説明

医療器械装置用バックグランドミュージック装置

【課題】BGMで患者の精神的なストレスを緩和させ、音声ガイダンスが聞き取りやすくし、医療器械装置の検査結果の品質を向上できること。
【解決手段】医療器械装置10の音声ガイダンスを行うスピーカ11に入力される音声信号を検出する音声信号検出器12が、スピーカ11に入力される音声信号を検出していないとき、音声出力切替回路3は所定の音楽を再生するプレーヤー1からの音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替え、BGMを患者に聞かせる。音声信号検出器12が医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を検出したとき、当該スピーカ11に入力される音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替え、患者に音声ガイダンスを聞かせる。このとき、ヘッドホン7は、マイク8及び増幅回路9及び差動増幅回路5からなるノイズキャンセラーによってプレーヤー1から出力された音楽または医療器械装置10の音声ガイダンスから、医療器械装置10の周囲の騒音を除去してヘッドホン7の音声出力とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器械装置、例えば、CT装置の撮影タイミングを知らせる呼吸の息止め合図のないとき、バックグランドミュージック(以下、単に『BGM』と記す)を流し、患者(被検体者:以下、被検体者を「患者」と呼ぶ)の精神的なストレスを緩和させ、医師の指示をそのタイミングに合わせて実行できるようにし、X線コンピュータ診断撮影装置、医用画像撮影装置等の医療器械装置の検査結果の品質向上、患者の生理的なストレスの排除を行う医療器械装置用バックグランドミュージック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の医療器械装置の音声ガイダンス装置としては、特許文献1に記載の技術がある。即ち、診療台上の患者の存否、治療の進捗状況に応じて拡声スピーカから適切な音声ガイダンスを送出すると共に、診療台周辺のデンタルライトや、うがい用ベースン等の関連機器の動作制御を自動的に行う構成にしている。
特許文献1においては、治療の進捗状況に応じて拡声スピーカから適切な音声ガイダンスを送出することができても、或いは、治療の進捗状況に応じて周辺機器の制御が可能になっても、患者の生理的なストレスの排除を行うことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−305090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年、例えば、X線コンピュータ診断撮影装置のX線管の回転速度は、高速化の一途を辿っており、それに伴いベルトドライブ方式から、リニアモータドライブ等の静音機構が搭載された装置が商品化されている。このような、医療器械装置においては、高速化と、機械的(メカニカル的)な静穏機構は、並行して開発が進んできたが、高速回転に伴って自然発生する風切り音に関しては、完全に防ぐ技術的解決策は講じられていない。また、患者側で人体の耳に入る風きり音を防ぐ手段についても同様である。
特に、健常者の場合、この風切り音によって、撮影する直前のX線コンピュータ診断撮影装置等からアナンスされる息止め合図の音声が聞きづらいという指摘は殆ど無い。しかし、例えば、高齢者の場合には、無視できない状態にある。
【0005】
即ち、X線コンピュータ診断撮影装置による検査対象が高齢の患者の場合には、X線コンピュータ診断撮影装置による撮影時、X線管が装置のスキャナー本体内部で高速回転するから、撮影のタイミングではこの風切り音と、息止め合図の音声とが一致し、音声ガイダンスの息止めの指示に風きり音が重なり、音声ガイダンスだけを明瞭に聞き取れず、音声ガイダンスの息止め合図通りに息を止められないという事態がある。この場合、呼吸が止まっていない状態での撮影になり、撮影結果に動きによる虚像が診断画像に混入し不明瞭な画像となる。
【0006】
一方、X線コンピュータ診断撮影装置による検査対象が心臓の冠動脈検査の場合には、完全なる患者の息止めと、検査中における心拍動が安定した状態でなければ、患者の動きによる虚像(画像不良)が出現し、患者の画像を得ることができない。音声ガイダンスがしっかりと聞き取れないときの息止め不良が原因の虚像に加え、スキャナー本体内部でのX線管の回転による風切り音が患者に対する生理的なストレスを与え、検査を開始するときには、心拍動が極度に向上し、心臓の拍動の周期、動きが不安定になり、診断画像が不明瞭になることがある。
現在のX線コンピュータ診断撮影装置の精度として0.5mm以下のものまで識別できるようになってきた。臨床の現場では、1mmにも満たさない性状のものが血管の狭窄の要因になっているのか、または肺の中の疑わしい癌組織等の濃淡がどのようになっているか等、非常に細かいターゲットの形態、性状の観察が重要になっている。このような対象物が小さい物に対し、安定した息止め、安定した精神状態での撮影が大変重要な問題になっている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、BGMで患者の精神的なストレスを緩和させ、音声ガイダンスが聞き取りやすくし、医療器械装置の検査結果の品質を向上できる医療器械装置用バックグランドミュージック装置に関の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置は、医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出する音声信号検出器と、所定の音楽を再生するプレーヤーと、前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスを音声出力するヘッドホンと、前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスから、前記医療器械装置の周囲の騒音を除去して前記ヘッドホンの音声出力とするノイズキャンセラーと、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出したとき、前記プレーヤーからの所定の音楽出力を低減し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力に切替え、また、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出していないときには、前記プレーヤーからの所定の音楽出力の音声信号を前記ヘッドホンの入力に切替える音声出力切替回路を具備するものである。
【0009】
ここで、上記音声信号検出器は、医療器械装置の音声ガイダンスを行うスピーカに入力される音声信号を検出するもので、通常は、スピーカに流れる音声電流をピックアップコイル等の電流検出器によって非接触状態で検出するものであり、医療器械装置の直接出力を使用するものではない。当然、医療器械装置の直接出力を使用しても実現できる。
また、上記プレーヤーは、所定の音楽を再生するものであり、出力として音声信号が出せるものであればよく、信号形態として、MP3のような音声信号のみではなく、MP4、WMV、3GP、SWF、DVD、VOB、VRO、MPEG等の何れであっても信号形態を問うものではなく、ヘッドホンの出力として音声が出るものであればよく、音声出力よりも前では独自の信号形態としてもよい。
そして、上記ヘッドホンは、前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスを音声出力するものであり、MRI等のように金属部分を嫌うものでは、合成樹脂からなる音声伝達チューブで耳まで導いてもよい。
更に、上記ノイズキャンセラーは、前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスから、前記医療器械装置の周囲の騒音を除去して前記ヘッドホンの音声出力とするもので、前記ヘッドホンの音声出力に前記医療器械装置の周囲の騒音が入らなければよいので、前記ヘッドホン自体のノイズキャンセラーを使用することもできるし、専用の回路とすることもできる。即ち、ヘッドホン自体にノイズキャンセラー機能を有するものであっても、ヘッドホン自体にそのノイズキャンセラー機能を有していなくとも、結果的にヘッドホンに入力される信号に騒音を打ち消す信号が載っておればよい。
更にまた、上記音声出力切替回路は、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出したとき、前記プレーヤーからの所定の音楽出力を低減し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力に切替え、また、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出していないときには、前記プレーヤーからの所定の音楽出力の音声信号を前記ヘッドホンの入力に切替えるものである。このプレーヤーからの音楽出力を低減し、または遮断し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力に切替える速度は、速やかに行われる。また、前記医療器械装置の音声ガイダンスがなくなったときには、徐々にプレーヤーからの音楽出力に切替えられる。
【0010】
請求項2の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記ノイズキャンセラー機能は、前記ヘッドホン自体に前記医療器械装置の周囲の騒音を除去する機能を付与したものを使用するものである。
特に、前記ヘッドホン自体に前記ノイズキャンセラー機能が付いたものは、市販されたヘッドホンが廉価に入手できるから、格別の専用回路を設定する必要性がなくなる。
【0011】
請求項3の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに出力される音声信号を前記音声信号検出器が検出したとき、急速に前記ヘッドホンの入力に前記音声信号検出器の出力を切替えるものである。
ここで、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに出力される音声信号を検出したとき、その信号は音声ガイダンスであるから、速やかに前記医療器械装置のスピーカに出力される音声信号を音声出力切替回路の出力とするものである。特に、前記プレーヤーからの音楽出力を低減または遮断し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力信号に切替えることにより、患者がリラックスしていても、音声ガイダンスを聞き逃すことがない。
【0012】
請求項4の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものである。
ここで、定常状態に順次上昇させるタイミングは、通常、3乃至10秒で定常状態とするのが望ましいが、開始時点を2乃至5秒遅らせ、順次上昇させることもできる。また、人の感性からして、単純に時間に比例させると、最初は変化が少ないので、指数関数的に上昇させるのが望ましい。
【0013】
請求項5の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから3乃至10秒後、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものである。
このように、3乃至10秒の遅延をかけた動作では、再度、音声ガイダンスが到来しても、違和感のない対応となる時間動作となる。
【0014】
請求項6の発明に係る医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声信号検出器は、前記医療器械装置のスピーカ出力を遮断した「無信号状態」と、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」と、スピーカ出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの「有音信号状態」が得られるとき、「無信号状態」のとき、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力を定常状態出力とし、「無信号状態」から「無音信号状態」に変化したときには、前記ヘッドホンの前記プレーヤーからの音楽出力を順次低減させておき、前記音声ガイダンスの待機状態とするものである。
ここで、上記「無信号状態」とは、スピーカ入力が短絡またはグランドされ電流が流れていないときを意味する。また、「無音信号状態」とは、音声ガイダンスの電流が流れていないときで、無音状態で電流が流れている状態を意味し、ホワイトノイズの重畳も含むものである。そして、スピーカ出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときとは、音声ガイダンスの音声信号がスピーカから出力されるときを意味する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置は、医療器械装置の音声ガイダンスを行うスピーカに入力される音声信号を検出する音声信号検出器が、医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出していないとき、前記音声出力切替回路は所定の音楽を再生するプレーヤーからの音声信号を前記ヘッドホンの入力信号に切替え、BGMを患者に聞かせる。前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出したとき、前記プレーヤーからの音楽出力を低減または遮断し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力信号に切替え、患者に音声ガイダンスを聞かせる。このとき、前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスを音声出力するヘッドホンは、ノイズキャンセラーによって前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスから、前記医療器械装置の周囲の騒音を除去して前記ヘッドホンの音声出力とするものである。
したがって、近年のX線コンピュータ診断撮影装置等のX線管の回転速度が高速化しても、その高速回転に伴って自然発生する風切り音の大きさに対しては、ノイズキャンセラーによって患者側の耳に入る風切り音を完全に防ぐことができる。特に、高齢者の場合においても、患者側で人体の耳に入る風切り音を完全に防ぐことができる。
即ち、X線コンピュータ診断撮影装置による検査対象が高齢の患者の場合であっても、X線コンピュータ診断撮影装置による撮影時、X線管がスキャナー本体内部で高速回転する際の風切り音と、息止め合図の音声とが一致し、音声ガイダンスの息止めの指示に風きり音が重なり、音声ガイダンスだけを明瞭に聞き分けることができる。故に、音声ガイダンスの息止め合図通りに息を止めることができ、呼吸が止めた状態での撮影が可能になり、診断画像に人体の動きに伴う虚像が混入することがない。
また、X線コンピュータ診断撮影装置による検査対象が心臓の冠動脈検査の場合には、完全なる患者の息止めと、検査中における心拍動、心臓の拍動の周期、動きがBGMで安定した状態となり、かつ、音声ガイダンスにより明瞭に医者の指示を聞き分けることができるから、息止めのタイミングが明確になり、X線コンピュータ診断撮影装置の能力を活用でき、精度として0.5mm以下のものまで識別できる。
このように、BGMで患者の精神的なストレスを緩和させ、音声ガイダンスを聞き取りやすくし、医療器械装置の検査結果の品質を向上できる医療器械装置用バックグランドミュージック装置を得ることができる。
【0016】
請求項2の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記ノイズキャンセラーは、前記ヘッドホン自体に前記医療器械装置の周囲の騒音を除去する機能を付与したものを使用するものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、ノイズキャンセラー付のヘッドホンは市販されており、装置を廉価にすることができる。
【0017】
請求項3の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに出力される音声信号を前記音声信号検出器が検出したとき、急速に前記ヘッドホンの入力に前記音声信号検出器の出力を切替えるものであるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、音声ガイダンスで発音する音の立ち上がりの振幅で切替えが行われ、音声ガイダンスの言葉の一部が切れることがない。
【0018】
請求項4の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものであるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、患者は医師から次の指示を待つが、患者はそれまでの音声ガイダンスの終了を認識し、同時にリラックスに入りやすくすることができる。また、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させる途中で、再度、音声ガイダンスが入っても違和感なく、音声ガイダンスを受け入れることができる。
【0019】
請求項5の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから3乃至10秒後、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものであるから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、前記音声信号検出器が検出しなくなってから3乃至10秒間は、患者は医師から次の指示を待つが、患者はそれまでの音声ガイダンスの終了を認識し、同時にリラックスに入りやすくすることができる。また、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させる途中で、再度、音声ガイダンスが入っても違和感なく、音声ガイダンスを受け入れることができる。
【0020】
請求項6の発明の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の前記音声信号検出器は、前記医療器械装置のスピーカ出力を遮断した「無信号状態」と、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」と、スピーカ出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの「有音信号状態」が得られるとき、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力を定常状態出力とし、「無信号状態」から「無音信号状態」に変化したときには、前記ヘッドホンの前記プレーヤーからの音楽出力を順次低減させておき、前記音声ガイダンスの待機状態とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の効果に加えて、複数の医師が画像を見て会話中には、前記医療器械装置のスピーカ出力が「無信号状態」となるから、そのときには、前記プレーヤーからのBGMの音楽出力を前記ヘッドホンの出力とし、また、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」に切替わったときには、前記音声ガイダンスが入る可能性があるので、前記プレーヤーからのBGMの音楽出力を徐々に低下させ、前記音声ガイダンスが入る直前であることを患者に知らせる。また、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」に継続的になっているときには、前記プレーヤーからのBGMの音楽出力を患者に流すことになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施の形態1の医療器械装置用バックグランドミュージック装置のブロック回路構成図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の制御回路における制御プログラムのフローチャートである。
【図3】図3は本発明の実施の形態2の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の制御回路における制御プログラムのフローチャートである。
【図4】図4は本発明の実施の形態3の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の使用状態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1の医療器械装置用バックグランドミュージック装置を、図1及び図2を用いて説明する。また、医療器械装置10としてX線CT装置(X線コンピュータ診断撮影装置)に取り付けた事例で説明する。
所定の音楽を再生するプレーヤー1は、所定のCD等の音楽を再生するものであり、出力として音声信号が出せるものであればよく、プレーヤー1に入力される信号形態としては、MP3のような音声信号のみではなく、MP4、WMV、3GP、SWF、DVD、VOB、VRO、MPEG等の画像信号と一体となった信号の音声であってもよく、その信号形態を問うものではない。結果的に、ヘッドホン7(またはスピーカ)の出力としてBGMとなる音声が出るものであればよく、音声出力よりも前では独自の信号形態としてもよい。
【0023】
プレーヤー1の出力は、増幅回路2に入力される。ボリューム2aはその出力調整用である。増幅回路2の出力は、択一的に選択される音声出力切替回路3の一方の入力となっている。音声出力切替回路3の出力は、減衰回路4に入力されている。この減衰回路4は外部入力によって減衰率を決定している。減衰回路4の出力は、差動増幅回路5の一方(+端子)の入力となる。また、差動増幅回路5の他方(−端子)の入力には、医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8が配設され、増幅回路9にその出力が入力されている。ボリューム9aはその出力調整用である。差動増幅回路5の出力は、増幅回路6を介して、ヘッドホン7の入力としている。なお、ボリューム6aはその出力の音量調整用である。医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8は、X線CT装置等のX線管の高速回転に伴って患者の耳に入る自然発生する風切り音等のみに限定されるものではなく、検査室80の室内全体から、患者の耳に入る騒音を拾うものである。
【0024】
詳しく説明すると、音声出力切替回路3には、プレーヤー1の出力と、後述する音声信号検出器12の出力が入力されており、音声出力切替回路3はそれを択一的に選択する回路であり、機械的切替を行う切替器であってもよいし、電気的にスイッチングする切替えを行う回路であってもよい。また、減衰回路4は、入力を所定の減衰率で減衰させてそれを出力とするものであり、外部から制御される定数Vの値によって出力を変化させるものである。定数Vが「0」のとき最小、定数Vが「10」のとき最大となっている。
【0025】
オペアンプからなる差動増幅回路5は、一方(+端子)の入力から他方(−端子)の入力を減算する構成となっている。減算される信号は、医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8の出力を出力調整用のボリューム9aが配設された増幅回路9の出力が入力されている。マイク8の拾う医療器械装置10の周囲の騒音とは、X線CT装置等のX線管の高速回転に伴って患者の耳に入る自然発生する風切り音等である。即ち、医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8、ボリューム9a付の増幅回路9、差動増幅回路5は、X線CT装置等の医療器械装置10の稼動に伴って患者の耳に入る自然発生する雑音を除去するノイズキャンセラー20を構成している。勿論、ノイズキャンセラー20は位相反転回路を使用することによって、他の構成とすることもできる。増幅回路6のボリューム6aはその出力の音量調整用であり、ヘッドホン7の出力を調整するものである。
【0026】
そして、スピーカ11は、医療器械装置10としてX線CT装置に取り付けたガントリスピーカである。X線CT装置に取り付けたスピーカ11は移動テーブルに配設されることから、ガントリスピーカと呼ばれているが、本発明を実施する場合には、操作室10aから患者の呼吸指示を行うスピーカ11であれば、天井埋込用であっても、露出用であってもよい。
音声信号検出器12は、医師が患者に対して音声ガイダンスを行うスピーカ11に流れる音声電流を検出するもので、非接触式の交流電流センサであり、通常、ピックアップコイルが使用されるが、変流器を使用してもよいし、40Hz乃至15000Hzの周波数特性を有する検出器であればよい。即ち、X線CT装置附属のガントリスピーカから変流器(CT)等の交流センサを用い非接触式に音声を取り出している。医療器械装置10との直接接続は、薬事法等の規則のために避けるのが望ましい。したがって、本実施の形態では、スピーカ11の端子から直接検出する構成は除外して説明する。
本実施の形態の音声信号検出器12は、非接触で医療機器装置10の音声を拾うことができるため、CT装置に限らず放射線治療装置、RI装置、PET装置、X線透視装置等、様々な医療機器に応用できる。また、医療機器側の改造等は一切不要であり、薬事法に触れる可能性もない。
【0027】
音声信号検出器12の出力は、増幅回路13に入力される。ボリューム13aはその出力調整用である。増幅回路13の出力は、択一的に選択される音声出力切替回路3の他方の入力となっている。同時に、増幅回路13の出力は、比較回路14、比較回路15、比較回路16の入力になっている。比較回路14には、ゼロ基準電圧設定用ポテンショメータ14aを有している。即ち、スピーカ11の入力に医療器械装置のスピーカ出力を遮断したときの「無信号状態」を検出し、その出力をマイクロコンピュータからなる制御回路17に入力する。
【0028】
また、比較回路15は、ホワイトノイズ基準電圧設定用ポテンショメータ15aを有している。即ち、スピーカ11の入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」を検出し、その出力をマイクロコンピュータからなる制御回路17に入力する。但し、比較回路14のゼロ基準電圧設定用ポテンショメータ14aの値と、比較回路15のホワイトノイズ基準電圧設定用ポテンショメータ15aの値との間に差が少ないときには、ゼロ基準電圧設定用ポテンショメータ14aを設定する比較回路14は使用しない方がよい。この事例を実施の形態2として後述する。
【0029】
そして、比較回路16は、スピーカ11の出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの{有音信号状態}の信号基準電圧設定用ポテンショメータ16aを有している。即ち、スピーカ11の出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの「有音信号状態」を検出し、その出力をマイクロコンピュータからなる制御回路17に入力する。制御回路17は、比較回路14、比較回路15、比較回路16からの「無信号状態」、「無音信号状態」、「有音信号状態」の入力によって音声出力切替回路3の入力の切替え、及びそのタイミングによって減衰回路4の減衰率を設定する。
【0030】
制御回路17では、次のように図2に示すプログラム制御がされる。
まず、電源の投入によって初期化され、この図2に示すプログラム処理が開始される。
ステップS1で音声信号検出器12によって信号検出が行われる。ステップS2乃至ステップS4でその検出結果が、「無信号状態」、「無音信号状態」、「有音信号状態」であるか判断する。
【0031】
「無信号状態」、即ち、スピーカ11の出力に医療器械装置10の操作室10aの会話をスピーカ11の出力に載せないように遮断したり、アース電位に落したり、両端子間を短絡したりし、医療器械装置10の操作室10a内の会話を外に出さない操作がなされているとき、比較回路14のゼロ基準電圧設定用ポテンショメータ14aの値は、誘導が生じていても、ほとんどゼロ電位であるから、その電位状態であるか判断する。ステップS2で「無信号状態」と判断されたとき、ステップS14でBGMをオンとし、ステップS15で減衰回路4の減衰率を最大に設定すべく、カウンタV(定数V)に「0」をセットする。
【0032】
そして、ステップS10に進み、そこでカウンタVに「+1」を加算、即ち、インクリメントする。ステップS11でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が最大の「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS12で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS13でBGMを通常の出力とする。
即ち、スピーカ11の出力が「無信号状態」のとき、ヘッドホン7からBGMを出力し、BGMを流し始めた初期には、徐々にボリュームを大きくする制御を行い、3乃至10秒間の後の定常状態で、その制御を停止している。
【0033】
次に、ステップS3で「無音信号状態」と判断されたとき、即ち、スピーカ11の出力に医療器械装置10の操作室10aから無音声の状態としてのスピーカ出力のときである。詳しくは、スピーカ出力が、アース電位に遮断されたり、両端子間を短絡されたりして、医療器械装置10の操作室10a内の会話を外に出さない操作がなされていない状態で、スピーカ11が生きているときの信号状態である。
【0034】
ステップS3で「無音信号状態」と判断されたとき、最初にステップS16でBGMをオンとし、ステップS17で「無信号状態」から「無音信号状態」に変化した直後であるかを判断する。この判断は、カウンタVが「7」以上であるかの判断でもよいし、「無音信号状態」のルーチンに入ってからの時間であってもよい。或いはフラグで認識してもよい。因みに、本実施の形態では、「無音信号状態」のルーチンに入ってからの時間で設定した。ステップS17で「無信号状態」から「無音信号状態」に変化した直後であると判断したとき、ステップS18で徐々にボリュームを落とす制御を行うため、最初にBGMの音量を最大にすべくカウンタVに「10」を設定する。なお、通常では、「無信号状態」から「無音信号状態」に入ったときには、カウンタVは「10」で最大の音量となっているが、ここでは、電源投入時に「無音信号状態」に入った場合も想定している。ステップS19で減衰回路4の減衰率を設定するカウンタVから「−1」の減算をする。即ち、デクリメントする。
【0035】
ステップS20でステップS19においてデクリメントした減衰回路4の減衰率で、所定のBGMの減衰出力とする。次いで、ステップS21で減衰回路4の減衰率を設定するカウンタVの値が通常状態のBGM出力よりも何割か低減した値、この実施の形態ではカウンタVが「3」以下に低減されているか判断し、カウンタVが「3」以下になるまで、ステップS19乃至ステップS21のルーチンを繰り返し実行する。なお、本発明を実施する場合には、このカウンタVが「3」以下を「0」として、BGM出力をオフ状態とすることもできる。カウンタVが「3」以下になったとき、ステップS22でこの「無音信号状態」がどれだけ継続されているか判断し、180秒(3分)経過しても、「有音信号状態」にならない場合には、直ちに、医師が音声ガイダンスを行う状態、即ち、「有音信号状態」ないとして、ステップS10に移動し、そこでカウンタVに「+1」を加算、即ち、インクリメントする。ステップS11でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS12で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS13でBGMを通常の出力とする。
【0036】
ステップS22でこの「無音信号状態」がどれだけ継続されているか判断し、例えば、180秒(3分)経過前であれば、医師が音声ガイダンスを行う状態下にあるとして、医師の音声ガイダンスが聞き取りやすくするために、ヘッドホン7からのBGM出力を低減するものである。ステップS23で「有音信号状態」が確認されるまで、ステップS20乃至ステップS23のルーチンを繰り返し実行する。ステップS23で「有音信号状態」が確認されたとき、ステップS5からの処理に移行する。
【0037】
即ち、スピーカ11の出力が「無音信号状態」のときのルーチンは、「無信号状態」から「無音信号状態」に入ったときには、医師の音声ガイダンスが入りやすく、ヘッドホン7からのBGMを徐々に小さくする制御を行い、医師の音声ガイダンスに対応する。しかし、3分経過しても、医師の音声ガイダンスが入らない場合には、BGMを通常の音量に徐々に戻す制御を行うものである。
【0038】
ステップS22でこの「無音信号状態」が180秒(3分)経過する前に、音声信号検出器12の出力が「有音信号状態」になった場合には、それがステップS23で検出され、ステップS5からの処理に入る。ステップS5では、BGMをオフとし、ステップS6で直ちに、医師が音声ガイダンスを行う音声信号検出器12の出力を音声出力切替回路3の出力とすべく、音声出力切替回路3を切替え、ステップS7で音声ガイダンスの終了を音声信号検出器12の出力の「有音信号状態」が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続していることを持って判断する。
【0039】
音声信号検出器12の出力が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続したとステップS7で判断すると、ステップS8でBGMをオンとし、ステップS9で減衰回路4の減衰率を最大に設定すべく、カウンタV(定数V)に「0」をセットし、BGMの音量を最小とする。ステップS10でカウンタVに「+1」を加算、即ち、インクリメントする。ステップS11でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS12で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS13でBGMを通常の出力とする。
【0040】
次に、ステップS4で音声ガイダンスの重畳が確認されて「有音信号状態」と判断されたとき、ステップS5でBGMをオフとし、ステップS6で直ちに、医師が音声ガイダンスを行う音声信号検出器12の出力を音声出力切替回路3の出力とすべく、音声出力切替回路3を切替え、ステップS7で音声ガイダンスの終了を音声信号検出器12の出力の「有音信号状態」が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続していることを持って判断する。音声信号検出器12の出力が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続したとステップS7で判断されたとき、ステップS8でBGMをオンとし、ステップS9で減衰回路4の減衰率を最大に設定すべく、カウンタV(定数V)に「0」をセットし、BGMの音量を最小とする。ステップS10でカウンタVに「+1」を加算、即ち、インクリメントする。ステップS11でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS12で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS13でBGMを通常の出力とする。
【0041】
即ち、スピーカ11の出力が「有音信号状態」のときのルーチンは、「有音信号状態」に入ったときには、通常はBGMが入っており、そこに医師の音声ガイダンスが入るから、音声ガイダンスの存在により、ヘッドホン7からのBGMをすばやく切断し、医師の音声ガイダンスを流すように制御する。このとき、比較回路16は、所定の立ち上がり(立下り)の振幅で検出しているので、音声の一部が途切れることがない。正確には、人には音声の一部が切断されていることは認識できない。音声ガイダンスが終了したときには、再度、患者がリラックスできるように、BGMを通常の音量に徐々に大きくする制御を行う。したがって、患者が高齢で耳がよく聞こえない人でも、ヘッドホン7の音が聞こえる場合には、医療器械装置10の周囲の騒音は、患者の耳に入る自然発生する風切り音等を、ノイズキャンセラー20を構成する医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8、ボリューム9a付の増幅回路9、差動増幅回路5は、X線CT等の医療器械装置10の稼動に伴って患者の耳に入る自然発生する雑音を除去できるから、BGM及び医師からの音声ガイダンスを聞き取りやすくなるので、リラックスできると共に、医師からの音声ガイダンスのみを集中して聞き分けることができる。したがって、医師の指示に従って撮影を行うことができる。
【0042】
このように、本発明の実施の形態1の医療器械装置用バックグランドミュージック装置は、医療器械装置10の音声ガイダンスを行うスピーカ11に入力される音声信号を検出する音声信号検出器12と、所定の音楽を再生するプレーヤー1と、プレーヤー1から出力された音楽または医療器械装置10の音声ガイダンスを音声出力するヘッドホン7と、プレーヤー1から出力された音楽または医療器械装置10の音声ガイダンスから、医療器械装置10の周囲の騒音を除去してヘッドホン7の音声出力とするマイク8及び増幅回路9及び差動増幅回路5からなるノイズキャンセラー20と、音声信号検出器12が医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を検出したとき、プレーヤー1からの音楽出力を低減または遮断し、医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替え、また、音声信号検出器12が医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を検出していないときには、プレーヤー1からの音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替える音声出力切替回路3を具備するものである。
【0043】
医療器械装置10の音声ガイダンスを行うスピーカ11に入力される音声信号を検出する音声信号検出器12が、医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を検出していないとき、音声出力切替回路3は所定の音楽を再生するプレーヤー1からの音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替え、BGMを患者に聞かせる。音声信号検出器12が医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を検出したとき、プレーヤー1からの音楽出力を低減または遮断し、医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号をヘッドホン7の入力信号に切替え、患者に音声ガイダンスを聞かせる。このとき、プレーヤー1から出力された音楽または医療器械装置10の音声ガイダンスを音声出力するヘッドホン7は、マイク8及び増幅回路9及び差動増幅回路5からなるノイズキャンセラーによってプレーヤー1から出力された音楽または医療器械装置10の音声ガイダンスから、医療器械装置10の周囲の騒音を除去してヘッドホン7の音声出力とするものである。
【0044】
このように、近年のX線CT装置等のX線管の回転速度が高速化しても、その高速回転に伴って自然発生する風切り音に対しては、マイク8及び増幅回路9及び差動増幅回路5からなるノイズキャンセラーによって患者側で耳に入る風切り音を完全に防ぐことができる。特に、高齢者の場合においても、患者側で耳に入る風切り音を完全に防ぐことができる。即ち、X線CT装置による検査対象が高齢の患者の場合であっても、X線CT装置による撮影時、X線管がスキャナー本体内部で高速回転する際の風切り音と、息止め合図の音声とが一致し、音声ガイダンスの息止めの指示に風きり音が重なり、音声ガイダンスだけを明瞭に聞き分けることができる。故に、音声ガイダンスの息止め合図通りに息を止めることができ、呼吸が止めた状態での撮影が可能になり、診断画像に人体の動きに伴う虚像が混入することがない。
【0045】
また、X線CT装置による検査対象が心臓の冠動脈検査の場合には、完全なる患者の息止めと、検査中における心拍動、心臓の拍動の周期、動きがBGMで安定した状態となり、かつ、音声ガイダンスにより明瞭に医者の指示を聞き分けることができるから、息止めのタイミングが明確になり、X線CT装置の能力を活用でき、精度として0.5mm以下のものまで識別できる。
このように、BGMで患者の精神的なストレスを緩和させ、音声ガイダンスを聞き取りやすくし、医療器械装置10の検査結果の品質を向上できる医療器械装置用バックグランドミュージック装置を得ることができる。
したがって、患者の精神的なストレスを緩和させ、医師の指示をそのタイミングに合わせて実行できるようにし、X線CT装置、医用画像撮影装置等の医療器械装置の検査結果の品質向上、患者の生理的なストレスの排除を行うことができる。
【0046】
[実施の形態2]
本発明を実施する場合には、実施の形態1の図1に示した回路から比較回路14を省略することができ実施の形態2の態様がある。
この実施の形態2の場合には、制御回路17では、図3のようにプログラム制御される。
まず、電源の投入によって初期化され、このプログラム処理が開始される。
ステップS31で音声信号検出器12によって信号検出が行われる。ステップS32乃至ステップS33でその検出結果が、「無音信号状態」、「有音信号状態」であるか判断する。
【0047】
ステップS32で「無音信号状態」と判断されたとき、即ち、スピーカ11の出力に医療器械装置10の操作室10aから無音声の状態としてのスピーカ出力のときである。ステップS43でBGMをオンとし、ステップS44でカウンタVに「0」が設定される。そして、ステップS39に移動し、そこでカウンタVにインクリメントする。ステップS40でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS41で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS42でBGMを通常の出力とする。
【0048】
次に、ステップS33で音声ガイダンスの重畳が確認されて「有音信号状態」と判断されたとき、ステップS34でBGMをオフとし、ステップS35で直ちに、医師が音声ガイダンスを行う音声信号検出器12の出力を音声出力切替回路3の出力とすべく、音声出力切替回路3を切替え、ステップS36で音声ガイダンスの終了を音声信号検出器12の出力の「有音信号状態」が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続していることを持って判断する。音声信号検出器12の出力が「無音信号状態」となって10乃至90秒間継続したとステップS36で判断されたとき、ステップS37でBGMをオンとし、ステップS38で減衰回路4の減衰率を最大に設定すべく、カウンタV(定数V)に「0」をセットし、BGMの音量を最小とする。ステップS39でカウンタVにインクリメントし、ステップS40でカウンタVの値が「10」であるか判断し、カウンタVの値が「10」未満の値であるとき、減衰回路4の減衰率を徐々に少なくする途中であるから、ステップS41で所定のBGMの減衰出力とし、また、カウンタVの値が「10」以上の値であるとき、ステップS42でBGMを通常の出力とする。
【0049】
即ち、スピーカ11の出力が「有音信号状態」のときのルーチンは、「有音信号状態」に入ったときには、通常はBGMが入っており、そこに医師の音声ガイダンスが入るから、音声ガイダンスの音声信号の存在により、ヘッドホン7からのBGMをすばやく切断し、医師の音声ガイダンスを流すように制御する。このとき、比較回路16は、所定の立ち上がり(立下り)の振幅で検出しているので、人には音声の一部が切断されていることは認識できない。音声ガイダンスが終了したときには、再度、患者がリラックスできるように、BGMを通常の音量に徐々に大きくする制御を行う。したがって、患者が高齢で耳がよく聞こえない人でも、ヘッドホン7の音が聞こえる場合には、医療器械装置10の周囲の騒音は、患者の耳に入る自然発生する風切り音等を、ノイズキャンセラー20を構成する医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8、ボリューム9a付の増幅回路9、差動増幅回路5は、X線コンピュータ診断撮影装置等の医療器械装置10の稼動に伴って患者の耳に入る自然発生する雑音を除去できるから、BGM及び医師からの音声ガイダンスを聞き取りやすくなるので、リラックスできると共に、医師からの音声ガイダンスのみを集中して聞き分けることができる。したがって、医師の指示に従って撮影を行うことができる。
【0050】
[実施の形態3]
図4は実施の形態3である。この実施例においては、ミキサー40に、図1の音声出力切替回路3、減衰回路4、制御回路17の回路を単一に組み込んだものである。また、ヘッドホン50は市販のノイズキャンセラー機能付のものである。したがって、ヘッドホン50は医療器械装置10の周囲の騒音を拾うマイク8、ボリューム9a付の増幅回路9、差動増幅回路5、音量調整用のボリューム6a付の増幅回路6を含むものである。
また、図4において操作室スピーカ60は、操作室10a内に配設された患者からの音声の取り込み用である。
本実施の形態3においても、実施の形態1及び実施の形態2の制御回路17と同様にプログラム制御される。
【0051】
上記実施の形態3の医療器械装置用バックグランドミュージック装置のノイズキャンセラー20は、ヘッドホン50自体に医療器械装置10の周囲の騒音を除去する機能を付与したものを使用することにより、省略することができる。この種のノイズキャンセラー付のヘッドホン50は市販されており、装置を廉価にすることができる。このミキサー40から、民生用のノイズキャンセルヘッドホン50に音声を流すから、患者はCT装置の風きり音がノイズキャンセルされ静穏な状態で、CT装置の息止め音声のみのガイダンスを受けることができる。
【0052】
上記実施の形態の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の音声出力切替回路3の切替えは、医療器械装置10のスピーカ11に出力される音声信号を音声信号検出器12が検出したとき、急速にヘッドホン7またはヘッドホン50の入力に音声信号検出器12の出力を切替えるものであるから、音声ガイダンスで発音する音の信号の立ち上がりで切替えが行われるから、音声ガイダンスの言葉の一部が切れることがない。
【0053】
上記実施の形態の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の音声出力切替回路3の切替えは、医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を音声信号検出器12が検出しなくなってから、ヘッドホン7,50の入力信号にプレーヤー1からの音楽出力に切替えるときには、音声信号検出器12が検出しなくなってから時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものであるから、医師からの次の操作の指示を待つとき、患者にはそれまでの音声ガイダンスの終了を認識させ、同時にリラックスに入りやすくすることができる。また、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させる途中で、再度、音声ガイダンスが入っても違和感なく、音声ガイダンスを受け入れることができる。
【0054】
上記実施の形態の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の音声出力切替回路3の切替えは、医療器械装置10のスピーカ11に入力される音声信号を音声信号検出器12が検出しなくなってから、ヘッドホン7,50の入力信号にプレーヤー1からの音楽出力に切替えるときには、音声信号検出器12が検出しなくなってから5乃至10秒後、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させるものであるから、音声信号検出器12が検出しなくなってから10乃至90秒間は、医師からの次の操作の判断を待つが、患者にはそれまでの音声ガイダンスの終了を認識させ、同時にリラックスに入りやすくすることができる。また、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させる途中で、再度、音声ガイダンスが入っても違和感なく、音声ガイダンスを受け入れることができる。
【0055】
上記実施の形態の医療器械装置用バックグランドミュージック装置の音声信号検出器12は、医療器械装置10のスピーカ11の出力を遮断した「無信号状態」と、スピーカ11の入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」と、スピーカ11の出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの「有音信号状態」が得られるとき、ヘッドホン7,50の入力信号にプレーヤー1からの音楽出力を定常状態出力とし、「無信号状態」から「無音信号状態」に変化したときには、ヘッドホン7,50のプレーヤー1からの音楽出力を順次低減させておき、音声ガイダンスの待機状態とするものである。したがって、複数の医師が画像を見て会話中には、医療器械装置10のスピーカ11の出力が「無信号状態」となるからそのときには、プレーヤー1からのBGMの音楽出力をヘッドホン7,50の出力とし、また、スピーカ11の入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」に切替わったときには、音声ガイダンスが入る可能性があるので、プレーヤー1からのBGMの音楽出力を徐々に低下させ、音声ガイダンスが入る直前であることを患者に知らせる。また、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの「無音信号状態」に継続的になっているときには、プレーヤー1からのBGMの音楽出力を患者に流すことができる。
【0056】
ところで、上記実施の形態では、ヘッドホン7,50として電気振動と空気振動との変換を耳元で行うものの事例で説明したが、医療器械装置10の中には、MRIのように測定対象付近に金属を置くことができないものもある。このような場合には、移動テーブル内で電気振動と空気振動との変換を行わせて、それを合成樹脂または合成ゴム等の材料からなる管体(音声伝達チューブ)を介して患者の耳元まで導き、音声を伝播させることもできる。
【0057】
なお、上記実施の形態で使用した時限は、高齢者、障害者等使用状況に応じて、任意の時限とすることができる。
電気的な漏洩電流等の問題は発生しない。この取り出した音声と音楽プレーヤーをミックスするミキサー内部には、CT装置の音声を感知し、通常は音楽を流し、CT装置が音声を発した場合には、音楽をミュートさせ、CT装置の息止め音声に音楽が干渉しないシステムとなる。したがって、高齢者や難聴患者でも、CT装置側の騒音にさえぎられること無く、検査時の息止め合図が聞き取りやすくなる。患者は医療器械装置10から出る機械音、風きり音等により精神的なストレスを受けなくて済む。
特に、心臓検査のときに、医療器械装置10として、例えば、CT装置が回転し始めるだけで、検査が始まることによる緊張から心拍数が大幅に向上することが多分にあるが、この緊張を取り除くことができる。そうすることで、心臓CT検査の診断画像が大幅に向上することが期待できる。
【0058】
また、患者がストレスとして感じている病院の治療、診察に対し、個々の患者がリラックスできる音楽を治療、診察時に持ち込み、これを聞かせながらの治療、診療を受けることができる。
そして、CT装置にて治療の位置決め画像として、呼吸同期撮影を行うことがあるが、数十回の息止めを一定のリズムで行う必要がある。このシステムを用いて、一定のリズムの呼吸の息止めガイダンスをプレーヤー1側から流すことで、本番の検査の前に練習することができる。CT装置の仕様に依存することなく、練習が可能となり、位置決め画像の再現性も向上できる。
更に、子供の場合には、このシステムにビデオレコーダー及びビデオの映像をコーグル内に投射されるシステムを組み合わせることにより、映像を見せながら、検査をすることができる。このとき、コーグル内に、親の映像を投影し、子供の不安感を取り除くこともできる。
更にまた、ヘッドホン7の部分にマイクを接続し、患者が発する声を録音することもできる。特に、医療行為中に何か起きた場合、この録音の音声により医療訴訟等の役に立つ場合が想定できる。
【符号の説明】
【0059】
1 プレーヤー
3 音声出力切替回路
4 減衰回路
5 差動増幅回路
7,50 ヘッドホン
8 マイク
10 医療器械装置
10a 操作室
11 スピーカ
12 音声信号検出器
14,15,16 比較回路
17 制御回路
20 ノイズキャンセラー
80 検査室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器械装置の音声ガイダンスを行うスピーカに入力される音声信号を検出する音声信号検出器と、
所定の音楽を再生するプレーヤーと、
前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスを音声出力するヘッドホンと、
前記プレーヤーから出力された音楽または前記医療器械装置の音声ガイダンスから、前記医療器械装置の周囲の騒音を除去して前記ヘッドホンの音声出力とするノイズキャンセラーと、
前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出したとき、前記プレーヤーからの音楽出力を低減または遮断し、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記ヘッドホンの入力信号に切替え、また、前記音声信号検出器が前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を検出していないときには、前記プレーヤーからの音声信号を前記ヘッドホンの入力信号に切替える音声出力切替回路
を具備することを特徴とする医療器械装置用バックグランドミュージック装置。
【請求項2】
前記ノイズキャンセラーは、前記ヘッドホン自体に前記医療器械装置の周囲の騒音を除去する機能を付与したものを使用することを特徴とする請求項1に記載の医療器械装置用バックグランドミュージック装置。
【請求項3】
前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに出力される音声信号を前記音声信号検出器が検出したとき、急速に前記ヘッドホンの入力に前記音声信号検出器の出力を切替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医療器械装置用バックグランドミュージック装置。
【請求項4】
前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の医療器械装置用バックグランドミュージック装置。
【請求項5】
前記音声出力切替回路の切替えは、前記医療器械装置のスピーカに入力される音声信号を前記音声信号検出器が検出しなくなってから、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力に切替えるときには、前記音声信号検出器が検出しなくなってから3乃至10秒後、時間の経過に応じて出力を定常状態に順次上昇させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の医療器械装置用バックグランドミュージック装置。
【請求項6】
前記音声信号検出器は、前記医療器械装置のスピーカ出力を遮断した無信号状態と、スピーカ入力に音声ガイダンスの音声信号が載っていないときの無音信号状態と、スピーカ出力に音声ガイダンスの音声信号が載っているときの信号状態が得られるとき、無信号状態のとき、前記ヘッドホンの入力信号に前記プレーヤーからの音楽出力を定常状態出力とし、無信号状態から無音信号状態に変化したときには、前記ヘッドホンの前記プレーヤーからの音楽出力を順次低減させ、前記音声ガイダンスの待機状態とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の医療器械装置用バックグランドミュージック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−98070(P2011−98070A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254744(P2009−254744)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(599149500)有限会社旭計測 (1)
【Fターム(参考)】