説明

医療支援装置

【課題】 ユーザの病態等の悪化を本人や関係者に早期に知らせることが可能な医療支援装置を提供する。
【解決手段】 医療支援装置1は、ユーザの生体から放出されるカテコラミンの濃度を検出するセンサ2と、検出されたカテコラミンの濃度に相当する血糖値の値を算出する血糖値算出部7と、複数のレベルのそれぞれに対応する報知先及び報知情報の設定情報を含む報知設定情報6bをあらかじめ記憶する記憶部6と、報知設定情報6bを参照して、複数のレベルのうち血糖値算出部7により算出された血糖値の値が属するレベルに対応する報知先に対し、当該レベルに対応する報知情報を出力する報知部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅医療や日常の健康管理を支援する医療支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、在宅医療は、入院せずに自宅等で診断や治療を受けられる利便性や快適性から普及が進んでいる。また、疾患の早期発見、早期治療を促進するために、日常の健康管理の重要性が提唱されている。このような現状に伴い、在宅医療や日常の健康管理を支援するための装置やシステムが各種開発され実用化されている(たとえば、下記の特許文献1、2参照。)
【0003】
特許文献1には、患者の心拍数や心電図データを検出して医療機関に送信する機能を有する腕時計型の装置が開示されている。医療機関では、受信した検出データの異常の有無を解析し、軽度の異常が発見された場合には、医療機関からメッセージが送信され当該装置に表示されるようになっている。一方、緊急事態が発生した場合には、医療機関からの指示に基づいて当該装置から警報等が出力されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、患者の自宅等に設置された患者端末から、所望の医師の端末を呼び出すことができるシステムが開示されている。患者端末には、脈拍や血圧等のバイタルデータを計測するバイタルセンサが設けられており、その計測結果を医師のメールボックスに蓄積できるようになっている。
【0005】
このような技術により、患者等は、自身の健康状態が医師により監視されているという安心感、更に、医師に対してアクセス可能であるという安心感を保ちつつ、在宅医療や日常生活を送ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−314133号公報
【特許文献2】特開平11−120261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上に説明した従来の技術については、次のような問題点が指摘されている。
【0008】
まず、上述した従来の技術は、心拍数や心電図等のバイタルデータの検出結果を医療機関に送信して医師の診断に利用するものであるために、病態の悪化を患者がリアルタイムで知ることができないという問題がある。特に、医療機関側からの診断結果の送信に時間が掛かった場合には、病態の更なる悪化が懸念される。
【0009】
このような問題点が孕む危険性については、たとえば次のような具体的ケースが想定される。膵臓疾患などの慢性疾患の中には、低血糖症等のように病態の悪化(血糖値の低下等)を自分では認識しづらい疾患がある。このような疾患において患者自身等が病態の悪化を早期に認識できれば、医療機関に通報したり、薬を飲んだりするなどのケアを早期に施すことが可能である。しかし、従来の技術では、病態の悪化を早期に患者等に認識させることができないため、病態がますます悪化し、場合によってはそのまま意識を失ってしまうこともある。
【0010】
また、多くの急性疾患、慢性疾患では、内分泌、代謝反応、炎症反応、細胞壊死等の様々な生体反応に伴い、酵素や神経伝達物質等の特定の物質が患者生体中にて分泌されることが知られている。たとえば、心筋梗塞においてはクレアチンフォスフォキナーゼの血中・汗中濃度が増加し、低血糖においてはカテコラミンの血中・汗中濃度が増加することが知られている。また、LDH(乳酸脱水素酵素)は、悪性腫瘍、急性肝炎、心筋梗塞、腎不全、悪性貧血、白血病、リウマチ、筋ジストロフィなどの疾患時に血中に多くなることが知られている。
【0011】
このような物質についての検査は、年毎の健康診断時などに実施されるのが一般的であるため、疾患を早期発見できないことも多々ある。その場合には、病気の進行後に治療が開始されるため、長期入院等による医療費の増加や、患者の精神的・肉体的負担の増加などが生じるおそれがある。また、疾患の発見の遅れより手遅れになることさえある。また、心筋梗塞や低血糖発作等の緊急事態が発生した場合には、早期に対処しなければ患者の命に関わってくる。
【0012】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもので、ユーザの病態の悪化や健康状態の悪化を本人やその関係者に早期に知らせることが可能な医療支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ユーザの生体から放出される物質を検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に応じて報知情報を出力する報知手段と、を備えることを特徴とする医療支援装置である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の医療支援装置であって、前記検出手段は、生体の汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの汗腺付近の部位に設けられることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の医療支援装置であって、前記検出手段は、生体のアポクリン汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの耳、鼻、口、脇の下、胸、腹、腰及び瞼のうちのいずれかの部位の付近に設けられることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の医療支援装置であって、前記検出手段は、生体のエクリン汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの額、首、手首、脇の下、胸、足の裏、掌、腹、背、腰及び瞼のうちのいずれかの部位の付近に設けられることを特徴とする。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の医療支援装置であって、前記検出手段は、異なる複数の物質を検出でき、前記複数の物質のそれぞれに対応する報知先の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段を更に備え、前記報知手段は、前記設定情報を参照して、前記検出手段により検出された物質に対応する報知先に、前記報知情報を出力する、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、ユーザの生体から放出されるカテコラミンの濃度を検出する検出手段と、前記検出されたカテコラミンの濃度に相当する血糖値の値を算出する算出手段と、複数の閾値により段階的に定義された複数の血糖値範囲のそれぞれに対応する、報知先及び報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、前記設定情報を参照して、前記算出手段により算出された血糖値の値が属する血糖値範囲に対応する報知先に、この血糖値範囲に対応する報知情報を出力する報知手段と、を備えることを特徴とする医療支援装置である。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、ユーザの生体情報を検出する検出手段と、前記生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知先の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、前記設定情報を参照して、前記複数の検出レベルのうち前記検出手段による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知先に、報知情報を出力する報知手段と、を備えることを特徴とする医療支援装置である。
【0020】
また、請求項8に記載の発明は、ユーザの生体情報を検出する検出手段と、前記生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、前記設定情報を参照して、前記複数の検出レベルのうち前記検出手段による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知情報を、報知先に出力する報知手段と、を備えることを特徴とする医療支援装置である。
【0021】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の医療支援装置であって、前記報知手段は、前記検出された生体情報の検出レベルに応じて前記報知情報の出力頻度を変更することを特徴とする。
【0022】
また、請求項10に記載の発明は、請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の医療支援装置であって、前記検出手段は、前記検出された生体情報の検出レベルに応じて検出頻度を変更することを特徴とする。
【0023】
また、請求項11に記載の発明は、ユーザの血糖値を検出する検出手段と、複数の閾値により段階的に定義された複数の血糖値範囲のそれぞれに対応する、報知先及び報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、前記設定情報を参照して、前記検出手段による検出結果が属する血糖値範囲に対応する報知先に、この血糖値範囲に対応する報知情報を出力する報知手段と、を備えることを特徴とする医療支援装置である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の医療支援装置は、ユーザの生体から放出される物質を検出し、その検出結果に応じて報知情報を出力するように構成されている。それにより、ユーザの疾患や健康状態に応じて放出される物質を検出して、病態や健康状態の悪化を早期に報知することが可能である。
【0025】
請求項7に記載の医療支援装置は、生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知先の設定情報をあらかじめ記憶しておくとともに、ユーザの生体情報を検出し、上記設定情報を参照して、検出結果に相当する検出レベルに対応する報知先に報知情報を出力するように構成されている。それにより、ユーザの疾患や健康状態に応じて放出される物質を検出し、病態や健康状態の悪化の度合に応じた報知先に対して早期に報知することが可能である。
【0026】
請求項8に記載の医療支援装置は、生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知情報の設定情報をあらかじめ記憶しておくとともに、ユーザの生体情報を検出し、上記設定情報を参照して、検出結果に相当する検出レベルに対応する報知情報を報知先に出力するように構成されている。それにより、ユーザの疾患や健康状態に応じて放出される物質を検出し、病態や健康状態の悪化の度合に応じた報知情報を早期に報知することが可能である。
【0027】
このように、本発明によれば、医療支援装置自体が検出結果に応じた報知を行うようになっているので、ユーザの病態や健康状態の悪化を早期に報知できる。それにより、報知を受けた者(ユーザ本人やその関係者)は、ユーザの病状等の悪化を早期に知ることができ、適当な対応を迅速に施すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態の一例について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、ユーザの生体中にて分泌される特定の物質の有無や濃度を検出して病態や健康状態の悪化を報知するように構成された医療支援装置について説明する。この医療支援装置による物質の検出は常時行うことが望ましく、したがって非侵襲で行うことが望ましい。
【0030】
本実施形態では、汗腺から体外に放出される物質を検出する構成を採用する。なお、汗腺にはアポクリン汗腺とエクリン汗腺の2種類があり、それぞれ異なる物質を放出する。アポクリン汗腺は、瞼(の縁)、鼻、耳、脇の下、乳房、臍、外陰部、肛門などに存在する。一方、エクリン汗腺は、体中に存在しているが、特に額、足の裏、掌(指)などに多く存在している。
【0031】
そこで、本実施形態では、検出精度を高めるために、検出対象物質の種類に応じ、物質検出用のセンサを、アポクリン汗腺の多い部位の付近もしくはエクリン汗腺の多い部位の付近に選択的に取り付ける。
【0032】
[装置構成]
図1に示すブロック図は、本実施形態の医療支援装置の構成の一例を表している。同図に示す医療支援装置1は、生体の汗腺から放出される特定の物質を検出するセンサ2と、装置本体3とを有する。センサ2と装置本体3は有線又は無線にて接続されており、センサ2による検出結果が装置本体3に逐次送信されるようになっている。なお、センサ2や装置本体3に電源を供給する手段については図示を省略した。
【0033】
〔センサ〕
センサ2は、本発明の「検出手段」の一例に相当し、たとえば、低血糖時などに副腎から分泌され汗腺から放出されるカテコラミンの検出を行い、その濃度を検出する。センサ2は、たとえば、カテコラミンの検出濃度に対応する周波数の電気信号や電波信号を装置本体3に向けて送信するようになっている。
【0034】
センサ2は、半導体ガスセンサや、圧電素子を利用したアクチュエータや、カンチレバーアレイを利用したセンサなど、公知の臭気センサにより構成することができる(たとえば、特開平5−232006号公報、特開平6−167435号公報、特開2002−82082号公報などを参照)。
【0035】
センサ2は、任意の検出タイミングで生体から放出される物質を検出する。たとえば、検出を常時実行するようにしてもよいし、所定の時間間隔で実行するようにしてもよいし、ユーザ等の要求に対応して検出するようにしてもよいし、バイタルデータ等の計測結果に基づいて検出を行うようにしてもよい。
【0036】
図2は、このセンサ2の取り付け位置の一例を表している。この図2中のセンサ2A〜2Nは、それぞれセンサ2と同様の検出系を有し、それぞれの取り付け部位に応じた取付部材(図示せず)を備えている。
【0037】
センサ2Aは、たとえば帽子やバンダナ等に取り付けられ、それらの装用時にユーザ1000の額付近に配置される。それにより、センサ2Aは、額のエクリン汗腺から放出される物質を検出する。なお、このセンサ2Aに温度センサを付属して体温計測も行うようにしてもよい。
【0038】
ここで、センサ2Aは、体表面に接触される場合には放出物質を直接に検出し、体表面から離れて配置される場合には、蒸発した放出物質の分子を検出するようになっている(以下のセンサ2B〜2Nについても同様)。
【0039】
センサ2Bは、たとえば眼鏡等に取り付けられ、その装用時にユーザ1000の瞼(の縁)付近に配置される。それにより、センサ2Bは、瞼の縁や鼻のアポクリン汗腺からの放出物質や、顔のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。
【0040】
センサ2C、2Dは、たとえばヘッドマイクのようにしてユーザ1000の鼻又は口付近に配置される。それにより、センサ2C、2Dは、鼻のアポクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、このセンサ2C、2Dにより、鼻や口からの呼気に含まれる物質を計測することも可能である。
【0041】
センサ2Eは、たとえば耳たぶに挟んだり、耳に掛けたり、耳の穴に挿入したりして耳付近に配置される。それにより、センサ2Eは、外耳道に存在するアポクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、耳の穴に挿入する場合には、このセンサ2Eに温度センサを付属して体温計測も行うようにしてもよい。
【0042】
センサ2Fは、たとえばネックレスのように首に掛けたり、衣服の襟に取り付けられて、ユーザ1000の首付近に配置される。それにより、センサ2Fは、首のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。また、鼻や口の近くに配置させて、呼気中の物質も同時に検出するようにしてもよい。
【0043】
センサ2Gは、たとえば衣服に取り付けられ、その着用時にユーザ1000の胸付近に配置される。それにより、センサ2Gは、乳房のアポクリン汗腺からの放出物質や、胸のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、このセンサ2Gを左胸に配置させる場合には、脈拍計を付属させることができる。また、複数の電極からなる心電計を付属させるも可能である。
【0044】
センサ2Hは、たとえばベルトや衣服等に取り付けられ、その着用時にユーザ1000の腹付近に配置される。それにより、センサ2Hは、臍のアポクリン汗腺からの放出物質や、腹部のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。また、外陰部や肛門のアポクリン汗腺からの放出物質を検出することも可能である。
【0045】
センサ2Iは、たとえば腕輪や衣服等に取り付けられ、その装着時や着用時にユーザ1000の脇の下付近に配置される。それにより、センサ2Iは、脇の下のアポクリン汗腺やエクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、このセンサ2Iに温度センサを付属して体温計測も行うようにしてもよい。
【0046】
センサ2Jは、たとえば腕時計や腕輪等に取り付けられ、その装着時にユーザ1000の手首付近に配置される。それにより、センサ2Jは、手首のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、このセンサ2Jに脈拍計や血圧計を付属してもよい。
【0047】
センサ2Kは、たとえば指輪等に取り付けられ、その装着時にユーザ1000の掌付近に配置される。それにより、センサ2Kは、掌のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。なお、このセンサ2Kを指に装着する場合には、パルスオキシメータを付属して血中酸素飽和濃度も計測することができる。
【0048】
センサ2Lは、たとえば靴や靴下等に取り付けられ、その着用時にユーザ1000の足の裏付近に配置される。それにより、センサ2Lは、足の裏のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。
【0049】
センサ2Mは、たとえば衣服等に取り付けられ、その着用時にユーザ1000の背中付近に配置される。それにより、センサ2Mは、背中のエクリン汗腺からの放出物質を検出する。
【0050】
センサ2Nは、たとえば衣服やベルト等に取り付けられ、その着用時にユーザ1000の腰付近に配置される。それにより、センサ2Nは、腰のエクリン汗腺からの放出物質や、外陰部や肛門のアポクリン汗腺からの放出物質を検出する。
【0051】
なお、図示は省略するが、室内や自動車等の車内など、ユーザ1000の装用物以外の場所にセンサ2を設置して、汗腺からの放出物質や呼気中の物質を検出するようにしてもよい。また、センサ2を寝台や絨毯やトイレ(便座)など、就寝時や排便時など特定のときにのみユーザ1000の体表に接触する位置に設置し、ユーザ1000がセンサ2に触れたときに物質の検出を行うようにしてもよい。なお、センサ2をトイレに設置する場合には、ユーザ1000の排泄物等に含まれる物質を検出することもできる。
【0052】
〔装置本体〕
装置本体3は、センサ2による検出結果に基づいて、所定の報知先に所定の情報を報知するための構成を備えている。ここで、情報の報知先としては、医療支援装置1のユーザ本人や、ユーザの関係者(家族、医師等)などがある。また、報知される情報(「報知情報」と称する。)としては、ユーザの病態や健康状態を示す情報や、病態や健康状態を回復させるための処置情報などがある。
【0053】
装置本体3には、ユーザ等による操作を受け付ける操作部4と、センサ2から検出結果を受信する受信部5と、各種情報を記憶する記憶部6と、ユーザの血糖値の値を算出する血糖値算出部7と、報知情報を出力する報知部8とが設けられている。以下、この装置本体3内の各部についてそれぞれ説明する。
【0054】
操作部4は、装置本体3の筐体(図示せず)表面に配設されている。この操作部3には、たとえば、電源のオン/オフを切り換える電源ボタンや、メッセージ表示、音声出力、発光、バイブレーションなど報知方法を切り換える報知方法切換ボタンや、報知先(ユーザ本人、関係者等)を設定する報知先設定ボタンや、血糖値レベル(閾値)を設定するレベル設定ボタンや、報知頻度を切り換える報知頻度設定ボタンや、報知情報の出力を停止させる報知停止ボタンなど、各種のボタンが設けられている。
【0055】
操作部4は、上記のような各種ボタン等による構成のほか、各種ソフトキーを備えるタッチパネル式の液晶表示器などによって構成することもできる。また、操作内容を音声入力する方式を採用することも可能である。
【0056】
また、操作部4を装置本体3から分離させて、衣服のポケット等に容易に携帯できるようにしてもよい。その場合には、後述の表示部11、音声出力部12、LED13、振動部14等を、この操作部4と一体的に構成することが望ましい。
【0057】
(受信部)
受信部5は、センサ2から送られるカテコラミン濃度等の検出結果(電気信号、無線電波等)を受信する通信インターフェイスを含んで構成される。受信部5は、受信した検出結果を血糖値算出部7に送出する。
【0058】
(記憶部)
記憶部6は、本発明の「記憶手段」の一例に相当し、公知の記憶装置により構成される。なお、外出時に医療支援装置1を携帯する場合などを考慮すると、ROMやEEPROMなどの小型の記憶装置を用いることが望ましい。また、後述の情報6a、6bを事前に記憶させておくことを勘案すると、不揮発性記憶装置を含んで構成されることが望ましい。
【0059】
記憶部6には、濃度−血糖値関連情報6aと報知設定情報6bとが、あらかじめ記憶されている。
【0060】
濃度−血糖値関連情報6aは、カテコラミンの濃度と血糖値の値とを関連付ける情報である。この濃度−血糖値関連情報6aは、たとえば、当該ユーザの汗腺から放出されるカテコラミンの濃度とそのときの血糖値の値との関連を、事前に医療機関等で計測し、その計測データを基に作成される。
【0061】
報知設定情報6bは、本発明の「設定情報」の一例に相当するもので、複数の血糖値レベルのそれぞれに対応する報知先や報知情報等の情報を含んでいる。
【0062】
ところで、「糖尿病ネットワーク」ホームページ(http://www.dm−net.co.jp/)によれば、低血糖症の症状は血糖値の低下に応じて一般に次のように変化する。
【0063】
まず、血糖値が平均値で68mg/dLまで下がると拮抗ホルモンが分泌され始める。更に、53mg/dLまで下がると、自律神経症状、たとえば、発汗、手足のふるえ、からだが熱く感じる、動悸、不安感、吐きけ、空腹感、霧視などの症状が出てくる。更に、48mg/dLにまで下がると、中枢神経症状、たとえば、集中力の低下、錯乱、脱力、眠気、めまい、疲労感、ろれつが回らない、物が二重に見える、空腹感、霧視などの症状が発生する。この状態のまま糖分を摂取しないと意識障害が起こり(無自覚性低血糖の場合もある)、更に進行すると低血糖昏睡に陥り、そのまま死に至ることもある。なお、上記の症状が発生する血糖値レベルには個人差がある。(以上、http://www.dm−net.co.jp/seminar/teikketo/teikketo.htmの記事を参照。)
【0064】
図3は、報知設定情報6bの一例を表している。同図に示す報知設定情報6bは、低血糖状態の危険度を5段階(レベル0〜レベル4)に分け、その各段階に対応する報知先や報知情報などの情報を含んでいる。
【0065】
レベル0〜レベル3の4段階は、3つの閾値(68、53、48mg/dL)により定義される血糖値の範囲「68mg/dLを超える血糖値範囲(レベル0)」、「68mg/dL以下かつ53mg/dLを超える血糖値範囲(レベル1)」、「53mg/dL以下かつ48mg/dLを超える血糖値範囲(レベル2)」、「68mg/dL以下かつ53mg/dLを超える血糖値範囲(レベル3)」として設定されている。また、レベル4は、レベル3の状態に陥ってから所定時間経過した場合に相当する。
【0066】
報知設定情報6bには、各レベル0〜4について、報知先、報知情報及び報知頻度が設定されている。報知先には、警告やメッセージ等の出力先が設定されている。報知情報には、その報知先に対して出力する情報の内容が設定されている。報知頻度には、報知情報を出力する頻度が設定されている。なお、これらの設定内容について、「・・・」は、ユーザ向けの報知に関する設定内容を表し、『・・・』は、関係者向けの報知に関する設定内容を表している。
【0067】
レベル0は、血糖値が正常な状態であり、ユーザや関係者等への報知は行わない(報知先なし、報知情報なし)。
【0068】
レベル1は、軽度の低血糖状態であり、ユーザに対する報知情報として、たとえば、現在の血糖値状態を示すメッセージ「軽度の低血糖状態」や、摂取すべき糖分量を指示するメッセージ「必要糖分量・・・・グラム」などが設定されている。また、報知頻度はたとえば「1分ごと」に設定されている。
【0069】
なお、レベル1では、ユーザの意識が未だしっかりしている場合が多いので、関係者に対する報知は行わない(もちろん、関係者に対する報知を行うように設定することも可能である。)。
【0070】
レベル2は、重度の低血糖状態であり、早急に糖分を摂取する必要がある。レベル2においては、レベル1の場合と同様に、ユーザに対する報知情報として、たとえば、現在の血糖値状態を示すメッセージ「重度の低血糖状態」や、摂取すべき糖分量を指示するメッセージ「必要糖分量・・・・グラム」などが設定されている。また、報知頻度はたとえば「30秒ごと」に設定され、レベル1よりも頻繁に報知を行うようになっている。
【0071】
このレベル2では、ユーザは未だ自力で回復できる場合が多いので、関係者に対する報知は行わないように設定されている(関係者にも報知するように設定してもよい。)。
【0072】
レベル3は、直ちに糖分を摂取しなければならない危険な低血糖状態である。レベル3においては、ユーザに対する報知情報として、たとえば、現在の血糖値状態を示すメッセージ「危険な低血糖状態」や、自動車を運転中のユーザに停車を指示するメッセージなどが設定されている。このときの報知頻度は「連続的」である。
【0073】
関係者に対する報知の頻度(タイミング)は、任意に設定することができる。たとえば、1回だけ報知するようにしてもよいし、たとえば所定の時間間隔で報知するようにしてもよい。また、1回報知した後、所定時間だけ待機し、その間に当該関係者からの返答がない場合に再び報知を行うようにしてもよい。また、この場合の報知先を複数決めておき、まず第一番目の報知先に報知し、この第一番目の報知先からの返答がない場合には第二番目の報知先に報知し、この第二番目の報知先からの返答がない場合には第三番目の報知先に報知し、・・・・というように順次報知を行うことにしてもよい。
【0074】
レベル4では、ユーザはおそらく意識を失っている状態であるので、関係者への報知が主となる。その報知情報としては、たとえば、ユーザの現在の血糖値状態を示すメッセージ「ユーザに緊急事態発生」や、ユーザが低血糖状態に陥った時刻「低血糖状態の発生時刻」などが設定されている。
【0075】
ここで、「低血糖状態の発生時刻」には、レベル1の発生時刻、レベル2の発生時刻、レベル3の発生時刻及びレベル4の発生時刻のうちの少なくとも1つの時刻情報が含まれる。たとえば、レベル4の発生時には、レベル1〜4の全ての発生時刻を報知することができる。
【0076】
レベル4における関係者に対する報知の頻度は、任意に設定できるが、レベル3のときよりも頻繁であることが望ましい。
【0077】
なお、センサ2の誤動作など何らかの理由で、誤ってレベル4の血糖値が検出された場合を想定し、ユーザに対する報知も行う。その報知情報としては、たとえば、現在の血糖値状態を示すメッセージ「レベル4発生」などが設定される。それにより、検出ミスの場合に、ユーザは、関係者等に対する報知を自ら停止させて報知ミスを回避したり、関係者等に連絡を取って報知ミスを伝えたりすることができる。
【0078】
図3に示す報知設定情報6bは、各症状が発生する一般的な血糖値レベルを用いて設定されたものである。しかし、上述したように、症状が発生する血糖値レベルには個人差があるので、医療支援装置1を実際に運用する際には、各ユーザ毎に事前に検査を行って、症状が発生する血糖値レベルを取得し、その血糖値レベルに応じて各ユーザ毎の報知設定情報6bを決定することが望ましい。
【0079】
ユーザに対する報知情報として、医療機関への直行を指示するメッセージなどを設定してもよい。また、関係者に対する報知情報として、ユーザに連絡を取るよう指示するメッセージや、救急車を手配するよう指示するメッセージや、医療機関や担当の医師に連絡をとるように指示するメッセージなどを設定してもよい。
【0080】
(血糖値算出部)
血糖値算出部7は、本発明の「算出手段」の一例に相当し、センサ2により検出されたカテコラミンの濃度(に対応する検出信号の周波数)と、記憶部6の濃度−血糖値関連情報6aとに基づいて、カテコラミンの検出濃度に相当する血糖値の値を算出する。算出結果は、報知部8に送出される。この血糖値算出部7は、たとえば、CPU等のマイクロプロセッサにより構成される。
【0081】
(報知部)
報知部8は、本発明の「報知手段」の一例に相当し、報知設定情報6bを参照し、血糖値算出部7により算出された血糖値が属する血糖値範囲(レベル)に対応する報知先に報知情報を出力する。この報知部8は、制御部9、計時部10、表示部11、音声出力部12、LED(発光ダイオード)13、振動部14及び通信部15を含んで構成されている。
【0082】
計時部10は、CPU等からなり、たとえば現在時刻を刻むように動作する。
【0083】
表示部11は、液晶表示器等の表示装置により構成され、制御部9の制御によりメッセージ等を表示する。
【0084】
音声出力部12は、音声出力回路やスピーカ等を含んで構成され、制御部9の制御により音声メッセージや警告音等を出力する。
【0085】
LED13は、制御部9の制御により点灯して警告光等を発光する。
【0086】
振動部14は、携帯電話等に内蔵のバイブレーション機構などにより構成され、制御部9の制御により振動する。
【0087】
通信部15は、電話回線等のネットワークに接続するための通信インターフェイスを含んで構成され、当該ネットワーク上の外部通信装置20との間で通信を行う。
【0088】
この外部通信装置20は、たとえば、ユーザの自宅の電話機やコンピュータ、ユーザの家族等の携帯電話、医師の携帯電話やコンピュータ、医療機関等の電話機やコンピュータなどである。また、医療支援装置1によるサービスの提供会社のサーバや電話機等であってもよい。このような外部通信装置20の固有の識別情報、すなわち、(携帯)電話機の電話番号や、コンピュータのアドレス等は、報知設定情報6bの報知先の欄にあらかじめ記憶されている。
【0089】
制御部9は、たとえばCPU等により構成され、報知に関わる各種処理の実行、及び、報知に関わる各部の制御を行う。
【0090】
制御部9は、血糖値算出部7により算出された血糖値(算出値)を受けると、まず、報知設定情報6bのレベル0〜レベル4のうち、この算出値が属するレベルを決定し、そのレベルに対応する報知先(の識別情報)、報知情報及び報知頻度を取得し、その報知先に対して報知情報を出力する。また、制御部9は、計時部10から提供される時刻情報を参照し、取得した報知頻度で当該報知情報を出力する。
【0091】
このとき、制御部9は、あらかじめ設定された報知方法で報知情報の出力を行う。すなわち、ユーザ等は、あらかじめ、操作部4等を操作して、表示部11によるメッセージ表示、音声出力部12による音声メッセージ出力、LED13による警告光、振動部14による振動のうちのどの方法(複数選択可能)で報知を行うか設定しておく。同様に、外部通信装置20をあらかじめ指定しておく。制御部9は、設定された報知方法を実行する各部11〜14を選択的に制御してユーザ本人へ報知情報を出力させ、また、通信部15を制御して、指定された外部通信装置20に報知情報を出力させる。
【0092】
また、制御部9は、操作部4等からの入力操作を受けて、濃度−血糖値関連情報6aや、報知設定情報6bの内容を変更する処理も行う。
【0093】
[動作]
以上のように構成された医療支援装置1の動作について説明する。図4に示すフローチャートは、医療支援装置1の動作の一例を表している。なお、報知部8の計時部10は、制御部9に対して時刻情報を常時提供しているものとする。
【0094】
操作部4の電源ボタン(上述)が操作されて電源が投入されると(S0)、センサ2は、ユーザの生体から放出されるカテコラミンの濃度を所定の時間間隔で検出する(S1)。各検出結果は、装置本体3に向けて送信される。
【0095】
装置本体3の受信部5は、センサ2からの検出結果を受信し、この検出結果を血糖値算出部7に送る(S2)。
【0096】
血糖値算出部7は、濃度−血糖値関連情報6aを参照して、検出されたカテコラミン濃度に対応する血糖値の値を算出する(S3)。その算出結果は、報知部8に送られる。
【0097】
報知部8の制御部9は、血糖値の算出値と、報知設定情報6bの各レベル0〜4の血糖値範囲とを比較し、この算出値が属するレベルを選択する(S4)。制御部9は、選択したレベルに応じて次のような制御を行う(S5)。
【0098】
(レベル0)
レベル0が選択された場合(S5;レベル0)、装置本体3は、報知を行わずに、センサ2から次の検出結果が送られてくるまで待機する(S1へ戻る)。
【0099】
(レベル1、2)
また、レベル1又はレベル2が選択された場合(S5;レベル1、2)、制御部9は、選択したレベルに対応する報知先、報知情報及び報知頻度を、報知設定情報6bから取得し(S6)、表示部11、音声出力部12、LED(発光ダイオード)13、振動部14及び通信部15のうちの1つ以上を制御して、当該報知先に対して当該報知情報を当該報知頻度で出力する(S11)。
【0100】
報知情報の出力は、操作部4の報知停止ボタン(前述)から出力停止操作がなされたり、電源ボタンにより電源が切られたりして、装置の使用終了が要求されるまで継続される(S12)。終了されない場合には(S12;N)、装置本体3は、センサ2が次の検出を実行するまで待機する(S1へ戻る)。
【0101】
(レベル3)
また、レベル3が選択された場合(S5;レベル3)、制御部9は、計時部10からの時刻情報に基づき、レベル3の血糖値が最初に検出されてからの経過時間を求め(S7)、報知設定情報6bのレベル4の欄の「所定時間」と比較する(S8)。
【0102】
この「所定時間」は、当該ユーザに対して事前に行った検査の結果等に基づいてあらかじめ設定されている。
【0103】
なお、センサ2によるカテコラミンの検出は、常時、又は、短い間隔(たとえば5秒毎)で行うことが望ましい。そのような頻度で検出を行う場合、レベル4が発生する前には、レベル3が少なくとも一度は検出される。制御部9は、レベル3が最初に検出されたとき(レベル3の発生時)に計時部10から得られた時刻を記憶しておく。その後、再びレベル3が検出される度毎に時刻を参照し、その検出時刻とレベル3発生時の時刻との差を算出して、ステップS7の「経過時間」を求める。そして、ステップS8において、この「経過時間」と「所定時間」との大小関係を比較する。
【0104】
なお、計時部10がタイマとして動作する場合には、レベル3が最初に検出されたときにタイマをスタートし、再度レベル3が検出されたときのタイマの計時時間を、ステップS7の「経過時間」として採用することができる。
【0105】
さて、ステップS7で求めた経過時間が所定時間未満である場合(S8;N)、制御部9は、レベル3に対応する報知先、報知情報及び報知頻度を報知設定情報6bから取得し(S9)、その報知先に対してその報知情報をその報知頻度で出力する(S11)。報知情報の出力は、装置の使用終了が要求されるまで継続される(S12)。終了されない場合には(S12;N)、センサ2による次回の検出まで待機する(S1へ戻る)。
【0106】
ここで、今回のレベル3の検出時に、それ以前のレベル3検出時に対応する報知が実行されている場合には、この以前のレベル3に対応する報知をそのまま継続するようにしてもよい。
【0107】
一方、求めた経過時間が所定時間以上である場合(S8;Y)、制御部9は、レベル4に対応する報知先、報知情報及び報知頻度を取得し(S10)、その報知先に対してその報知情報をその報知頻度で出力する(S11)。報知情報の出力は、装置の使用終了が要求されるまで継続される(S12)。終了されない場合には(S12;N)、センサ2による次回の検出まで待機する(S1へ戻る)。以上が、本実施形態の医療支援装置1が行う処理である。
【0108】
[作用効果]
以上のように動作する本実施形態の医療支援装置1によれば、次のような作用、効果が奏される。
【0109】
まず、この医療支援装置1は、ユーザの血糖値状態を常時又は所定の時間間隔で継続的に検出し、その検出結果や、病態が悪化してからの経過時間に応じて、表示メッセージや音声メッセージや警告光や装置のバイブレーションなどにより報知を行う。このように、医療支援装置1自体が検出結果から病態を判断して報知を行うようになっているので、ユーザや関係者(特に家族等)は、早期に病状等を知ることができる。
【0110】
特に、ユーザの意識があると想定される病態(血糖値レベル)のときには、病態レベルや対処方法(必要糖分量や停車要求等)を、表示メッセージや音声メッセージや警告光や装置のバイブレーションなどによって出力するようになっている。それにより、当該装置1を携帯するユーザは、自身の病態や対処方法を早期に知ることができ、糖分を摂取したり医療機関に連絡したりするなどの適当な対応を迅速に取ることが可能となる。
【0111】
なお、ユーザの意識がはっきりしない場合であっても、ユーザの病態や対処方法を、周囲の関係者や他人に対して早期に知らせることができる。このとき、音声出力部12からの警報音や音声メッセージを用いることで、周囲の者への報知を効果的にかつ迅速に行うことができる。
【0112】
一方、ユーザの病態が非常に悪化した場合(レベル3やレベル4)には、病態の悪化等を関係者に対して報知するようになっているので、関係者は事態の発生を早期に知ることができる。このとき、低血糖状態の発生時刻をともに報知することにより、関係者は病態悪化の経過を知ることができるので、それを参照して適当な対応を取ることができる。
【0113】
このように、医療支援装置1は、ユーザの血糖値の検出レベル(病態)に応じて、適当な報知先に対して適当な報知情報を報知するようになっているので、迅速でありつつ効果的な報知を行うことができる。
【0114】
また、ユーザの病態に応じて報知情報の出力頻度も適宜変更されるようになっているので、報知の確実性が高まるなど、報知の効果向上を図ることができる。
【0115】
医療支援装置1は、監視目的の疾患(ここでは低血糖症)に対応する生体放出物質を選択的に検出するように構成されているので、高精度で当該疾患の病態悪化を検知することが可能である。
【0116】
また、ユーザの健康状態を反映する物質やバイタルデータ(体温、血圧、血中酸素飽和濃度等)を検出して報知を行うことにより、医療支援装置1を日常の健康管理に適用することも可能である。
【0117】
また、汗腺から放出される生体放出物質を検出する場合、当該物質を放出する汗腺の付近にセンサ2を設けることで、検出精度を向上させることができる。センサ2の取り付け部位は、検出対象物質の種類や、ユーザの要望などを考慮して適宜決定される。
【0118】
[変形例]
本実施形態の医療支援装置1に関する各種の変形例について以下に説明する。
【0119】
(変形例1)
上記の実施形態では、血糖値算出部7が、濃度−血糖値関連情報6aを参照して、センサ2による検出結果から血糖値の値を算出し、その算出結果に対応するレベルの報知情報を報知するようになっているが、前半の算出処理を省略した構成を適用することができる。
【0120】
たとえば、報知設定情報6bにおいて、センサ2からの検出信号の複数の周波数レベルを閾値として複数のレベルを定義し、各レベルについて報知先、報知情報等を設定する。そして、制御部9により、受信部5からの検出信号を解析してその周波数を取得し、その周波数が属するレベルに対応する報知先、報知情報、報知頻度等に基づいて報知処理を制御すればよい。
【0121】
(変形例2)
上記の実施形態においては、ユーザ及びその関係者に対して報知情報を出力する構成を採用しているが、この医療支援装置1を緊急通報システムとして使用することも可能である。
【0122】
そのために、たとえば、報知部8にGPS(Global Positioning System)機能を有するGPS部を設ける。たとえばレベル3やレベル4が検出された場合に、制御部9は、このGPS部を制御して現在位置を取得するとともに、最寄りの医療機関(救命救急センター)の名称などを取得する。このとき、当該医療機関の固有の識別情報(電話番号、ホームページアドレス等)についても取得することが望ましい。
【0123】
当該医療機関の識別情報が取得された場合、制御部9は、通信部15を制御して、当該医療機関の外部通信装置20に対して、ユーザの病態等のメッセージや現在位置などを送信する。一方、識別情報が取得できない場合、制御部9は、緊急通報時の識別情報(電話番号等)が決まっている消防署や警察署等の公共機関に対して、ユーザの病態等のメッセージや現在位置などを送信する。
【0124】
それにより、無自覚性低血糖などでユーザの意識がなくなった場合の緊急通報を迅速に行うことができる。このような緊急通報システムは、ユーザの意識がなくなることが想定される任意の疾患(心筋梗塞による心臓発作など)に対して有効である。
【0125】
(変形例3)
上記の実施形態では、生体から放出されるカテコラミンを検出して低血糖状態を監視する場合について説明したが、他の生体放出物質を検出して他の疾患を監視するように構成することができる。たとえば、癌化した生体組織から分泌されて汗や尿により体外に放出される物質を検出するように構成することが可能である。
【0126】
このように、本発明の医療支援装置は、病態の悪化を監視する用途のほかに、疾患の早期発見や体調管理などの日常の健康管理に用いることができる。なお、癌の発見や、重大な体調の変化の検出などを、ユーザ本人に直接告知すべきでないと判断される場合には、報知設定情報6bの報知先を調整して、ユーザ本人にはその旨を報知しないように設定できる。このとき、ユーザには、医療機関に行くよう指示するメッセージや、自宅や医療機関に連絡するよう指示するメッセージなどを報知することが望ましい。一方、報知先の医療機関には、ユーザの氏名、患者ID(当該医療機関における患者識別情報)、疑わしい病名などを報知することができる。
【0127】
また、他の生体放出物質の検出による他の疾患の監視の一例として、尿素を検出するセンサ2をユーザの口や鼻の付近に設けて、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の感染の有無を判断することができる(尿素呼気試験:たとえば、「Helicobacter pylori感染の診断と治療のガイドライン−改訂版−」、日本ヘリコバクター学会、2003年2月24日、p.7、補足事項(4)d参照)。
【0128】
(変形例4)
上記の実施形態では、1種類の物質(カテコラミン)のみを検出するようになっているが、2種類以上の物質をそれぞれ検出する構成を適用することも可能である。
【0129】
その場合、生体から放出される複数の物質をそれぞれ検出するようにセンサ2を構成するとともに、図3のような報知設定情報6bを各物質毎に記憶部6にあらかじめ記憶しておく。そして、報知部8は、各物質毎の検出レベルに応じた報知情報を報知先に出力する。
【0130】
なお、検出対象の複数の物質は、別々の疾患に関連する物質であってもよいし、単一の疾患において分泌される異なる物質であってもよい。前者によれば、2種類以上の疾患の病態を並行して監視できるなどの利点があり、後者によれば、当該疾患の病態の変化を高精度で検出できるなどの利点がある。
【0131】
(変形例5)
上記実施形態のセンサ2は、生体から放出される物質(の濃度)を検出するものであるが、より一般に、生体情報を検出するように構成することができる。ここで、生体情報とは、生体の状態を反映する任意の情報を含むものとし、生体放出物質(の濃度)のほか、上記実施形態にて言及した体温、心拍数、心電図、血圧、血中酸素飽和濃度、更には、血糖値などが一例として挙げられる。なお、センサ2による生体情報の検出は、非侵襲で行うことが望ましい。
【0132】
生体放出物質以外の生体情報を検出する場合の例として、生体の血糖値を検出する構成を説明する。この場合に使用されるセンサ2としては、たとえば特開2005−87640号公報や特開2002−320602号公報などに開示された非侵襲タイプの測定装置を用いることができる。
【0133】
このような血糖値検出用のセンサ2を使用する場合、濃度−血糖値関連情報6aや血糖値算出部7は不要である。報知部8は、報知設定情報6b中の複数のレベルのうちから、センサ2による血糖値の検出値が属するレベルを選択し、その選択したレベルに対応する報知先や報知情報を取得して報知処理を実行する。
【0134】
このような本変形例によれば、上記実施形態と同様に、ユーザ本人やその関係者に対する早期の報知が可能となる。
【0135】
(変形例6)
上記実施形態の報知設定情報6bでは、各レベルについて、報知先、報知情報及び報知頻度が設定されているが、必ずしもその必要もない。
【0136】
たとえば、ユーザのみに報知する場合など、常に一定の報知先に報知を行う場合など、報知先が任意の場合には、報知先を各レベル毎に設定する必要はない。また、常に同じ報知情報を出力する場合など報知情報が任意の場合には、各レベル毎に報知情報を設定する必要はない。また、報知終了要求が入力されるまで報知を継続する場合や、常に同じ頻度で報知を行う場合など、報知頻度を考慮しない場合には、報知頻度を各レベル毎に設定する必要はない。
【0137】
また、センサ2の検出結果の大小に依らず、常に同じ報知情報を同じ報知先に同じ頻度で出力する場合などには、報知設定情報6bのレベル分けを行う必要もない。ただし、病態の悪化度合に応じて対処方法の異なる疾患が多数であることを考慮すると、少なくとも報知情報についてはレベル毎に設定することが望ましい。
【0138】
また、無自覚性低血糖や心筋梗塞など、病態悪化に伴う意識の喪失が想定される疾患を監視する場合などには、報知先を複数設定しておくことが望ましい。その場合、ユーザ本人に対する報知と、関係者等に関係者等に対する報知とを含めることが望ましい。前者は、病態悪化が軽度なときにユーザ自身による迅速な対応を促すために有効であり、後者は、病態悪化が進行して意識を失った場合や体を自由に動かせなくなった場合などに有効である。
【0139】
なお、変形例5と変形例6(報知情報が任意の場合)とを組み合わせることにより、記憶部6に生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知先を設定した報知設定情報6bをあらかじめ記憶しておくとともに、センサ2によりユーザの生体情報を検出し、報知部8により、報知設定情報6bを参照して、複数の検出レベルのうちセンサ2による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知先に報知情報を出力するように構成された、本発明の医療支援装置を提供することができる。
【0140】
また、変形例5と変形例6(報知先が任意の場合)とを組み合わせることにより、記憶部6に生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知情報を設定した報知設定情報6bをあらかじめ記憶しておくとともに、センサ2によりユーザの生体情報を検出し、報知部8により、報知設定情報6bを参照して、複数の検出レベルのうちセンサ2による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知情報を報知先に出力するように構成された、本発明の医療支援装置を提供することができる。
【0141】
(変形例7)
ユーザの病態の悪化度合に応じてセンサ2による検出の頻度を変更するように制御することも可能である。この制御処理は、たとえば、報知部8の制御部9(CPU等)により実行される。
【0142】
まず、センサ2との間でデータの送受信を行うデータ通信部(図示せず)を装置本体に設ける。また、報知設定情報6b中の各レベルに対応する検出頻度を設定する検出頻度設定情報(図示せず)を記憶部6にあらかじめ記憶しておく。
【0143】
制御部9は、センサ2による検出結果に対応するレベルを選択すると、検出頻度設定情報を参照して、選択されたレベルに対応する検出頻度の情報を取得する。そして、データ通信部を制御して、センサ2に対し、この検出頻度と同じ頻度で間欠的に制御信号を送信する。センサ2は、各制御信号を受けると検出処理を実行する。
【0144】
なお、検出頻度は、レベルが上がるに従って(つまり病状が悪化するに従って)、より頻繁になるように設定される。たとえば、レベル0〜2のときには5分ごとに検出し、レベル3のときには2分ごとに検出し、レベル4のときには1分ごとに検出するように設定することができる。
【0145】
それにより、病態に応じた頻度で検出を行うことができるので、無駄な電力消費を抑制しつつ、病態悪化時には適当な頻度で検出を行うことが可能となる。
【0146】
(変形例8)
センサ2による検出結果の時間変化を記録することができる。図5、図6は、センサ2による血糖値の検出結果の時間変化の記録態様の一例を表している。両図とも、上記の変形例8に例示した検出頻度(レベル0〜2のとき5分ごと、レベル3のとき2分ごと、レベル4のとき1分ごと)で検出された血糖値の変遷を示している。
【0147】
図5は、血糖値の各検出結果をプロットする記録態様を示しており、図6は、各検出結果を表形式で記録した態様を表す。このような記録結果は、図5のようなグラフ形式や図6のような表形式で表示部11や他の表示装置に表示することができ、また、印刷出力することができる。
【0148】
このような記録結果は、診察時や治療時などに参照される。特に、意識を失って医療機関に移送された場合などの貴重な参考データとなる。
【0149】
(変形例9)
上記の実施形態のセンサ2は、生体放出物質の濃度を何度も反復して検出するものであるが、たとえば金属酸化物半導体ガスセンサ等の臭いセンサ(特開2004−108861号公報等参照)のように、検出可能な物質濃度になった時点(検出閾値)で初めて反応するタイプのセンサを用いて、低血糖状態を報知するようにしてもよい。この場合、物質の検出及び報知は、物質濃度が検出閾値に達したときのみである。
【0150】
(変形例10)
低血糖症の患者は、一般に、非常時に摂取するための糖分を収納するケース(携帯糖分ケース;図示せず)を携帯している。そこで、表示部11、音声出力部12、LED13及び振動部14のうちの少なくとも1つを、携帯糖分ケースに設けることができる。
【0151】
そのために、たとえば、装置本体8に無線送信部を設けるとともに、携帯糖分ケースに無線受信部を設け、装置本体8からの無線信号に基づいて携帯糖分ケースの表示部11等が動作するように構成することができる。
【0152】
なお、携帯糖分ケースの重量を考慮すると、スピーカやLEDやバイブレーション等の簡易で軽量の報知方法を採用することが望ましいと考えられる。
【0153】
以上に詳述した構成は、本発明に係る医療支援装置を好適に実施するための一例である。たがって、以上に説明した構成に対し、本発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態の構成の一例を表す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態におけるセンサの取り付け部位を説明するための概略説明図である。
【図3】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態における報知設定情報を説明するための概略説明図である。
【図4】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態による動作の一例を表すフローチャートである。
【図5】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態のセンサによる血糖値の検出結果の時間変化の記録態様の一例を表す図である。
【図6】本発明に係る医療支援装置の好適な実施形態のセンサによる血糖値の検出結果の時間変化の記録態様の一例を表す図である。
【符号の説明】
【0155】
1 医療支援装置
2 センサ
3 装置本体
4 操作部
5 受信部
6 記憶部
6a 濃度−血糖値関連情報
6b 報知設定情報
7 血糖値算出部
8 報知部
9 制御部
10 計時部
11 表示部
12 音声出力部
13 LED
14 振動部
15 通信部
20 外部通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体から放出される物質を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に応じて報知情報を出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする医療支援装置。
【請求項2】
前記検出手段は、生体の汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの汗腺付近の部位に設けられることを特徴とする請求項1に記載の医療支援装置。
【請求項3】
前記検出手段は、生体のアポクリン汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの耳、鼻、口、脇の下、胸、腹、腰及び瞼のうちのいずれかの部位の付近に設けられることを特徴とする請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項4】
前記検出手段は、生体のエクリン汗腺から放出される物質を検出し、ユーザの額、首、手首、脇の下、胸、足の裏、掌、腹、背、腰及び瞼のうちのいずれかの部位の付近に設けられることを特徴とする請求項2に記載の医療支援装置。
【請求項5】
前記検出手段は、異なる複数の物質を検出でき、
前記複数の物質のそれぞれに対応する報知先の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段を更に備え、
前記報知手段は、前記設定情報を参照して、前記検出手段により検出された物質に対応する報知先に、前記報知情報を出力する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項6】
ユーザの生体から放出されるカテコラミンの濃度を検出する検出手段と、
前記検出されたカテコラミンの濃度に相当する血糖値の値を算出する算出手段と、
複数の閾値により段階的に定義された複数の血糖値範囲のそれぞれに対応する、報知先及び報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
前記設定情報を参照して、前記算出手段により算出された血糖値の値が属する血糖値範囲に対応する報知先に、この血糖値範囲に対応する報知情報を出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする医療支援装置。
【請求項7】
ユーザの生体情報を検出する検出手段と、
前記生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知先の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
前記設定情報を参照して、前記複数の検出レベルのうち前記検出手段による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知先に、報知情報を出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする医療支援装置。
【請求項8】
ユーザの生体情報を検出する検出手段と、
前記生体情報の複数の段階的な検出レベルのそれぞれに対応する報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
前記設定情報を参照して、前記複数の検出レベルのうち前記検出手段による検出結果に相当する検出レベルに対応する報知情報を、報知先に出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする医療支援装置。
【請求項9】
前記報知手段は、前記検出された生体情報の検出レベルに応じて前記報知情報の出力頻度を変更することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の医療支援装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記検出された生体情報の検出レベルに応じて検出頻度を変更することを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の医療支援装置。
【請求項11】
ユーザの血糖値を検出する検出手段と、
複数の閾値により段階的に定義された複数の血糖値範囲のそれぞれに対応する、報知先及び報知情報の設定情報をあらかじめ記憶する記憶手段と、
前記設定情報を参照して、前記検出手段による検出結果が属する血糖値範囲に対応する報知先に、この血糖値範囲に対応する報知情報を出力する報知手段と、
を備えることを特徴とする医療支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−188(P2007−188A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180743(P2005−180743)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】