説明

医用画像診断装置

【課題】X線CT装置において、患者にとって快適なスキャンを実現できる共に、生理現象に起因するスキャンのやり直しや患者への不要被曝を回避すること。
【解決手段】X線CT装置1は、被検体Oを載置可能な天板28と、天板28に載置された被検体Oによって操作可能な範囲内に設置され、スキャンの待機期間の開始を示す待機期間開始を少なくとも指示するスイッチ33とを備え、スキャンの待機期間の経過後、スキャンを実行し、スキャンによって収集されるデータを基に画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の画像情報を生成する医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場においては、様々な種類の医用画像診断装置が従来から使用されている。X線CT(computed tomography)装置、MRI(magnetic resonance imaging)装置、超音波診断装置、X線診断装置及び核医学診断装置等が医用画像診断装置の代表的な例である。
【0003】
医用画像診断装置の一例としてのX線CT(computed tomography)装置は、被検体を透過したX線の強度に基づいて、被検体についての情報を画像により提供するものであり、疾病の診断・治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。
【0004】
X線CT装置は、周知のとおり、被検体を挟んで対向配置されたX線管及びX線検出器を備えており、X線管及びX線検出器を被検体に対して相対回転させながらX線の照射及び検出を行なうCT撮影を実行する。そして、CT撮影の過程でX線減衰度合い(被検体によるX線吸収度合い)を示す投影データを回転角度毎に収集し、得られた投影データに基づいて被検体の断層画像(CT画像)が生成される。
【0005】
ここで、X線CT装置によるCT撮影(スキャン)の途中で、呼吸運動等の被検体の体動に伴って臓器等の撮影対象部位が動くと、最終的に得られるCT画像にアーチフェクトが発生する。そこで、従来から、被検体の呼吸運動に基づく呼吸信号を検出し、呼吸に起因する臓器の動き等がほぼ静止しているとみなせる位相に合わせてCT撮影を行なう呼吸同期スキャン等が提案されている(例えば、特許文献1−3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−139892号公報
【特許文献2】特開2006−311941号公報
【特許文献3】特開2009−213533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のX線CT装置には、患者側でスキャンの開始を待機させる機能がない。よって、従来のX線CT装置を用いてスキャンを行なう場合、天板に載置されたスキャン直前の患者は、制御室に居る操作者に意思(「咳及びくしゃみ等の生理現象で自身の体が動きそう」や「自身の体の周期的な動きが止まりそう」)を伝えられないままスキャン終了まで咳やくしゃみ等の生理現象を我慢する必要があり、患者にとって不自由があった。
【0008】
一方で、従来のX線CT装置を用いて呼吸同期スキャンを行なう場合、スキャン直前の患者が生理現象を我慢できず生理現象を起こしてしまうと、その生理現象に起因する異常呼吸が生じ、呼吸同期スキャンが失敗することがあった。呼吸同期スキャンが失敗すると、スキャンのやり直しが発生し、患者への負担が増えるという問題があった。特に、X線を用いるX線CT装置でスキャンのやり直しをすると、患者への不要被曝の問題もあった。
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、患者にとって快適なスキャンを実現できる共に、生理現象に起因するスキャンのやり直しや患者への不要被曝を回避できるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るX線CT装置は、上述した課題を解決するために、被検体を載置可能な載置手段と、前記載置手段に載置された前記被検体によって操作可能な範囲内に設置され、スキャンの待機期間の開始を示す待機期間開始を少なくとも指示する操作手段と、前記待機期間の経過後、前記スキャンを実行するスキャン実行手段と、前記スキャンによって収集されるデータを基に画像を生成する画像生成手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るX線CT装置によると、患者にとって快適なスキャンを実現できる共に、生理現象に起因するスキャンのやり直しや患者への不要被曝を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のX線CT装置を示すハードウェア構成図。
【図2】本実施形態のX線CT装置のスイッチの第1の配置例を示すX線CT装置の斜視図。
【図3】本実施形態のX線CT装置のスイッチの第2の配置例を示す天板の上面図。
【図4】本実施形態のX線CT装置の動作を示すフローチャート。
【図5】呼吸信号(呼吸波形)と、呼吸同期スキャンの待機期間との関係を説明するための図。
【図6】呼吸同期スキャンの待機期間を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る医用画像診断装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、医用画像診断装置の一例としてのX線CT装置を用いて説明する。
【0014】
本実施形態のX線CT装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0015】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。
【0016】
加えて、近年では、X線管とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本実施形態のX線CT装置では、従来からの一管球型のX線CT装置であっても、多管球型のX線CT装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型のX線CT装置として説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のX線CT装置を示すハードウェア構成図である。
【0018】
図1は、本実施形態のX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、大きくは、スキャナ装置11及び画像処理装置12から構成される。X線CT装置1のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、被検体(人体)Oの撮影部位に関するX線の透過データを生成するために構成される。一方、画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
【0019】
X線CT装置1のスキャナ装置11は、X線管21、X線検出器22、絞り23、メインコントローラ24、高電圧発生装置25、絞り駆動装置26、回転駆動装置27、天板28、天板駆動装置(寝台装置)29、DAS(data acquisition system)30、呼吸検出器31、アームアップホルダ32、被検体操作部材、例えばスイッチ33、及びIF(interface)34a,34bを設ける。
【0020】
X線管21、X線検出器22、絞り23及びDAS30は、スキャナ装置11の架台(図示しない)の回転部Rに保持される。回転部Rは、X線管21とX線検出器22とを対向させた状態で、X線管21、X線検出器22、絞り23及びDAS30を一体として被検体Oの周りに回転できるように構成されている。
【0021】
X線管21は、高電圧発生装置25から供給された管電圧に応じてX線をX線検出器22に向かって照射する。X線管21から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。
【0022】
X線検出器22は、チャンネル方向に複数行、スライス方向(列方向)に1列のX線検出素子を有する1次元アレイ型のX線検出器である。又は、X線検出器22は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数行、スライス方向に複数列のX線検出素子を有する2次元アレイ型のX線検出器22(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出器22は、X線管21から照射されたX線を検出する。
【0023】
絞り23は、絞り駆動装置26によって、X線管21から照射されるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置26によって絞り23の開口を調整することによって、スライス方向のX線照射範囲を変更できる。
【0024】
メインコントローラ24は、画像処理装置12からIF34aを介して入力された制御信号に基づいて、高電圧発生装置25、絞り駆動装置26、回転駆動装置27、及びDAS30等の制御を行なって、呼吸同期スキャンを行なわせる。呼吸同期スキャンは、後述する呼吸信号に基づく被検体Oの呼吸位相を認識してX線検出器22のスライス方向の幅分移動させる毎に天板28を停止させ、任意の呼吸位相のみで撮影を行なう方法である。
【0025】
高電圧発生装置25は、メインコントローラ24による制御によって、X線の照射に必要な電力をX線管21に供給する。高電圧発生装置25は、図示しない高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器及び高電圧切替器等によって構成される。
【0026】
絞り駆動装置26は、メインコントローラ24による制御によって、絞り23におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。
【0027】
回転駆動装置27は、メインコントローラ24による制御によって、回転部Rがその位置関係を維持した状態で空洞部の周りを回転するように回転部Rを回転させる。
【0028】
天板28は、被検体Oを載置可能である。
【0029】
天板駆動装置29は、メインコントローラ24による制御によって、天板28をz軸方向に沿って移動させる。回転部Rの中央部分は開口を有し、その開口部の天板28に載置された被検体Oが挿入される。なお、回転部Rの回転中心軸と平行な方向をz軸方向、そのz軸方向に直交する平面をx軸方向、y軸方向で定義する。
【0030】
DAS30は、X線検出器22の各X線検出素子が検出する透過データの信号を増幅してデジタル信号に変換する。DAS30の出力データは、スキャナ装置11のIF34bを介して画像処理装置12に供給される。
【0031】
呼吸検出器31は、被検体Oに装着される。呼吸検出器31は、被検体Oの呼吸による体表の動きを捉えて電気信号としての呼吸信号を生成し、増幅し、増幅信号から雑音を除去してデジタル信号に変換する。呼吸検出器31は、デジタル化された呼吸信号をメインコントローラ24に送る。
【0032】
アームアップホルダ32は、被検体Oを載置する天板28に脱着可能に装着される。アームアップホルダ32は、図3に示すように、被検体Oの胸部等をスキャンする場合に、被検Oの手に握持させることで腕を胸部から離すために用いられる。
【0033】
スイッチ33は、天板28に載置された被検体Oによって操作可能な範囲内に設置される。
【0034】
図2は、本実施形態のX線CT装置1のスイッチ33の第1の配置例を示すX線CT装置1の斜視図である。図3は、本実施形態のX線CT装置1のスイッチ33の第2の配置例を示す天板28の上面図である。
【0035】
図2及び図3に示すように、天板28に載置された被検体Oによって操作可能な範囲内に、スイッチ33としてのスイッチ33a,33b,33c,33dのうち少なくとも1つが設置される。スイッチ33は、少なくともスキャンの待機期間開始をメインコントローラ24に指示する。
【0036】
図2に示すように、スイッチ33aは、被検体Oの手によって握持可能なハンディタイプであり、無線通信又は有線通信を介してメインコントローラ24に指示を送る。
【0037】
スイッチ33bは、被検体Oを載置する天板28の側面に設置され、メインコントローラ24に指示を送る。
【0038】
スイッチ33cは、天板28が進退される空洞を有する架台(ガントリ)Gの外壁に設置され、メインコントローラ24に指示を送る。スイッチ33cは、天板28が進退する軌跡に近く、その軌跡の上方の外壁に設置されることが望ましい。
【0039】
図3に示すように、スイッチ33dは、被検体Oを載置する天板28に脱着可能なアームアップホルダ32に設置され、無線通信又は有線通信を介してメインコントローラ24に指示を送る。
【0040】
なお、図1乃至図3を用いて、被検体操作部材をスイッチ33として説明したがその場合に限定されるものではない。例えば、他の被検体操作部材として、光(可視光又は赤外光)センサや熱センサ等のセンサが挙げられる。
【0041】
図1に示すIF34a,34bは、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによってそれぞれ構成され、各規格に応じた通信制御を行なう。IF34a,34bは画像処理装置12と通信を行なうものであり、画像処理装置12のIF44a,44bにそれぞれ接続される。
【0042】
X線CT装置1の画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークNと相互通信可能である。画像処理装置12は、大きくは、CPU(central processing unit)41、メモリ42、HDD(hard disc drive)43、IF44a,44b,44c、入力装置45及び表示装置46等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、画像処理装置12を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、画像処理装置12は、記録媒体ドライブ47を具備する場合もある。
【0043】
CPU41は、半導体で構成された電子回路が複数の端子を持つパッケージに封入されている集積回路(LSI)の構成をもつ制御装置である。医師等のオペレータによって入力装置45が操作等されることにより指令が入力されると、CPU41は、メモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HDD43に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されIF44cで受信されてHDD43にインストールされたプログラム、又は記録媒体ドライブ47に装着された記録媒体から読み出されてHDD43にインストールされたプログラムを、メモリ42にロードして実行する。
【0044】
メモリ42は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備える構成をもつ記憶装置である。内部記憶装置は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いられたりする。
【0045】
HDD43は、磁性体を塗布又は蒸着した金属のディスクが着脱不能で内蔵されている構成をもつ記憶装置である。HDD43は、画像処理装置12にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、オペレータに対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置45によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0046】
IF44a,44b,44cは、パラレル接続仕様やシリアル接続仕様に合わせたコネクタによってそれぞれ構成され、各規格に応じた通信制御を行なう。IF44a,44bはスキャナ装置11と通信を行なうものであり、スキャナ装置11のIF34a,34bにそれぞれ接続される。また、IF44cは、ネットワークNに接続することができる機能を有しており、これにより、画像処理装置12は、IF44cからネットワークN網に接続することができる。
【0047】
入力装置45は、オペレータによって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0048】
表示装置46は、図示しない画像合成回路、MUX(multiplexer)、保存用メモリ、表示用メモリ(VRAM:video random access memory)、D/A(digital to analog)変換回路、ビデオエンコーダ及びモニタ等を含んでいる。画像合成回路は、再構成画像等を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成した表示データを生成し、その表示データをMUXに出力する。MUXは、保存用メモリへの出力と表示用メモリへの出力との競合によるモニタ上の表示のちらつきを回避するために表示データの出力を適宜切替える。保存用メモリは、MUXから出力される再構成画像毎の各表示データを、AVI(audio video interleaving)ファイル等の動画ファイルとして記憶する。一方、MUXから出力される再構成画像をイメージデータとして一時的に記憶する。
【0049】
D/A変換回路は、MUX又はVRAMから出力された表示データを、アナログ信号に変換する。ビデオエンコーダは、表示データに所定のエンコード処理を施し、モニタにビデオ信号として出力する。モニタは、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成され、表示データを順次表示する。
【0050】
記録媒体ドライブ47は、記録媒体の着脱が可能となっており、記録媒体に記録されたデータ(プログラムを含む)を読み出して、バス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記録媒体に書き込む。このような記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0051】
画像処理装置12は、スキャナ装置11のDAS30から入力された呼吸同期スキャンにおける生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理(前処理)を行なって投影データを生成する。また、画像処理装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。画像処理装置12は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。画像処理装置12は、補正された投影データを基に再構成画像を生成する。
【0052】
続いて、本実施形態のX線CT装置1の動作を図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0053】
天板28に被検体Oが載置された後、X線CT装置1のメインコントローラ24(又はCPU41)は、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間開始の指示があるか否かを判断する(ステップST1)。ステップST1の判断にてYES、すなわち、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間開始の指示があると判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの待機期間を開始させる(ステップST2)。
【0054】
次いで、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの開始を待機させるための所定期間が予めX線CT装置1に記憶されているか否かを判断する(ステップST3)。ステップST3の判断にてYES、すなわち、呼吸同期スキャンの開始を待機させるための所定期間が予めX線CT装置1に記憶されていると判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの待機期間開始から、記憶された所定期間が経過したか否かを判断する(ステップST4)。ステップST4の判断にてYES、すなわち、呼吸同期スキャンの待機期間開始から所定期間が経過したと判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの待機期間を終了させる(ステップST5)。
【0055】
次いで、操作者による入力装置45からの呼吸同期スキャンの実行指示があるか否かを判断する(ステップST6)。ステップST6の判断にてYES、すなわち、呼吸同期スキャンの実行指示があると判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンを開始させ、呼吸同期スキャンを実行する(ステップST7)。一方、ステップST6の判断にてNO、すなわち、呼吸同期スキャンの実行指示がないと判断する場合、メインコントローラ24は、操作者による入力装置45からの呼吸同期スキャンの実行指示があるまでステップST7の判断を続ける。
【0056】
ステップST3の判断にてNO、すなわち、呼吸同期スキャンの開始を待機させるための所定期間が予めX線CT装置1に記憶されていないと判断する場合、メインコントローラ24は、スイッチ33からスキャンの待機期間終了の指示があるか否かを判断する(ステップST8)。ステップST8の判断にてYES、すなわち、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間終了の指示があると判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの待機期間を終了させる(ステップST5)。
【0057】
ここで、ステップST2の呼吸同期スキャンの待機期間開始からステップST5の呼吸同期スキャンの待機期間終了までの待機期間中、X線CT装置1は、呼吸同期スキャンの実行が許容されない状態にある。呼吸同期スキャンの待機期間中に、制御室内の操作者による入力装置45からの呼吸同期スキャンの実行指示があっても、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンを実行させない。なお、メインコントローラ24は、ステップST2の呼吸同期スキャンの待機期間開始からステップST5の呼吸同期スキャンの待機期間終了までの待機期間中、制御室の表示装置46やスピーカ(図示しない)等から、呼吸同期スキャンの実行が許容されないことを操作者に報知するように構成してもよい。
【0058】
一方、ステップST1の判断にてNO、すなわち、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間開始の指示がないと判断する場合、メインコントローラ24は、操作者による入力装置45からの呼吸同期スキャンの実行指示があるか否かを判断する(ステップST6)。ステップST4の判断にてNO、すなわち、呼吸同期スキャンの待機期間開始から所定期間が経過していないと判断する場合、メインコントローラ24は、呼吸同期スキャンの待機期間開始から所定期間が経過するまでステップST4の判断を続ける。ステップST8の判断にてNO、すなわち、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間終了の指示がないと判断する場合、メインコントローラ24は、スイッチ33から呼吸同期スキャンの待機期間終了の指示があるまでステップST8の判断を続ける。
【0059】
図5は、呼吸信号(呼吸波形)と、呼吸同期スキャンの待機期間との関係を説明するための図である。
【0060】
被検体Oに咳及びくしゃみ等の生理現象が起きる場合、被検体Oの体が動いたり、被検体Oの体の周期的な動きが止まったりするので、図5の中央部分に示すように、呼吸波形に異常が生じる。その場合、異常波形によって、呼吸同期スキャンが正確に行なえない。
【0061】
図6は、呼吸同期スキャンの待機期間を説明するための図である。
【0062】
被検体Oは、咳及びくしゃみ等の生理現象で自身の体が動きそうな場合や、自身の体の周期的な動きが止まりそうな場合に、事前にボタン33を押圧する。そして、被検体Oは、生理現象が止まったと判断すると、押圧されたスイッチ33を押圧解除する。この場合、ステップST8では図6の上段のモードIに示すように、スイッチ33が押圧された呼吸同期スキャンの待機期間開始から、押圧されたスイッチ33が押圧解除された呼吸同期スキャンの待機期間終了までを呼吸同期スキャンの待機期間と判断する。
【0063】
又は、被検体Oは、生理現象で自身の体が動きそうな場合や、自身の体の周期的な動きが止まりそうな場合に、事前にボタン33を押圧・押圧解除する。そして、被検体Oは、生理現象が止まったと判断すると、スイッチ33を再び押圧・押圧解除する。この場合、ステップST8では図6の中段のモードIIに示すように、スイッチ33が押圧解除された呼吸同期スキャンの待機期間開始から、スイッチ33が再び押圧解除された呼吸同期スキャンの待機期間終了までを呼吸同期スキャンの待機期間と判断する。
【0064】
また、被検体Oは、生理現象で自身の体が動きそうな場合や、自身の体の周期的な動きが止まりそうな場合に、事前にボタン33を押圧・押圧解除する。この場合であってステップST2の判断にて予め所定期間が設定される場合、ステップST4では図6の下段のモードIIIに示すように、スイッチ33が押圧解除された呼吸同期スキャンの待機期間開始から、呼吸同期スキャンの待機期間開始から予め設定される所定期間後の呼吸同期スキャンの待機期間終了までを呼吸同期スキャンの待機期間と判断する。なお、ステップST4では、スイッチ33からの呼吸同期スキャンの待機期間終了の指示に関わらず、呼吸同期スキャンの待機期間開始から予め設定される所定期間後を呼吸同期スキャンの待機期間終了とする。
【0065】
図6に示すモードI,IIによると、被検体Oが自覚できる体動や周期運動の乱れがある期間(待機期間)を被検体O自身が設定することで、被検体Oの体動や周期運動の乱れを避けて呼吸同期スキャンを実行することができる。また、モードIIIによると、被検体Oが自覚できる体動や周期運動の乱れの開始(待機期間開始)を被検体O自身が設定することで、被検体Oの体動や周期運動の乱れを避けて呼吸同期スキャンを実行することができると共に、被検体Oが設定する呼吸同期スキャンの待機期間終了に基づく長すぎる待機期間によって造影タイミングを逃す危険性を回避できる。
【0066】
なお、本実施形態では、X線CT装置1を用いて説明したが、本発明はX線CT装置に限定されるものではない。例えば、本発明は、呼吸同期スキャンを伴うMRI装置等であってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、呼吸同期スキャンの場合における待機期間を設定するものとして説明したが、本発明はその場合に限定されるものではない。例えば、本発明は、ヘリカルスキャンしながら呼吸位相の情報を同時に収集し任意の呼吸位相のデータから画像再構成を行なう、呼吸同期再構成を行なうためのスキャンにも応用できる。呼吸同期スキャンと呼吸同期再構成を行なうためのスキャンとは、症例や受診者の状態に応じて選択が可能である。また、例えば、本発明は、呼吸同期スキャンや呼吸同期再構成を行なうためのスキャンでは必須の呼吸検出器31を備えない、呼吸同期の不要なX線CT装置にも応用できる。
【0068】
従来のX線CT装置では、制御室の操作者には検査室の被検体Oの意思(「咳及びくしゃみ等の生理現象で自身の体が動きそう」や「自身の体の周期的な動きが止まりそう」)は伝わらず、検査室の被検体Oの意思に反して制御室の操作者によってスキャンが開始されていた。しかしながら、本実施形態のX線CT装置1によると、制御室の操作者に検査室の被検体Oの必要最小限の意思を伝えることができるので、患者にとって快適なスキャンを実現できる共に、生理現象に起因するスキャンのやり直しや患者への不要被曝を回避できる。
【符号の説明】
【0069】
1 X線CT装置
11 スキャナ装置
12 画像処理装置
21 X線管
22 X線検出器
24 メインコントローラ
28 天板
31 呼吸検出器
32 アームアップホルダ
33,33a,33b,33c,33d スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を載置可能な載置手段と、
前記載置手段に載置された前記被検体によって操作可能な範囲内に設置され、スキャンの待機期間の開始を示す待機期間開始を少なくとも指示する操作手段と、
前記待機期間の経過後、前記スキャンを実行するスキャン実行手段と、
前記スキャンによって収集されるデータを基に画像を生成する画像生成手段と、
を有することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記被検体の呼吸信号を取得する手段をさらに有し、
前記スキャン実行手段は、前記呼吸信号を基に呼吸同期スキャンを実行することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記操作手段がハンディタイプであることを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記操作手段を、前記載置手段に脱着可能なアームアップホルダに設置することを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記操作手段を、前記載置手段に設置することを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記載置手段が進退される空洞を有する架台をさらに有し、
前記操作手段を、前記架台の外壁に設置することを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記操作手段をスイッチとすることを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記スキャン実行手段は、前記スイッチが押圧された前記待機期間開始から、前記押圧されたスイッチが押圧解除された待機期間終了までを前記待機期間とすることを特徴とする請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記スキャン実行手段は、前記スイッチが押圧された前記待機期間開始から、前記待機期間開始から所定期間後としての待機期間終了までを前記待機期間とすることを特徴とする請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記スキャン実行手段は、1度押圧された前記スイッチが押圧解除された前記待機期間開始から、再び押圧された前記スイッチが押圧解除された待機期間終了までを前記待機期間とすることを特徴とする請求項7に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記操作手段を光センサ、又は熱センサとすることを特徴とする請求項3乃至6のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記待機期間中、前記呼吸同期スキャンの実行が不能なことを操作者に報知する手段をさらに有することを特徴とする請求項8乃至11のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−120776(P2011−120776A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281774(P2009−281774)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】