説明

医療サービス提供用キオスク

メディカルキオスク(10)にて医療サービスを提供する際、まず実施する医学的検査を決定して(110)そのメディカルキオスクから医学的検査キットを支給し(120)、必要な検査行為が済んだらその医学的検査キットを浄化し(172)検査結果を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的検査及びメディカルキオスク(医療サービス提供用キオスク)に関し、特に、非侵襲的医学的検査キットによる医学的検査プロセスと、そのキットの配布回収プロセスとを、無人キオスクにて共に実施する方法に関する。
【0002】
ここに、医学的検査、健康診断等のためのプロセスとしては、古くからある侵襲的なプロセスの他、近年行われるようになった非侵襲的なプロセスがある。侵襲的プロセス、例えば血液サンプルや咽喉内雑菌の採取は、専らその訓練を受けた専門家の手で行われている。現在行われている医学的検査プロセスの大半はそうした侵襲的プロセスである。これに対する非侵襲的プロセスは、医学的検査プロセスとしての発展が近年とみに期待されており、また既存の侵襲的プロセスに取って代わりつつある。これまでに実用化され検診等で実施されている非侵襲的プロセスとしては、例えば呼気、尿、唾液、便等といったサンプルの採取分析プロセスがある。また、人間の皮膚や眼(例えばその網膜)の画像を光学分析例えば分光分析する手法も、既に開発されている。本発明は、例えば、そうした非侵襲的プロセスで検査を実施する無人のメディカルキオスク、特に医学的検査用のキットを支給して検査行為を行わせその結果を分析するメディカルキオスクとして、実施しうる。また、本発明に係るメディカルキオスクには、それらのキットやその部品を廃棄又は浄化する自動浄化システムとしての機能も設けうる。
【背景技術】
【0003】
周知の非侵襲的検査手法としては、例えば人間の呼気中酸化窒素(NO)濃度レベルを計測して喘息性炎症を探す手法がある。この手法はAerocrine Inc.(www.aerocrine.com)が開発したものである(Aerocrineは登録商標)。また、呼気流量ピーク値を計測することにより肺疾患を発見、診断することもできる。この手法はSHL Telemedicine Ltd.(www.shahal.co.il)が開発したものである。更に、眼部画像を調べて疾病を非侵襲的に発見及び診断することもできる。この方法は白内障、緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性症、アルツハイマー症候群、薬物摂取等の発見、診断に役立つ方法であり、NASA Glenn Research Center(www.grc.nasa.gov)が盛んに開発している(NASAは登録商標)。また、非侵襲的な手法で糖尿病患者の血糖値を計測する技術も、数多くの企業により開発されている。例えば光学的技術を利用した血糖値計測法はUniversity of Texas Medical Branch, Department of Biomedical Engineering Texas A7Mが、またイオン電気泳動を利用した血糖値計測法はCygnus Inc.が、それぞれ開発したものである(Cygnusは登録商標)。そして、レーザ走査型共焦点顕微鏡を用いて皮膚癌を発見する手法は、Lucid Inc.(www.lucid-tech.com)が開発したものである。
【0004】
更に、利用者の心拍数や血圧といった基本的な生機能指標をモニタする機能を備える無人のメディカルキオスクも、既に市販されている。これについてはLifeClinic(www.lifeclinic.com)を参照されたい。例えば特許文献1(発明者:Giglio et al.)に記載の装置は、利用者の脂肪を調べその結果を含む個人データをプロセッサに送ってコンピュータで処理する。特許文献2(発明者:Bluth et al.)に記載のヘルスキオスクは、血圧検査、健康状態評価、薬物辞典表示等を実行する。また、無人キオスクの中には、ある種のスクリプトに沿って利用者と質問、応答を交わすことにより結論を導出し、それを利用者に提示して利用者自身が自分の状態、症状等をうまく判断、自己診断できるようにするものもある。例えば特許文献3(発明者:Iliff)に記載の手法では、複数種類の疾病スクリプト、対患者施療記録及び診断エンジンを用い、患者に対する自動診断セッションを実施して疾病スクリプトを処理し、施療記録に情報を追加していく。そして、駐在している看護師や随時派遣される看護師が特定種類の慢性病や軽度疾病をチェックする有人のメディカルキオスクも知られている。これについては、MinuteClinic(www.minuteclinic.com)を参照されたい。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0044560号明細書
【特許文献2】米国特許第6692436号明細書
【特許文献3】米国特許第6641532号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのメディカルキオスクは何れも病院や診療所に比べて利用しやすく(アクセス性がよく)、利用者が医療サービスを受けるのに便利である。しかしながら、既存の無人キオスクには能力上の限界があり、幅広い診断サービスを提供することができなかった。それは、新品の医学的検査キットを自力調達する機能、検査結果を分析する機能、無菌環境を維持する機能、使用済医学的検査キットをリサイクル又は廃棄する機能等が、欠けていたからである。有人キオスクであれば無人キオスクよりは高度な検査検診プロセスで利用者を診断することができ、また使用済検査器具の廃棄や滅菌を行うこともできるが、営業時間及び設置場所が限られ人件費もかかるため、無人キオスクに比べ不便、不都合な面がある。
【0007】
そのため、市場からの要求に応えるには、より便利でアクセス性がよい場所でより多種類の医学的検査診断プロセスを提供できる無人メディカルキオスクを実現し、それによってメディカルキオスクの利便性を更に高める必要がある。同時に、清潔さや利用者のプライバシーも、確実に守ることができねばならない。
【0008】
即ち、本発明の目的は、医療サービスを提供するキオスクであるメディカルキオスクを改良し、実施する医学的検査の決定及びそのためのキットの支給から検査行為の実行を挟んで使用済キットの浄化及び検査結果記録に至るプロセスを、そのキオスクで実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成し、非侵襲的医学的検査プロセスを無人メディカルキオスクで実施できるようにするため、本発明においては、医学的検査キットを配布、回収及び分析する機能を無人メディカルキオスクに持たせることとする。この無人メディカルキオスクには、例えば、既往症をモニタする機能、未処置の症状乃至疾病を発見、診断する機能、医療用消耗品を支給する機能、そうした消耗品やキオスク自体の清潔さを保つ機能等を設ける。
【0010】
本発明に係る無人メディカルキオスクには、これ以外にも様々な機能を設けることができる。設けうる機能としては、非侵襲的医学的検査用のキット(リサイクル可能型でも使い捨て型でもよい)を支給する機能、基本的な保健用品を支給する機能、キオスクに付帯する設備を用い医学的検査プロセスを実施する機能、検査結果を分析し状態、症状又は診断結果情報を提示する機能、検査結果を利用者に提示し、専門家や保険会社に通知しまた電子カルテ(EPR)に記載する機能、医学的検査キットを回収してそのリサイクル対象外部品を廃棄し残りを浄化することにより清潔さを保つ機能、医学的検査キットのリサイクル対象部品を滅菌する機能等がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重要なことに、検査結果や医事情報に関し利用者のプライバシー及びセキュリティを確保しつつ、比較的直截な検査行為を戸惑いなく実行できるメディカルキオスクを、実現することができる。また、利用者がそのキオスクをその後も引き続き利用するか否かは、一つにはそのキオスクが隅々まで衛生的なシステムであるか否かにもよる。本発明では、医学的検査キットの支給及び回収を、厳密に管理された衛生環境にて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の目的、構成及び効果についてより明らかにするため、本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。以下の説明では、本発明に係る装置の構成部分、並びに本発明に係る装置と直接に連携する装置を主題とするので、さほど具体的に図示若しくは説明していない部品乃至装置もあるが、それらについては、本件技術分野で熟練を積んだ者(いわゆる当業者)にとり周知の様々な形態を採りうるものと理解されたい。
【0013】
これから説明する種々の実施形態に共通する基本的な仕組みは、実施する医学的検査の決定及びそれ用のキットの支給から検査行為の実行を挟んで使用済キットの回収及び浄化並びに医療廃棄物の廃棄及び検査結果の記録まで、無人のメディカルキオスクにて行うというものである。
【0014】
スタンドアロン実施形態に係るメディカルキオスク
図1に、本発明の第1実施形態に係るメディカルキオスク10を示す。本キオスク10は、種々の医学的検査キットを支給し種々の医学的検査プロセスを単独で実施する。
【0015】
本メディカルキオスク10がスタンドアロンで実施できる医学的検査プロセスとしては、コレステロール値、血糖値、薬物摂取、アルツハイマー症候群、妊娠関連、検眼、唾液、血液、皮膚、体液、身体撮影、心電図、HSI(hyperspectal imaging)、MSI(multispectral imaging)、酸素代謝等のプロセスがあり、それを更に分類すると、利用者に所要キットを支給し自力で即ち人的支援なしで検査行為を行わせるプロセスと、キット支給なしでその場で検査行為を行わせるプロセスとに分けられる。キット支給を伴うプロセスは種々に分類でき、例えば構成部品に着目してリサイクル可能部品のみからなるキット、使い捨て部品のみからなるキット並びに両者混用キットの三種類に分けることや、中身の性質に着目して器具備品キット20、サンプル採取キット30及び保健用品キット40の三種類に分けることができる。
【0016】
器具備品キット20は、実施する医学的検査プロセスの種類に応じ中身を入れ替えて使用されるカスタム可能なキットである。例えば網膜分析を行う際には、網膜走査像撮影用のレンズをキット20に入れて支給する。利用者は、そのレンズをディジタルカメラに装着し、自分で網膜走査像を撮影する。また、例えば利用者の身体を撮影する際には、ディジタルカメラをキット20に入れて支給する。利用者は、そのカメラを用い自分の身体を撮影する。その撮影場所はそのキオスク10だけとは限らず、入れるカメラを無線ディジタルカメラにしておけば、利用者がそれを持ち帰り自宅で撮影することもできる。次に、サンプル採取キット30は、サンプル採取装置入りのキットであり、その装置を用いて採取されたサンプル、例えば呼気、唾液、毛髪等はキット30ごと回収され分析に回される。そして、保健用品キット40は、医療用又は健康維持用の消耗品、例えば創傷の治癒を促進する特殊な包帯等が入っているキットである。
【0017】
本メディカルキオスク10で行われる医学的検査プロセスの多くはこうしたキットの支給を伴うプロセスであるが、先に触れたようにキット支給なしでキオスク10の現場で検査行為を行うプロセスもあり、その例としては利用者の皮膚の撮影がある。即ち、本キオスク10には高解像度のディジタルカメラ54が固定紐で結び付けられているので、そのカメラ54を利用して利用者の皮膚等を撮影し、そのディジタル画像を診断に供することができる。取得した画像即ち利用者の皮膚の画像を分析することにより、創傷の手当・治癒の状況や、あざ・ほくろ・しみの分析等、皮膚状態に関する種々の判断、診断を下すことができる。
【0018】
本メディカルキオスク10の本体には、これ以外にも、多目的のディジタルカメラ50や対話型の表示部52等、様々な特徴部分がある。中でもカメラ50は、網膜分析用の網膜走査像を撮影するのに使用することができる。更に、このカメラ50を利用して利用者の動画を撮影しリアルタイム通信を行うことで、その患者と、離れた場所にいる専門家や相談相手とが、互いの画像を送り会話することができる。カメラ50は、更に、本キオスク10を利用中の人物が誰なのかを、既存の画像識別手法により確認する手段としても、使用できる。また、表示部52は、利用者に対し指示を与え、医療情報を提供し、診断、対話セッションを通じて得られた検査結果を通知するのに使用することができる。そのユーザインタフェースは例えばタッチスクリーンであり利用しやすく、医学的検査プロセスの実施中に利用者を的確に誘導することができる。表示部52上に医師、専門家、相談相手等の生映像を表示させることもでき、また何れかのサイトから静止画や動画をダウンロードして表示部52の画面上に表示させることもできる。
【0019】
EPR利用実施形態に係るシステム及びデータ交換形態
図2に、本発明の第2実施形態に係るシステムの構成及びそのシステムにおけるメディカルキオスク間データ交換形態を示す。この図に示すシステムは、複数個のメディカルキオスク10,460及び中央サーバ430をネットワークを介し相互接続した構成を採っている。各メディカルキオスクは、スタンドアロンの装置としても機能するが、ネットワーク的に機能させることで更なる機能を提供しうる。即ち、図中キオスク10を例として示してある通り、本システムを構成する各キオスクは、ネットワークを介しEPRにアクセスすることができ、そのアクセスにより、実施する医学的検査を決めることやEPRを更新することができる。加えて、各利用者の主治医、家族、保険会社等といった関係者に、ネットワーク経由で検査結果を通知することができる。これについては、本願出願人が特許を受ける権利を保持している係属中の米国特許出願第10/991553号も参照されたい。
【0020】
本システムでは、利用者がメディカルキオスク10の操作を開始すると、まずはその利用者の個人認証を行ってから医学的検査プロセスを開始する(図3;100)。利用者を特定し個人認証する手段としては、例えばEPRメディカルアクセスカード470を使用する。それが済むと、キオスク10は、カード470やローカルの記憶装置410上に格納されているEPR版カルテ400にアクセスする。このカルテ400にはその利用者についての情報、例えば本人を特定するための情報、施療の記録、今後のケアプラン(施療計画/援助指針)、本人の希望、施療記録へのアクセス許可レベル、並びに担当医及び保険会社についての情報を含んでいる。キオスク10は、インターネット又はLAN/WAN420への接続を介し中央サーバ430にアクセスできるので、必要な場合は、サーバ430又は他のキオスクからカルテ400を取得することもできる。カルテ400上のケアプランから見てある種の医学的検査が必要と認められる場合、本キオスク10は、その検査を実施する必要があることをその利用者に通知する(図3;110)。その際、利用者に対し複数の検査項目を示し、実施する検査項目を利用者が自分で選択するようにしてもよいし、利用者が検査以外のサービスを選択できるようにしてもよい。また、その利用者についてまだケアプランが決まっていない場合は、この段階で、どういったサービスの実施を望むかを利用者自身に選ばせるようにするとよい。なお、医学的検査プロセスの起動手段として一般のクレジットカードを使用することもできる。
【0021】
リサイクル対象部品及び使い捨て部品の処置
上掲の何れの実施形態においても、医学的検査キットの処置は、概略、キット支給器70を用いてそのキットを支給し、キット回収器75を用いて使用済のキットを回収し、回収したキット内のリサイクル対象部品を滅菌してリサイクルする一方リサイクル対象外部品を廃棄する、という手順で実施する。
【0022】
図3に、メディカルキオスク例えば10におけるリサイクル対象部品及び使い捨て部品の処置手順を示す。この手順は、利用者の個人認証が済んだら開始される(100)。開始後、キオスク10はまず実施する医学的検査を決め(110)、次いでその検査を実施できるようにカスタマイズされている医学的検査キットを、キット支給器70を介し自動支給する(120)。キットとしては、器具備品キット20、サンプル採取キット30及び保健用品キット40の何れが支給されることもある。
【0023】
キット支給器70を介し医学的検査キットを支給するのに前後して、メディカルキオスク10は、利用者に対しそのキットを用いた検査行為の実行要領を教える。これは、例えば表示部52の画面上に指示を表示させることで行ってもよいし、同じく表示部52を動画表示モードにして映像付の会話で行ってもよい。後者の場合、その検査の最初から最後まで、医療の専門家が利用者に逐一指示を出すことができる。
【0024】
利用者は、教えられた要領に従い検査行為を実行した後(130)、そのメディカルキオスク10の前面にあるキット回収器75の中に、使用した医学的検査キットを余すところなく返戻する(140)。スタンドアロンの実施形態では、回収したキットについての分析(150)を内部的に行う。ネットワークを利用できる実施形態では、キオスク10の内部だけでなく、別の場所にある分析サイトに行わせることもできる。何れにせよ、分析中は、キオスク10の前面にある検査進行度指示器60を用いた音声出力や画像表示で、処理の進捗に関する情報を利用者にフィードバックするとよい。
【0025】
利用者は、検査又は分析が済んだ後に、どのような装置を執るかを自分で決めることができる(160)。選択肢としては、検査又は分析の結果をその場で表示部52の画面上に表示させる、恒久保存できるよう印刷する、自分のEPRに追加させる、自分の家族がアクセスできる状態にする、外部リンク450(図2)を介し主治医、専門家、保険会社等に通知する、等の選択肢がある。
【0026】
更に、利用者が安心して継続利用できるようにするには、メディカルキオスク10を構成するシステムをあらゆる面から厳密に管理し、その衛生環境を維持、確保する必要がある。そのため、図示の手順では、キオスク10の前面にあるキット回収器75によって医学的検査キットや消耗品を漏れなく回収し、そのキオスク10の環境を清潔で汚れのない状態に維持するようにしている。キオスク10の内部では、回収物をリサイクル対象部品と使い捨て可能な部品とに分別し、厳格に定められている衛生保持ガイドラインに従って処分する。
【0027】
即ち、本メディカルキオスク10では、回収物のうちリサイクル対象になる部品、例えば再利用可能型の検査器やサンプル回収用のチャンバを、隅々まで浄化、消毒、滅菌する(172)。滅菌は、その部品を殺菌釜に入れることによって行ってもよいし、信頼できる化学薬品を用いその部品を洗浄することによって行ってもよい。浄化や滅菌が済んだら、その部品を別の1個又は複数個の医学的検査キットに装着し、再利用に供する(174)。なお、リサイクル対象部品の滅菌はキオスク10内で行うのが望ましいが、サービスマンが回収して別の場所で滅菌し、後日新たな医学的検査キットに組み込むようにしてもよい。但し、キオスク10内で滅菌を行う方が、保守担当者が部品を補充するより低コストになるであろう。更に、キオスク10内部での滅菌には、滅菌釜等のように、定評のある手段を用いるとよい。また、部品毎に形状や寸法が異なるので、滅菌した部品を新たな医学的検査キットに組み込む際には、例えばコイン選別装置のような選別システムを用いるとよい。
【0028】
回収物のうち医学的検査キットの使い捨て部品や消耗品等は、医療廃棄物として処分する(182)。即ち、メディカルキオスク10に設けられている1個又は複数個の廃棄物容器に、それらの部品、消耗品を(分別して)入れていく。どのようなものを医療廃棄物として処分するか、またそれをどのように処分するかについては、予め十分な検討の上貯蔵廃棄ガイドラインを作成しておき、それに従って処分するようにする。更に、医療廃棄物用の容器は、そのキオスク10の利用者即ち専門家でない者でも問題なく利用できるように、設計しておく。例えば、注射針やそれに類するものの廃棄に使用される容器と同じく、内容物たる使用済物品の遺漏、紛失が生じないように、構成しておくとよい。本システムは、例えば、廃棄物容器を丸ごと交換できるように構成しておく。
【0029】
リサイクル対象部品及びリサイクル対象外部品双方を含む医学的検査キットについては、上掲の手順を併せ実行する。即ち、リサイクル対象外部品を医療廃棄物として廃棄した上で(182)リサイクル対象部品を浄化し(184)、新たな消耗品と組み合わせて(186)別の1個又は複数個の医学的検査キットに装着し(188)、後の利用に供する。これはいわば保守機能の一種であり、これを自動実行するシステムは、通常水準の機械技術者であれば随意に設計、製作することができよう。
【0030】
メディカルキオスク10では、更に患者から患者への伝染等を防ぐための浄化措置も実施する。例えば、キオスク10を囲むようにカーテンを巡らし周囲に消毒薬をスプレーする。これは、キオスク10に自動システムを設けその自動システムに実行させるとよい。但し、別に人員を手当てして浄化を実施するようにしてもよい。
【0031】
キオスク外キット利用
図3に示した手順では、実施する医学的検査の決定及びその検査用のキットの支給から検査行為の実施を経て結果の通知に至るサイクル全体を、1個のメディカルキオスク10の現場にて行っているが、上記各実施形態は、このサイクルの一部をそのキオスク10とは別の場所で行えるような手順、或いはキオスク10内セッションを複数に分ける手順でも、実現することができる。
【0032】
図4にその種の手順を示す。この手順では、利用者が操作を開始するとメディカルキオスク10がまず実施所要な医学的検査を決定し(200)、そのためのキットを支給すると共にその用法についての指示を与える(210)。この段階でキオスク10での初期セッションが終わる。利用者は、そのキットを持参して別の場所例えば自宅に行き、サンプルの採取等、必要な検査行為を自分で実行する(240)。利用者は、後刻そのキットをキオスク10に返戻する(260)。また、図2に示した実施形態ではネットワーク経由でEPR版カルテ400にアクセスできるので、患者は、検査行為終了後に、支給元のキオスク10とは別のメディカルキオスク460にそのキットを返戻することもできる。各キオスク10,460では返戻されるキットをキット回収器75で回収する。これによって、その医学的検査プロセスが終了する(280)。その際、必要なら、EPRの更新、第三者への結果送信等を行わせることもできる。
【0033】
本手順の変形例としては、利用者が医師等のヘルスケアプロバイダから医学的検査キットを受け取り必要な指示を受ける(220)手順がある。この手順でも、利用者は別の場所に行ってサンプル採取等の所要処置を執ることができる(240)。利用者は、検査行為終了後に、使用したキットを何れかのメディカルキオスクに返戻する(260)。そのキオスクではそのキットをキット回収器75にて回収し、これでその医学的検査プロセスを終える(280)。その際、必要なら、EPRの更新、第三者への結果送信等を行わせることもできる。
【0034】
システム構成
本発明の各実施形態に係るメディカルキオスク例えば10は、図5に示す可換型基盤上に構築されている。
【0035】
この可換型基盤には、経済的、サイズ的及び使用性上の利点がある。まず、使用しないモジュールを組み込まないようにすることができるため、その分安上がりで経済的である。また、入力又は分析用のモジュールを組み込む必要がある場合でもモジュールの個数だけでキオスクサイズが決まる。そして、必要なモジュールだけを組み込めばよいので余分な機能、検査項目を学ぶ面倒がなく、使用性が高い。
【0036】
このような可換型基盤上に構築されたメディカルキオスクは、それを取り巻く状況の様々な違いに対処することができる。まず、高齢者介護施設と大学のキャンパスと小学校では、その環境が質的に異なり、利用者の統計的構成や行動スタイルが異なり、ひいては必要な医学的検査の種類も異なる。可換型基盤ならこうした分野の違いに対処できる。また、小規模な病院や診療所に比べると、街頭には、検査を迅速に行わねばならない、プライバシーを守りにくい等の特性がある。可換型基盤ならこうした立地の違いにも対処できる。更に、可換型基盤なら複雑度の異なる種々の医療サービスを提供できる。また、そのメディカルキオスクの利用者層や設置場所の性質によっては現場での人的支援が必要になることがあり、必要とされる支援レベルも事務員レベル、技師レベル、看護師レベル等と異なるものである。可換型基盤ならそうした所要支援レベルの違いにも対処できる。また、一般人向けの検査を嫌う利用者層もあるし、難病や伝染病の検査を嫌う利用者層もある。可換型基盤ならそうした利用者層の違いにも対処できる。そして、例えばSARSクリニックで実施したいのは疾病時の体温上昇を検知できる検査のみ、というように、キオスク10の購入者がある特定の検査しか求めていない場合がある。可換型基盤ならそうした所有者意向の違いにも対処できる。
【0037】
本発明を実施するに当たっては、メディカルキオスク内に、例えば図5に示す六種類の可換モジュールを設けることができる。そのうち五種類は、それぞれ画像を収集して分析するモジュール310、採取された唾液を分析するモジュール320、採取した呼気を分析するモジュール330、採取された皮膚若しくは皮下組織を分析するモジュール340、並びに網膜若しくは眼部の走査結果を分析するモジュール350である。そして、これから開発される可換モジュール即ち将来モジュール300を加える余地も準備されている。
【0038】
また、図中の基本モジュール360は、どのような種類のメディカルキオスクでも必要になるモジュールである。この基本モジュール360は、プロセッサ、メモリ、記憶部等、昨今のパーソナルコンピュータ(PC)に標準実装されている諸機能構成要素を利用して、或いはそれらに何らかの機能要素を追加することによって、実現される。その例としては、血圧計、基礎的な心機能検査器、ソフトウェア及びハードウェアによるEPR読み書きモジュール、課金モジュール、対中央サーバ/インターネット接続部、追加サービス提供モジュール、外部/付加記憶装置等がある。追加サービスとは、例えば追加料金を支払い医師や看護師と通信するサービスや、第三者に画像やカルテを送信するサービスのことである。この他にも、必要に応じ、様々な基本モジュール360を設けることができる。
【実施例1】
【0039】
器具備品キットの例−網膜走査用接眼レンズ
図6A及び図6Bに、接眼レンズ500入り医学的検査キット及びそれを利用して網膜走査を実施するシステムを示す。本システムにおいては、例えばメディカルキオスク10のキット支給器70から、レンズ500入り器具備品キット20を利用者に支給する(520)。図示の如く、支給器70としては医学的検査キット支給システム515が設けられており、利用者は、そのシステム515内に置かれたキット20を受け取りそこから網膜走査用用のレンズ500を取り出す。キオスク10は、次いで、その表示部52の画面上に、患者に対する指示を表示させる。その指示は、本キオスク10に設けられているスロットにそのレンズ500を差し込めという指示である(522)。但し、レンズ500をディジタルカメラ50の前面に装着させるようにしてもよいし、固定紐でキオスク10につながれている高解像度のディジタルカメラ54に取り付けさせるようにしてもよい。キオスク10は、患者に対し、レンズ500をのぞき込みレンズ内目印510の中心にぴったりと焦点を合わせるように指示した上で、その利用者の網膜を高解像度撮影する(524)。撮影した画像はそのキオスク10内で分析するか或いは別の場所に送ってそこで分析させる。分析中は、検査進行度指示器60を利用した表示により、分析中であることが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【0040】
翻って、検査を終えた段階で、メディカルキオスク10は、接眼レンズ500を器具備品キット20内に戻してキット回収器75に入れるよう利用者に指示する。それに応じて入れられたキット20はキオスク例えば10の内部に回収する(526)。そのレンズ500が使い捨て型である場合は、キオスク10は、そのレンズ500(又はそれが入ったキット20)を、適当なやり方で廃棄する。再利用可能型である場合は、全ての部品を浄化及び滅菌してキット20内に戻し、それをシステムにセットして再び使用できるようにする。
【実施例2】
【0041】
器具備品キットの例−ディジタルカメラ用フィルタ
図7A及び図7Bに、ディジタルカメラ用フィルタ入りの医学的検査キット及びそれを用い人体を分光撮影するシステムを示す。人体の分光撮影即ち特定スペクトル領域における人体画像の撮影は、創傷、感染症、腫瘍等の分析及び診断に有用である。その際、メディカルキオスク例えば10から支給されるフィルタをカメラに装着することで、所望の電磁波スペクトル領域例えば近赤外領域の像を撮影することができる。
【0042】
このシステムでは、例えばメディカルキオスク10が、フィルタ550入り器具備品キット20をキット支給器75を用い利用者に支給し(554)、表示部52を用い利用者に指示を与える(556)。即ち、そのフィルタ550を本キオスク10のフィルタホルダ552内に差し込むよう指示する。但し、そのフィルタ550をディジタルカメラ50の前面に装着させるようにしてもよいし、固定紐でキオスク10につながっている高解像度のディジタルカメラ54に取り付けさせるようにしてもよい。キオスク10は、利用者に対し、検査対象部分の皮膚をカメラ50又は54に向けるよう指示した上で、その皮膚サンプルを高解像度撮影する(558)。撮影した画像はキオスク10内で分析するか或いは別の場所に送ってそこで分析させる。分析中は、キオスク10の検査進行度指示器60を用いた表示により、そのことが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【0043】
翻って、検査を終えた段階で、メディカルキオスク例えば10は、フィルタ550を器具備品キット20内に戻してキット回収器75に入れるよう利用者に指示し、入れられたキット20を回収する(560)。そのフィルタ550が使い捨て型である場合は、キオスク10は、そのフィルタ550(又はそれが入ったキット20)を適当なやり方で廃棄する。再利用可能型である場合は、全ての部品を浄化及び滅菌してキット20内に戻し、それをシステムにセットして再び使用できるようにする。
【実施例3】
【0044】
器具備品キットの例−ポータブルディジタルカメラ
図8A及び図8Bに、それぞれ、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの例として、容器577の中にポータブルディジタルカメラ575を入れた器具備品キット20を示す。このカメラ575は様々な種類の画像の撮影に使用できる。例えば、キオスク10に実装されているディジタルカメラ50及び54の視野に入らない身体部位でも、ポータブルなこのカメラ575ならば撮影することができる。また、カメラ575を支給するのであれば、キオスク10にカメラ50及び54を装備する必要すらない。更に、このカメラ575が入ったキット20を用いれば、網膜走査を実施し、皮膚サンプルや創傷手当部位の分光分析を実施する等、利用者は自分で画像を撮影することができる。特定スペクトル域を通すためのフィルタも支給すればよい。また、このカメラ575は、キオスク10に紐等で物理的に固定しておいてもよいし、Bluetooth(登録商標)接続やRF接続等、適当な無線プロトコルを使用してキオスク10と通信する構成としてもよい。
【0045】
また、このディジタルカメラ575はポータブルであり別の場所に運ぶことができるので、利用者は、プライバシーが保たれる別の場所で自分の皮膚や創傷の写真を撮影することができる。カメラ575には、別の場所に運んで使用することができるよう、駆動用の電池の他に画像記憶用のメモリが入っているので、利用者は、後刻ネットワーク経由で何れかのメディカルキオスクに接続してメモリ内の画像を送信等することができる。これにより医学的検査プロセスが終了する。
【0046】
また、ポータブルディジタルカメラとして、図8Bに示すように望遠レンズ576付のものを使用することもできる。望遠レンズ576付であれば、皮膚の接写画像や拡大画像を撮影することもできよう。
【0047】
更に、ポータブルディジタルカメラ575は使い捨て型としてもよいし再利用可能型としてもよい。再利用可能型の場合は、メディカルキオスク例えば10にてその器具備品キット20の全構成部品を浄化及び滅菌し、然る後そのキット20をシステム内にセットして、再利用できる状態にする。使い捨て型の場合は適当な方法で廃棄する。
【0048】
分析結果は、表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じて処理する。希望があれば、暗号化された電子メールの形態で、第三者に結果を送信してもよい。
【実施例4】
【0049】
器具備品キットの例−使い捨て型皮膚センサ
図9に、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの例として、使い捨て型皮膚センサ入り器具備品キット20を示す。この種のセンサが入ったキット20を使用する場合は、まずメディカルキオスク例えば10のキット支給器70からそのキット20を利用者に支給する。利用者がそれを受け取ったら、キオスク10はその利用者に対する指示を表示部52の画面上に表示させる。即ち、皮膚センサの付いた使い捨て型の指サック(又は手袋)580を指(又は手)に装着し、キオスク10の前面にあるタッチパッド582にそれで触れるよう指示する。利用者がタッチパッド582に触れるとその皮膚センサとタッチパッド582との間で通信が行われ、皮膚温度、皮膚水分量等の計測結果が皮膚センサからタッチパッド582に入力される。タッチパッド582を光源として構成・使用し分光分析を行ってもよいし、タッチパッド582から微小電流を流して検流分析を行ってもよい。何れにせよ、得られた情報はキオスク10内でローカルに、或いは他の場所に送られそこで、分析される。分析中は、キオスク10の検査進行度指示器60を用いた表示により、そのことが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【0050】
翻って、検査を終えた段階で、メディカルキオスク10は、皮膚センサ付の指サック(又は手袋)580を器具備品キット20内に戻してキット回収器75に入れるよう指示する。キオスク10は、そのキット20を回収し指サック(又は手袋)580を適当なやり方で処分する。
【実施例5】
【0051】
サンプル採取キットの例−風船又はチャンバ型呼気サンプル採取器
図10A〜図10Cに、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの例として、呼気用のサンプル採取キット30の例を示す。そのうち図10Aに例示した採取用風船600は、キット30に出し入れして使用される呼気サンプル採取手段であり、その内部への呼気の吹き込み口となるマウスピース610と、吹き込み時に開ける又は開くバルブ620とを備えている。使用時には、この風船600入りのキット30をメディカルキオスク例えば10から利用者に支給し、利用者の呼気が詰まった風船600入りのキット20を利用者から回収する。キオスク例えば10では、その風船600から呼気を回収して分析する。また、この風船600は一部再利用型にすることも使い捨て型にすることもできる。一部再利用型にする場合、キオスク10ではマウスピース610を外して廃棄する一方、風船600の本体を浄化、滅菌することで後に使用できる状態にし留置する。使い捨て型にする場合は、キオスク10は風船600を丸ごと廃棄する。
【0052】
また、図10Cに例示した呼気サンプル採取用の使い捨て型呼気チャンバ650は、サンプル採取キット30に入った状態で使用され、利用者が吹き込む呼気で満たされると膨満してそのタブが跳ね上がる。即ち、タブが跳ね上がっていれば呼気入りであるということである。分析が済んだら、このチャンバ650はメディカルキオスク例えば10内で廃棄される。
【0053】
採取用風船600又は呼気チャンバ650入りのサンプル採取キット30は、図10Bに示す手順で、利用者に支給しメディカルキオスク例えば10に回収する。
【0054】
呼気サンプルの採取を伴う医学的検査の例としては、呼気サンプルを利用した血糖値の分析がある。呼気サンプルを採取し血糖値を調べる際には、まずメディカルキオスク例えば10から利用者に、キット支給器70を介し呼気用のサンプル採取キット30を支給する。利用者は、そのキット30を受け取った上で、表示部52の画面上に表示される指示に従い、サンプルチャンバ即ち採取用風船600又は呼気チャンバ650の内部に自分の息を吹き込む。利用者は、呼気を吹き込んだ風船600を再装着したキット又は呼気で膨らんだチャンバ650が入っているキットを、キット回収器75に入れる。キオスク例えば10は、そのキット30を回収して風船600又はチャンバ650内の空気サンプルを取り出し分析する。分析中は、キオスク10の検査進行度指示器60を利用した表示により、そのことが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【実施例6】
【0055】
サンプル採取キットの例−ホイッスル型呼気サンプル採取器
図11A〜図11Cに、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの例として、呼気用のサンプル採取キット30の他の例を示す。そのうち図11Aに例示したのは使い捨て可能型の呼気ホイッスル660である。利用者がこのホイッスル660の中に息を吹き込むと、その呼気の圧力によって吹き口側エアバルブ670及び逃げ口側エアバルブ674が開く。利用者は、逃げ口680から音がしたら吹き込みをやめればよい。利用者が呼気の吹き込みをやめると、バルブ670及び674がぴたりと閉まるので、それらの間に呼気サンプルを捉えることができる。然る後、図11Bに示すように、そのホイッスル660をキオスク例えば10の前面にあるスロット690に差し込んでリリースバルブ672を押せば、ホイッスル660内の呼気サンプルがキオスク10内に入っていく。キオスク10では、こうして回収した呼気サンプルを分析する。分析中は、キオスク10の検査進行度指示器60を利用した表示により、分析実行中であることが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【0056】
また、図11Cに例示したのは紐付き呼気ホイッスル685である。このホイッスル685は、管状の紐によりメディカルキオスク例えば10につながっている。利用者は、支給される使い捨てカバーをホイッスル本体に被せ、そのカバーを介して息を吹き込み管を介してキオスク10内に送り込む。内部に所要量以上の呼気サンプルが入ると、ホイッスル685から音が出る。
【0057】
メディカルキオスク例えば10は、検査行為が済んだらそのホイッスル又はそのカバーをサンプル採取キット30内に戻しキット回収器75内に返すよう、利用者に指示する。キオスク10は、そのキット30を回収しホイッスルカバーを適当な方法で廃棄する。
【実施例7】
【0058】
サンプル採取キットの例−唾液サンプル採取器
図12に、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの一例として、唾液用のサンプル採取キット700を示す。この例では、利用者がキット700を開けると唾液サンプル採取器、例えば口腔スワブ710、ロリポップ720、チューインガム730等の物品がでてくる。スワブ710は、口腔内又は咽喉内を拭って唾液サンプルや咽喉内雑菌を採取するのに使用される。ロリポップ720には多孔質面があり、なめた人の唾液はその面から内部にしみ込んでいく。ガム730も唾液を吸収する。何れの場合でも、利用者が使用済のサンプル採取器をキット700内に戻し、そのキット700をキット回収器75内に返すと、キオスク10が、そのキット700内の採取器からサンプルを回収して分析し且つその採取器を適当な方法で廃棄する。分析中は、そのキオスク10の検査進行度指示器60を利用した表示により、分析実行中であることが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【実施例8】
【0059】
サンプル採取キットの例−皮膚サンプル採取器
図13に、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの一例として、皮膚用のサンプル採取キット750を示す。皮膚サンプルを採取するのは、パルスオキシメトリ、OCT(optical coherence tomography)、蛍光撮影、LDF(laser Doppler flowmetry)、PPG(photoplethysmography)、サーモグラフィ、IR分光(infrared scpectroscopy)、PAS(photoacoustic spectroscopy)、ラマン分光、EIS(electrochemical impedance spectroscopy)、LSI(laser speckle imaging)、心電図検査、心エコー検査、 筋電図検査、共焦点顕微鏡分析、MPM(multiphoton microscopy)等に関連して、情報を得るためである。図示例では、まずメディカルキオスク例えば10にて利用者にキット750を支給する。その中には布ヤスリ760が入っているので利用者はこれを取り出す。キオスク10は、布ヤスリ760で自分の皮膚をこするよう利用者に指示する。利用者がこれに従い皮膚をこすると皮膚細胞が僅かに削げ布ヤスリ760に付着する。利用者は、指示に従い布ヤスリ760を巻き上げて止め、その巻物770をキット750内に入れ、そのキット750をキオスク例えば10内に返す。キオスク10はその巻物770を分析して廃棄する。分析中は、そのキオスク10の検査進行度指示器60を利用した表示により、分析実行中であることが利用者にわかるようにする。分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【実施例9】
【0060】
サンプル採取キットの例−毛髪サンプル採取器
図14に、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの一例として、毛髪用のサンプル採取キットを示す。毛髪には、DNA情報に加え薬物使用及びその量についての情報も含まれているので、毛髪サンプルをメディカルキオスク例えば10に回収して検査することは、有益なことである。また、この図には、毛髪サンプルをキオスク10内に回収する方法が四種類示されている。そのうち一種類目及び二種類目の方法は、書籍型毛髪採取器800及び810(同順)を用いる方法である。この方法では、採取器800及び810により毛髪を掴み取り、キオスク例えば10内に入れて分析する。三種類目の方法は、ハンドルの付いた接着剤型毛髪採取器820を毛髪上に載せ引っ張ることで、その接着剤に貼り付いた毛髪をサンプルとして刮ぎ取る方法である。四種類目の方法は、多くの歯が密に並んだ櫛型毛髪採取器830を用いて毛髪サンプルを掻き取る方法である。
【0061】
何れにせよ、分析が終わったら、その結果を表示部52の画面上に表示させ、或いは印刷する等、その利用者の希望に応じた処理を実行する。利用者からの指示があれば、検査乃至分析の結果を第三者に送信することもできる。送信には、暗号化された電子メールを使用する。
【実施例10】
【0062】
保健用品キットの例−治療用発光包帯
図15に、メディカルキオスクにて支給される医学的検査キットの一例として、保健用品キット900を示す。医学的検査キット900内に入っている包帯910は特殊な包帯であり、創傷の治癒を促進する機能を有している。即ち、支給されるキット900から利用者が包帯910を取り出すと、その包帯910は発光し始める。発光している包帯910を創傷の上に貼ると、それ以後数時間に亘る治癒促進プロセスが始まる。治癒促進プロセスが始まったら、利用者は、そのメディカルキオスク例えば10を離れて帰宅等することができる。包帯910は、適当な時間が経過した後例えば自宅にて外し、自宅のゴミと一緒に廃棄すればよい。
【0063】
また、包帯910内に電極を組み込んでおき、それをメディカルキオスク例えば10に接続して使用するようにしてもよい。接続先のキオスク10からその電極に信号が供給されると、その包帯910は発光する。利用者は、この発光による治癒促進プロセスが続いている間、即ち例えば5〜20分間、そのキオスク10に居続ける必要がある。治癒促進プロセスが終了したら、利用者は、キオスク10からの指示に従い包帯910を外して保健用品キット900内に戻し、それをキット回収器75内に返す。キット900はキオスク10内に回収され、包帯910は適当な方法で廃棄される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係り種々の試験プロセスをスタンドアロンで実施できるメディカルキオスクを示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係り電子カルテ(EPR)を利用するシステム及びそのシステムで交換されるデータを示す図である。
【図3】メディカルキオスクにおける医学的検査キット取扱手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】メディカルキオスクにおける医学的検査キット取扱手順の他の一例を示すフローチャートである。
【図5】システム構成を示す図である。
【図6A】医学的検査キットに入れる網膜走査用接眼レンズの構成を示す模式図である。
【図6B】図6Aに示したレンズの用法を示す模式図である。
【図7A】ディジタルカメラ用フィルタ入り医学的検査キットの構成及び用法を示す模式図である。
【図7B】図7Aに示したフィルタの用法を示す模式図である。
【図8A】ポータブルディジタルカメラ入り医学的検査キットの構成を示す斜視図である。
【図8B】そのカメラの別例構成を示す斜視図である。
【図9】医学的検査キットに入れる使い捨て型皮膚センサの構成を示す模式図である。
【図10A】医学的検査キットに入れる採取用風船の構成を示す模式図である。
【図10B】採取用風船又は呼気チャンバの支給及び回収方法並びに用法を示す模式図である。
【図10C】呼気チャンバ入り医学的検査キットの構成及び用法を示す模式図である。
【図11A】医学的検査キットに入れる呼気ホイッスルの構成を示す模式図である。
【図11B】その用法を示す模式図である。
【図11C】呼気ホイッスルカバー入り医学的検査キットの構成及び用法を示す模式図である。
【図12】唾液サンプル採取器入り医学的検査キットの構成を示す模式図である。
【図13】皮膚サンプル採取器入り医学的検査キットの構成及び用法を示す模式図である。
【図14】医学的検査キットに入れる毛髪サンプル採取器の構成を示す模式図である。
【図15】保健用品(治療用発光包帯)入り医学的検査キットを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
10,460 メディカルキオスク、20 器具備品キット、30,630,700,750 サンプル採取キット、40,900 保健用品キット、50,54,575 ディジタルカメラ、52 表示部、60 検査進行度指示器、70 キット支給器、75 キット回収器、100,200 キオスク到着ステップ、110 実施検査決定ステップ、120,210,520,554 キット支給ステップ、130,240 検査行為実行ステップ、140,260,526,560 キット回収ステップ、150 結果分析ステップ、160,280 結果通知カルテ更新ステップ、172,184 部品浄化滅菌ステップ、174,188 キオスク内留置ステップ、182 部品廃棄ステップ、186 消耗品補填ステップ、220 キット受領ステップ、300 将来モジュール、310 自然画像分光画像収集分析モジュール、320 唾液分析モジュール、330 呼気分析モジュール、340 皮膚皮下組織分析モジュール、350 網膜分析モジュール、360 基本モジュール、400 EPR版カルテ、410 メディカルキオスク内記憶装置、420 インターネット又はLAN/WAN、430 中央サーバ、450 外部リンク、470 EPRメディカルアクセスカード、500 接眼レンズ、510 レンズ内目印、515 キット支給システム、522,556 装着ステップ、524,558 撮影ステップ、550 ディジタルカメラ用フィルタ、552 フィルタホルダ、576 望遠レンズ、577 カメラ容器、580 使い捨て型指サック(又は手袋)、582 タッチパッド、600 採取用風船、610 マウスピース、620 バルブ、650 呼気チャンバ、660 呼気ホイッスル、670 吹き口側エアバルブ、672 リリースバルブ、674 逃げ口側エアバルブ、680 逃げ口、685 紐付き呼気ホイッスル、690 スロット、710 口腔スワブ、720 ロリポップ、730 チューインガム、760 布ヤスリ、770 布ヤスリの巻物、800,810 書籍型毛髪採取器、820 接着剤型毛髪採取器、830 櫛型毛髪採取器、910 包帯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キオスクを利用して医療サービスを提供する方法であって、
実施する医学的検査を決定するステップと、
検査用のキットを支給するステップと、
検査行為が済んだ後そのキットを浄化するステップと、
検査結果を記録するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、上記医学的検査が、唾液分析、呼気分析、皮膚分析及び眼部分析のうち何れかを含む方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、更に、医療廃棄物を廃棄するステップを有する方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、更に、検査結果を報告するステップを有する方法。
【請求項5】
キオスクを利用して医学的検査用のキットを配布回収する方法であって、
キットを支給するステップと、
使用済のキットを回収するステップと、
そのキットのリサイクル対象部品を滅菌するステップと、
滅菌済部品をリサイクルするステップと、
を有する方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、更に、回収したキットのリサイクル対象外部品を廃棄するステップを有する方法。
【請求項7】
請求項5記載の方法であって、更に、滅菌済部品を医学的検査用の別のキット1個又は複数個に組み込むステップを有する方法。
【請求項8】
キオスクを利用して医学的検査用のキットを配布回収する方法であって、
キットを支給するステップと、
使用済のキットを回収するステップと、
そのキットのリサイクル対象外部品を廃棄するステップと、
を有する方法。
【請求項9】
キオスクを利用して医療サービスを提供する方法であって、
実施する医学的検査を決定するステップと、
サンプル採取用のキットをそのキオスクにて利用者に支給するステップと、
別の場所に運ばれサンプル採取に使用されたキットをその支給元のキオスク又はそれとは別のキオスクで回収するステップと、
を有する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、更に、回収したキットを浄化するステップを有する方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法であって、更に、キット支給元のキオスク又はそれとは別のキオスクにて検査行為を実施するステップを有する方法。
【請求項12】
請求項9記載の方法であって、更に、検査結果を記録するステップを有する方法。
【請求項13】
キオスクを利用して医療サービスを提供する方法であって、
医学的検査用のキットをヘルスケアプロバイダにて利用者に支給するステップと、
別の場所に運ばれサンプル採取に使用されたキットをキオスクにて回収するステップと、
を有する方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、更に、回収したキットを浄化するステップを有する方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法であって、更に、キオスクにて検査行為を実施するステップを有する方法。
【請求項16】
請求項13記載の方法であって、更に、検査結果を記録するステップを有する方法。
【請求項17】
キオスクを利用して医療サービスを提供する方法であって、
再利用又は使い捨てが可能な非侵襲的医学的検査用のキットを支給するステップと、
そのキットを用い又はキオスクに付帯する設備を用いて検査行為を行わせるステップと、
検査結果を分析するステップと、
状態、症状又は診断結果に関する情報を提示するステップと、
検査結果を報告するステップと、
使用済のキットを回収するステップと、
医療廃棄物を廃棄するステップと、
キオスクを浄化するステップと、
回収したキットのリサイクル対象部品を滅菌するステップと、
を有する方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、更に、基本的な保健用品を支給するステップを有する方法。
【請求項19】
医学的検査実施用の少なくとも1個の可換モジュールと、少なくとも1個の基本モジュールと、を備え、
その可換モジュールとして、カメラ若しくはフィルタを含む画像分析モジュール、唾液分析モジュール、呼気分析モジュール、皮膚分析モジュール及び網膜走査モジュールのうち少なくとも1個を備えるメディカルキオスク。
【請求項20】
請求項19記載のメディカルキオスクであって、上記基本モジュールとして、コンピュータ、血圧計、心機能検査器、施療記録作成モジュール、課金モジュール、インターネット接続部及びローカル記憶装置のうち少なくとも1個を備えるメディカルキオスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−522644(P2008−522644A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543122(P2007−543122)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/040694
【国際公開番号】WO2006/057816
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】