説明

医療のためのコンパクトな加速器

コンパクトで小さいスケールの構造を有する一体化された粒子生成線形加速器を備えるコンパクトな加速器システムである。このコンパクトな加速器システムは、エネルギの大きな(〜70−250MeV)陽子ビームもしくは他の原子核を生成することができ、また、遠隔ビーム移送においては大抵の場合必要とされてきた偏向マグネットや他のハードウエアを必要とすることなしに、医療を受ける患者に向けてビームを移送することができる。一体化された粒子生成加速器を支持構造上で一体として駆動することができ、これにより粒子生成加速器の方向駆動による粒子ビームの走査が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線形加速器に関し、特に絶縁壁に沿って加速パルスを供給するように高い勾配で動作するコンパクトな誘電壁加速器およびパルス形成線、ならびにコンパクトな一体駆動を実現するために加速器と一体化される荷電粒子生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、米国エネルギ省およびローレンス・リヴァーモア国立研究所を附属機関とするカリフォルニア大学(University of California)との間の契約書番号W−7405−ENG−48に従い、本発明の権利を保有する。
【0003】
本願は、2005年1月14日に提出された先の出願(番号11/036431)の一部継続出願である。出願番号11/036431は、2004年1月15日に提出された仮出願(番号60/536943)の利益を享受する。本願は、2005年10月24日に提出された米国仮出願(番号60/730128、60/730129および60/730161)および2006年5月4日に提出された米国仮出願(番号60/798016)の利益も享受する。これら全ての先の出願は本明細書において参照により開示される。
【0004】
粒子加速器は、電子、陽子もしくは帯電した原子核などの帯電した素粒子のエネルギを高めるために使用されており、これにより核物理学者や素粒子物理学者は、それらの素粒子を研究することができる。高いエネルギを有する帯電した素粒子を加速して標的原子に衝突させる。その結果得られる生成物を検出器によって観測する。エネルギが非常に高ければ、荷電粒子は標的原子の原子核を壊すことができ、また他の粒子と相互作用することもできる。そこでは物質の根源的な構成要素の性質や振る舞いを窺わせるような変化が起こる。粒子加速器は核融合装置の開発への応用や癌の治療などの医療への応用においても重要なツールである。
【0005】
粒子加速器の一形態がカーダーに付与された米国特許第5757146号に開示されている。米国特許第5757146号は本明細書において参照により開示される。米国特許第5757146号は、荷電粒子を加速するために高速電気パルスを生成する方法を提供する。カーダー特許においては、誘電壁加速器(DWA)システムが示されている。誘電壁加速器(DWA)システムは、スイッチされると高電圧を生成する一連の積層された円板状モジュールからなる。これらのモジュールのそれぞれは非対称ブルームライン(Blumlein)と呼ばれ、本明細書において参照により開示される米国特許第2465840号に開示されている。カーダー特許の図4A−4Bに最も良く示されているように、ブルームラインはふたつの異なる誘電体層から構成される。2本の平行平板径方向伝送線を形成する導体が、2つの誘電体層の間とそのそれぞれの表面に設けられる。この構成の一方は遅い線と呼ばれ、他方は速い線と呼ばれる。遅い線と速い線との間に位置する中心電極には最初高い電位が与えられる。それらの2つの伝送線は反対の極性を有するので、ブルームラインの内径(ID)と交差する方向には正味の電圧は発生しない。沿面フラッシオーバもしくは同様のスイッチによって構成の外側を短絡させると、2つの極性反転波が作り出され、その波はブルームラインのIDに向けて径方向内向きに進行する。速い線の波は遅い線の波よりも早く構成のIDに到達する。速い(線の)波が構成のIDに到達すると、その線においてのみそこでの極性が反転され、非対称ブルームラインのIDと交差する方向に正味の電圧が生じる。この高電圧は遅い線の波がIDに到達するまで持続する。加速器の場合、この期間中に荷電粒子ビームを入射して加速することができる。カーダー特許のDWA加速器はこのようにして構成全体に亘って連続する軸方向の加速電場を提供し、高い加速勾配を達成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらカーダーのDWAのような既存の誘電壁加速器には、ビームの質やパフォーマンスに影響を与えうる生来的な問題がある。特にカーダーDWAのディスク形状にはいくつかの問題がある。荷電粒子の加速のために使用する場合、このような円板形状ではデバイス全体が最適化されているとは言えない。中心孔を有する平坦な平板導体という構成では、伝搬する波面がその中心孔に向けて径方向で収束してしまう。そのような構成では、波面は出力パルスを歪めうる不定のインピーダンスの影響を受け、電場を通過する荷電粒子ビームに既定の時間依存性を有するエネルギ利得が与えられることが妨害される。むしろそのような構成によって生じた電場を通過する荷電粒子ビームには、時間に対して一様でないエネルギ利得が与えられる。これは、加速器システムが適切にそのようなビームを搬送することを妨げ、そのようなビームの利用範囲を狭めうる。
【0007】
加えて、そのような構成のインピーダンスは要求されるよりも極めて低い可能性がある。例えば、必要とされる加速勾配を維持しつつミリアンペアオーダーもしくはそれ以下のビームを生成することがたいていの場合特に好ましい。カーダーのディスク形状ブルームライン構成では、システムに過度の電気的なエネルギが蓄えられ得る。これは電気的に非効率的であることは明らかでり、その上システム開始時にビームに伝達されなかったエネルギは全てその構成に残存しうる。そのような過度のエネルギはデバイス全体のパフォーマンスや信頼性にとって有害でありえ、システムの初期不良の原因となりうる。
【0008】
加えて、中心孔を有する平坦な平板導体(例えば、ディスク形状)には、電極の外側の周が非常に長くなるという生来的な問題がある。その結果、構成の動作を開始させる並列に設けられるスイッチの数は、その周によって決定される。例えば、10nsより短いパルスを生成するために使用される直径6インチのデバイスには、ディスク形状の非対称ブルームライン層ごとに少なくとも10個のスイッチサイトが典型的には必要となる。長い加速パルスが必要とされる場合にはかかる問題はより深刻となる。このディスク形状のブルームライン構成における出力パルスの長さは、中心孔からの径方向長さと比例的な関係があるからである。したがって、長いパルス幅が要求される場合、それに対応してスイッチサイトの数を増やす必要がある。スイッチをオンするためにレーザや他の同様のデバイスを使用することが好ましいことを考えると、非常に複雑な配置配線システムが必要とされる。さらには、長いパルスのための構成は、大きな誘電体シートを必要とするのであるが、これは製造が難しい。また、そのような大きな誘電体シートは構成の重量も増加させうる。例えば、現構成では、50nsのパルスを生成するデバイスは1メートル当たり数トン程度となりうる。長パルス生成に関わるこのような不利な点のいくつかは、非対称ブルームラインに含まれる全ての3つの導体に渦巻き状の溝を設けることによって緩和されうる。しかしながら、これは破壊的干渉性の層間結合を引き起こして動作を妨げうる。つまり、構成の出力には、ステージごとに非常に低減されたパルス振幅(したがってエネルギ)が現れうる。
【0009】
加えて、特に陽子線を用いた癌の治療などの医療への応用を目的として種々の加速器が開発されている。例えば、コールに付与された米国特許第4879287号は、カリフォルニアのロマ・リンダにあるロマ・リンダ大学陽子加速設備で使用されているマルチステーション陽子線治療システムを開示する。このシステムでは、粒子源の生成は設備のある場所で行われ、加速は設備の別の場所で行われ、患者は設備のさらに別の場所に配置される。粒子源と加速と標的とが互いに離れているので、大きくてかさばる偏向マグネットを備える複雑なガントリシステムを使用して粒子が移送される。医療用として知られている他の代表的なシステムが、べーチェに付与された米国特許第6407505号およびブロッサーに付与された米国特許第4507616号に開示されている。べーチェ特許では、定在波RF線形加速器が示され、ブロッサー特許では、支持構造に回転可能に取り付けられた超伝導サイクロトロンが示される。
【0010】
さらには、空間中で低圧ガスからプラズマ放電を生成するイオン源が知られている。この空間からイオンが抽出され、加速のために加速器に対してコリメートされる。これらのシステムは一般的には0.25A/cm2より小さい電流密度しか抽出できない。この低い電流密度は、抽出インタフェースにおけるプラズマ放電の密度に部分的に起因している。従来知られているイオン源の一例が、レアン他に付与された米国特許第6985553号に開示されている。そのイオン源は、イオンの極短パルスを生成する抽出システムを有する。他の例がワーリンに付与された米国特許第6759807号に示されている。ワーリンは、抽出グリッドと加速グリッドと集束グリッドとシールドグリッドとを有し高度にコリメートされたイオンビームを生成する多グリッドイオンビーム源を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様はコンパクトな加速器システムを含む。この加速器システムは、支持構造と、加速軸を横切る方向に延伸する少なくともひとつの伝送線を有するコンパクトな線形加速器と、コンパクトな線形加速器に接続され荷電粒子ビームを生成してコンパクトな線形加速器へ加速軸に沿って入射させる荷電粒子生成器と、を含む一体化された粒子生成加速器であって支持構造に駆動可能に取り付けられた一体化された粒子生成加速器と、入射したビームにエネルギを与える加速軸に沿ったパルス勾配を印加するために、コンパクトな線形加速器の伝送線を通して少なくともひとつの電気的な波面を伝搬させる、高い電位に接続可能なスイッチ手段と、エネルギを与えられたビームが向けられる方向を制御し、それにより生成されるビームスポットの位置を制御するために一体化された粒子生成加速器を駆動する手段と、を備える。
【0012】
本発明の別の態様は荷電粒子生成器を含む。この荷電粒子生成器は、絶縁材料、半絶縁材料および半導体材料からなる集合から選択された架橋材料によって架橋された少なくともふたつの電極を有するパルス型イオン源と、所望のイオン種を原子もしくは分子の形で有し、電極のうちの少なくともひとつに隣接して配置される原材料と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
開示に組み入れられ開示の一部をなす添付の図は以下の通りである。
【0014】
図1は、本発明のコンパクトな加速器のひとつのブルームラインモジュールの第1の実施の形態を示す側面図である。
【0015】
図2は、図1のひとつのブルームラインモジュールを示す平面図である。
【0016】
図3は、一緒に積み重ねられたふたつのブルームラインモジュールを有するコンパクトな加速器の第2の実施の形態を示す側面図である。
【0017】
図4は、本発明のひとつのブルームラインモジュールの第3の実施の形態を示す平面図である。このブルームラインモジュールは、そのモジュールの他の層よりも小さな幅を有する中間導体ストリップを有する。
【0018】
図5は、図4の線4に沿う拡大断面図である。
【0019】
図6は、コンパクトな加速器の別の実施の形態を示す上面図である。この図には、中央の加速領域を周方向に囲み、当該領域に向けて径方向に延伸するふたつのブルームラインモジュールが示される。
【0020】
図7は、図6の線7に沿う断面図である。
【0021】
図8は、コンパクトな加速器の別の実施の形態を示す上面図である。この図には、中央の加速領域を周方向に囲み、当該領域に向けて径方向に延伸するふたつのブルームラインモジュールが示される。一方のモジュールの平板導体ストリップは他方のモジュールの対応する平板導体ストリップとリング電極によって接続される。
【0022】
図9は、図8の線9に沿う断面図である。
【0023】
図10は、本発明の別の実施の形態を示す上面図である。この実施の形態は、それぞれが対応するスイッチと接続された4つの非直線状ブルームラインモジュールを有する。
【0024】
図11は、本発明の、図10と似た別の実施の形態を示す上面図である。この実施の形態は、4つの非直線状ブルームラインモジュールのそれぞれを、そのそれぞれの第2の端部において接続するリング電極を含む。
【0025】
図12は、本発明の、図1と似た別の実施の形態を示す側面図である。この実施の形態は、対称的なブルームライン動作を実現するために、同じ誘電率と同じ厚さを有する第1の誘電体ストリップと第2の誘電体ストリップとを有する。
【0026】
図13は、本発明の荷電粒子生成器の実施の形態を示す概念図である。
【0027】
図14は、図13の円14に沿う拡大された概念図である。この図は、本発明のパルス型イオン源の実施の形態を示す。
【0028】
図15は、図14のパルス型イオン源によるパルス化されたイオン生成の過程を示す図である。
【0029】
図16は、種々のゲート電極電圧に対する標的上での最終的なスポットの大きさを示す複数のスクリーンショットである。
【0030】
図17は、高勾配陽子ビーム加速器における、抽出された陽子ビーム電流をゲート電極電圧の関数として示したグラフである。
【0031】
図18は、本発明の荷電粒子生成器におけるポテンシャル等高線を示す2つのグラフである。
【0032】
図19は、種々の集束電極電圧の設定に対する、マグネットを用いない250MeV高勾配陽子加速器におけるビーム移送を示す比較図である。
【0033】
図20は、250MeV、150MeV、100MeVおよび70MeVの陽子ビームについての、標的上でのビームのエッジ半径(上の曲線)およびコア半径(下の曲線)対集束電極電圧の4つのグラフを示す比較図である。
【0034】
図21は、一体化された荷電粒子生成器および線形加速器を有する本発明の駆動可能でコンパクトな加速器システムを示す概念図である。
【0035】
図22は、本発明の一体化されたコンパクトな加速器/荷電粒子源の例示的な取り付け態様を示す側面図である。この図は医療への応用を示す。
【0036】
図23は、本発明の一体化されたコンパクトな加速器/荷電粒子源を例示的に垂直に取り付けた態様を示す斜視図である。
【0037】
図24は、本発明の一体化されたコンパクトな加速器/荷電粒子源を例示的にハブ−スポークのように取り付けた態様を示す斜視図である。
【0038】
図25は、本発明の連続パルス進行波加速器を示す概念図である。
【0039】
図26は、図25の連続パルス進行波加速器の短パルス進行波動作を説明するための概念図である。
【0040】
図27は、従来の誘電壁加速器の典型的なセルの長パルス動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
A.ストリップ形状のブルームラインを備えるコンパクトな加速器
図を参照すると、図1−12は、本発明で用いられるコンパクトな線形加速器を示す。このコンパクトな線形加速器は、第1の端部と第2の端部との間で伝搬性の波面をガイドし第2の端部において出力パルスを制御する少なくともひとつのストリップ形状のブルームラインモジュールを備える。ブルームラインモジュールのそれぞれは、第1、第2および第3の平板導体ストリップを含み、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップをさらに含み、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップをさらに含む。加えて、コンパクトな線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで充電するために接続される高電圧電源と、第2の導体ストリップの高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくともひとつの電位へとスイッチし、それにより対応する誘電体ストリップ中に伝搬性の極性反転波面を発生させるためのスイッチと、を含む。
【0042】
コンパクトな線形加速器は、第1の端部と第2の端部との間で伝搬性の波面をガイドし第2の端部において出力パルスを制御する少なくともひとつのストリップ形状のブルームラインモジュールを備える。ブルームラインモジュールのそれぞれは、第1、第2および第3の平板導体ストリップを含み、第1の導体ストリップと第2の導体ストリップとの間に第1の誘電体ストリップをさらに含み、第2の導体ストリップと第3の導体ストリップとの間に第2の誘電体ストリップをさらに含む。加えて、コンパクトな線形加速器は、第2の導体ストリップを高電位まで充電するために接続される高電圧電源と、第2の導体ストリップの高電位を第1および第3の導体ストリップのうちの少なくともひとつの電位へとスイッチし、それにより対応する誘電体ストリップ中に伝搬性の極性反転波面を発生させるためのスイッチと、を含む。
【0043】
図1−2は、コンパクトな線形加速器の第1の実施の形態を示す。コンパクトな線形加速器は参照符号10として示される。このコンパクトな線形加速器は、スイッチ18に接続されたひとつのブルームラインモジュール36を備える。コンパクトな加速器はさらに、スイッチ18を介してブルームラインモジュール36へ高い電位を供給する適切な高電圧源(不図示)を含む。たいていの場合、ブルームラインモジュールはストリップ形状の構成、つまり長くて狭い形状の構成を有し、典型的には一様な幅を有するが必ずしもそうではない。図1および2にはあるブルームラインモジュール11が示される。このブルームラインモジュール11は、第1の端部11と第2の端部12との間に伸び長さlと比較して狭い幅w(図2、4)を有する長い梁もしくは厚板のような直線状の構成を有する。ブルームラインモジュールのこのストリップ形状の構成は、第1の端部11から第2の端部12への伝搬性の電気的な信号波をガイドし、それにより第2の端部において出力パルスを制御するために作用する。特に、波面の形は、モジュールの幅を適切に設計することによって制御されうる。例えば、図6に示されるようにその幅を次第に小さくすることによって制御されうる。ストリップ形状の構成によれば、コンパクトな加速器は、伝搬する波面が感じる不定のインピーダンスの問題を克服することができる。背景の項においてカーダーのディスク形状のモジュールに関連して議論したように、この不定のインピーダンスは波面が径方向に向けられ中心孔において収束する際に発生しうる。本構成によると、モジュール10のストリップもしくは梁のような構成によって、平坦な出力(電圧)パルスが、パルスが歪められることなしに生成されうる。これにより、粒子ビームが時間的に不定のエネルギ利得を得るのを妨げることができる。本明細書およびクレームにおいて使用されているように、第1の端部11をスイッチ、例えばスイッチ18、に接続される端部とし、第2の端部12を、粒子加速のための出力パルス領域などの負荷領域に隣接する端部とする。
【0044】
図1および2に示されるように、狭い梁のような構造を有する基本的なブルームラインモジュール10は、薄いストリップ状に形成され誘電体によって隔てられた3枚の平板導体を含む。ここでその誘電体は、長いがより厚いストリップとして示されている。特に、第1の平板導体ストリップ13と中間の第2の平板導体ストリップ15とは、それらの間の空間を満たす第1の誘電体14によって隔てられる。第2の平板導体ストリップ15と第3の平板導体ストリップ16は、それらの間の空間を満たす第2の誘電体17によって隔てられる。このように誘電体によって隔てられることにより、図示されるように平板導体ストリップ13、15および16が互いに平行に配置されることが望ましい。第3の誘電体19もまた図示されている。第3の誘電体19は、平板導体ストリップおよび誘電体ストリップ13−17に接続されそれらをキャップする。第3の誘電体19は、波を合成し、パルス化された電圧のみがその真空壁を越えることを許すのに役に立つ。これにより、その壁に応力が働く時間を低減でき、より高い勾配を実現しうる。第3の誘電体19は、加速器に波を印加する前にその波を変換する領域としても使用されうる。ここでの波の変換とはつまり、電圧を昇圧したり、インピーダンスを変えたりすることである。そのようなもの、たいていの場合第3の誘電体19および第2の端部12であるが、が矢印20で示される負荷領域に隣接するものとして示される。特に、矢印20は粒子加速器の加速軸を示し、粒子の加速の方向を指し示す。背景の項で議論したように、加速の方向は、速い伝送線および遅い伝送線の経路、つまりふたつの誘電体ストリップを通しての経路に依存することは理解される。
【0045】
図1にはスイッチ18が示されている。スイッチ18は、平板導体ストリップ13、15および16にそのそれぞれの第1の端部、つまりモジュール36の第1の端部11において接続されている。スイッチは、初期状態において外側の平板導体ストリップ13、16を接地電位に接続し中間の導体ストリップ15を高電圧源(不図示)に接続する役割を果たす。そしてスイッチ18は、第1の端部を短絡するよう操作される。その結果、ブルームラインモジュールを通じて伝搬性の電圧波面が発生し、第2の端部において出力パルスが生成される。特に、スイッチ18は、誘電体のうちの少なくともひとつの内部に、第1の端部から第2の端部への伝搬性の極性反転波面を生成できる。これは、ブルームラインモジュールが対称動作をするよう設計されているかもしくは非対称動作をするよう設計されているかによる。図1および2に示されるように非対称動作をするよう設計されている場合、カーダーにおいて説明されているのと同様に、ブルームラインモジュールの誘電体層14、17は、異なる誘電率と異なる厚さ(d≠d)とを有する。ブルームラインの非対称動作においては、誘電体層を通過する伝搬性の波の速さが異なる。しかしながら、図12に示されるようにブルームラインモジュールが対称動作をするよう設計されている場合、誘電体ストリップ95、98は同じ誘電率を有し、それらの幅と厚さ(d=d)もまた等しい。加えて、図12に示されるように、第2の誘電体ストリップ98の中で波面が伝搬しないように、磁性体が第2の誘電体ストリップ98のすぐ近くに配置される。これにより、スイッチは第1の誘電体ストリップ95の中にのみ伝搬性の極性反転波面を生成する。スイッチ18は、非対称ブルームラインモジュール動作もしくは対称ブルームラインモジュール動作に対して好適なスイッチ、例えばガス放電閉スイッチ、沿面フラッシオーバ閉スイッチ、ソリッドステートスイッチ、光伝導性スイッチなどであることは理解される。さらに、誘電体の種類/寸法やスイッチは、コンパクトな加速器が種々の加速勾配、例えば1メートル当たり20メガボルトを越える勾配で動作できるように適切に選択されうることは理解される。一方で、より低い勾配もまた設計の範囲で達成されうる。
【0046】
ある好適な実施の形態では、第2の平板導体は、第1の誘電体ストリップを通じた特性インピーダンスZ=k(w,d)によって定義される幅wを有する。kは第1の誘電体ストリップの第1の電気定数であり、第1の誘電体の透磁率と誘電率との比の平方根によって定義される。gは、隣接する導体の幾何学的効果によって定義される関数である。dは、第1の誘電体ストリップの厚さである。第2の誘電体ストリップは、第2の誘電体ストリップを通じた特性インピーダンスZ=k(w,d)によって定義される厚さを有する。kは第2の誘電体の第2の電気定数である。gは、隣接する導体の幾何学的効果によって定義される関数である。wは、第2の平板導体ストリップの幅である。dは、第2の誘電体ストリップの厚さである。誘電率が異なることが非対称ブルームラインモジュールにおいて必要とされるのであるがこれはインピーダンスの違いを引き起こす。そこで上述のようにすることにより、対応する伝送線の幅を調整することでインピーダンスを一定に保つことができる。これにより負荷へより多くのエネルギを移送することができる。
【0047】
図4および5は、第1および第2の平板導体ストリップ41、42および第1および第2の誘電体ストリップ44、45の幅よりもより狭い幅を有する第2の平板導体ストリップ42を備えるブルームラインモジュールの実施の形態を示す。この構成では、背景の項で議論された破壊的干渉性の層間結合は、電極41および43を延伸したことにより抑制される。これは、電極42はもはやひとつ前のもしくはひとつ後のブルームラインと簡単にはエネルギ結合を起こしえないからである。さらには、モジュールのさらに別の実施の形態は、長さ方向l(図2、4参照)に沿って変化する幅を有することが好ましい。この場合、出力パルスを成形し、その形状を制御することができる。このことが図6に示されている。図6には、中央の負荷領域へ向けて径方向内向きにモジュールが延伸するにつれて、幅が次第に細くなることが示されている。さらに別の実施の形態では、ブルームラインモジュールの寸法と誘電体の材料は、Zが実質的にZに等しくなるように選択される。前述したように、インピーダンスをマッチさせることで、振動する出力を生成しうる波の形成が抑制される。
【0048】
非対称ブルームライン構成においては、第2の誘電体ストリップ17は第1の誘電体ストリップ14よりも、例えば3:1のように実質的に低い伝搬速度を有することが望ましい。ここで第2の誘電体ストリップ17および第1の誘電体ストリップ14の伝搬速度をそれぞれv、vと定義すると、v=(με−0.5であり、v=(με−0.5である。なお、透磁率μと誘電率εとは第1の誘電体の物質定数であり、透磁率μと誘電率εとは第2の誘電体の物質定数である。第2の誘電体ストリップ17の伝搬速度を遅くすることは、第2の誘電体ストリップに、第1の誘電体ストリップの誘電率、つまりμε、よりも大きな誘電率、つまりμε、を有する材料を選択することによって達成されうる。例えば図1に示されるように、第1の誘電体ストリップの厚さはdと表記され、第2の誘電体ストリップの厚さはdと表記され、dはdよりも大きいものとして示されている。d2をd1よりも大きく設定して異なる間隔と異なる誘電率を組み合わせることで、第2の平板導体ストリップ15の両側で等しい特性インピーダンスを実現している。両半分において特性インピーダンスは等しいが、それぞれの半分を通じた信号の伝搬速度は必ずしも等しくない点に注意する。異なる伝搬速度を実現するために誘電体ストリップの誘電率や厚さが適切に選択されてもよいのであるが、長いストリップ形状の構造および構成は、非対称ブルームラインの概念、つまり異なる誘電率および異なる厚さを有する誘電体を使用する概念、を使用する必要はないことは理解される。波形が制御されるという利点は、ブルームラインモジュールの長い梁のような幾何形状および構成によって実現されているのであって高い加速勾配を生成する特定の方法によってではないので、他の実施の形態は代替的なスイッチ構成を使用することができる。そのような代替的なスイッチ構成は例えば、対称ブルームライン動作を含む図12について議論されたものである。
【0049】
コンパクトな加速器は、互いに位置を揃えて積み重ねられた2つ以上の長いブルームラインモジュールを含む構造を代替的に有してもよい。例えば、図3は、互いに位置を揃えて積み重ねられたふたつのブルームラインモジュールを有するコンパクトな加速器21を示す。そのふたつのブルームラインモジュールは、平板導体ストリップと誘電体ストリップ24−32とを交互に積層してなる積層構造を形成する。そこでは、平板導体ストリップ32は両方のモジュールに共通している。導体ストリップは、積層されたモジュールの第1の端部22においてスイッチ33と接続される。積層されたモジュールの第2の端部23をキャップする誘電壁であって加速軸の矢印35によって示される負荷領域に隣接する誘電壁もまた34に設けられる。
【0050】
コンパクトな加速器は、中央の負荷領域を周方向に囲むように配置された少なくともふたつのブルームラインモジュールを有する構成とされてもよい。さらには、周方向に囲むモジュールのそれぞれは、最初のモジュールと位置を揃えて積み重ねられたひとつ以上の追加のブルームラインモジュールを追加的に含んでもよい。例えば、図6は、コンパクトな加速器50のある実施の形態を示す。コンパクトな加速器50は、ふたつのブルームラインモジュール積層構造51および53を有し、そのふたつの積層構造は中央の負荷領域56を囲む。モジュール積層構造のそれぞれは、4つの独立して操作されるブルームラインモジュールの積層構造として示される(図7)。また、モジュール積層構造のそれぞれは、対応するスイッチ52、54に個々に接続される。ブルームラインモジュールを互いに位置を揃えて積み重ねることによって加速軸に沿ったより長い領域をカバーすることができることは理解される。
【0051】
図8および9には、コンパクトな加速器の別の実施の形態が参照符号60で示される。このコンパクトな加速器は、ふたつ以上の導体ストリップ、例えば61、63、を有し、それらの導体ストリップ、例えば61、63、はそのそれぞれの第2の端部において65で示されるリング電極によって互いに接続されている。図6および7のような構成では、ひとつ以上の周方向に囲むモジュールが中央の負荷領域に向けてその領域を完全に取り囲むことなしに延伸するので方位平均化が引き起こされうるのであるが、リング電極構成はこの方位平均化を克服するのに役に立つ。図9に最も良く示されるように、61および62で示されるモジュール積層構造は、対応するスイッチ62および64にそれぞれ接続される。さらに、図8および9は、リング電極の内径に沿って設けられた絶縁スリーブ68を示す。代替的に、リング電極65の間に設けられた別個の絶縁体69もまた示される。導体ストリップの間に使用される誘電体に替えて、交互に積層された導体箔66および絶縁箔66’が使用されてもよい。その交互の層は、一枚の誘電体ストリップの替わりのひとつの積層構造として形成されてもよい。
【0052】
図10および11は、コンパクトな加速器のふたつの追加的な実施の形態を示す。図10においてはコンパクトな加速器は参照符号70で示され、図11においてはコンパクトな加速器は参照符号80で示される。それぞれのコンパクトな加速器は、非直線状のストリップ形状を有するブルームラインモジュールを有する。この場合、非直線状のストリップ形状は、曲線もしくは蛇行の形で示される。図10では、加速器70は、中央の領域を周方向に囲みその領域に向けて延伸する図示の4つのモジュール71、73、75および77を備える。モジュール71、73、75および77は、対応するスイッチ72、74、76および78にそれぞれ接続される。この構成で見られるように、それぞれのモジュールの第1の端部と第2の端部との間の径方向直線距離は、非直線状モジュールの全体の長さよりも短く、これにより伝送路の電気的な長さを増やしつつ加速器をコンパクトにすることを実現している。図11は、図10と似た構成を示す。加速器80は、中央の領域を周方向に囲みその領域に向けて延伸する図示の4つのモジュール81、83、85および87を備える。モジュール81、83、85および87は、対応するスイッチ82、84、86および88にそれぞれ接続される。さらに、それらのモジュールの径方向内側の端部、つまり第2の端部、はリング電極89によって互いに接続され、これにより図8において議論された利点がもたらされる。
【0053】
B.連続パルス進行波加速モード
線形誘導加速器(LIAs)はその静止状態において、その全長に亘って短絡されている。したがって、荷電粒子の加速は、その構造が過渡的な電場勾配を生成する能力および印加される一連の加速パルスを隣り合うパルス形成線から隔離する能力に依存する。従来のLIAsでは、この方法はパルス形成線が、過渡期間、好ましくは荷電粒子ビームが存在する期間、の間は、その構造の内側から積み重ねられた一連の電圧源として働くことによって実現されていた。この加速勾配を生成し必要とされる隔離を実現するための典型的な手段としては、加速器の内部に磁性コアを使用しパルス形成線それ自体の過渡期間を使用することがある。後者は、接続ケーブル由来の追加的な長さを含む。過渡的加速が生じた後、磁性コアが飽和しているため、システムはもう一度再びその長さに亘って短絡される。このような従来のシステムの不利な点は、加速領域の大きさが制限されているために加速勾配が非常に低い(〜0.2−0.5MV/m)点と、磁性体は高価でかさばる点である。加えて、最良の磁性体であっても電気的エネルギを大きく損なうことなしに速いパルスに応答することは不可能である。したがって、コアが必要とされる場合は、この種の高勾配加速器を作ることは良くても非現実的、悪くて技術的に実現不可能である。
【0054】
図25は、本発明の連続パルス進行波加速器を示す概念図である。その連続パルス進行波加速器は、参照符号160で示され、長さlを有する。図示の加速器の伝送線のそれぞれは、長さΔRおよび幅δlを有し、ビームチューブは直径dを有する。電気的長さ(つまり、パルス幅)τを有する加速パルスでビームチューブの短い軸方向長さδlを順番に励起するように、一組のスイッチ162を順番にトリガするトリガ制御器161が設けられる。その結果トリガ制御器161は、加速軸の長さ方向に沿った単一の仮想的な進行波164を生成する。特に順番トリガ/制御器は、粒子にエネルギを逐次与えるために、軸方向に沿って通過するパルス化された荷電粒子ビームと同期して、進行性の軸方向電場が加速軸を囲むビームチューブに沿って生成されるように、スイッチを順番にトリガすることができる。トリガ制御器161は、スイッチのそれぞれを独立に制御してもよい。代替的にはトリガ制御器161は、ブロックを形成する少なくともふたつの隣接する伝送線を同時にスイッチし、隣接するブロックを順番にスイッチすることができる。その結果、加速パルスがそれぞれのブロックを通じて形成される。このようにすることで、ふたつ以上のスイッチ/伝送線の複数のブロックは、ビームチューブの壁の短い軸方向長さnδlを励起する。δlは励起された線に対応する、ビームチューブの壁の短い軸方向長さである。nは、任意の時間における隣接する励起された線の数であり、n≧1である。
【0055】
説明のためにいくつかの例示的な寸法を示す。d=8cm、τ=数ナノ秒(例えば、陽子加速用には1−5ナノ秒、電子加速用には100ピコ秒から数ナノ秒)、v=c/2、c=光速。しかしながら、本発明はほぼいかなる寸法へもスケールされうることは理解される。ビームチューブの直径dおよび長さlはl>4dという基準を満たすことが好ましい。この場合、誘電ビームチューブの入力端および出力端における漏れ電場を低減できる。さらに、ビームチューブはγτv>d/0.6という基準を満たすことが好ましい。ここでvはビームチューブの壁上の波の速さであり、dはビームチューブの直径であり、τはパルス幅であって
【数1】

を満たし、γはローレンツ因子であって
【数2】

を満たす。ΔRはパルス形成線の長さであり、μは比透磁率であり(たいていの場合=1である)、εは比誘電率である。このようにすることで、加速軸に沿って生成されるパルス化された高勾配は、1メートル当たり少なくとも約30MeVであり、1メートル当たり約150MeVまで到達しうる。
【0056】
加速勾配を生成するためにコアを必要とする種類の大抵の加速器システムとは異なり、本発明の加速器システムはコアなしで動作する。なぜならば、nδl<lという基準が満たされる場合、ビームチューブの電気的な駆動は所与の時間においてビームチューブの小さなセクションに沿って発生するからである。またシステムは短絡されなくてもよい。コアを使用しないことによって、本発明はコアの使用に伴う種々の問題を回避している。そのような問題としては例えば、達成しうる電圧がVt=AΔBのようにΔBによって制限されてしまうことにより加速が制限されることがある。ここでAはコアの断面の面積である。パルス電源がコアをリセットする必要があるために、コアの使用は加速器の繰り返しレートも制限していた。所与のnδlにおける加速パルスは、所与の軸方向部分に隣接する不活性の伝送線の過渡隔離特性によって、伝導性ハウジングから隔離される。スイッチ電流のうちのいくらかは不活性の伝送線に短絡されるので、不活性の伝送線の不完全な過渡隔離特性によって寄生波が生じることが理解される。これはもちろんこの短絡電流が流れるのを防ぐための磁性コアによる隔離なしで発生する。以下の例で説明されるように、ある条件の下では寄生波は有効に使用されうる。開放回路型ブルームライン積層構造が複数の非対称ストリップ形状ブルームラインから成り、速い/高インピーダンス(低誘電率)線のみがスイッチされる構成では、不活性の伝送線に生成された寄生波はその不活性伝送線に対してより高い電圧を生成するであろう。この寄生波は、速い線の電圧を初期帯電状態の電圧を越えてブーストし、一方で遅い線の電圧をより少ない量だけブーストする。これは、ふたつの伝送線は、同じ注入電流が流れる電圧分割器のように直列に接続されているように見なされるからである。加速器の壁において表れる波は初期帯電時よりも大きな値へブーストされ、これによりより高い加速勾配が達成可能となる。
【0057】
図26および27は、長さLのビームチューブの中に生成される勾配の違いを示す。図26は、長さLよりも短い幅vτを有する単一パルス進行波を示す。これと比較して、図27は、積層されたブルームラインモジュールの典型的な動作を示す。そこでは、加速器の全長Lに亘って勾配を生成するために全ての伝送線が同時にトリガされる。この場合、vτは長さLよりも大きいかまたは等しい。
【0058】
C.荷電粒子生成器:一体化されたパルス型イオン源および入射器
図13は、本発明の荷電粒子生成器110の実施の形態を示す。荷電粒子生成器110は、単一のユニットとして一体化されたパルス型イオン源112と入射器113とを備える。パルス化された強いイオンビームを生成するためには、抽出されたビームを変調し、続いて集束することが必要である。第1に、粒子生成器は、パルス型イオン源112を用いて沿面フラッシオーバ放電によって非常に濃いプラズマを生成することによりパルス化された強いイオンビームを生成する。このプラズマ密度は7気圧を超えると見積もられており、また、そのような放電は一瞬であるので非常に短いパルスが生成されうる。従来のイオン源は低い圧力のガスからあるボリューム中にプラズマ放電を生成する。イオンがこのボリュームから抽出され、加速器中での加速のためにコリメートされる。これらのシステムは一般的には、0.25A/cm2より小さな電流密度しか抽出できない。この低い電流密度は、抽出インタフェースにおけるプラズマ放電の密度に部分的に起因している。
【0059】
本発明のパルス型イオン源は、絶縁体によって架橋された少なくともふたつの電極を有する。対象となるガス種は金属電極の中に固溶させるか、もしくはふたつの電極の間に固体の形で配置される。この幾何構成によると、絶縁体の上にスパークが生成され、対象物質が放電の中に捉えられてイオン化され、ビームとして抽出される。上の少なくともふたつの電極は、絶縁材料、半絶縁材料もしくは半導体材料によって架橋されることが好ましい。これにより、これらふたつの電極の間にスパーク状の放電が形成される。所望のイオン種を原子もしくは分子の形で含む材料は、電極の中もしくは電極の側に存する。所望のイオン種を含む材料は、水素の同位体、例えばH2、もしくは炭素の同位体であることが好ましい。さらに、電極のうちの少なくともひとつは半透過性であり、所望のイオン種を原子もしくは分子の形で含む貯蔵部はその電極の下方に配置されることが好ましい。図14および15は、パルス型イオン源の実施の形態を示す。そのパルス型イオン源は参照符号112で示される。図示されるセラミック121は、その表面にカソード124およびアノード123を有する。図示されるカソードは、パラジウムの中心部材124を囲む。その中心部材124は、その下のH2貯蔵部114をキャップする。カソードとアノードとを逆にしてもよいことは理解される。開口板、つまりゲート電極115は、その開口がパラジウムの天頂板124と揃うように位置合わせされる。
【0060】
図15に示されるように、電子の放出を引き起こすために、カソード電極とアノード電極との間に高電圧が印加される。初期状態においてはこれらの電極は十分に高い電圧のもとほぼ真空状態におかれるので、電子はカソードから電界放出される。これらの電子は空間を横断してアノードに到達し、アノードへの衝突の際に局所的な加熱を引き起こす。この加熱によって分子が放出され、次にこの放出された分子に電子が衝突し、その分子がイオン化される。これらの分子は所望の種であってよいし所望の種でなくてもよい。イオン化されたガス分子(イオン)はカソードに向けて加速され、この場合Pd天頂板に衝突してそれを加熱する。Pdには熱せられると、気体、最も顕著には水素、がその材料を透過することを許す性質がある。したがって、イオンによって十分に熱せられて水素ガスがボリュームへ局所的に漏れ出すと、その漏れ出した分子は電子によってイオン化され、プラズマを形成する。プラズマが十分な密度まで成長すると、自続アークが形成される。したがって、開口板の反対側に設けられたパルス的にマイナスに帯電した電極を用いてイオンを抽出し、そのイオンを加速器へ入射させることができる。抽出用電極が無くても、適切な極性の電場を使用して同様にイオンを抽出できる。アークがなくなると、ガスは脱イオン化される。電極がゲッター材料によって作られている場合、ガスは金属電極に吸収され、次のサイクルで再利用される。再吸収されなかったガスは真空システムによって排気される。この種のイオン源の利点は、パルス化のアプリケーションにおいて真空システムに対するガス負荷が最小化される点である。
【0061】
図13に示されるように、パルス型イオン源112から線形加速器の入力への荷電粒子の抽出、集束および移送は、パルス型イオン源112と一体化された入射部113によって提供される。特に、荷電粒子生成器の入射部113は荷電イオンビームを標的上に集束するためにも役に立つ。この標的は、荷電粒子治療設備においては患者であり、もしくは同位体生成のための標的であり、または荷電粒子ビームにとって適切な他の標的でありうる。さらには、本発明の一体化された入射器は、荷電粒子生成器がビームを移送し患者にその焦点を合わせるために集束電場のみを使用することを可能とする。そのシステムにはマグネットは存在しない。そのシステムは、広範囲のビーム電流やビームエネルギやスポットサイズをそれぞれ独立に提供しうる。
【0062】
図13は、入射器113の構成をパルス型イオン源112との関係で模式的に示す。図21は、線形加速器131と一体化された統合荷電粒子生成器132を模式的に示す。コンパクトな高勾配加速器全体のビーム抽出、移送および集束は、入射器によって制御される。この入射器は、ゲート電極115と、抽出電極116と、集束電極117と、グリッド電極119と、を備える。これらの電極は、荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置する。しかしながら、最小の移送システムは、抽出電極と、集束電極と、グリッド電極と、から成ることは注意するに値する。もし必要であれば、それぞれの機能に対してひとつ以上の電極が使用されてもよい。全ての電極は、図18に示されるように、システムの性能を最適化するような形状を有してもよい。数ナノ秒のうちに荷電粒子ビームをオンオフするために、速いパルス状の電圧をゲート電極115に印加してもよい。図17は、陽子治療用に設計された高勾配加速器においての、シミュレーションに係る抽出ビーム電流をゲート電圧の関数として示す。図16は、種々のゲート電圧に対する最終的なビームスポットを示す。本発明者によって行われたシミュレーションでは、公称上のゲート電極の電圧は9kVであり、抽出電極は980kVであり、集束電極は90kVであり、グリッド電極は980kVであり、高勾配加速器の加速勾配は100MV/mである。図16は、最終的なスポットサイズはゲート電極の電圧設定に敏感ではないことを示す。したがって、図17に示されるように、ゲート電圧はビーム電流のオンオフを調節するための簡易なつまみとして機能する。
【0063】
高勾配加速器システムの入射器は、ゲート電極と抽出電極とを使用して空間電荷占有ビームを抽出し捉える。このビームの電流は抽出電極の電圧によって決定される。加速器システムは、標的上にビームを集束するための一組の少なくともひとつの集束電極117を使用する。図18に示されるポテンシャル等高線プロットは、抽出電極と集束電極とがいかに機能するか、を示す。最小の集束/移送システム、つまりひとつの抽出電極およびひとつの集束電極がこの場合使用される。高勾配加速器の入口における抽出電極、集束電極およびグリッド電極の電圧はそれぞれ980kV、90kVおよび980kVである。図18は、形造られた抽出電極の電圧が、ゲート電極と抽出電極との間にギャップ電圧を生成することを示す。図18は、形造られた抽出電極、形造られた集束電極およびグリッド電極の電圧が、静電的な集束させる−集束をゆるめる−集束させる領域、つまりアインゼルレンズ、を形成することも示す。これは、荷電粒子ビームに対して正味の強い集束力を加える。
【0064】
ビームを集束させるためにアインゼルレンズを使用することは新規ではないが、本発明の加速器システムは、集束マグネットを全く使用しない。加えて、本発明はアインゼルレンズと他の電極とを組み合わせることで、標的上のビームスポットサイズを調節可能とし、またビームスポットサイズをビーム電流およびビームエネルギによらないものとした。入射器の出口もしくは我々の高勾配加速器への入口には、グリッド電極119がある。抽出電極とグリッド電極とは同じ電圧に設定される。グリッド電極の電圧を抽出電極の電圧と等しくすることで、加速器に入射されるビームのエネルギは、形造られた集束電極の電圧設定によらず一定となる。これにより、形造られた集束電極の電圧を変更してもアインゼルレンズの強度を変更できるのみであり、ビームのエネルギは変更されない。ビーム電流は抽出電極の電圧によって決定されるので、最終的なスポットを、形造られた集束電極の電圧を調節することにより自由に調節できる。この調節はビーム電流およびビームエネルギによらない。そのようなシステムでは、軸方向の電場に適切な勾配(つまり、dE/dz)を設けることによりさらなる集束効果が得られること、および電場の時間変化(つまり、z=zにおけるdE/dt)の結果としてさらに追加的に集束効果が得られることは理解される。
【0065】
図19は、種々の集束電極電圧設定を有する無マグネット250MeV高勾配陽子加速器を通じたビームの移送における、シミュレーションに係るビームの包絡線を示す。それぞれのプロットに対応する集束電極の電圧はプロットの左側に与えられている。これらのプロットは、250MeV陽子ビームの標的上におけるスポットサイズは集束電極の電圧を調節することによって容易に調節されうることを明らかに示している。図20は、種々の陽子ビームエネルギについてのスポットサイズ対集束電極電圧のプロットを示す。陽子エネルギのそれぞれに対して、2本の曲線がプロットされている。上側の曲線はビームのエッジ半径を表し、下側の曲線はコア半径を表す。これらのプロットは、100MVの加速勾配を有する治療用高勾配陽子加速器の集束電極の電圧を調節することで、70−250MeV、100mAの陽子ビームについて広範囲のスポットサイズ(直径2mm−直径2cm)が得られることを示す。
【0066】
上述のような一体化された荷電粒子生成器を使用するコンパクトな高勾配加速器システムは、広範囲のビーム電流、エネルギ、およびスポットサイズを独立に提供できる。加速器のビーム抽出、移送および集束の全ては、荷電粒子源と高勾配加速器との間に位置するゲート電極、形造られた抽出電極、形造られた集束電極およびグリッド電極によって制御される。抽出電極とグリッド電極とは同じ電圧設定を有する。それらの間の形造られた集束電極は、より低い電圧に設定され、アインゼルレンズを形成し、スポットサイズに対する調節つまみを提供する。最小の移送システムは抽出電極、集束電極およびグリッド電極から成るが、システムが非常に強い集束力を必要とする場合は、交流電圧によるより多くのアインゼルレンズが、形造られた集束電極とグリッド電極との間に設けられてもよい。
【0067】
D.医療用の駆動可能でコンパクトな加速器システム
図21は、本発明の例示的な駆動可能でコンパクトな加速器システム130を示す模式図である。このコンパクトな加速器システム130は、荷電粒子生成器132を備える。この荷電粒子生成器132は、コンパクトな線形加速器131に一体的に取り付けられ、そうでなければコンパクトな線形加速器131の入力端に位置する。こうすることで、荷電粒子生成器132は荷電粒子ビームを形成して、そのビームをコンパクトな加速器に加速軸に沿って入射させる。このように荷電粒子生成器を加速に一体化することによって、駆動機構134による矢印135によって示される一体駆動およびビーム136−138の生成を可能とするユニット構造を有しつつ比較的コンパクトなサイズを達成しうる。以前のシステムでは、その縮尺サイズのために、離れた地点からビームを移送するためのマグネットが必要とされていた。これに対して本発明では縮尺サイズが大きく低減されているので、陽子ビームなどのビームの生成、制御および移送の全てが、所望の標的の位置に近い所で、マグネットを使用せずに行われうる。そのようなコンパクトなシステムは、例えば医療への加速器の応用に適している。
【0068】
そのような一体化された装置は133として示される支持構造に取り付けられてもよい。その支持構造は、荷電粒子ビームとそれによって生成されるビームスポットの位置を直接制御するために一体化された粒子生成線形加速器を駆動する。コンパクトな加速器および荷電粒子源の一体化された組み合わせを取り付ける種々のやり方が図22−24に示されているが、これに限定されない。特に、図22−24は本発明の実施の形態を示し、種々のタイプの支持構造に取り付けられた合成されたコンパクトな加速器/荷電粒子源を示す。この合成されたコンパクトな加速器/荷電粒子源は、ビームの向きを制御するために駆動可能となっている。加速器と荷電粒子源は固定されたスタンドからつり下げられて連結され、患者の方に向けられる(図22および23)。図22では、一体化された装置を143で示される重心の回りに回転させることによって一体的な駆動が可能となっている。図22に示されるように、一体化されたコンパクトな生成器/加速器はその重心の回りに旋回的に駆動されることが好ましい。これにより、加速されたビームを方向付けるために必要なエネルギが低減される。しかしながら、コンパクトな加速器および荷電粒子源のコンパクトで一体的な組み合わせを駆動するために、他の取り付け方や支持構造が本発明の範囲内において可能であることは理解される。
【0069】
コンパクトで駆動可能な構造を実現するように加速器と荷電粒子生成器とを一体化するために、加速器の種々の構成が使用されうることは理解される。例えば、加速器の構成は、上述のブルームラインモジュール構成の2本の伝送線を採用してもよい。その伝送線は、平行平板伝送線であることが好ましい。さらには、その伝送線は、図1−12に示されるようなストリップ形状を有することが好ましい。SiC光伝導性スイッチやガススイッチやオイルスイッチなどの、速い(ナノ秒)閉時間を有する種々のタイプの高電圧スイッチが使用されてもよい。
【0070】
加速器システムの駆動および操作を制御するために、従来知られている種々の駆動機構やシステム制御方法が使用されてもよい。例えば、単純なボールネジや、ステッパモータや、ソレノイドや、電気駆動式トランスレータや、空気圧機器などが、加速器のビームの位置合わせや動きを制御するために使用されてもよい。これによると、ビーム経路のプログラミングは、CNC装置において広く使用されているプログラミング言語と同一ではないにしても非常に似たものとなる。駆動機構は、加速されたビームの方向およびビームスポットの位置を制御するために一体化された粒子生成加速器に機械的な動作もしくは動きをさせるように機能することは理解される。これに関連して、システムは少なくともひとつの回転自由度(例えば、質量中心の回りの旋回のための自由度)を有する。しかしながらシステムは、筐体もしくはそのシステムの、変位もしくは変形した位置を完全に指定する一組のそれぞれ独立した変位である6つの自由度(DOF)を有することが好ましい。この6つの自由度は、従来知られているような3つの平行移動および3つの回転を含む。平行移動は3つの次元のそれぞれのなかで移動する能力を示し、回転は3つの互いに垂直な軸の回りで角度を変える能力を示す。
【0071】
能動的な位置の認識、監視およびフィードバック位置決めシステム(例えば、患者145に取り付けられたモニタ)によって、加速されたビームのパラメータの正確さが制御されうる。このシステムは、図22の測定ボックス147によって示されるように、加速器の制御および方向付けシステムのなかに組み入れられる。システム制御器146は加速器システムを制御し、この制御は、ビームの方向、ビームスポットの位置、ビームスポットの大きさ、線量、ビームの強度およびビームのエネルギのうちの少なくともひとつのパラメータに基づいてもよい。深さは、ブラッグピークに基づくエネルギによって比較的精度良く制御される。システム制御器は、パラメータのうちの少なくともひとつを監視しそれについてのフィードフォワードデータを提供するフィードフォワードシステムを含むことが好ましい。荷電粒子および加速器によって生成されたビームは、患者に振動的に投影されてもよい。ある実施の形態では、その振動的な投影は、連続的に変化する半径を有する円を描くことが好ましい。いずれの場合においても、ビームの利用は、位置、線量、スポットサイズ、ビーム強度、ビームエネルギのうちのひとつもしくは組み合わせに基づいて能動的に制御されうる。
【0072】
特定の動作シーケンス、材料、温度、パラメータおよび特定の実施の形態が記載され説明されてきたが、それらは本発明を限定するものではない。変形や変更は当業者にとって自明となりうる。また、本発明は添付の請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。
【図5】

【図6】

【図8】

【図10】

【図11】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図7】

【図9】

【図12】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造と、
加速軸を横切る方向に延伸する少なくともひとつの伝送線を有するコンパクトな線形加速器と、前記コンパクトな線形加速器に接続され荷電粒子ビームを生成して前記コンパクトな線形加速器へ前記加速軸に沿って入射させる荷電粒子生成器と、を含む一体化された粒子生成加速器であって前記支持構造に駆動可能に取り付けられた一体化された粒子生成加速器と、
前記入射したビームにエネルギを与える前記加速軸に沿ったパルス勾配を印加するために、前記コンパクトな線形加速器の前記伝送線を通して少なくともひとつの電気的な波面を伝搬させる、高い電位に接続可能なスイッチ手段と、
前記エネルギを与えられたビームが向けられる方向を制御し、それにより生成されるビームスポットの位置を制御するために前記一体化された粒子生成加速器を駆動する手段と、を備えることを特徴とするコンパクトな加速器システム。
【請求項2】
前記一体化された粒子生成加速器は、その重心の回りの旋回駆動が可能となるように取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項3】
前記支持構造は回転可能なハブを含み、前記一体化された粒子生成加速器は前記ハブに対するスポークとして放射状に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項4】
前記一体化された粒子生成加速器を駆動する手段は、
前記一体化された粒子生成加速器の変位を作り出すことができる少なくともひとつの駆動機構と、
前記駆動機構を制御するシステム制御器と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項5】
前記システム制御器は、前記駆動機構、前記エネルギを与えられたビームおよび前記ビームスポットを、ビームの方向、ビームスポットの位置、ビームスポットの大きさ、線量、ビームの強度およびビームのエネルギのうちの少なくともひとつのパラメータに基づいて制御することを特徴とする請求項4に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項6】
前記システム制御器は、前記パラメータのうちの少なくともひとつを監視しそれについてのフィードフォワードデータを提供するフィードフォワードシステムを含むことを特徴とする請求項5に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項7】
前記システム制御器は、前記パラメータのうちの少なくともひとつを監視しそれについてのフィードバックデータを提供するフィードバックシステムを含むことを特徴とする請求項5に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項8】
前記荷電粒子生成器は、
絶縁材料、半絶縁材料および半導体材料からなる集合から選択された架橋材料によって架橋された少なくともふたつの電極を有するパルス型イオン源と、
所望のイオン種を原子もしくは分子の形で有し、前記電極のうちの少なくともひとつに隣接して配置される原材料と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項9】
前記原材料は、前記カソードに隣接して配置されることを特徴とする請求項8に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項10】
前記電極のうちの少なくともひとつは半透過性であり、前記原材料は前記半透過性電極の下方の前記架橋材料の中に配置されることを特徴とする請求項8に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項11】
前記所望のイオン種は水素および炭素からなる集合から選択された同位体であることを特徴とする請求項8に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項12】
前記荷電粒子生成器はさらに、
その電圧が前記荷電粒子ビームの電流を決定する少なくともひとつの抽出電極と、
少なくともひとつの集束電極と、
少なくともひとつのグリッド電極と、を含み、
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極の全ては、前記パルス型イオン源と前記コンパクトな線形加速器の入力端との間で前記加速軸に沿って連なって配置され、
前記荷電粒子生成器は、集束マグネットを使用せずに、前記パルス型イオン源から前記荷電粒子ビームを抽出して集束し前記コンパクトな線形加速器の前記入力端へ入射させることを特徴とする請求項8に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項13】
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極の電圧は相対的にそれぞれ高電圧、低電圧および高電圧であり、それにより前記コンパクトな線形加速器に入る前にアインゼルレンズにおける静電的な集束させる−集束をゆるめる−集束させる領域が形成されることを特徴とする請求項12に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項14】
前記抽出電極の電圧および前記グリッド電極の電圧が等しく、それにより前記入射した荷電粒子ビームのエネルギが前記集束電極の電圧によらず同じとなることを特徴とする請求項13に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項15】
前記システム制御器は、前記アインゼルレンズの強さを変えることによってビームスポットの大きさを制御するために、前記集束電極の電圧を可変制御する手段を含むことを特徴とする請求項13に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項16】
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極は、前記アインゼルレンズにおける前記静電的な集束させる−集束をゆるめる−集束させる領域を調節するように形成されることを特徴とする請求項13に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項17】
前記荷電粒子生成器はさらに、前記パルス型イオン源と前記抽出電極との間に、前記パルス型イオン源からの前記荷電粒子ビームを開閉するためのゲート電極を含むことを特徴とする請求項12に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項18】
前記スイッチ手段は複数のSiC光伝導性スイッチであることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項19】
前記スイッチ手段は複数のガススイッチであることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項20】
前記スイッチ手段は複数のオイルスイッチであることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項21】
前記コンパクトな加速器は、2本の伝送線を有する少なくともひとつのブルームラインモジュールを含み、
ブルームラインモジュールのそれぞれは、
第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第1の導体と、
前記第1の導体に隣接して設けられた第2の導体であって前記高い電位へスイッチ可能な第1の端部と前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第2の導体と、
前記第2の導体に隣接して設けられた第3の導体であって第1の端部と、前記加速軸に隣接する第2の端部とを有する第3の導体と、
第1の誘電率を有し、前記第1の導体と前記第2の導体との間の空間を満たす第1の誘電体と、
第2の誘電率を有し、前記第2の導体と前記第3の導体との間の空間を満たす第2の誘電体と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項22】
前記第1の導体、前記第2の導体、前記第3の導体、前記第1の誘電体および前記第2の誘電体はいずれも、前記第1の端部から前記第2の端部へ延伸する平行平板ストリップ形状を有することを特徴とする請求項21に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項23】
前記コンパクトな線形加速器は、前記ブルームラインモジュールの前記第2の端部に隣接し前記加速軸を囲む誘電スリーブを含み、
前記誘電スリーブは、前記ブルームラインモジュールの前記第1および第2の誘電体よりも大きな誘電率を有することを特徴とする請求項21に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項24】
前記誘電スリーブは、前記加速軸と直交する平面内に設けられた導体の層と誘電体の層とを互い違いに含むことを特徴とする請求項23に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項25】
前記粒子にエネルギを逐次与えるために、軸方向に沿って通過するパルス化された荷電粒子ビームと同期して、進行性の軸方向電場が前記加速軸を囲むビームチューブに沿って生成されるように、対称的なブルームラインの前記スイッチ手段を順番に制御する手段をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項26】
前記スイッチ手段を順番に制御する手段は、ひとつのブロックを形成する少なくともふたつの隣接するパルス形成伝送線を同時にスイッチすることができ、前記スイッチ手段を順番に制御する手段はさらに、隣接するブロックを順番にスイッチすることができ、ブロックのそれぞれを通して加速パルスが形成されることを特徴とする請求項25に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項27】
前記誘電ビームチューブの入力端および出力端における漏れ電場を低減するために、前記ビームチューブの直径dおよび長さlはl>4dという基準を満たすことを特徴とする請求項25に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項28】
vを前記ビームチューブの壁における波の速さ、dを前記ビームチューブの直径、τを
【数1】

で求められるパルス幅、γを
【数2】

で求められるローレンツ因子とするとき、前記ビームチューブはγτv>d/0.6という基準を満たすことを特徴とする請求項25に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項29】
前記加速軸に沿って生成される高い前記パルス勾配は、1メートル当たり少なくとも約30MeVであることを特徴とする請求項1に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項30】
前記加速軸に沿って生成される高い前記パルス勾配は、1メートル当たり約150MeV以下であることを特徴とする請求項29に記載のコンパクトな加速器システム。
【請求項31】
絶縁材料、半絶縁材料および半導体材料からなる集合から選択された架橋材料によって架橋された少なくともふたつの電極を有するパルス型イオン源と、
所望のイオン種を原子もしくは分子の形で有し、前記電極のうちの少なくともひとつに隣接して配置される原材料と、を備える荷電粒子生成器。
【請求項32】
前記原材料は前記カソードに隣接して配置されることを特徴とする請求項31に記載の荷電粒子生成器。
【請求項33】
前記電極のうちの少なくともひとつは半透過性であり、前記原材料は前記半透過性電極の下方の前記架橋材料の中に配置されることを特徴とする請求項31に記載の荷電粒子生成器。
【請求項34】
前記所望のイオン種は水素および炭素からなる集合から選択された同位体であることを特徴とする請求項31に記載の荷電粒子生成器。
【請求項35】
前記荷電粒子生成器はさらに、
その電圧が前記荷電粒子ビームの電流を決定する少なくともひとつの抽出電極と、
少なくともひとつの集束電極と、
少なくともひとつのグリッド電極と、を備え、
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極の全ては、移送軸に沿って連なって配置され、
前記荷電粒子生成器は、集束マグネットを使用せずに、前記パルス型イオン源から前記荷電粒子ビームを抽出し、前記移送軸に沿って前記荷電粒子ビームを集束して移送することを特徴とする請求項31に記載の荷電粒子生成器。
【請求項36】
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極の電圧は相対的にそれぞれ高電圧、低電圧および高電圧であり、それによりアインゼルレンズにおける静電的な集束させる−集束をゆるめる−集束させる領域が形成されることを特徴とする請求項35に記載の荷電粒子生成器。
【請求項37】
前記抽出電極の電圧および前記グリッド電極の電圧が等しく、それにより前記入射した荷電粒子ビームのエネルギが前記集束電極の電圧によらず同じとなることを特徴とする請求項36に記載の荷電粒子生成器。
【請求項38】
前記アインゼルレンズの強さを変えることによってビームスポットの大きさを制御するために、前記集束電極の電圧を可変制御する手段をさらに備えることを特徴とする請求項36に記載の荷電粒子生成器。
【請求項39】
前記抽出電極、前記集束電極および前記グリッド電極は、前記アインゼルレンズにおける前記静電的な集束させる−集束をゆるめる−集束させる領域を調節するように形成されることを特徴とする請求項36に記載の荷電粒子生成器。
【請求項40】
前記荷電粒子生成器はさらに、前記パルス型イオン源と前記抽出電極との間に、前記パルス型イオン源からの前記荷電粒子ビームを開閉するためのゲート電極をさらに備えることを特徴とする請求項35に記載の荷電粒子生成器。

【公表番号】特表2010−512613(P2010−512613A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534582(P2009−534582)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/021380
【国際公開番号】WO2008/051358
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507410009)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】