置に関してはランクB、それ以外の医用画像撮影装置に関してはランクCであり、心療内科が専門の医師Yは全ての医用画像撮影装置に対してランクCである、といった熟練度に関する情報を予め登録しておく。また、この熟練度に関する情報は、パラメータ保存部26に記憶される。
【0052】
図5は、第2の実施形態において、MRI装置30により撮影が行われる場合の医用画像撮影支援システム10内のデータの送受信および統計情報の表示の処理の流れを示すフローチャートである。なお、他の医用画像撮影装置による撮影が行われる場合も、処理の流れは図5と同様である。以下、図5に示すステップ番号に従って、第2の実施形態の医用画像撮影支援システム10における処理の流れを説明する。
【0053】
[ステップS11]まず、図1に示すMRI装置30の入力デバイス34に対して、操作者名および患者情報の入力と、用いる撮影プロトコルのパラメータの選択とが操作者により行われる。この後、ステップS12に進む。
【0054】
[ステップS12]パラメータ情報入力/表示モジュール32(図1参照)は、入力された操作者名および患者情報と、選択された撮影プロトコルとをパラメータ統計情報提供部24に送信する。この後、ステップS13に進む。
【0055】
[ステップS13]パラメータ統計情報提供部24(図1参照)は、ステップS12でのデータの送信元となった医用画像撮影装置名(この例ではMRI装置30)と、操作者名とに基づいて、当該医用画像撮影装置に対する操作者の熟練度を判定する。具体的には、パラメータ統計情報提供部24は、パラメータ保存部26から、その操作者の当該医用画像撮影装置に対する熟練度に関する情報を取得する。取得した熟練度に関する情報がランクBまたはランクCである場合、ステップS16に進み、それ以外の場合、ステップS14に進む。
【0056】
[ステップS14]このステップS14に到達する場合、操作者は、当該医用画像撮影装置に関してはランクAの熟練者であるから、統計情報は作成されない。パラメータ統計情報提供部24は、統計情報の代わりに、熟練者に合わせた初期値のセットを作成し、作成データをパラメータ情報入力/表示モジュール32に送信する。上記「熟練者に合わせた初期値」とは、例えば、その操作者が過去に用いた撮影プロトコルのパラメータ設定履歴をパラメータ保存部26から取得し、その中で最も多く用いられた値(または条件)を初期値として設定するものである。或いは、その操作者が前回に(直前に)使用した値を初期値として設定してもよい。この後、ステップS15に進む。
【0057】
[ステップS15]パラメータ情報入力/表示モジュール32は、上記「熟練者に合わせた初期値」が入力された状態で、撮影プロトコルのパラメータ毎に設定変更用入力ボックス60a〜60hを表示デバイス36に表示させる。操作者は、入力デバイス34を介して表示デバイス36上のカーソル64a〜64hを移動させることで、各パラメータの値を変更できる。この後、ステップS19に進む。
【0058】
[ステップS16〜S21]ステップS16〜S21の処理は、それぞれ、第1の実施形態におけるステップS3〜S8の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
[ステップS22]パラメータ保存部26は、医用画像撮影装置毎に分けて、ステップS21でパラメータ情報管理部22に送信された撮影条件と、ステップS11で入力された操作者名とを関連づけて保存する。
【0060】
以上が第2の実施形態の医用画像撮影支援システム10における各処理の流れの説明である。
【0061】
このように第2の実施形態では、その医用画像撮影装置に対する使用経験が十分ではない操作者(ランクB、Cの操作者)については、統計情報を表示することで第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。一方、熟練者(ランクAの操作者)については、自己の過去のパラメータ設定履歴において最も多く使われた値(または条件)が初期値として設定されるので、設定変更用入力ボックス60a〜60hにおけるパラメータの値(または条件)の変更が少なくて済む可能性がある。即ち、各パラメータの設定に要する時間を短縮しうる。
【0062】
なお、第2の実施形態では、ステップS18において、ランクB、Cの操作者について第1の実施形態と同様に統計情報を表示する例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。例えば、ステップS11で入力された患者情報に症例が含まれる場合、その症例に熟練した操作者が当該医用画像撮影装置を用いた過去の撮影の撮影条件のみに基づいて統計情報を作成し、その統計情報を表示してもよい。この場合、ランクB、Cの操作者であっても、撮影プロトコルの各パラメータをその症例に最適な値(または条件)に設定できる可能性がある。
【0063】
<本発明の補足事項>
第1および第2の実施形態では、パラメータ情報管理モジュール20と、各医用画像撮影装置内のパラメータ情報入力/表示モジュール32、42および表示デバイス36、46とが、医用画像撮影支援装置として機能する例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。パラメータ情報管理モジュール20の機能をMRI装置30などの個々の医用画像撮影装置に内蔵させ、各医用画像撮影装置が医用画像撮影支援装置を実装した構成としてもよい。この場合、第1および第2の実施形態のようなLANケーブル50を介したネットワーク的なデータの送受信は、不要になる。但し、第1および第2の実施形態のように、サーバーとして機能するパラメータ情報管理モジュール20をLANケーブル50を介してネットワーク上に構築する構成の方が、より好ましい。病院全体の各医用画像撮影装置での撮影で用いられた撮影条件のデータに基づいて、即ち、より多くのデータに基づいて統計情報を作成できるからである。
【0064】
最後に、請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
【0065】
パラメータ保存部26は、請求項記載の記憶部の一例である。
【0066】
パラメータ情報提供部24、パラメータ情報入力/表示モジュール32、42、表示デバイス36、46全体での機能(統計情報を作成して表示する機能)は、請求項記載の統計表示部の一例である。
【0067】
パラメータ情報管理モジュール20、パラメータ情報入力/表示モジュール32、42、表示デバイス36、46全体での機能は、請求項記載の医用画像撮影支援装置の一例である。
【0068】
統計情報は、請求項記載の統計的な情報の一例である。
【0069】
パラメータ情報管理モジュール20は、請求項記載のサーバーの一例である。
【0070】
パラメータ情報入力/表示モジュール32、42、表示デバイス36、46全体での機能(送信された統計情報を表示する機能)は、請求項記載の表示部の一例である。
【符号の説明】
【0071】
10 医用画像撮影支援システム
20 パラメータ情報管理モジュール
22 パラメータ情報管理部
24 パラメータ統計情報提供部
26 パラメータ保存部
30 MRI装置
32 パラメータ情報入力/表示モジュール
34 入力デバイス
36 表示デバイス
38 MRI画像撮影機構
40 X線CT装置
42 パラメータ情報入力/表示モジュール
44 入力デバイス
46 表示デバイス
48 X線CT画像撮影機構
50 LANケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮影装置が用いられた過去の撮影の撮影条件情報を記憶している記憶部と、
前記記憶部から前記撮影条件情報を取得して、前記撮影条件情報を撮影条件のパラメータ毎に統計的な情報にして表示する統計表示部と
を備えていることを特徴とする医用画像撮影支援装置。
【請求項2】
前記統計表示部は、過去の撮影に用いられた頻度を示すグラフとして、前記統計的な情報を表示することを特徴とする請求項1記載の医用画像撮影支援装置。
【請求項3】
前記統計表示部は、前記医用画像撮影装置を操作する者の熟練度に関する情報を取得し、前記熟練度に関する情報に応じて前記統計的な情報を表示する必要性を判定し、必要と判定した場合には前記統計的な情報を表示することを特徴とする請求項1記載の医用画像撮影支援装置。
【請求項4】
少なくとも1つの医用画像撮影装置に接続され、前記医用画像撮影装置が用いられた撮影の撮影条件情報を前記医用画像撮影装置から取得して記憶し、前記医用画像撮影装置毎に且つ撮影条件のパラメータ毎に過去の前記撮影条件情報の統計的な情報を作成し、前記統計的な情報をこれに対応する前記医用画像撮影装置に送信することを特徴とする医用画像撮影支援システムのサーバー。
【請求項5】
少なくとも1つの医用画像撮影装置に接続され、前記医用画像撮影装置が用いられた撮影の撮影条件情報を前記医用画像撮影装置から取得して記憶し、前記医用画像撮影装置毎に且つ撮影条件のパラメータ毎に過去の前記撮影条件情報の統計的な情報を作成し、前記統計的な情報をこれに対応する前記医用画像撮影装置に送信するサーバーと、
前記医用画像撮影装置に送信された前記統計的な情報を取得して表示する表示部と
を備えていることを特徴とする医用画像撮影支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−104041(P2011−104041A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260982(P2009−260982)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】